会派の動き

第3次行革プラン(第一次案)に対する意見の開陳

行財政構造改革調査特別委員会「第3次行革プラン( 第一次案) 」に対する民主党・県民連合意見

第3次行革プラン( 第一次案)に対する民主党・県民連合の意見を申し上げます。
まず、この度の第2次行革プラン3 年目の総点検の評価について申し上げます。

今回の見直しに当たって、我が会派では、平成20 年の新行革プラン策定から5年が経過し、折り返し点に当たるということもあって、単なる3 年目の総点検にとどまらず、30 年度の収支均衡などの目標達成に向け、今後5 年間の方向性や取り組みをより明確かつ具体的に示すことが重要です。

さらには、安全・安心を求める県民の思いに的確に応えてきたのか、さまざまな負担を求められている職員のモチベーションが維持できたのか、といった側面からの評価や課題等にさらに目を向ける必要からも、パブリックコメントや各種会合などのあらゆる機会を活用し、県民の声を大切にした改革を的確に進めていくべきであると主張してまいりました。

総点検の結果としましては、この5 年間の行財政構造改革の取り組みは概ねプランどおりに進捗しており、県当局におかれましては、後年度の財政負担を極力軽減しつつ積極的に対応されてきたという点においては一定評価をいたしますが、企画部会案が提案されてから十分な検討時間がなかったこともあり、必ずしも県民に十分に周知できていると言
えません。

今後、第3次行革プラン(案)の策定に向け、さらなる周知を求めます。

(第3次行革プラン)

それでは、第3次行革プラン第一次案についての意見を申し上げます。
第3次行革プランの策定に当たっての基本方針については、我が民主党・県民連合が、これまでも主張してきたように、次の視点が重要と考えます。

まず第1は、前述したように、今回の行革検討方向は、行革11 年間の最終のあるべき姿を見通し、その先の将来をも見据えた持続可能な行財政運営を実現する行革プランでなくてはなりません。

持続可能な将来を見通した兵庫県の姿を示すには、「財政フレーム」において、平成31 年以降の数値も形式的な参考資料ではなく、一定の年度に亘って示すべきだと考えます。もちろん、数値は現状に即して毎年精査するとしても、より長期の財政フレームを示すことにより、兵庫県の将来、持続した行革の姿や県政運営の姿を県民に見せることが必要と考えます。

第2は、県民に対して事業の優先順位を明確にするという視点です。経済格差や地域間格差が拡大している中で、医療・福祉・教育・雇用・治安など県民の生命や生活に対するニーズは複雑・多様化しています。限られた財源の中、これらの課題に対応していくためには、投資事業はもとより、政策的経費についても、優先順位を明確にした上で改革を進
めることが必要です。

第3は、現場の声を大切にするという視点です。行革を進めるにあたって、今まで以上に県民の声を大切にするということは言うまでもありませんが、同時にこれまでの行革の取組によって負担を求めてきた県職員の声も反映していくことが必要です。そのためにも、本庁と地方機関が連携し、県民の(もしくは現場の)声を大切にした改革を進めなければなりません。

第4は、第2次行革プランまでに、考えられる行財政改革は概ね方向性は出ていると考えられますが、今後の社会情勢を見据え、敢えてゼロベースで見直していくという視点です。人口減少局面を迎え、既存の各施設、公社等々は、その規模、あり方、費用対効果を考えたとき果たして県行政・県民の視点から妥当かどうかも一から検討すべきと考えます。
以上の4つの視点をから、これまでの議論を踏まえ、第一次案に対する我が会派の意見を順次開陳します。

1.財政フレーム

まずは、財政フレームについてです。
今回の第一次案においては県税収入の伸びを大きく見込まれています。
県税収入も含めて財政フレームの試算の前提となっている経済成長率については、「中長期の経済財政に関する試算」のうち「中期財政計画」を踏まえた経済再生ケースの名目成長率を用いて算定されていますが、前回の算定で用いた「経済財政の中長期試算における慎重シナリオ」で想定していた名目成長率のほか、県税収入の実績・見込みとの乖離を勘案するなど、現下の状況を冷静に捉え、慎重に試算し、実効性のある財政フレームとするべきと考えます。

また、本年3月に変更した最新の第2次行革プランと、今回の第一次案を比較すると、第2次行革プランに計上されていた要調整額が解消されている一方で、財源対策の金額が増額されていますが、収支均衡を目指すための単なる数字合わせにならないよう、慎重に試算する必要があります。

2.組織

次に、組織についてであります。

① 本庁

本庁において今回新たに導入される「班制」について、導入後の姿を明確にするとともに、業務執行体制がどのように強化されるのかなど「班制」の導入による効果や、現状の「係制」との違いについて明確に示す必要があると考えます。

また、班長に過度の負担がかかることが懸念されることから、スタッフの配置についても十分留意するとともに「班制」の導入効果について、一定期間経過後には検証の上、問題がある場合には、元の「係制」に戻すことも念頭に置いた上で導入するべきであります。

② 県民局、県民センター

次は、県民局及び県民センターについてです。
企画部会案で統合対象としていた阪神南及び中播磨に神戸を加えた3県民局については、第一次案では、県民センター( 仮称) とするとされました。

今回の改編案は、県民局の機能・役割の量的側面を重視した変更でありますが、県民局長には、知事を代理して「地域における県の顔」としての役割もあるだけでなく、県民局が県民センターとなることで、県民に対して格下げとの印象を与えるだけでなく、地域との関わりが希薄になったとの誤った印象を与えることが十分に予想されます。従いまして、組織の効率化に向けての取り組みは理解できますが、県民局の名称変更については、慎重に対応するよう求めます。

③ 教育振興室

3つ目は、教育振興室についてです。
教育振興室の教育事務所への統合再編については、「ひょうご教育創造プラン」、「特別支援教育計画書」、「高校新学区再編」など、地域とのつながりを必要とする内容がある中、広域性・緊急性を有する機動的対応を市町も望むところから、教育振興室の存置目的が後退することのないように、職員の配置も含め、6事務所の機能が十分生かされる体
制を維持するべきです。

3.定員

次は、定員についてです。
平成30 年度までの期間目標30% 削減を目指して、これまでの5 年間で、一般行政部門の定員を22.4% 削減してきた一方で、事務量はさほど減っておらず、職員は日々の業務に追われているのが現状です。

第一次案では、今後も概ね8%の定員削減が行われることとなっていますが、各部署の残業・業務内容・事業量だけでなく、緊急事態への対応を見越した削減とするとともに、現場職員への聞き取りを十分に行い、業務量を精査した上で、目標の30% 削減がありきの一律削減にならないよう、弾力的に適正な人員配置を行うべきです。

また、退職者の不補充等により、職員の年齢構成は歪な状態となっていることから、その解消に向けて新規採用の計画的な実施など、中長期的な視野に立った定員管理を行う必要があると考えます。

4.給与

次に、給与についてであります。
新行革プラン策定以降、職員の給与の抑制措置が依然として続いています。これまでも審議会からの答申や県民会議での意見、また、県議会各会派から申し入れがあったように、先の見通せない削減をこれ以上続けることは、優秀な人材確保や職員の士気高揚の観点からみても大きな問題であり、早急に給与抑制措置の是正を図るべきです。

持続可能な行財政運営を平成31 年度以降も続けていくためには、その原動力である県職員のモチベーションを保つことこそ重要です。

また、新たな視点として、平成29 年度までに県から指定都市への教職員人件費の委譲等の予定も勘案した場合、現実として県・政令市で給与の不均衡も考えられ、有能な教職員確保の観点からも、給与抑制措置の早期是正が必要です。

5.事務事業の見直し

次は事務事業の見直しについてであります。

○ 事務事業全般

事務事業全般として、2点意見を述べます。
まず1 点目は、一般事務費の削減です。
今回の案では、今後5 年間で旅費・需用費等の一般事務費について、一般事業費に準じて削減すると示されていますが、現場の実態を把握しているのか疑問を抱かざるを得ません。単純に毎年度10% 削減したとすると、平成25 年度に比べ、平成30 年度には、約59%の一般事務費となり、現実と乖離しているのではないかと感じます。特に旅費・需用費の不足は深刻であるとも聞いており、再考すべきと考えます。

次に2点目は、政策的経費の見直しです。
選択と集中を徹底し、施策目標をゼロベースで見直すとともに、開始時3 年以内の新規事業については、事業自体のあり方を見直すと示されています。

しかし、あらゆる事業をゼロベースで見直すのであれば、見直しにあたっては、従来の「廃止するもの( 見直しをするもの)を洗い出し、廃止や見直しをすることについて説明をする」という手法から、事業ごとに目的とそれを達成するための年限( 終期)を示すなど、事業見直しに関する視点をあらかじめ明確しておく必要があります。

以下、個別の事業について見直しの観点から具体的に意見を述べてい
きます。

① 高齢者大学運営事業

まず、公益財団法人生きがい創造協会が行っている高齢者大学運営事業については、県は地域づくり人材の育成等を担い、市町等は趣味や教養の提供を中心とするとの説明ですが、従来からも申し上げているとおり、市町や民間団体等が実施する他の事業と重複しており、二重行政の典型事例です。

広域自治体である県が実施する意義も乏しいことから、生きがい創造協会の存在意義とともに、大幅な見直しを行うべきです。

② 地域の夢推進費

次に地域の夢推進費についてです。
地域ビジョンの実現に向け、平成23 年度から各県民局が地域の実情に応じて行う取り組みを支援してきた「地域の夢推進事業」が、今年度で事業期間の3年を終えるために廃止となり、来年度から新たに「ふるさとづくり推進費( 仮称) 」が創設される予定となりました。

しかし、「地域の夢推進事業」が3年を経過したため廃止するとの説明だけで、事業を検証した結果、どのような効果があり、どのような評価を行った上で「ふるさとづくり推進事業」にどのようにつないでいくのか、市町や県民等へ説明責任を果たすべきと考えます。

③ 私立高等学校等生徒授業料軽減補助

次に、私立高等学校等生徒授業料軽減補助についてです。
今回の見直しは、本県が大阪の私立学校に通う生徒への支援をしているのに、大阪は同様の支援をしていないという“ 相互主義”的な考えに基づくものと理解しています。

しかし、県外の私立高校に通学する生徒の多くは、居住地の地理的要因によるところが大きく、また、今回の措置で影響を受ける地域は阪神間をはじめ県境に近い一部の地域に限定されるものと思われます。

導入に当たっては、今回措置の対象となる世帯をはじめ、現在中学生の子がいる世帯等に対し今回の措置を確実に周知するよう求めます。

④ 地域再生大作戦の展開

次に、地域再生大作戦については、都市部との交流を中心に実施してきたモデル事業が終期を迎える中、地域の自立を促す支援に重点化するとされていますが、これまでの取り組みによって、地域がどのように再生されたのか、その効果の検証を踏まえたうえで、重点化していく必要があると考えます。

また、実施に当たっては、本庁と県民局等の役割分担を見直し、県民局等の役割を強化するとされていますが、地域によって支援に差が生じることのないように配慮する必要があります。

⑤ 母子家庭等医療費助成事業・老人医療費助成事業

次は、母子家庭等医療費助成事業等についてです。
今回の第一次案においては、所得制限を見直す理由として、母子世帯と同程度の所得水準である他の世帯との均衡を図るためとありますが、経済不況が続く中において、依然として女性の就労環境は厳しく、特に母子家庭にとって医療費の負担増は、まさに生活苦に直結するものです。

したがって同事業については、現行の児童扶養手当の所得制限の基準を準用した助成の継続や経過措置など慎重に検討する必要があります。

また、老人医療費助成事業についても、低所得の高齢者にとって医療費の負担増は母子と同様に生活苦に直結することや、市町が混乱を招かないよう、自己負担割合の見直しに当たっては慎重に検討する必要があります。

⑥ 但馬空港の管理・運営

次に、但馬空港の管理・運営についてです。
同空港は、平成6年の開港以来、搭乗率の向上に向けて県は地元と一体となって様々な取り組みをなされてきたところです。

しかしその一方で、北近畿豊岡自動車道が豊岡市まで開通した場合は、大阪まで2 時間20 分と所要時間が大幅に短縮され、飛行機の優位性が薄れるため、今後ますます他の公共交通機関との競争が激しくなることが予想されます。

来年度中に設置予定の、同空港の利活用のあり方を検討する第三者委員会では、事業の費用対効果等の精査はもちろんのこと、東京直行便誘致の見通しが立たない中、地元の総意としての同空港の必要性についてゼロベースの視点に立って、同空港の存廃も踏まえ議論すべきと考えます。

6.投資事業

① 投資事業全般

投資事業については、これまでから主張しておりますとおり、今後の人口減少を見据え、防災・減災といった緊急性の高い事業や県民の命を守る事業に限定するなど、必要性と優先順位を定め、真に必要な投資事業に限定して実施するべきものであります。

また、業者の選定にあたっては、その過程における透明性を高め、県民に対して誤解を招かないよう配慮する必要があります。

② 県営住宅

次に投資事業のうち、県営住宅については、家賃減免の見直しについて住宅審議会で検討されるとのことですが、家賃減免によって新たな滞納が発生しないよう、減免額が減少し、家賃負担が増える世帯に対しては、十分に周知することが必要です。

なお、大幅に家賃負担が増加する世帯に対しては、経過措置を設けるなど、一定の措置を講ずる必要があります。

7.公的施設

次は、公的施設です。
県が所有する施設が老朽化し大規模改修を行う場合、財政運営に大きく影響するため、毎年の修繕費用の平準化と総コストの低減を図るアセットマネジメントの手法を取り入れるなど、長期的な視点に立ち、計画的・効率的な老朽化対策を全施設へ速やかに導入する必要があります。

また、県有施設の有効活用等の取り組みを一元的に進めていくに当たっては、その効果を十分見極めた上で実施する必要があります。

8.職員住宅

次は、福利厚生としての職員住宅のあり方についてです。
福利厚生を目的としての職員住宅を廃止するとありますが、その設置意義については、第2次行革プランにおいて、「職員・教職員が安心して、かつ、意欲を持って公務に従事できるよう、地方公務員法第42 条の規定に基づく福利厚生事業は県として実施する。」としているところであります。

入居率や老朽化は考慮し、年度計画の進捗等、現実に合わせた対応は是としますが、行革が進み、職員の福利厚生事業が大きく後退する中で、さらに職員のモチベーションを下げないよう、事業としての目的はセーフティーネットとしても残すべきと考えます。

9.公社等

次に、公社等についてであります。

①(株)夢舞台

まず、一つ目は、株式会社夢舞台についてです。
ウエスティンホテル淡路の開設から10 年以上が経過している現在、ホテル経営は集客力不足から厳しい状況が続いているものの、単年度収支では辛うじて黒字を確保しています。

しかし、県がホテルを買い上げて夢舞台に貸し付けるリースバック方式を採用していることから、経年に伴うホテル設備の更新や大規模修繕などの修繕費は、所有者である県の負担となっており、夢舞台の収支には計上されていません。修繕費は今後さらに増えることが予想され、そうなれば県財政に及ぼす影響は少なくありません。

県においては賃料に修繕費を上乗せするなど、ホテルとの役割分担の見直しを検討すべきです。

②(公財) 兵庫丹波の森協会

次は、公益財団法人兵庫丹波の森協会です。
「丹波の森公苑」や「ささやまの森公園」など丹波地域の4施設の管理・運営を主な事業としている丹波の森協会は、事業収入の大部分を県の財政支出で賄っていることから、施設の運営に当たっては、丹波市及び篠山市、そして地域住民の参画のもと、自主的な運営を行っていくべきです。

さらに、地域の自主的な運営に委ねる観点から、丹波県民局の業務との役割を明確にするためにも、派遣している県職員の引き揚げを行うべきと考えます。

③(公財) ひょうご産業活性化センター

三つ目は、公益財団法人ひょうご産業活性化センターです。
中小企業に対する支援については、国、県、市をはじめ中小企業基盤整備機構やJETRO( 日本貿易振興機構) など各種団体においても多種多様に取り組まれています。

このことから、同センターにおいて取り組む、企業の海外進出支援などの類似事業については、他の支援機関との共同処理や事務委託などを進め、事務の効率化と県派遣職員の削減など組織体制の見直しを図るべきと考えます。

10. まとめ

県民の生活と生命に直結する医療・福祉、教育、雇用、治安など、行革の対象となった各分野は、一律削減の対象にはなじまなないというのが、我が民主党・県民連合の一貫した主張です。

そのためには、限られた財源の中、優先順位を見極め、より徹底した「選択」と「集中」を行うことが必要です。

今回で、第3次の新行革プランとなりますが、プランの目標とする、「兵庫の未来を拓く、持続可能な行財政構造の確立」には、県民の理解がなければ達成できません。
厳しい兵庫県の行財政環境の中で、県民に説明責任を果たし、県民の理解を得て、活力にあふれ、豊かさが実感できる兵庫の実現に向けた改革としていただくことを強く要望して、民主党・県民連合としての意見開陳とします。