予算特別委員会質問(財政状況)
平成26年3月4日(月)
3年目の総点検の中で私も委員の一人として議論をしてきたなかで、前進した手ごたえを感じていたのですが、俯瞰してみると、あまりもの厳しい財政状況に無力感のようなものを感じざるを得ません。ただ、厳しい課題だからこそ、しっかりと取り組んでいくことが必要だと決意を新たにし、質問を行います。
さて、財源不足を解消するためには、歳入の増加、歳出の削減、将来世代への負担の転嫁という三択があるわけです。本県に限った話ではありませんが、負担増を求めれば、反対の声が起き、場合によっては政権が倒れる。歳出の削減を求めれば、それはそれで反対の声が上がり、前に進まない。結局は、声を上げることができない将来世代に対する負担の転嫁が往々にして行われがちです。経済学者のコトリフはこの状況を「財政的な幼児虐待」という表現で、現代の財政民主主義の問題点を指摘しています。
持続可能性とは、将来世代の選択肢を奪うことなく、現世代の利益をいかに最大化していくかということであり、そのような観点からすると、依然として「持続可能な行財政体質の構築」という点まで至っていません。
従来から言われているように、行財政改革には県民の理解と協力、納得と支援が必要なのは言うまでもありませんが、その前提となるのは、「わかりやすく」県民に財政状況を開示していくことであり、誠実に財政状況に向き合うことです。そのような視点で、今回の質問の中では、県の財政状況を明らかにし、今まで以上にわかりやすく明らかにしていくのをどうすればいいのかということも意識しながら議論をすすめていきたいと思います。
1.財政フレーム上のリスクについて
(1) 税収見込みについて(財政課)
今回の財政フレームの中で、最も気になったのはこの5年間で経済成長し続け、税収が増加し続けるという見込みをしていることであります。本県では、財政フレームの前提として、内閣府のシナリオ「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」を採用されていますが、平成30年度の税収見込みは、消費税増収部分を除き7,815億円となっており、人口が減少していく中で果たしてそれだけの税収が確保できるのか不安になります。
もちろん、県が自ら景気動向を算定するわけにもいかず、一定の基準に基づいて算定しなければならないのは理解しますが、人口減少社会を迎え、今後納税義務者が減少していくことを考えると、国の「経済再生ケース」を信じるのはあまりにもリスクが高いと考えます。
たとえば、岡山県では「中長期の経済財政に関する試算(H26.1.20内閣府)」の名目経済成長率(参考ケース)の2分の1の成長率で試算しています。
岡山県の資料によると「国の試算は、積極的な成長を見込む「経済再生ケース」と、それよりも穏やかな成長を見込む「参考ケース」の2つのシナリオが提示されましたが、近年の名目経済成長率は直近の国の見通し(複数示されている場合はより慎重なシナリオのもの)を下回っており、より慎重な財政運営を図る観点から、「参考ケース」の2分の1に設定している」とのことであります。
従来の本県の財政フレームも、緩やかな経済成長を前提にしていたと認識していますが本県で税収見込みをあえて「経済再生ケース」を採用するに至った経緯、基本的な考え方について当局のお考えをお聞かせ下さい。
(2)税収見込みが下回ったときの対応について(財政課)
国が示している将来人口推計では、2015年から2020年の5年間で、人口は2%の減少にとどまっていますが、15歳から64歳の人口は約4%減少する見込みです。
このような状況の中、全国で最も財政状況の悪い本県が、他府県より楽観的なシナリオを用意するということには違和感を持ちます。
将来推計は難しく何らかの基準が必要であったとしても、平成20年度の「新行革プラン」で当初示された平成20年度-25年度の県税等は6年間で、5兆3,440億円の見込みでしたが、リーマンショック等の影響もあり、4兆0225億円と大幅に減少したという現実があります。それだけ、経済という私たちの力では制御しきれないものに依拠する税収見込みは非常に困難だということです。
仮に、財政調整基金が十分にあれば、税収等の変動にも対応できると考えますが、本県ではそれも現時点では臨むこともできません。
そこで、税収見込みが下回ったときの対応について、当局のお考えをお聞かせください。
2.財政運営における目標について(財政課)
県債管理基金の活用は、本年度予算で170億円、今後3年間で350億円を取り崩す予定となっています。ただ、平成30年度には収支均衡になる見込みであり、県債管理基金の活用は平成29年度以降行われない予定となっており、このフレームを何とか維持していただきたいと思っています。
さて、そこで改めて第3次行革プランの中で示された目標を見てみると、県債管理基金の活用は平成30年度時点で、年間のルール積立額の1/3となっています。ただ、平成30年度に収支均衡を果たすという大目標を忠実に守るのであれば、そもそも、平成30年度の県債管理基金活用額を1/3以下と想定していることには意味はなく、当然「0」でなければなりませんし、平成29年度にはそもそも県債管理基金を活用する予定がないのであれば、実質的に目標を上方修正することも検討するべきです。
また、平成30年度積立不足率の目標39%に関しても同様で、このフレームで行けば、平成29年度に達成する見込みとなっています。
私がなぜこのようなことを指摘するかというと、財政運営における県債管理基金の不足額について、39%以下という目標さえ達成すればよいという考え方に立つと、現在の財源対策に加え、さらに約750億円の取り崩しが可能と判断されかねず、財政規律のタガが緩んでしまうことを懸念しているからです。もちろん、将来負担比率や実質公債費比率等に影響があるので、全額そのまま活用できるという計算にはならないと思いますが、そもそも、このような基金の活用は財政運営上問題であることを踏まえると、現時点の見込みを下回ることがあってはなりません。
これは、将来負担比率をはじめ他の指標にも言えます。財政フレームの範囲内、目標はあくまで議会も議決した最低限守るべき目標であって、それを上回る思いが必要です。
そこで、県債管理基金の活用に関する当局のお考えと今後の方針を含め、財政運営の目標達成に向けた、決意をお聞かせください。
3.財源対策債の評価と将来への影響について(財政課)
退職手当債、ならびに行革推進債はともに、定数の削減、人件費の削減、その他行政改革によって償還財源が生み出された場合のみ同意される地方債です。
行革特別委員会の議論の中でも、厳しい財政状況の中、人件費総額の抑制はやむを得ないものの、平成19年度比30%削減という定数や給与抑制措置の見直し、会派を問わず一定の見直しを提起する声もありましたが、定数に関しては退職手当債の償還財源、人件費の削減や各種行革の取り組みは、行革債の償還財源となっています。
ただ、本来短期的な取り組みであるべき財源手当債が長期化してきたことにより、本来の財源効果が失われているのではないかと危惧しています。実際に行革債を制度当初から発行し続けているのは都道府県では本県を含め12道府県しかなく、このような長期的な財源対策はより後年度の財政負担を大きくしたのではないでしょうか? たとえば、退職手当債に関してみると、今年度も、約170億円の元金を返還する一方で200億円発行しており過去の財政運営のツケがまさに利子を含めて後年度の財政負担を強いている状況だと言えます。
もちろん、阪神淡路大震災からの復興経費という本県独自の問題を抱え、やむを得なかった部分もありますが、平成27年度を最後に退職手当債の10年間の特例措置も終わり、財政フレーム上行革債の発行も29年度を最後に終えるわけですから、先が見えてきた今まさにその評価をするべきだと考えます。
具体的には、財源対策債発行により将来負担と歳出削減の効果についてどのように把握をされていますでしょうか?
退職手当債、行革債発行総額ならびに、利払いを含めた影響、行革における将来の影響について、当局のお考えをお聞かせください。
4.「借金」の内容を分かりやすく県民に伝えることについて(財政課)
今年度、一般会計における公債費、元利償還金は2897億円となっています。しかし、この数字だけでは、何のためのために使ったものなか。全く分かりません。
私は、この元利償還に対して、「もう過去のことだから仕方がない」とするのではなく、より詳しく説明責任を果たすべきだと考えます。
たとえば、クレジットカードの明細を思い出していただきたいのですが、いつ、どこで、どんな買い物をしているのかということについて、明細が発行され、それに対して納得したうえで、所定の口座から引き落とされるわけです。
そこで、公債費の内訳を具体的に「いつ、どのような内容であったのか」を県民に分かりやすく広報する。また、県債を発行する際には利子も含めてどのくらいの期間で総額どのくらいの事業になるという見込みを広報するということが必要だと考えますが、いかがですか?
また、現在ある県債残高の中には、後年度100%交付税措置される臨時財政対策債のようなものから、退職手当債や行革債のように全く交付税措置をされないものまで様々です。
同じ県債として表示するのではなく、それぞれの内訳も明らかにするべきだと考えますがいかがでしょうか?
5.通年予算と補正予算の関連について(財政課)
この議会で本予算案と同時に提出された平成25年度補正予算(案)は3月3日可決成立をしました。本県の財政運営の基本は「通年予算」という形をとっており、2月の緊急経済対策などの大型補正予算以外は、仮に当初予算と現状がかい離したり、新たな事業が必要であったとしても、2月定例会で一括して補正予算(案)として上程するという方針とお聞きしました。実際、本定例会でも9月に井戸知事が記者会見で「緊急的に措置するべき事業」として、警察署に女性用シャワールームを設置することやレディースサポート交番の女性用の仮眠室の設置することを明らかにし、既定予算の範囲で行い、2月議会の補正予算で対応する旨を表明され、すでに多くの警察署では設置済みであります。
事業内容に関して異議はなく大変ありがたいことなのですが、補正予算案を審議する前に、すでに工事が進んでいるという状況は、法律的にはたとえ執行権の範囲であったとしても、民主主義のプロセスとしては問題を感じざるを得ません。
一方、県有環境林特別会計に関しては、先行取得した際に発行した債務が満期を迎えるため、当初予算段階から計画的に土地を購入しなければならないことは明らかだと思いますが、2月議会の補正に出てきており、当初予算には出てきていない。このあたりについて、どのような整理をされているのでしょうかお伺いいたします。
6.サンセット型の行革の推進について(財政課)
今回の見直しにあたっては、開始後3年の事業を特に見直すなど事務事業の見直しが行われました。平成25年度の事務事業評価によると、県の事業の多くが依然として昭和63年以前から行われており、本来ゼロベースで見直すというのであれば、長い間行われている事業こそ、しっかりと見直すべきだということを指摘させていただきました。
今年度予算においては、スクラップ&ビルドの観点から、205事業が見直されています。
しかし、なお厳しい財政状況を考えるならば、今後行う新規事業には、目標と終期を明確に設定していくことが必要ですが、いかがでしょうか?
7.県と市町の共同事務について(新行政課・財政課)
効率的な行政を行うという観点からは、いかに県と市町が共同事務を行うかが一つの大きな要素といえます。
たとえば、道路管理、特に除雪作業等は国道・県道・市道・町道で取り組みが異なると大きな弊害が生まれることは、先だって東日本を襲った大雪で生じたとも聞いている。
そこで、県と市町において協同事務を行うことが有用だと考えますが、どの事業がどのように取り組まれ、今後どのような取り組みを推進していくのか、当局のお考えをお聞かせください。