議会の動き

迎山 志保 議員が一般質問を実施

質 問 日:令和5年2月20日(月)

質 問 者:迎山 志保 議員

質問方式:一括質問・一括答弁方式

1 知事の考える「まちの好循環」と「人口対策」について

先日神戸新聞紙上で加古川市の岡田市長が明石市の泉市長の子育て支援施策による人口増や税収増等の成果について「数字のマジックの入ったビラで他市の評判を下げてまで自市を良く見せ、転入を促した手法には、市長として正式に抗議し、撤回したり、市民に『やりすぎた』と表明したりしてもらうべきだったと後悔、反省している。歯ぎしりしながら我慢してきてしまったことが、『好循環』の数字のマジックを許している」そして「それを正さないと、社会的に悪影響が出ると思った」とインタビュー記事は締めくくられていた。

手厚い子育て支援策によって若い世代を中心に人口が増え、人口増によって税収まで押し上げた、つまり「まちの好循環」が起きているという泉明石市長の主張を真っ向から否定するようなコメントであるが、2013~2021年に明石市では人口が8千人増えた一方、加古川市では9千人減っており、明石市には加古川市から1,855人の転入超過があった。神戸市からの4,250人に次ぐとはいえ、同じ東播磨管内の自治体ということで人口を奪われた形となっている加古川市。私も岡田市長と同様、地元で明石のような取り組みがなぜ加古川でできないのかといった声を幾度となく頂いてきた。

こうした明石市の子育て支援施策についてわが県にも所縁のある熊谷千葉県知事はSNSで「明石市長の主に子育て支援に特化した施策について評価が高いのですが、これらの施策は毎年莫大な予算を必要とするものであり、予算を振り向ければ基本的に実現できる施策でもあります。ということは工夫ではなく財源配分の話であり、これだけの財源を子育て支援に振り向ければ、当然その金額分、マイナスとなった分野があるわけです。」「泉市長は、インフラ整備など経済産業施策の予算を削減し、子育て支援に回しています。これは短期的にはマイナス面が見えませんが、中長期的には成長の種を失うことになります。負の側面が見えてくるのは10年後20年後でしょう。」と別の面の指摘をしている。明石市の場合は「神戸市が産業の受け皿になることで、そのデメリットが見えにくくなっている。神戸市と明石市の位置関係的には正しい方向性だったとも言えるかもしれません」とも述べられ、よく理解できる。さらに「子育て支援は保育所・学校など様々な民生部門の支出が増える一方で、将来その子ども達の多くが市外へ転出する場合、投資を回収できず、収支面でマイナスになりやすい」とも述べられている。

手厚い子育て施策が真に将来にわたって街の好循環を生むのか。少なくとも、明石市の事例により、東播磨圏域全体の人口増といった波及もなく、ましてや兵庫県全体の人口増加につながったともいえない中で我々としてこうした課題をどのように考えたらよいのか。

おりしも岸田首相は2023年の年頭会見で「異次元の少子化対策」に挑戦する、と述べた。2022年の国内の出生数が80万人を割り込むのではないかというコロナが拍車をかけた少子化問題。国の存亡にも関わる人口問題に、過去の子ども手当への所得制限反対の声を翻しても取り組まなければ将来この国は大変なことになるという問題認識は私も共有している。アメリカ・テスラ社のイーロンマスクCEOは日本の出生率低下について「日本はいずれ消滅するだろうと」ツイッターで発信し、警鐘を鳴らした。

新年度予算では、知事の指示によって市町対象の交付金を減額し、県立高校の整備費を増額するなど今後総額300億円の集中投資を行い、若者の流出防止効果も狙っているとしている。高校の設備の必要な更新や拡充は支持するが、いくらなんでも若者の流出防止につながるとは思えない。

県の地域創生戦略における人口施策の数値目標は「2024 年まで合計特殊出生率1.41 を維持する」というものだが、最新の2021年の調査では1.36と目標を下回り、コロナの本格的な影響を加味すると大きく目標を割り込むことが想定される。

少子化対策は今に始まったことではなく、これまでも様々な施策が打たれてきた。私は少子化対策、人口対策に関しては知事も提案説明で言及されたが、過度な自治体間競争が生み出すのは格差であって、国がこの国に生まれてきてくれたすべての子どもに対する責任を持つべきだと思っている。国のいう『異次元の少子化対策』で報道にあるような多少のばらまきをしても出生率が2.07を上回るとは思えない。右肩上がりの教育費負担の大幅軽減、真の意味での子育ての社会化、家族関連税制の改正、はたまた事実婚の議論などまでふくめて聖域なしに議論しなければならない時期にきていると思う。どうすれば出生率が上がるのか、日本全体で徹底的に考え抜かなければならない。

そして今、県の立場では何ができるのか。県では地域創生戦略の中で「人口対策」を柱の一つに据えておられますが、岡田市長の問題提起などもふくめて知事の考えるまちの好循環、県がなすべき人口対策について所見を伺う。

2 安心して出産に臨める環境整備について

国・県で出産一時金増や不妊治療助成金拡充など少子化対策が進められているがそもそも安心して出産できる環境整備が必要。出生数は減っているが、分娩施設も減少する中、分娩予約に焦る経験をした妊婦は少なくない。

近年はコロナの影響もあってか、分娩制限でかかりつけ医療機関でも断られる事がある、里帰り出産が制限され、地元で分娩ができず、妊婦なのに車で何十分もかけて病院へ通うような例もある。不妊治療が増え予約取りが早期化する、などなど。また、昨今の晩婚化で高度医療を必要とするハイリスク妊産婦も増えている。

県では兵庫県周産期医療体制整備計画に基づいて周産期医療システムを構築されているが、地域単位で見ると、播磨姫路圏域と丹波圏域に地域周産期母子医療センターがない、但馬圏域、淡路圏域はそもそも医療資源が脆弱など、県下それぞれ課題を抱えている。周産期医療体制として、県全体としては対応できているということであるが、分娩施設の減少以外にも、医師不足、女性医師自身の出産や子育てによる他の医師への負担の増加、また医療事故等への不安から産科を選ぶ医学生の減少など、医師確保も課題となっている。ベテラン医師の退職により、一気に現状の分娩体制が維持できなくなる可能性も否定できない。

そのような中、来年度県は産科医療体制に関する研究会を設置されようとしている。現状の課題をどのように認識されているのか、その上で妊産婦の不安が少しでも解消され、安心して出産に臨める環境整備に向けどのように取り組もうとされているのか伺う。

3 女性のウェルビーイング向上について

『もはや昭和ではない』人生100年時代における結婚と家族について分析した今年度の男女共同参画白書の中の言葉。すでに今、典型的な生き方、家族の形というものはなく、一人ひとりの人生は長い歳月の中でさまざまな姿をたどっており、こうした変化、多様性に対応するべく現状の制度・政策を改めて総点検し見直す必要があることに言及している。

昭和55年(1980年)と令和2年(2020年)比較で女性を取り巻く変化を見てみると、全世帯の4割を占めるのが「夫婦と子」から「単独世帯」になっているが女性の一人暮らしは3.1倍増。未婚や離別が増え、30歳時点での未婚割合は4割、50歳時点で3割が配偶者がいない。専業主婦世帯が主流の時代から平成に入ったころには共働き世帯とその数は逆転、令和3年には共働き世帯数は専業主婦世帯数の約2.6倍にまで増加。所得をみると所得300万円未満の単独世帯は男性3割に対して女性5割。結婚し就業している女性の6割は所得200万円未満。平均寿命は87.71歳で女性の半数以上52.6%が90歳以上まで生きる。

今般、国はようやく就労抑制に直結している扶養制度をめぐる税制改革に前向きな姿勢を示し、女性の経済的自立を新しい資本主義の中核としている岸田首相からも先の予算委員会でいわゆる130万円の壁の問題のみならず、正規・非正規の制度・待遇面の差の改善など幅広い取組を進めなければならないとの答弁があった。単に経済活動の援軍となるべく女性の自立を進めるのではなく、現状を直視して昭和な制度、昭和な意識から脱却し、女性自身のための自立、豊かな生活につながる着実な取組を国にも期待したい。

(1)更年期ロスについて

閉経をはさんだ前後5年、個人差はあるがだいたい45歳~55歳頃の更年期とよばれるこの時期、卵巣の働きが低下して女性ホルモンの分泌が急減し不調が出る。これが更年期障害と言われるもので、自律神経が乱れ、めまいや頭痛、不眠やうつ、関節痛など、個人によって程度は異なるが様々な症状が現れる。この更年期症状が原因で離職したり、休職や昇格辞退、降格を余儀なくされるのを更年期ロスといい、深刻な問題になっている。45歳~54歳の女性の就業率は79.8%で、働く女性約3,000万人のうち4分の1が更年期世代なのだが、更年期と仕事に関するNHKの調査結果に基づいた専門家の分析では75万人以上の女性が更年期ロスを経験しており、46万人が更年期離職することによってその経済損失は年間4,200億円にのぼるとのこと。女性の働き方を考える時、妊娠出産期と同じような認識が必要で、社会の理解と相談や柔軟な働き方ができる環境が望まれる。更年期を個人的な問題に押し込めず、社会の課題として認識を新たにする必要性があると考えるが更年期ロスへの認識と社会、企業への啓発、取組について伺う。

(2)健康支援について

女性の活躍、経済的自立を進めるために最も大切なのが健康なのは言うまでもない。女性の健康支援に関しては妊娠出産に関する母子保健制度に基づいた支援や女性特有のがん検診への公費助成などがあるが、現在の女性の生き方を考えた時、一生を通じた健康支援、ライフコースアプローチという観点が重要になる。

日本女性の睡眠時間はOECD加盟国中で最も短く、家庭でも社会でも活躍を求められながら女性に多くの役割が集中している現状がある。自身の健康を犠牲にしながらの女性活躍社会は不要。女性特有の健康課題も多く、理解と対策をさらに進めるべきである。

また今回のコロナ禍では、特に女性の自殺の増加率が高くなっている。女性の自殺は健康問題、家族問題に起因するところが大きい。経済的基盤の弱さ、自粛生活での孤立、家庭におけるケアワークの過大負担、様々な状況が相まって女性を追い込んでいる。

県は各健康福祉事務所で性と健康の相談センター事業も行っているが、十分な相談窓口となり得ているのでしょうか。この度、県は女性を中心とした働き盛り世代の自殺対策としてゲートキーパーの養成や声かけツールの作成も実施されようとしており評価しますが、そこに至るまでのライフステージに沿った包括的な健康支援が必要と考えます。来月3月1日〜8日は厚労省が定めた女性の健康週間。国民運動として展開しているというにはまだまだ支援や意識変革が求められると思いますが県としてどう取り組むか。

4 児童福祉法改正に伴う市町の一体的な相談体制への支援と県のこども家庭センターの今後について

児童福祉法の改正で令和6年4月から市町が子育て世帯に対する包括的な支援機関を設置することが努力義務化された。これは子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターの設立の意義や機能は維持した上で組織を見直し、妊産婦、子育て世帯、子どもへ一体的に相談支援を行う機能を有する機関である。市町で新たに設置されるこども家庭センターという名称が県の児童相談所の名称と同じであることから、県、市町で名称変更の検討もなされていると聞く。この相談支援の一体化であるが母子保健法に基づき妊娠中や乳幼児期のサポートを担ってきた子育て世代包括支援センターは県内全市町で設置済であるが、児童福祉法に基づき虐待や要保護児童などの課題に対応する子ども家庭総合支援拠点は未設置の市町もある。この2機関の機能を有する形で今後市町が支援を進めていくのは相当な準備が必要。努力義務ということでどれだけの市町が令和6年4月にスタートを切れるのか。県の支援は欠かせない。なるべく多くの市町が適切な事業実施ができるようどのように取り組んでいくのか。

また、長年の課題であった一時保護所の増設については川西こども家庭センターに46人定員で整備されることになった。2年後の令和7年4月に開設予定と聞いているが、施設環境も含めた一時保護の課題、令和2年度には全国ワーストの一時保護委託割合などの現状を考えると、開設までの間どのようにきめ細かく一人一人の子どもに対応できるか安心できる状況ではない。

決算委員会でも申し上げたが、市町も含めて新たな仕組みで子どもと家庭の支援を最大化、最適化できるよう、県のこども家庭センターそのもののあり方、建替え移転の検討も早急に進める必要があると考える。

そこで、市町の一体的な相談体制の強化について令和6年4月に向けどうように取り組んでいくのか、また中期的な県のこども家庭センターのあり方についての考えを伺う。