決算特別委員会 総括質問1021(ひょうご県民連合 越田委員)
1 地域創生の取り組みの評価について
平成27年度は、厳しい財政状況を見込みスタートしたものの、県税等は過去最高の8,022億円となり、当初予算より143億円の増収となりました。
また、当局の皆さんの懸命な努力により、歳出では行政経費は8,951億円から8,654億円と当初予算より297億円も減少しています。
その結果、将来世代への負担になる財源対策を100億円減少させる一方、さらに181億円もの県債を繰り上げ償還するなどの努力も行ってこられました。
ただ、税収増の恩恵がどこに充当され、歳出削減の成果がどのように使われたのかということの説明が必ずしも十分ではない印象を受けています。この1年間、厳しい財政制約の中、「選択」と「集中」をモットーに、日々新たに生まれる課題に向き合っているのですから、税収増の果実と皆さんの努力の成果を、県民に分かりやすく説明していただきたいと指摘させていただきます。
さて、平成27年度は、阪神淡路大震災発災から20年であると同時に、地域創生のスタートをきる節目となった1年でした。地域創生の取り組みでは、自然増対策として出生数年間44,000人という目標を達成したものの、社会増対策では、県外への流出に歯止めがきかず、必ずしも満足できる結果ではありませんでした。地域創生戦略の中で示した事業KPIで多くが目標を達成したとしても、転出超過を止めることは非常に難しいということが改めて明らかになりました。
ただ、私は、地域創生が、人口問題にのみ重点が置かれつつある傾向に一抹の不安を覚えております。もちろん、人口減少による負の影響を最小限にとどめるための人口対策は必要ですし、子供を産み育てたい、また、兵庫県に暮らしたいのにそれがかなわない環境があれば、それを取り除くべきだと考えますが、子供を産むのかどうか、どこで暮らすのかは至って個人の人生観・価値観に関わる問題であり、そのマインドを変えるというのは容易ではないからです。
したがって、短期的な人口の増減に一喜一憂するべきではないと考えています。むしろ、私は本県の人口が減少することは避けられないものとしてとらえ、人口減少を前提として、予想される危機に適応できる社会づくりが求められているはずです。
そこで、この1年間の地域創生の取り組みをどう評価し、課題をどう分析しているのか? 特に、人口減少を前提に、それらの状況に対応する仕組み作りについての取組、見解を求めます。
2 土地信託事業の評価について
井戸知事は、昨年11月30日の定例記者会見において、「土地信託という制度が非常にずさんな制度であり、これを活用して県民の憩いの施設整備を行って運営をしてきたということは、きっと失敗だったのでしょう」と反省の弁を述べ、「そのようなこと(制度の不備)を知らずに飛びついた県の不明をお詫びしないといけないと思います」と、この事業の総括を述べられました。
もちろん、言いたいことはいっぱいあると思いますが、それでも「行政は間違を認めない」との批判が多い中で、知事自らが過去の事業について、このように明確な反省を述べたその姿勢は、今後の県政が前を向いて進むためにも大きな発言であったと考えております。我々県議会も、議決してきた責任を改めて認め、その責任を再度自覚しなければならないと考えます。
ただ、この9月に提出された「県有地信託の事務処理状況説明書」には、制度の不備、その時の判断などについて分析がされている一方、最後のまとめの段階で「整備は意義があった」との記述になっております。現代の私たちが、「後付」で批判をするつもりはありません。ただ、今回の報告書の記述は、昨年の知事の記者会見と少し温度差を感じずにはおられません。土地開発公社が先行取得した土地を利用し、結果として約114億円の県費の支出を行った青野運動公苑事業をどのように評価されたのか。知事のご所見をお伺いします。
3 委託業務の総点検について
企画県民部②への部局審査において、向山委員が、「県民だよりひょうご」の業務委託について、予定価格の99%での落札が続いていることや、結果的に入札参加企業が1者の場合が多くなっていること、さらに、神戸市、京都府における経費削減事例などを取り上げ、業務の改善を求めました。
もちろん、提案方式での入札は値段だけが価値ではないので、それをもって全て問題があるとはいいません。しかし、分割発注をするなど発注方法を改善することで、競争原理を働かせる方向に導き、財源をさらに生み出すことも可能だと考えます。
部局審査では、「県民だよりひょうご」のみ取り上げましたが、同様に県の委託業務において、予定価格が高止まりしている委託事業や長年にわたって一者応札になっている業務がないか検証すべきだと考えますが、いかがでしょうか?
4 総合的な社会的養護の促進について
健康福祉部への部局審査において、黒田委員が児童養護施設における課題を取り上げさせていただきました。現在、県でも様々な支援を行っていますが、児童養護施設を取り巻く環境は、現場の賢明な努力によって成り立っておりますが、経験が5年に満たない職員が半数を超えるなど現場には課題が多く、さらなる支援を含めたさらなる支援拡充が必要だということを改めて述べさせていただきます。
ただ、これらの原因の根本的な要因として、施設から家庭的養護への移行が必ずしも十分に進んでいないことも一因だと言えます。児童養護施設等の高い専門性を発揮させるためにも、家庭養護への推進が必要です。
今年度から県として関係団体と連携し特別養子縁組の促進を進めるための取り組みを始めています。子供のための恒久的な育児という方向に進む方向性は評価できると考えています。「子どもの最善の利益」という観点から、現在の施設による養育を、より家庭的な養育へと進めていかなければなりません。
ただ、「子どもの最善の利益」を確保する取り組みを進めるためには、まだまだ課題が残されているのも確かです。特に、支援が必要とする児童の保護者が
里親での養育を望まないケースも多いと聞きます。
したがって、女性が妊娠をした段階から出産、育児などのそれぞれのステージに基づいて、薬局、産婦人科、こども家庭センター、保健所、市町の子育て関連部門が連携により、支援が必要な親に対して様々な選択肢を示していくことが必要です。県としての取り組み方針をお伺いします。
5 ポストIWC2016について
地場産業、農業振興にくわえ、日本の伝統文化としての位置づけもある日本酒の魅力発信は、兵庫県における地域創生の一つの柱です。昨年7月ミラノ博への出展を契機に、知事のトップセールスによりIWC2016「SAKE部門」の兵庫開催が実現しました。
しかし「酒どころ」を自任している自治体は兵庫県だけではなく、伏見を有する京都府や、西条を有する広島県など日本酒を地域振興のコンテンツとして位置付けている自治体は多数あります。
ただ、全国一の日本酒の製造量を誇り、その中心的な酒米「山田錦」を生産する本県こそ、「日本一の酒どころ」というブランドを世界に向けて確立するべきだと考えます。そのために、このような世界的なイベントは大きな意味があると思います。
本県のブランド化という観点から、IWC「SAKE部門」の開催をただの一時のものにして別の形で生かしていくのか、継続的にIWC「SAKE部門」の招致を行っていくのか、県としての方針を明らかにすべきだと考えますがいかがですか。
6 阪神高速料金に関する県提案の方向性について
県土整備部の部局審査において向山委員が料金改定について質問いたしましたが、もう一度原点に返って議論をさせていただきたいと思います。
まず、今回の料金改定についての基本的な枠組みである、名神高速と阪神高速との料金を一体化していくという方針に関しては、異論はありません。
しかし、大阪湾岸道路西伸部の早期整備を求めているという事情があるとはいえ、県提案の方向性は多くの利用者に値上げを求める内容となっています。高速道路料金は、市民生活のみならず、物流コスト増加につながることで、県民の生活コストに直結する課題であり、私たちとしても慎重に議論をしていきたいと思っています。
特に、平成24年に阪神高速料金体系が対距離料金へと変更した際に、一部、緩和措置を実施しているものの、その緩和措置がなくなるのと同時に料金改定が行われると、新料金案に基づいた私の試算では約9割の利用者からすると値上げになります。答弁の中で「過度な利用者負担とならないように検討したい」とのことですが、現在の利用料では値上げのインパクトが大きい印象を受けています。
そもそも、高速道路建設財源を確保するために値上げした結果、利用者が高速道路を利用しなくなるという状況が生まれれば、財源が確保できないばかりか、一般道の交通渋滞等も引き起こす危険性もあります。
そのあたりの議論は今後さらに続けてまいりたいと思いますが、今後議論をする上で必要なのは、料金改定になる前提条件、つまり早期に大阪湾岸道路西伸部を完成させるために約半分の費用を利用料で捻出したいということや、平成62年でその財源を償還するということに関してコンセンサスを得る必要があると考えます。
そうでなければ、単に料金が高くなったか、安くなったか、誰が得か損かという議論に終始する危険性があります。そこで、あらためて県としての阪神高速道路の料金改定に関する基本的な考えをお聞きします。
7 権限移譲後の県としての教育方針について
神戸市へ義務教育教職員の給与負担に関する権限が移譲されることにともない、今後多くの課題が出てくると考えます。黒田委員が教育委員会の部局審査で指摘させていただきましたが、県が県下全域の児童・生徒を対象に行っている「トライやる・ウィーク」等の兵庫型「体験教育」が行革の議論の対象となっています。
神戸市には、義務教育教職員給与負担に関する財源も移譲されますが、一般財源規模が大きくなり、交付税の留保財源部分も大きくなります。県にとっては逆のことがいえるため、実質的に教職員給与負担額以上に交付税が減少することも想定されます。もちろん、権限移譲にあわせ税源移譲を行うということは、あわせて教育行政に関する責任も、神戸市は今まで以上に追わなければならないのは言うまでもありません。
ただ、そのような状況を加味しても、同じ兵庫県の子供たちが、育つ地域によって与えられる教育に格差が生じるという状況は決して望ましいものではなく、いかに「兵庫教育創造プラン」で掲げた理念を県下で広げるかを考えなければなりません。
そこで、県と市町とりわけ神戸市との役割分担においてどのように考えるのか?今後の展望も含め県教育委員会の見解を求めます。
8 県下における県立病院のバランスについて
決算特別委員会では、県立病院の経営において、平成27年度の経常損益は、42億円の赤字、当期純損益は、91億円の赤字となったことも問題点として指摘をされました。もちろん、財政が限られている中、1円でも税金が投入されている限り、効率的な運営は必要ですし、地方公営企業法で求められている独立採算は基本です。
しかし、本質的な問題は経営を黒字化できなかったことではなく、県立病院として期待されている機能を果たせたのかということにこそ、焦点を当てるべきですし、その役割を果たすための手段として、どの程度の税負担が適切なのかということを議論しなければならないと考えています。
そのような観点でみたときに、私は阪神北地域や西播磨地域のように、県立病院がない地域において、県立病院に求められる高度な医療を提供することが、できていない状況こそが問題だと認識しています。
たとえば阪神間の中核として位置づけられている県立尼崎病院の利用者の75%が地元尼崎市民です。また、市立西宮病院との統合が検討されている県立西宮病院では、利用者の71%が地元西宮市民であり、阪神北地域を含め広く利用されている状況には至っておらず、本来県立病院として果たすべき役割以外の役割も担っているのが現状ではないでしょうか。
県立病院には一般会計より182億円の一般会計負担金が投入されていることを考えると、住んでいる地域に関係なく、県立病院が利用できなければならないはずです。そこで、県立病院のバランスの悪さ、役割が不透明になっている現状についてどう考えるのか?
また、政令市や中核市を除き、一つの市町が公立病院を運営する時代ではないと思っています。本年2月定例会の代表質問でも我が会派の上野幹事長が提案をさせていただきましたが、県立病院を中核とした公立病院のネットワーク化に取り組むべきだと考えますが、ご所見を伺います。
9 県警における震災20年の取り組みと次世代への伝承について
平成27年度は、阪神淡路大震災から20年の節目の年でした。兵庫県としての震災の総括というものは様々なされていますが、最前線で様々な対応にあたっていただいた兵庫県警の活動は必ずしも県民に伝わっていない印象を受けます。
阪神淡路大震災では、兵庫警察署の一階部分が倒壊し、一人が殉職するという痛ましい被害もありました。多くの警察官が自ら被災しながら、警察官としての職務を全うし、県民に向き合ってきた事実は、今後も受け継いでいかなければならないと思います。
しかし、当然のことながら震災発生から20年が経ち、自ら被災しながら震災対応をするという経験をした警察官は年々引退していくため、いまや県警においても経験者は約4割とお聞きしています。
震災20年を契機に、県警としての経験を次世代へと伝承していく必要があると考えますが、県警本部の取り組みを伺います。