第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月3日)
質問者:池 畑 浩 太 朗 議員
形 式:分割方式
1 未来の農業の担い手を育成する農業高校について
最初の質問は、「未来の農業の担い手を育成する農業高校」についてです。
現在、県下の農業高校は10校、生徒数は2,672人となっております。
但馬農業高校では神戸ビーフの素牛となる但馬牛の受精卵移植、播磨農業高校では生徒が栽培したぶどうの販売、有馬高校では全国大会で5年連続金賞を受賞したフラワーデザインなど、それぞれの地域や学科の特性などを生かした特色化を進め、大きな成果を上げておられます。
このように特色ある取組を進める農業高校ですが、昨年度の卒業生における就職者総数416名のうち、直接農業に従事した者は、専業農家に1名、農業生産法人等に6名とわずか7名ですが、農協や森林組合、農業機械の販売等、その他農業関連を加えると4割になります。
農業高校での生活はわずか三年間とはいえ、専門的な教育を受けた人材が就農する割合を、より一層高める必要があると考えます。
しかし、農業高校では即就農などにつながる授業が継続的に行われているとは言えない面もあります。
例えば、総合実習や課題研究など農業高校ならではのカリキュラムも各高校に託されており、実習等の指導方法も、学校や学科によって異なっているのが現状です。
たとえ、卒業後すぐに就農しなくても、大学等に進学後、農業関連の仕事に従事する方や、農業関連以外の道に進んだ後に就農する可能性を考えれば、農業高校の取組は、将来、農業を志す人材を育成するには格好のステージとなります。
一般的に新規就農につながらない原因として、農業機械等の投資が多額であること、就農する際の農地確保が困難であること、技術の習得に時間を要することのほか、最近の若者はサラリーマン志向が非常に強いことなどが挙げられ、農業を取り巻く現状は大変厳しいものとなっています。
真の担い手とは、家族経営、法人経営を問わず、産業としての持続性のある農業経営を自立実践する人材であり、そのことを通じて、農業の活力と農村の活性化、ひいては食料供給力の確保に貢献し、攻めの農業、農政の担い手になる人材であると考えます。
農業高校は、真の農業経営を背負う将来の農業経営者のスペシャリストの育成をめざして、例えば、夏休み等を利用した農業技術、経営能力習得のための研修開催や、新しい技術、機械設備の導入等に対する生徒の理解醸成プログラムなど、就農全般にわたる個別指導を行っていく必要があると考えます。また、独立就農を目指す生徒には、就農地確保等のための情報提供などの進路指導も必要でしょう。
そこで、生徒の卒業後の就農を見越した、より実践的な模擬授業をカリキュラムに組み込むなど、農業高校における「農業経営学」の学びを取り入れ、農業高校の更なる指導充実を図るべきと考えますが、教育長のご所見をお伺いします。
2 本県産の農水産物のブランド化と販路開拓について
質問の第2は、「本県産の農水産物のブランド化と販路開拓」について、2点お伺いします。
(1) 本県産の農水産物のブランド化について
1点目は、「本県産の農水産物のブランド化」についてです。
本県が世界に誇るブランドでもある神戸ビーフが、今年初めてマカオと香港に輸出されました。香港のみならず、昨今、アジア諸国を中心とした世界各国において、安全で安心な日本の農水産品への関心は高く、今後、こうした県産の農水産物のブランド化の取組を他の農産品についてもどんどん進め、国内のみならず世界に目を向けて、更なる販路開拓に積極的に取り組んでいくべきだと考えます。
この点、今までの当局の戦略としては、中国をはじめ成長著しい東アジア地域の富裕層をターゲットに販路拡大を図るため、販路開拓の窓口となる香港や姉妹・友好提携先における展示会や商談会の開催等を通じて、販路開拓に取り組んで来られました。
この8月には、香港で開催されたフード・エキスポへ出展され、また、この11月には、広東省友好提携30周年の機会を捉えた広州での展示会、商談会なども予定されていると聞いております。
しかしながら、こうした販路開拓に取り組んでいるのは本県だけではありません。例えば、この8月の香港フード・エキスポには、本県を含め日本から225団体の出展があったと聞いております。こうした状況を見れば、他府県産のものとの区別を如何に図り、本県産の農水産物のブランド化をどのように戦略的に進めていくかが、勝敗を決するポイントと言っても過言ではありません。
また、継続的に農水産物の海外輸出を行うには、徹底した品質管理とブランド維持に確実に取り組む必要があります。国内での製造、加工から輸出に至る各段階における品質管理を徹底するとともに、例えば偽物が出回りやすいといった国内事情を持つ輸出先においては商標登録を取得するなど、徹底的なブランド維持対策に取り組むことも必要不可欠であります。
そこで、本県の農水産業を世界との競争に負けない力強い産業として発展させていくためにも、今後、どのように本県産の農水産物のブランド化を戦略的に展開していくのか、当局のご所見をお伺いします。
(2) 但馬牛の海外輸出について
2点目は、「但馬牛の海外輸出」についてお伺いします。
近年、特に東南アジア諸国では経済発展に伴い生活レベルも向上し、富裕層の増加や世界的な日本食ブームの広がりを受けて、農畜産物のマーケット開拓は着実に進んでおり、現実にベトナム、韓国等が既に有力な市場となっています。
その中でも神戸ビーフは、世界で最上級の牛肉として高級銘柄牛の代名詞となるなど、海外バイヤーや著名人からの評価も大変高くなっております。
牛肉輸出は、国内の牛肉需給のバランス調整という点においても重要であり、今後の国内の景気動向に対応して輸出が調整弁の役割を果たせば生産者の経営安定にもつながるため、いずれにしても、さらに踏み出していただきたいと思います。
生産者から消費者に至る全ての段階の関係者で構成される「神戸肉流通推進協議会」の規約によれば、但馬牛とは、「本県の県有種雄牛のみを歴代に亘り交配した本県内で生まれ育成された但馬牛を素牛とし、肉牛として出荷するまで当協議会の生産者が本県内で肥育し、本県内の食肉センターに出荷する県内一貫生産体制をとった生後28カ月齢以上から60カ月齢以下の牛で、歩留等級が「A」「B」等級であるもの」とされています。
ちなみに、一昨年度、本県内では約7万頭の牛が処理され、うち約6100頭が但馬牛、さらにそのうちの約3100頭が更に厳しい基準をクリアして神戸ビーフと認定されたそうです。
このように、神戸ビーフに限定すれば、その頭数は非常に限られており、今後、輸出規模が大きくなってきた場合に、海外からの需要に十分に対応できるだけの供給を確保できるかは微妙な状況ではないでしょうか。
こうしたことを考えれば、但馬牛も神戸ビーフと同様の飼養管理の下で生産されており、その肉質は、十分に世界に通用するものと思われます。
先日、農政環境委員会の管内視察で、建設会社が異業種への参入として設立した但馬牛の繁殖肥育を行う新会社を訪問しましたが、そこで働く方々も、「神戸ビーフが海外で高い評価を受けるのは当たり前だが、肥育に携わっている者としては、但馬牛も世界市場で十分に通用するレベルにあるのではないか」と自信を持って仰っていました。
そこで、但馬牛や神戸ビーフの積極的な海外輸出に関して、今後、県としてどのように取り組んで行かれるのか、当局のご所見をお伺いします。
3 県の農協に対する指導・監督のあり方について
質問の第3は、「県の農協に対する指導・監督のあり方」についてお伺いします。
そもそも農業協同組合は、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図ることを目的として設立され、「国際化に対応した持続可能な力強い農業」の実現を目指す本県農政において重要な一翼を担うべき組織です。
この点、農林水産省によれば、全国の農協の正組合員と、農業者ではない准組合員の数は、2009年度に初めて逆転したそうですが、これは、高齢化と後継者不足によって農家である正組合員が減る一方、3千円から1万円の出資金を払えばなれる准組合員が、農協貯金や共済加入を契機に増加したためであると思われます。つまりこのことは、「農協の金融機関化」が進んでいることの現れであり、私は、農家を支援する本来の姿から、大きなズレが生じているのではないかという疑問を感じております。
中には、地域住民へのサービスということで、スーパー、GS、葬祭場、介護施設などの設置・運営に乗り出している農協もありますが、私は、あくまで正組合員である農家、あるいはこれから正組合員になろうとする候補生へのサービスに重点を置くべきだと考えます。
こうした状況の中、主食用米の本県における系統出荷率は約4割と伺っています。その理由を商系に離れていった農家に聞くと、①仮払い-精算方式のため即金で支払ってくれない、②庭先まで集荷してくれない、③頑張った農家の米もそうでない米も混ぜて売られ、高く売る努力をしてくれないとの声がありました。
本来、農協との縁を積極的に切りたいという農家は少なく、デフレの状況の中でやむにやまれず商系に離れて行かざるを得ない組合員も多いのではないでしょうか。
農協の経営が厳しいということであればまだしも、本年1月の閉会中審査の際にお聞きした説明では、自己資本比率が法令基準4%のところ、最低の農協でも13%もあるとのことです。だとすれば、商系に行かなくても済むような対策は、組合員等から集めた年金等の貯金や共済掛け金の運用益でいくらでも講じられるのではないでしょうか。
それが金融機関については他業禁止の規制があるにも拘わらず、農協においては、総合事業体であることを法律上許され、かつ、協同組織ということで法人税に関し軽減税率(普通25.5%のところ19%)が適用されているなど、特別の取り扱いを受けていることの意義ではないでしょうか。
農協法第98条に基づき、農協の指導・監督機関は、都道府県知事となっています。また、同法93条第1項によれば、知事は、単位農協や中央会から、定款、規約、農業経営規程を守っているかどうかを知るために必要な報告を徴したりすることができるとされています。
この際、県は、農協に対する指導・監督機関として、農家組合員サービスの向上、ひいては、農政全般の進展のため、法律上の権限を適切に行使すべきだと思いますが、指導・監督の現状と評価、今後の取組方向について、当局のご所見をお伺いします。
4 宝塚新都市計画の今後について
最後の質問は、「宝塚新都市計画の今後」についてです。
この宝塚新都市計画については、これまで本会議では2回、決算・予算の特別委員会でも質問致しました。直近では、昨年6月定例会において知事より答弁を頂きました。
今回お尋ねするにあたって、毎回同じ質問を重ねるのは如何なものかと自問自答しましたが、ひとつの前進も見られない中で、この問題を終息させる訳にはいきません。
そこで、以下2点について、改めて当局のご所見をお伺いいたします。
(1) 今後の活用方針について
まず1点目は、「今後の活用方針」についてです。
地元の要請を踏まえ、県が、平成4年度に基本計画を策定、約1,100億円の予算を投じて1,200ヘクタール余りの用地を購入した宝塚新都市計画を巡っては、これまで様々な紆余曲折を経てきましたが、平成13年度には、計画策定事務が県土整備部から企業庁へ移管され、一部のクラスターについて、新名神高速道路の検討状況を踏まえつつ土地利用についての検討を行うとされましたが、経済状況や事業採算性の厳しさから、平成15年度の企業庁経営ビジョンでは、進度調整事業と位置づけられました。
平成20年7月には、大原野第3クラスターに宝塚西谷の森公園が開園し、県民の方々に親しまれるなど、一部に有効活用が図られている例もありますが、その多くは、平成20年度策定の新行革プラン、また、昨年3月策定の第2次行革プランにおいて、長期的な視点も踏まえ適切な利活用を検討するが、直ちには利活用が見込めないため、水源涵養、CO2の排出抑制など森林の持つ公益的機能に着目し、環境林として県が計画的に取得し、適切な管理を行う対象用地の一つとして位置づけられ、現在に至っております。
しかしながら、元の土地所有者やNPO法人など地元の方々からは、すぐに利活用できるような土地も数多くあるにも関わらず未利用になっている当該用地を何とか有効活用できないかという声をよく耳にすることや、近隣自治体や企業等から、当該用地を利用したいという要望の声が聞こえてくることは、昨年6月定例会の質問の際にも申し上げた通りです。
これに対して、井戸知事からは、当該用地は、都市とも近接する自然豊かな地区にあり、地域全体の振興のための活用について、幅広い観点での検討が求められており、今後、利用可能性のある用地について、地元意見を聞きながら、社会経済情勢の変化を的確に把握しつつ、利活用の検討を進めていくとの答弁を頂きました。
この点、現在、宝塚市玉瀬地区において、西日本高速道路(株)により、新名神高速道路の整備と併せ、関西でも有数の規模となる宝塚サービスエリア(仮称)の整備が進められているとともに、この4月には、2016年度の完成を目指し、同高速道路のスマートインターチェンジを新設する計画も発表されました。
サービスエリア及びスマートインターチェンジが設置されれば、アクセスや利便性の向上のみならず、広域的な救急搬送や緊急輸送の機能充実、物流の円滑化、観光面や雇用面でも大きな効果が期待でき、周辺地区はもとより、宝塚市ひいては阪神北地域一体の活性化にも寄与するものと思われます。
こうした当該用地を取り巻く状況や社会情勢の変化に鑑みれば、私は、当該用地の有効活用は決して夢物語ではなく、その可能性を十分に秘めた土地であると考えます。
そこで、来年度は第2次行革プランの3年目の見直しを行うこととなりますが、今まさに県として、宝塚新都市という従前の計画にとらわれず、例えば、里山や貸し農園、太陽光発電用地として活用するなど、その積極的な利活用へ向けて大きく舵を切り、新たな一歩を踏み出す時期に来ているのではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。
(2) 有効活用へ向けたアイデア募集について
2点目は、「有効活用へ向けたアイデア募集」についてです。
そもそも、宝塚新都市計画は、宝塚北部地域の乱開発を防止し、公的な整備による適正な土地利用を図るために、宝塚市や地元の要請も受けて開発構想の検討がなされてきた経緯があり、地域特性や立地特性等を生かしたまちづくりのあり方については、現在においても、地元を中心に、引き続き検討が行われていると伺っています。
私も、地権者を含む地元の方々から様々なご意見をお聞きしますが、その過半数は、何の方針も示されないまま放置されていることに対する不安と、何らかの有効活用を考えるべきとの内容です。
このような中、地元では、市長をはじめ、地元住民やNPO団体の方々など、様々な活用案を持った方が数多くおられると聞いております。また、先ほども申し上げましたが、近隣自治体や企業等の中にも当該用地の利用ニーズがあるようです。
そこで、当該用地の有効活用を図るにあたっては、こうした様々な方々からの企画案やアイデアを内外に広く募集し、その中から、今後の具体の活用方針を検討していくべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。