第317回兵庫県議会 一般質問(平成25年2月28日)
質 問 者:小池ひろのり 議員
発言方式:分割方式
1.県立大学環境防災学部・学科の創設について
来年は、阪神・淡路大震災が発生して20年目になります。
私は、20年という節目に向けて、被災地兵庫県として相応しい後世に残る事業を行うべきだと考えています。
私たちは18年前の阪神・淡路大震災の教訓として、「防災は人」であることを学びました。いかに多くの資材を投入して高価な設備やシステムを整備しても、結局はそれを運用するのは人であり、また、危機事態に直面した時、適切に対処する人の育成こそ自然災害や危機対処の原点であるとの認識を新たにしました。
兵庫県では11年前に、全国に先駆けて県立舞子高校が環境防災科を設置しました。以来、同校は、県下だけでなく全国の高校での防災教育の先導的役割を果たしております。防災教育を生徒の“生きる力”を育む教育として位置付け、単に知識を吸収するだけではなく、学んだ知識や技術を使う場として捉えています。知識として留まるのではなく、将来的に“やる気・夢を持った生徒”を育て、実践に結び付けることを目指しています。
さらに、神戸の中学校でも生徒会を中心に「つながろう仙台・神戸プロジェクト」を立ち上げ、防災や復興支援を考える取り組みを行っています。このように兵庫県下の中学・高校が防災・減災に関して全国をリードする役割を果たしていることを誇りとさえ感じます。
一方、大学では、一昨年8月に、県立大学に防災教育センターが誕生し、本年度からは防災の専門教育をユニット制で、全学生が履修出来るようになりました。また、宮城大学と連携して、産業・医療福祉・まちづくりの分野で、地域再生の原動力となるような人材育成を目指していると伺っています。兵庫の防災教育が一歩一歩前進していることを評価し、関係者のご尽力に改めて敬意を表するものです。
しかし、残念ながら未だ大学に環境防災学部・学科はなく、本格的に防災教育を取り組む“場”がありません。だからこそ私は、永年、県立大学環境防災学部・学科の創設を訴え続けているのです。
私は、客員教授として永年、大学に籍を置いてきました。従って、大学の自助努力での学部・学科の新設が、大学にとって非常に難しい事業であることも理解しています。学部・学科の新設は、既存の学部・学科の削減に繋がり、よほどのことでない限り、大学内の合意が得られないからであります。この問題を大学自治だけに任せていては、なかなか現実化するものではありません。設置者である県が、大所高所から判断し、推進することが必要だと考えます。
そこで、近い将来、かなり高い確率で発生すると言われている次なる大地震・津波災害などに備えると共に、阪神・淡路大震災20年の節目に、兵庫の防災教育の拠点として、県立大学に環境防災学部・学科の創設を強く求めますが、当局のお考えをお聞かせください。
2.神戸空港の活性化による兵庫の発展について
昨年7月に関西国際空港と大阪国際空港が経営統合され、一体運営されるようになりました。さらに、関西全体の航空需要をより一層高め、利便性向上と関西経済の発展のためには、神戸空港を含めた3空港、それぞれの特色を最大限に活用し、一体運用していかなければなりません。
そこで、立地条件にも恵まれ、更なる需要が見込める神戸空港の活性化を目指すべきと考えます。
神戸空港の近くには、理化学研究所の「京」コンピュータやSACLAなどの世界有数の科学技術基盤の利活用によって、我が国のものづくり技術の高度化、難病などの薬品開発、地震・津波災害のシミュレーションなどを研究する人材育成と教育の拠点があります。また、隣のポートアイランドには、神戸学院大学・兵庫医療大学・神戸夙川学院大学の他に、県立大学大学院応用情報科学研究科、甲南大学フロンティアサイエンス学部、神戸大学統合研究拠点や神戸低侵襲がん医療センター、神戸国際フロンティアメディカルセンターなども集積しています。
さらに県立こども病院のポーアイへの移転や、多くの関連企業の進出もあり、高度専門医療機関の整備と共に、産学官挙げて先進医療拠点づくり、人材育成拠点づくりで、世界の先端医療特区になりつつあります。このような環境に恵まれた神戸空港をフル活用し、是非兵庫の発展と関西の復興に結び付けて行きたいと考えます。
そのためには、昨年7月に兵庫県・神戸市・神戸商工会議所が連名で出した「神戸空港の機能充実に関する要望」①運用時間の延長 ②発着枠の拡大 ③国際チャーター便運航規制の緩和などを早急に実現する必要があります。
現在の運用時間は、7時から22時までで、平成23年度の全体搭乗率は70%ですが、早朝・夜間の羽田便の搭乗率は、開港以来それぞれ73%、84%と利用度が高く、早朝・夜間の時間帯の首都圏と関西圏を結ぶ主要路線としての神戸空港の価値があります。また新たなビジネスと観光ニーズで更なる需要も見込まれます。是非、運用時間の延長と1日30便が上限という発着枠の拡大を求めたいと思います。
さらに国際チャーター便の規制緩和は、観光の誘客に結びつき、国際観光都市・神戸を元気づけるものであり、確実に兵庫の発展を導きます。また国際会議や姉妹都市との交流、医療の国際化の促進などのためにも規制緩和は不可欠であると考えます。
このような観点から、県・市協調して国に対して神戸空港の規制緩和などを積極的に働きかけ、県としても神戸空港を核とした活性化を全力で推進し、兵庫の発展に結び付けるべきと考えますが、当局のお考えを伺います。
3.がん対策推進について
(1)がん検診受診率向上への取り組みについて
がんは、日本で1981年から死因の第1位であり、2011年には年間約36万人が亡くなり、生涯のうちに約2人に1人が、がんにかかると推計されています。こうしたことから、依然としてがんは、国民の生命と健康にとって重大な問題です。本県でも、がん対策推進計画が策定され、がん予防と早期発見の推進、医療体制の充実が謳われています。そして、積極的にがん対策が取り組まれることになっています。
しかし、残念ながら本県の取り組みで、必ずしも効果が出ているとは言えない現状にあると思っています。例えば、がんの早期発見の為には、がん検診が必要です。兵庫のがん検診受診率は、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮がんのすべてで、全国平均より3~5ポイント低く、子宮がんにおいては、20歳代で12.9%と大変低いのが現状です。
推進計画では、がん検診受診率を50%に上げ、20歳代を2倍の26%にするとなっていますが、どのようにして上げるのかが重要です。
そこで、がん対策推進のために、検診受診率を具体的にどのように高めていくのかをお伺いします。
(2)小児がん対策の推進について
小児についても、がんは病死原因の第1位で、死亡原因の約7%を占めます。また、乳幼児から思春期・若年成人では、発生しやすいがんの種類も異なり、脳・脊髄腫瘍、神経芽細胞腫、軟部腫瘍を初めとした固形がんや白血病などの血液がんなど、希少で多種多様ながんがあります。
小児がんの年間患者数は、全国で2,000から2,500人と言われ、小児がんを扱う医療機関は、全国で約200と推定されます。そして、医療機関によっては患者数の少ない所もあり、専門性の高い医療が受けられていないとの懸念があります。
また、成長発達期の治療で、治癒した後も発育・発達障害、内分泌障害、臓器障害、性腺障害、高次脳機能障害、二次がんなどの小児特有の合併症の問題があります。長期にわたって日常生活や就学・就労に支障をきたすこともあり、患者の教育や患者を支える家族に向けた長期的な支援や配慮が必要となります。さらに、治療や医療機関に関する情報提供、再発への不安などに対処する相談支援体制や、セカンドオピニオンなどの充実などが求められています。
昨年6月に閣議決定された国の「がん対策推進基本計画」では、小児がん対策を重点的に取り組むべき課題とし、医療・人材育成・相談体制の整備が新たな目標に掲げられました。本県に於きましても、小児がんにおける課題に取り組み、小児がん患者や小児がん経験者が、安心して暮らせる社会を構築する必要があると考えます。
そこで、次期がん対策推進計画では、小児がん対策をどのように位置づけて取り組もうとされているのか、当局のご所見を伺います。
4.県立(知的障害)特別支援学校の新設について
現在、少子高齢化が進んでいます。教育現場においても、児童生徒数が減少し、学校の統廃合が取りざたされております。
しかし、知的障害の特別支援学校高等部への進学希望者は、逆に増えております。親が、障害のある子供に「生きていく力をつけてやりたい」という思いもあり、高等部への進学希望者が増えてきていると聞いております。
県では、阪神・東播磨地域で立派な特別支援学校を新設し、姫路地域でも新設に向けて整備を進めるなど、順次特別支援学校の充実に向け努力していることを、私は大いに評価をしております。しかし、神戸市内の知的障害の児童生徒数は、平成18年から7年間で約1.5倍に増え、今後も進学希望者は増え続け、神戸市教委の推計によると、現在よりも500人近く増え、大変な状況になっています。
ただでさえ狭い敷地の既存の学校で対応してきたため、運動場に仮設校舎を建て、特別教室を不足する教室に転用して応急避難的な対応でしのいでいます。継ぎ足し、継ぎ足しのプレハブの仮校舎で、エレベーターもなければトイレさえ不十分な状態の学校もあります。しかし、それももう限界に来ています。
兵庫県では、すでに三田市と伊丹市に職業科の県立高等特別支援学校を運営しており、就労支援のノウハウも蓄積されています。そこで、卒業後には自立できる職業訓練的な県立高等特別支援学校を神戸市内に創設し、一人一人の生徒の適性に応じた就労ができる環境整備を進めて頂きたいと思います。
札幌や横浜、さいたま、新潟、堺、岡山などの政令指定都市には、県立の高等部の特別支援学校があります。同じ政令指定都市の神戸でも、県が積極的に取り組んでも何ら問題がある訳ではありません。
このことは、神戸市からも強い要請があり、神戸市内選出の県会議員団で作る“神戸会”にも重要施策に加えて頂きました。
これまでの協議の経緯や県と政令都市との役割分担など課題は多いとは思いますが、是非、神戸市と連携し、高等特別支援学校の新設も含めた中長期的な推進計画の策定など、特別支援教育の充実に向けて取り組む必要があると思いますが、県当局のお考えをお尋ねします。
5.再犯率低減に向けた対策について
昨年6月、大阪で通り魔殺傷事件が発生しました。犯人は以前にも刑事事件を起こしており、刑務所出所間もない再犯事件でした。出所後、仕事がなく、住む家もなく、生活苦から自暴自棄に陥り、「誰でもよいから襲いたかった」と供述しています。これでは、被害者及びその家族はたまったものではありません。被害者のご冥福をお祈り申し上げますと共に、再犯防止に向け早急な対策を講じなければならないと考えます。
法務省の犯罪白書によると、一般刑法犯により検挙された者のうち再犯者は、平成9年から10年間増加し続け、平成19年から若干減少しているものの、23年は133,724人で、再犯者率は43.8%と大変高い数値を示しています。また、入所受刑者の再入者率も16年より毎年上昇し続け、23年は57.4%と非常に高いものとなっています。
さらに、入所度数が多いほど累積再入率は高く、ほぼ半数を超える者が5年以内に再入所しており、入所度数を重ねるに従って更生改善の困難さが増しているという現状です。私は、これらの状況にしっかり着目し、対策を講じなければ、犯罪を抑え安全・安心な社会を迎えることは出来ないと思っています。
一方、一人の犯罪者を検挙し、裁判にかけ、刑務所での収監など刑が満期になるまでにかける税金は膨大なものです。犯罪を起こさせない環境づくりに向けた施策が、費用対効果の面でも重要な課題であると認識されるようになってきており、特に異常に高い再犯率の抑制が、今最大の課題であると言われています。
しかし、現在、刑の満期と同時に法務省などの支援は殆どなくなり、現実には就労できずに生活さえ営むことが困難な状態の者が少なくありません。就労に関しては、国のハローワーク、生活保護などの福祉支援は、市町の福祉事務所、犯罪が再び起これば警察と各機関がバラバラで対応しており、大変効率も悪い状態です。
私は、出所者の就労支援や福祉支援について、関係機関が調整・連携し、地域社会で立ち直りを支援する仕組みを作ることが重要なことだと考えます。
大阪府では、全国初の“子供を性犯罪から守る条例”を制定しました。犯罪者は刑期満了から5年以内に住所を定め、性犯罪者が自らの住所を届け出ることを義務付け、相談などの社会復帰支援を受けるという、従来の犯罪を覆い隠す傾向から発想の転換を図り、社会復帰支援対象者と面談・相談に応じ、積極的に再犯防止策を打ち出しています。
そこで、兵庫県に於きましても、再犯率を低減し、安全・安心な社会にするために、例えば、高齢者や障害のある出所者への支援を地域生活定着支援センターが行っているように、県がもっと積極的に関係機関との調整や連携を行い、更なる施策が必要であると考えますが、当局のお考えをお伺いします。