第326回 2月定例県議会 代表質問
質問日 : 平成27年2月20日(金)
質問者 : 石井 秀武 幹事長
1 平成27年度当初予算に対する基本的認識について
本県では、時代の変化に対応し、県民の要請に的確に応え、持続可能な兵庫の基盤を作るため、平成20年10月に制定した「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づき、行財政構造改革の取り組みを進めています。
今年度は、平成25年度に実施した3年毎の総点検を踏まえた第3次行革プランの初年度にあたり、今年度から平成30年度までの5年間で、トータルでは1,655億円、毎年続くことが見込まれる収支不足を、平成30年度には収支均衡させ、持続可能な行政構造を確立するために、来年度に向けても同プランを着実に実行していくことが求められます。
そういう状況の中で検討された平成27年度当初予算案であるので、依然として厳しい財政状況が続くことは明らかですが、そういう中にあっても、我が会派より知事への当初予算編成に対する申し入れ等の場において繰り返し主張している、「限られた財源の中、優先順位を見極め、より徹底した「選択と集中」を図ること」、「県民が将来に渡り希望を持つことができる社会の実現に向けた予算編成とすること」などについては、予算編成に当たっては不可欠な視点としてあることは言うまでもありません。
一方で、我が国においては、人口急減・超高齢化、大都市と地方との格差が顕在化する中で、昨年末には地方創生関連2法案が成立し、地方の再生に国を挙げて取り組もうとしており、今定例会でも、「兵庫県地域創生条例」案が提案されますとともに、知事の提案説明では、地域創生について「安全の確保と並んで取り組むべき最優先課題」との発言もあり、地域の元気が回復する予算となることを大いに期待するところであります。
そして、また、平成27年度は、先月17日の震災20年を経て、ポスト震災20年のスタートとなる年となります。県民のみならず、全国から兵庫県が安全安心社会の実現に向け、どのような予算案を打ち出すのか注目していると思います。
昨年2月の我が会派の代表質問に対し、知事は、平成26年度予算を「安全元気ふるさと兵庫スタート予算」と位置づけたと答弁されました。これまで述べた観点に対する見解も含め、平成27年度当初予算案に込めた知事の思い、メッセージと合わせて、基本的な認識について伺います。
2 ポスト震災20年における兵庫の将来像について
ポスト震災20年のスタートとなる平成27年度の兵庫の姿を、当初予算案に込めた知事の思いとして確認しましたが、続いて震災20年を経て、知事が描く兵庫の将来像について伺います。
昨年の2月定例会での代表質問において、「震災の教訓を生かす兵庫づくり」について伺いました。それ以降の1年間で、震災20年という節目を経過するとともに、人口減少問題などの様々な社会問題が顕在化するなど、兵庫の将来を考える上での社会情勢が大きく変化したと考えます。そういう観点から、「ポスト震災20年における兵庫の将来像」について伺います。
先月17日、未曾有の被害を持たらした阪神・淡路大震災の発生から20年を迎え、天皇・皇后両陛下のご臨席のもと震災20年追悼式典が行われました。ただ、そこで残念に感じたのは、昨年、不慮の交通事故で亡くなられた貝原前知事の出席が叶わなかったことです。そして、もう一人、イスラム諸国訪問のため安倍首相の出席がなかったことです。震災20年追悼式典以外にも、今年度は震災20周年ということで、昨日も私の地元では「震災20年事業 西区防災シンポジューム」が開催され、災害時の備えについて、地域での活動が報告されるなど、様々な周年記念事業が県下各地で年間通じて開催され、いろんな形で震災後20年間の復興に向けた取り組みの総括がなされたものと考えます。特に、この20年間で、一般社会の中に「ボランティア」や「NPO」、「こころのケア」などという言葉が一般的となるとともに、県政推進の理念としての「参画と協働」が県政各分野で定着するなど、震災復興の過程の中で生まれた新しい取り組みが県政全般や一般社会の中に定着・浸透していきました。この20年間の県政は、まさに震災復興とともに歩んできたと言っても過言ではないと考えます。
一方、現在の我が国は、少子高齢化の進展や人口減少、大都市圏と地域との格差の拡大などの構造的な課題に直面しており、本県においても同様の課題を有しています。そんな中、このような課題に立ち向かい、力強く克服していくため、先程も触れましたが、本県では、地域の個性と特色を最大限活かしながら、安全で元気なふるさと兵庫を実現することを目的とした「兵庫県地域創生条例」案が今定例会に提案されました。
同条例案では、将来にわたって活力を維持することのできる地域モデルを確立し、また、県民及び市町等とともに我が国の将来を兵庫から切り拓いていく気概を持って地域創生に取り組むとしており、知事の並々ならぬ決意がうかがえます。このような全国共通の大きな課題に対し、全国に先駆けて取り組み、兵庫の地域創生手法を全国に発信していくことになることからも、本県の特色でもある震災復興の過程から生まれた県政各分野での様々の手法を結集し、ポスト震災20年における兵庫の将来像を見据えて取り組んでいかなくてはならないと考えます。
特に、今月5日に総務省が公表した平成26年の人口移動報告によると、全国40道府県で転出超過となっており、さらに兵庫県は7,092人の転出超過、北海道、静岡県に次いで全国で3番目に転出が転入より多かったことが判明しました。加えて、本県がこのように人口転出において全国上位となるということは、これまで郡部の課題として捉えられていた人口減少問題について、東京・名古屋圏を除く都市圏、すなわち本県では神戸・阪神地域からの人口転出が顕在化してきているということであり、その点での対策の必要性も指摘されています。いずれにしても、今回提案された兵庫県地域創生条例案では、地域創生のための人口対策にも取り組むとしていますが、人口流出が極めて顕著なことが判明した本県においては、危機感を持った対策が求められます。
そこで、人口減少や大都市圏と地域との格差の拡大などの様々な課題が顕在化する中、ポスト阪神淡路20年における県政の今後の展開について、人口減少対策への対応を含め、知事はどのような兵庫の将来像を描き、取り組みを進めようとしているのか伺います。
3 県民の健康増進等による元気な兵庫の実現について
(1)健康寿命の延伸について
元気な兵庫を実現するには、県民の健康的な元気を確保・維持することが不可欠であり、より多くの県民が健康で充実した人生を送れるよう取り組むことが、県政の最重要課題であると言えます。そういう意味で、健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態、すなわち健康寿命の延伸を具体的な目標として、様々な健康増進対策に取り組むことが重要であることは言うまでもありません。
厚生労働省が昨年10月1日に発表した平成25年の健康寿命は、男性が71.19歳、女性は74.21歳となっており、前回調査の平成22年からそれぞれ0.78歳、0.59歳伸びました。また、健康寿命の延伸は、医療費や介護費など社会保障費の増大を抑制し、持続可能な財政運営を可能とする観点から重要であり、そういう意味では「平均寿命と健康寿命の差」、すなわち「健康上問題があって、日常生活を普通に送れていない期間」を短くしていくことも具体的な指標として重要と考えます。
そういう中、本県においては、平成23年に「健康づくり推進条例」を制定し、翌年には条例に基づく基本計画として「兵庫県健康づくり推進プラン」を策定、さらにその翌年には同プランの基づく具体の実施計画となる「兵庫県健康づくり推進実施計画」を策定し、県民の健康づくりの推進を総合的に進め、特に、その中で推進における数値目標の1番目に健康寿命の延伸を上げ、具体的には平成29年度までの健康寿命の1年延伸を掲げて取り組んでいる点は大いに評価できると考えます。
さらに、県では、このような目標達成のため、食生活、運動、休養等の健康な生活習慣づくりを、健康づくり推進条例第2条で県民の責務として規定しています。私は、その中でも、適度な運動を習慣的に続けることが健康の維持には極めて重要であり、適度な運動により、規則正しく健全な食欲が生まれ、適度な疲労感から睡眠等の充実した休養につながると考えます。
一方で、健康維持には運動が必要と頭や理屈でわかっていても、なかなかできないものであります。徳島県では、県民が適度な運動に取り組むきっかけへの工夫として、徳島大学等の協力を得て、平成18年に阿波踊りにストレッチの要素を盛り込んだ「阿波踊り体操」を開発しました。本県においても、今年度より市町や各団体が取り組む「健康体操」の普及促進に取り組んでおり、約60の「健康体操」をHPで紹介しています。今後は、一人でも多くの県民が、理屈ではなく、楽しんだり喜んだりして、自発的に参加するような工夫を凝らしていくことが、県民全体の健康寿命の延伸という真の成果につながっていくと考えます。
また、各地域で特色ある健康づくりの取組みを進めることは、国全体で進める地域を元気づけるための「地方創生」の柱にもなると考えます。県としても、県内外問わず特色ある取組みを行い、実際に指標として成果の上がっている地域の研究や分析を行い、健康づくりの大きな運動へと展開していくことも重要ではないかと考えます。
そこで、本県における健康寿命や、平均寿命と健康寿命の差の現状と、その背景となっている本県の健康づくりの課題をどのようなものだと把握しているのか伺いますとともに、県民が適度な運動に継続的に取り組むしかけづくりをはじめとした、「健康寿命の延伸」を図る施策に今後どう取り組んでいこうと考えているのか伺います。
(2)スポーツの振興について
健康維持には適度な運動が重要なことは十分認識されていると考えますが、取り組むきっかけや継続的に行えることを考慮すると、高齢者まで続けられるスポーツの振興が効果的と考えます。
本県においては、「スポーツ立県ひょうご」の実現をめざし、平成7年には、地域住民の生活範囲内の施設を拠点として日常生活の中に運動・スポーツを取り入れることができるよう「総合型地域スポーツクラブ育成事業」がスタートし、その後、平成12年からは、その育成補助事業として県内の全小学校区でのクラブ設立をめざす「スポーツクラブ21ひょうご」がはじまり、平成17年度には全小学校区で設立され、多様なスポーツ活動による県民の健康の増進に大いに貢献しています。
また、震災復興の経験と教訓や兵庫・神戸の魅力を国内外にアピールするとともに、ランニングを核とした県民スポーツの振興を図る「神戸マラソン」も、今年で5回目となり、例年、参加申込は3~4倍の高倍率となっております。さらに、県下では今年から姫路市で世界遺産姫路城マラソンも開催されるなど、人々の健康への意識の高まりもあって、世間では空前のランニングブームとなっていますが、一方、ランニングを継続できなかった人の約7割が、半年以内にやめてしまうというスポーツ会社の調査結果もあり、スポーツを継続的に続けられるような取組みが必要であります。
私も、山登り、マラソン、自転車等、適度な運動を十数年間、継続的に続けており、それが健康の第一の秘訣と考えていますが、競技として続けることも含め、各県民にとって高齢になっても継続的に続けられるスポーツの振興、定着を図っていくことが、県民の元気、健康の維持には重要と考えます。
そういう中、昨年11月にはシニア世代を対象とした総合スポーツ大会である「日本スポーツマスターズ2017」の兵庫県での開催が決定しました。競技志向の高いシニア世代が対象ではありますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズ等の開催への機運と含めて、あらゆる世代の県民へのさらなるスポーツ振興につなげる絶好の機会と考えます。
そこで、日本スポーツマスターズ2017兵庫大会の開催に向けた体制づくりも含め、あらゆる世代にわたる元気な兵庫実現に向け、県民のスポーツ参加を推進し、継続して続けられる生涯スポーツとしての定着を図るための取り組みについて伺います。
4 活力と元気あふれる地域経済の実現について
先日、今年度の国内総生産の実質成長率が、前年度より0.5%減と発表されました。来年度は1.5%増と回復することが見込まれているものの、今年度の結果は消費税率の5%から8%への変更や日銀の大胆な金融緩和の影響を含めた物価上昇による個人消費の予想以上の落ち込みなどが大きな要因と指摘されています。
このような中、安倍内閣においては、地方創生と銘打って、地域再生のための地域の元気づくりを経済立て直しの柱とする一方で、円安などにより業績好調の企業が多く、また来年度からの法人税減税を通じた企業収益の拡大を労働者の賃上げに振り替えることで、家計購買力を増し、個人消費を回復させ、それがさらに企業の業績を押し上げるという「経済の好循環」を狙っています。
また、昨年末の「経済の好循環実現に向けた政労使会議」においても、賃上げに最大限努力することで合意がなされた後、今年に入って使用者側である経団連において、春闘交渉に臨む経営側の方針を示す「経営労働政策委員会報告」で、「賃金の引き上げを前向きに検討することが強く期待される」などと踏み込んだ表現で賃金上昇を明記しています。安倍内閣におけるアベノミクスによる「経済の好循環」を生み出そうという取組みには、日銀による国債の大量買い入れを前提にしており、それができなくなった場合の財政破綻などのリスクに関しては、強く疑問を感じるところですが、賃金上昇から始まる「経済の好循環」については、ようやく、政・労・使が足並みをそろえた取組みとして期待するところであります。
一方、本県に目を移すと、今年度のGDPは4~6月、7~9月とも前年同期よりマイナスとなっており、加えて、個人消費も基調としては緩やかに持ち直しているものの、地域経済の活力と元気を取り戻す動きへの兆しは見えない状況にあります。新年度予算案においても、活力ある地域経済や地域の元気創造を目指した様々な施策を提案していますが、その様々な県事業を賃金の上昇、地域の活力と元気、個人消費の回復につなげる仕組みづくりが必要ではないかと考えます。例えば、日銀神戸支店の管内金融経済概況でも報告されているように、公共投資は高水準で推移しており、それらの公共投資の効果を県下の中小・零細業者にも浸透させるよう、下請、孫請業者等の公共事業に関わる全ての業者にも適切な水準の賃金が支払われるような仕組みづくりを行い、賃金上昇から始まる「経済の好循環」を県内でも実現を図るような取り組みが期待されます。
特に、公共工事に係る賃金の面を考えてみると、本県の公共工事の設計労務単価は、公共事業労務費調査等の結果を受け毎年改定が行われるとともに、急激なインフレ等で請負代金額が著しく不適当となったときは変更請求ができる制度もあります。このような制度やしくみがありますが、これらの好影響が下請、孫請業者等にも浸透し、県下の中小・零細業者の労働者の賃金増加につながっているか疑問であります。労務単価改定に関しては、2月16日の緊急経済対策の質疑の中で、「建設団体等に対して、下請企業を含めての賃金引き上げをあらゆる機会を通じて申し入れている。」との答弁がありましたが、労働者の賃金上昇に確実につながる制度や仕組みをつくることが、今、求められていると考えます。
また、東京都新宿区等では、公共サービス基本法に基づき、発注元による不当なダンピングで人件費にしわ寄せが及んだりすることの防止も含めて、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件を確保するため、公共事業を実施する事業者の労働条件審査が導入されており、県下の中小・零細業者の労働者の賃金確保の観点からも県としても導入の検討をすべきではないかと考えます。
そこで、以上の点を踏まえ、公共事業における下請、孫請業者等全ての地元中小・零細業者にも適切な水準の賃金が支払われるような仕組みづくりを含め、県として様々な事業展開を通じ、賃金の上昇、個人消費の増加、県内の景気浮揚、地域活性化につなげ、活力と元気あふれる地域経済を実現していくことが求められると考えますが、今後、いかに取り組んでいこうと考えているか伺います。
5 県と神戸市の連携による神戸港開港150年に向けた観光振興について
神戸港は、古来「大輪田の泊」と呼ばれていた時代から大陸との交流が行われ、平安時代には国際貿易の拠点として発展しました。室町から江戸時代には「兵庫の津」と呼ばれ、鎖国政策下での交通の要衝として重要な役割を果たした後、1868年に開港しました。それ以降、第1回のブラジルへの集団的移民が1908年に神戸港から旅立ち、その後、約25万人もの人々が神戸港からブラジルへ移住するなど、日本人の海外へ旅立ちの窓口となるとともに、殖産興業による軽工業や重化学工業の発展、高度経済成長による貿易の拡大などにより、世界を代表する港として大きな発展を遂げ、まさに兵庫・神戸のシンボルとなりました。
また、ジャズやゴルフ、洋菓子など西欧の華やかな文化が、港から神戸の街に文化として定着し、ファッション、スウィーツ等、現在の華やかで先進的な魅力的で住みやすいというまちのイメージをつくるきっかけとなりました。
このようなめざましく、華やかな発展の中で、20年前の阪神・淡路大震災により神戸港もまた甚大な被害を受けた。震災前の平成2年に世界第5位を誇った神戸港のコンテナ取扱量は一気に約半分に落ち込み、その後、量的にはかなり改善してきたものの平成24年には世界第52位という状況にあります。一方、神戸への観光客については、震災前の平成5年度水準に平成13年度には回復し、平成24年度には大河ドラマ「平清盛」の効果もあり、約3280万人と統計開始以来最高を記録しました。
そんな神戸港も、2年後の平成29年1月1日に開港150年を迎えます。神戸市では、先月23日に行政や経済団体、港湾業界団体、地元大学など約50団体で組織した「神戸開港150年記念事業実行委員会」を設立しました。開港150年を先に迎えた横浜港や函館港の事例や国際会議の開催など過去の周年行事の状況等が報告され、記念イベントの進め方などについて意見交換されたとの報道がありました。
めざましい発展の後、震災による壊滅的な被害、そして復興と、辿ってきた歴史はまさに兵庫・神戸の象徴であります。震災から20年が経過し、その復興を広く内外にアピールし、ポスト震災20年のスタートとしてさらなる神戸の発展に向けた取り組みの意味でも、神戸港開港150年を契機とした観光振興に、神戸市と連携して県としても取り組んでいくべきと考えます。
また、神戸市との連携強化については、国内外の都市間競争が激化する中、「2016年神戸サミット」等の開催誘致や「関西ワールドマスターズゲームズ2021」の開催調整等における首都圏での連携や、神戸市による航空・宇宙分野、IT分野等での経済・人材交流の強化・促進を支援するための米国西海岸での連携を深めるため、東京及びシアトルの事務所の共同化を4月1日から行うこととしています。それに続く取組みとして、開港150年に向けた神戸港の魅力向上に対して、県としても各種イベント等を通じた誘客促進、観光振興に神戸市一体となって取組み、国内外に震災復興を強くアピールするとともに、兵庫・神戸経済のさらなる活性化を図るべきと考えます。
そこで、ポスト震災20年のスタートとしての取り組みという観点からも、兵庫の玄関口神戸港の開港150年を契機としたさらなる観光振興に、県と神戸市が密接な連携のもとに取り組んでいくべきと考えますが、ご所見を伺います。
6 地域や産地の自立を促す力強い農林水産行政の展開について
本県の農林水産業については、「厳しい情勢」というのが枕言葉のようになっており、毎年、当局の懸命なご努力に対して「厳しい質問」をせざるを得ない状況となっていますが、明るい話題として、知事も提案説明で述べられていましたが、私も何度か提案してきた新品種のイチゴが県内農家の協力のもと県立農林水産技術総合センターで育成され、「あまクイーン」と「紅クイーン」と命名されました。今後の生産拡大や需要拡大等の取り組みを経て、本県農林水産業の「厳しい情勢」を救うような特産品となることを期待するとともに、当局のご努力に敬意を表し、地域や産地の自立を促す力強い農林水産行政の展開について、質問します。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の進展など、戦後農政の一大転換期を迎えている今、より一層競争力のある力強い農林水産業の確立が求められます。そういう中で、越年したTPP交渉の本格化、その後の妥結も見据え、現在、政府は国内の農業競争力強化を図るために全中の権限廃止などの農協改革を進めるなど、農地集積、六次産業化、輸出促進の3本柱でかなり大胆な農政改革を行おうとしており、まさに大きな転換期を迎える地域の農林水産業にとっては、それらに打ち勝つ力強さが必要となります。
一方、農林水産業は、農地や森林の保全による県土保全の機能に加え、地下水の維持や美しい景観や環境、生物多様性の保全のほか、地域の伝統や文化の継承という、公益的かつ多面的な機能もあることを注視しなくてはならないと考えます。欧州では、このような農林水産業のもつ機能はお金で売買することができず、これらの維持費用は農産物販売で回収できないことから、税金を使ってこの公益的かつ多面的な機能を維持するという考え方があると聞きます。
その点に着目し、個々の農家で行ってきた競争力強化に向けた取組みについては、農林水産業の維持、公益的かつ多面的な機能の維持の側面もあるとして、地域や産地全体での取り組みを促進させ、行政としても地域や産地を守っていく側面からの支援をしていくべきと考えます。すなわち、地域や産地の将来へのビジョンを描き、その実現に向けて農業による地域の自立を促していく仕組みづくりが必要と考えます。
昨年2月の代表質問では、農業を強い産業とするため、生産から流通に至るまでマーケットインの発想に基づいて、オール兵庫で取り組んでいく姿勢が必要と提案し、今年度、「農」イノベーションひょうご、大規模施設園芸団地の整備等に取り組み、マーケットインの発想に基づく付加価値を高める施策を推進していくとの答弁がありました。一方で、先程から申し上げているとおり、大都市と地方との地域格差の拡大、全国各地での大きな人口減少の見込み等が、今年度に入って地方における大きな課題として顕在化してきています。そういう意味で、地域や産地の農業による自立を図るため、少しずつでも、具体的な成果を見せていき、地方の元気回復につなげていくことも重要と考えます。
そういう中、県では、農業改良普及センター等のコーディネートにより、農業・農村が元気で活力ある新たな取り組みに向け、地域や産地を消費と強く結びつけ、地域や農業に流通・加工等の異分野の仕組みや考え方を取り入れ、自立をめざす、ひょうご元気な「農」創造事業に平成24年度から取り組んでおり、特産品の開発や新たな販路開拓などにつながった取組みもあると聞きます。このような事業の成果を踏まえ、他品目・産地についても同様の成果を導き出し、地域全体の元気回復につなげていくことが必要であり、また、激化する国内外の競争に打ち勝つ産地や仕組みづくりが期待されます。
そこで、農協改革をはじめとする農政の一大転換期を迎えるわが国の農林水産業を巡る厳しい現状に打ち勝ち、地域や産地が自立する力強い農林水産業の実現に向けて、農林水産業による地域の元気回復が実感できるような施策を県として仕掛けていくべきと考えますが、今後どのように取り組んでいこうと考えているのか伺います。
7 交通事故対策等の推進について
交通事故対策については、昨年の代表質問において、本部長の決意をお聞きしました。その後、昨年末に死亡事故が急増したことを踏まえ、先の12月定例会では我が会派の藤井議員からもお聞きしました。昨年の死亡事故死者数は、昨年9月末までは115人で、過去最少であった平成21年同期の113人とほぼ同じペースで推移していましたが、その後一転して10月以降の3ヶ月間で67人もの事故死が発生し、結局、182人で前年より5人少なかったが、全国ワースト3位という結果となりました。
特に、平成26年中の高齢者の死亡事故者数は103人で、全死者数182人に占める割合は56.6%で昭和61年以降、過去最高となりました。また、道路横断中になくなった53人のうち8割に当たる43人が高齢者との結果も出ており、高齢者等の交通弱者への安全対策という課題が浮き彫りになりました。
また、全国的にみても、主な原因が75歳以上の運転による死亡事故の割合が年々高まっており、平成25年のデータで全体の12%、458件にのぼるとともに、免許保有者当たりの死亡事故率は75歳未満の2.5倍となっており、高齢者の自動車運転への不安が数字となって出ている現状もあります。
高齢者への対策をはじめ、交通事故には様々な背景、要因、課題がある中、昨年の代表質問では、警察庁でも交通部門の要職を歴任されてきた本部長に対し、「安全」と「円滑」に配意した交通社会の実現への思いをお聞きしました。特に、「安全」面での交通事故の課題について、死亡事故が多い兵庫県において、知識と経験を生かして、少しでも改善できれば、と着任会見で述べられておられました。
そこで、昨年の本県での交通死亡事故等の状況、要因等を踏まえ、本部長の知識、経験から、本県の交通事故の現状をどのように認識しておられるか伺いますとともに、今後の交通事故対策をどのように進めていこうと考えているのかあわせて伺います。