議会の動き

◆23年6月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  中田 英一 議員
一般質問  小西ひろのり 議員、北上 あきひと 議員

代表質問

(中田 英一 議員)[発言方式:分割]

1 観光政策としてのひょうごフィールドパビリオンの推進について
(1)プログラム内容の充実について
(2)経済効果をもたらす仕組みの強化について
2 企業誘致戦略について
3 次世代に向けた農畜産業の振興について
4 障害者の社会進出と自立に向けた取り組みについて
5 持続可能な道路・河川の管理について
6 部活動の地域移行について

質問全文

質 問 日:令和5年6月12日(月)

質 問 者:中田 英一 議員

質問方式:分割【1(1)(2)、2~3、4、5~6】

1 観光政策としてのひょうごフィールドパビリオンの推進について

(1)プログラム内容の充実について

ひょうごフィールドパビリオンは、大阪・関西万博に向けて、ここ数年における兵庫県観光政策の目玉と理解している。日本各地から2470万人、海外から350万人と予測されている観光客を取り込み、多くのファンを作ることによって、万博以降の観光を大きく盛り上げていくことが期待されている。

一方で、他府県においても同様の狙いがたてられ厳しい競争が予測される。すなわち、この失敗は大きく今後の観光にビハインドをもたらす危険もある。2025年4月13日の開幕まで2年を切ったこの負けられない戦いに臨む覚悟はできているか。

この政策が成功と言えるためには、①多くの来場者を前提として②彼らが高い満足度を得ることと③地域への経済効果がしっかりともたらされることが重要であると考える。

初期に多くの来場者(①)を呼び込むためには確かに広報も重要だが、内容の充実が伴わなければ満足度(②)が低くなり、多くの観光客が参考にする「口コミ」、すなわち経験者等による評価が得られず、中長期的に見て多くの来場者(①)やファンを獲得することも難しくなる。

(株)JTB総合研究所は、「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019)」の調査研究において、「国内旅行を計画する段階で参考にした情報源」で1位、32.7%が「家族・友人・知人」と回答し、さらに増加傾向にあるとしている。

また、観光庁による訪日外国人消費動向調査の2022年データでも、「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」の回答で、1位が「日本在住の親族・知人」で22.8%、2位が「SNS」で21.9%、3位が「動画サイト」で21.4%、4位が「個人ブログ」で18.7%と、上位4つをいわゆる「口コミ」に関連するものが独占している。

つまり継続的に観光客を呼び込むためには口コミに直結する体験者個々の満足度が非常に重要で、プログラム個々の内容の充実が不可欠といえる。

しかし、先月26日に新たに17のプログラムが認定され、合計130のプログラムとなっているが、ホームページに掲載されている情報以外の内容は公表されていない。いくつかのプログラムについて聞き取りを行ったが、あるプログラムではタイトルや方向性を提出しただけで中身はほとんど決まっていないというものもあった。

また、第二次認定で城崎温泉やスキー等を満喫できる神鍋高原がやっと追加されたが、他にも姫路城、有馬温泉、竹田城、甲子園球場などは兵庫県のなかでも既に人気の集客スポットとなっているにもかかわらず、ノミネートされていないものが目につく。

これまで地元団体や市町による手上げ方式(公募)できているが、フィールドパビリオン群を全体として兵庫の魅力を発信する機会だとすれば、事業主体の県として、こうした人気が高く内容の充実したコンテンツに対してしっかりと働きかけを行ってプログラムにしていくという動きも必要ではないか。

本年度予算だけで見れば、情報発信等に要する経費の比重が大きく、来場者の満足度を得るための、ひいては兵庫のファンづくりにつながる内容の充実に不安が残るようにも感じられるが、このような視点に立ったプログラムの検討状況と、今後の展開について、当局の所見を伺う。

(2)経済効果をもたらす仕組みの強化について

2023年2月に定められた「2025年大阪・関西万博に向けた兵庫のアクションプラン」では、ひょうごフィールドパビリオンによる観光消費額の目標数値は、フィールドパビリオンプログラム認定後に設定予定とあるが、認定されたプログラムを見ても当該地域に十分な経済効果がもたらされるのかよくわからないものもあるように感じる。

先日、2025年日本国際博覧会協会機運醸成局の堺井局長にお話を聞く機会があったが、万博全体の取り組みで地方に観光客が流れる仕組みとして、ツアーを募集して広報する取り組みが今月にもスタートすると聞いている。堺井氏のイメージでは「プレミアムツアー」として一人100万円といった比較的高額なツアーの参加を募り、地域の素晴らしさを存分に堪能できるようなプログラムを提供して欲しいとのことであった。非常に共感するところである。

県では、フィールドパビリオンとは別に観光政策として「兵庫デスティネイションキャンペーン・テロワール旅」を先行実施しているが、これとフィールドパビリオンや、まだプログラムとして認定されていない人気コンテンツと組み合わせてツアー化を進めていくような動きも必要ではないか。プログラム自体は団体や地域が個別に提案してきているので、この点と点をつなぐ役割が必要で、まさに県の担うべきポジションではないか。

万博を通じて、県へ来訪者を呼び込み、周遊してもらって、それぞれの地域にさらなる経済効果をもたらす工夫が必要だと考えるが、当局の所見を伺う。

2 企業誘致戦略について

新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などを背景に、海外からの原材料・商品等の調達難および価格の高騰が続くなか、企業の生産拠点や調達先などの国内回帰のほか、国産品への切り替えの動きが出ている。

帝国データバンクが2022年12月~2023年1月に実施した調査において、「海外調達等を行っている企業の約4社に1社が「国内回帰」または「国産回帰」を実施/検討」していると回答している。

また、日本の賃金水準が過去20年間でほとんど上昇しなかったため、経済発展に伴い賃金が上昇してきた海外の途上国と比較してもさほど高いとはいえない水準になっている。国内外を問わず、企業にとって、安くて優秀な労働力、安全性や税制優遇措置などをふくめて国内への拠点設立にメリットが出てきた。

新たな企業の立地は、厳しい経済状況の中で人口減少の課題を抱えるわが県にとって、コロナで疲弊した県内産業界に活力をもたらす拠点として期待されている。

こうした背景をもとに、兵庫県でも令和5年4月1日付けで産業立地条例の改正を行い、支援の拡充等により企業誘致を促進する方針としている。

これを進める体制としては、企業庁が産業団地を開発し企業を誘致する方法と、広く県内に設備投資を行う企業に対して条例に基づき補助金を出す産業労働部所管の動き、そしてこれをサポートする外郭団体のひょうご産業活性化センターと3つあるが、これらの体制がどのような役割分担ないし連携をとり、どのような企業に対してどのように参入を働きかけていこうと考えているのか。

改正された産業立地条例では「次世代成長産業」5分野への優遇が最も大きく、設備補助率7%、雇用補助1人あたり60万円、賃料補助は3年間2分の1、不動産取得税2分の1軽減、法人事業税は5年間2分の1軽減となっているが、全国を見渡せば、長野県では法人事業税(3年間)や不動産取得税の一部免除であったり、石川県では設備補助率20%など、優遇幅も種類もより魅力的な自治体がある。

全ては調べ切れていないが、そうしたいわば企業誘致合戦が日本中(世界中)で沸き起こる中で、兵庫県が埋没しないためには明確な戦略をもち発信することが必要である。

例えば①圧倒的に有利な条件を示し広く世界中から申し出を待ち受け選定していくという方法。②あるいは優遇条件以外の立地的な優位性をアピールした誘致、例えば我が会派からも提案した、研究拠点が集積する神戸への医療産業の集積や、関連企業が立地する防衛産業などにターゲットを絞る方法。③さらには、そもそもそうした情報を既に持っていて親近感を有している近隣に立地する企業の拡大・立て直しにともなう移転や、県出身者などゆかりのある起業家のスタートアップを狙う方法などが考えられる。

そこで、アフターコロナと呼ばれる時代における企業誘致の促進に向けた戦略と、それをどのような体制で進めていくのか、当局の所見を伺う。

3 次世代に向けた農畜産業の振興について

日本農業はこれまでも狭い耕作面積のなかで安価な海外農産物との価格競争を強いられ、耕作放棄地や担い手不足等の問題に直面してきたが、少しでも生産コストを抑えようと海外に依存していた燃油・飼料・肥料・薬剤などの資材調達において、新型コロナおよびロシアのウクライナ侵攻に伴い巻き起こった世界の物価高騰に巻き込まれ、さらに深刻な状況に追い込まれている。

この間の物価高騰については、緊急対策として政府から支援策が出ているものの、一時的なものにとどまることが予測されるうえに、そもそもの苦しい状況が打開されるものではない。

一方で、この危機から「食料安全保障」の問題がさらに大きく注目を集め、農林水産省も食料自給率の向上(=海外依存の低減)に向け方針を打ち出している。

厳しい状況の中にあっても、食料確保・環境保全に重要な役割を担う農業は今後も将来にわたって維持されるべき産業といえるが、この分野でも次世代に向けて改善していかなければならない点がある。これまでのように、ただ「安くて美味しいものを作ればよい」と言うのではなく、それは環境に配慮した持続可能なものでなければならないし、多様な価値観に適応したものでなければ、買われない=市場から見放される時代になっていくと考えられる。

例えば、農業における温暖化対策の促進である。温暖化対策の重要性に関する認識が社会的に高まる一方で、あまり知られていないが、本県耕地面積の90% 以上を占める水田(66,900ha)にはメタン生成菌が潜んでおり、稲作により発生するメタンは国内の人間活動により排出されるメタンの45%を占めている。

メタンについては、中干し期間を1週間延長させることで発生を3割抑制できることが確認され、この方法がJクレジット制度における新たな方法論として本年3月1日に認められた。

こうした温暖化対策を進め、農作物自体に環境配慮という付加価値をつけたうえで、Jクレジット制度を活用することで、農業者が新たな収入を得られる機会が生じる。

その他にも、例えば動物福祉(アニマルウェルフェア)への対応である。我が国も加盟する、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告で「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されており、世界的にはこれに則った家畜生産が望ましいとの潮流になってきている。

我が県が世界に誇る神戸ビーフの素牛となる但馬牛を育てる畜産分野では、畜舎などの家畜の飼養管理施設における換気不足がアンモニア等の有害物質により家畜の健康に影響を与えかねないことが指摘されており、現在好調な神戸ビーフの海外での売れ行きも、こうした潮流に対応できなければ将来的に市場から締め出されてしまうかもしれない。

兵庫県はSDGs未来都市の認定をうけたが、農業に付加価値をつけ、国際的な動向や消費者の多様なニーズに対応していくためには、苦しい時であってもこうした次世代に向けて魅力を高める取り組みを進めるための検討、支援を行っていくことが必要ではないかと考えるが、当局の所見を伺う。

4 障害者の社会進出と自立に向けた取り組みについて

障害のある人が障害のない人と同じように社会参加することを表す”障害者の自立”という考え方は、第二次世界大戦後の北欧から始まったノーマライゼーションの思想の普及とともに進んできた。

厚生労働省による障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針の基本的理念の1つめに「障害者等の自己決定の尊重と意思決定の支援」と定められているように、この自立とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」ではなく、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」を意味し、誰も一人では生きていくことのできないこの世界で、支え合い・誰ひとり取り残さない社会を目指すことを示している。

東京都江東区が令和4年に実施した障害者実態調査の結果によれば、「希望する暮らしをするために必要なこと」において、家賃が低額な住宅21.9%、医療やリハビリテーションの充実17%に次いで、14.4%の方が「働く場所の確保」と回答している。

障害者の就労については、兵庫県でも進めるSDGs8番目の開発目標においても、「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する」という一文が記されており、先日SDGs未来都市に選定され、ひょうご産業SDGs認証事業を展開する兵庫県では率先して取り組まなければならない課題である。

また、世界人口における障害者の割合は15%、約10億人で、その家族や友人など、近しいところに障害者がいる人は約50%おり、その購買力は8兆ドルとも言われているが、その大きな労働力やマーケットはあまり顧みられておらずここには大きな可能性があるとも考えられる。

多様性に富んだ豊かな兵庫県の実現に向けて、障害者の就労の拡大によるさらなる障害者の社会進出と自立に向けた取り組みや支援策について、当局の所見を伺う。

5 持続可能な道路・河川の管理について

兵庫県における県管理道路の総延長は4,840km、県管轄河川は3,311kmとなっており、2022年の国交省データによれば道路総延長、河川総延長ともに全国第5位と国内トップクラスの規模を誇る。それだけ豊かで広大な県土があるということであり、私たちは多くの利益を享受しているが、県民の生活や自然環境に欠かせない機能を保全するため、道路の舗装や、河川堤防などの維持管理に加えて、道路・河川わきの除草など多岐にわたる行政負担を負っており、その維持管理にかかる県単独予算は年間約150億円に及ぶ。

阪神・淡路大震災より財政が逼迫する中で、その膨大なインフラを維持すべく懸命な努力をされてきたが、予算は十分といえず、各所で草刈り回数の減少、舗装修繕の遅れ、河川の土砂堆積箇所が増加する傾向など地元からの心配や要望の声を聞く。

今後さらに人口減少が進み、県内の人口は2050年には400万人強、すなわち現状の75%程度になると予測されているが、単純に予算が75%になるとした場合に道路・河川が大きな支障の無い範囲で維持できるのか疑問である。

令和4年に改訂された兵庫県公共施設等総合管理計画の中でも、土木インフラについて「総ストック量を減量して維持管理費の削減を図るため、社会情勢や周辺土地利用の変化などから必要性が低下した施設や、機能集約により維持管理を効率化できる施設は「整理・統廃合」を検討し、利用者と合意形成を図った上で実施」するとあるが、道路に関しては県民生活を支え、生活の質の向上、県内産業の振興や県内外の交流を促す重要な基盤であることや、これまでも一部の歩道橋の削減にとどまっていることからも、実際に整理・統廃合することは困難であると感じるし、河川に関しては物理的には不可能であると考える。

また、知事も期待される「空飛ぶ車」が普及すれば、そもそも地面にアスファルトを敷いたような道路は不要になるという未来も十分あり得るかもしれないが、少なくとも20年30年では到底できないだろうし、新たに空の道路を整備する費用が必要になることも予想される。

そうだとすれば、管理コストの削減について、ありとあらゆる手法を検討し、ダイナミックに進めていかなければ到底追いつかないのではないか。

これまでも、県民のボランティア参加によるアドプト制度や河川クリーン作戦として、市町が協力してくれる場合に共同事業で河川の除草・美化を行っているが、さらに踏み込んで、現在は公共事業として登録事業者に委託している草刈り業務を、地域の団体等に有償で委託することで費用を抑えたりする方法なども検討する余地があるのではないか。

重要な社会基盤である県管理道路・河川の未来を見据えて、持続可能な維持管理を目指していく必要があると考えるが、当局の所見を伺う。

6 部活動の地域移行について

スポーツ庁と文化庁は、2022年12月に策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」において、2023年度から25年度の3年間を「改革推進期間」と位置づけ、部活動改革を進めるとし、これを受け本県でも本年度から南あわじ市と播磨町で部活動地域移行の取り組みを開始された。

この取り組みは、近年の少子化により想定されている学校部活動の維持困難性を回避するための手立ての一面があり、多忙を極める教員の働き方改革にも資するという点で異論はないが、教育の減退につながるのではないかとの観点から質問する。

そもそもこの「地域移行」とは、正確には「部活動を廃止して地域の民間クラブに移行させる」というものである。

部活動は、これまで公立の中学校・高校では教員が実質的に無償で担い、全ての生徒がスポーツや文化活動に触れる機会を得ることのできた活動であり、中学校・高等学校の学習指導要領には「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資する」ものと、その教育的意義が示されている。

部活動が廃止され民間クラブということになると、練習場所への移動や月謝・交通費の負担が生徒・保護者に生じ、通えない・通わない、すなわちスポーツや文化活動に携われない生徒が出てくる恐れがある。

2017年の全国学力・学習状況調査によれば、兵庫県の中学生部活参加率は88.7%。仮に地域移行によってこれが大きく低下することとなれば、生徒の成長に大きな影響が出ることが懸念される。

さらに、地域間格差が拡大する懸念もある。都市部ではボランティア指導員が豊富に集まったり、財政力のある市町の負担により無償に近い形で地域移行後の部活動が展開されたり、まとまった生徒数が見込めることから民間クラブの運営も比較的低価格で実施できたりということも想定される一方、地方部ではそうした形態が成立しないケースが多くなることも考えられる。

部活動改革は、2022年当時の末松文部科学大臣が次期学習指導要領の改訂に合わせて、部活動規定の削除を含めて見直していく考えを表明したのみで、部活動規定が残ったまま廃止を進めるような状況にあるなど、不確定要素の多い問題であるが、県として部活動の果たしてきた教育的意義をどのように評価しているのか。また、地域移行による地域間格差や負担増加による参加率の低下が起こればその意義が損なわれることから、県として手立てを講じるべきではないかと考えるが、当局の認識と対応方針について所見を伺う。

中田 英一

(選挙区:三田市)

一般質問

(小西 ひろのり 議員)[発言方式:一問一答]

1 学校業務の削減について
2 兵庫型「体験教育」について
3 インクルーシブ教育システムの推進について
4 放課後児童クラブの環境整備について
5 地域と連携した災害への対応について
6 化学物質過敏症への対応について

質問全文

質 問 日:令和5年6月13日(火)

質 問 者:小西 ひろのり議員(ひょうご県民連合)

質問形式:一問一答

1 学校業務の削減について

文科省が公表した「教員勤務実態調査(2022年度)」の結果によると、多くの教員の平日1日あたりの在校等時間が10時間近くまたはそれ以上となっており、前回調査から多少の改善はあるものの、依然として長時間勤務の実態は改善されていません。

現在、学校現場の業務は多岐にわたり、超過勤務が常態化しています。保護者対応や部活動の指導、子どもたちの生活指導が優先的に求められ、教員の本来の業務である授業準備は後回しになってしまっています。

県教委も「教職員の勤務実態調査」を実施し、その集計結果として「働きがいのある学校づくりに向けた現状と取組」が公表されました。結果から「全校種で休憩時間を十分に確保できていない」実態が明らかとなっています。休憩時間も満足に取得できず、やむを得ず業務を持ち帰らざるを得ない状態が日常化しており、休日出勤をしないと本来の業務である授業準備や教材研究にじっくりと取り組む余裕がないという状態もあると聞いています。

また、感染症法上の位置づけが2類から5類になったとはいえ、この3年間の生活が子どもたちに及ぼした影響は大きく、文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果によると、不登校の子ども、心のケアが必要な子どもの数は増えており、その対応も必要となっています。

さらには、部活動指導も教職員の多忙化の大きな要因の一つとなっています。中教審答申を受け、2020年9月に文科省が示した「学校の働き方改革をふまえた部活動改革」に加え、地域人材の協力も得て、子どもにとって望ましい部活動の実現のためにも地域移行を早急に進めていかなくてはなりません。

一人ひとりの子どもたちとじっくり向き合い、「分かる授業」「楽しい学校」を作るべき教職員が疲弊してしまっており、教職員が魅力ある職業となっていません。結果的に、年度当初からの教職員の未配置問題にもつながっているのではないでしょうか。現在、臨時的任用教職員として働いている経験豊富な人材を正規採用とし、正規採用教職員を増やすことが必要であると考えます。

これまでから長年にわたって、様々な学校業務の削減・改善策に取り組まれていますが、実質の長時間労働の是正に至っていないことについて懸念しています。学校業務の削減は喫緊の課題であり、魅力ある職場づくりの推進や、福利厚生の充実、教職員の処遇改善が教育の質を高めることにもつながるのではないでしょうか。

学校業務の削減に向けた具体策について見解をお伺いします。

2 兵庫型「体験教育」について

感染症の影響からオンラインでの会議が増えたり、SNSの発信が盛んになったりしています。また、社会全体が効率化をめざし、デジタル機器の活用が優先され、本来大切にすべき人と人との「つながり」や「信頼関係」の構築が難しい状況となってしまっています。さらには、自己責任論や「自分さえよければ」という考え方が社会に拡がっていないか、私自身、不安を抱いています。

新しいツールを利用することも便利であり、大切ではありますが、想いが一方通行になり、ものごとの本意がうまく伝わらないことも増えているのではないでしょうか。情報機器を活用することで、便利な世界になっているのかもしれませんが、改めて人と人が直接対面し、対話を重ね、そこに生まれる空気や雰囲気をお互いに共有するからこそ、信頼関係が生まれていくことがこれまでの社会の良いところでした。

中央教育審議会の答申、次期教育振興基本計画における「今後の教育政策に関する基本的な方針」では、他者を尊重し、多様な人々と協働しながら持続可能な社会を維持・発展させていくこと、日本社会に根ざしたウェルビーイングの実現が求められています。

兵庫県においては、阪神・淡路大震災や神戸市須磨区の痛ましい事件を背景に、子どもたちの豊かな心を育む目的で兵庫型「体験教育」が推進されてきました。

現在の課題として、地域との連携の難しさがあげられています。「トライやる・ウィーク」の推進においては、先の風早先生のご質問にもありましたとおり、生徒のニーズ・想いに応えた事業にするため、各市町の「トライやる・ウィーク」推進協議会のさらなる活性化を推進していただきたいです。

一方、自然学校では、宿泊施設や子どもたちの活動場所の確保に加え、実施時期や日程の調整に苦労している学校が多いことも課題としてあげられています。特に、丹波少年自然の家は、事務組合の解散にともない、今月末で施設利用者の受け入れが停止となります。これまで利用していた学校は、新しい施設を探し、そこでの活動内容をゼロから計画するとともに、アレルギーや緊急時の対応についてもこれまでとは違った環境となるため、より丁寧な事前準備が必要となってきます。今回の事情に該当する学校はもちろんですが、自然学校における子どもたちの活動の充実の観点からも県としてのさらなるサポート体制をお願いします。

そこで、現状と課題を踏まえ、兵庫県が推進する兵庫型「体験教育」の今後の方向性について見解をお伺いします。

3 インクルーシブ教育システムの推進について

現状として、「インクルーシブ」という言葉自体がまだまだ浸透していないと感じています。兵庫県は、誰もが安心して暮らすことができるユニバーサル社会の実現を掲げています。真のユニバーサル社会をめざすためには、社会や県民に対して「インクルーシブ」が意味する理念や内容について、さらなる啓発をすすめる必要があると考えます。

また、これまでの記録によりますと、本議会においても、視察や調査研究を重ねてきています。しかし、昨年9月に国連の障害者権利委員会から日本政府に勧告が出された内容は、日本という国として、そして兵庫県としてもその内容に見合った政策が行われているのでしょうか。

現状として、各市町によって「インクルーシブ教育システム」の推進方法に大きな差があると感じています。一例として、同じ学年なのに、特別支援学級に所属していることから、靴箱やロッカーが通常の学級とは別の場所になってしまっていることをはじめ、不必要な分け方が行われていたり、「ともに生き、ともに学ぶ」観点ではなく「分離別学」の観点で日常的な教育が行われていたりしているようにも感じます。

よりよい教育を進めるうえでも合理的配慮のもと、一人ひとりの個性を尊重し、誰もが自己実現に向けて生活できるための諸条件の整備を進めなくてはならないと考えます。そこで、「生きる力」を育む教育の推進と、兵庫の教育においてこれまで大切にしてきた「ともに生き、ともに学ぶ」ことを基本理念とした教育施策をさらに充実したものにしていく必要があるのではないでしょうか。

現在、兵庫県で展開されている「インクルーシブ教育システム」は、地域や保護者、学校全体でしっかりと連携したうえで推進されているのでしょうか。また、現状と課題を踏まえ、「インクルーシブ教育システム」を推進していくために、兵庫県としての今後の具体的な方向性について見解をお伺いします。

4 放課後児童クラブの環境整備について

近年、男女共同参画の観点が拡がっていることもあり、いわゆる「共働き」世帯が増えています。また、ひとり親世帯をはじめ、子育てをしながら働く保護者や、介護や疾病等の理由によって子どもの養育が難しい状況にある保護者も増えています。

子育てをしながら働く保護者にとっての不安の一つに、「子どもがひとりで留守番ができるかどうか」という点があげられます。子どもを放課後児童クラブに通わせることで、放課後の時間も充実した生活ができることを保護者は願っています。放課後の時間帯に宿題を済ませ、異学年の友だちと安心して楽しく過ごすことができる環境は、子どもにとっても、保護者にとっても重要です。子どもたちの放課後が充実した生活となること、また、安全を守るためには、児童クラブの環境整備は喫緊の課題です。

しかし、放課後児童クラブへの入所に対して「待機」状態となる事例が阪神間を中心に多くあります。また、保護者は、生活を維持するために働かなければならないのに、放課後に子どもたちが安心して過ごせる場が確保できず、仕事に影響が及んでしまっている実態もあります。

子どもが小学校1年生になり、放課後児童クラブに入所できなかったある保護者の事例があります。民間の施設で放課後に子どもが過ごせる場をなんとか見つけることができたのですが、保育所に通わせていた時と比べると開所時間が短いため、子どもが小学校に入学したことで、これまで勤めてきた仕事を辞めざるを得ない状況になってしまいました。子どもの生活時間と働き方、学童保育のあり方がうまく合わず、転職せざるを得ない方もいます。

また、児童クラブの運営に関わっている指導者からは、「保護者の利用ニーズの高まりに施設の数や条件、職員の人数が追いついていない」という声も多数あります。実際の状況や課題として、向かい合わせに配置した長机に7~8人の子どもがすしづめ状態で座って宿題をしている、宿題を終えた子どもたちが一斉に外遊びに行く際、出入口が狭いため、ケガにつながらないか不安である、通年的に指導者を募集しているが、放課後児童クラブの特性上フルタイムで勤務できる指導者の人数が少ないため、仕事として児童クラブだけでは生活が成り立たない等、大きな課題を抱えながらの運営となっています。

放課後児童クラブにおける子どもたちの生活環境整備、指導者の確保が喫緊の課題となっています。地域で子育てできる環境づくりの観点も含め、県としての今後の支援策について見解をお伺いします。

5 地域と連携した災害への対応について

今月初めに四国から近畿、東海地方にかけて発生した線状降水帯により、広い範囲で記録的な雨量を観測しました。相次ぐ河川氾濫により、現時点において愛知県では1人が亡くなり、和歌山県でも1人が亡くなり2人が行方不明となっています。6つの県で11回も線状降水帯の発生情報が出されたのは初めてのことであり、まさしく想定外の事態だったと言えます。

また、本県においては、5月6日から7日にかけて降り続いた大雨により、伊丹市の天神川の堤防が長さ約30mにわたって決壊し、周辺の住家(じゅうか)12棟が床上・床下浸水、車数台が土砂に埋もれる等の被害が発生しました。被害に遭われた方々に対しましては、心からお見舞い申し上げます。

天神川の被害については、宝塚土木事務所だけでなく、県内の他の土木事務所からも応援を送りながら、懸命の作業が行われました。知事のコメントにもありましたが、調査委員会での原因究明を踏まえた補償と、一日も早い復旧を願うばかりです。

一方、災害対応として何よりも大事なのが県民のいのちを守ることです。今回の天神川のケースでも、「この時期としては想定外の雨量だった」と発表していますが、近年のような、局地的かつ想定を上回る大雨等に備えるためには、迅速な情報伝達はもとより、それに応じて住民一人ひとりが命を守る行動に移し、それを誘導していくことが重要です。

阪神・淡路大震災以降、兵庫県においても自主防災組織の育成強化に取り組んできましたが、最近では自治会の廃止、地元行事の衰退など、地域コミュニティの希薄化への懸念も指摘されています。地域防災力の維持・向上のためには、こういった現状や課題を乗り越え、地域住民一人ひとりの自覚、また周辺住民の協力が必要不可欠となります。

地域防災力を支える上で、地域と連携した災害対応について、県としての現状と課題をどのように認識し、取組を進めていくのか、見解をお伺いします。

6 化学物質過敏症への対応について

化学物質過敏症は未解決の部分が多い疾患ですが、アレルギー性と中毒性の両方にまたがる疾患、あるいはアレルギー反応と急性・慢性中毒の症状が複雑に絡み合っている疾患であると考えられています。

実際に、柔軟剤等の強いにおいに対して頭痛やめまい等の症状を引き起こし、日常生活においても支障をきたしている方がおられます。

化学物質過敏症は、現在、アレルギー疾患対策基本法の対象疾患には入っていませんが、発症メカニズムが明確になっていないため、誰しも発症する可能性があります。これまではまったく症状がなかったのに、花粉症と同様、ある時を境に突然、発症者になることもあります。他人事ではありません。

本県では、ホームページ等で化学物質過敏症の概要説明、症状の紹介、周知するためのポスター、窓口一覧を掲載していますが、十分な対応であるとは言えません。

そこで、本県においても、県民のいのちや健康に関する重要な課題としてとらえ、相談窓口機能の充実をはじめとした、より一層の具体的な対策を求めますが、当局のご所見をお伺いします。

小西 ひろのり

(選挙区:西宮市)

(北上 あきひと 議員)[発言方式:一括]

1 頻発する特殊詐欺と「闇バイト」への対策について
2 ギャンブル等依存症対策の一層の強化について
3 社会情勢を踏まえた多様な生涯学習施策の展開について
4 不登校特例校開設などのすべての子どもたちの教育機会確保に向けた取組について
5 こども家庭センターの職員確保について
6 県道の幅員狭小及び視距困難箇所の改良について
7 ひょうご家計応援キャンペーン プレミアム付デジタル券について

質問全文

質 問 日:令和5年6月14日(水)

質 問 者:北上 あきひと議員(ひょうご県民連合)

質問形式:一括質問・一括答弁方式

1 頻発する特殊詐欺と「闇バイト」への対策について

兵庫県警の集計によると、2022年に県内で確認された詐欺被害額は約19億1,000万円、被害件数は1,074件で、ここ10年間で最多の認知件数でした。更に2023年1~4月の県内における特殊詐欺被害の認知件数が過去最悪のペースで推移しており、前年同期比51.6%増の420件、被害額は約4,400万円増の約4億6,800万円となっています。

なかでも川西警察署管内における本年1月~4月の認知件数は、前年同期比で二倍以上に増加しており、住民の不安が高まっています。県内の被害内訳を見ると、携帯電話のショートメッセージやパソコンの警告表示などを悪用した架空料金請求詐欺が168件で最も多く、次いで固定電話等にかかってくる還付金詐欺が147件という状況です。

昨年9月、県警では組織犯罪対策局に特殊詐欺特別捜査隊を設置する等、体制を拡充しました。また、特殊詐欺で現金を受け取る実行役を高額な報酬を売りにしてSNS上で募る、いわゆる闇バイト募集の投稿をAIで自動検出するシステムの導入や、有力情報の提供者に最高100万円(原則30万円以内、特に有効な情報には最高100万円)を支払う制度を新設する等、対策強化を図っています。加えて、県警OB・OG組織警友会や学生防犯ボランティアの協力を得ての街頭キャンペーンや水際対策、各地域の防犯協会等各種団体による未然防止のための啓発活動等が展開されていると認識しています。様々な手立てが講じられ、多くの県民が特殊詐欺の根絶を願っていますが、残念ながらその被害の広がりに歯止めがかかりません。

広域化・複雑化する犯罪グループの実態解明や組織上層部の摘発に向けた一層の捜査体制強化が求められています。2022年における県内の特殊詐欺被害者の年代別割合は、高齢者65歳以上が全体の81%を占めており、高齢者の被害防止策に取り組むことが益々重要です。また、未成年者を含む若者が受け子等の実行犯として犯罪に巻き込まれる事案が多発していることは極めて由々しき事態であり、狡猾な犯罪グループが様々なツールを用いて加害者に仕立て上げる手口から、子どもや若者を守らなくてはなりません。アルバイト感覚での実行犯を生まないよう、教育・啓発を更に進めるとともに、SNSでの闇バイト募集投稿への対策を徹底することを願います。

そこで、今般の特殊詐欺発生状況に鑑みて取組方策をどのように強化されるのか、当局の所見を伺います。

2 ギャンブル等依存症対策の一層の強化について

コロナ禍におけるステイホームや社会状況の先行き不透明感が人々の精神状況に影響を与え、外出せずにできる、競馬、競輪、競艇、オートレース等のギャンブルへのオンライン投票にのめり込む人は数多で、ギャンブル等依存症患者は大変増加しているとの指摘があります。また海外のインターネットサーバーへの接続が容易にできることからオンラインカジノ等の普及は著しいと聞き及びます。また先日「金融商品(FX等)への歯止めのない投資で多重債務に陥り夫婦関係が破綻しそうになっている。一度は止めようと決心したが、未だ自分自身をコントロールすることができず、家族に隠れて借金を重ねている」「何とかしたい」との相談を受けたところです。

県は2021年度にギャンブル等依存症対策推進計画を策定し、関係機関との連携による支援ネットワークの構築、神戸市と共同で設置するひょうご・こうべ依存症対策センターによる相談・支援・啓発等、ギャンブル等依存症対策についての施策を展開していると認識します。また、今年度予算には自助グループの活動への補助金が盛り込まれましたが、一部団体からは「使い勝手の良い補助金で、有効に活用できる」「有り難い」との声が寄せられており、引き続きの支援を期待します。

ギャンブル等依存症の場合、多くの場合が違法行為には当たらず、健康被害等によって顕在化する場合もまれで、自覚や他者の気付きが遅れがちになります。加えて、その疑いを抱いたとしても、原因は本人の金銭感覚がルーズであるからであり、意志を強く固めさえすれば克服できる等との思い込みから、適切な専門機関や自助グループ等へ繫がりにくい傾向があります。独立行政法人国立病院機構久美浜医療センターの2020年度ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査報告書によると、当事者がギャンブルの問題に気づいてから、公的相談機関を訪れるまでに平均47.6ヶ月、自助グループに参加するまでに平均63.1ヶ月、家族が気づいてからでは、公的機関を訪れるまでに58.2ヶ月、家族向け自助グループに参加するまでに55.5ヶ月を要しているとのことです。予防はもちろんのこと早期の回復支援を促すためにも、啓発、教育、相談等の取組が殊さら重要だと考えます。県推進計画にはギャンブル等依存症に対する正しい理解の促進が掲げられていますが、その取組の更なる充実が求められています。

また、DV、児童虐待、多重債務、貧困、自死、犯罪行為の背景に、ギャンブル等依存症が存在している場合も多く、幅広い関係機関が緊密な連携のもと、対策を講じる必要があります。県推進計画においても「企画県民部、健康福祉部、精神保健福祉センター、健康福祉事務所、消費生活総合センター、警察本部、教育委員会その他の関係機関、民間団体等との、相互に連携・協力しながら総合的にギャンブル等依存症対策に関連する取組を進めていく」と記されています。例えば児童手当を父親がギャンブルに使い込んでしまう場合であっても、母親への口座変更が容易に認められない事例があると聞きます。児童手当法では振込先について当該児童の生計を維持する程度の高い者となっており、実態として父親に振り込まれることが多いですが、父親がギャンブルにのめり込み家計やこどもの養育を顧みることがない際には、母親を当該児童の生計を維持する程度の高い者と判断し手当の振込先を変更することが、子どもの養育を支えると同時に、父親のギャンブル等依存症の回復支援にも資するのではないでしょうか。県推進計画に則り、市町を含め関係機関との連携協力を一層強め、あらゆる機関において、ギャンブル等依存症への対策を講じてほしいと考えます。

そこで、今後どのようにしてギャンブル等依存症で苦しむことのない、安心できる社会の実現を図っていくのか、当局の所見を伺います。

3 社会情勢を踏まえた多様な生涯学習施策の展開について

本県の生涯学習施策は、嬉野台生涯教育センター、但馬文教府、西播磨文化会館、淡路文化会館、神戸生活創造センター、東播磨生活創造センター、丹波の森公苑、ひょうごラジオカレッジ等を中心に、活発に展開されています。特にいなみ野学園、阪神シニアカレッジ等で展開される4年制の体系的なカリキュラムをもつ高齢者大学講座は全国的にも例が少なく、またアンケート調査等から受講者の多くが講座内容に満足していることも伺えます。加えて、知識・教養を習得することにとどまらず、学習成果を地域に還元するボランティア活動等にも繫がっていると聞き及ぶところであり、その実践を通じて地域の活性化に寄与しているものと認識するところです。人生100年時代といわれる現在、仲間づくりや実践活動に繋がる生涯学習は非常に意義深いと考えます。

しかしながら、対象者・受講者の年齢が比較的高齢者に偏っていること、講座内容においては文化的教養や趣味的なテーマが多い傾向が見受けられます。多様化し激変する社会のなかで求められるのは、生活者として安全・安心で質の高いゆたかな暮らしを確立するための知識や技術を、現役世代もふくむあらゆる世代に生涯学習として提供することではないでしょうか。現役世代が生涯学習に取り組むにあたっては、シニア世代に比べ自由になる時間や心身のエネルギーの余裕が限られている側面があることから、企業・労働団体との連携やIT技術活用等、学びやすい条件整備に配意することも必要だと考えます。

私は市議会議員時代を含め20年間にわたり、様々な困難に直面する住民から数多のご相談を受けてきました。その経験からも、例えば生活困窮に至らない為の手立て、困窮に陥ってしまった際の手立て等、現代生活が抱える問題に対処する当事者能力を養うことの必要性を強く感じます。住民が自ら生活課題を認識し予防・解決するために生活者としての当事者能力、生活力を養う機会の提供を生涯学習の課題として捉えてもらいたいと考えます。問題発生への対処型行政支援は当然必要ですが、問題予防するための先行型行政支援は、結果的には行政負担の軽減にも繋がりますし、県民の自主的生活力のエンパワーメントにも貢献することになるのではないでしょうか

今年度、県は生涯学習を担う兵庫県生きがい創造協会を含む外郭団体の在り方が議論されるとともに、生涯学習活動施設において指定管理者の公募がされるものと認識しています。

そこで、複雑多様化する社会の中で、県民一人ひとりが生活者としての生きる力を養い、生涯を通じて社会と主体的に関ることができるよう、生涯学習施策の改革と一層の進展を願いますが、当局の所見を伺います。

4 不登校特例校開設などのすべての子どもたちの教育機会確保に向けた取組について

小・中・高等学校の不登校児童生徒数が急増しており、文部科学省が公表した2021年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によると、2021年度の小・中・高等学校の不登校児童生徒数は、前年度比で5万6,747人増加し、29万5,925人となっています。小学生は8万1,498人(前年度比28・6%増)、中学生は16万3442人(同23・1%増)で、いずれも9年連続で増加。高等学校においても、2019年度、2020年度と減少が続いていましたが、2021年度には同7,934人(同18.4%)増の5万985人となりました。県内の不登校児童数も同様に増加傾向にあり、2021年度小学校3,643人、中学校7,679人、高等学校1,147人、合計12,469人と過去最多となっています。

本県では、スクールカウンセラー等と連携し、子どもたちの悩みを積極的に受けとめる校内相談体制を充実するとともに、不登校傾向の小中学生とその保護者を支援する但馬やまびこの郷、不登校の課題を抱える15歳~23歳の男子を対象にした全寮制施設山の学校、全国初の公立フリースクールである神出学園等を運営していると認識しています。また県内各市町では独自の施策が展開されており、例えば川西市では、学校の空きスペースを活用し、不登校の子どもの復学や自立を支援する校内フリースクールが市立中全7校と市立小全16校に開設されており、教室以外の居場所として機能しています。

2017年に施行された教育機会確保法では全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保をめざすとともに不登校の児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援を求めています。かつてのように不登校というだけで問題行動とはせず、取り巻く環境によってはどの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校の子どもも教育の機会が確保されるよう不登校の子どもたちの実態に応じた柔軟な教育課程を編成することができる不登校特例校の設置が国と自治体の努力義務となりました。不登校特例校は、現在、全国10都道府県に24校(公立14校、私立10校)が設置をされています。本県においても、その設置に向けた取組が求められていると考えます。現在、県内の幾つかの市町教育委員会では設置に向けた前向きな議論が行われていると認識するところですが、教職員の確保等、県教委と市町との連携協力は欠かせないのではないでしょうか。

不登校の問題は、本会議でも近年多くの議員から取り上げられており、それだけ多くの県民から関心が寄せられている重要な課題です。

そこで、不登校特例校開設に向けた市町教育委員会との連携強化を含め、不登校問題の課題解決に向けての当局の所見を伺います。

5 こども家庭センターの職員確保について

兵庫県こども家庭センター2022年7月発行「ひょうごの児童相談」によれば、2021年度に県こども家庭センターに寄せられた児童虐待の相談件数は5,804件であり、2020年度(5,446件)より358件(6.6%)増加し、統計を取り始めた1990年度以降で最多となっています。独自に児童相談所を設置する神戸市と明石市を含む県内全体のデータにおいても、児童虐待事案の相談は過去最多の9,412件に上っています。

県は、多様化・複雑化・困難化する児童虐待への対応を適宜適切に行うため、かねてより児童福祉司等の専門職員を計画的に採用するよう努めるとともに、発達障がい等の特性のある子どもへの個別支援や子どもの性的問題行動への対応等、テーマや経験年数に応じた体系的な専門研修を実施して職員の資質向上に取組んでいます。加えて、2021年4月に尼崎市と加東市にこども家庭センターが新設され、2025年度には川西市に一時保護所の開設が予定される等、体制強化に努めています。また、一時保護の必要な件数が著しく増加する中、民間児童養護施設や里親の方々に誠心誠意ご協力頂いています。困難を抱える子どもと親を支援して頂く関係者に、心から敬意と感謝の意を表します。

現在、県の一時保護所は明石市内にある中央こども家庭センター1ヵ所のみで、満床状態が続いています。県はパンク状態を解消するため、2019年に受入児童の定員を40人から54人に増やす方針を示し、同年9月県議会において受入児童数増員に必要な職員加配に伴う補正予算を整えました。しかし実際には、18人の会計年度任用職員を募集したものの、現在においても必要な職員が5名不足し、54人の児童の受入が可能であるのは、土・日・祝日などにとどまっている状況です。私は2020年12月県議会一般質問で、必要な職員が確保できない原因の分析と改善を求め、2021年3月の予算特別委員会でも定員上限を満たすことが可能な職員数の確保を求めました。当局は、優れた人材を確保するために真摯な求人活動を続けて頂いていることを承知するものの、必要な職員数が確保できないために長期間にわたり本来定員の受入れが果せていない状況を看過できません。

また、2019年の児童福祉法施行令改正により、こども家庭センター児童福祉司等の配置基準が強化され、その確保に向けて取組を進められていることも承知していますが、現在、充足されていません。

こうした児童福祉司など専門職員には、幅広い知識と洗練された援助技術、臨床経験の蓄積によって編み出される洞察力、交渉力、共感力、忍耐力、調整力など総合的な人間力が求められます。職員定数を充足するためには、まずは職務職責に相応しい雇用条件を実現することが不可欠ではないでしょうか。抜本的な処遇改善を検討するべきではないでしょうか。県の財政状況が厳しいなかでも、後回しにはできない課題だと考えます。

そこで、中央こども家庭センターや2025年の開設をめざし整備が進められている川西こども家庭センター一時保護所をはじめ、県内のこども家庭センターの職員体制をどのように充実していくのか、当局の所見を伺います。

6 県道の幅員狭小及び視距困難箇所の改良について

日々の暮らしに深く関わる道路の整備・改良については、県民から切実な要望が数多寄せられています。道路は県民の生活利便性や経済活動を支える土台であり、また防災・減災力向上や交通事故防止のためにも、その整備・改良は極めて重要な行政課題だと考えます。道路の整備について県は、県民局ごとに策定された社会基盤整備プログラムに基づき、効率的・効果的な事業執行に努めていると認識しています。安全・安心で豊かさが実感できる県土作りをめざし、地域課題や県民ニーズをより的確に捉えた道路の整備が一層進むことを願います。

私の地元では、川西篠山線の屏風岩付近道路拡幅・橋梁架替工事、島能勢線の待避所設置、豊川橋山手線絹延橋駅付近や呉服橋本通り線寺畑付近の歩道設置等について事業を鋭意進めており、円滑な進捗に向けたなお一層の精進を期待します。一方、幅員が狭く離合が難しい、あるいは急なカーブで見通しがきかない等、永年にわたり危険性が指摘される県道であっても、改良が進んでいない箇所があるのも事実です。例えば、下佐曽利笹尾線は猪名川町笹尾地区約1キロの区間について、幅員が狭小のため車両の離合が非常に困難であり、加えて笹尾峠付近をはじめ見通しの悪い箇所が複数あり事故を招く危険性が高いと指摘をされています。また、能勢猪名川線は二車線道路であり幅員は確保されているものの、紫合地区の約500メートルの区間において極めて急なカーブが連続しており、衝突事故の危険性が指摘されています。いずれも永年にわたり、改良の要望が続けられています。

そこで、永年の課題となっている先に述べた県道2路線の幅員狭小及び視距困難箇所の抜本的な解決を求めます。あわせて、様々な事情からそれが叶わない場合においては、一部箇所からでも改良工事を実施し、段階的にでも危険箇所の除去に努めてもらいたいと考えますが、当局の所見を伺います。

7 ひょうご家計応援キャンペーン プレミアム付デジタル券について

食料品等の値上がりを踏まえ、2023年度6月補正予算において緊急対策としてひょうご家計応援キャンペーン プレミアム付デジタル券はばタンPay+の発行が、今定例会に提案されました。物価高騰で厳しい環境にある家計を応援するため、スーパー等の小売店、飲食店等で使えるスマホアプリを活用した事業です。生活の安定化、家計への支援を目的とする同事業の趣旨には賛同します。還元率は一般が25%、子育て世帯が50%であり、子育てで家計負担の多い世帯への応援枠を設けたことについても評価したいと思います。加えて、地域経済振興にも寄与すると考えます。

先日、当該事業がデジタル券のみの発行であることから、我々の会派に県民から意見が寄せられました。現状においてスマホを所持していない人の多くは、高齢者、障がい者等、社会的弱者といわれている人たちであり、本来この施策において一番恩恵を受けなければならない人たちが蚊帳の外に置かれるとの指摘です。実際、内閣府が2020年に実施した「情報通信機器の利活用に関する世論調査」における、スマホを利用しない、あまり利用しないを合わせた割合を見ると、18歳~39歳の各年代では1.3%、40歳代では3.6%、50歳代では9%である一方、60歳代が25.7%、70歳以降では57.9%となっています。シニア世代がスマホに不慣れであるのは明らかであり、デジタル格差が現存することは確かです。県民から寄せられた「高齢者等が蚊帳の外に置かれる」との声は、決して杞憂ではなく、デジタル券がコストや利便性で優れている面があるとしても、看過できない指摘です。

県は、スマートフォンの利用に不慣れな高齢者らに対して、携帯電話販売店や市町等と連携してサポートを実施する方針を示しています。デジタル格差は、経済格差や社会的孤立に繫がる恐れがあるなど、その解消は社会的課題であり、デジタル活用の支援は必要な行政サービスです。しかし、スマートフォンを所持し使いこなすことによって、一人ひとりの生活がより豊かになる可能性があるのは事実です。反面においては、プライバシーが侵害されたり、犯罪に巻き込まれる危険性もあります。デジタル活用の支援は必要な行政サービスでありますが、支援にあたってはデジタルリテラシーの涵養が伴うべきであり、その上でデジタル活用の選択は、県民一人ひとりの自主的主体的な意思に拠らなければなりません。県民が家計応援を求めるあまり、結果的に性急なスマートフォンの所有や活用に繋がることに至ってはならないと考えます。

物価高騰で厳しい暮らしを強いられる県民の生活を支援することは、有益で重要な施策です。だからこそその支援策は必要とする県民および事業者にあまねく公平に行き渡るような制度設計をめざすべきだと考えますが、当局の所見を伺います。

北上 あきひと

(選挙区:川西市・川辺郡)