議会の動き

向山 好一議員が質問(予算審査・総括審査)

平成31年度予算特別委員会 質問要旨(総括審査)

日 時:平成31年3月13日(水)

質問者:向山 好一 委員

1 新たな県政の推進について

平成31年度当初予算は、平成20年度からの11年間の行財政構造改革の取組により収支均衡を達成し、新たな行財政運営の枠組みに基づき編成される初めての予算となる。今後も、財源対策債や震災関連県債の償還は続くことから、使える予算が大幅に増えることにはならないが、新たな行財政運営方針に基づき、収支均衡をベースとした上で、未来のある積極的な施策の推進が求められているのではないかと考えている。

県では人口減少や少子高齢化に伴い、安全安心な基盤の確保や地域活力の創出、兵庫人材の活躍推進、交流・環流を生む五国の魅力向上、自立の基盤づくりなど様々な分野に対応していく必要がある。今回の予算特別委員会においても、自主防災組織の活性化や水素社会の推進、ツーリズム振興など様々な課題や提言がなされたところである。

現状、様々な課題がある中で、兵庫県が今後も活力に満ちた地域であり続けるためには、地域創生戦略や兵庫2030年の展望、21世紀兵庫長期ビジョンを踏まえた「すこやか兵庫」の実現が不可欠と考える。

知事は今定例会の冒頭で「150年後も、子どもたちから、『兵庫は希望に満ちあふれている』と言ってもらえるよう、『すこやか兵庫』を実現し、次の世代につないでいかなければならない」と言われたが、これまでの成果を踏まえながら、ポスト150年のスタートにあたり、元気兵庫の実現に向けて、今後どのような県政推進に取り組んでいこうとされているのか、お伺いする。

2 自衛官募集への自治体協力について

兵庫県では、自衛官の募集にあたり、ホームページに採用情報を載せたり、問い合わせ先である自衛隊兵庫地方協力本部のリンクを貼るなど、これまでも募集に当たって協力を行ってきている。

しかしながら、「都道府県の6割以上が自衛隊の新規隊員募集への協力を拒否している」と発言された方がおられる。その後、都道府県を市町村に訂正されたようだが、これが本当なら大問題である。自衛隊法第97条には、「自衛官募集の一部を自治体が行う」と明記され、同法施行令第120条にもとづき「必要な報告、資料を求めることができる」となっているからである。

この際、自衛隊からの協力依頼に対し、兵庫県の各自治体が行っている、住民基本台帳から抽出した適齢者情報の電子データや紙媒体での提供状況、また、住民基本台帳の閲覧状況、これらの対応への拒否等の状況について伺いたい。

3 悪質クレーム対策について

いま徐々に社会問題化しているものに「悪質クレーム」がある。飲食業・販売サービス業、金融、旅行業など、もちろん行政を含めてあらゆるお客様と接する業務の最中に、威嚇・脅迫、長時間拘束、土下座の強要、セクハラ行為、SNSでの誹謗中傷など「業務上受忍すべき範囲を超えて精神的・身体的に苦痛を与えられる行為」が最近増加の一途を辿っている。

ある民間団体が内部調査をしたところ、回答の7割以上がこの「悪質クレーム」を体験し大きな精神的ストレスを感じ、その1%が精神疾患になったということであった。このことはNHKをはじめマスメディアで取り上げられ社会的に注目されている。ごく一部の消費者による悪質クレームは、単に従業員だけの問題ではなく、企業にとっても販売機会のロス、生産性の低下、企業イメージの低下などに繋がっている。

現在開催されている通常国会でも、国民民主党から「悪質クレーム対策推進法」を国会に提出し、その議論が始まろうとしている。

兵庫県では、消費者教育や消費者トラブルなど、消費者を守る取組については消費生活総合センター等でしっかりと対応されているが、このような企業側に立った消費者の悪質クレームについては対策がとられていないのではないか。

一度、県下でその対策に悩んでいる企業や従業員はどの程度存在するのか、悪質クレームの実態を調査されてはいかがと思うが御見解を伺う。

4 観光振興対策の強化について

産業労働部への部局別審査の際に、特にインバウンドにおいて兵庫県が大阪や京都に大きく水を開けられている原因として、戦略とマーケティング力の不足を指摘して、それを推進する機関である「ひょうごツーリズム協会」に実績の責任を担い得る観光振興のプロが存在しないことを指摘した。

お隣の大阪府では、府と市の観光振興外郭団体を民間団体と統合し「大阪観光局」を設立し、プロをトップに据え大型のイベント誘致などの成果を挙げながら、この7年でインバウンドを7倍に伸ばしている。神戸市でも一年前に官民統合による「神戸観光局」を設立し、観光誘致のための宣伝や映画等のロケ誘致、MICE誘致事業などを行い、事業主体として取り組んでいる。

オール兵庫で関西に来るインバウンド観光客を取り込んだり、MICEを誘致するためにも、この際、「神戸観光局」と「ひょうごツーリズム協会」を統合し、1つの戦略とコンセプトで攻勢に打って出るべきではないか。ご所見を伺う。

5 北神急行電鉄の市営化について

先日の部局別審査において北神急行電鉄の市営化に向けて県としての支援策について質問した際には、具体的支援策に対するコメントはなかったが、久元市長は北神急行電鉄の市営化にあたり、「兵庫県にも支援を要請したい」と言われているので、井戸知事のところにも久元市長からそれなりの話があったのではないかと思う。

確かに公共団体が公営企業に財政的支援をすることは制度上も難しいことは理解するが、これまで北神急行電鉄には県市協調して支援をしてきた経緯と実績がある。

国交省も民間から公営移管による市民サービスの向上という新たな取り組みに興味と期待をもっていると聞いており、国も巻き込んで新たな枠組みを検討してもよいのではないか。

トップ同士、智恵を絞って何らかのスキームを作れないだろうか、井戸知事にご見解を伺う。

6 大阪湾岸道路西伸部長大橋について

悲願の大阪湾岸道路西伸部が昨年暮れに着工した。早期の完成を望んでいるが、1つ懸念が出てきている。それは、六甲アイランド~ポートアイランド間とポートアイランド~和田岬間に架かる2つの長大橋の高さのことである。

この2つの橋が完成したら神戸港はコンテナターミナルを除き、橋によって完全に蓋を閉められることになる。設計上では、東側の新港航路は最大の高さが65.7m、西側の神戸西航路のほうが59.4m、この高さならクイーンメリー2の62mもかろうじてクリアーできるし大型クルーズ船も橋をくぐって新港突堤にあるターミナルに寄港できると安心していた。

ところが、3月3日の神戸新聞の朝刊の記事を見て、本当に大丈夫なのかと懸念が生まれてきた。その記事には、今後の大型客船誘致を進めるうえで第3・第4突堤間の一部を埋め立ててクルーズ船乗客を乗せるバスの待機場とすることと併せて、「22万トン級も安心して寄港して貰える環境を整える」とのことであった。

現在、神戸港に寄港している最大級のクルーズ船は「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」の17万トンクラスで高さが62.5mである。これならばなんとかクリアーできる。しかし、現在就航している22万トンクラスの大型客船は「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」の高さ約65m、同じように「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」も約65m、だいたい22万トンクラスとなると高さが60m以上になり65m以下でも満潮時には寄港できなくなるのではないか。

豪華客船の世界トレンドは、客単価を下げるため年々大型化しており、さらなる大型化が予想される。一度架かった橋は変えることができないことを考えると、このままでいいのかと不安になる。

また、災害対策の面でも不安がある。昨年の台風21号の襲来時、関空連絡橋に漂流船がぶつかり一大事になった。兵庫県でも鳴尾橋に同じように漂流船が当たり橋げたがずれて、今なお片側通行である。一般的には、原因者負担の対象にはなるが、桁外れの金額になるので回収は困難と思われる。この教訓を活かし、せめて橋脚辺りには防護壁を作るべきではないか。

そこで、県においても、今後の観光振興や災害対策を見据えて、しっかりと国へ働きかける必要があると思うが、ご見解を伺いたい。

7 基礎学力を確実に身につける教育の推進について

我が国では、寺子屋で教育が行われていた時代から、いわゆる「読み書き算盤」を子どもたちの教育で大切にしてきた。文章を読むこと、内容を理解して書くこと、および計算すること、これは今で言うところの基礎学力であると思う。

その結果、過去から国民の識字率は高く、外国人も驚くほどだったという。これが列強来訪時にも日本人の文化度が高く評価され、日本は植民地化を免れた要因の1つであるのも事実である。また、高度な数学を扱っていたということがわかる算額が各地の神社で奉納されていたことからも、総じて日本人には勤勉を重視する伝統と文化が培われているのだろう。

ところで、全国学力・学習状況調査は、基礎学力を測るものといっても差し支えないのではないかと思っている。全国の結果が発表されると、ランキング1位の県などが大きく報道されているが、1位から47位まで数%程度の開きしかない。その中にあって、兵庫県は常に県の平均正解率が全国と比較して、いずれも±5%の範囲内にあり、基礎学力を身につけるための教育がなされていると思う。一世を風靡した百マス計算を考案した岸本裕史さんや、それを世に広めた陰山英男さんはいずれも本県出身であり、そのことからも本県は基礎学力の重要さをより理解している県であるべきだと思う。

しかし、最近の全国的な風潮として、英語を中心とした外国語教育やICT等の情報技術の発達に伴いプログラミング教育などが流行になっている風潮がある。その重要さを否定するものではないが、まずは基礎教育があってこそのものである。

そこで、基礎学力を確実に身につける教育の推進について、今後どう取り組んでいこうと考えているのか所見を伺う。

8 政府認定拉致被害者の対応について

この定例県議会の一般質問で、日本海沿岸部の木造船等の漂着事案への対応に関する件や、健康福祉部への審査の時に人権施策の推進にあたり、兵庫県の拉致問題への意気込みに対する質問があった。

それに関連して伺いたいのであるが、先日、共同通信が神戸市東灘区の住民である「田中実さんと、同じラーメン店で働いていて翌年失踪した金田龍光さんが平壌で生存しているとの情報を北朝鮮は日本政府に伝えている」との報道がなされたが、県警はどのように認識しているのか。

また、韓国籍の金田龍光さんについて、支援法上国籍条項があるために拉致認定はできないにしても警察として拉致と断定することはできないのか。同様な例として既に高敬美(コ キョミン)・高剛(コ ガン)姉弟は警察庁が拉致被害者と断定していることを鑑みると断定できるのではないか。ご所見を伺う。