議会の動き

◆21年6月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  相崎 佐和子 議員

一般質問  石井 秀武 議員

代表質問

(相崎 佐和子 議員)[発言方式:一問一答]

1 新型コロナウイルス感染症の対策について
(1)財政基金のあり方について
(2)検査体制の拡充について
(3)医療体制の強化について
2 子育て・教育支援について
(1)こども家庭センターの強化について
(2)ヤングケアラーの支援について
(3)私立高校授業料補助の拡充について
3 カーボンニュートラルへの取り組みについて
4 信号灯器のLED化について

質問全文

質 問 日:令和3年6月4日(金)

質 問 者:相崎 佐和子 議員

質問方式:一問一答方式

1 新型コロナウイルス感染症の対策について

(1)財政基金のあり方について

コロナ禍において、これまで以上に都道府県が果たす役割が強く求められている。各都道府県が状況に応じた対策を講じる必要があり、当然それには経費が伴う。兵庫県はその財源として、国からの地方創生臨時交付金、緊急包括支援交付金などを活用し、種々対策を講じてきた。ただ、自治体の独自財源である財政調整基金(兵庫県では財政基金)は現在33億円で、行政規模に対して余裕がある状態とは言えない。私は伊丹市議会出身だが、伊丹市は平成30年度決算で財政基金は約73億円で、県の基金額33億円に驚いた記憶がある。

東京新聞の調査によると、コロナ禍で47都道府県の財政基金はこの1年で36%減少したと言われている。各都道府県が基金を取り崩して対策を講じているが、兵庫県は、そもそも取り崩すだけの余裕がなく、独自の対策を検討することが困難であり。忸怩たる思いを抱くのは私だけだろうか。

財政基金は、いざという時のための貯金である。まさに、いざという時である今、兵庫県において財政基金に余裕がなく活用が困難な現状について、危機感を持ち財政基金のあり方を今一度検討するべきだと考える。

県では行財政運営方針を策定し、3年ごとに検証見直しをしている。今年度は見直しの年度であり、過日に現在の財政状況等が発表された。R9年度までに330億円の要調整額、つまり収支不足が生じる見込みで、大変厳しい状況である。ではどうテコ入れするのか。330億円の要調整額を抑えて収支均衡を図ることはもちろん、一定の財政基金を積むことを目標に掲げ、より厳しい行財政運営に取り組むべきだと考える。

財政基金を積むには、一定のルールが必要である。これまで剰余金の1/2を積んできたが、貯金のやり方として、余ったら貯めるのは貯金がたまらない典型パターンである。例えば、剰余金の1/2を積むことに加えて、伊丹市のように標準財政規模の20%まで積むなど、ルールを決めるのが良いと考える。

そこで、県財政において財政基金が33億円と余裕がなく、いざという時であるコロナ禍においても活用が困難な現状をどう捉えているのか、また、行財政運営方針の見直しにおいて、財政基金の積み立て方針を盛り込むべきと考えるが、当局の所見を伺う。

(2)検査体制の拡充について

新型コロナウイルスを封じ込めるには、徹底的な検査と完全な隔離が必要である。当ウイルスの特徴は、無症状でも感染することである。症状がなくても実は感染しており、気づかないうちにウイルスを広めていることが蔓延の原因の1つであり、無症状の感染者を見つけ出す徹底的な検査が肝要である。

中華人民共和国の武漢市や青島市では、短期間で全市民の検査を実施し、ウイルスを封じ込めたと聞く。日本でも国主導で今以上の徹底的な検査を望むが、我々は兵庫県において出来ることを実施していかねばならない。

検査のテコ入れ方策として2点申し上げる。

1つは社会的検査の充実である。国からの方向性にのっとり 2~3月に医療・介護施設の従事者に集中的検査を、さらに6月までに施設の従事者に検査が実施される。評価する一方で、特に施設においてはクラスター防止のためにも単発ではなく定期的な検査が求められる。検査の財源は、県負担分は地方創生臨時交付金で措置される。

テコ入れ方策のもう1つは、濃厚接触者以外の検査の充実である。県民から「身近で感染者が出たが濃厚接触者に該当せず検査が受けられなかった」との声を多く聞く。国の濃厚接触者の定義は、現状に対して狭義と言えるかもしれない。感染者周囲で濃厚接触者に該当しなかった方などに対する検査の拡充が望まれる。

そこで、ウイルスの封じ込めには検査の拡充が必須であり、社会的検査の定期実施、濃厚接触者以外の検査の充実などが必要と考えるが、当局の所見を伺う。

(3)医療体制の強化について

先ほど来、ウイルスの封じ込めには徹底的な検査と完全な隔離が肝要と申し上げているが、検査を強化すれば感染確認が増加し、従って病床や療養施設がいっそう必要となる。現状、県では、病床稼働率がレッドゾーンで高止まりし、自宅待機中に自宅でお亡くなりになる大変申し訳ないケースも生じている。また今後、重症化すると言われる変異株が脅威となりコロナが長期化する事が想定される。これらを鑑み、感染者の波が少し収まった時にこそ、気を抜かずに医療体制の強化を図ることが重要である。

県はこれまで病床や療養施設の確保に努めてきた。さらに、例えば加古川医療センターに整備したコロナ専門の重症者用臨時病棟を他エリアでも整備することを検討したいところである。財源は国の緊急包括支援交付金が活用できる。

そこで、現状や今後を鑑み、医療体制の強化が今こそ必要と考えるが、重症者用専用病棟の追加整備を含め、病床や療養施設の確保策について、当局の所見を伺う。

2 子育て・教育支援について

人口流出が課題の兵庫県において、対策の最大ポイントの1つは子育て・教育施策の充実である。兵庫県で子どもを産み育てたい、兵庫県で育ってよかったと思える県にしたい。県の子育て・教育施策について、3点をピックアップして質問する。

(1)こども家庭センターの強化について

児童虐待の対策について、全力で取り組むべきなのは申すまでもない。つらい状況や思いを抱える子どもを救いたい、悩む保護者をサポートしたいと強く思う。

児童虐待の相談件数、一時保護の件数が急増しており、R元年度の県内の児童虐待相談件数は過去最多の8,308件で、この10年で3.6倍も増加する一方、受け入れ体制はハード・ソフトともにキャパシティがオーバーしている。

ハード対策について、尼崎市と加東市にこども家庭センターをこの4月に整備し、今後川西市に一時保護所が整備される。大いに期待するところだが、これで整備が完了したわけではない。特に、一時保護は県自体の受け入れ人数に限りがあるなど、ハードのいっそうの整備を検討する必要がある。

ソフト対策について、職員の早急な確保と育成が必須である。相談件数、一時保護件数の急増に対して、対応する職員は微増である。熱い気持ちで尽力している職員の方々を心身ともに疲弊させてはならない。

県ではこれまで、77名の児童福祉司を専門職とし採用しているが、絶対的な人数不足である。児童福祉司の配置基準が人口4万人に1人から3万人に1人と引き上げられた事から、都道府県で専門職の取り合いと聞く。県において、具体的・積極的な方策で確実に確保していかねばならない。また頭数が揃えばよい類のものではなく、資質の向上が求められる。経験の積み重ねや研修などでの学びに加え、現場でベテランと若手が混在するバランスのよい配置も必要だと考える。

そこで、増加する児童虐待の相談件数、一時保護件数に対応するため、こども家庭センターのさらなる強化が必須である中、ハード対策についての現状認識と今後の見解、ソフト対策としての児童福祉司の具体的な確保・育成策について、当局の所見を伺う。

(2)ヤングケアラーの支援について

ヤングケアラーは、昨今、報道でよく取り上げられている言葉であり、病気や障がいがあったり高齢だったりする家族の世話をしている子どものことを意味する。

今般、初めて全国規模の調査が実施され、世話をしている家族がいると回答した子どもは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生で4.1%いることが分かった。中学生でクラスに2~3人はいるということになる。

核家族化、共働き世帯の増加など家族の形態が変化している今、ケアが子どもにとって重い責任や負担になり、勉学や心身の成長に大きな影響が生じること、さらに本人や周囲がそれを問題と認識しておらず、必要な支援やサポートが至っていないことは大きな問題である。

衝撃だったのは、2019年に神戸市で、当時21歳の女性が同居の90歳祖母を殺害した痛ましい事件である。女性は仕事をしながら認知症の祖母を一人で介護しており、相談先もわからないまま心身の限界を迎えてしまったとのこと。罪を犯したとはいえ、状況を想像すると胸が痛むばかりである。このようにつらい状況を抱えるヤングケアラーが多く存在しているのではないか。支援の必要性を強く感じる。

国では、厚生労働省と文部科学省が合同で、ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームを立ち上げ、5月17日に報告書が発表された。それによると、支援には、①早期発見・把握、②支援策の推進、③社会的認知度の向上の3本柱が必要とされている。

埼玉県では、昨年3月にケアラー支援条例を策定し、3か年の支援計画を打ち出した。神戸市は、昨年に支援のプロジェクトチームを発足させ、相談支援窓口の設置、理解の促進などの取り組みを始めている。

兵庫県でも力強く取り組みたいところである。まず、支援計画を策定すること、そして支援3本柱について県がすべき支援策を具現化することが必要である。対象者の発見、相談窓口の充実、福祉サービスへのつなぎ、社会全体への広報や啓発など、取り組まねばならないことは山積している。

そこで、ケアラー、とりわけヤングケアラーの支援について、県はまず実態を把握し、支援計画の策定を含めて国のプロジェクトチームが示した3本柱の支援について、早急かつ具体的に取り組むべきと考えるが、当局の所見を伺う。

(3)私立高校授業料補助の拡充について

全ての子どもに、家庭の経済事情に関わらず、望む進路を保障したいと考える。経済格差が教育格差に繋がらないための体制整備は、政治の責任と役割である。

そこで私立高校授業料について取り上げる。県では、R2年度に年収590万円未満の世帯に対し、県内私立高校の平均授業料40万8,000円まで国の上限額に加えて上乗せ補助を実施し、実質授業料無償化を実現、さらに、年収730万円未満世帯には10万円、910万円未満世帯には5万円を、国就学支援金に上乗せ補助を実施した。

一定評価するものの、これで補助がコンプリートしたわけではない。年収590万円を壁として、それ以上の世帯と差が生じている。また近隣府県との比較においても差がある。これらのことから、県でのいっそうの補助を求める声を多く聞く。これらの差により兵庫県を離れるケースもあると聞けば、県の人口流出対策の観点からも充実したいところである。

また、県外の私立高校通学者への補助も課題である。例えば阪神間では大阪府や京都府など、県外の私立高校に通学する生徒が多くいる。我が家の長女は高校1年で、昨年度は伊丹市立中学校の3年生だったが、学校からもらってくる私立高校の入学案内チラシは半数以上が大阪府の学校であったし、実際に大阪などの私立高校に多くの生徒が進学した。兵庫県では、県外の私立高校通学者に対して、県内私立高校通学者の1/2ないし1/4の補助を実施しているが、住所地に近い場所で教育を受けることが望ましいとの考えのもと、授業料補助は県内補助を基本としている。どこに高校があるかではなく、どこに生徒が住んでいるかで考えたいところである。

そこで、経済格差が教育格差につながらぬよう、私立高校の授業料軽減補助について、年収590万円以上世帯への補助をさらに充実させること、県外私立高校通学者への補助を充実させることを県民は望んでいるが、当局の所見を伺う。

3 カーボンニュートラルへの取り組みについて

カーボンニュートラルとは、カーボン=炭素、ニュートラル=中立で炭素中立、生産活動や人為的活動における、二酸化炭素の排出量と吸収量を同じにするという概念である。

世界では、国際的な枠組みであるパリ協定において、今世紀後半のカーボンニュートラル実現がうたわれ、日本では昨年10月に2050年カーボンニュートラルが宣言された。この4月には気候変動サミットが開催され、各国が温室効果ガスの削減中間目標を引き上げ、日本も先日2030年度の削減目標を2013年度比46%まで引き上げた。

こうした国内外の動きが急加速する中、県は地球温暖化対策推進計画をこの3月に改定し運用をスタートしている。改定計画は、2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比26.5%から35%削減に強化し、再生可能エネルギーの導入目標を70億から80億キロワットアワーに引き上げ、具体策も多岐にわたり展開している。本気度が伝わる計画であるが、運用にあたりポイントが2点あると考える。

1点目は、目標値を確実に実現することである。このペースで2050年カーボンニュートラルが実現可能かとの懸念があるが、まずは2030年までの当計画を、絵に描いた餅にならぬよう、確実に実現しなければならない。計画にある温室効果ガス削減目標の35%は、エビデンスが不明確で算定根拠がわかりづらく、本当に35%削減が可能かと危惧するところである。個別具体策、特に県が独自性を発揮できる施策は、明確な目標値を設定して取り組み、全体の実現可能性を高めるべきと考える。

2点目のポイントは、さらに目標値を引き上げることである。先ほど述べたとおり、国はこのたび削減目標を46%に引き上げた。県はこれを受け、35%からさらに削減目標を引き上げ、取り組みを強化せねばならない。

そこで、2050年カーボンニュートラルにむけて、兵庫県地球温暖化対策推進計画の目標値を確実に達成するために、温室効果ガスの削減目標35%の算定根拠を明確にすること、特に県が独自性を発揮できる施策について目標値を設定して積極的に取り組むこと、国の新たな削減目標46%を鑑みて県も対策を強化することが必要と考えるが、当局の所見を伺う。

4 信号灯器のLED化について

これまで何度か質問をしているが、進捗を鑑み今回も質問をしたい。

信号灯器のLED化は、多くのメリットがある。1つ目のメリットは、電力の削減である。従来の電球式と比較してLED式は消費電力が約1/7になる。2つ目のメリットは、メンテナンスの簡素化である。電球式は2年で球を交換する必要があり、県では年額約9,000万円をかけて作業しているが、LED式は球替えが不必要で、メンテナンスが劇的に簡素化される。3つ目のメリットは安全性の向上である。電球式は、西日が当たった際に点灯色が判断しづらい時があるが、LED式は視認性が高く、安全性が向上する。

LED化の県の進捗現状は、主要幹線道路を重点的に取り組み、国道2号や43号ではほぼ完了、今後は生活道路で推進するとのことであるが、R元年度末で兵庫県のLED化率37.5%で、全国ワースト4位となっている。

私はLED化が経費削減になることに注目している。LED化にはイニシャルコストが必要となるが、消費電力が1/7になることから、ランニングコストでのペイが可能で、中長期ビジョンで経費削減になる。家庭で照明を変えるとき、LEDは電球より高額だが、長持ちし電気代も安価ゆえ、長い目で見たらLEDの方がお得、という話と同様である。

LED化経費について、県では交通安全施設等整備費に加え、公共施設等適正管理事業費(単年5億円)にて、老朽化した信号灯器の整備に合わせてLED化を進めているが、一気に経費投資しLED化するのが効率的だと考える。

そこで、種々メリットがある信号灯器のLED化について、中長期の経費削減の観点からも一気に推進すべきと考えており、具体的な推進計画を立てて、然るべき財源を措置することが肝要と考えるが、現状の取り組みと今後の具体的な整備について、当局の所見を伺う。

相崎 佐和子

(選挙区:伊丹市)

一般質問

(石井 秀武 議員)[発言方式:分割]

1 第3期ひょうご教育創造プランについて
2 今後の県政を担う職員の採用について
3 知事選挙に向けた投票率向上のための啓発について
4 二重行政の解消と特別自治市に係る神戸市への対応について
5 選択と集中の実現について
6 関西広域連合の行く末と新しい形での道州制について

質問全文

質 問 日:令和3年6月7日(月)

質 問 者:石井 秀武 議員

質問方式:分割質問・分割答弁方式(1~3:一括、4~6:一括)

1 第3期ひょうご教育創造プランについて

西上教育長は、平成30年4月に企画県民部長から教育長に就任し、この10月に任期を迎えられる。主に財政畑を歩んできた経歴から一転、教育という新たなフィールドで、兵庫の教育のため、この3年真摯に取り組んできたと受け止めている。

ひょうご教育創造プランは、本県の教育全体に関する非常に重要な基本計画である。教育長の就任の年に、第3期ひょうご教育創造プランを策定し、予測困難な時代の中で、子どもたちには変化に柔軟に対応できる力とともに、これからの社会を創造していく力の育成が重要であるとして、未来への道を切り拓く力の育成を重点テーマとして掲げた。そして令和元年度からは、新しいプランに基づき、児童生徒の学力向上、県立高校の魅力づくり、特別支援学校の整備、学校のICT化等着々とプランを実行している。

新たな分野での、初めての挑戦として臨んだ第3期プランの策定にあたってどのような思いを込め、またその推進にあたってはどのようなことに注力して進めてきたのだろうか。

令和2年の年明けからは新型コロナウイルス感染症が拡大し、移動や密集の自粛など人々の自由は制限され、世界的な交流の遮断、経済活動の停滞など感染拡大に伴う様々な影響も広がり、世界も日本も揺れ続けている。教育においても、一時は学校の一斉臨時休業を余儀なくされるなど、前例のない対応を迫られ、再開後の教育活動においてもあらゆる制限を受けてきた。兵庫が誇るトライやる・ウィーク等の体験教育においても、これまで通りの実施ができず、試行錯誤の中で工夫されてきた。一方で、学校での一人一台端末の普及にみられるようなICTを活用した新たな動きも急速に広まり、ポストコロナの世界は新たな時代の始まりとも言われている。

まさに、第3期プランの重点テーマである未来への道を切り拓く力が、子ども達だけではなく、教師、学校、教育行政そのものに今求められている。このような激しい変化の時代だからこそ、このプランの前文に記載している「いつの時代においても教育に必要とされるもの(不易)」が何であるのか、「今この時代に合わせて教育に必要とされるもの(流行)」が何であるのか、が見えてくるのではないかと感じている。

そこで、この1年あまりの間、教育長の立場で様々な判断をしてきたと思うが、コロナ禍というこれまでに無い事態を経験し、兵庫の教育に対する思いや、子ども達が身につけるべき力について、今どのように考えられるか、プラン策定時から変わったこと、変わらなかったことは何かについて、当局の所見を伺う。

2 今後の県政を担う職員の採用について

大多数の大学新卒の年齢である22歳人口は、2010年代ほぼ横ばいで推移してきたが、少子化の影響を受け、新卒採用の2021年問題といわれているように、2022年以降減少に転じるとされており、2022年度の採用、つまり今年2021年度の就活から、学生の獲得競争が激化すると言われている。

このような中で、県が新規採用において優秀な人材を採用するには、民間、または他の地方自治体との争奪戦となることは明らかであるが、兵庫県職員一般事務職(大卒程度)の採用試験の受験者数の競争率は、就職氷河期の2000年頃には30倍程度あったものが、2018年度は3.9倍、2019年度4.8倍、2020年度5.3倍となっており、受験者数は低迷している。

感染症や災害が頻発する近年において、県民の公務員に対する期待と需要は高まっている一方で、公務員に向けられる視線は厳しさを増している。そのため、公僕として県政を支え、県民のための仕事を高い志とやりがいを持って遂行できる優秀な人材を獲得していくことは、最重要課題である。

また、デジタル改革関連法案が成立するなど、デジタル化が喫緊の課題である行政にとって、情報の基礎知識は無くてはならない社会常識となっている。

そこで、将来の県行政を担う職員採用にあたって、どのような人材がふさわしいと考えているのか、また、その適性をどのように見極めるのか、優秀な人材を獲得するために不可欠な受験者の確保についてどのような取組を行うのか、当局の所見を伺う。

3 知事選挙に向けた投票率向上のための啓発について

来月の7月1日に告示され、7月18日が投開票日となっている兵庫県知事選挙の投票率向上に向けた取組について伺う。

2019年の統一地方選挙では、都道府県知事選挙を除き、各選挙ともに投票率が過去最低記録を更新した。

兵庫県知事選挙の近年の投票率は、参議院議員選挙と同日実施であった平成13年と平成25年を除き、昭和61年の選挙から計6回、30%台で推移してきた。前回平成29年の選挙ではなんとか40.86%と僅かに回復したものの、昭和26年には80%近い投票率という時代があったことを考えれば長期低落傾向にある。

一方で、昨年来の新型コロナウイルス感染症への対応において、 各自治体の対応が比較され、首長の記者会見が度々報道されるなど、都道府県知事に対する世間の関心は高まっていると感じる。

民主主義の根幹たる選挙の重要性を鑑みれば、投票率の向上は非常に大きな課題である。総務省が平成29年に出した投票環境向上に向けた取組事例集によれば、全国では、大型商業施設、大学、高校、病院等での共通・期日前投票所の設置や、投票所の設備を備えた車による移動式期日前投票所の設置、交通弱者への移動支援などの取組が見られる。

県内でも初めて、播磨町が今年の知事選における共通投票所を設置すると発表した。町内に13か所設置してきた投票所を約半数の7か所にし、代わりに全ての投票所に共通投票所を併設することで、播磨町の選挙人は町内全ての投票所どこでも投票できることになる。費用の面では二重投票などを防ぐためのシステム導入費用などにコストはかかるが、投票所を半減することで運営費用は圧縮できるとしている。

また神戸市が令和3年2月に記者発表したところによると、 今秋に予定される神戸市長選挙において、候補者名が印刷された投票用紙に○印を書いて投票する記号式投票を採用するとのこと。神戸市は、特に若い有権者の低投票率が全国的な課題とされている中、投票方法が簡単になることによる有権者の利便性の向上や、新たな制度採用による話題性を高め、投票率の向上を目指すとしている。

そこで、今年7月の知事選挙では、新型コロナウイルスの感染対策を行ないながら取組を進めていかなければならないが、コロナ禍での他県の先行事例も踏まえ、投票率向上に向け具体的にどのように取り組むのか、当局の所見を伺う。

4 二重行政の解消と特別自治市に係る神戸市への対応について

平成27年12月定例県議会では、特に観光、農業等各分野での連携の取組みについて質問し、「より適切な役割分担のもと、相協力するべき組織については、できるだけ一体的な運用が図れるように努力する」との答弁があった。新長田合同庁舎での協調やUNOPS・GICの誘致など、県市の関係がこれまでになくうまく進んできたと感じている。これは知事と市長の関係(端的に言うと自治省の先輩)によるところが大きいのではないだろうか。しかし、知事交代後もこの関係は継続できるのだろうか。県神戸市調整会議や同連絡会議という形式的な場は有するものの、日常的な事務レベルの連携はとれているのだろうか。とりわけ、最近の特別自治市の法制化を巡る久元市長の発言や、アートや植物と融合したアクアリウムをはじめとする新港突堤西地区の再開発、神戸市の音楽ホール計画の中止など、大きなプロジェクトについて、報道で初めて市の発表を知ることも多く、今後も県と市が適切に連携していけるのかと不安に感じている。特に神戸市が民設民営で神戸港に県内最大の1万人収容規模のアリーナを整備することについて、令和元年12月定例県議会で明石公園のリノベーションの一環として今後の利活用を考える中で、アリーナの規模やイベント需要、地域に求められる施設機能などを具体的に打ち出すことにより、どのような関心が寄せられるのか、サウンディングしていってはいかがかとの質問に対して、知事から前向きな答弁があり、その後県が大規模アリーナの検討を大々的に発表していたことを踏まえると、真の意味での二重行政の解消に向けての議論が実務的に行われているのか甚だ疑問に感じる。

そこで、二重行政の解消に向けた神戸市との連携及び意思疎通を図るとともに、特に警戒心の強い特別自治市の法制化をめぐる神戸市の動きについて、神戸市の成り立ちの背景などを踏まえた適切な対応を神戸市に求めるべきと考えるが、当局の所見を伺う。

5 選択と集中の実現について

平成24年2月定例県議会では、過去のしがらみの中で進めていこうとする施策の検証が必要で、場合によっては立ち止まる勇気も必要と指摘し、「スクラップ・アンド・ビルドに徹し、ゼロベースの見直しを行う」との答弁があった。以降も選択と集中の徹底、シーリングの強化、事業数の10%削減といった言葉が、予算編成方針や知事答弁で述べられている。

これについては、平成20年度から30年度までの行革の成果として、廃止が2,728事業、新規事業が1,327事業となっており、差引1,401事業が削減されている。

一方、新規事業について、平成25年度予算特別委員会では、チャレンジ枠の意義と効果について指摘し、「大変ユニークな事業もあがっている。手始めであり、温かく見守っていただきたい」との答弁があった。それ以降、毎年のように、チャレンジ枠、地域創生枠、県政150周年記念事業枠、すこやか兵庫枠、リーディングプロジェクト特別枠、ポストコロナ対策特別枠のように新規要求枠が設定され続けている。

平成25年の答弁で、知事は「チャレンジ事業は、新たな発想で取り組もうとするものであり、その効果にも期待しているが、チャレンジ事業を検討する過程が重要だと思っている。検討を重ねていくことが期待する原点である」との趣旨の答弁をしている。私から見ると、本県では、最も柔軟な発想で新規施策を立案できるのが知事という印象であるが、これまで設定されてきた新規要求枠を検討する過程で、独創的な新規事業の立案等、知事が期待したような十分な意義があったのか、当局の所見を伺う。

また、この新規要求枠の中身を見ると、時に名称やスキームを変えて新規枠という名の下で毎年同じような事業が続いているケースもあるのではないかと考えている。

私はやめられない事業には二つのパターンがあると分析する。一つは、先進的な事業・モデル事業と認識して開始したが、役割を終えた、或いは、十分に成果が上がらないにも関わらず、中止が決断できていない事業である。このような事業の有無も含めて、再精査するためにも、個々の事業を再度ゼロベースで検証していく必要があるのではないだろうか。

もう一つは、地元や海外の企業、有識者等との個別の繋がりを活かして事業を開始したものの、思った成果があがっていないような事業である。このような地縁などによる繋がりを活かした事業について、決して全否定するものではないが、相手もビジネスライクな側面を有していると考えられることから、少し立ち止まって考える必要もあったのではと考えている。我々県議会としての役割も反省すべき点はあると考えるし、県当局としても助言できる環境になかったのかとも思う。これら二つの要因により事業をやめる勇気を持てなかった部分が今でも残っているのではないだろうか。

そこで、適切にスクラップ・アンド・ビルドが行なわれてきたのか、今回の行財政運営方針の総点検について、今後どのようにして成果を上げられると考えているのか、当局の所見を伺う。

6 関西広域連合の行く末と新しい形での道州制について

東日本大震災でのカウンターパート方式、ドクターヘリの共同運航、さらにはワールドマスターズゲームズの誘致などこれまで成果を上げてきたことは間違いなく井戸知事の功績である。但し、私も連合議会議員を務めたが、年々その活気は失われてきた感も否めない。それを最も感じているのは、知事本人ではないだろうか。そこで提案であるが、今こそ、実績を積んだ関西広域連合を母体とした道州制への移行を本気でめざすべきではないだろうか。これまで、知事は、道州制へは一貫して慎重な姿勢を示す一方、「連邦制をめざすのであれば選択肢の一つ」や、令和2年9月定例県議会では、「新しい広域連携のあり方の検討として、新しい形での道州制も関西広域連合での検討に含まれることもある」との答弁があった。コロナの状況が収まれば、大阪府市の二重行政の問題が再燃するかもしれないし、都構想の次は道州制という風潮になるかもしれない。コロナを契機に、地方の行政形態への関心も高まっている。特に今後のデジタル化の進展は国や都道府県のあり方に大きく影響してくるものと思われる。そして何より、明治以来、繰り返される市町村合併に比べ、都道府県の数だけが当時のままという事実は変わっていない。次の知事は、井戸知事のように理路整然と道州制の問題点を答えていくことができるだろうか。国や大阪から押しつけられる道州制よりも、関西広域連合の実績を母体とする道州制を、兵庫県が主導してめざしてはと考える。道州制への警戒が強い近隣府県にとっても井戸知事が提唱する道州制ならば、比較的受入れやすいのではないだろうか。

そこで、井戸知事には、知事退任後、自由な立場となられる中、これまでの各府県首長や経済界、国とのパイプを活かし、関西広域連合を発展させた形での道州制の設立に向けて尽力いただきたいと節に願うところである。国出先機関の丸ごと移管への答えとなるであろうし、地域主権改革の成果の継承にも繋がると考えるが、当局の所見を伺う。

石井 秀武

(選挙区:神戸市西区)