平成30年度決算特別委員会 農政環境部
質問日:令和元年10月11日(金)
質問者:上野 英一 委員
1.農地中間管理機構関連農地整備事業と地域集積協力金について
国の農業政策の大きな柱として、農地の集積による大規模化の推進があります。
農地の有効利用の継続や農業経営の効率化を進める担い手への農地利用の集積・集約化を加速させることが不可欠であることから、「4つの改革」として、農地中間管理機構の制度化等が行われました。
近年は、土地の所有者でもあった農家が農家でなくなっている状況にあり、国の農業政策に相まって、圃場整備等の農地整備事業を行う場合に、農地中間管理機構に農地を預けることによって、本来受益者が支払う負担金を国が肩代わりする農地中間管理機構関連農地整備事業が平成30年度から実施されています。
従来は、農地整備を行う場合、国庫補助事業を活用して整備を進めることが多いことから、受益者負担が必要でありましたが、この農地整備事業では農家の負担がなく整備ができることから非常にメリットとなっています。
この事業は日本農業の現状に即した画期的な事業だと考えています。兵庫県では、第1号ともいえる採択地区に、朝来市の夜久野高原地区、南あわじ市の八幡北地区、姫路市の須加院地区、市川町の屋形地区があります。
この事業の実施要件としては、①事業対象農地の全てについて、農地中間管理権の設定、②事業対象農地面積が10ha以上(中山間地域は5ha以上)、③事業対象農地の8割以上を事業完了後5年以内に担い手に集団化などの様々な要件がありますが、私の地元の市川町屋形地区では、事業採択にあたり地権者89名、418筆、33,4haについて、農地中間管理権の設定などの合意が得られ、採択されたことに大変喜んでいました。
しかし、一方で、農地中間管理事業による農地集積が交付要件となる地域集積協力金において、H31年度の制度改正による問題が発生をしました。従前の制度であれば、地域集積協力金が、約300万円交付されるものでしたが、受けられなくなりました。
また、平成31年度の農地中間管理権の設定でしたら、約900万円の地域集積協力金が交付されるものでした。
国の制度改正による問題ではありますが、しっかりと情報が伝わっていれば防ぐことができた事案です。新しい制度を活用し積極的に取り組もうとしている地域に対して、国からの情報収集に努め、丁寧に説明ができていたのでしょうか。
そこで、制度改正に伴う県の対応について、ご所見をお伺いします。
2.農地多面的機能支払制度について
先ほども申し上げましたが、農村に農家がいなくなりつつあります。
農家は、これまで個々の農地の管理以外に、農道や水路・井堰などの農業施設に限らず農村そのものや、景観などを維持し守ってきました。
かなり前にも申し上げたことがありますが、農村は単に生活をしているだけではなく、水や空気、労働力を都会に提供してきております。そのため、これからも農村を維持し続けなければなりません。
国においては、このような課題に取り組むため、「強い農林水産業」と「美しく活力ある農山漁村」に向けた4つの柱のうち、農村の多面的機能の維持・発揮を図る取組として、日本型直接支払制度の1つである農地多面的機能支払制度を創設しました。
この支払制度では、水路の泥上げ、農道の路面維持、施設の点検、年度活動計画の策定等、地域資源の基礎的な保全活動に関するものと、地域資源の適切な保全管理のための推進活動による農地維持支払交付金があります。
また、施設の軽微な補修、花などの植栽事業、生き物の調査など地域資源の質的向上を図る共同活動、未舗装農道の舗装や素掘り水路からの更新などの施設の長寿命化のための活動による資源向上支払交付金があります。
農会などの自治会組織が機能をしているところでは交付金を活用して、農地保全だけでなく地域そのものの活性化に繋げています。
活動内容の一例をあげましたが、制度では多くの実施すべき活動内容があり、多くの内容で共同作業の必要があります。報告書の作成も、非常に負担の大きい事務作業です。
これらの課題から、事業そのものを実施していない地域もたくさんあると思います。また、以前は実施していたができなくなった地域もあるのではないでしょうか。
そこで、農地多面的機能支払制度の県内の活用について、推移も含めた県下の実施状況をお伺いするとともに、組織の広域化・体制強化を含めた今後の方針についてお伺いします。
3.農業の大規模化に向けた取組について
日本における農業は、農家の高齢化や後継者不足、またこれらの影響による耕作放棄地の増加など、さまざまな問題があります。
そのため、国においては、 先の質問のように農地中間管理機構を創設するなど、これらの課題に対して農業を持続的に発展させるため、効率的な農業経営がしやすい農業の大規模化を推進しております。
農業の大規模化にあたっては、特に農地の集積と認定農業者や営農組合の組織・法人化、企業参入などが必要と考えますが、農地の集積については、平成30年度の予算特別委員会において、本県の耕地面積7万5千haの3分の2である66%の約5万haを担い手に集積することを目標として進めているとの答弁がありました。また、兵庫農林水産ビジョン2025では、現状(平成26年)14,729ha、中間(平成32年)38,600haとなっています。
次に、認定農業者についても、同じく平成30年度の予算特別委員会の答弁の中で、本県の認定農業者は60歳以上が半数を超えているなど高齢化が進んでおり、平成28年度においては、高齢等を理由に認定の更新をしなかった者が新たに認定を受けた者を大幅に上回った結果、昨年度よりも128経営体が減少したとの答弁がありました。
これも農林水産ビジョン2025では、現状(平成26年)2,545経営体、中間(平成32年)2,800経営体となっています。
加えて、同じくビジョンの中で、法人経営体については、現状(平成26年)346法人、中間(平成32年)700法人、集落営農組織化集落数 現状(平成26年)1,066集落、中間(平成32年)1,300集落、新規就農者数 現状(平成26年)303人、中間(平成32年)400人となっています。
私は、現状の農業における環境を考えると、持続的な農業に向けて大規模化等による経営の効率化を進める必要があると考えておりますが、日本では地理的な制限もあることから、アメリカ等の農業を目指すのではなく、日本にあった大規模化、効率化を検討していく必要があると考えております。
そこで、農林水産ビジョンにおいて、大規模化に関係する農地の集積や認定農業者、営農組合の組織化、法人化、新規就農者数などの目標が掲げられておりますが、計画的に進められているのか状況をお伺いするとともに、持続的な農業を推進するため、今後どのように取り組もうとされているのか、ご所見をお伺いします。