議会の動き

小池 ひろのり議員が一般質問を実施

第345回9月定例会 一般質問要旨

日 程  2019年10月2日(水)

議員名  小池ひろのり 議員

質問方式 一問一答

1 がん検診受診率の向上について

本県のがんによる死亡者数は、昭和53年に脳卒中を抜いて第1位となり、以後も高齢化の進行に伴って、増加の一途をたどっています。そして、今や二人に一人ががんに罹患する時代となりましたが、一般的に元気な人ほど、がんを他人事と思っている人が多いと思います。医者から「あなたは、がんです。放っておけば、余命〇カ月です」と告知されると、頭が真っ白になり、急に死の恐怖にかられるようになります。周りのがんで亡くなった人の顔が浮かび、現実身が帯びてきます。当事者にとっては、今でもがんは死と向き合う怖い病気と言えます。

しかし、近年のがん医学の急速な進歩と相まって、告知時に死を覚悟して絶望する病気から、がん教育の普及もあり、がんは長く身近に付き合う病気へと変化してきているのも事実です。

これまで、兵庫県は、がんを取り巻く環境の変化や時代のニーズに向けて様々な施策を、「がん対策推進計画」に基づき実施してきました。しかしながら肝心要のがん検診受診率はあまり改善されていない現実があり、より実効性のあるがん対策が求められています。このような県民の声を受け、私は、長年県独自の「がん対策推進条例」の制定を訴え続けました。そして、この要望がようやく実を結び本年4月にがん条例が制定され、大変嬉しく思っています。今後は、条例に基づいて、いかに実効性のある施策が行われるかにかかっていると言えます。

ここで、検診受診率について考えてみたいと思います。がんの予防対策として、まず県民自ら、喫煙習慣をはじめ生活習慣の改善に取り組み、がんに罹らないように努めるように啓発していくことが重要です。その上で、がんの早期発見には、がん検診受診率の向上が喫緊の課題と考えます。

更に、たとえがんに罹患したとしても早期に発見し、確実に治療に繋げること、すなわち症状などが出る前に定期的にきちんとがん検診を受けることが重要であると考えます。早期にがんを発見できれば、体への負担が少ない治療法を選択できる確率が高くなると共に、生存率が向上し、治療後の生活の質の向上にも繋がります。このことは、5年相対生存率が、進行してから発見された時の13.6%と比較して、早期に発見された場合が90.4%と、著しく良好であることからも明かです。

しかしながら、残念なことですが、本県における職域を含むがん検診受診率は極端に低い状態が続いています。胃・肺・大腸・乳・子宮頸がんの全てにおいて、全国都道府県の中で最低に近いレベルに位置しており、極めて憂慮すべき状況にあると言えます。これに対して、県では、国保特別交付金による市町支援や、大学生を対象とした啓発、そして、がん検診受診を促進する中小企業への助成等の取組をしていると言われますが、必ずしも顕著な成果を挙げているようには思えません。検診受診率の低さは大いに問題があると言わざるを得ません。

“お金がかかる”、“時間がない”等の理由で、がん検診を受診しない県民の方も多いと聞きますが、こうした意見に対しては、がん教育の推進が不可欠です。学生の頃に、科学的な根拠に基づいたがん検診の重要性を十分認識してもらい、自らチャンスを放棄してしまうことのないよう、がん教育の推進で一層の理解を得る取組が必要と考えます。

そこで、若い時からがん検診を受ける習慣を身に付けるような取組と共に、がん検診を受けやすい環境整備を一層図っていくことが、がん検診受診率の向上・死亡率の逓減に繋がるものと考えますが、県の所見とがん対策としての具体的な取組と意気込みについて伺います。

2 体験型ツアーの誘客拡大による兵庫の発展について

2018年、日本を訪れた外国人観光客は、3,000万人を超えました。観光客による消費額も4兆円を超え、経済効果は大きく、今や何処の自治体でも観光業に力を入れています。そのような状況下で、ラグビーワールドカップが9月20日に開幕し、神戸でも4試合が行われています。また、来年には東京オリンピック・パラリンピック、2021年にワールドマスターズゲームズ、2025年に大阪・関西万博などの国際的なイベントが目白押しです。

私は、これらのイベントを通じ、国内外からの観光客の大幅な増加が見込まれるこのチャンスを的確に捉え、兵庫の発展につなげるべきと考えます。

今年5月の関西3空港懇談会で、神戸空港について、当面1日の発着回数を60回から80回に拡大、運用時間を夜10時から11時まで延長することが決まりました。そして、早速8月からスカイマークが増便し、10月27日からの冬ダイヤではフジドリームエアラインズが新規就航に乗り出します。神戸空港の潜在需要が大きい事が示され、まだまだ発展する余地があると容易に推測出来ます。

今後、神戸空港の規制を更に緩和させ、アジアなどの近場の国際線の就航で更なる海外からの誘客促進を実現させて頂きたいと願っています。

しかし、単なる観光地への誘客の呼び込みでは、ますます大阪・京都・奈良に差をつけられます。私は、兵庫が海外からの観光客を呼び込むには、兵庫独特の体験型ツーリズムを展開すべきと考えます。ファムトリップなどで海外のツーリストの担当者に、体験型ツーリズムを味わってもらい、その感動を国で広めてもらい、リピーターにつなげていくことが必要だと思っています。

医療ツーリズムでも、先進的な医療サービスと観光を組み合わせた患者の長期の滞在に、家族を含む健康づくりまで幅広く連携した兵庫に似合った独自の施策や、ゴルフツーリズムに温泉とスポーツをからめ、アジアの富裕層に焦点を当てた体験プログラムの充実など、具体的な体験型ツーリズムの提唱を求めます。

最近では、神戸港に大型クルーズ船の入港が増えています。船のツアーデスクに兵庫の体験型ツアーを働きかけ、神戸市と協力して無料のシャトルバスで体験型ツアーに連れ出すことに努めるべきと考えます。

話は変わりますが、私は、1983年から20年間かけ、毎年夏に中国大陸全土サイクリングを続けました。テレビ、新聞などマスコミでも大きく取り上げられ、参加者募集の記事が新聞に掲載されると、すぐに定員に達しました。外国人が初めて行く地域も多く、受け入れキャパの関係で、晩年の頃はお断りするのに苦労をする程でした。

自ら資金を出し、暑い中、砂漠や不便なインフラが整っていない中国サイクリングでしたが、多くがしんどい旅に感謝をし、満足していました。延べ1,000人近くもの参加者の中には、ちょっと考えられないことですが、リピーターも多く、10回以上参加した人達もいます。サイクリングは、単なる観光ではなく、体験型の典型で、地域の人との触れ合いがあり、しんどいですが感動があり、充実感や達成感があります。一旦、サイクリングの醍醐味を味わうと止められません。

また、体験型で誘客に成功している北海道のニセコ町の例があります。ニセコ町はオーストラリアにスキーツアーの積極的な売り込みをしました。それが功を奏し、現在では、人口約5千人のニセコ町に、昨年度、21万7千人の外国人観光客が押し寄せています。体験型は、感動を味わった人たちがリピーターとなり、自分たちの言葉で醍醐味を語り、口コミで自然と輪が広がっていきます。定着すれば、後は宣伝しなくても、今はSNS等で拡散してくれます。

例えば兵庫の体験型ツアーによる誘客拡大に向け、ベテランサイクリストには、淡路島のトライアスロンやセンチュリーランを、初心者には乗り捨て自由のレンタル電動自転車などの活用も考えられます。そして、食文化を味わい、世界をリードするアニメに触れ、モノづくりや温泉・ゴルフを楽しむ、先端医療を活用した医療ツーリズムをからませた複合体験型をパックで売り出し、兵庫の魅力を連結させ、兵庫トレイルとして示すことでリピーターにつなげていくことが重要だと考えます。

そこで、兵庫のツーリズム戦略として、体験型ツアーの誘客に力を入れ、兵庫の発展に結びつけていくことを提案しますが、当局の所見をお伺いします。

3 県立夜間中学創設について

現在の夜間中学は、創設時の目的が大きく変貌しています。戦後の義務教育から漏れた人に加え、現在の義務教育に馴染めず、授業をほとんど受けず不登校のまま中学校を卒業した“形式卒業生”にとって、夜間中学が学び直す場となっています。更に最近では、国策として外国人労働者を招き入れた結果、その労働者と子弟が生きていくための力をつけるために、日本語を学ぶ場として活躍しだしています。

一方、一昨年、不登校生は全国で19万3千人。また義務教育未修了者、いわゆる形式卒業生は、文科省の発表で少なくても12万8千人以上と言われています。この中には、中学校に入学していない生徒、無戸籍の人、DV等で逃げている人、外国人とその子弟等が加わっていません。このような人たちの中で、学齢期が過ぎ、生活が落ち着き、もう一度、義務教育を受け直し、『生きる力を付けたい』と言う入学希望既卒生が夜間中学への入学を希望しています。

しかし、行政の義務教育の未就学者調査では、なかなか実態が掴めにくいのも事実です。なぜなら、よほど該当者に寄り添った調査でない限り、該当者が「小学校もろくに出ていません」という声は挙げにくいものです。

私は、東京・名古屋・神戸の夜間中学を訪問し、10歳~80歳代の生徒の声を聞いて来ました。実際の生の声として『「学校へ行っていないことがバレるのが、イヤやった」でも、「本当は学び直したい」とも思いました。』

そして『「買物時に、おつりが計算出来るようになりたい」「自分の名前ぐらい漢字で書けるようになりたい」「チラシが読めるようになりたい」との思いから、迷いに迷った挙句、夜間中学の門戸をたたきました』と切実な声を聴きました。

岡山県で一昨年、自主夜間中学が開校されました。何万枚ものチラシが撒かれ、公民館等に掲示されました。それでも、開校時に集まった生徒は、わずか3人でした。その後、ボランティアの教師などの懸命な努力で、噂が口コミで広がり、翌年3月には生徒は40人になったそうです。読めないチラシをいくら配っても、対象者には届かないと言うことでしょうか。しかし、隠れた夜間中学入学希望者は、どこの地域にもいるという証だと思います。

兵庫県内でも、不登校等で義務教育の未就学生徒として、毎年約500人が形式卒業生となって増え続けています。そこで、いじめ・虐待など様々な原因で義務教育を十分受けられなかった人にとって、夜間中学は学び直す場として、大きな役割を果たしているのです。

平成28年に施行された“教育機会確保法”に「義務教育の未就学者で、既卒入学希望者であっても、自治体は学び直す場を提供する義務がある」と明記されています。そして、昨今、この法律に基づき、文部科学省も本年度の予算要求を3倍に増額し、全国の夜間中学創設を積極的に支援しています。

とは言うものの、現実は厳しく、夜間中学に通いたいと思っても、居住地や職場の近くにない場合には難しいものです。兵庫県内には、神戸に2校、尼崎に1校あり、他府県に比べれば良い方だとの声も聞かれますが、該当者にとっては、通える範囲に学校が無ければ、無いのと同じです。兵庫県の北中部・西部地区には、該当者がいないのではなく、学び直したくても通う学校がないのです。不登校の未就学生は、どこの地区にも必ずいるはずです。行政の調査に対し、『該当者なし』は弱者に目を向けず、切り捨て政策の何物でもないと思います。

該当者自ら声を挙げることは、難しいことですが、寄り添った調査をすれば、必ず『生きる力をつけたい』と言う声は聞こえてきます。

また、不登校生に夜間中学で前向きな姿勢を支援することは、現在、内閣府発表で、15~64歳の115万人以上いると言われるひきこもりを、少しでも減らすための有効な施策にもなり得ると確信します。こうした引きこもりや不登校になった若者が、世代を乗り越え人生の大先輩と同じ教室で共に学ぶことで、お互いが大変良い影響を受けているという報告があります。そして、これが社会での真の意味での共生につながると思っています。夜間中学に対する新しい存在意義を確認し、夜間中学を県として強力に支援して頂きたいと思います。

義務教育だから市町に任すと言う声を聞いたことがありますが、兵庫県として義務教育から漏れた多くの人たちが、どこの地区にもいるという事を認識すべきだと思います。また、対象者が点在すればするほど広域から通える県立夜間中学が必要となります。

このような観点から西播地区に広域から通える県立夜間中学の創設を求めるものですが、教育委員会の見解をお伺います。

4 キャリア教育の必要性について

私は、長年の高校・大学の教師の経験を振り返ってみると、これまでの学校現場では、大学受験を中心に据えた知識を習得するための教育がなされてきたと言っても過言ではないと思います。生徒は、大学に入学することを最大の目的として、大学受験に合格することで目的達成とする生徒も多く見受けられます。

しかし、私は、中学・高校生の段階で、もっと自分の将来の仕事や進むべき道を考え、夢・目標に向っての努力をする中で、真の生きる力をつけるべきと考えています。

そのような観点から、私は、教え育むキャリア教育に大きな関心を抱くようになりました。これまで学校現場では、キャリア教育を狭い意味で就職指導として活用していました。しかし、今日では、キャリア教育で生徒の個性を伸ばし、将来の社会での生き方まで結び付け、今、何をすべきかを考えさせる教育として、大変注目が寄せられています。

そこで、私はキャリア教育を推進している姫路市立白鷺小中学校と、全国的にも有名なキャリア教育のモデル校の荒川区立第3中学校を視察しました。

荒川区立第3中学では、全教科にキャリア教育を結び付けており、生徒たちは、これまでの“やらされる勉強”から自立し、将来、社会に出て活躍するために、獲得した知識をいかに活用するのか学んでいました。そして、結論の暗記ではなく、過程での主体的・対話的な深い学びを通じ、自己表現と課題解決に向けた能力を養うことに重点が置かれていました。

また、生徒自身の興味・適正に合った進路を模索し、自主的に学び、生徒の能力を伸ばし、社会で生きる力を育むためのキャリア教育に力が注がれていました。結果、これまでの“やらされていた勉強”から、自主的な課題に沿った勉強に取組むことにより、学力的にも大きな成果を挙げていることにも興味を持ちました。

キャリア教育は、これまでの知識偏重の詰込教育を一新し、真の教え育む教育に繋がるような気がします。そのためにも、これからの兵庫のキャリア教育を更に充実させるべきと考えます。

将来は、こんな程度だろうと安易な目標を設定し、キャリアパスを計算するのではなく、キャリア教育で、夢と誇りをもって将来の自分のキャリアを切り拓き、意欲を高める努力をするように導くことが重要です。

大学試験も2021年度入試から大きく変わります。今までの暗記詰込的な知識では解けず、思考力・判断力・表現力を問うような出題内容になります。そのような入試改革に対応するために、今までの詰込教育から大きく転換し、自分の考えを整理し、他人との比較、自他の違いを認め合い、共に考え深めるキャリア教育の実践を推進し、真の生きる力を身に付けることが必要だと考えます。

兵庫県の義務教育では、キャリア教育がキャリアノートを中心に進めておられますが、そのノートは高校でどのように活用されているのか?つまり、キャリア教育の中高の連携と、高校でのキャリア教育が、どのように推進されているのかをお伺いします。