議会の動き

◆22年6月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方 

代表質問  北上 あきひと 議員
一般質問  中田 英一 議員

代表質問

(北上 あきひと)[発言方式:一括]

1「パートナーシップ制度・ファミリーシップ制度」導入に向けた取組について
2 盛土規制法の成立を踏まえた今後の盛土対策について
3「水平社宣言100年」、人権課題の現状と今後の取組について
(1) 部落差別解消に向けたこれまでの取組、現状と今後の施策展開について
(2) 人権尊重の理念がより貫かれる組織のあり方について
4 長引くコロナ禍における子育ての実態と支援策について
5「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を踏まえた子どもの体力向上について
6 県内公立学校外国籍教員の処遇について

質問全文

質 問 日:令和4年6月6日(月)

質 問 者:北上 あきひと 議員

質問方式:一括答弁方式

1 「パートナーシップ制度・ファミリーシップ制度」導入に向けた取組について

パートナーシップ制度とは主に性的マイノリティを婚姻相当の関係と認め、証明書等を自治体独自で発行する制度です。民間団体の調査によると、2022年4月1日現在、全国で209の自治体が同様の制度を創設し、人口カバー率は52.1%となっています。性的マイノリティ等のカップルは住まいや医療について家族として扱われないことで困りごとを抱えることが多いのですが、この制度によって、家族として公営住宅への入居が可能になったり、公立病院で家族として入院や手術の同意手続きをすることができたりします。また、民間の取組では、携帯電話の家族割引や生命保険金の受け取りといったサービスが受けられるようになりますが、法律上の婚姻とは異なるものであり、相続等の問題は解決しません。
兵庫県内では11市町が導入し、人口カバー率は48.6%です。また、カップルの一方に未成年の子どもがいる場合に、パートナーと子どもの関係を証明できない困りごとを解消するために、子どもも含めて家族であることを証明するファミリーシップ制度を設ける自治体もあります。
県では昨年5月の募集より、県内のパートナーシップ宣誓制度導入市町においてパートナーシップ宣誓証明を受けたLGBTQ等のパートナー同士については婚姻関係にある者とみなし、当該制度を導入している市町内にある県営住宅への入居申込が可能となりました。当事者からは「これまで自分たちは無きものとして扱われ、存在自体を否定されているような気持ちだったが、ようやく兵庫県に自分たちの存在を肯定してもらったように感じる」との声を頂いています。一方で、制度を導入している自治体に限られているため、この制度を導入している自治体に移住して、その自治体の県営住宅に申し込みをするカップルがいることも聞き及ぶところです。
都道府県として初めてパートナーシップ制度を導入した茨城県を、視察訪問した際、県内にも慎重論が根強くあるなかで同制度をスタートした理由を尋ねたところ、市町村レベルではすでに全国で取り組まれており、大きな問題も報告されていない、制度導入によって何らかの制約を受ける県民は誰もいない、制度を設けること自体が、当事者の自己肯定感につながるとの説明を受けました。現在、都道府県単位でパートナーシップ制度を導入している自治体は、茨城県の他、青森県、秋田県、群馬県、大阪府、三重県、福岡県、佐賀県であり、10月からは静岡県が、11月からは東京都が導入することを公表しました。兵庫県としてもパートナーシップ制度・ファミリーシップ制度を導入し、制度を必要とする全ての県民が利用を選択できる環境を整備するべきだと考えます。
齋藤知事は、民間団体が昨年実施した兵庫県知事選挙立候補者へのLGBTQに関する施策についてのアンケートへの回答(2021年6月23日)において「ご家族や友人からLGBTQ であることを、もし告白されたら、あなたはどうしますか」との問いに「その人を尊重し応援したいと思う」と回答され、「パートナーシップ制度を兵庫県の施策として検討するべきだと思いますか」との問いには「実施するかどうかを検討したい」と回答されています。加えて自由記載欄には「個性や考えの多様化は十分理解しており、その偏見によって、差別を受けたり、人権が否定されることがあってはならないと考えます。知事就任と同時にLGBTQについての研究チームを立ち上げ、しっかりと議論し、差別や偏見につながるあらゆる事例について精査していく所存です」と述べられました。
パートナーシップ制度・ファミリーシップ制度導入に向け、前向きな研究を進めて頂きたいと切に願いますが、知事のご所見をお伺いします。

2 盛土規制法の成立を踏まえた今後の盛土対策について

昨年7月、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生しました。関連死を含め27名が死亡し、未だ1名が行方不明になったままです。静岡県の調査によると、流出した土砂の大部分を占めていたのが上流部にあった盛土であり、盛土の高さは熱海市への届出を大幅に超える不適切な状態が続いていました。被害拡大の原因は、不動産管理会社による不適切な盛土ではないかと報道されています。当該災害を踏まえ、本年5月20日に盛土規制法が成立したところです。
行政対応を検証してきた静岡県の第三者委員会が、本年5月13日に公表した最終報告書では、静岡県と熱海市の連携について、無秩序な開発を防止する有効な手立てを県と市で検討するべきだった、盛土の崩壊という最悪の事態を想定し、県と市が早期に協力体制を築くべきだったと不十分さを指摘し、行政対応は失敗だったとしています。
兵庫県及び県内市町は、政府からの盛土総点検の依頼に基づき、土砂災害警戒区域や山地災害危険地区などの重点点検対象エリアを中心に、書面点検を500箇所、現地点検を146箇所、合計646箇所の点検を実施しました。その結果、是正措置等が必要な盛土が県内に7箇所(神戸市2箇所、西宮市・川西市・猪名川町・佐用町・宍粟市各1箇所)あることが判明したと、昨年12月に公表されました。関連する土地利用規制は、砂防法、森林法、都市計画法、宅地造成等規制法、自然公園法、県産廃条例、町土砂埋立条例等、多岐に渡り、また是正措置等の必要性が認められるものの該当する土地利用規制が見受けられない盛土も確認されており、今なお、その複雑で困難な面があるなか、その解決に向けて関係各所による取組が続いていると推察するところです。
当該盛土近隣の住民にお話を聴くと、「日々盛土を目の当たりにしているが、雨が降る度に熱海土石流災害のテレビ映像が頭をよぎり、不安に苛まれている」とのことでした。盛土災害は人災の側面が大きく、行政のリーダーシップによって速やかに解決して欲しいとの思いを抱いておられました。昨今の集中豪雨が頻発する状況等から、危険性の高い盛土への早急な対策が求められることは、言うまでもありません。
だからこそ、今回の新法への期待は大きいものがあります。土地の用途を問わず盛土全般を規制し、無許可造成や是正命令違反への罰則を強化するという今回の法案が絵に描いた餅となってはいけません。そのためには、熱海土石流災害の教訓を踏まえ、庁内の関連部署が責任の所在を明確にしたうえで連携し総力で取組むこと、市町との一層緊密な協力体制を構築すること等が必要ではないでしょうか。
知事は、自治体の権限が大きくなる今回の法案についてどう評価され、さらには今後盛土規制法が実効性あるものとなるため、庁内体制づくりをはじめ、どのようにリーダーシップを発揮されようとしているのか、ご所見を伺います。

3 「水平社宣言100年」、人権課題の現状と今後の取組について

(1) 部落差別解消に向けたこれまでの取組、現状と今後の施策展開について

1871年、江戸時代の身分制度がいわゆる解放令の布告により廃止されました。それから約半世紀を経た1922年3月、全国水平社創立大会において、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」で結ばれる水平社宣言が朗読されました。今年はその宣言から、ちょうど100年です。
先日、水平社博物館館長から水平社宣言について学ぶ機会を得ましたが、宣言の内容は自省的で先見性や普遍性に満ちていると感じました。例えば「此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せん」との文言は、人間の尊厳の絶対的価値に目覚め、その自覚によって自身の差別意識を克服しよう、差別・被差別の立場を超えて、人間尊厳の価値を共有することで差別を克服しようと呼びかけるものであり、多様性と包摂の社会をめざす現在の私たちにとって、大変示唆に富むものです。100年の節目に、宣言の価値をしっかりと再認識する必要があると考えます。
部落差別の現状を考察すると、例えばインターネット上では、被差別部落の地名リスト掲載や侮蔑的な言葉をあからさまに用いた人権侵害が、後を絶ちません。インターネット上での差別被害の回復は不可能ないし著しく困難であり、その被害は甚大です。昨年夏には、兵庫県警への県民の相談を契機に明らかになった、行政書士による戸籍謄本等の不正取得事件が大きく報道されました。記事によると2016年頃から約3500通の戸籍謄本等を不正取得し、全国55社の探偵社等に提供、1件あたり2万~4万円の報酬を受け取り、総額で約7000万円を稼いでいました。
また、法務省の部落差別の実態に係る調査結果報告書によると、交際・結婚相手が被差別部落出身か否かが気になるとの回答が、15.8%あり、部落差別が不当だと知っていると回答した85.8%の人に限っても、気になるとの回答は15.7%で、全体と大きく異なることはありません。
2016年に制定された部落差別解消法は、現在も部落差別が存続するとの認識を示し、その差別は日本国憲法に照らして許されるものではなく、国と自治体における相談体制の充実、教育・啓発・調査等の必要性を明記しています。本県では人権文化をすすめる県民運動が展開される等、差別のない社会をめざす様々な取組がなされていますが、現状を的確に捉えるとともに、更に時代の変遷や社会状況の変化を見据えつつ、また水平社宣言に学びながら、より県民の心に響く洗練された施策が期待されるものです。
本県における部落差別解消に向けたこれまでの取組、そして現状の課題と今後の施策展開について、知事のご所見をお伺いします。

(2)人権尊重の理念がより貫かれる組織のあり方について

人権課題は部落差別に限らず多様であり、また日々新たな課題が惹起していると考えます。今日的には例えば、新型コロナウイルス感染症を巡る課題、在日ロシア人への人権侵害等であります。
かねて私は、人権尊重は行政運営の土台であり、県の人権行政は単に人権啓発事業を展開することのみに留まらず、全ての施策展開において、人権尊重の理念が貫かれるよう促す役割を担うべきだと訴え、そのための組織体制の改革を提案してきたところです。これまで人権担当は健康福祉部にありましたが、機構改革により本年度は県民生活部に移されました。これは、人権行政が全ての県民に関わる課題であり、より全庁的な取組が必要だとの認識のもとでの改革だと考えます。
今後、公益財団法人見直しの議論がなされるものと推察しますが、人権啓発協会のあり方も含め、人権尊重理念がよりひろく貫かれるよう、引き続き人権推進を担当する組織の機能充実を図って頂きたいと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

4 長引くコロナ禍における子育ての実態と支援策について

新型コロナウイルス感染症蔓延の長期化は、世代や分野を超えた多くの人々に影響を及ぼしています。私たち一人ひとりの日々の行動や生活様式に変化を迫り、価値観の転換や社会変容をももたらしているのではないでしょうか。子育てや子どもの育ちにおいても例外ではなく、変化する状況に応じた柔軟な政策展開が、本県においても求められていると考えます。
NPO法人育ちあいサポートブーケは甲南女子大学伊藤篤教授監修のもとに、2021年9月から11月にかけて、コロナ禍での子育て実態調査を実施しました。県全域の3才までの子どもの保護者447名、県内地域子育て支援拠点事業・利用者支援事業職員293名等からの回答を得、その結果が本年2月に公表されました。
保護者への調査によると、自分が感染したら困るという不安を98.5%が感じており、「なるべく外出を控えて自宅で過ごしている」62.2%、「他の親子と交流できず寂しい」69.1%、「子どもへの関わりに自信が持てない」61.5%、「親子だけの時間に息が詰まる」51.9%等となっています。
子育て支援に携わる職員へのコロナ禍前と比べて変わったと感じている親の様子についての設問では、「外出自粛などで家庭・家族関係にストレスのある親が増えた」64.8%、「孤立している親が増えた」42.3%、「子育てに不安のある親が増えた」39.9%等となっています。
これらの結果から、感染への不安によって社会参加や人との交流が一層困難になり、親として子育てを学ぶ機会も得られず、孤立した環境でストレスを抱えながら懸命に子育てしている保護者の様子が伝わってきました。孤独な子育てはこれまでも課題とされてきましたが、コロナ禍で状況が加速的に深刻化しているのではないでしょうか。
加えて、アプリやオンラインでの支援が充実すれば対面できる場や機会は必要なくなると思うかとの設問に、95.3%の保護者が「そう思わない」と回答しており、オンラインは、情報収集としての有用性があるものの、対面に代わるものではなく、新たな形でのリアルな支援や交流が保護者にも子どもにも益々求められていると考えます。
当該法人は今回の調査結果に基づき、コロナ禍の只中で出産し育児のスタート期を過ごした親子にとっては、変化した状況自体が当たり前の子育ての日常(ニュースタンダード)」になっている可能性を示し、子育て家庭への多様なアプローチ(支援の入り口の質的・量的拡大)および保護者のニーズに個別的に寄り添う支援の必要性を指摘しています。地域のボランティアによる家庭訪問を通して、保護者の話を傾聴、ストレスをケアし、ニーズに応じて保護者を地域の資源につなぐ家庭訪問型子育て支援を提案されました。愛知県等の先進自治体で展開される「ホームスタート事業」は、その一例だと認識するところです。
現在も様々な子育て支援施策が行われていますが、例えば子育てひろばに出かけづらい親子や不安を感じているが、相談先を見つけられない親等に支援は届きづらい実態があります。ホームスタート事業は、こうした支援のすき間に陥り孤立しがちな親子のもとへ支援を届ける事業であり、本県においてもモデル実施を提案するものです。
知事は、長引くコロナ禍における子育ての課題をどのように捉え、また今後の子育て支援策への抱負に関してのご所見をお伺いします。

5 「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を踏まえた子どもの体力向上について

全国体力・運動能力、運動習慣等調査は、2008年度から全国の小学5年生と中学2年生を対象に毎年行われており、21年度の調査対象となったのは、全国の小学生約103万人、中学生約98万人です。20年度は休校等により全国調査自体が困難だったため、コロナ禍での子どもたちの体力の変化や生活習慣を全国規模で捉えた21年度の調査の結果が注目されていましたが、深刻な体力低下が明らかになりました。
19年度の調査と比べると、小学生中学生男子女子共に体力は低下しており、特に筋力を測る上体起こし、瞬発力等を測る反復横とび、持久力を測る20mシャトルラン、持久走は著しい低下です。スポーツ庁によれば、低下の主な要因として、①運動時間の減少、②学習以外のスクリーンタイム(テレビ・スマホ・ゲーム機等の視聴時間)の増加、③肥満に該当する児童生徒の増加を挙げ、これらはいずれも新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けたことで、一層拍車がかかったと分析しています。
私は生活習慣と体力についての調査結果が、特に気がかりです。学習以外のスクリーンタイムについては、視聴時間が2時間以上の割合が増加、1日5時間以上の小学生が男子15.9%、女子11.4%、中学生は男子14.6%、女子13.3%で、スクリーンタイムが長時間になると、体力合計点は低下します。また小・中学生の男女ともに、朝食を毎日食べる子どもは減少しており、毎日食べる子どもに比較して食べない子どもの体力合計点数が低い傾向です。睡眠時間では7時間以上8時間未満のグループが中学生の男女とも最も体力合計点が高い結果となっています。
これまでの調査でも明らかになっている小学校入学前に外遊びをよくしていた児童生徒は、日常的に運動し、体力も高いというデータを重ねて考えると、子ども時代を子どもらしく過ごせるようにすることこそが、体力づくりの重要と考えます。体力づくりの一つとして外遊びの果す役割は大きいと考えます。外遊びが増えればゲームやテレビの視聴時間は必然的に減ります。同時に外遊びでの疲れは、子どもたちを快適な睡眠に導き、朝の快い目覚めと食欲に繫がるという好循環が生まれると思います。
多くの専門家が指摘するように、子ども時代に日常的に体を動かすことは、長く健康に生きていくうえでの土台であり、スポーツ選手をめざさないから、運動はしなくて良いとは言えません。また、全国体力・運動能力、運動習慣等調査の総括にも学校や家庭において日頃から児童生徒に、運動やスポーツをすることの大切さを伝えるとともに、運動の楽しさを実感し、工夫しながら運動をする習慣の定着に努めることが大切である。しかし、コロナの影響による児童生徒の体力低下の回復を急ぐあまり、過度に運動やスポーツを実施したり、トレーニング的な取組に偏ることは避けなければならない。児童生徒の実態に照らして、着実で継続的な取組を進める必要があると記されています。
そこで、21年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果を踏まえ、子どもの体力向上に向けてどう取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

6 県内公立学校外国籍教員の処遇について

現在、兵庫県の公立学校で働く外国籍の教員は29名です。その全ての教員は、当然ながら日本国籍の教員と同様に教員免許を所持し、教員採用試験に合格して採用され、各々の学校現場で教育活動にあたっておられます。しかしながら現状では、外国籍であるが故に、主幹教諭等の職につくことは出来ないのです。
兵庫県における教員採用の国籍条項は1981年に撤廃され、1991年3月の文部省助成局長通知を受けて、県は外国籍教員を任用の期限を附さない常勤講師として正式採用することとしました。兵庫在日外国人人権協会資料によれば、当時の県教職員課長は、当事者・支援者等との話し合いの際に「今は常勤講師採用に反対しないで欲しい。外国籍教員が管理職試験を受ける頃までにはこの任用差別は解消する」と発言したとの記録が残っています。担当職員にあっては、当時から処遇改善の必要性を認識していた訳です。30年以上を経た現在、学校内においてリーダー的な存在として若手教員を指導する立場にある外国籍教員が増えつつあるにも関わらず、改善は果されていません。その結果、順調に昇任した日本国籍の教員との生涯賃金格差は高額(約1800万円)に上っているのです。
2012年3月、日本弁護士連合会は文科省への勧告で憲法22条が保障する職業選択の自由を侵害するものであると指摘し、外国籍者も教諭として任用し、外国籍教員でも校長を含む管理職に登用して支障はないこと等を述べました。また2018年9月、国連人種差別撤廃委員会定期報告総括所見(日本審査)で、政府ならびに地方自治体に外国人長期在留者及びその子孫に対して、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公職へのアクセスを認めることを求めました。
また、国際化の進展により、地球的規模で人材を確保する必要性が増しています。外国籍教員の処遇を今後も善処しないことは、本県にとって大きな損失ではないでしょうか。国籍に囚われずに優れた人材を確保し、適材適所の人事配置によって全職員が持てる力を存分に発揮することは、県政発展と全ての県民の幸せに資するものです。
齋藤知事は、選挙前の住民団体の公開質問状への回答文書(2021年6月)において、「公立学校の外国籍教員と日本国籍教員との給与等の差別解消について」は「賛成」であると回答されました。加えて「グローバル化が一層進展している現在において、多様な価値観を共有することは、行政の立場としても重要な流れだと思っています」と記載されています。
私は外国籍教員(給料表2級)にあっても、主幹教諭(給料表3級)等に相応しい経験や能力、意欲や熱意等を有する者については、昇任の道を閉ざすべきではないと考えます。他自治体の先進的な取組事例等を参考にし、本県においても改善を図るべきではないでしょうか。
教育委員会として県内公立学校外国籍教員の処遇の現状をどのように認識され、今後どのように改善を図っていかれるのか、ご所見をお伺いします。

北上 あきひと

(選挙区:川西市・川辺郡)

一般質問

(中田 英一)[発言方式:一括]

1 有機・減農薬米の利用拡大について
2 県内農産物の輸出促進について
3 教員不足に対する取り組みについて
4 県営住宅駐車場の外部開放について
5 医療圏をまたぐ病院統合について
6 地球アトリエ構想について
7 人と自然の博物館コレクショナリウムについて

質問全文

質 問 日:令和4年6月7日(火)

質 問 者:中田 英一 議員

質問方式:一括答弁方式

1 有機・減農薬米の利用拡大について

コロナ禍やウクライナへのロシア侵攻により世界の流通は不安定さを露呈し、気候変動に伴う農産物の不作や途上国での人口爆発も予測される中で、食料安全保障すなわち食を海外に依存することの危うさが益々現実味を帯びてきた。かねてから日本農業は、地球温暖化や頻発する自然災害、化学肥料や飼料の海外依存、生産者の減少・高齢化の進行などによる生産基盤の脆弱化などが課題となっている。
こうした課題を克服し、生産力向上と持続性の両立を実現する食料システムを構築するため、昨年5月、農林水産省はみどりの食料システム戦略を策定した。その中では、2050年までに農林水産分野でのCO2ゼロエミッション化を目指すことや、化学農薬使用量の低減、化学肥料使用量の低減、有機農業の取組面積拡大、食品製造業の労働生産性の向上などの目標が掲げられている。このうち有機農業の具体的な取組目標数値は、2018年で国内の耕地面積の0.5%しかない有機農業の取組面積を25%に拡大すると高く設定されており、この達成には力強く後押しするイノベーションが必要である。
県では、1973年に有機農業生産者や食や環境に関心のある有志による有機農業研究会が発足し、有機農業の全国大会・国際大会を開催されるなど、早くから取り組みが進められた。1993年には県独自で有機農産物認証制度を創設し、2002年には環境負荷を低減させるコウノトリ育む農法の確立・普及を図っている。2009年には環境創造型農業を計画的に推進するため兵庫県環境創造型農業推進計画を策定、2019年から第2期計画を策定し推進しており、全国的に見ても先進的な状況と言えるが、それでも2021年の有機農業取組面積は目標面積に届いていない。
地元で比較的大規模で耕作される農業者に話を聞くと、付加価値が高く、環境にも身体にも良い有機や減農薬に転換したいが、手間に見合った価格で消費者がついてくるか不安が残り、社運をかけて設備投資を伴う大々的な転換を決断するには躊躇してしまうとのことである。こういった意欲的な農業者の背中を押すことができれば、有機・減農薬農産物の生産者数・生産数量・耕作面積が増加し、それによって有機・減農薬農法における技術向上・スマート農業機器の開発・市場の活性化が促進され、ひいてはかかる農法の生産コストの低減や県農産物全体のブランド化・価格向上につながっていくと考えられる。
そこで、県として有機・減農薬農産物の安定した購入先をつくり出し、農業者が生産に取り組みやすく、設備投資にも踏み切れるようにするため、学校給食に採用することを提案する。
学校給食での有機農産物の利用拡大については、令和3年度予算特別委員会で北上委員が質問されたが、調達量やルートの確保が困難であること、コストがかかることから恒常的に実施するのは課題が多いとの答弁があった。近年県下各市町議会においても同様の質問が取り上げられているが、同様の理由により実現に至っていない状況にあるように思われる。
しかし、野菜については数量やルートの確保が難しいというのも理解できるが、米であればより計画的な生産、長期保存も可能であり、ルートについても県の外郭団体である学校給食・食育支援センターでの一括調達が可能であることから十分に確保できると考える。また、コスト面での課題に対しては、小さな取組みからはじめてもいいのではないか。例えば、年間で1人1食分の場合、私の試算によれば県内の小学校で約21t、中学校で約11tが必要量となる。この場合の慣行米との価格差を先進的に全量を有機米に切り替えた千葉県いすみ市の事例(㎏あたり187円)から計算すると、1回分の価格差はおよそ600万円となる。コウノトリ育むお米にもある減農薬米であればさらに価格差は縮まり、低予算で導入できると考えられる。
全国的に見ればいすみ市のように取り組みを始めている自治体はあるが、都道府県単位で一体となって取り組んでいるところはまだないようである。豊かな農地と大消費地を抱える兵庫県ならではの取り組みであり、次世代を担う子ども達を大切にする、知事の姿勢にもマッチしていると感じている。
そこで、環境創造型農業の推進を担う農林水産部として、学校給食を活用した有機・減農薬米の利用拡大についての現状認識と今後の方針について、当局の所見を伺う。

2 県内農産物の輸出促進について

コロナ禍によりインバウンド需要は一気に立ち消えたが、その裏で食材・農産物の輸出額は増加した。観光客として来日できない分、現地で日本食材を求めるニーズが高まったものと考えられる。
国は農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にする目標を掲げている。その中で米・加工品の輸出については目標額を52億円(2019年)から125億円(2025年)に設定し、中食・外食を中心とした需要開拓の他、パックご飯や米粉といった加工品の市場開拓も挙げているが、この数値は需要調査に基づいており、日本米への期待が高いことを示している。
2021年の農産物輸出先を見ると、1位の中国と2位の香港で輸出金額の約40%を占め、4位の台湾を含めると約50%を占める。これらの地域へは、りんごなどの果物の輸出が中心だが、米の需要が増加傾向にあり、健康志向の高まりから有機農産物への関心と購買力も高まっている。1問目で取り上げた有機・減農薬米の付加価値は海外にも通用するものであり、需要の増加にともない輸出に向けた好機であると考える。
また、中国の海関(税関)総署は、2001年のBSE発症を受けた日本産牛肉の輸入禁止措置について、2019年12月に生後30ヶ月以下の骨なし牛肉に対して解除すると発表した。その後の具体的な開始日程や手続き等については公式発表に至っていないが、引き続き再開に向けた2国間での協議の場は継続されており、近く再開される可能性もあるなど、県が世界に誇る但馬牛・神戸ビーフも合わせて輸出促進の準備を進める必要がある。
そこで、有機・減農薬米や神戸ビーフといった付加価値の高い県産農産物の、海外への輸出拡大の戦略をどのように考えるか、また、中国では、友好提携先でもある海南省が2025年に関税を撤廃し自由貿易港となる計画が進んでいる。これまで県は県産農産物等の販路開拓について、事務所がある香港を中心に進めてきたが、海南省が第二の香港として輸出戦略上大きな拠点になる可能性も考えられることに対する方針について、当局の所見を伺う。

3 教員不足に対する取り組みについて

文部科学省が昨年度初めて行った全国調査では、4月の始業日の時点で公立の小中学校や高校などで合わせて2,558人の教員不足が明らかになり、今年度も厳しい状況が報告されているとして、文部科学省が特別免許や臨時免許制度の緩和および活用を緊急で通知したとの報道があった。
昨年注目を集めた♯(ハッシュタグ)教師のバトンプロジェクトは、文部科学省が現職の教員に、教職の魅力等についてSNSを通じて発信してもらおうと始めたが、現場の声としては、ただでさえ児童生徒が学校にいる時間帯は給食時間も含めて休憩が取りにくく、児童生徒の下校後に会議や部活指導、明日の授業準備を行うといった長時間残業が常態化するなかで、小学校の英語教科化やプログラミング教育の必修化で負担が増え、さらにはコロナ禍におけるICT活用のための研修や準備、消毒作業も付け足され、教員の負担はさらに重くなっているというものであった。
こうした状況が報道などで一般に知られるようになり教員を目指す人数が減少したこと、団塊世代の大量退職にともなって若手教員志望者が大量に採用され、正規の教員を目指す非常勤講師が減少したこと等が教員不足の要因と考えられる。
県でも令和3年5月時点で中学校57人、小学校22人の教員が不足していたことが確認されている。また、年度途中に体調不良や産休・育休などで教員が休職することが当然想定される。欠員分の業務負担は同じ学校の教員にのしかかり、多忙化が進むなど、さらなる教員志望者の減少や未来を担う子供達の教育環境の悪化につながるなど、悪循環に陥ってしまう可能性がある。この悪循環を断ち切るには、まず教師不足を生じさせない取組みが必要である。
教育委員会では、令和3年度の採用試験から、かねてより要望のあった非常勤講師としての勤務経験を加点事由として明記するなど、正規採用には及ばずとも非常勤講師として県で働くことの魅力増進に努めている。さらに、非常勤講師が充分に集まらなかった場合にも県下自治体の教員確保がスムーズに進むよう、講師登録制度を全県で統一し、情報共有しやすい環境を整えて学校と登録者のマッチングや登録者募集の強化に取り組んでいる。
しかし、現状、講師登録制度に登録されている方だけでは欠員を埋めることができず、埋まらない分は各市町教委や学校長などが退職者などに頼み込むなどしてかき集め、それでも足りない場合がある。非常に厳しい状況であるが、それでも未来を担う子ども達のために充実した教育環境を提供することが我々大人の責任である。
そこで、県で教員を目指す者をさらに増やすため、兵庫の教育の魅力や取り組みを十分に発信するとともに、文部科学省が示した特別免許や臨時免許制度の活用も一つの手段と考えるが、教員不足に対する取り組みについて、当局の所見を伺う。

4 県営住宅駐車場の外部開放について

2012年に同内容の質問をしたがその進捗について確認する。
外部開放は、県営住宅に整備された駐車場区画について、住人の高齢化や車離れ等により契約されず空いたスペースを有効活用するため、時間貸しや月極駐車場として住人以外の外部利用者に貸し出す取り組みであるが、当時の貸出実績が136区画だったのに対して、令和4年3月末時点で661区画と、この10年で525区画増加している。その陰には外部開放を進めるために指定管理者にインセンティブを付与する制度を確立するなどがあったと聞いている。
県民の資産である土地の有効な利用の推進であって非常に喜ばしい。しかし、まだまだ全体の利用率は約60%にとどまり更なる推進が求められる。
県の方針では、空き区画のうち20%は住民用の区画として確保する、つまり空き区画の80%を上限に外部開放を進めるとのことである。そうであれば、2台以上空き区画のある住宅に関しては全て外部開放を行い広く募集をかけていくべきであるが、10年が経過してもなお297住宅中47住宅の駐車場しか外部開放に至っていない。中には、郊外に立地しており、そもそも需要がないという場合も考えられるが、市街地で近隣に駐車場があるような住宅、すなわち需要が見込まれる事例も見受けられる。
伸びない原因の一つには、自治会等の承諾が得られないという場合が考えられる。県営住宅の設置目的は県民生活の安定と福祉の増進であり、住民生活を阻害することは避けなければならないが、現にこれだけの外部開放が広がっており、外部開放を実施しても住民の生活を阻害しない事例が多く積みあがっている。にもかかわらず、自治会等の反対を理由として外部開放にできていないとすれば、既に開放している住宅住民との不公平も生じてくる。
別の原因として、例えば指定管理者のホームページを見ても駐車場が外部に貸し出されていることを見つけることはできないといった告知不足もあるように思う。
新知事のもと、県営住宅駐車場については公平性の観点からも原則として外部開放を実施するというルールを徹底する方針を出し、広くPRを行うことで、県有資産の有効活用をさらに強く進めていくべきと考える。また、外部開放を実施している住宅に関しても、この間、外部開放の区画数があまり伸びていない。当初は需要予測の範囲で開放台数を決定したと考えられるが、実績に応じて増加させていくため、価格交渉を含め駐車場管理事業者等に積極的な働きかけを行っていくべきであると考える。
以上を踏まえ、県営住宅駐車場の開放区画を拡大していく取り組みについてどのように対応していくか、当局の所見を伺う。

5 医療圏をまたぐ病院統合について

今年3月に厚生労働省から示された第7回の第8次医療計画に関する検討会資料では、コロナへの対応が明記されつつも、従来のとおり人口減少に向けて地域医療構想を引き続き着実に推進するとされている。
県内でもこれまでにいくつかの医療機関の再編統合等が実現・進行しているが、全て同じ2次保健医療圏域内で行われてきた。神戸市北区の北神地域と三田市域の急性期医療確保に向け、両市が設置した検討委員会は、現在の済生会兵庫県病院(神戸市北区)と三田市民病院について、再編統合が最も望ましい、場所は両病院の中間地点が望ましいとする報告書を3月25日に両市長に提出した。
この内容が実現することになれば、三田市民病院が有していた病床が、三田市が属する阪神圏域から神戸市北区の属する神戸圏域に移転することになり、阪神北準圏域で不足している高度急性期病床について、若干数担っていた三田市民病院分のさらなる減少という圏域県民の命に直結する決定が、三田市と神戸市の2市のみによって行われるという不合理が生じるのではないかと考える。
そこで、圏域をまたぐこの統合の進み方について県としてどのように対応するつもりか。また、主に県中部地域以北では阪神北準圏域のように高度急性期病床の数が不足気味であり、これに対応するのは広域医療行政を担う県の役割であるが、命に直結する高度急性期病床の計画に沿った充足についてどのように進めて行くのか、当局の所見を伺う。

6 地球アトリエ構想について

県立有馬富士公園は有馬富士をはさんで北と南にまたがる広大な公園で、南部に整備された子供向け遊具の充実した公園は家族連れに大人気で、コロナ禍にも多くの来場者があった。
一方で北側の公園は、広い芝生広場が整備され、利用者数は多くないものの、ボール遊びや凧揚げなどのびのびと過ごせる空間として親しまれている。
その広場の端の窪んだところに新宮晋氏の風で動く彫刻がずらりと設置された風のミュージアムがあり、この隣に1.5ha約30億円の予算を投じてアートセンター・アトリエ・カフェレストラン・劇場などを備え、自然と芸術を体験できる施設地球アトリエを建設する計画が平成28年に提唱され、昨年より事業実施されてきた。
しかし、コロナ禍による行動変容等の利用者ニーズの変化や設置後の運営の見通しを見極める必要が生じたこと等を理由として、造成工事への着手がストップしている。
まず、運営に関しては、県が運営を委託する指定管理者が自前で寄付金を毎年2870万円集めることを想定した収支計画となっているうえ、コロナ禍による経済状況の悪化等を勘案しても持続可能性が低いと感じられる。また、コロナ禍を経て、こうしたハコモノといわれる施設整備への投資をより抑制する観点からも一度立ち止まることは妥当な判断であると考えている。
しかし、一方で、2025年の大阪万博やその後も外国人観光客の流れを定着させることを目指し、県下でもさまざまな取り組みを進めるなかで、阪神間からのアクセスも比較的よく開放的な空間に計画される地球アトリエ構想は、その一つになり得ると考える。
そこで、できるだけ早期に決断し進める必要があり、また、構想については、持続可能性の観点から、特定の人や団体ありきの制度・運営ではなく、若手芸術家も含めた幅広い県民や観光客が自然と芸術に触れ、交流が生まれる機会を創出できるような拠点の整備にとどめるような軌道修正を加えるべきと考えるが、当局の所見を伺う。

7 人と自然の博物館コレクショナリウムについて

県立人と自然の博物館は、平成4年にホロンピア88のパビリオンを活用して設立された、人と自然の共生をテーマとした博物館であり、ひとはくの愛称で地元にも親しまれている。開館当初から、本館での展示だけでなく、県内に博物館を届ける活動に取り組み、現在では移動博物館車ゆめはくによって県内外を巡り、本物の魅力を訪問先に伝えるなど、地元三田市民を始め、県内各地域から愛される博物館として運営されてきたと理解している。さらに、多くの研究員を抱える研究機関でもあり、研究活動をベースとして、資料の収集や収蔵管理、展示、セミナーなどの生涯学習、シンクタンク活動など多方面にわたって力を入れている。
開館から30年が経過し、これまで収集してきた貴重な資料やコレクションの収蔵スペースが手狭になる中、開館30周年記念として、展示機能を併せ持つ新たな収蔵庫であるコレクショナリウムが整備され、いよいよ10月にオープンすると聞いている。収蔵機能の確保だけにとどまらず、体験型の展示ギャラリーを備えたセミナーの開催も想定されるなど、さらに県民に開かれた施設となることが望まれている。また、三田市では、周辺ニュータウンの高齢化や人口減少といった課題があるなか、子どもから大人まで多世代が集まり、交流する賑わいある活動拠点としての役割を担うことが期待されていると感じている。
そこで、目玉である展示の運営及び県民の来館戦略について伺う。
本館にも広い展示用のスペースがあったが、膨大な資料展示の入れ替えは人員コスト面の問題もあり、なかなか実施できていなかったように感じる。新たにできるコレクショナリウムの展示スペースと合わせ、タイムリーな展示の入れ替えや見せ方の工夫など来場者を飽きさせない効果的な展示を展開する必要があると考えるが、どのように対応していこうと考えているか。
また、これまでも研究員の努力により、子どもから楽しめて大いに学びのあるような内容の深く幅広いセミナーが開かれ、昨年は146回と年中開催されているような状況であるが、まだまだ県民に広く知れ渡っていないように感じる。30周年の記念イベント等を一つの契機として、セミナー内容等の素晴らしさとともに、ひとはくの魅力を発信するだけにとどめず、着実に届け来館につなげていく必要があると考えるが、どのような戦略をもって望むつもりか、当局の所見を伺う。

中田 英一

(選挙区:三田市)