第308回定例会(2月)一般質問 2011年2月24日(木)
1 県政策立案機能の強化について
景気の低迷、人口減少、高齢化などの環境変化により、兵庫県政を取り巻く経済・社会状況は厳しさを増しております。県税収入が落ち込むなど県の歳入が限定される中で、重要な行政需要に応えつつも支出に優先順位をつけ、好景気時に肥大化してきた支出の構造を変革することは、難しいことではありますが、やり遂げなければならない課題であります。そのためにも、各種施策の予算投入の根拠・効果についての十分な検証が必要なことは言うまでもありません。
しかしながら、検証もややもすれば、雇用対策のように雇用者数が何人採用されたなど総数で表され、体験談でよしとするなど、個々の事業に捉われすぎて、政策全体から検証が薄らいでいるように思えます。
行財政構造改革調査特別委員会での「選択と集中」、「優先順位を決めて」との主張は、今後の政策づくりにおいて、重要性が増すものと考えられます。さらに自治体の政策には根拠が必要であり、その根拠に基づく政策は、住民に的確に理解される形で説明可能なものでなければなりません。
厳しい経済・社会状況が継続する中、国の経済対策等に伴い、兵庫県でも2009年度は2,163億円、2010年度は899億円と疎かにできない金額の補正予算が編成されました。
もちろん国の経済対策による支援は、緊急性があり、国の枠組みの中での事業執行となりますが、この度の政権交代により、自治体が取り組む事業に対して、基金を積み増とともに地方が自由裁量で使用できる交付金として分配されております。
その中で、国の経済対策として、計上された緊急雇用就業機会創出事業については、ここ数年、世界的な経済不安により、「派遣切り・雇い止め」に対して短期間雇用を推進するため事業として、産業労働部のみならず、あらゆる部局で実施され、今年度においても249事業が展開されています。
しかしながら、課題の解消を見極めつつ、本政策と相まっての経済雇用対策となっているのかについて検証がなされ、それが活かされているのかについて、少々疑問があります。
政策を推進するには、財源の裏打ちが必要であることから、たとえ使い勝手の悪い国補正予算であっても活用する必要があり、それを如何に効率的かつ効果的に執行するかは県の力量が試されるものであります。
しかしながら、今回の緊急雇用対策については、各課から出された事業を集めただけで、兵庫県の中・長期的な戦略として展開できていないのではないかと感じます。
また、2月補正について、追加配分を受けた「住民生活に光をそそぐ交付金」活用がだされていますが、この交付金は、住民生活の大事な分野でありながら、光があたらなかった分野である地方消費者行政、ドメスティック・バイオレンス対策、自殺予防など弱い立場の方への対策、自立支援などに使えるものです。前回は、女性家庭センターの環境整備等、今回は、老朽化しているこども家庭センター建て替え整備等とされていますが、こども家庭センター、女性家庭センターの整備のあり方は、今後の児童虐待対策、DV対策として重要であり、このままでいいのかを検討するなど、一定の方向性を持って協議を重ねることが必要であります。
その戦略を展開していくには、本予算編成についても同じことが言えるとおもいますが、知恵をだして効果的運用を企画県民部総合政策室が中心となって動くべきではないかと考えます。つまり、1つの部署が中心となって方向性を示し、それに応じた施策を各部局で、責任を持って検討、調整する担当課を設置するような仕組みが必要であります。
そこで、県の政策立案機能の強化について、組織改編も視野に入れ実行すべきと考えますがご所見を伺います。
2 「中小企業憲章」を具現化する経済・雇用プログラムの作成について
16年前、未曾有の阪神・淡路大震災の発生により、被災地域の生活基盤が崩壊しました。県では、当時、生活再建、にぎわいを取り戻すために、「産業復興計画」を策定したところであります。当時、私は商工労働常任委員長として、委員の皆さんと被災地で青空会議を開催し、震災直後の復旧に必要な事柄について県や国に対する要望や対応策について協議した経験を持っております。その内容は、現場の実態を踏まえて対応策がタイムリーとなるよう事業展開を進めることが緊急課題でありましたが、国の規制をぶっ飛ばし「やらねばならない」という気持ちが強かったのも事実であります。
現在、少子高齢化が進み人口減少社会への流れの中で、県財政に占める県税収入が落ち込む中で、地方税制についても改革が求められるものの、県としての経済・雇用対策の推進は、将来の安定した納税者を育てるためにも欠かせないものであります。
ある新聞に「どっこい町工場」という連載記事があり、興味深く読みました。
その中で、中小企業は、日本の企業全体の99%、労働者も7割を占めており、兵庫県でも同じ状況であります。100年に一度の経済危機といわれるリーマンショックが起きた時、つるべ落としのように仕事がなくなる不安の中で、歯をくいしばり、「中小企業にとって最大の資源はヒトと気づいた」と中小企業経営者の話。
また、ヨーロッパ小企業憲章「小企業はヨーロッパ経済の背骨。すべての政策は小企業の視点から考える」を基にして、日本で2010年6月「中小企業憲章」が誕生したこと。
中小企業でも、IT化や材料の軽量化も進み女性が活躍できる環境があり、情報発信・販路拡大などで顧客と町工場をつなげる架け橋の役は女性に適していることから女性労働力を活用していることや、ひざの障害に苦しむ人のためにここにしかない装具をつくっていることなどが紹介されております。
このように新たな人材・発想の工夫による働く場を確保している中小企業の取り組みは、特別な町工場ではなく、兵庫県にもいくつも例があると考えます。
新規学卒の若者の就職内定率の低さが報道され、兵庫県においても、100人の非常勤嘱託職員を臨時募集したところ、6倍の590人から応募があり、大半が新規学卒者と聞いており、厳しい雇用実態を反映しているものであります。
このような雇用情勢の中、大企業志向の若者に、働きたい女性に、また、障がい者に可能な仕事をきめ細かくしっかり打ち出すことに集中して、新たな経済・雇用プログラムを作成することが今求められています。
そこで、これまでの経済・雇用プログラムが、学生の志向のミスマッチ等に対して功を奏する対策であったのか検証するとともに、今こそ、「中小企業憲章」を具現化する施策推進をめざして、経済・雇用プログラムを作成すべきと考えますが、県当局のご所見を伺います。
3 新しい公共のあり方について
(1) 「新しい公共」宣言を活かした県支援のあり方について
2010年6月に政府より「新しい公共」宣言が出されました。その内容は、「新しい公共とは支え合い活気のある社会をつくるための当事者たちの協働の場であり、そこでは、国民・市民団体や地域組織・企業・政府等が一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し協働する」また、「新しい公共を実現するには、公共への政府の関わり方、政府と国民の関係のあり方を大胆に見直すことが必要であり、政府は、思い切った制度改革や運用方法の見直し等を通じて、これまで政府が独占してきた領域を新しい公共に開き、国民が決める社会を作る」と書かれております。
1995年という年は、兵庫県にとって未曾有の大震災の被害を受けましたが、一方でボランティア元年とも言われ、目の前の被災者に寄り添い活動するボランティアが産声をあげております。現在、県が認証するNPO法人は、1998年にNPO法施行されたこともあり、1,608(2011年2月現在)という大きな数となり、NPOの数の多さは兵庫県の宝とも言えます。
「新しい公共」の考えの中で、NPOの公共政策の役割は3つあると言われております。
第1の役割は、それまで公共政策のテーマとされてこなかった課題を発見し、社会課題として提案することであります。例えば、ドメスティック・バイオレンス(DV)は、世間から「夫婦喧嘩は犬も喰わない」と相手にされず、警察からは、「民事不介入」としてまともにとりあってもらえなかった課題を提起しております。
第2の役割は、発見した課題を社会全体に関わる公共政策上の課題として認知させていくことにあり、ここに、NPOが公共政策を形成するプロセスの最大の焦点があると考えます。
第3の役割は、公共政策の実施であります。DVの被害者支援を行うNPOシェルターはDV法が政策課題として取り上げる以前から活動を開始しております。今後、DV対策において、シェルターや相談窓口開設というNPOの役割だけでなく、DV法による警察や行政の介入の明確化や、被害者支援の補助制度の創設、メディア等による広報・普及などの総合的な政策を、行政・NPO・事業者・市民が役割分担をして実施していくこととなります。
例として、DV対策を取り上げましたが、兵庫県の持続可能な基盤づくりに「新しい公共」宣言を活かしたNPO支援などは重要と考えますが、今後、「新しい公共」の形成についてどのように取り組むのかご所見を伺います。
(2) 「寄附文化元年」を根付かせるための方策について
「新しい公共」となるNPOが、行政などから外部支援を受けることはしばしばあります。内閣府が発表した「2009年度 市民活動団体等基本調査報告書」によると、実際に外部支援を受けた団体が、必要と感じていることとして、活動希望者の紹介と派遣、活動・事業資金の助成があげられており、この結果からも、団体が人材・資金の悩みを抱えていることが伺えます。
事実、行政から必要とする支援について、「活動に対する資金補助」とする回答が最も多く70%を超えており、これはNPO等の収入のうち、寄附収入は5.5%にすぎないことにあります。確かに、行政や民間からの委託事業は活動のための重要な収入源ですが、必ずしも安定的した財源とは言えず、また、行政からの補助金にも限界があることから、資金面での大きな壁が立ちはだかっていると言えます。
阪神淡路大震災をきっかけに誕生した数多くの兵庫のNPO法人の財政基盤の安定を図ることは、NPOの先進県である兵庫県が取り組むべき課題と考えます。
昨年12月、税制改正大綱が閣議決定され、認定NPO法人制度など寄附税制が抜本的に改正されることになりました。寄附金の税額控除やこれまで認定取得が困難とされてきた事業収入中心のNPOにも認定への道が開ける新型パブリック・サポート・テスト(PST)要件による判定方式の導入など、NPO支援税制(市民公益税制)は新たなステージを迎えることになっております。
これらの新制度は画期的であり、社会のために使われるお金の流れが大きく変わる可能性が生じており、2011年が「寄附文化元年」となることを願うものであります。
また、個人住民税の控除対象寄附金も拡大しておりますが、個人住民税の税額控除については、自治体の条例制定が必要であります。既に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・福岡県、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市などが制定済みであります。
さらに香川県では、個人や企業などから寄附金を募り、集まった寄附金を原資として、NPO活動に対して補助金を交付するなどNPOの支援のために活用する「香川県NPO基金」を創設しておりますが、この制度については、寄附者が「支援したい団体」や「支援したい活動の分野」を指定して寄附をすることができ、地域のさまざまな課題に取り組んでいるNPOを支えております。
そこで、「新しい公共」であるNPOなどの市民活動を後押しするためにも、兵庫県として具体的な取り組みを行い、「「寄附文化元年」を根付かせるべきと考えますがご所見を伺います。
4 男女共同参画社会づくりの視点での県政づくりについて
「男女共同参画基本法」が施行されて10年を越えました。
思い起こせば、1979年、女性差別撤廃条約が国連総会で採択され、わが国においても国内法を整備し、この条約に批准しました。1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、それを踏まえて兵庫県では2001年「男女共同参画プラン21」を策定、2002年には条例を施行しました。本当に長い道のりでありましたが、今、後継計画の策定を前に感慨深いものがあります。
施策の基本方向として重点的に取り組む課題が示されていますが、特に、農林水産業における男女共同参画推進について伺います。
農林水産業、特に農業における労働人口のほぼ半数を女性が占め、重要な担い手となってきました。直売所、加工場、独自栽培など農業に関る女性がクローズアップされ、先日のテレビでは林業における女性の活躍が取り上げられるなど地域活性化の担い手として頑張っています。しかしながら、女性農林業者の地位向上は他の職業分野と比べても遅れが目立つ状況にあります。
現在、農林水産省が、女性の経済的地位の向上と就業条件と環境の整備をするため、家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき、取り決める家族経営協定の締結を推進していますが、締結状況は、全国で40,663戸と全販売農家の2.5%、主業農家でも11.3%、県では締結農家は117戸にすぎず、パーセントで表せないほど小数です。
また、農林水産省が実施した「2008年度 農家における男女共同参画に関する意向調査」を見ると、女性が農業・地域活動・家事・育児・介護等にバランスよく携われていないと48.7%の女性が回答しております。その方々に今後どのようにしたいのかを尋ねたところ、時間を増やしたいのは、家事・育児・介護が最も高く、反対に減らしたいのは、農業が最も高い回答でありました。この結果は、農村女性の多くが、どれも減らせないし、増やせないつまり、にっちもさっちもいかない状況ではないかと考えます。
2001年に農林水産省では、男女共同参画推進本部を設置し、「農村女性のチャレンジ支援」を行うとともに、農協などの女性役員、女性農業委員などの参画目標を設定し、女性の経済的地位の向上を進めております
しかしながら「新ひょうご男女共同参画プラン21(案)」の、数値目標の一つとして、女性農業委員の割合を2.7%から5%に引き上げると言う低いレベルの数値目標が出されております。これは、初めから無理だと諦めているしか見えない数値であり、県の重要政策として男女共同参画社会づくりを推進しようとしているとは言いがたい状況であります。
女性農業委員のみに固執するものではありませんが、農林水産業における女性の経営参画やリーダーの育成など女性の経済的地位の向上と就業条件と環境の整備を図っていく必要があります。
そこで、農林水産業における男女共同参画を、男女共同参画推進本部としてどのように進めていくのか戦略をお伺いします。
5 教育現場の専門職教諭のあり方について
(1) 命を育む養護教諭の配置等学校保健の充実について
2006年度の財団法人日本学校保健会の学校保健室利用調査によりますと、社会環境や生活習慣の変化が大きく影響し、子どもの悩みが以前と比べて多様化しており、保健室を利用する子どもの数や養護教諭の対応時間も増加傾向となっております。
特に、保健室を利用した理由として「主に心に関する問題」としたのは、小学生で1996年度は8%でしたが、2006年度には41%に上昇しております。中学生も18%から47%、高校生も14%から44%に増えており、悩みの内容も、いじめ・友人関係・家庭環境などが上位を占めております。また、限られた時間内で養護教諭が子どもに対応する時間も増えており、起ってはならないことでるが、多数の子どもたちの保健室の利用に伴い養護教諭にも発見が難しい事故の見落としや「ヒヤリ・ハット」も生じております。
現在、養護教諭の複数配置基準は、小学校で851人以上、中・高等学校で801人以上となっています。これまでから定数内臨時教員について何度も取り上げていますが、西宮市において養護教諭も例外ではなく、早急な解消が求められます。1947年に成立した学校教育法で養護教諭が配置された原点に返り、学校現場の実態に応じた養護教諭の配置が求められます。
昨年末、「ヨーゴティチャー世界へ」という新聞報道がありました。教職に関する内容と看護学等の専門的知識を兼ね備えている養護教諭は日本独特の制度でありますが、感染症予防や寄生虫予防に役立つと世界から注目されております。途上国の子どもの健康推進策は乳幼児を対象とする母子保健に偏りがちでありますが、学校でのエイズ・衛生など保健管理と保健教育を両方補う仕組みについて途上国から注目を集め、導入が求められております。
2009年には、研修生を派遣するガーナで国内に政府が初めて学校に保健室をつくり、2010年には、複数の学校が保健室を設置しております。
養護教諭は健康観察、健康相談等を通じて、子どもたちに寄り添い、心をほぐしていくと言う重要な役割を担っており、学校ではかかせない存在であります。
そこで、今、保健室を利用する子どもたちが増加する中で、命を育む養護教諭の配置を含めた、学校保健における体制や取組をどのように進めるのか、ご所見を伺います。
(2) 心を育む専任の学校図書館の司書教諭の配置等読書活動の充実について
学校現場での新学習指導要領の本格実施や、いじめ等の学校教育上の課題に適切に対応できるよう、小学校1年生の学級編制の標準を30年ぶりに見直し、現行の40人から35人に引き下げられました。少人数学級の実施のために、必要な教職員の増員が新年度教育予算に盛り込まれ、定員の2年連続純増は20年ぶりとなり、今後、順次進められることを期待するものであります。
そのような中で、子どもたちの学びを保障することも強く求められております。
1997年に学校図書館法の一部改正により、2003年4月1日から12学級以上の学校で司書教諭の配置が義務付けられ7年が経過しました。県においても、2008年5月現在、公立の小・中学校で764人に発令されておりますが、殆どが充て職で通常の担任を務めながらで、一部で担当する授業時数を減らしているものの、司書教諭の職務を十分果たせていない状況であります。
子どもたちが、さまざまな学習の場で学校図書館を活用する機会を持ち、課題を持って本を手にすることができるような授業の工夫は、自分の意見を述べたり考えたりする力や、表現する力・豊かな心を育むためにも、専任の司書教諭の配置は重要であります。
県教育委員会では、1994年度から県読書推進校を指定し、司書教諭を中心に読書活動を推進しております。その結果、図書館を利用する子ども達が確実に増え、読書量の増加も見られます。子どもたちの読書力は、個々の生育歴と大きく関係することから、司書教諭のアドバイスが生きてくるのであります。
そこで、学びを保障する読書活動の充実に向け、専任の司書教諭の配置も含めた、体制や取組の充実をどのように進めるのか、ご所見を伺います。