議会の動き

竹内英明議員が一般質問を実施

第304回定例会(2月)一般質問
2010年2月24日(水)

1 県立高校の次世代リーダー育成特色校の創設について

 県立高校の次世代リーダー育成特色校の創設について井戸知事に提言させていただきたいと思います。知事が選挙前に出された「私の政策」という公約集の中にも、「授業の充実による学力の向上をめざすことや単位制高校の拡充、複数志願選抜、人口減少や帰国子女向けの中高一貫教育等」の取り組みに触れられています。近年、ほかの自治体の取り組みでも公立高校の改革が注目されています。そうした取り組みの一つが、東京都の都立高校改革であります。
 「都立復権」という言葉でよく知られていますが、その中でも特に話題となったのが「都立日比谷高校」の復活です。日比谷高校といえば、明治11年に旧制東京府第一中として創立された、130年を超える歴史のある名門で、東大合格者が多かったことでも有名ですが、昭和30年代は毎年100人を超え、 ピークの39年には193人と断トツの全国1位でした。ちなみにその193人の1人がそこにおられる井戸敏三知事であります。
 しかし、井戸知事が卒業してから3年後、昭和42年に都立高校に転機が訪れます。都立高の生徒の学力が平均化するように、生徒を振り分ける「学校群制度」という制度が導入され、以降、日比谷は長い低迷期に入ります。東大合格者上位校から姿を消し、平成5年には何と1人にまで落ち込み、名門解体とも言われました。
 同じころ兵庫県でも高校入試改革が行われました。昭和43年、試験よりも「内申書」を重視する入試制度の導入、広域人事等の施策です。「大正から昭和にかけての上級学校への進学状況は全国有数で」、東京の日比谷高校・旧制東京府立一中と並び称されていたのが本県の旧制神戸一中、現在の県立神戸高校ですが、同校の「110周年記念誌」によりますと、「昭和53(1978)年度末、県教委から広域人事計画が実施され、現場に混乱がもたらされた」。さらに翌年、「異動は一層の厳しさを増し、職員組織や教育計画に大きな影響を及ぼし始めた。56~58年の3年間に延べ29人が転退職し40%強が3年間に代わった。伝統の継承・発展に大きな困難を生じることになった。結果として、私学の人気が高まるという皮肉な結果になったと言います。
 こうした流れは全国的なものでありましたが、その後、少しずつ緩和されていきます。そして、再び大きな転機が訪れるのが、平成11年に就任した東京都の石原慎太郎知事による都立高校の改革でした。その最大の特徴は 「進学指導重点校」制度の導入でありますが、日比谷高校は平成13年に進学指導重点校の指定を受けると授業時間の増加、放課後や土曜の補習、カリキュラムの見直しのほか、数値目標の設定と教職員による目標の共有化により、進学実績の向上をはかるということを明確に打ち出しました。また、都教育委員会も、熱意ある教員や進学指導に実績のある教員を同校に配置して支援したと言います。
 今、日比谷高校の公式ホームページに校長名の「学校経営計画」が公表されていますが、まず、「目指す学校像」として「二十一世紀を逞しく切り拓くリーダーを育てる」ことをあげ、さらに「『進学指導重点校』として、意欲と活力に満ち、使命感のある教職員の一致協力した学校運営に努め、都立高校を代表する骨太で重厚な進学校としての充実を図る」と書かれています。次世代のリーダーを育てるため、進学環境を整えるという特色の都立高校になることを宣言しておられるのです。
 また、この計画の中には、進学目標について「各学年の生徒数320人全体の指標として、目安とする数値」を掲げており、例えば、難関国立大学及び国公立医学部医学科35人以上、難関3私立大学190人以上などとなっています。教職員、都教委など様々な関係者の努力もあって、私学の中高一貫校の進学実績が拡大する中でも、日比谷高校の東大合格者は、平成20年に13人、21年に16人と平成5年には1人にまで落ち込んだ状況から回復してきています。
 一方、本県はどうでしょうか。昨年の東大合格者でみてみると、私立高校が優位にあり、灘の103人以下、甲陽学院20人、白陵19人をはじめ私学合計155人。県立高校は、長田の9人、神戸5人、加古川東3人など、県立高校合計で26人です。近年この傾向に大きな変化はありません。
 それでは東京以外の他府県の公立高校はどうなのでしょうか。昨年の東大入試の全国の都道府県立高校の上位をみると、トップの愛知県立岡崎高校は42人、埼玉県立浦和高校が36人、栃木県立宇都宮高校が27人、千葉県立千葉高校が27人。今挙げた高校は1校だけで兵庫の県立全143高校の合格者26人よりも多いのです。
 このうち浦和高校の公式HPには、自らを「埼玉県で最も歴史ある県下随一の進学校」とし、「社会で活躍できる人材の育成」と「高校生として当面の目標は、人生の重要なステップである大学受験になります。浦和高校では「第一志望に現役で合格する」ことを目標に、「授業で勝負」を基本に様々な学習・進路指導プログラムに取り組んでいます。」と記載されています。
 関東だけではありません。大阪府でも平成23年度から北野高校など府立高校10校が進学指導特色校としてスタートします。指定校に進学指導の専門学科を新設し、学区制を見直した上で、定員の半数は学区を越えて生徒を集める計画で、これまで府立高校から約1000人だった難関国立大等への合格者の6割増を目指すということです。
 平成19年の兵庫県教育委員会「県立高等学校 長期構想検討委員会」報告の中に、「普通科の特色化をさらに進めること」も課題として掲げられていました。本県には、普通科単位制、理数科、環境防災科のほか、農業、工業、商業といった職業科の特色校はありましたが、次世代リーダーの育成や進学指導を特色とする学校はありません。私は、こうした取り組みをエリート主義などと否定的にとらえるのではなく、普通科の特色のひとつとして取り組むべきだと思うのであります。
 わが国には資源がありません。戦後の荒廃から世界第2位の経済大国として繁栄してこられたのは先人たちの弛まぬ努力と国民の勤勉性の賜です。いま、中国をはじめとする新興国の台頭がすぐそこまで迫っています。優秀な人材を育てることをためらうべきではありません。高校無償化もあり、県立高校の人気が少し高まるでしょう。この国を背負って立つんだというぐらいの人材を育てようという学校、そのために進学指導にもしっかり対応する、経済的に恵まれなくとも、塾や予備校に行かなくても、あの高校に入ればしっかりした授業が受けられる、というぐらいの県立高校をつくってほしいと思います。
 東京、大阪ともに知事による政治主導の取り組みであります。その背景に、教育行政の最終責任はやはり選挙で選ばれた政治家が負うという時代を迎えつつあるとも言えます。他府県に負けない県立高校、次世代リーダー育成校の創設について、教育長には申し訳ありませんが、政治家 井戸知事の考えをお伺いします。

2 診療報酬改定が県立病院の経営に与える影響と評価について

 政権交代の影響を色濃く受けた平成22年度からの診療報酬の改定ございますが、診療報酬の改定により10年振りに医療費がネットでプラス改定されました。その中でも、重点課題として「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」「病院勤務医の負担軽減」が掲げられました。県立病院の収益にも影響があると見込まれますが、入院は一定上がるものの、薬価などは下がるわけであります。収支に与える金額的な影響はどうなのか。また、病院事業管理者という病院経営者の観点から、今回の診療報酬改定をどう評価するか、あわせてお伺いします。

3 姫路地域への救命救急センターの整備について

 これまで、姫路地域への地域救命救急センターの設置と姫路循環器病センターの充実を求めてきました。しかし、先週2月16日の神戸新聞に、平成21年の姫路市の救急出動件数が過去最高の2万2827件を記録したという報道がありました。また、そのうち病院から5回以上搬送を断られた例が529件、中には18の病院に断られ、病院到着まで約70分かかった例もあったということです。
平成19年12月に姫路市で救急搬送された方が、多くの病院に受け入れられず、市外の病院に搬送される途中で亡くなられるという、大変痛ましい事故がありましたが、今回の報道をみると、状況はあまり変わっていないと感じます。
 姫路市消防局の救急担当者からは、昨年まで姫路地域では対応する病院がなかった多発外傷等に対応できる県立加古川医療センターがオープンし少し安心しているものの、本来の3次救急である「姫路循環器病センター」が麻酔科医の不足で脳神経疾患の患者への対応力が低下したままであることから、充実を要望されました。
 私は、改めて、地域救命救急センターの早期設置等を求めたいと思いますが、施設整備にあたっては財政措置や市立病院のない自治体の財政負担を含め解決すべき課題も多くあります。この際、知事自ら動く時期に来たのではないでしょうか。整備への決意を聞かせていただきたいと思います。

4 重症心身障害児(者)短期入所設置支援モデル事業について

 重症心身障害児(者)とは、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複し、かつ18歳未満にその状態となった方のことでありますが、県内の重症心身障害児(者)は1,500から1,600人とされ、人工呼吸器の使用や気管切開など24時間の介護や医療行為が必要な方も多いということです。ただ、全員の方が施設に入っているのではなく、症状が重くても在宅のまま保護者の方と一緒に生活している方も700から800人おられます。
 特に、在宅の場合、保護者の病気や用事などの理由で家庭での介護が一時的に困難になった場合、どこかの施設で受け入れてもらうショートステイと呼ばれる短期入所サービスが必要となってきますが、入所可能な重症心身障害児施設が県内では神戸・阪神・北播磨にしかありません。地域的な偏りが著しく、実際に姫路などで子供さんを抱える保護者の方の集まりに参加させていただいたときにも、中播磨・西播磨圏域に重症心身障害児施設の整備を求める切実な要望をいただきました。
 しかし、県内既存施設の現在の入所状況から、新たな施設整備は難しく、新たな対策が求められていましたが、新年度に予算化されたのが、「重症心身障害児(者)短期入所設置支援モデル事業」であります。これは、短期入所施設のない中播磨など6圏域で、介護老人保健施設、老健を短期入所モデル施設に位置づけ、老健施設の看護師や介護士ら職員に対する研修を実施する事業ということです。
 障がいをもつ子どもをかかえると、長い年月の間に心身ともに疲れはてて余裕がなくなり、子どもとうまく接することが出来なくなってしまうというときもあり、たまに友達と息抜きをしたり旅行に行ったりして心身をリフレッシュすることなどがレスバイト・ケアという社会的援助であり、自宅から近いところでそうした施設を確保することが非常に大切です。
 これまで、短期入所について保護者の方からどんな声が寄せられていたのか、また、どのような基準で施設を指定するのか。医療行為が必要な方も多いということで、老健の受け入れ体制についても十分な配慮が必要だと思いますが、実際に預けられるようになる時期も含め、ご答弁をいただきたいと思います。

5 県公社等の外郭団体の委託と再委託について

 知事は、その選挙公約で「県行政の実施機関の役割を担ってきた公社等外郭団体について、統廃合や経営改善、県の財政支出・人的支援の見直しを進めます」と宣言されております。また、昨年9月に県公社等経営評価委員会から知事宛に提出された報告書でも、土地開発公社の廃止や県道路公社の存廃の検討など多くの外郭団体に厳しい意見が出されました。
 また、国においても政権交代で実施された「事業仕分け」の第2弾が予算成立後に予定されていますが、独立行政法人や公益法人で国からの委託事業をそのまま別の団体等に再委託する「中抜き」と呼ばれる構造等について検証されることになると聞いております。中抜きや丸投げをしているのなら、最初から県が最終的な委託先である民間等に委託すれば、中間的なコストがかからなくなり、委託費用が削減されるわけです。
 そこで、お伺いしますが、県の密接な公社等35団体が県から受諾した事業の総額とその随意契約の比率、別の団体等に再委託した金額、再委託率を平成20年度決算で教えてください。

6 県財政について

 本県財政の特徴は、基金が少なく、その積み立て不足が実質公債費比率を上昇させ、一方の県債残高は多く、これは将来負担比率を高くするということは何度も指摘してきました。県債の多くは金融機関が引き受けており、当然金利がかかっています。県債残高をみてみますと、22年度末見込で4兆1226億円とされていますが、これは一般会計の金額であります。本県の場合、他会計の資金を県債管理基金に集約し、県債償還等の資金を一体管理していることもあり、一般会計だけでなく特別会計と公営企業会計の全会計をあわせてみておかなければなりません。特別会計5213億円、公営企業会計2770億を含む県債総残高は4兆9209億円です。
 国では、毎年国債発行計画が公表され、国債残高のほか、その利払い費がいくらになるのかということが示され、大きく報道されるなど、その財政状況が国民に示されるのに対し、本県では県債残高こそホームページ等でもわかるものの、その利子がいくらになっているのかは中々わかりません。そこでお伺いします。県債残高4兆9209億円にかかる年間の支払い利子はいくらなのか。又、一方の貯金に当たる県債管理基金など全基金残高2381億円にかかる受取り利子はいくらなのか。お答え下さい。
 また、昨年の決算特別委員会で県債管理基金の中に現金化が難しい美術品などが一部含まれていることを指摘しました。そうした美術品の一部の現金化について、1億9660万円で一般会計に買い戻す補正予算も組まれていますが、この財源としても新たに県債を発行することとなっています。いつでも現金化できるので実質公債費比率の算定に美術品が入っていても問題がないとするなら、現金(一般財源)で買い戻すのが矜持、見識ではないでしょうか。既に基金で所有している美術品を買うために起債・借金する。財政規律に対する姿勢として疑問を感じます。これは指摘にとどめておきます。
 また、補正予算の提案理由説明の中に、「土地開発公社の資金を受託し、県基金として活用する」という話がありました。調べますと、土地開発公社が「県立尼崎の森中央緑地用地」の買い戻しで得た資金108億円のうち100億円を県に預け、県はそれを県債管理基金に積み立てるということです。
 「受託」という表現は曖昧でわかりにくいのですが、公社が県に運用を任せるということです。県の基金管理特別会計の予算をみますと、歳入に「兵庫県土地開発公社運用受託金」として100億円、歳出に、県債管理基金積立金として100億円が記載されています。過去に他の公社の保有する余裕資金等を県に集約していますが、今回過去の資金集約や先に指摘した美術品等とも違うのは、これは県のお金でなく、公社にいずれ返済しなければならないお金ということです。
 土地開発公社が放棄すれば別ですが、公社は20年度末で有利子負債が900億円にものぼる一方、資産については、公有土地754億円など土地こそ多く保有するものの、財政健全化法の「将来負担比率」の算定にあたっては、県の追加負担見込みが205億円と資本を上回る含み損を抱え、将来債務超過となる可能性が明らかになっています。清算時に追加負担こそあれ、100億円を県が受け取ることはありえないのです。
 この100億円が実質公債費比率の算定に含まれてしまうと、数値だけ改善されたように見えますが、県財政の実態は変わらないというのでは、県民に誤解を与えます。少なくとも21年度決算ではそうした数値の算定から除外したほうがいいと思いますので、念のため要望しておきます。
新行革プランの財政フレームでは、22年度見込での県債管理基金について、本来5280億円を積み立てておくべきところ、1699億円とその積立不足率が67.8%に達しています。一方、新たな起債については、起債の利率が低いとはいえ、積極的に県債を発行しています。県債管理基金の積立不足を解消することに消極的なのも、満期一括償還の県債償還にあたっては途中で積み立てておく必要はなく、総務省や地方財政健全化法の考えのように基金を積み立てていると「宝の持ち腐れ」だという発想なのではないかと思います。
 起債は現金というリアルマネーを生みますが、一方で起債は利子を払わなければなりませんし、金利が上昇すれば利子も高くなります。また、基金については基本は現金でルールに則って積んでいくただきたい。そうでなければ、将来負担比率の全国ワーストの360.1%ような状態がいつまでも続いていきます。本県の場合、他会計や公社等の資金の相互関係も強く複雑で、将来負担比率がその財政の実態をよくあらわしていると思います。これを放置すれば、間違いなく次世代の負担となり、我々世代の議員がそうした姿勢を唯々諾々と受け入れていくわけにはいきません。最後に、将来負担比率の改善目標についてお伺いします。