質問日:令和3年3月17日(水)
質問者:北上 あきひと 委員
1 コロナ禍を経てめざす将来のひょうご像について
新年度予算案は、一般会計2兆7304億円、特別会計・公営企業会計を合わせて4兆6068億円であり、税収不足が危惧されるなか、過去最大でありました。中小企業制度資金貸付金を増額し、また医療提供・検査・相談体制の確保、防災・減災対策、地球温暖化対策、地方回帰の受け皿づくり等が盛り込まれています。予算案の内容については、本委員会で種々精査をしてきたところです。知事は予算案発表の記者会見において「ポストコロナ社会へのスタート予算」と名づけられました。ポストコロナ社会とはどのようなものなのでしょうか。
「危機は本質をあぶり出す」との言葉がありますが、コロナパンデミックは現代社会の様々な問題を顕在化しました。昨年6月、兵庫県医師会は「現在、地域医療構想により合理化された医療提供体制が全国的に構築されつつある。さらに保健所の統廃合や人員整理等で公衆衛生業務が集約された。この体制は不測の新興感染症に対して、柔軟な対応が困難であることが今認識されつつある」との見解を明らかにしています。医療や福祉、保健衛生の分野にまで、過度の市場原理を持ち込んだことを省みて、県民の命を支える土台の整備が自治体の使命であり、その見直しは急務です。
加えて、パンデミックは、自治体間連携の深化も迫りました。近隣府県との連携、県内市町との連携を抜きに、感染症への効果的な対応は困難であることは明らかです。
コロナ禍、医療崩壊への不安に加え、解雇失業等による生活苦、児童虐待、DV、自殺等の増加が大きな社会問題となり、多くの県民が「政治と暮らしは直結している」ことを実感されたのではないでしょうか。県民の政治行政への関心の高まりを、私自身も肌で感じているところです。県民との情報共有、参画と協働、住民自治を一層進めて行くことが、県政運営に求められています。
そのような中、兵庫県などがまとめた「AIを活用した未来予測2050年の兵庫の研究」による未来予想では、「都市集中型」ではなく「地方分散型」の道を選択すれば、出生率回復や健康寿命延伸が叶い、地域活力は維持され生活の質が高まり、個人の幸福感も増すとのシミュレーションが示されており、ポストコロナ社会を構想するにあたって、大変に示唆深いと感じます。
私は、五国各々の、市町各地域の、多様で豊かな風土を活かしたしなやかで逞しい分散型の社会を、県民との対話と共感に基づいてめざすべきではないかと考えます。「流行した感染症は時に社会変革の先駆者となる」とは、長崎大学教授で岩波新書「感染症と文明」の著者である山本太郎氏の言葉です。コロナ禍を経てめざす将来のひょうご像について、当局のご所見をお伺いします。
2 財政運営について
本予算委員会においては、税収見込み、財政フレーム、シーリング強化、職員給与抑制措置等、財政運営について多角的に議論をして参りました。
令和4年度から9年度にかけて総額330億円の要調整額が見込まれ、また、震災関連県債や行革期間中の財源対策債の県債残高も依然高い水準にあります。新年度当初予算をもとにした財政フレーム見直しによると、実質公債費比率は令和5年度17.4%、令和10年度は18.1%になる見込みで、令和10年度における過去3年間の平均は17.9%であり、辛うじて18%未満に納まるという厳しい内容は、財政審査の際に指摘した通りです。経常収支比率については、令和10年度見込みは95.9%で、内公債費は25.9%を占めます。
当局は、財政フレームにおいて実質公債費比率や経常収支比率の数値が上昇するのは、算定上の分母である標準財政規模や経常一般総額の減少の影響が大きいとの見解を示されました。その算定ルールについては理解するものの、社会人口構造の変化等からも、分母の主要素となる税収の回復が楽観できないからこそ、多額の公債費を縮減して行くことがより一層求められるのではないでしょうか。
自治体の財政計画においては、歳出のコントロールが重要であり、歳出で大きな割合を占める義務的経費のコントロールが肝だと考えます。社会保障関係費の自然増は如何ともし難く、また本県においては職員3割削減等の人件費総額圧縮に既に努めてこられたところでもあります。このようななか、財政当局におかれては、大型プロジェクトの再検討をはじめ投資的経費の調整に意を用いて頂き、地方債発行を抑制する等、より堅実な財政運営に努めて頂くことを切に求めるところでありますが、ご所見をお伺いします。
3 今後、求められる職場環境と人事政策について
県政を支えるのは県職員であり、高い倫理観や強い使命感をもった優秀な職員を採用、育成すること、また職員が心身の健康を維持し、やる気と能力を存分に発揮する環境を整えることが求められています。部局別審査においては、職員給与の抑制措置、パワー・ハラスメント、会計年度任用職員の処遇等の課題について、議論を交わしてきました。
自治体運営には、公平性や安定性が必要であり、法制度やこれまでの取組の蓄積を引き継ぐことは、職務のベースとして不可欠です。加えて、今後県職員に求められるのは、時代の変遷に対応する柔軟性、新たなサービスを創造する進取の気性やチャレンジ精神、多様な県民ニーズを把握し必要な施策を抽出するコミュニケーション能力、AIやICT技術への対応力等ではないでしょうか。それらを醸成するためには、若手、中堅職員が自由闊達に議論する職場風土、自ら課題を見つけ解決策を編みだす仕組み、様々な現場で住民と率直な意見を交わす機会等が必要だと認識するところであり、これらを可能にする職場環境が求められます。
また、人事政策には、採用、育成、活用の3つがあると言われます。例えば、採用においては、社会人やインターンシップ経験者の登用等の取組によって熱意や独創性のある多彩な人材獲得をめざす例も見られます。育成では、多様な民間組織や先進自治体との人事交流による能力向上をめざす方策があります。活用においては、「手上げ方式」による異動や新規プロジェクトの参加等を知るところです。人事政策において、採用、育成、活用の三つをトータルに捉えて的確な方向性を示すことが、新しい時代をきり拓く自治体力に繋がると考えます。
今後、求められる職場環境と人事政策について、ご所見をお伺いします。
4 県施策における人権の尊重について
県においては、豊かな人権文化を築くために、人権にかかわる教育、啓発、相談等の取組を展開されてきました。県民一人ひとりが人権問題に関心を持ち、自らの尊厳を自覚すると共に、他者の人権を尊重する心と姿勢を養うための努力が続けられているものと認識します。地道な取組に敬意を表します。
人権の尊重は、行政運営の土台です。県の人権行政は、単に人権啓発事業等を展開することのみに止まるのではなく、県のあらゆる施策展開において人権尊重の理念が貫かれるよう促す役割を担うべきだと考えます。例えば、本県県営住宅には、同性カップルは入居申請手続きをすることができません。国連自由権規約委員会は、同性カップルが公営住宅を借りられない例などを挙げ「未婚の異性のカップルと同性のカップルが平等に扱われるよう確保すべきである」と日本政府に対して勧告をしていることは、我が会派の前田議員が先の本会議一般質問で指摘した通りです。勧告の後、日本政府は国連自由権規約委員会に対し「公営住宅法の改正により、いわゆる同居親族要件は撤廃したところであるから、法制度上、同性カップルは公営住宅制度から排除されているわけではない」との見解を示しました。今後改定が予定される「ひょうご県営住宅整備・管理計画」においては、人権尊重の理念が貫かれることを期待するものですが、それは担当する部局だけに問われる課題ではなく、県全体の政策判断が及ぶものだと考えます。
県のあらゆる施策展開の過程においては、法令遵守や財政負担についての精査がなされていますが、人権尊重の理念についてもあらゆる施策展開において貫かれるよう、組織体制の在り方や政策立案の仕組みを含め、取組の充実と改善を求めますが、ご所見をお伺いします。
5 「無年金外国籍障害者・高齢者等福祉給付金事業」について
1959年にスタートした国民年金制度は、皆年金をうたいながら、日本国籍を持つ者しか加入することができませんでした。国民年金の財源は、保険料と国庫支出金であります。外国籍の者も納税の義務があるにもかかわらず、国籍条項を設け排除したことは明らかに間違った政策です。日本政府は1979年に国際人権規約を批准し、1982年には社会保障での内外人平等を定める難民条約を批准したことにより、国民年金から国籍条項を撤廃しました。しかし1982年1月1日時点で既に20歳以上であった障害者、60歳以上であった高齢者は、経過措置を講じられることなく、排除されたままとなりました。1986年の新国民年金法施行により、国籍条項があって加入できなかった期間を合算対象期間として年金の資格期間に算入することとなり、老齢基礎年金については一部是正されました。しかし、この改正でも、1986年4月1日時点で60歳以上の外国籍高齢者は無年金のままです。
県においては、1998年4月に県内市町との共同事業として「無年金外国籍障害者・高齢者等福祉給付金事業」をスタートさせました。その趣旨は「国民年金法の一部改正により国籍条項が撤廃されてなお、制度上の理由から国民年金が受給できない在日外国籍障害者・高齢者に対し、福祉的措置から市町と共同して福祉給付金を支給することにより、在日外国籍障害者・高齢者の生活の安定と福祉の向上を図る」こととされています。この制度の創設と、制度運用の改善を重ねる経過のなかで、老齢基礎年金と障害基礎年金1級に相当する無年金外国籍県民への救済措置は講じられているものと考えます。しかし、障害基礎年金2級に相当する無年金外国籍県民については、該当者の居住する県内全ての市町において救済措置が実施されているものの、県においては未だ何らの措置も講じられておらず、共同事業の完遂には至っていないと認識するところです。
県は障害基礎年金2級に相当する無年金外国籍県民の実態をどのように把握しておられるのか、また国籍の違いによって制度の狭間に放置し、未だ無年金の状態に置くことは平等性に欠け、速やかに解決するべき課題だと認識しますが、今後の取組についてご所見をお伺いします。
6 コロナ禍における自殺対策について
警察庁の統計に基づく2020年の国内の自殺者数(速報値)は、前年確定値より750人(3.7%)多い2万919人です。女性の自殺が2年ぶりに増え、男女合わせた人数はリーマン・ショック後の2009年以来11年ぶりに増加に転じました。報道等によると、女性の自殺増の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による経済環境の悪化、生活や雇用などの先行きへの不安が心理的な負担になっているとみられます。加えて「ステイホーム」や「ソーシャルディスタンス」の影響で、悩みを打ち明けたり相談する機会も減少しているのではないでしょうか。
年間の自殺者は、1997年まで長年2万人台で推移していましたが、1998年から14年連続で3万人台が続き、2003年には最多の3万4427人になりました。景気等の影響はあるものの、その後概ね減少傾向が続いたのは、行政や民間機関が相談体制を強化し地域に根ざした様々な取組が展開されたことが大きいと考えます。また、厚生労働省は「自殺はその多くが追い込まれた末の死であり、その多くが防ぐことができる社会的な問題」との認識を示しています。本県においては、「自殺対策計画」に基づき「自殺のない社会」実現をめざした対策を推進してこられたと存じますが、新年度は相談や啓発等の取組が一層求められるところです。コロナ禍における自殺対策について、県のご所見をお伺いします
7 コロナ禍における子どもの心のケアについて
本年2月の文部科学省の発表によると、昨年に自殺した小中高校生は479人で、前年の339人から140人増え、過去最多となりました。内訳は小学生14人(前年6人)、中学生136人(同96人)、高校生329人(同237人)です。18歳以下の自殺は、長期休業明けの時期に増加する傾向がこれまでも指摘をされていますが、昨年は学校が再開した6月と短縮夏休み明けの8月が、どちらも前年同月の2倍超となりました。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う社会不安や家庭環境の変化に加え、長期にわたる休校等が、子どもたちの心に影響を与えているのではないでしょうか。国立成育医療研究センターが昨年11~12月に行った子どものコロナの影響調査では、小4~小6の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状が見られ、自殺や自傷を「ほとんど毎日考えた」という小4以上は6%いたと報告されており、同世代の子どもをもつ親の一人としても、心が痛み不安が募るところです。
教育委員会におかれては、スクールカウンセラー等の配置をなされると共に、今年度は県内全域の公立小中高校の計156校を対象に、長期休校によるストレス状況を把握するためのアンケート調査を3回実施(7月・9月・1月)されました。その結果から、子どもたちの実態をどのように把握、分析されているのか、また、今後、子どもたちの心のケアをどう図って行かれるのか、ご所見をお伺いします。
8 中学校休日部活動の地域移行について
先の部局別審査においても中学校の部活動について取上げ、そのあり方について抜本的改革が求められていることを指摘し、合理的科学的で適切な指導の徹底を図るよう求めたところであります。ここでは、部活動の大きな転換につながる取組だと認識する、休日部活動の地域移行についてお伺いします。
新年度、国庫事業として「中学校運動部活動の地域移行検討事業」が予定され、県内2ヵ所に拠点校を設けることが示されました。休日の部活動の段階的な地域移行が進展するものと理解します。少子化の進展等により、学校単位の活動から一定規模の地域単位での活動への移行の検討の必要性はかねてより指摘をされていたところであり、また、議会でも再三議論されてきた教員の業務負担軽減、「働き方改革」の一環としても意義ある事業だと認識するものです。地域諸団体との連携により、学校と地域が共に子どもを育てる環境の整備は、多くの関係者の願いであるものの、実現に向けては解決するべき課題も多いのではないでしょうか。休日部活動の地域移行の目的と課題、「中学校運動部活動の地域移行検討事業」の取組内容をお伺いします。