質問日 :令和3年2月25日(木)
質問者 :前田ともき 議員
質問方式:一問一答方式
1 自治体DXファンドから始まるベンチャーエコシステム
行政が先導的にVCファンドを設置する時代は終わったと考える。民間のVC投資額は10年で5倍増の約4500億円に達するためである。投資家もエンジェルからコーポレートベンチャーキャピタル、大学系など百花繚乱である。関西にVCが少ないため在阪企業が資金調達で劣後するというのは、日本のVCがイスラエルやアフリカに投資する時代にあっては、単なる甘えである。
県単独で実施となれば事業承継ファンドであるが、PlanBで自治体DXファンド、そしてベンチャーエコシステムにつなげる大きな絵を提案する。自治体を対象にサービス提供するベンチャーは様々である。例えば、上場企業であれば、ドーンは動画110番システム、ライトアップは助成金・補助金診断システムを提供している。また、未上場企業であれば、グラファーが行政手続き効率化システム、T-ICUが遠隔ICU、Specteeが防災・危機管理Saasを提供している。
問題点は、ベンチャー側にとって自治体営業や共同開発のハードルが高く、自治体側も新技術・新サービスの評価・導入に頭を悩ませている点である。これをファンドで解決することを考える。地域限定型ファンドではなく、自治体DXに投資対象を絞ることで様々なメリットがある。1つは、自治体DXの推進である。現場トップの課長でも当該分野への知見不足・俯瞰的思考・長期的視点の欠如を感じることが多い。先進的技術やサービスを提案されても、課長が判断できるのか疑問がある。ピッチ(投資家向けのプレゼンテーション)や展示会、新技術などを通じ、行政に新しい思考・技術を導入すべきと考える。2つ目はVCとしてのエッジである。今やcash is trash。いい会社にはお金があるから投資できるわけではない。経営支援や事業連携などお金以外のメリットを出さなければ投資はできない。そこで、ピッチ・投資委員会では県や市の幹部・意思決定層にプレゼン機会を提供する。アメリカの調達庁にベンチャー枠があるように一定金額は随契採用し、共同開発するのも面白いと考える。出資を受けた企業は、一定の品質評価効果をもたせることで、自治体営業を支援できる。また、LP(Limited Partner(有限責任組合員))募集も地銀・信金の付き合いやリレーションシップバンキング対策だけでなく、事業会社の出資によりファンドサイズを拡大する。自治体出資額に対するレバレッジが期待できる。これであれば全国のベンチャーがこのファンドから出資を受けたい、また関西に拠点を作りたいというニーズも増えると考える。兵庫県という小さい枠で考えるべきではない。産業に県域がないからである。自治体がベンチャーファンドを持つ必然性はこれならある。
そこで、関西広域連合で30億の規模感でファンドを組成することを提案する。広域連合の第四期広域計画をみると、広域産業振興の大きな成果としては、展示会のメディカルジャパン誘致があげられている。将来像としてベンチャーエコシステムの構築をあげているが、これに対する処方箋は、自治体DX展の開始、自治体向けベンチャーのピッチコンテスト、規制改革推進会議やサンドボックスの広域連合化でルールのアップデートでチャレンジできる環境づくり、そして自治体DXファンドを核に据えることである。ここでインパクトを出せれば、大阪府が求める中小企業庁の移転も俎上にのってくると考える。
そこで、自治体DXファンドから始まるベンチャーエコシステムの構築を本県がリードすべきと考えるが、当局の所見を伺う。
2 公営ギャンブル2.0 ~収益拡大と新市場獲得への道~
自治体だけができる独占営利事業に宝くじと競馬がある。これら事業から得られる収入は大きく、宝くじで65億円、競馬で14億円となる。運営の巧拙で収入や経済効果は数十億円規模で変化する。法律や条項などルールのアップデートと民間をうまく活用した事業運営により、収入拡大とより良質なエンタメ提供、市場獲得を目指すべきである。
(1)兵庫県競馬事業の一部売却・民営化
一時は廃止も検討された競馬事業であるが、今期はコロナ禍で最高の売り上げ水準となった。75億円の大規模設備投資を計画し、自治体に配分金が発生する状況であるが、あえてこのタイミングで一部売却・民営化を提言する。
上場企業で時価総額1400億の東京都競馬は、筆頭株主が東京都、2番目が特別区競馬組合であるが、大井競馬場などの土地建物を競馬組合に売り上げ歩合で貸し出すスキームをとっている。他にも、よみうりランドや東京ドームなどの上場企業が公営ギャンブルに参画している。競馬事業の法的部分は組合でグリップし、企画・運営・長期リスクは民間にまかせていくべきである。
競馬組合はプロパー職員と県職員で構成されているが、イベント・事業に向いている人材が配置されているのか疑問である。より適性ある組織に運営を任せたほうが、更なる飛躍を遂げるのではないかと考える。コロナで巣ごもり消費が増加した。証券・暗号資産の口座数は、ロビンフッダーに代表されるように加速的に増加した。競馬だけでなく、投資・ギャンブル全般が追い風を受けている。しかし、数十年という時間軸でみれば、地方競馬・競輪は非常に厳しい状況になると考える。
多様化する投資・ギャンブル、そして、成長する馬券ネット販売が主な要因である。従来の証券・FXに加えて、暗号資産、後に述べる宝くじのデジタル化にIR、3月に解禁予定のグーグルのギャンブルアプリ、広義の競合事業は多様化するが、市場は増えず、パイの取り合い合戦となる。今後は若者利用者を確保する必要があるが、期待値が競馬よりも高く、ゲーム性の強い暗号資産やIRに勝ち得ることができるのか極めて疑問である。
また、地方競馬間での競争も加速する。それがネット販売の拡大である。従来、馬券は現場で買うため、商圏人口が競馬場近辺のローカル事業であった。場外販売所ができても、尼崎と盛岡の競馬場は競合関係になかった。しかし、ネット販売が主流になると様相は一変する。多くの利用者にとっては、地方競馬はどれも同じで、JRA、大手地方、ばんえいなど特色ある競馬が3つあれば十分満足できる。今後はネット販売がもたらす地方競馬間の競争激化と粗利率の低下で存続が難しくなると考える。
会社や事業を売却する上で一番高値がつくのは、利益好調で注目を浴びている時である。今なら参入したいと考える企業があるのではないかと考える。既に楽天やソフトバンク系が競馬のネット販売に参入し、mixiは競馬メディアを買収するなど周辺事業を展開している。売却時の評価となる、ディスカウントキャッシュフローやマルチプルは増益が続き、未来が明るそうに見えるときが一番よい。赤字が続くとハウステンボスのように1円でも買い手がつかない状況となる。競馬事業は売却すべき最高のタイミングを迎えている。
事業を存続しながら、長期事業リスクを削減し、民間の活力を取り入れ、より効率的に運営し、競合に打ち勝ち、事業環境の変化に対応できる体制を整備することが重要である。これが競馬収益の最大化、競馬場関連で働く方々の労働環境改善、競馬事業の活性化につながると考える。
そこで、競馬事業の株式会社化が最善と考えるものの、法律上の制約等により困難であれば、土地・建物の売却を検討すべきと考えるが、競馬事業の一部売却・民営化について当局の所見を伺う。
(2)資金使途限定型デジタル宝くじで寄付層を狙え
ガバメントクラウドファンディングや資金使途限定型ふるさと納税、遺贈寄付にファンドレイザーの設置などこれまでも財源確保と寄付の拡大の提言をしてきた。今回は宝くじ改革である。一発逆転を目指すギャンブル顧客だけでなく、寄付メインの顧客層を狙いにいく戦略である。未来像は、コロナ対策で頑張る医療従事者支援宝くじの発売である。ラインやペイペイでの購入、購入から払い戻しまでネットで完結、医療従事者からのメッセージ発信により寄付に対する満足感の醸成を提案する。
宝くじを買わない理由のアンケート1位は当たらないからである。これをもとに当選本数を増やす方向性で議論されているが、マーケティングで間違いやすいのは顧客アンケートを元にした商品開発である。マクドナルドは顧客アンケートをもとにヘルシーなサラダマックを販売して大失敗したが、数年後に全く逆のクオーターパウンダーを販売して大ヒットした。
データは事実であるが、顧客の求める真実とは限らない。つまり、期待値が0.5の宝くじを購入する層に対して当選数を増やし、期待値をあげたところで購入額は上がらないし、粗利が減るだけである。顧客が期待値に金を出すならidecoで株を買う。従って、今の宝くじ拡販策は当たらないと考える。むしろ、新たな市場の開拓、つまり顧客層を一発逆転狙い層に加えて、公益・寄付目的層を増やすことが重要である。宝くじの売り上げの40%は芸術文化や市町振興など様々な公益事業に利用されている。ふるさと納税でも指摘したように、資金使途をリンクさせて寄付・宝くじを販売しない限り、このような層は獲得できないと考える。従来型の年末ジャンボ10億円と連呼し、射幸性をあおるCMだけでなく、寄付でつながる社会貢献先を強く訴求し、当選金はおまけの位置付けとする。行動経済学では、報酬は一定より、ランダム性が効果あるとされており、定額のふるさと納税より効果があるのではないかと考える。
昨年のオンライン専用くじの発売は、実現の第一歩である。しかし、まだ改善の余地はある。宝くじの販売は、法令で銀行等を対象とされているが、資金移動業者やネオバンクなどにも委託できるよう法改正を求めるべきである。当せん金付証票法では、都道府県の宝くじ販売に際し地方財政審議会の意見を聴く必要があるが、議事要旨を拝見しても、その必要性は感じられない。柔軟でスピード感ある宝くじ発行と地方自治の拡大のためにも、廃止を求めるべきである。
省令で宝くじの資金使途が限定されているが、自治体にもっと自由度を持たせる必要があるのではないかと考える。宝くじ市場の拡大には、寄付層を取り込む施策とそれを実現するためのルールのアップデートが必要である。
そこで、低迷する宝くじ市場の拡大に向けたマーケティング・商品開発・販路・法改正について、当局の所見を伺う。
3 アートサンクチュアリーHYOGO
2016年9月本会議で美術館のあり方について3点提言した。無料開放日や高齢者料金の見直し、企業スポンサーの強化 、作品を展示・販売するプライマリーギャラリー設置の3点である。思いは全ての人にアートの力を届けること、それと同時にコストセンターからの脱却を図ることである。県立美術館は、建設費に205億円、年間支出9.6億円、8.4億円の赤字を一般財源で補填し、運営に多額の税金が投入されている。そもそも構造的に入場料収入で収支を合わせることは非常に難しいが、財政が厳しくなる中、芸術・文化だけが聖域として税金投入が継続されうるのか危機感を持つべきである。もちろん、芸術の火を消すべきではないと考える。このような思いで、提言したのが県立美術館によるプライマリーギャラリーであった。
その後、2018年4月、文化庁は「アート市場の活性化にむけて」を公表した。要旨は諸外国と比較して脆弱なアート産業の強化に向けて、公立ミュージアムに商業・作品評価を持たせることである。批判もあったようであるが、課題認識は同じである。
また、ミュージアムロードについて野外展示物を何個か置くだけではインパクト・集客性がないと指摘してきた。夢見るのは、単なる道から生態系への進化である。アートを生み、見出し、広める生態系の構築、アートサンクチュアリーを本県で作ることである。具体的には、作家の発掘・支援機能の充実である。県立美術館のアトリエは月額固定で作家共有とし、単なる貸しアトリエではなく、作家間の化学反応や学芸員のアドバイスなどインキュベーション機能を付加する。WeWorkが評価されたのは、単なる貸しオフィスではなく、入居者間のコミュニケーションとコラボが新たな付加価値を生むからである。WeWorkのアート版WeArtの誕生である。
そして、新進気鋭の作家を発掘し、展示・販売を行う、つまりプライマリーギャラリーの機能も付加する。ギャラリーはいわば無料の展示会である。県立美術館には展示作品の多様化、作家には発表・販売の機会、県民には多様なアートに触れる機会を無料提供する。ブロックチェーンの活用でセカンダリー以降の価値向上の利益を作家が得られる仕組みを取り入れる。
また、コレクター向けには有料のコレクション保存・修復サービスを開始する。収入の多様化はもちろん、人類全体の財産である作品保全の一翼を担うことになる。
日本の美術品寄付税制は諸外国と比較し、脆弱で改革の必要性があると指摘されている。法改正で100万円未満の作品が減価償却可能となり、 節税と組み合わせたアートファンドが生まれつつある。自治体アートファンドを組成し、公立美術館への寄贈・寄託や公共空間にアートを展示するパブリックアートの展開を税制面でサポートする仕掛けや自治体保有の建物や壁面、建築現場の仮囲いなどをウォールアートなど、美術館でアートを提供する以外にも、様々な場面や切り口で実現が可能である。芸術文化立県ひょうごの中核として、これらアートサンクチュアリー構想を進めていくべきと考える。
そこで、県立美術館が新たな役割を担うべきではないかと考えるが、当局の所見を伺う。
4 ひょうご県営住宅整備・管理計画の改定
県営住宅削減が話題になると激高する人がいる。2018年本会議で、立地や家賃、建物スペックなど高品質な公営住宅に入居できた人と自力で頑張る人に大きな格差が生じていないか、県営住宅だけでなく、県内36万戸の空き家も活用した重層的で柔軟な住宅供給のあり方について質問した。
県内の公営住宅比率は全国平均3.8%に対し、5.5%と供給過多である。民業圧迫ではないかと考える。更に、2040年に世帯数は17万減少し、217万世帯と推計される。新規建設すれば70年間利用する県営住宅であるが、世帯数の減少、間取りや立地ニーズの変化に70年間もリスクを負うべきかと考える。全国の公営住宅の入居率は平成23年90.4%、応募倍率8倍に対し、平成27年86.6%、4.9倍とたった4年で4%も減少している。数十年後に県営住宅の空室率が30%などとならないかと危惧する。仮にそうなれば、直接建設が借り上げより優位という損益シミュレーションは根底から崩れることになる。
全国計画では、都道府県に対し公営住宅の供給を補完するための公的賃貸住宅の活用を要請している。県営住宅の戸数は全国平均レベルを早期に目指し、その戸数は借上型を組み入れるべきである。そして、一定乗数で住宅セーフティーネットの登録数を組み入れるべきである。
量的改善だけでなく、質的改善も追及すべきである。例えば、土地の坪単価が一定以上の立地は原則建て替えを行わず、売却すべきである。表参道駅徒歩5分、土地値が坪2000万超の立地に都営住宅がある。民間マンションであれば40㎡で5000万超である。参考に、私の家は土地坪60万台で30分の1である。このような場所にある公営住宅に対し、自力で家賃を払う人が納得できるのか、表参道に公営住宅が必要か、本県にも表参道のような事例がないのかと考える。
エレベーター保守は一般入札し、管理費用を削減すべきである。現在はメーカー系の保守で年間5.3億円を計上しているが、独立系も含めた入札を行えば数億円のコストカットが見込める。
県営住宅の児童遊園・駐車場は原則開放すべきである。県営住宅は県民共有の財産であり、入居者の既得権益ではない。今後は設計段階から、開放的で入居者以外も利用しやすい動線、環境整備をすべきである。児童遊園には子供中心の遊具だけでなく、高齢者も利用できるストレッチなどの健康遊具を設置し、健康寿命延伸・ロコモ対策の環境整備を行うべきである。また、長期空室はキッズルームや子ども食堂など多様な用途に空室を利用できるよう、県民の意見に耳を傾け徹底的な活用を検討すべきである。
2012年の公営住宅法改正で入居要件が同居親族以外にも緩和された。
ルームシェアは明舞で学生向けに募集しているが、地域活動など細かい条件をつけず全県営住宅で実施すべきである。学生はお金がない。大学生時代に友人と不動産屋の2階を間借りしていたが五右衛門風呂であった。
また、LGBTなど同性カップルも入居可能にすべきである。2008 年国連自由権規約委員会は、公営住宅を例に未婚の異性カップルと同性カップルが平等に扱われるよう確保すべきであると日本政府に勧告している。
そこで、これら指摘を踏まえて、ひょうご県営住宅整備・管理計画をどのように改定するのか、当局の所見を伺う。
5 交番・駐在所の年内再編
治安サービス向上のための警察組織の全体最適を考える。最初に提言してから5年が経過し、今年3月に警察署の再編は実現する。警察官一人当たりの警察署間格差は、刑法犯認知件数が約8倍から約5.5倍、人身事故件数が約8倍から約5倍に是正される。治安サービスの向上と警察官の業務負担軽減の両立の大きな一歩である。しかし、さらなる改善には地域に一番身近で即応体制をとる交番・駐在所の再編を早急に実現すべきである。
本県は交番・駐在所が全国で3番目に多い。交番が全国4番目、駐在所が全国2番目であり、大規模再編から15年近く経過している。その間、人口動態や治安情勢の変化により、交番・駐在所の業務偏在も拡大している。具体名は伏せるが、例えば交番1人あたりの刑法犯認知件数は、県下最多が神戸エリアの交番で約60件、最少が但馬エリアの交番で5件未満、110番受理件数は、最多が神戸エリアの交番で約310件、最少が西播エリアの交番で5件未満とそれぞれ大きな差がある。駐在所は、刑法犯での県下最多が阪神エリアの駐在所で約50件、最少が阪神・西播・但馬エリアにある駐在所で0件、110番受理件数での県下最多が西播エリアの駐在所で約500件、最少も同じ西播エリアの駐在所で5件未満である。これらの問題は看過できない。業務多忙な交番・駐在所では地域のための十分な活動ができていないのではないか、0件~数件という交番・駐在所が本当に必要であるのか、早期に是正すべきである。
警察署の再編ではパブコメで多くの反対意見が寄せられた。認知科学では、得より損が3倍大きく感じると言われている。また、賛成派は偏在について認知度が低い。従って、廃止については警察署、信号機を問わず反対意見が当然多くなるが、あくまで全体最適を優先すべきである。犯罪・事故件数など業務量に応じて適正に警察力が最適配置されていれば、未然に防げた事件・事故、悲劇・不利益があったはずであるが、顕在化しない。
そこで、県民の安全を守るために、交番・駐在所の再編計画を年内に求めるが、当局の所見を伺う。