議会の動き

越田 謙治郎議員が代表質問を実施

質問日:平成28年12月8日(木)

質問者:越田 謙治郎 政調会長

質問方式:分割方式

【分割箇所:1~3、4~5、6】

1 補助金の市町への一括交付化について

まずは、地域創生の時代を迎え、新たな県と市町のあり方について議論をさせていただきます。都道府県と市町村の役割については、過去からも再三にわたり議論をされてきた古くて新しい課題です。そもそも、地方自治法では役割が規定されており、都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、「広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする」とされております。

つまり、都道府県には、広域的な政策課題への対応が求められるとともに、市町へ支援を行うことが一定期待されていると言えます。本県においても、過去から県と市町との役割分担については議論がなされておりますが、「広域的な事務」と「市町が行う先導的な取り組みへの支援」を行うことを基本的な姿勢として、各種施策が展開されています。

一方、兵庫県の全県的な施策の効果を一定確保するため、それぞれの地域活動を直接支援する取り組みが多くあるのも本県の特徴だと言えます。過去から「スポーツクラブ21ひょうご事業」や「県民交流広場事業」では、法人県民税の超過課税などを活用して地域活動を支援してきました。平成22年度からは、地域防犯活動を支援するため、防犯カメラの設置補助、平成27年度からは110番の家などの防犯活動への助成を行っております。

もちろん、県が地域で活動する団体等の活動を支援することについて、全面的に否定するつもりはなく、広域的な活動をする団体や先導的な活動をする団体に対して助成を行うことは、施策の効果が全県的に行き渡るものやモデルケースを生み出したものあり、実際に、補助金を活用した地域団体等からは、補助金を活用することによって、地域活動等が活性化したという事業を評価する声が上がっています。

一方で、地域を歩く中で、補助金の使途について県下一律の基準であることによる「使いづらさ」を指摘する声も聞きました。

たとえば、防犯カメラへの設置補助金では、県内各地の500団体に一律のルールで補助が行われています。地域の防犯活動を促進するとともに、地域の治安向上に寄与してきたことは言うまでもありません。しかし、地域ごとに多様な顔を持つ兵庫県内において、一律でルールを定めて支援するという方法が果たして最も効果的な方法かどうか。県としての役割、市町との役割分担を再度検討するべきだと考えています。

何より、補助の自由度を高めることで、市町自らが先導的な取り組みの効果を他に波及させるための工夫を行う余地が生まれ、結果として事業効果の拡大や「自治力」の強化も期待できます。

そこで、まずは、先導的な取組みとして、喫緊の課題である防犯カメラ設置補助金について、一括して市町へ交付して、市町がそれぞれの実情に合わせて、自由度の高い形で取り組めるような支援を検討すべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか?

2 若者雇用を生み出すための産業政策について

(1)流出超過の現状分析と今後の企業誘致について

兵庫県の雇用状況は、企業業績の先行きに不透明な点があるものの、県下全域での有効求人倍率は、昨年8月から「1」を超え、企業立地件数についても、産業立地条例による企業誘致や本社機能の移転の取り組みなどで、全国でトップクラスとなっております。しかし、このような状況にもかかわらず、20代を中心に転出超過が続いており、結果として既存の政策だけでは、人口流出の歯止め策としては十分に機能していないのではないかと考えています。つまり、県内に誘致されている企業と、20代を中心とする若者の求める仕事との間に、かい離があるのではないかということです。

実際、経済産業省も引用するリクルートワークス研究所の来春卒業予定の大学生・大学院生対象の求人倍率調査によると、最も就職希望者数が多い「サービス・情報業」の有効求人倍率は0.49倍、一方、地方に誘致されることの多い製造業の場合は1.93倍、流通業では6.98倍となっています。

私は、雇用を増やすということは、県民所得を増やすという点において有用であると考えており、従来の企業誘致を否定するものではありません。企業庁においては、小野市と共同で産業団地造成に取り組み、900人の雇用を見込むという新たな事業に着手されています。しかし、誘致する業種や雇用される職種、また雇用が正規か非正規かということを考慮に入れず、「雇用数」に着眼した企業誘致策では、現在首都圏等へ転出している若者を県内にとどめることは難しいでしょう。そしてその解決のためには、誘致対象の変更、つまり産業団地からオフィスへの切り替えが一つの有効な方策だと考えています。

そこで、県として、企業誘致が進んでいるにもかかわらず、流出超過が進んでいる現状についてどのように分析しておられるのか、見解をお伺いします。また、若者を県内にとどめるための産業・雇用面での検討は、県内の企業立地に適した土地が将来的に確保できなくなってからではなく、現在のように産業団地の造成に取り組んでいる今だからこそ行う必要があると考えますが、県の今後の企業誘致に関する方針をあわせてお聞かせください。

(2)企業誘致における高付加価値化について

産業団地以外の企業誘致を成功させるための必要な要件として、私は誘致先の高付加価値化を挙げます。企業が立地場所を選択する際は、一般的にコスト削減や売り上げ増加という直接的な経済的なメリットにくわえ、その地域に立地することへの「付加価値」を求めるといわれているからです。たとえば、東京に本社を置く、IT企業が六本木ヒルズに本社を構えることが、企業ブランドの向上につながるといったものです。そして、そのブランドが向上することにより、多くの若者が働きたいと思う企業にもなっていきます。

今年度に発行された「ひょうご経済・雇用白書」では、兵庫県の多様性を活かした産業政策が述べられています。確かに兵庫県の多様性は、本県の最大の強みではあります。一方で、その多様性によって、地域が本来持つ強い個性や魅力が見えなくなってしまっているのではないかと懸念しています。

本県の場合、神戸医療産業都市の中に企業を立地することは、先端医療産業としてのブランドづくりに寄与することであり、多くの企業を引き付ける誘因になっています。しかし、残念ながら、神戸市以外の地域や他の産業分野においては、地域として企業を誘致する上での付加価値の打ち出しに、あまり成功していないように感じます。逆に言えば、それに成功することで、東京などの大都市圏に対抗できる企業誘致につながり、若者の地元雇用にもつながるはずです。

県のこれまでの企業誘致と言えば経済的な支援が中心でしたが、企業の誘致先の高付加価値化をもう一つの柱に据えた取り組みの必要性について、県の所見をお伺いします。

3 人口減少社会における市街化調整区域のまちづくりについて

3点目の質問は、人口減少を前提として、それぞれの自治体や地域が具体的にどのようなまちづくりをしていくのか。それに対して県としてどのような支援をしていくのかという観点で議論をさせていただきます。

先ほどから共通しているテーマでありますが、多様性をもつ兵庫県において、ひとつのルールでまちづくりを行うのは困難であり、県としては、大きな方向性を示しながら、地域の独自性を発揮する制度を整えていくことが重要です。

そのような中、市街化調整区域におけるまちづくりについて、その規制の緩和を求める声を以前から多く聞いております。都市計画法にもとづく市街化調整区域は、無秩序な開発を抑制するという点において、右肩上がりの経済成長の時代における重要な政策であったと考えます。もちろん、これからも無計画な開発を推し進めるべきではなく、人口減少社会を前提としながら、長期的な視野にたった計画的なまちづくりが問われているといえます。

しかし、それぞれの地域で新たな土地利用を考えようとした際に、その厳しい制限が地域の活性化を阻害しているという問題提起が、この本会議においても、党派にかかわらず、多くの先輩議員・同僚議員からなされてきました。

本県においては、平成14年に市街化調整区域におけるまちづくりについて、特別指定区域制度を導入するなど、新しい形でのまちづくりについて取り組んでまいりました。この特別指定区域制度については、地域の声を聞く中で平成18年、27年と2度にわたる見直しを通じて、さらに規制が緩和され、自由度の高いまちづくりが進められ、過去615件の指定実績を上げてきました。

さらに、私の地元である猪名川町や稲美町においては、平成25年度よりモデル地域として、市街化調整区域におけるまちづくりのあり方について、検討を行ってまいりました。猪名川町の場合は、本庁・地元阪神北県民局のご協力のもと、県・町・地域が連携を図り、市街化調整区域内における地区計画を活用したまちづくりも進んできました。

このように、県内における取り組みは、一歩ずつ進んでいる実感をもっているものの、依然として「市街化調整区域内では何もできない」という声があるのも事実です。確かに、市街化調整区域の枠組みをクリアしたとしても、農業振興地域における農地の制限などの課題も残されているとは思いますが、何よりモデルケースとしての先導的な取り組みが、県内に十分伝わっていないのではないかと危惧しています。

そこで、県として、これらの取り組みの課題をどのように把握し、モデル地域での取り組みを評価しているのか。課題とあわせ、今後の展開についてご見解をお伺いします。

4 在宅医療の推進について

将来的に必要とされる医療の需要量を予想した兵庫県地域医療構想が本年10月に策定されました。訪問診療や介護老人保健施設入所等により対応することとなる在宅医療の需要は、団塊の世代が75歳になる平成37年には1日約81,000人分となる見込みで、平成25年度の1日約51,000人分から大幅に増加することになります。

在宅医療への国民の関心は高く、平成24年に内閣府が実施した「高齢者の健康に関する調査」では、調査に対して回答をした高齢者の54.6%が、自宅で最期を迎えることを希望しているとの結果が報告されています。

しかし、現実にはお亡くなりになった方のうち在宅で亡くなったのは平成26年で24.7%にとどまっており、理想と現実に大きなギャップが生じています。

今後、人口減少、高齢化は避けられず、さらに多くの方がお亡くなりになるという時代を迎え、病院や介護施設といったハード面の整備だけで来るべき時代を乗り越えることはできません。将来にわたって、兵庫県の各地域で暮らし続けるために「在宅医療」はソフト分野における重要なインフラであり、県としても在宅医療の充実に、さらに取り組まなければならないと考えています。

さて、在宅医療の中心を担う在宅療養支援診療所は、平成27年現在、兵庫県では872箇所、人口10万人あたり15.8箇所です。平成26年時点で、全国では14,188箇所、人口10万人あたり11.2箇所となっており、データ上では全国平均を上回っています。しかし、開業医の高齢化や地域偏在などもあり、今後、在宅医療が十分に担保できるのかと危機感をもっています。特に、在宅医療は医療機関と患者の自宅との距離や移動時間が重要な要素であり、人口が減少している中山間地域や一部のオールドニュータウンにおいては、既に開業医がいないという状況があることから、地域の実情に合わせた在宅医療のシステムを構築する必要があります。必ずしも、人口当たりで全国平均を上回っているからと言って、将来的に見通しが明るいわけではないのです。

本県でも、既に兵庫県医師会が医療介護推進基金を活用し「兵庫県在宅医療・介護支援センター」を設置する一方、平成30年4月までに各市町においても医療・介護連携の取り組みが進められるとお聞きしております。また、地域包括ケアとのかかわりの中から、医療関係者だけにとどまらない、介護関係者など他の職種との連携も始まっております。

ただ、地域医療構想にありましたように在宅医療の需要が高まる中、在宅医療に従事する医師等がどの程度必要なのか、供給面の具体的な目標が必要だと考えます。

また、開業医等による在宅医療の機能を強化するためには、IT化の推進、高額医療機器の共有などの経営支援も必要になってきます。
そのような観点から、今後、県として在宅医療の推進に対してどのように取り組んでいくのか、具体的な目標と対策についてお答えください。

5 骨髄移植の推進について

日本で骨髄バンクが出来てから、本年で25年を迎えます。バンクを介して、骨髄移植を受けられた方は本年で2万人に達しました。

ドナー登録者は、本年9月末現在では約46万人、国内登録患者の約96%に少なくとも1人以上のドナーが見つかるということです。しかし、実際に移植に至るのは、このうちの6割未満といわれています。

公益財団法人日本骨髄バンクの資料によると、移植に至らないケースで多いのは、ドナーの健康上の理由によるものです。登録時には健康であっても、適合通知が届いた時点で、病気の治療中などの原因により、医学的に移植を実施できないということです。

その次に多いのが「都合がつかない」というケースで、全体の約3割を占めるとされています。そもそも、骨髄移植を実施する際には、検査から手術まで合計で6~10日ほど通院等が必要とされており、提供者にとって大きなハードルになっているのは想像に難くありません。しかし、ドナー休暇制度が整備されているのは、行政機関や一部の企業・団体等にとどまっているのが現実です。

そのほかにもいろいろな課題がありますが、骨髄移植を待つ多くの人たちが1日も早い提供を待っていることは事実です。

もちろん、骨髄移植は提供者の善意によるものであり、提供を強制することはできませんが、一人でも多くの生命を助けるためには、移植に至るドナーの確保が重要な課題です。実際に、「兵庫県がん対策推進計画」の中でも、全ての骨髄移植を希望する方が必ずしも骨髄移植を受ける機会を得られていないことが、課題として明示されていることから、県としても大きな課題と認識しているものと考えています。

そのうえで、私は二つの切り口に基づく3つの提案をさせていただきます。

1つ目の切り口は、ドナー登録者そのものを増やしていくという取り組みです。骨髄ドナーの登録は、赤十字血液センター、骨髄バンク、自治体、ボランティア団体等が協力をし、献血ルームや移動献血会場で実施をされています。しかし、現在説明員の方は全国で一番多く確保いただいていますが、それでも県内で57人であり、また常に献血会場にいるとは限らず、せっかく献血に来ていただいたドナーになる可能性のある方を取り逃がしている可能性があります。私が把握するところでは、現在少なくとも全国5つの自治体で説明員の養成講座が実施されていますので、本県としても取り組むべきと考えます。また、必要なのは、献血会場に足を運んでくれる方々を増やす取り組みです。近年、若者の献血離れが叫ばれておりますが、一方で献血の需要はますます高まっています。献血に関しては、リピート率が高いということがいわれており、一度気軽に参加するきっかけをつくることが必要です。たとえば、県立高校において、高校生を対象とした献血を実施するなどの取り組みが必要だと思います。それによって、将来的にドナー登録へつなげていくことができます。

2つ目の切り口は、登録したドナーが骨髄を提供する上でのハードルを取り除くということです。具体的には、県内企業のドナー休暇制度の利用促進やドナー休暇がない会社等にお勤めの方への支援が必要です。また、本人のみならず、子育てや介護に携わる人がドナーの場合に、そのパートナーが短期間でも仕事を休まなければならないこともあり得るため、その対策についても考える必要があります。

以上、3点のご提案をさせていただきました。県として包括的な取り組みが必要だと考えますが、お考えをお聞かせください。

6 インクルーシブ教育システムの推進について

私たち「ひょうご県民連合議員団」は4月に新しく会派として再スタートを切ってから、「すべての人に居場所と出番を」という思いを体現するべき議会活動を行ってまいりました。教育の観点から言うと、重要なのはインクルーシブ教育であります。インクルーシブ教育システム推進の必要性については、会派としても過去からこの場において議論がなされてきましたし、県教育委員会としてもここ数年、大きく取り組みが前に進んでいるとの評価しております。一方で、インクルーシブ教育の理念は、必ずしも社会の中で定着していないのではないかと懸念をしています。

具体的には、インクルーシブ教育システムが、単に障害のある子どもたちのための教育だという理解が、世間にはまだ根強くあるということです。もちろん、障害の有無に関係なく能力を発揮するためには、障害のある子どもたちへの支援や配慮が必要なのは言うまでありません。しかし、インクルーシブ教育システム推進の前提となる理念は、教育によって障害のある子どもに変化を求めるのではなく、子どもが学べるためにシステムを変えていくということであり、障害者のための新しい教育システムの構築ではないはずです。

また、インクルーシブ教育システムが、しばしば「健常者と障害者との交流促進」との狭い分野で解釈されている傾向も気になるところです。もちろん、交流する機会さえ少なかった時期、いわば障害のある子どもが排除された状況からは改善の方向にあるとは思いますが、そもそも「交流」は他者との交わりであることから、健常者と障害のある子どもを「棲み分け」していることが前提にあるように思えてなりません。そのような問題意識から、今回インクルーシブ教育システムにおいて、質問をいたします。

さて、本年から障害者差別解消法が施行され、学校でも合理的配慮が求められることとなり、それに伴う教職員への合理的配慮の研修などが実施されています。この研修の実施については、悉皆で行うべきであり、そのための予算措置が十分でないことを先日の決算委員会において指摘させていただきましたので、来年度予算の中で改善されることを期待しています。

そして、今回の質問において新たに提案したいのは、学校現場における「アダプティッドスポーツ」の導入です。これは、車いすバスケットやブラインドサッカーのように一般的に「障害者スポーツ」と表現されています。ただ、今回「アダプティッドスポーツ」と表現させていただいたのは、単に、人権的な配慮から、子どもたちに学校現場で障害者スポーツを経験してもらうということではなく、障害の有無に関係なく楽しめるスポーツとして、障害の有無にかかわらず経験してもらいたいということです。これはルールを子どもたちに合わせるのではなく、子どもたちにルールを合わせていくことで、真のインクルーシブを体感できるものであり、大きな教育効果が期待できます。

そこで、インクルーシブ教育システムの理念を定着させる一環として「アダプティッドスポーツ」を、学校教育で積極的に活用するべきだと考えますが、教育委員会の見解を求めます。