第327回 6月定例県議会 代表質問
質問日 :平成27年6月18日
質問者 :越田謙治郎 政調副会長
質問方式:分割方式
1 地域創生戦略について
昨年5月に公表されたいわゆる「増田レポート」は、従来から認識されていた人口減少という課題を改めて浮き彫りにしました。
もちろん、人口減少は従来から兵庫県政にとっても大きな課題として位置づけられていましたし「過疎化」や「限界集落化」等、人口の減少や高齢化により地域活力が低下することが懸念されていました。そのため、本県でも「ふるさと自立計画の推進」「小規模集落元気作戦」等の地域再生大作戦が進められてきました。
また、いわゆる「オールドニュータウンの活性化」や「市街化調整区域における計画的なまちづくり」など、人口減少や高齢化等に伴う課題に向き合い、それぞれの地域活性化について地元市町と連携をしながら取り組んできたものと認識しています。
しかし、このような多くの取り組みにもかかわらず、「増田レポート」では、本県においても半数の自治体において消滅の危険性があるとのデータが示されており、人口減少が一つの自治体の将来を決める大きな課題だと、あらためて県民に共有されたものと思います。
そのような流れの中、本県では本年3月に「地域創生条例」を制定し、現在「地域版総合戦略」である「地域創生戦略」の策定作業が進められております。「地域創生戦略」については、9月議会で上程されるというスケジュールであるため今回の代表質問においては大きな方向性として議論をすることで、地域創生における課題を明らかにしていきたいと考えています。
(1)地域創生の基本的な考え方について
地域創生を進めるうえで、県が進めようとしている少子化対策といった自然増対策、企業誘致や雇用の創出、観光振興などの社会増対策という大きな方向性について異論はありませんが、私たちは、それと同時に人口減少という問題を避けることができない課題としてとらえその中でいかに生活の質を担保し、社会としての持続可能性を高めていくのかということについて議論をし、方向性を示さなければならないと考えています。
ここで私が大きな論点として取り上げるのは地域創生を進めるうえでの「効率性」と「多様性」とのバランスです。今後、人口減少が進む中で、社会の在り方、街づくりの在り方、政治資源の配分において県としての明確な思想が必要だと考えています。
当然のことながら、人口減少が進む中、現在の負担水準を維持したまま、従来の規模の公共サービスを継続することは困難です。
財政運営が選択と集中を基本としている中で、街づくりにおいても機能の集約による効率的な都市経営が求められています。
一方で、効率性、とりわけ財政運営上の効率性だけで県民の生活の質を維持することもできません。一見、短期的には効果が見えず非効率に見えるようなものであったとしても、中長期的には社会の豊かさに貢献しているものもあり、まちづくりや行政運営には、多様性が必要だと考えます。
現在が右肩上がりの社会であれば、効率性を高めながら多様性を担保するという余裕がありました。しかし、人口減少を前提としたときに、このような発想を継続することは困難であり、効率性と多様性のバランスをどのように位置づけるかということが重要です。特に、兵庫県は日本の縮図と言われるほど多様な地域における中、地域創生を行う上で、この効率性と多様性、言い換えれば都市部と地方部の発展のバランスは本県における地域創生の最大の論点の一つであると考えます。
知事として、効率性、多様性という観点をどのようにとらえ、本県の地域創生に臨もうとしているのか。この戦略策定にかける基本的な思いをお伺いします。
(2)オール兵庫での推進体制について
地域創生の取り組みは、戦後一貫して信じてきた成長モデルから脱皮をし、人口減少を前提とした取り組みになるということだと考えています。従来であれば、多様な要望に対して実現する順位をつけること、いわば利益を配分することが政治の役割でした。しかし、地域創生の時代は人口の減少を前提としているわけでから、いかに痛みや負担を分かち合い、不利益を配分するのかということが政治の役割となってくるのです。
そういった時代において、当然のことながら県の役割も見直していく必要があります。従来は、ややもすれば、県と市町との関係は上下関係になりがちでした。しかし、この地方創生の主役は市町だと言われており、県の役割は、従来にもまして市町の自立を支援しながら、一つの自治体の枠組みではできないことへの支援や広域行政に特化をしていく必要があると考えています。
そして、それぞれの自治体ではなかなか実現できない「東京への一極集中」打破に向け、各市町それぞれの自治を最大限尊重しながらも、「オール兵庫」で地域創生を進める体制を構築していく役割が求められます。
兵庫県の有する五国の国からなる多様な風土を生かし、かつ各市町の自治や自立を尊重しながら、県と市町が連携を深めながらオール兵庫の体制をつくることができれば、まさに日本の縮図である兵庫県が地域創生のモデルケースにもなるはずです。
現在、県においては、各県民局単位で各市町にも意見をいただきながら、対策検討を進めてきておりますが、地域創生の主役である市町とどのような協力体制を引き、「オール兵庫」での地域創生の推進を図ろうとしているのか。知事の見解を伺います。
2 子供の健全育成等に向けた特別養子縁組制度の普及等について
人類にとって、我が子を産みたい、育てたいというのは、多くの夫婦がもつ自然な感情です。しかしながら、現在10組に1組が不妊の可能性があるといわれており、子どもを望む多くの夫婦が様々な形で不妊治療を受けています。
日本産科婦人科学会の調査によると、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療によって生まれた子どもは、2012年度は年間37,953人を数えます。
本県においても、特定不妊治療費助成事業など生殖医療に対する助成を行っておりますが、男女ともに晩婚化等の影響からニーズがますます高まっており、男性女性問わずより一層の支援が必要であると考えます。
このように望んでも子供に恵まれない夫婦がいる一方で、予期せぬ妊娠による出産や家庭での養育が困難となった子供たちが少なからず存在しています。本県では、平成26年度末現在、乳児院に87人、児童養護施設に921人の子どもたちが入所しています。厚生労働省も社会的養護の中では里親優先の方針を打ち出しておりますが、本県においては里親への委託率は、平成25年度で9.9%、平成26年度末では12.5%であり、大きく改善していかなければならないと考えています。とりわけ、平成24年度実績で、0歳の乳児の委託率ゼロ(神戸市1)という現状は大きな課題だと考えます。
「望んでも子どもを持てない家庭」「家庭での養育が困難な子ども」という課題を解決するためにも、何よりも子供の最善の利益を確保するためにも、現在本県でも行っている里親委託制度を充実させるとともに、さらにその中でも特別養子縁組制度を普及、充実させるべきと考えます。
具体的には、まず予期せぬ形で妊娠した段階からの相談体制の充実、特別養子縁組制度の普及啓発、養子縁組を斡旋するための人的面での支援、環境面での整備が必要です。
環境整備の面では、特別養子縁組制度の場合、6ヶ月以上の試験養育期間が必要ですが、その期間、育児休業が認められないなどの課題が出てきています。国の抜本的な制度改正が必要ではありますが、まさに地方創生の時代において、兵庫県独自として産業界に働きかけ支援する方向性を打ち出すことが重要と考えます。
そこで、全ての子供の健全育成を図るため、里親委託制度の充実、特に特別養子縁組制度の普及、充実に、県として主体的に取り組むべきと考えますが、当局の見解を伺います。
3 障がい児への支援の充実について
兵庫県は今年の3月に「ひょうご障害者福祉計画」を策定しました。知事も今議会の提案説明の中でも「障害のある人が、必要に応じて支援を受けつつ、自分の生き方を自分で決め、その生き方が尊重される社会、地域の一員として生涯安心して暮らし、誰もが支えあう社会の実現に向け取り組んでいきます」と決意を述べられております。
医療技術の発達等に伴い、今後障害のある人がより長生きできることにより、障害者人口の推計での県内人口に占める障がい者の割合は、現在の6.27%から25年後には7.27%と上昇することが見込まれており、必ずしも十分ではないかもしれませんが、今後、「ひょうご障害者福祉計画」に基づき計画的にサービスが拡充していくものと考えています。
ただ、さらに考えなければならないのは、全国の健常児を持つ母親の常勤雇用率は34%に上る一方、障がい児の母親はかなり低い現状をどうするのかということです。
障がいを抱える子供を持つ親は、子どもを預けることが困難なため、就労を希望しながらも、働けない障がい児の母親が潜在的に存在すると考えられます。とりわけ、障害の程度が重い場合、受け入れ可能な施設は限られており、就労と両立することは困難です。「ひょうご障害者福祉計画」では、「フルタイム(常勤)での両親の共働きを支援する長時間受入が可能な児童発達支援センター等の整備」が、今後さらに検討を深めていく施策と位置づけられております。
このような観点から、障がい児への支援の拡充、とりわけ親の子育てと仕事の両立を可能とさせる支援が必要ではないかと思いますが、当局の考えを伺います。
4 過労死等防止対策について
平成26年6月議員立法により過労死等防止対策推進法が成立、同11月に施行されました。また、本年5月25日には法に基づく大綱案が明らかになりました。大綱案では、国の責任で過労死の実態調査を進めることが柱として盛り込まれているのに加え、地方公共団体も「国と協力しつつ、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するよう努めなければならない」と定められていることから、兵庫県としても今後具体的な取り組みが必要だと考えています。
実際に、厚生労働省発表の労災補償状況資料によると、平成25年度兵庫県で脳・心臓疾患として労災認定されたのは17件、そのうち死亡が8件になります。また、精神疾患として労災認定されたのは35件、そのうち自殺は3件となっています。なお、この数字はあくまで過労死の最も狭い定義であり、請求したものの認められなかったものや、そもそも明らかになっていない埋もれたものがあると思われます。
過労死を防止するためには、長時間労働の抑制や、終業時間から次の始業時間までの間に一定時間の休憩を義務付ける、いわゆる「インターバル制度」の導入、有給休暇取得の促進など、「働き方を見直す」とともに、労働者へのメンタルヘルス対策の強化、さらには労働法制の知識、啓発に加え、処罰等の取り締まりの強化等、政労使それぞれの立場からの取り組みが必要だと考えます。
このような中、本県の労働政策の状況を顧みると、政労使の協働による取り組みが進められており、「ひょうご仕事と生活センター」を中心に、ワークライフバランス企業の表彰制度やそれに伴う相談業務、さらには企業において、自らがリーダーになってワークライフバランスを推進するキーパーソンの養成などに取り組み、徐々に効果が出てきていると認識しています。
ただ、このような懸命の取り組みの中、850社を超える企業が取り組み宣言を行っているものの、昨年度から始めたWLB認定企業数はまだ30社程度であることを考えると、これらの取り組みをさらに拡大していかなければなりません。特に、これらの取組みにそもそも関心のない企業等への働きかけが重要だと考えます。
長時間労働の危険性の周知、WLBの必要性に対して啓発するとともに、労働時間の抑制に向けて必要な業務改善について県としても経営者に働きかけ、従業員の長時間労働の改善を支援していくことが必要だと考えていますが、県当局の見解を伺います。
5 公立高校入試制度について
本県では、高等教育改革の方針に基づき、平成15年度入試から複数志願選抜制度が導入され始め、従来の総合選抜制であった学区においても平成20年度入試から順次複数選抜制度への移行が行われました。さらには平成27年度入試より通学区域が拡大し、現在の制度になりました。
今回の制度は、通学区域を拡大したことにより子どもたちの選択肢が広がる一方で、複数志願を可能にしたことにより、今まで兵庫県の総合選抜制度の中で守られてきた理念も維持されたものと考えています。
ただ、制度というのは完全なものはなく、制度設計の時点では想定できなかったことがあるのは当然のことであり、制度を運用する中で矛盾をいかに解消していくのかを考えていかなければなりません。とりわけ、子どもたちの人生にとって、重大な岐路を迎える高校入試は、制度の矛盾というものを少しでも解消していく必要があると考えます。
そのうえで、平成27年度の状況を見たときに一つの矛盾が表れています。具体的には、複数志願選抜実施校間においては第一志望校を変更できず、志望校の変更は第2志望のみという制度になっておりながら、普通科から職業学科、職業学科から普通科への志願変更が可能になっているということです。
実際に、兵庫県教育委員会が公表した資料から推計すると、全日制の第一志望の出願者は職業学科間の志願変更も含めて250人以上が変更しています。
この制度では、本来普通科を希望する生徒が一度他の職業学科を第一志望とすれば、全体の出願者数の傾向を見て、比較的倍率が低いところに志望することが可能な制度であり、場合によってはモラルハザードが起きうるということです。
私は、現在の選抜方式の趣旨や理念を否定するつもりはありませんが、現在の運用方法では兵庫県教育委員会で進められてきた改革の理念とは異なる結果を引き起こすのではないかと危惧をしています。
そこで、現在の複数志願制度の課題をどのように認識し、改善を行おうとしているのか伺います。現状の普通科の間においては志願変更はできないが、普通科、職業学科間の移動は可能といったダブルスタンダードは解消するべきだと考えますが教育委員会の見解を伺います。
6 シティズンシップ教育の導入について
昨日、6月17日公職選挙法が改正され、選挙権が18歳以上となりました。これは1945年に女性に選挙権・被選挙権が認められたことに次ぐ大きな改革であり、来年の7月に行われる参議院議員通常選挙から導入されます。
来年の7月には18歳となった高校生が選挙に行って選挙権を行使できることになりましたので、学校現場における「主権者教育」が必要となってきます。
といいますのも、若年者の投票率は低下傾向が続いており、昨年12月の衆議院選挙では20歳代の投票率は32.58%でした。いつの時代も若者世代の投票率はあらゆる世代の中で低いものの、60歳代の投票率が68.28%という事実を考えたときに、選挙権が拡大したとしても若者世代が投票に行こうという思いにならなければ、この法改正自体の意義が薄れてしまいます。
そこで、子供たちが、将来、市民として十分な役割を果たせるよう、シティズンシップを育む取り組みが必要だと考え、その取り組みを求めていきたいと考えています。
そもそも、シティズンシップとは、国などの正式な構成員たる市民として保障される権利という側面と、市民たるにふさわしい資質という側面の二つを併せ持つ概念です。シティズンシップ教育とは、自らが属する社会における市民としての権利に関する認識を培う一方で、その社会に自ら積極的に参加するための資質を育む教育だと言えます。
このシティズンシップ教育は、単に知識を身につけるだけではなく、それをもとに能動的に参画しようとする態度を育むこと、子供たちが参加型民主主義の意義を理解し、当事者として実践するために必要な知識、スキル、価値観を身につけ、行動的な市民となることを目的としています。これにより、将来の民主主義のプレーヤーとなる市民を育てていくことにつながると考えています。
具体的には、模擬投票の全県下での展開をはじめ、18歳選挙権の実現を契機に、本県の将来を支えてくれる行動的な市民をより多く育てていくためには、県下全ての高校でシティズンシップ教育を進めていくと同時に、兵庫県における一貫した教育の柱の一つとしてシティズンシップ教育を導入するべきだと考えますがいかがでしょうか。
7 サイバー攻撃に対する取組について
新型のコンピューターウイルスにより、日本年金機構職員のパソコンから基礎年金番号や住所などの年金に関わる個人情報約125万件が流出したことが、6月1日に報道されました。犯罪内容に関して現時点ではわかっておりませんが、改めてサイバー対策の重要性や対策の遅れを認識しなければならないと考えています。
いわゆるサイバー犯罪について、平成26年中、全国の検挙件数は、7,905件と報告されており、そのうち4.6%の364件が不正アクセス禁止法違反となっています。
県警本部でも、官民連携からなる「サイバー空間の脅威に対する兵庫県官民合同対策プロジェクト」を立ち上げ、全国に先駆けサイバー犯罪の対策に取り組んでいます。
しかし、サイバー犯罪は、他の犯罪と同様に県民自らが被害に遭わないような自覚や具体的なセキュリティ対策が必要ですが、必ずしもその重要性が県民に認識されているとはいえません。サイバー犯罪の被害により情報が流出した場合、対策を怠った本人、企業だけではなく、その個人や企業に関係する人たちにも被害が及びます。したがって、いかに県民にセキュリティ対策を講じるように啓発していくのか重要になってきます。
一方、今回の日本年金機構への標的型メール攻撃による個人情報流出事件は、重要な社会インフラや官公庁、企業システムに対するサイバー攻撃で、これらの手口は、ますます進化しながら発生している現状にあります。サイバー空間は、現代社会におけるあらゆる活動で大きなウエイトを占め、今後ますます重要性が増していくと考えられ、サイバー空間の安全なくして治安は成り立たないと考えます。言い換えれば、県警のサイバー空間の脅威への対処能力が、今後の県民生活の安全安心の確保を大きく左右すると言っても過言でないと考えます。
そこで、年々新たな手口で、悪質、巧妙化するサイバー攻撃に対し、治安維持の観点からどのように対処していこうと考えているのか、県警に伺います。