議会の動き

上野 英一議員が質問(決算審査・総括)を実施

 

決算特別委員会 [ 10月23日(火)総括・上野委員 ]

それでは、民主党・県民連合議員団を代表して、早速、総括質問をさせていただきます。

1 財政状況について

(1)平成23年度決算に対する評価について

はじめに、平成23年度決算に対する評価についてお伺いします。
平成23年度は、行財政全般にわたる総点検を踏まえて作成した、第2次行財政構造改革推進方策(第2次行革プラン)がスタートした年でありました。本県の財政状況は、平成11年以降、数次にわたる行財政構造改革の取り組みを進め、県当局は、第2次行革プランに基づき、県政の仕組みと財政の健全化に向けて、鋭意努力されているところでございます。

国の中期財政フレームに基づき一般財源総額が平成22年度並に抑制される中、社会保障関係費の自然増に対応せざるを得ない厳しい財政環境であることに加え、収支不足が平成29年度まで続くことが見込まれるなど、今後も引き続き厳しい財政状況が続きます。

また、社会保障・税一体改革に伴う社会保障制度の見直しや地方消費税、地方交付税などの歳入歳出への影響、国家公務員の給与や退職手当の見直しに伴う地方公務員制度への波及など国の政策動向に不確定要素が多いうえ、景気低迷やデフレが長期化する現在の社会経済情勢の中では、前年度の決算に対する分析を、翌年度の予算に的確に反映させることが困難な状況になってきています。

しかしながら、このような状況下にあっても、本県が、「21世紀兵庫長期ビジョン」に掲げる「創造と共生の舞台・兵庫」を実現していくためには、自律的な財政運営を行っていくことが必要不可欠であります。その前提として、昨年度1年間でどのような事業にどのようにお金が使われたのかを明らかにする決算の役割は、今後の施策運営に向けて、極めて重要であります。加えて、県民に対してわかり易く説明責任を果たすことが同時に求められることは言うに及びません。

そこで、平成23年度決算の状況について、平成22年度の決算や平成23年度の予算を振り返り、県としてどのような成果があり、どのような点が不十分であったと考えているのか、知事として、平成23年度の決算を総括していただくとともに来年度の予算編成に向けた意気込みをお伺いします。
 

(2)人件費削減に対する考え方について

 次に、人件費削減に対する考え方についてお伺いします。
公務員の給与は、労働基本権のうち団体交渉権が制約されていることから、国家公務員においては人事院勧告制度において、県においては人事委員会勧告制度において、それぞれ勧告された後、労使の合意を経て決定するシステムとなっています。本県では、労使間で合意した給与から、新行革プランの実施にあたり、さらなる労使の合意を経て年当り1人平均5%、32万円のさらなる独自カットを行い、現在に至っています。

しかし、労働組合は新行革プランのスタートに当たって止むを得ず合意したのであって、将来にわたって永遠に認めたものではないとして、独自カット分の復元を常に求めているのも事実です。行財政構造改革を推進していく上で、県民に痛みを求めるにあたり、知事をはじめ幹部職員が率先して自らの賃金カットを行うことは一定仕方がないことだと考えますし、労働組合もスタートにおいては知事に協力したものだと思っています。

この間の県当局における財政運営には、見事なものを感じます。3年ごとの見直しに加え、国の政策動向に対しても的確に対応されており、平成30年までの行革プランの実施、本県の財政再建には揺るぎのないものだと確信しています。しかしながら、第2次行革プランの最終年度である平成30年度においても、また新たな行財政改革が始まるのではないかと危惧するのは、私だけではないと思います。

行革による人件費の削減が、年1人当り32万円で対象職員約6万人を掛け合わせて、約200億円となっており、大きなウエイトを占めています。財政健全化の成否が人件費削減に大きく依存していることや一般財源の確保において人件費削減が手っ取り早いことは間違いのない事実だろうと思います。

昨年度の経常収支比率は、99.3%となっており、平成22年度と比べ4.8ポイント上昇しています。かなり良くない数字でありますが、給与の独自カットがあってその数値であります。知事は、決算の記者発表で、「減収補填債の発行可能額が45億円あったにもかかわらず、発行しなかった」と、堅実な財政運営を行っているかのように述べられていますが、よく考えていただきたいと思います。

今春の予算委員会で我が会派の藤井委員の質問に対して、当局より「なるべく早く給与抑制措置を解除したい気持ちを持っているし、25年度の見直しにおいても、そのような気持ちを持って人件費の問題も措置していく」旨の答弁がありました。また、私は5年という年数は、労使間協議においては、一つの節目だと考えます。

そこで、これまでの職員の人件費削減の協力が、本県の財政健全化にどのように寄与してきていると認識しているのかご所見をお伺いします。また、来年度の総点検が、県行革の正念場であると考えますが、取組みに向けた基本姿勢についても併せてご所見をお伺いします。

2 将来負担を考慮した公共事業について

次に、将来負担を考慮した公共事業について、お伺いします
この決算特別委員会審査の中では、政権交代後の「コンクリートから人へ」という方針が、すべての公共投資を止めているかのような議論がありました。

しかし、投資事業全体の推移を見た場合、平成14年度の3,690億円から平成23年度で約2,331億円と、この10年間で約37%削減されています。この金額2,331億円は決算数字でありますので、災害復旧費と決算での上積分等を除けば新行革プランに示された他府県の投資水準にと近い数値です。

投資事業の規模は、現在の財政状況だけでなく、将来負担も見据えたものでなければなりません。今、私たちが考えなければならないのは、事業ごとの投資効果の測定にとどまることなく、人口減少社会を前提に、いかに将来世代の負担に耐えうるかという視点が必要であります。

さて、今後、「防災や減災」をキーワードに投資事業が行われる可能性が強まっており、兵庫県においても、現在「津波防災インフラ整備5箇年計画」が検討されており、今年度末には計画が策定され公表されることになっています。県民の命を守るために投資を行うことはもちろん重要ではありますが、計画の策定にあたっては、将来負担も見据えていくべきであると考えています。

現在、県では投資事業評価システムで費用対効果も含めて事業の必要性等についての審査が事業単位で行われるなど、限られた財源の中、優先順位の高いものに絞って事業を展開しており、また、県民局単位で社会基盤整備プログラムを策定して透明性・公平性の確保を図っています。この点については、高く評価をいたしています。

そこで、今後は公共事業への財源確保がより一層厳しくなりますが、このような中にあっても、将来世代に対して過度の負担をかけることなく、真に必要な公共事業を着実に展開し、より一層の「選択と集中」を求められることとなりますが、今後の公共事業の実施にあたっての基本的な考え方についてお伺いします。

3 県民交流広場事業の成果と課題を踏まえた今後の事業のあり方について

  
次に、県民交流広場事業の成果と課題を踏まえた今後の事業のあり方についてお伺いします。
県民交流広場事業は、各市町とも連携しながら、県として、その事業推進に力を入れて取り組んで来られました。成果として、県内各地で、多くの県民の方々が参画し、様々な取組を展開されてきています。

その中には地域によく溶け込み、NPO法人として自立し、活発な活動を展開している広場もあります。住民同士のつながりが既に定着し、活動領域をもっと広げていきたいと願っている方が多い地域にとっては、有効性の高い事業であると、私は評価をしています。

我が会派の盛委員の質問に対する答弁では、「県としては、毎年全ての県民交流広場を対象に活動状況のアンケート調査を実施しているとともに、助成期間中の広場に対しては、活動実績報告、会計書類などによる内容確認の実施、聞き取り調査などにより分析・把握・指導を行った結果、概ね所期の目的に沿った運営がなされており、コミュニティづくりの呼び水となっていると認識をしている。また、補助金が無くなったいずれの地区も、活動が継続されている」とのことですが、自立し地域に根付き努力をしているという広場は、県の調査よりかなり少ないというのが私の実感であります。

また、補助金が無くなった広場に対する活動実績調査での回答の中に、「活性化につながっていない」「住民の関心が低い」「スタッフの高齢化、人材不足」などを挙げている団体が、少数ではあるが存在するとの勇気ある回答もいただきました。
以上のことから推測するに、活動継続に対する意欲、活性化に資するための努力が見られない広場が案外多く潜在しているのではと思われます。

県では今後、活動充実を支援するためのフォローアップに取り組むとのことでありますが、先ほど、述べました「地域に溶け込み、従来の自治会活動ではなかなか成し得なかった場の提供、広場」という観点から、調査選定や中間審査などの基準精査、活動状況の実態を把握することが重要であります。

『スポーツクラブ21』や『県民交流広場』のような自発的・主体的運営による地域コミュニティづくりの支援事業を展開していくことは今後も必要ですが、目的・趣旨に沿った事業展開できない地域への対応への視点を持つとともに、真にその事業を必要とする地域に重点的に支援していくことが求められます。

そこで、以上の点を踏まえ、県民交流広場事業のこれまでの成果と今後解消すべき課題についてどのように認識されているのか、今後の地域コミュニティづくりのあり方と併せて、当局のご所見をお伺いします。

4 少子化対策の総合的な推進について

 次に、少子化対策の総合的な推進についてお伺いします。
知事は、新ひょうご子ども未来プランの中で、「少子化問題をすぐに解決する切り札はありません。」とし、「今後5年間(平成23~27年)の出生数24万人を目標とし、「子どもを産み育てる」などの6つの柱に、少子対策・子育て支援を総合的に推進します。目標の実現には、県民、事業者、団体、行政等が互いに連携しながら、それぞれの役割を担っていくことが欠かせません。」と述べられています。多種・多彩な少子化対策が、健康福祉部をはじめ、産業労働部、企画県民部など各部局に亘った総合政策となっています。 

昨年度、政府が実施した「子ども・子育てビジョンに係る点検・評価のための指標調査」によれば、「目指すべき社会の姿」の達成度について、「意欲を持って就業と自立に向かうことができる社会」に対して「そう思わない」と「あまりそう思わない」の合計が57.1%となっています。同じく「誰もが希望する幼児教育と保育サービスを受けられるような社会」が計55.6%、「仕事と家庭が両立できる職場環境の実現が可能な社会」が計51.0%と評価が低くなっています。

 子ども・子育てビジョンの取組に関して1番目から5番目に不十分だと考える項目では、「若者の自立した生活と就労に向けた支援」が上位5つの合計で37.6%、次いで「長時間労働の抑制、テレワークの活用等、働き方の見直しに向けた環境整備を図る取組」が32.8%、「育児休業制度その他の両立支援制度の普及・定着及び継続就業の支援とともに、子育て女性等の再就職支援を図る取組」が29.9%、「児童虐待を防止するとともに、社会的養護を充実する取組」が28.8%、「待機児童の解消や幼児教育と保育の質の向上等を図る取組」が26.0%となっています。

 この調査から本質的には、雇用・就労・労働環境改善が如何に求められているかだと思いますが、また、同時に結婚・出産・育児について多くの不安を持っていることがわかります。
そこで、新ひょうご子ども未来プランの2年目として、少子化の現状をどのように認識し、取り組まれたのか、その施策の推進状況と成果についてお伺いします。

5 日中関係の悪化に伴う本県経済への影響について

 次に、「日中関係の悪化に伴う本県経済への影響について」お伺いします。
 9月11日の日本政府による尖閣諸島国有化以降、中国国内において、デモ活動等が激化し、一部が暴徒化するなど、憂慮すべき事態が続きました。また、報道によれば、中国の反発を受け、日中国交正常化40周年の記念事業や交流イベントの中止や延期が、全国各地に広がっているなど、両国関係の基盤である草の根交流にも深刻な影響が出ていることがあらためて浮き彫りとなっています。

 先日の産業労働部の部局審査では、「このような時だからこそ、本県においては、11月には広東省との友好提携30周年を記念して知事が訪問し、今後とも、姉妹省である広東省・海南省を中心に、経済、観光、文化など幅広い分野で交流を積極的に進めていく」との答弁がありました。

 しかしながら、周辺諸国と領土紛争を起こしている中国では、領土をめぐる問題は深刻であるとの見方もあるうえ、来月8日からの中国共産党大会で、次期総書記に就任が有力視されている習近平国家副主席は対米・対日強硬派とする見方もあり、関係の正常化に向けては、先行き不透明な状況がしばらく続くように思います。

県内からは、多くの企業が、中国に進出しており、本県の経済にも既に、影響が出始めているとの声が聞こえてきています。中国税関当局が先日発表した9月の貿易統計では、輸入は前年比2.4%増加したが、日本からの輸入は9.6%減少したとのことであります。日中両国の政府においては、日中関係の基本でもある戦略的互恵関係を改めて確認し、関係正常化に向けて取り組んでいただきたいと願っています。

そこで、日中関係の悪化に伴う、本県経済への影響について、どのように認識し、今後どのように対応されようとしているのか、ご所見をお伺いします。

6 農業の再生と自立的経営について

 次に、農業の再生と自立的経営について、お伺いします。
日本農業の現状は、世界的な穀物需給の逼迫や甚大な被害を及ぼす自然災害の発生、続発する食をめぐる事件などにより、安全な食料の安定供給や特長ある県産農林水産物への県民の期待が高まる一方で、農林水産業の現状は、従事者の減少や高齢化が進み、生産額、生産量とも減少傾向にあります。また、農地法の改正による農地改革をはじめとする農政改革が進む中、WTO農業交渉及びEPA・FTA交渉や、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉協議の動向なども見据えた農林水産業の展開も重要になっています。

 これまでも県では自立的農業経営を目指して、営農組合の組織化や法人化、他産業企業からの農業への参入、認定農業者の育成、農地の集積・規模拡大を図ってこられました。

農政環境部の部局審査では、平成23年度末時点で営農組合は、997集落が組織化され、法人化数も37法人となっており、今後法人化することを予定している組織(188組織)と、法人化すると見込まれる組織(40組織)を加え、合計約230法人に上ると回答をいただきました。また、法人化のメリットとして、私が指摘した経営における意思決定のスピードと責任の所在の明確化に加えて、①社会的信用力の向上による必要な資金調達の有利性や②取引信用力向上による販路の拡大、③営農組合自体が認定農業者となることで補助事業等の支援制度の活用が図れると回答をいただきました。これらのメリットを生かして、農業経営の安定、兵庫の農の再生に邁進していただきたいと思っています。

補助事業等の支援制度として最大のものが平成23年度より本格的にスタートした農業者戸別所得補償制度であると思います。
平成23年度の本県の全国順位は支払額78.8億円で20位、支払対象者は、平成22年度のモデル対策に比べて1,523件減少しましたが、65,798件となり全国1位です。

支払面積は349ha増加し全国13位でした。このような状況に至った主な要因として、農政環境部では、①集落営農の組織化・法人化が進展したことにより、複数の農家がまとまった。②水田活用の所得補償交付金だけ交付を受けていた小規模農家等のリタイア等によるものとされています。また、今年度も8月末での加入申請が昨年度の実績に比べ全国で7307件増えており、本県でも、606件増えています。農林水産省では、主食用米の生産者が、菓子などの加工用や家畜の餌に使う米に転作した場合に支払う交付金の申請が増えたのが主な原因としています。

私は、水稲栽培を中心とした日本農業において、農業者戸別所得補償制度が見事に大規模化、約50%の転作、自立した農業経営につながっていると考えています。私の地元のある営農の平成23年度決算では、約30haの経営規模で、販売収入約2,000万円、交付金が約1,550万円、決算で約550万円の黒字を計上しており、良好な営農状態となっています。

また、60kgのコメの生産単価は10,556円となっており、ひょうご農林水産ビジョン2020における目標である12,000円を既に達成しています。
そこで、農業者戸別所得補償制度が、農業経営を自立的に行っていくうえでどのような役割を果たしていると考えておられるのか、ご所見をお伺いいたします。
 

7 いじめ対策における教育委員会の果たすべき役割について

最後に、いじめ対策における教育委員会の果たすべき役割についてお伺いします。
「いじめ対策」については、今定例会において、各会派の議員から、現状認識、早期発見、マニュアル作成、警察との連携など、あらゆる面から質問されており、我が会派からも教員の多忙化を解消し、情熱を持って学習指導・生徒指導など本来の担うべき業務に専念し、子供たちと向き合える環境づくりを行っていくべき旨の質問を行ったところです。

9月の川西市でも自殺した県立高校の男子生徒がいじめを受けていた問題や大津市の中学2年の男子生徒が昨年10月に自殺した問題のいずれについても、共通していえるのは、現場の学校長の対応だけでなく、教育委員会の対応のまずさであります。
校長が「『不慮の事故』として全校生徒に説明したい」と遺族に打診したことについて、常任委員会でも問題になりましが、問題が起きた時こそ、オープンにしていく姿勢が必要だと考えます。

学校とご両親とのやり取りの中での思い違いや誤解があったかもしれません。また、加茂忍委員のご指摘にもありましたように、2年続きの定員割れの問題もあったかもしれません。しかし、それだけに、学校現場を管理・監督する立場にある教育委員会は、このような事件・事故が起きた際には、県庁から指示するだけではなく、現場対応に追われる学校長や教員が、遺族や生徒への対応に専念できるよう現場に出向いて支援していくなど、現場をフォローしていくことも大きな役割であると考えます。

そこで、いじめ対策において教育委員会として果たすべき役割について、どのように認識しているのか、今後のいじめ対策に対する教育長の意気込みと併せてお伺いします。