議会の動き

吉本誠議員が質問(予算審査・財政状況)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(財政状況)
2011年3月1日(火)

1 県税収入の見込みについて

 言うまでもなく、財政は、「入るをはかって出るを制す」必要があります。財政構造改革は、ともすると「出るを制す」にその焦点が集中しがちでありますが、入るをはかることも同様に重要であることは言うまでもありません。
 中でも税収確保等は、第2次行革プランを進めていく上でも重要なポイントであり、当局として、県税徴収率のアップ、未利用地等の売却・交換・貸付の推進、ネーミングライツの導入等に取り組むとされています。
 平成23年度の本県当初予算状況を見ると、県税収入は、前年度当初予算から138億円増の5,581億円が見込まれています。
 この見込額は、その時々の経済状況によっては影響を受けるものですから、実際の税収とは異なる可能性もありますが、いずれの額となっても徴収を確実なものとしていくことは言うまでもありません。
 この県税収入額の決算ベースにおける近年の推移についてですが、平成15年度の5,011億円を底に、16年度は5,389億円、17年度は、5,734億円、18年度は6,282億円、19年度は7,181億円、20年度には6,999億円になるなど、この6年で実に約2,000億円も増加するなど順調に推移しておりました。
 この主な回復の要因は、法人関係税が15年度当時1,237億円であったものが、20年度には2,124億円まで回復していることによるもので、法人関係税は県税全体の構成比においても3割以上を占めるものとなっていました。
 しかし、21年度は、世界的な景気後退に伴う企業業績の悪化に加え、地方法人特別税創設の影響により、県税収入は約5,956億円となり、法人関係税は約1,211億円、地方法人特別譲与税分を合わせても約1,476億円と、法人関係分だけでも約648億円も前年度を下回り、22年度の法人関係税見込みも1,028億円となっていることから、法人関係税の構成比は2割以下にまで急激に低下し、反対に、個人県民税や地方消費税の合計割合が50%を超えるまでに増加してきております。
 このように県税収入の増減は、法人関係税が大きく影響を与える、つまり、企業業績が大きく反映されるため、財政当局としてもその見込額を考えることは大変難しいことと言えます。
 実際のところ、過去10年にわたる、当初見込みと決算額の乖離について調査したところ、平成13年度は2.9%の減で174億円、平成14年度は7.9%の減で445億円、平成15年度は1.6%の減で80億円、平成16年度は4.8%の増で247億円、平成17年度は5.6%の増で302億円、平成18年度は4.6%の増で279億円、平成19年度は5.6%の減で427億円、平成20年度は4%の減で293億円、平成21年度は0.2%の減で9億円、平成22年度見込みは3.8%の増で204億円となっており、10年間の平均で4.1%の乖離があり金額ベースでは平均約246億円の乖離が生じています。
 このような乖離に関しては、増額の場合はまだ対応しやすいかもしれませんが、減額の場合は様々な不都合が生じてきたと考えられます。
 そこで質問ですが、近年のこうした傾向を踏まえ、今後とも法人関係税の構成比が低い状況が続くと想定しているのか、また、その結果、当初の県税収入見込みはこれまでより正確な見込みになると考えているのか、ご所見をお伺いします。

2 個人県民税の徴収率アップについて

 県税の徴収率アップについては、当局において相当程度努力されてきています。過去10年の徴収歩合は、平成13年~17年までの5年間の平均が、94.8%であり、平均して全国水準を1.5%下回っていましたが、その後は、平成18年度は96%、平成19年度は96.5%、平成20年度は96.6%と順調に上がってきており、ほぼ全国平均に近いところまできていたといえます。
 しかし、平成21年度は96%、平成22年度は95.7%と再び下落傾向にあることから更なる努力が必要となっています。この下落傾向は、先ほど述べたように、徴収率の高い法人関係税の比率が低下し、個人県民税の比率が上昇していることに起因していると考えられます。
 ご承知のとおり、この個人県民税は、個人市町民税と一緒に市町が課税及び徴収を行い、後に県に払い込まれるものであることから、市町の徴収能力に大きく影響を受けます。近年、この個人県民税の収入未済額が急激に増加してきており、未済額全体の6割を占めるまでに至っています。
 収入未済額は、その年度の調定額から徴収額を差し引き、更に、その年度に処理される不納欠損額を差し引いたものですが、例えば、平成21年度決算では、調定額6,206億円から徴収額5,956億円を差し引き、更に不納欠損額14億を差し引いた、約236億円が収入未済額で、この収入未済額の約6割となる約142億円を個人県民税が占めています。
 この個人県民税の収入未済額は、18年度は約76億円でしたが、19年度は約106億円、20年度は約126億円、そして、21年度には約142億円にまで増加しております。
 これまでの徴収率アップのための取り組みにより、自動車税や不動産取得税、法人関係税等の収入未済額が減少してきている一方で、市町が徴収事務を行う個人県民税の収入未済額が増加してきている現状にあるわけです。
 この問題に対しては、県当局として、整理回収チームの市町への派遣や県・市町共同徴収対策の実施等を行ってきているわけですが、まだまだ十分な成果は出ていない現状にあります。
 そこで質問ですが、県税に占める個人県民税の比率が上昇している中で、個人県民税の徴収率アップに向けてどのように取り組んでいくのか、特に、徴収率の悪い市町に対してどのような改善策を取っていくのか、ご所見をお伺いします。

3 高額滞納について

 本県における1件200万円以上の高額滞納の合計額は、県当局のこれまでの努力の甲斐もあり、過去10年で約52億円から19億円程度にまで減少してきており、件数も581件から250件にまで減少してきています。
 しかし、監査においても「現下の厳しい財政状況を踏まえ、今後とも各県民局を適切に指導するとともに、収入の促進になお一層配意されたい」などと指摘されているとおり、更なる努力により高額滞納についてしっかりと成果を上げ、限られた人員での効率性の高い徴収を考えていく必要があります。
 本県における高額滞納は、全体の約93%が法人で、主に不動産業や小売・建設業で占められており、税目別では不動産取得税が約60%、法人関係税が約30%~35%を占めています。
 この高額滞納については、県内法人の高額滞納の場合には、捜索や差押の実施により、収入未済額の縮減を行うことも可能と思いますが、県外本社分については、財産情報も少なく、十分な対策を行うことが難しい面もあると思われますが、今後、高額滞納事案にどのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。

4 病院事業に対する一般会計繰出金について

 県立病院は、慢性的な赤字の状況から脱却し、自立した経営が求められていますが、そもそも県立病院というのは、県民の福祉増進の観点から、民間病院がやらない、採算性が低いと言われる小児科、産科、精神科等の診療科を維持する必要があると同時に、高度専門医療や地域医療などの政策医療の確保・充実に重要な役割を担っています。
 その一方で、地方公営企業法に基づく経営の原則に従って、常に民間企業と同様の経済性を発揮して、そして合理的、能率的に運営することを要請されており、まさにこの二つのバランスをどうとっていくのか、つまり、医療の質とコストをいかに両立すべきかという難しい問題に行き着きます。
 このような経営環境の中、事業の収益をもって充てることが適当でない経費及び客観的に困難であると認められる経費について、収益的支出を負担すること等を目的に一般会計繰出金を毎年投入しています。
 全国のほとんどの公立病院では、この一般会計からの繰入金がなければ、そもそもの経営が成り立たない状況であり、例えば、本県においても、県立10病院の一般会計繰入前の収支は、平成17年度から平成21年度までの5年間の平均で約138億円の赤字となっていることから、一般会計繰入金なしでは到底経営が成り立たない状況にあります。
 本県における、この収益的収支の一般会計繰出金は、小児救急医療や周産期医療等のニーズの高まり等の理由により近年増加しており、21年度決算では約112億円、22年度決算見込みは、約122億円、来年度予算には約135億円が計上されています。
 平成20(直近)年度総務省公営企業年鑑の数値から計算すると、本県の繰入金は、病床100床当たりでは約2億7千5百万円で、地方独立行政法人化した大阪府と岡山県を除く45都道府県中25位となっており、全国平均の約3億3千8百万円に比較して、決して多過ぎることはなく中位に位置していると言え、その所要額の一部が地方財政措置の対象となっているものの、大変厳しい本県財政の中でも病院事業に対する県の積極的な姿勢が伺えます。
 そこで、質問ですが、本県の各県立病院がさらなる経営努力を行うことを当然の前提としつつ、現実問題として、一般会計からの繰入金がなくては経営が成り立たないという状況において、財政当局としては、病院事業への一般会計繰出金のあり方はどうあるべきと考えているのか、ご所見をお伺いします。