議会の動き

竹内 英明議員が質問(予算審査・財政状況)

令和2年 令和元年度予算特別委員会(財政状況)

日 時:令和2年3月5日(木)

質問者:竹内 英明 委員

1 県税収入の落ち込みと将来負担比率目標の下方修正について

今回提案されている税収等の落ち込みだが、2019年度の330億円の減少から2028年度の690億円まで全て合計すると10年間で5545億円の減収となる。

一方、税収の落ち込みをカバーする地方交付税は1035億円しか増えない。交付税がなぜ増えないかは後に詳しく取り上げるが、収入が10年で4510億円も減少するのに支出を抑える方向にいかず、将来負担比率の目標の下方修正、つまり負担の先送りで対応しようとしている。具体的には現行の行財政運営方針では、将来負担比率は2028年度で219.3%となる見込みを今回274%に修正し、目標を280%程度とした。

274%想定だとしても将来負担比率が現計画より54.7%悪化するということだが、%だけでは金額がわからない。仮に直近の決算に基づく将来負担比率の分母から分子としての将来負担額を明らかにされたい。

2 兵庫県の財政状況と国の経済成長シナリオを用いた税収増想定のリスクについて

知事は行革で収支不足が解消され、今後攻めに転じるという意気込みを見せるが、本当に兵庫県の財政は良くなったのか。

実際は2018年度決算、新行革プランの11年で将来負担比率は361.7%から339.2%と22.5%改善されたに過ぎない。22.5%とは兵庫県の直近決算に基づく将来負担比率の分母8874億円で計算すると1997億円となる(8874×22.5%=1997億 ※H30決で試算)。大きく財政が好転したとは言えない。将来負担比率はワーストのままだ。

一方、同じ阪神淡路大震災の被災自治体である神戸市は三宮再開発など社会インフラの整備に舵を切る方針と聞く。神戸市の財政は政令市の中位程度に改善され、将来負担比率は71%と兵庫県とは比較にならないほど改善した。財政支出できる段階といえばそうだ。

そんな中で、本県の今後の税収の見通しはどうなのか。国の経済成長シナリオを用い、県税収入も右肩上がりとなっている(各年度3%増など)。2020年度当初予算の県税収入を1として名目の経済成長率を複利で計算していくと本計画の最終である2028年度は約27%も税収が増えることになる。一方、人口や労働者人口は右肩下がりである。税収だけが右肩上がりで増加するなんて想定できない。

2019年度ですら当初見込みより330億円も県税の収入が落ち込むと言われている。経済指標にしても2月に公表された実質GDPの前期比1.6%減、年6%超の急激な落ち込み、これは消費税増税によるものだが、市場予想を超えるものだった。実質賃金の低下なども報じられている。それに加えて現在流行している新型コロナウイルスの経済に与える影響は今回の変更には盛り込んでいない。

過去の検証をすれば、財政フレームの税収見込みは下方修正したものも多い。過去の見通しでは今年度で既に税収は1兆円を超えていたものもある。これは過去何度も私から指摘しているが、一向に改められない。将来負担比率ワースト2の北海道では、税収が増えないという前提で計画を立てている。本県も少なくとも国の慎重なベースラインシナリオを用いて県税収入を算定すべきだと考えるがどうか。

3 実質公債費比率対策と繰上償還について

(1)1805億円の繰上償還と実質公債費比率の算定について

実質公債費比率が導入された2006年度、本県の指数は全国ワースト2位の19.6だったのが、直近の2018年度決算では13.8とかなり改善されている(ワースト8位)。ワースト1は北海道の20.9だが、兵庫県とは7.1ポイントの大きな開きがある。北海道は将来負担比率では兵庫県よりも良い323.5(ワースト2)。北海道と兵庫県は将来負担比率こそほぼ同じ水準だが、実質公債費比率については全く異なる数値となっている。将来負担比率と実質公債費比率。ストック指標とフロー指標とも言われるが、財政状況を表すことにかわりはなく、似た傾向となるはずだがそうなっていない。

この原因は、県債管理基金の積立不足対策として外郭団体等の基金を集約し、見かけの基金残高を増やしていること、これは知事も実質公債費対策として認めているが、これに加えて公営企業会計との債権債務の相殺をしないことなども、実際より良い数値になっている原因ということは私から指摘している。またこれだけではなく繰上償還もある。

知事は会見の中で「来年度、公債費は3,000億円を超えて、今までで一番大きな規模ということになるのではないかと思われます」と発言している。それなのに過去のように実質公債費比率は高くならない。なぜか。財政健全化法の算定用式では、地方公共団体の繰上償還の意欲を減退させてしまわないよう「繰上償還」を行ったものについては、公債費から除外することとされている。2020年度当初予算の中の県債管理基金を活用した302億円の償還は繰上償還として実質公債費比率の算定から除外するつもりなのか伺う。

4 財政フレーム上の将来負担比率について

(1)実際より低く想定されてきた理由について(交付税措置率の過大見積もり)

将来負担比率で制度がスタートした平成19年度以降ワースト1位を保っている。2007年度361.7%という数値は2018年度決算で339.2%、19年度338.6%と見込まれる。実際この10年の行革期間ではさほど改善されていないことは先に指摘した通り。先送りされることは残念だが、それとは別のことをここでは指摘したい。

将来負担比率の算定にあたっては将来の負担金額から地方交付税の基準財政需要算入見込額を除外して計算することとなっている。万が一この見込額が誤っていればどうなるか。多く見込めれば将来負担比率を引き下げることが可能だ。

個別の県債の交付税措置率は決まっており、今回提示されている2020年度以降のように積み上げれば差異は発生しない。毎年度地方交付税の算定をしているということは先の需要額を一定把握しているということである。これを過去から30%という高い措置率を用いてきたことで交付税の基準財政需要額算入見込額を過大に算出し、結果として財政フレーム上の将来負担比率を過小に算出してきたのではないか。

(2)地方交付税(基準財政需要額算入見込額)を過大に見込んでいた額について

2020年度当初の投資の通常事業枠等に充当している県債の残高約2兆9000億円の交付税30%見込みだと将来的に約8700億円が措置されることとなるが、今後2020~2028年の平均交付税措置率17.1%を仮において試算すると約5000億円しか措置されない。つまり現方針では約3700億円も過大に見込んでいたこととなるのではないか。これを直近決算における将来負担比率の分母8874億円で割ると約41.7%。11年間の新行革プランの結果が吹き飛んでしまうのではないか。

(3)適正化の契機について

こうした算定だが、これを外に出すのは評価する。ただし、外部の人間にはわからない。表に出すことはきっかけが必要だったと思う。総務省に指摘されたのか。近年、投資事業の景気の良い話がどんどん出てきて、実際は本県財政の状況は良くなっていないという内部の声か、伺う。

5 行財政運営審議会の見直しについて

(1)意見書作成者について

「兵庫県行財政運営方針の変更案等に係る意見書」五百旗頭真財政運営審議会会長から兵庫県知事 井戸 敏三 様として、「令和2年2月 13 日付け諮問第 128 号で諮問のあった「兵庫県行財政運営方針の変更案等について、令和2年2月18日付で別添のとおり意見を提出します」ということで意見書が出され、我々にも届けられた。この意見書の作成者は誰か。

(2)審議会委員の人選について

今回の変更の肝である「変更後の将来負担比率の目標を280%水準と設定することについて」「将来負担比率の目標値の見直し等」の中で、「行財政構造改革期間中の将来負担比率の縮減率22.5%の2倍以上となる50%を縮減し、早期健全化基準(400%)の70%水準にまで引き下げようとするものである。これは、財政構造の改善に向けた取組が引き続き緩むことなく進められるものであることから、妥当であると考える。」と記されている。

これまで述べてきたように将来負担比率の目標が現行方針より55%も下方修正し、その県民負担額が4800億円も増加するような変更であるにも関わらず、一切このことに言及がない。

審議会委員には審議会の前にこの変更案を郵送し、事前に見てもらって2月13日に審議会を開催したというが、そもそも将来負担比率の算定方式やその県民負担額についての資料もなく、計算方法もわからないと思われる。はっきり申し上げて、私も初当選以来、兵庫県財政やその財政指標をみてきているが、いろんなテクニックを駆使したり、単式と複式会計の使い分けなどを含めて非常に複雑で公表資料だけで理解するのはかなり難しい。それくらい複雑で県庁職員と言っても財政課とか一部の方にしかわからないようなもの。

審議委員は県内各界を代表するような方々で大所高所からご意見を伺うことは大切だが、きちんとこうしたことを包み隠さず説明した上で意見を求めなければ議会で一昨日我々に説明したのと同じような内容ではまずこうしたことはわからないと思う。包括外部監査を経験し、公会計のことがわかった公認会計士に入っていただくとか、地方財政の専門家に複数入っていただくとかしてもらうことが必要だと考えるがどうか。