決算特別委員会 [ 10月20日(月)総括・藤井 訓博委員 ]
1 職員の給与抑制措置について
(1)人事委員会勧告及び報告について
人事委員会は、約52,000人に及ぶ職員の給与等に関する制度を常に研究し、その成果を議会及び知事に提出する、また、講ずべき措置の勧告などを行い、任命権者から独立した中立的な立場から人事行政に関する事務を公正に処理する機関であります。その観点からすれば、当然、本県独自の給与抑制措置を加味した公民格差を比較し、均衡を図るような勧告を出すべきものと私は考えます。仮に本県における厳しい財政状況の中、行革で給与の抑制措置を行っているからと言って、人事委員会の責務・存置の観点から、行革推進中の本県であっても、当局の方針に沿った報告及び勧告を行うことはあってはならないし、今までもなかったと確信しているところであります。
そこで、勧告を直前に控える中、県条例で決められた行革による給与抑制措置のもと、給与額が決められている中、公務員給与と民間給与を比較し、正しい数字を示すとともに、その是正を図らせることこそ本来の人事委員会の役割だと思いますが、今年の人事委員会勧告の考え方についてお伺いします。
(2)段階的縮小への今後の具体的方針について
部局審査でも述べましたが、職員・教員・警察官の給与抑制措置については、本年9月に開催された有識者を代表する「行革審議会」における意見書、各種団体を代表する「行革県民会議」における意見、県民の代表、代弁者である議員で構成する「行財政構造改革調査特別委員会」における報告においても、表現は違っても、職員等のモチベーションを保ち、職員の生活に与える影響を考えたとき、この抑制措置は一刻も早く解消すべきと、ここ数年にわたって述べられています。
また、部局審査における部長答弁でも、先の見通しも含めて概略さえ示されず、いくら今後とも職員等のモチベーションを保つ施策を行うと述べられても、先の見えない抑制措置に、職員は半信半疑で将来にわたる自身・家族等の生活設計も描けず、モチベーションの低下はまぬがれないと考えます。
具体的には、年間約110億円の抑制措置をいかに段階的に解消していくのかということになりますが、来年度に向けた抑制措置が近々示されるという状況の中、第3次行革プランで「段階的縮小」という踏み込んだ表現が示されたことに伴い、今年の対応こそが抑制措置の今後の終局を見通せる方針とならなければならないし、するべきだと考えます。今まで頑張ってこられた特別職及び管理職を含めて、一般職員のためにも、今年こそ抑制措置の終局を見据えた「段階的縮小」の方策も含めた具体的な方針を示すべきと考えますが、知事の考えをお伺いします。
2 地域の夢推進事業費について
今年度からふるさとづくり推進費と、成果を継承し名称変更がされた地域の夢推進事業費について伺います。
地域の夢推進事業費については、平成14年度から各県民局に措置されてきた地域戦略推進費に変わり、平成23年度より地域の多様な課題に対応して、ビジョンの実現や地域の元気創出を図る予算として、各県民局に措置されてきました。
そういう中で、企画県民部審査で岸口議員からも指摘しましたが、平成25年度に各県民局で地域の夢推進事業費を活用して実施された事業を見てみますと、必ずしも全てが地域の多様な課題に対応した事業ばかりに使われているわけではなく、一般会計予算の延長・補填のような事業、公共事業で行うべきハード事業に使われていることも散見されます。
確かに地域における課題は、ソフトからハードまで、大きな課題から小さな課題まで多種多様であり、それらの課題に対し現地解決型総合事務所の機能を発揮し、きめ細かく対応していこうとすれば、アプローチも様々となることも一定仕方ないと思いますが、各県民局を横並びで見たときに、県民局の独自性という観点からも疑問を感じざるを得ない事業や単なる予算不足を補充しているだけのような用途の事業が見られますなど、この事業の決算審査を行うにあたって、問題提起しておかなくてはならないと考えます。
各県民局間の情報共有も図りながら、地域資源を生かしながら地域の固有課題に対応する独自施策を展開することで地域活性化につながるという事業趣旨の実現に向け、より有効にこの予算が活用されることを願いますが、事業開始から各県民局の予算執行の実績を見れば、せっかくの行革における厳しい予算の中での予算措置にも関わらず、3年間で総額約8千万円もの不用額が生じています。
そこで、知事として、地域の夢推進事業費の3年間の成果をどのようにとらえ、今年度からのふるさとづくり推進費で各県民局にどのような取り組みを期待されているのかお伺いします。
3 子供の安全確保について
今年に入って、1月には札幌で小学3年生の女の子の監禁事件、7月に倉敷で小学5年生の監禁事件が起こり、先日には、長田区において、小学1年生の女の子の命が奪われるいたましい事件が起こるなど、子供が被害者となる犯罪が後を絶ちません。また、平成25年における県警が把握する未成年の子供に対する犯罪被害等の発生状況は、強制わいせつや公然わいせつのような明らかな犯罪に加え、犯罪につながりかねない声かけやつきまとい事案も含めますと、兵庫県内において、2千件を超えるとも報告されています。
このような犯罪からの子供たちの安全確保については、長田区の事件以降、特に防犯カメラの設置等への補助事業に県と神戸市で追加募集が決定されるなど、その抑止力が注目されていますが、私は、今年の2月定例会で質問を行い、提案を行いましたように、ハード事業に加え、地域ぐるみでの子供の見守りという県民意識の高揚こそが重要不可欠と考えます。長田区での悲惨な事件を教訓として生かす意味で、全国民・県民が大人・地域が子供の命を守っていかなくてはならないという機運が高まっている今、この機をとらえて、効果的な施策の展開を図っていくべきと考えます。
そこで、身近で行われている取り組みとして、兵庫における「子どもを守る110番の家・店」の取り組みがあります。既に県内全ての市町で取り組まれるようになり、昨年末現在、事業所、店舗も含めてその数は約7万5,000ヵ所以上に及ぶものの、例えば先に述べた県警が把握する昨年の子供に関する犯罪被害等発生状況2千件と比較して、110番の家等への駆け込み事例は91件との報告もあり、そのいずれもが、店や駅への駆け込み事例と報告を受けております。設置数に応じた効果が出ていないと感じますことから、犯罪抑止を含めたより効果的な取り組みとするため、各市町ばらばらの取り組みを県で統括してより積極的に推進することとともに、誰でもどこでもわかる県下共通の在宅サインの具現化などを2月議会で提案したところであります。その際、政策部長から「地域によっては導入に若干否定的な声があるものの、例えばモデル地区を指定して、そこで一回、導入についての効果や問題点を検証して、その上で効果があり、あるいは地域の理解も得られるようであれば、全県に広げていくというような取り組みもやっていきたい」との答弁も得たところであります。
そういった中、長田区での事件を受け、赤穂警察署では小学校と連携し、帰宅中に包丁を持った男に声をかけられた児童が「110番の家」に逃げ込み、駆けつけた警察官が不審者を確保するという想定で、助けの求め方や不審者の特徴を大人に伝える要点などの訓練を行ったとの報道がありました。私は、市町、警察、教育委員会、各種団体等のいろいろな主体で取り組まれているこのような取り組みを、安全なまちづくりを推進する県行政が中心となって、市町とも連携を深め、まず、答弁にあったモデル地区づくりに早急に取り組み、そして県民総がかりの県民運動として盛り上げていくべきと考えます。
そこで、2月定例会後の在宅サイン導入等に向けた検討状況も含め、県民ぐるみでの子供の安全確保に向けた県行政としての今後の取組み方針についてお伺いします。
4 男女共同参画について
男女共同参画社会づくりに向けたさまざまな取り組みをより効果的に推進するためには、県自らが男女共同参画のモデル職場となるよう率先して行動することが重要という認識から策定している男女共同参画兵庫県率先行動計画の推進について、平成15年度より様々な数値目標を設定して取り組んでいますが、先の部局審査で健康福祉部にその数値目標の根拠についてお伺いしました。
答弁では、例えば管理職に占める女性の割合では平成23年4月時点で5.6%と低かったので全国平均並の6.5%、県審議会等における女性の割合では国の計画を上回る35%を目標として設定したとのことでありました。本来、男女を問わず有能な管理職を登用するという基本理念のもと、その結果として女性登用が増え、加えて、女性登用によってその能力が発揮され、県施策推進に向け、成果があがっていくということが基本と考えます。間違っても、数値目標達成のための登用が先行すれば、男女共同参画社会づくりの目的からは程遠い、本末転倒な話となると考えます。
登用目標についても、県職員の男女比率をみますと、職員全体では、男性70.8%、女性29.2%であるのに対し、例えば、健康福祉部では、保健師、栄養士なども含めると男性59.4%、女性40.6%、県土整備部では、男性90.3%、女性9.7%であります。このように職場の現状は様々であり、一律に目標を設定するのではなく、部局等の施策の特性にあわせた目標設定も検討していくべきではないかと考えます。
いずれにしても、まず当面の目標とされてきたあらゆる面での女性の参画促進は、数字面からはある程度達成されてきている現状にあります。今後は、これらの数値目標の達成だけに捕らわれることなく、計画策定の趣旨にもある「男女がともに人生のどの時期においても、いきいきと暮らせる社会の実現」に向け、県がモデル職場として成果を社会全体に発信していくことも念頭に置いて、計画推進していくべきと考えます。
そこで、まず、率先行動計画策定以前の女性登用の低さは何に起因していると考えるかお伺いします。また、計画最終年度を迎えた今、第4次男女共同参画兵庫県率先行動計画に関する様々な数値目標の達成が県の各職場に与えた効果と、これまで指摘した件も含め、次期計画策定に向けての課題認識と策定方針についてあわせてお伺いします。
5 土砂災害等の防止について
この件については、聞きたい内容に関してほとんど全て先に答弁があったので、1点だけ伺います。土砂災害警戒区域の総点検を行うとのことですが、県民にとっては鵜の目鷹の目で、赤色に塗られたら資産価値がなくなってしまうのではないかとの声を聞きます。黄色でも地価が下がるとか、転居する際に家が売れないとかとの声を聞きます。土砂災害警戒区域の総点検をうたうのであれば、どういう意味かということを含めた広報や県民への周知をしっかりとやらないといけないと思いますが、その方針を簡単にお聞きします。
6 兵庫型「体験教育」のあり方について
兵庫型「体験教育」については、これまでより児童生徒の発達段階に応じて、様々な取組みが行われています。
小学5年生を対象に実施されている自然学校は、昭和62年に開催した「こころ豊かな人づくり懇話会」での「人は自然とのふれあいの中で、豊かな感性、問題解決能力、粘り強さなどを培うとともに、人とのふれあいを通して、生きる喜びや苦しみを知り、思いやり、協調性、社会性などを身に付ける」という提言を基本理念に据えて、昭和63年度から実施され、既に26年が経過しています。この間、平成7年には阪神・淡路大震災が発生し、生命の尊厳や助け合いの大切さなどの貴重な教訓を学び、今後の教育に生かすべく様々な取り組みが進められてきましたが、平成9年には神戸市須磨区で大変痛ましい事件が発生し、その教訓から社会生活上のルールや倫理観の育成、自己責任の自覚や自立・自制の心の涵養など「心の教育」の大切さが指摘され、平成10年度から地域における活動や体験を通して子供達一人一人が自分なりの生き方を見つけられるよう中学2年生を対象に“地域に学ぶ”トライやる・ウィークが実施されています。
いずれも、全国に誇れる素晴らしい取組みで兵庫型「体験教育」をモデルとして、新学習指導要領に「体験活動の充実」が位置付けられるなど、その取組みは全国的に評価されているところであります。
また、平成17年度からは、高校生を対象に地域貢献事業~トライやる・ワーク~を実施し、平成25年度からは、高校生ふるさと貢献事業として、地域行事への参加等によりふるさとに対する関心を高め、社会に最も近い高等学校の3年間を通して生徒が主体的な行動ができるように取り組まれ、あわせて、就業体験を行うインターンシップも行われています。
しかしながら、取り組みの現状を見てみますと、自然学校にあっては、行革の影響も少なからずあったと私は思いますが、5泊6日が平成21年度からは4泊5日以上とされ、小学校3年生の環境体験事業と抱き合わせの補助金となり、平成23年度から交付金化とされました。また、トライやる・ウィークについても、子どもたちの希望に応じた受入れ先の確保が難しくなっていることに加え、「マンネリ化」し活動が行事化しているという指摘があるなど、いつの間にか安易な職業体験教育へと転化してしまったのではと危惧されます。
そこで、以上のような現状を踏まえ、兵庫型「体験教育」について、今一度、基本理念を確認し、兵庫型「体験教育」とうたいながら、重点目標の「豊かな心」の育成に位置づけられていることからも、そのあり方、目的を再確認する時期に来ていると考えますが、兵庫型「体験教育」のこれまでの成果を含め現状をどのように認識しているのか、ご所見をお伺いします。
また、この全国に誇る貴重な兵庫型「体験教育」の取組みが、小・中・高それぞれ別個の取り組みで完結するのではなく、それぞれの成果が積み重なって生かされる、取り組みとして行うべきと思いますが、その検証も含め、「豊かな心」の育成に向けて、今後どのように継続し、関連・系統づけられ、進められようとしているのか、併せてお伺いします。