議会の動き

中田香子議員が質問(予算審査・健康福祉部)を実施

第304回2月定例会 予算特別委員会質問 (健康福祉部)
2010年3月5日(金)

1 保健所の機能について

 近年、児童虐待件数や自殺者数が高止まりの傾向にありますが、精神障害を持つ親が虐待者となる事例がたびたび発生し、自殺にはさまざまな原因があるものの自殺とうつ病についてもその関係が指摘されていることは周知の事実です。また、薬物汚染が若者の間に蔓延しており、高校生、大学生そして中学生までもが大麻所持容疑で逮捕・補導されるという非常にショッキングな事件が発生したのは記憶に新しいところです。
 阪神・淡路大震災を経験した本県では、保健師が中心となって、震災後のPTSDや被災地でのアルコール関連問題について、健康調査を行い、被災者の精神保健面の問題を明らかにし、きめ細かく個別の対応を行うとともに、被災者全般のこころのケアについての啓発や集団指導を行い、被災者が孤立することなく精神的健康を取り戻すための活動を積極的に行ったという実績があります。
 このような経験を活かし、保健所においては、保健師が中心となって、児童虐待や心のケア、青少年の薬物依存等についても関係機関、専門機関と連携して支援を強化していく必要があると思われます。
 現行の「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」では、地域保健の広域的、専門的かつ技術的拠点としての保健所は、市町に対する援助及び市町相互間の連絡調整の推進を果たすべき旨等が定められています。
 保健所には、今年に入り、猛威を振るった新型インフルエンザのような感染症対策等とともに、地域における保健医療関係の専門的行政機関として、健康危機の発生を未然に防止し、危機発生時にはその規模を把握し、地域に存在する保健医療資源と調整して、関係機関を有機的に機能させるという役割が期待されています。
 言い換えれば、保健所に最も期待されている役割は、保健サービスを直接提供することよりも、地域の医療機関や市町の保健センター等の活動を調整して、必要なサービスを住民に提供する、健康危機管理の司令塔となることです。
 保健所の組織や機能面から、本県のこれまでの取り組みを見てみると、平成13年4月の地方機関再編では、保健所と福祉事務所の統合再編を行い、また、この度の新行革プランでは、健康福祉事務所の原則1圏域1事務所への統合再編など、行革という名の下で、数度にわたる見直しを実施してきましたが、県下各地域や実際の現場において、保健所が十分に機能しているのか、改めて検証する必要があると考えます。
 精神保健対策や感染症対策など、県民の生命、健康の安全を脅かす健康危機や健康問題への対応は、今後ますます重要な課題となっていくものと思われ、保健所には、新たな健事案に適切に対応していく機能が求められているますが、私は、保健所が、地域で発生する健康問題に取り組むコーディネーターという役割を失ってしまったのではないかと危惧しています。
 そこで、このような視点で、今一度、保健所の機能を再点検し、健康危機はもとより、必要に応じて、特に精神保健を中心としたコーディネート機能の強化を図っていくべきではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

2  女性がん対策について

 本県のがんによる死亡者数は、昭和53年に脳卒中を抜き、死亡原因の第1位となりましたが、その後も増加の一途をたどり、現在、死亡者の3人に1人が、がんで亡くなってるという現状にあります。
 本県では、全国に先駆けて「ひょうご対がん戦略」を策定し、その後、新戦略の策定を経て、平成20年2月には、「がん対策基本法」に基づく「兵庫県がん対策推進計画」を策定するなど、がん制圧に向けた総合的な施策展開を実施してこられました。
 本県では、肺及び肝がんの死亡率が全国を上回り、検診受診率も低いことははたびたび指摘されてきましたが、忘れてはならないのは、子宮がんの死亡率が全国値を上回っており、特に、子宮がん、乳がんの検診受診率は、全国と比較しても極端に低いという事実です。
 県では、「がん対策推進新計画」で、検診の受診率を5年以内に50%以上、とりわけ乳がんについては60%以上とする目標を掲げ、女性がんの受診促進を図るため、講習会の実施をはじめ、検診に従事する医師等の技能向上のためのマンモグラフィ講習会などの取り組みを推進しておられます。
 しかし、現在の子宮がん、乳がんの受診率を見る限り、5年以内に目標として掲げた50%、60%まで受診率を高めていくには、相当な努力が必要ではないかと考えます。
 女性がんを取り巻く状況として、我が国でも子宮頸がんワクチンが正式承認されたものの、経済的負担を軽減する公費助成を実施している自治体は極めて限られています。
 また、乳がんの撲滅については、検診の早期受診を啓蒙・推進するため、世界規模のキャンペーンとしてピンクリボン運動が展開されていますが、受診率の低い市町と連携した予防対策の普及啓発や検診率の向上対策など、地域に密着した対策も重要と考えます。
 若年性乳がんと闘い亡くなられた女性を主人公とした映画が大きな反響を呼びましたが、映画のモデルとなった女性は、「自分と同じつらい思いを他の人にはしてほしくない」と言って取材を受け、早期発見のための検診を強く訴えていたと伺っています。
 そこで、「兵庫県がん対策推進計画」に掲げた、子宮がん、乳がんの受診率達成のためのこれまでの取り組みと今後の対策とともに、女性がん撲滅に向けた県の対策について、当局の所見をお伺いします。

3 子どもの安全と健康対策について

 未来を担う子どもたちが健やかに成長し、幸福な生活を営むことは、本格的な少子高齢社会を迎えた今、全ての人の願いとなっています。
 我が国では、平成20年の乳児死亡率が2.6と、母子保健の水準は世界最高レベルにありますが、残念なことに医療等の進歩にもかかわらず、現在でも、小児が不慮の事故で命を失ったり、乳幼児がSIDS(シズ:乳幼児突然死症候群)によって亡くなるという事例が後を絶ちません。
 平成20年の本県における小児の不慮の事故による死亡率は、人口10万人当たりで、0歳児が18.4と全国値の13.2を上回り、5歳から9歳で3.0、10歳から14歳でも4.1と全国値を上回っているほか、SIDSの死亡率も0.23と全国値の0.13を上回るという結果が出ています。
 子どもは、その発育・発達段階に応じてさまざまな危険にさらされており、事故にあった子どもの保護者は、もう少し自分が注意しておれば、事故を防げたと考えることが多く、普段から、子どもの周りにいる方々が事故の潜在的な危険を取り除くといった安全管理を行ったり、子どもに何が危険なのかを教えていくことが重要ではないかと考えます。
 また、SIDSの原因は、まだ十分に解明されているわけではありませんが、欧米では、うつぶせ寝、人工乳、両親の喫煙によって発生頻度が高くなるとも言われ、これらについて各国がキャンペーンを実施した結果、発生が減少したという結果も注目すべきではないかと考えます。
 県では、これまでの「ひょうご子ども未来プラン」の達成状況や少子化問題を取り巻く状況の変化等を踏まえて、今後5年間の「新ひょうご子ども未来プラン」の策定を予定していますが、子どもたちが健やかに成長するために、少子対策の観点から、子どもの不慮の事故防止や、乳児のSIDS対策に積極的に取り組んでいくことが必要ではないかと考えますが、当局の所見をお伺いします。