議会の動き

山本 千恵議員が一般質問を実施

 第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月3日)

質 問 者:山本 千恵 議員
質問方法:分割方式

 以下4項目5問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
 なお、質問は分割方式により行います。

1 多文化共生施策の推進について

(1)地域国際化推進基本指針の改定について
最初の質問は、多文化共生施策のさらなる推進に向けた地域国際化推進基本計画の改定についてお訊ねいたします。人口減少、少子高齢化、グローバル化が進む今日の社会において、人的多様性に配慮した地域づくりが求められていることは、誰もが認識しているところです。兵庫県では、男女共同参画社会づくり条例、福祉のまちづくり条例等を策定し、人的多様性配慮があらゆる施策へ、横断的に取り込まれるように展開されています。
多文化共生に関する取り組みは、21世紀兵庫長期ビジョンでも、「将来像を実現するための基本戦略」の中で「世界に開かれ、住民参加で多文化共生が実現する兵庫の暮らしづくり」として明確に示されており、具体的な指針としては、平成6年に策定した「地域国際化推進基本指針」を拠り所となっています。
 全国を見てみると、平成18年に総務省が地域における多文化共生推進プランを発表し、全国の都道府県や基礎自治体において、多文化共生に関する指針づくりが進み、何らかの形で多文化共生に関する指針を策定している都道府県は44に上ります。兵庫県の地域国際化推進基本指針は、平成6年に策定されており、以降、改定は行われておらず、先の44自治体のうち、最も古い指針となりました。全国に先駆けて、外国人県民の暮らしやすさを施策の中に取り込み、国籍が違っても、誰もが暮らしやすい地域づくりを目指した指針も、18年の時を経過してしまっては、地域社会の様子やニーズの変化が十分に反映されているとは言いがたいのではないでしょうか。例えば、指針の中の「防災」の項目にあげられている現状・課題は、「プロパンガスの安全な使用方法等を記載した外国語によるパンフレットを作成しており、今後とも防火・防災についての情報提供に努めることが求められる。」としか記載されておらず、阪神・淡路大震災を経験した本県としては、踏み込んだ災害時対応について記載されるべきと考えます。社会の変化や今後の本県の国際化を考えれば、「地域国際化推進基本指針」の検証と見直しが必要だと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

(2) 日本語指導が必要な外国人児童生徒の支援体制について
 次に、日本語指導が必要な外国人児童生徒の支援体制についてお伺いいたします。兵庫県の公立学校において日本語指導が必要な外国人児童生徒は、平成23年9月1日現在276校、802人。調査データのある平成16年度から経年では増減はあるものの、全体傾向として子どもの数、学校数ともに増加しています。日本語指導が必要な外国人児童生徒の学習支援等のために、兵庫県では全国に先駆けて平成15年に子ども多文化共生センターを設置し、授業中の通訳等のサポートを行う子ども多文化共生サポーターを派遣したり、学校からの相談に応じるなど、外国人児童生徒が置かれている教育環境のビハインドを補っています。教育委員会が子ども多文化共生センターのような機関を設置して支援を展開するケースは、全国的にも例がなく、行政としての最大限の支援体制を整えていると感じています。
 しかしながら、子ども一人一人にとっては、平成23年度からは在留4年間に拡大されたものの1日4時間以内、週1回~3回のサポーター派遣では心もとなく、地域の学習支援教室や日本語教室の支援を利用しているケースが多く見られます。私も、いくつかの支援教室を見てきましたが、多くは、県国際交流協会の助成金を活用しながら、厳しい財政状況の中で教室運営を行い、マンパワーの部分では、熱意をもって子どもの指導にあたる無償ボランティアに支えられていることがほとんどです。一人一人に応じた細かな日々のサポートは、行政の苦手とする部分であり、地域にゆだね、地域の人たちが地域の子どもをはぐくむ、ということが、実際の地域で行われているわけです。これは、まさに県と県民との「参画と協働」による地域課題の解決ですが、地域での大きな課題は人材の確保です。
 人材の確保について、支援団体にお話を伺うと、自治体等の広報や自前のチラシでボランティアを募集しているとのことでしたが、実際には、なかなか人は集まらないとのことでした。そもそも、外国人の子どもの学習支援に関心を持ってくださる全体の人数を増やしていく必要があります。例えば、県として多文化共生や外国人の子どもが抱える問題、指導スキルなど基本的な知識を得るための研修会を行ったり、大学との連携を進め学生パワーを活用したり、子ども多文化共生センターが持っているボランティア登録制度が地域の支援組織と結びつけられるように昇華させるなど、学校だから教育委員会、地域社会のことだから産業労働部や国際交流協会ということではなく、教育委員会と国際交流協会の、より積極的な連携により、外国人児童生徒に必要な支援ができる人材を増やしていくべきと考えます。
 また、連携は十分に図られているということであれば、地域人材の循環がうまくいっていない状況について、どのような課題認識を持っておられ、今後の取り組みの方向性はどのようなものなのか、ご所見をお伺いいたします。

2 発達障害がある子どもの学習環境の整備に向けた職員研修の見直しについて

 第2の質問は、発達障害がある子どもの学習環境の整備に向けた職員研修の見直しについてです。
 平成18年度より通級による指導の対象障害種にLD、AD/HD等が加わり、平成18年6月に学校教育法等の改正が行われ、平成19年4月からは特別支援教育が明確に位置づけられたことにより、障害のある児童生徒の対応へのニーズが急増しています。平成14年に文部科学省が実施した調査では、知的な発達に遅れはないが、学習や行動面で困難を示す児童生徒の割合は、6.3%に上ると報告されており、クラスに2人程度の割合ともいわれています。このような児童生徒は、LD、AD/HD、高機能自閉症など、発達障害と総称される障害があることが多く、発達障害児の教育環境の整備は急務であり、ひとりひとりに応じた学習環境にはまだまだ到達できていないのが実情です。
 兵庫県では平成19年から、発達障害児のライフステージに応じた継続的な支援を行うためのサポートファイルの作成が各市町で進められています。平成20年には文部科学省から支援情報のファイルの有効性が示されています。しかしながら、とりわけ通常学級の発達障害がある子どもの場合、サポートファイルの存在を行政・関係機関から知らされていない保護者も多く、個人情報保護の課題も含め、現場において有効に活用されていないという声も聞こえてきます。
また、学習指導面においては、個別の指導計画は保護者にその内容はほとんど知らされておらず、計画作成が遅れているケースもあります。年度の早い段階で、学校と保護者が意見交換の場を持ち、同じ方向を向いて1年間取り組めた方が、子どもにとってより良い学習環境となります。
一方、現在、兵庫県の教職員の特別支援教育に関する研修の受講率は、幼稚園85.8%、小学校84.9%、中学校66.4%、高校38.8%です。研修内容を見てみると、発達障害に関するプログラムは障害の特徴などが主であり、具体的なツールの使い方や保護者とのコミュニケーション・外部との連携方法などは、特別支援教育コーディネーター専門研修で行われています。特別支援コーディネーターは、おおよそ1校に1人の指名ですが、子どもたちの個性が様々であり、どのように対応していいかわからないという先生もおられるのではないかと推察すれば、コーディネーター以外の先生方にも必要な研修だと思います。
サポートファイルや指導計画の活用不足改善のためには、発達障害に関する研修の裾野を広げ、適切に対応できる人材の育成が急務と考えますが、教育長のご所見をお伺いいたします。

3 3号指定条例の制定について

 質問の第3は、個人県民税の寄附金控除に関する条例、いわゆる3号指定条例の制定についてお訊ねいたします。
 3号指定条例の制定については、NPO法の改正と関連して我が会派の迎山志保議員が平成23年12月定例会において、質問を行っています。その際、当時の高井政策監は、「相当な額の県税収入の減が見込まれる」「ボランタリー基金で1億円程度の助成を行っている」ことを上げ、「寄附控除、助成金による直接支援、いずれがふさわしいのか今後検討する」との答弁をされています。3号指定条例は、NPO法人の他、学校法人や社会福祉法人等も対象とすることができるもので、県財政が非常に厳しい折、対象となる組織への寄附控除による県税収入減を伴うとなれば慎重な検討も必要かもしれません。
 しかしながら、3号指定条例は単に「寄付を集めやすくなる仕組み」という側面だけではなく、「寄付という行為で地域の課題解決に参画する」という県民協働の側面を持ち、限りなく公に近い仕事を民間に託す、民が民を支える地域の資金循環の仕組みです。中長期的にみれば、県の事業負担の軽減と県民サービスの向上につなげることも可能なはずです。制度を整えた後に、どのような効果を導き出すかが、県としての腕の見せ所ではないかと考えます。
 3号指定条例の持つ趣旨を踏まえ、平成23年12月定例会から約9ヶ月の間、3号指定条例の制定について、どの程度の税収減を試算しており、条例制定に向けてどのようなハードルがあると認識し検討してこられたのか、NPO法改正後の認定・仮認定の状況も踏まえながら、今後の方向性と併せて、ご所見をお伺いいたします。

4 DV被害者自立支援のためのステップハウスの整備について

 最後の質問は、DV被害者自立支援のためのステップハウスの整備についてお訊ねいたします。
 兵庫県におけるDV相談・一時保護の件数は、年々増加しています。DV相談件数は、平成19年度に1万2,490件、平成23年度には1万4,441件で、約1.2倍に、一時保護の実人員は、179人から230人に増加し、約1.3倍に、一時保護の延べ日数に至っては、1,427日から2,752日と2倍近く増加しています。
 県では、平成18年4月(平成21年4月改定)に「兵庫県配偶者等からの暴力対策基本計画」を策定し、被害の予防、被害者の早期発見、相談、保護、自立支援、支援体制の整備を柱として、DV対策を推進してきました。具体的には、相談窓口を広く設置したり、市町の配偶者暴力相談支援センターの設置支援、女性家庭センターの運営、民間シェルター等への一時保護委託などを行っています。DV被害者の自立支援では、県公営住宅優先入居や生活保護申請、就労支援、メンタルケアなど、市町窓口やハローワークと連絡を取り合いながらの支援が提供されています。
 しかしながら、現在の自立支援策は、それぞれの機関が取り組んでいる支援であり、DV被害者に対してパッケージ提供されていないと感じます。何より必要なのは、寄り添いと見守りのケアであり、孤立させないためのサポートが必要です。このことは、平成20年に総務省が実施したアンケートでも、59%の被害者が「被害者を孤立させない支援」をあげていることからもわかります。
 真の自立のためには、生活基盤を築くと同時に、自尊心を取り戻し、人間関係を作っていくことへの恐怖から逃れる必要がありますが、これは数か月で達成できることではなく、自分で判断する力が衰えている状態では、当事者に寄り添った、包括的支援が中長期にわたり必要です。
 DV支援の専門家にお話をお伺いすると、アメリカのシェルターでは、6週間滞在できる緊急シェルターの他、1年~1年半滞在できる集合住宅形式のステップハウスがありその中で食事を一緒にしたり、自助グループが開かれるなど、人間関係を育てる事もできるとのことです。神奈川県では、「かながわDV被害者支援プラン」を策定し、緊急一時保護のためのシェルターとは別に、「中期滞在型シェルター」を整備しています。
 兵庫県では、県営住宅を活用して5戸のステップハウスを用意していますが、平成21年から、その利用はありません。これは、ステップハウスが必要ないのではなく、DV被害者の自立に向けたニーズに合っていないからではないでしょうか。
 DV被害者の真の自立に向けた支援は、寄り添い・見守りのケアがベースにあり、パッケージ化されたサポートが提供されるステップハウスが必要だと考えますが、現在のステップハウス利用がないという事実をどのように分析し、ステップハウスの必要性をどのように認識しておられるか、当局のご所見をお伺いいたします。