概要 代表・一般質問 議案に対する態度と考え方
代表質問 竹内 英明 議員
一般質問 栗山 雅史 議員 ・ 石井健一郎 議員 ・ 掛水すみえ 議員
代表質問
(竹内 英明 議員)[発言方式:一問一答]
1 国と地方のあり方について
(1)国の出先機関の特定広域連合への移管について
(2)社会保障と税の一体改革が本県財政に与える影響と消費税について
(3)社会福祉法人に関する事務の受託について
2 兵庫県財政の今後について
(1)平成25年度に起債許可団体から協議団体へ移行する可能性について
(2)新たな「将来負担比率」の目標設定について
3 教育の機会均等について
4 観光振興に係る大河ドラマ平清盛の効果と「軍師官兵衛」(黒田官兵衛)への期待について
5 議会改革の行政としての受けとめについて
質問全文
第315回兵庫県議会 代表質問(平成24年12月7日)
質 問 者:竹内 英明 議員
発言方式:一問一答
1 国と地方のあり方について
(1)国の出先機関の特定広域連合への移管について
11月21日に公表された自民党政権公約(案)の中に「(民主党が進める)国の出先機関の特定広域連合への移管は断固反対」「道州制基本法を早期に制定し、その後、5年以内に道州制の導入を目指します」と井戸知事の目指す方向性と違う政策が掲げられました。
後段の道州制はともかく、前段の国の出先機関改革については、関西広域連合全体で強力に推進してきたものであり、特定広域連合への移管という具体策にようやくたどり着き、国会提出を控えていた政策であります。
京都府、滋賀県の両知事をはじめ、大阪市の市長らも強く反発していますが、公党の公約であり、特に『断固反対』という表現は、かなり強い否定であります。
関西広域連合として、11月27日に自由民主党総裁に対して
(以下、当日判断)「いかなる政党であろうと地方分権を進める見地に立てば、これは中央集権的行政に固執する勢力を容認することとなり、ようやく一歩を踏み出そうとしている分権改革の流れを断ち切るだけでなく、中央集権の強化につながり、極めて遺憾である。
よって、政権公約の当該部分を撤回するとともに、国の出先機関の事務・権限の関西広域連合への移管を積極的に進められるよう強く求める」という(以上)
撤回の申し入れをされましたが、報道によりますと、対応した甘利明政調会長は修正に難色を示したとのことであります。
その後、公表された総合政策集では「民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管には反対し、地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理します。」と「断固反対」が「反対」に改められたようです。
しかし、いずれにしろ反対です。知事はこの「国の出先機関の特定広域連合への移管」という政策を「改革の試金石」として位置づけてこられました。このことに対して改めてどのように考えておられるのかお伺いします。
(2)社会保障と税の一体改革が本県財政に与える影響と消費税について
社会保障と税の一体改革法が成立しました。誰しも増税を喜ぶ人はいません。しかし、先月発表された国の983兆円という過去最高の借金や先進国の中で最も少子高齢化が進むという人口構成等を考えれば、事業仕分け等による既存事業の歳出の見直しだけでは財源は足りず、いずれ何らかの形で国民の皆さんに負担のお願いをしなければ財政はもたなかったということも事実でしょう。
一方、この間、社会保障の財源となる消費税について、国と地方の配分、つまり地方消費税の比率や地方交付税の割合などについて、法制化された「国と地方の協議の場」等を通じて、その配分を地方に求める要請等がなされてきました。結果として、全体の消費税率が10%となる平成28年度以降は、地方消費税分が現在の1%分から2.2%と倍増、交付税部分が現在1.18%の配分が1.52%と地方への配分は増加することになりました。
地方消費税は現行の1%配分でも県分は年間約500億円(半額を市町交付済)ですが、消費税率が10%となるとこれが2.2倍になり、1100 億円と年600億の増となります。
一方で、法人関係税が消費低迷により落ち込むことも考えられます。また、本県の場合、地方交付税の交付団体であり、臨時財政対策債も発行しているため、地方消費税が増加しても、その全額がそのまま増収となるものではありませんし、岡山県などの自治体は既に「地方消費税引上げに伴う増収に見合った地方一般財源総額の確保を図ること」を国に対して要望していますが、地方財政計画全体がどうなるかを考慮しなければ、その影響を見極めるのは難しい面があります。
富山県の試算では、交付団体全体では地方消費税は1.2%分1兆3100億円増収となりますが、臨時財政対策債が5,300億円の減少となることで差し引き7800億円の歳入増となるものの、歳出の社会保障関係費の増加を同額の7800億円と見込み、不交付団体にとっては地方消費税の増税は全て社会保障関係費の増で吸収されてしまうとの試算もあります。
いずれにしろ、予定どおり消費税の増税等が実施されるとすれば、本県の歳入増となることはほぼ間違いないと思いますが、知事は、社会保障と税の一体改革に伴う消費税増税が本県財政に与える影響をどのように考えておられるのかお伺いします。
また、消費税の全てを地方税とし、その一部を地方共有税として地方自治体に財政調整機能を含めて委ね、国の地方交付税制度を廃止するという選択肢もあります。財政状況は自治体間で大きく異なりますが、自治体同士の話し合いで消費税の配分を決定していくことがはたしてできるのか。私たちは地方交付税制度を評価し、その充実を求めてきたものですが、地方税制に詳しい知事は、地方共有税を導入し、財政調整権限を自治体に委ねて地方交付税制度を廃止することについてはどのような考えをお持ちでしょうか、併せてお伺いします。
(3)社会福祉法人に関する事務の受託について
第2次地域主権改革一括法の施行に伴い、都道府県から一般市に移譲される権限に「社会福祉法人の指導監督権限」があります。
10月11日付の神戸新聞を見て驚きました。「社会福祉法人の監査 市に権限移譲のはずが…逆戻り? 21市、県に事務委託」。専門人材を確保しにくい市の事情を考慮し、『県が提案した』とありました。
「社会福祉法人の指導監督権限」が市に移譲される一方、法人が運営する施設の指導監督権限は引き続き県が担うこととなっており、指導監督は法人・施設ともに一元的に担うことが望ましいことなどから、市が人的体制を整備するまでの間、自ら実施する4市を除き21市については、引き続き県が事務委託を受ける方向という説明を受けました。
市がこれまで担当していなかった法人の指導監督という事務で経験を積んで行く中で、いずれ施設についての権限も移譲していくと考えるならば、国のこの措置は理解できますし、県の立場に立てば、指導監督は法人・施設ともに一元的に担うことが効率的だと考えること、これも理解できます。卵が先か鶏が先かのような話です。しかし、市によっては仕事が増えるだけで事務の移譲は不要と考えているところもあります。これでは地方分権は進みません。
市がやりたくないからといって県が受け続ければ、「法人監督すら受けられない、できない体制の市がある」という国側の評価になり、分権自体が難しいのではないかという結論になりかねません。県にとっては指導監督事務が市に移譲されれば、それまでその事務を担当してきた県職員の処遇も含めて考えなければなりません。簡単な話ではありませんが、そうした苦労の末、地域主権改革をやろうという方向性で兵庫県は国に対して強く権限移譲を求めてきたのではないのでしょうか。
本県では、平成11年に事務処理特例条例を制定するなど、これまでから市町への権限移譲に取り組み、24年度には「県から市町への権限移譲検討会議」を設置するなど、積極的に市町への権限移譲を進めようとしてきました。地域主権改革やこれまでの地方分権については、国の取り組みの成果というよりも、むしろこれまで国に対して権限移譲を強く働きかけてきた地方自治体及び地方議会が勝ち取った大きな成果であります。
今回、疑問に思うのは法律上、市が行うこととされた事務を県が引き続き担うことを「県が提案した」という点であります。先の出先機関改革の話でも触れましたが、こうした事例で地域主権改革の方向性に疑問符がうたれないように、法人の負担や行政効率の面を考慮しても、法律どおり市に委ねるべきが分権改革の方向性ではないでしょうか。現実に市側と合意していますので、今から変更できるものではありませんが、県の権限移譲の方向性について明確にしていただきたくお伺いします。
2 兵庫県財政の今後について
(1)平成 25年度に起債許可団体から協議団体へ移行する可能性について
平成23年度の決算に占める借金返済の割合を示した実質公債費比率(単年度)が16.6%となり1年間で19.8%から3.2ポイントも低下しました。今年2月に修正した第2次行革プランにおける財政フレームでは、23年度単年度の実質公債費比率を20.0%と想定していましたから、その比較では3.4ポイントも改善したことになります。その大きな要因は、県債管理基金の積立不足分のペナルティ分が22年度に5.1%あったものが4.3ポイントも下がって、0.8%となったことです。
実際の県債管理基金の積立不足は2782億円(不足率53.1%)と依然大きいままですが、ペナルティの算定は県債の元金償還額と前年度の積立不足率を掛けて計算することから、積立不足率が大きく改善されなくても、県債の元金償還額が大きく減少したことで、制度上、ペナルティも大きく改善されています。これは制度上の問題点であります。
23年度は県債の借換による借金を当初の財政フレームより前倒しすることで(平準化)、実質的な借金返済つまり償還を先送りした形となったため、ペナルティの算定において有利になったということです。
先の決算特別委員会の上野議員の総括質問に対して知事は「実質公債費比率などはかなり下回った水準で決算をうつことができました 」と答弁されていましたが、全国の都道府県間の位置でも制度スタート時の全国ワースト2から4位となっています。
また、平成23年度から25年度までの3カ年でみますと借換債の平準化によって当初比約1650億円の県債償還の減少と1206億円(486+720)の基金増額が見込まれています。今年3月に議決した最新の財政フレーム上25年度の実質公債費比率は20.8%と見込んでいますが、フレームの歳入・歳出見込みを前提に試算すれば、24・25年度も23年度同様、現在の財政フレームよりかなり低くなることが見込まれることから、3カ年平均で18%を切るのではないでしょうか。
実質公債費比率が18%を切ると起債についての総務大臣の許可団体ではなくなるということになります。平成25年度には実質公債費比率が18%未満になり、起債許可団体から協議団体へ移行するという見込みについてお伺いします。
(2)新たな「将来負担比率」の目標設定について
しかし、一方で、将来世代が標準財政規模の何%を負担しなければならないという「将来負担比率」は、行革のスタートした平成19年度の決算時に361.7%でありましたが、23年度は351.7%でほとんど改善されておりません。
当面のフロー指標は改善されていますが、将来負担比率は全国ワーストを続けています。財政運営の目標として、震災影響を除く将来負担比率の目標設定はあるものの、震災分を含んだ全体の「将来負担比率」の目標設定がありません。しっかり将来世代への負担を減らすという点で震災の影響も含んだ「将来負担比率」の目標設定を新行革プランの総点検にあわせて導入すべきだと思いますがいかがでしょうか。
3 教育の機会均等について
学力の国際比較(PISA調査)における日本の学習到達度は、かつて国際的にトップクラスでありましたが、ゆとり教育などの影響もあって平成18年調査時までは低下傾向となっていました。国では、子どもたち一人ひとりに応じたきめ細かで質の高い学習指導を行うために、23年に、30年ぶりに40人学級を見直す法改正を実施し、段階的な少人数学級を実現するとともに(もちろん本県は国に先立ち独自に少人数教育を実施してきたことは皆さんご存知のとおりで高く評価するところです)、ゆとり教育を見直し、授業の内容を質量ともに増加させた新学習指導要領を24年度から本格実施しています。
また、PISA調査では、特に学力の低位層が増加していることや親の所得と学力の相関も見られることもわかってきました。学校教育法等では「経済的理由により就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、市町村は、必要な援助を与えなければならない」とされ、具体にはノートや問題集などの学用品費、修学旅行費、給食費などを支給することとなっており、子どもに必要な教育の機会を与えることやその環境を整備することは公の責務となっています。
昨今、生活保護のことが話題になっていますが、県内の生活保護受給比率は高い自治体でも3%台ですが、県内の自治体の公立の小中児童生徒数のうち就学援助を受けている比率を調べると、23年5月1日現在で、尼崎市の26.9%、神戸市の23.5%、明石市の20.8%。3割近い比率の児童生徒が就学援助を受けている自治体があることに驚きました。
一方、比率の低い自治体ではたつの市3.4%、太子町4.5%、香美町の5.1%。県全体の平均は17.3%となっています。10年前の平成13年度の県平均が12.2%でありましたから5.1ポイント悪化しています。この数値は生活保護法の定める要保護者と準要保護者の世帯の子どもを合わせたものですが、準要保護者の就学援助については、市町による援助条件の差もあるようです。いずれにしましても親の収入等により受けられる教育環境の差を少しでも少なくしなければならないと考えます。
ところで、高校について欧米の先進諸国では日本の高校にあたる後期の中等教育の無償はある意味で当然であり、学びたい人が家庭の事情で学べないというのは不幸であります。OECDの調査では、日本のGDP国内総生産に占める公の小中高の学校教育費の割合は2.5%となっています。これは加盟32ヵ国中30位と最低レベルであります。この調査は平成20年のものなので、同22年度からスタートした「公立高校授業料無償化」「私立高等学校等就学支援金」、義務教育の少人数学級を含めると幾分かは改善されると思いますが、日本のような資源のない国が世界の中で生きていくとき、教育は国の要諦であります。
そこで、「県立高校授業料の無償化」ですが、これについて導入時から現場の声を含めてどのような評価をされているのでしょうか。また、授業料の無償化が導入されましたが、依然として経済的な事情により就学が困難な家庭もあると聞いています。こうした経済的な面も含めて、高等学校の教育の機会均等を確保するうえで、県としてどのような取り組みをされているかお伺いします。
4 観光振興に係る大河ドラマ平清盛の効果と『軍師官兵衛』(黒田官兵衛)への期待について
先ごろV6の岡田准一さん主演で平成26年の放送決定が決まったのはNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」です。軍師官兵衛というのは戦国時代の武将 黒田官兵衛のことであります。私の地元姫路市では姫路城生まれということで、今回の放送決定について大変大きなニュースとして取り上げられました。官兵衛は姫路に生まれ、後に織田信長や豊臣秀吉の家臣・軍師として、また、九州は福岡藩黒田家藩祖として活躍しますが、兵庫県との関わりは実は姫路だけではありません。
①官兵衛の妻・幸圓(こうえん)は加古川・志方城主・櫛橋氏の出身であり、
②西脇市の荘厳寺(しょうごんじ)では黒田家系図が見つかり官兵衛の出生地を西脇市黒田庄町とする説もでて、
③三木市では、三木城主 別所長治との戦い。兵糧攻めで有名。
④伊丹市の有岡城では、荒木村重に捕らえられ、1年以上牢に幽閉されたり、
⑤宍粟市では、初めて1万石の大名となったともいわれ、
⑥佐用町では、上月城攻めに際して、戦国時代を代表する秀吉のもうひとりの軍師 竹中半兵衛と共に戦い
⑦朝来市では日本のマチュピチュとも呼ばれる竹田城を攻め、生野銀山を支配下に置き、南は淡路島にわたり、
⑧南あわじ市の志知城を攻め、拠点としたり
⑨神戸では、有馬温泉へ赴き、湯治のため過ごしたとの記録が残っています。
ざっとあげただけでも県内の多くのところで活躍しています。
現在の大河ドラマ「平清盛」の放映に伴う兵庫県内経済への波及効果を昨年8月に日本銀行神戸支店が発表しましたが経済効果は150 億円。効果額の150億円は、県内総生産(2010年・名目)の0.08%、県内観光消費額(2009年度)の1.3%に相当するものとされていました。
そこで、「平清盛」の放映によって本県観光にどのような効果があったものと考えておられるのか、また、「軍師官兵衛」の放送決定後、ゆかりのある自治体、例えば姫路市では副市長を本部長とした13人体制の庁内プロジェクトチームを設置すると共に、姫路商工会議所、観光関連団体などと(仮称)ひめじ官兵衛プロジェクト推進協議会を設立する予定と聞いていますが、こうした取り組みに対する補助金等の支援をはじめ、あいたい兵庫キャンペーンなど、あらゆる機会を通じての積極的PRが必要と考えますが、県としてどのような支援策を考えているのか、併せてお伺いします。
5 議会改革の行政としての受けとめ
県議会では、昨年6月に「議会改革等調査検討委員会」を設置し、さらなる議会機能の充実・強化や活性化、県民に開かれた議会に向けた方策等の検討を重ねてきました。
その成果として、県民に対し、議会の基本理念を明らかにするとともに、議会の役割や運営原則、議員の責務や役割などの議会に関する基本的な事項を定める「兵庫県議会基本条例」を、今年3月に全会一致で可決しました。
また、議会改革等調査検討委員会が取りまとめた「議会機能の充実・強化及び議会活性化に関する事項」及び「議会基本条例に関する事項」に関する最終報告書に基づき、今年度から7つの常任委員会が、調査及び審査能力、政策立案機能をより高めるため、それぞれの所管事項の中から特定テーマを選定し、自主的に調査研究に取り組んでいるほか、管内調査の中で県民との意見交換会も実施しています。
そこで、本県議会によるこうした議会改革の取り組みや本会議での一問一答方式の導入、それに伴う対面式議場など、実際の変更点について知事はどういった点に気付かれ、またどんな感想をお持ちでしょうか。
また、さまざまな議会改革の議論の中で、知事の反問権についての議論もしました。通年制を導入するなど議会改革に取り組んでいる長崎県議会などいくつかの県議会では知事に反問権を付与し、同県議会、宮城県では実際に反問権が行使されたとのことです。本県議会では議論の結果、反問権については明記を見送りましたし、最終的に議会の権限に属することではありますが、直接の当事者の意見を聞いたことがありません。反問権について考えがありましたら併せてお答えください。
竹内 英明
(選挙区:姫路市)
一般質問
(栗山 雅史 議員)[発言方式:分割]
1 人口減少社会における街のあり方について
2 景観支障建築物等への対策について
3 水ビジネスの海外展開について
4 関西広域連合における広域的事務連携の効果について
質問全文
第315回兵庫県議会 一般質問(平成24年12月10日)
質 問 者:栗山 雅史 議員
発言方式:分割
おはようございます。民主党・県民連合の栗山雅史でございます。
今回の一般質問の大きなテーマは「本格的に到来した人口減少社会にどのように向き合うか」ということであります。
ご承知のように、日本の人口は2004年の1億2778万人をピークに減少に転じました。
国土交通省の資料によりますと、日本の人口は鎌倉幕府成立時に757万人、その約420年後の江戸幕府成立時に1,227万人、更に約260年後の明治維新の時には3,330万人だったと言われています。そして、1900年には4,384万人となったのですが、20世紀のおよそ100年の間に約8,000万人が増え、1億2千万人を超えました。20世紀の100年が急激な人口増加時代だったことがお分かりいただけるかと思います。
一方、国立社会保障・人口問題研究所によりますと、2050年には日本の総人口はおよそ3,000万人減少して9,515万人と1億人を切り、2100年にはなんと4,771万人になると推計されています。これは、1908年(明治41年)とほぼ同じ人口で、要するに21世紀の100年間では、逆に約8,000万人が減少すると予想されているのです。皆さんにはそんな実感がおありでしょうか。
兵庫県も同様に、2055年には398万人に減少すると推計されております。現在の人口からおよそ160万人が減少する兵庫県を約40年後に迎えることになります。日本人男性の平均寿命は79歳程度とされていますから、私は現在38歳ですので、その時に存命である可能性があります。
いずれにしても、日本人はこれから急激な人口減少の時代を生きていくことになるという事実を受け入れ、それを前提にした行政を行わなくてはならないということを強く意識する必要があります。
1 人口減少社会における街のあり方について
さて、それでは質問に入ります。質問の第1は「人口減少時代における街のあり方」についてです。
私がこの質問をしようと思ったきっかけは、実は前回の議会における我が会派の前田議員の質問に対する井戸知事の答弁です。
「今後の人口減少社会への対応」という質問で、前田議員は「緩やかな街の移転・消滅・統合に軸足を置いた施策が必要ではないか」という質問をされましたが、知事はその答弁の冒頭に「大変刺激的な提言だ」と言われました。
私はその言葉に逆に驚きました。長期ビジョンやまちづくり基本方針において、将来的な生活機能の集約や村移りの方向性を示しているにもかかわらず、そのような第一声だったことに驚いたのです。しかし、続けて知事は「そのような視点が必要となるという時点や地域もあることは事実だ」とも答弁されました。
おそらく頭の中では、『人口減少に対する何らかの施策が必要であるが、それを今から声高らかに取り組むべきだろうか、いや、むしろ今は縮小していく地域に元気を与えたい、活性化の方が先だ』、そのような率直な想いが、反射的に「大変刺激的」という言葉になったのではないかと思います。
私も地域の活性化を図ることに異論はありません。しかしながら、人口減少していく社会を冷静に見つめ、地域の活性化と並行して、それに対応する方策を進めていくことが、長い将来に責任を持つべき政治、行政の役割ではないでしょうか。
さて、これまでの国や地方自治体の長期計画や法の規制緩和などは、人口維持もしくは増加を前提に設計、法制化されてきました。しかし、それはもはや時代錯誤となってきました。いま必要なことは、そのような20世紀型の発想からの脱却です。人口や産業が減っても生活の質が低下しないように、街の計画的な縮小を進める施策を講じるべきです。
人口減少と聞くと、地域の衰退というイメージが強くなりますが、そうではなく、人口が減少していくという事実を冷静に受け止め、その前提のもとに「無計画な縮小を防ぎ、計画的な縮小を図ること」が重要なのです。計画的な街の縮小を図ると同時に、自然環境の再生や、公共交通の見直し、商店街の再構築、景観の再生などにも繋がっていきます。
人口や産業の減少を前提にすることは勇気がいります。しかし、そこを躊躇していると、取り返しのつかない禍根を残しかねません。まちづくりの前提が大きく変化しているにもかかわらず、従来と同じ発想でまちづくりを進めてしまうと大きな失敗を招きます。
今後はそのような視点に立って、例えば庁舎、学校、県営住宅等のファシリティ、道路、港湾、下水道等のインフラなど、あらゆる県有施設の整備・管理運営を含めて、将来の街の在り方を再検討するべきだと思っています。現在は、それらの多くに膨大な維持補修費が費やされており、これからも増加していく傾向にあります。
加えて、津波対策などの新規のインフラ整備も予定されていますが、そのすべてについて、必要性や利用状況を十分に踏まえた整備・管理運営、統合が求められます。つまり、縮小していく街とファシリティや社会基盤をどのようにベストミックスさせるべきかを考えねばならないのです。既に、日本と同じく人口減少しているドイツや、アメリカの一部の地域だけでなく、国内でも北海道などで人口減少時代に向けた様々な取組が進んでいます。
兵庫県では、現在、来年度からの8年間を計画期間とする新たなまちづくり基本方針の策定に取り組んでおられます。この基本方針や、また21世紀兵庫長期ビジョンなどにおいて、人口減少社会における街づくりを一層意識した総合的な指針を明確に打ち出すことを是非検討していただきたいと思います。
そして、その指針を踏まえ、公的施設の総量の抑制等も含んだファシリティマネジメントの視点に立った取組みや、また必要性や利用状況を踏まえたインフラの整備及び進みゆく老朽化対策と適切な管理運営など、より一層、効率的で本格的な取組みを進めて行くべきだと考えますが、知事のご所見をお聞きします。
2 景観支障建築物等への対策について
質問の第2は「景観支障建築物等への対策」についてです。
兵庫県では、昭和60年に「景観の形成等に関する条例」を施行して以降、魅力ある景観形成を積極的に推進して来ました。その後、平成16年の景観法の施行により、市町の景観行政団体化が進む中、県にはこれまで以上に広域的な視点に立った取組などの新たな役割が求められるとともに、他にも新たな課題に直面していると聞いております。
そのような中、県は「これからの兵庫の景観形成制度のあり方」について景観審議会に諮問し、9月~10月に実施されたパブリックコメントを経て、11月16日にその答申が手渡されました。
この答申では、「広域景観形成の推進」、「景観支障建築物等への対応」、「土地利用を踏まえた大規模建築物等の景観誘導」など、大きく4点の提言がなされています。今後、この答申をもとに景観条例の改正案をまとめ、来年2月の県議会に上程する見込みであると聞いておりますが、私はこれらの提言のうち「景観支障建築物等への対応」について注目しています。
この点、答申では、現状を次のように分析しています。
『近年、幹線道路等において、閉鎖・老朽化して放置されたパチンコ店やドライブイン等が増加し、破損や腐食を生じた外壁、屋根等の外観が良好な景観の阻害要因となっている事例が見られる。少子高齢化や人口減少、それに伴う経済活動の縮小傾向等を考慮すれば、今後こうした景観支障建築物等はさらに増加すると考えられる。
全国的にも同様の問題が散見され、国レベルでの検討が進められているが、未だ有効な対応策は提示されていない。
一部の自治体では、景観支障状態の改善を命令等できる仕組みを創設する独自の取組が行われているところであり、本県においてもその対応が求められる』。
この一部の自治体というのは和歌山県であり、通称「景観支障防止条例」として、本年1月1日に施行されました。
さて、再び答申に戻りまして、この現状に対し、答申では、以下のように提言されています。
『使用・管理されることなく放置され、破損、腐食等を生じた建築物等は、良好な景観形成の阻害要素となり、特に、多くの観光客等が訪れる景観形成地区や主要幹線沿道等においては、こうした建築物等の存在が県全体のイメージ低下にもつながりかねない』。
私も、このような状況について大変憂慮しており、良好な景観の創造と保全のために、提言にあるような条例改正による仕組みが確立されることは大変良いことではないかと考えております。しかしながら、これを進めるにあたっては、建築物所有者の財産権等をはじめ、さまざまな難しい課題を抱えています。
そこで、提言が指摘する「景観支障状態」とは、どういうものを想定されているのか、またどのような対策を取っていかれるのか、当局のご所見をお聞きします。
3 水ビジネスの海外展開について
質問の第3は「水ビジネスの海外展開」についてです。
昨今、国と地方自治体における水ビジネスとしてのインフラ輸出が注目を浴びています。その背景には2025年には約100兆円に達するとの世界的な市場拡大が見込まれている現状があります。2009年12月に政府が公表した「新成長戦略」にアジアにおける水分野のインフラ整備支援が盛り込まれたことも、水ビジネスが注目されるきっかけの1つとなりました。
国では、水ビジネスを含むインフラ輸出を所管する経済産業省が「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」を設置しております。また、下水道を所管する国土交通省では、ベトナム、マレーシア、サウジアラビアなどの所管大臣に対してトップセールスを実施、ベトナムとは下水道分野の協力関係を強化する覚書も締結しています。
地方自治体の取組としては、東京都では、都が出資している株式会社を中心に「国際貢献ビジネス」としての水ビジネス展開を行っています。実施方針を発表し、国内企業50社にヒアリングを実施、マレーシア、ベトナム、インドネシア等にミッション団を派遣しています。都は、漏水率の低さ、料金徴収率に代表される高い水道技術をもって、維持管理業務や課金システムなどの分野に参入しています。
その他、北九州市や滋賀県でも取組があるほか、神戸市も地元企業への援助を通じた神戸経済の活性化、技術・技能伝承を目的とした公的な仕事と位置付け、国際的な水インフラ整備を進めています。神戸市は、自ら率先して海外展開をするというよりも、海外展開を志向する企業からの要請に基づき、パートナーシップ協定を締結し、援助を行うという方針で動いています。
一方、我が兵庫県でも「革新的膜工学を核とした水ビジネスにおけるグリーンイノベーションの創出プロジェクトキックオフイベント」を10月に開催しました。文部科学省と経済産業省及び農林水産省より、地域イノベーションの創出に向けた主体的かつ優れた構想を持つ「地域イノベーション戦略推進地域(国際競争力強化地域)」として指定を受け、文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」にも採択されています。
今後、総合的膜工学拠点である神戸大学・先端膜工学センターを核として、大型放射光施設SPring-8やスーパーコンピュータ等を活用する革新的分離膜の開発と、水ビジネス分野における産業化拠点の形成が進むことを期待しています。こうした取組みは、海外で県内企業が活躍する場を創出することにつながるものであり、県としても、積極的に推し進めていただきたいと思いますが、現在の取組み状況についてお聞きします。
4 関西広域連合における広域的事務連携の効果について
最後の質問は、「関西広域連合における広域的事務連携の効果」についてであります。
平成22年12月1日、「関西から新時代をつくる」として、志を同じくする関西の2府5県が結集し、地方分権改革への主体的な行動として、関西広域連合をスタートさせました。
全国初の府県域を越える広域行政組織の取組として注目されて以来、ちょうど2年が経ちます。
初代連合長に就任された井戸知事は、先月22日の連合委員会における選挙において再任されました。井戸知事におかれては、新たな気持ちで広域計画3年間の最終年を迎えられたのではないでしょうか。
さて、関西広域連合は昨年の東日本大震災において、各府県が担当の被災県に入る「カウンターパート方式」等によって、効果的な支援を展開することができました。井戸知事の力強いリーダーシップのもと、いち早く復興支援に取り掛かることができ、同時に関西広域連合の存在意義を全国に示すことができたことは、私たち兵庫県民にとっても誇りに感じるところでありました。
また一方で、関西広域連合は、国の出先機関の受け皿となるべく、国や関係機関等に対し、積極的に働きかけてこられました。今後、国会への法案提出、審議を経て、国の権限移譲の実現が期待されるところであります。
このような取組が注目されている関西広域連合ですが、2年を経過した今、改めて私は、関西広域連合が基本的に取り組むべき、または目指すべき目的を、規約や広域計画などで確認してみました。それらによりますと、国の出先機関の移管よりもまず先に、「関西全体として、スリムで効率的な行政体制への転換」を目指し、「広域で処理することによって住民生活や行政効果の向上又は効率的な執行が期待できる事務」について、「早期に実施可能な事務から取り組む」とされています。いわゆる広域にわたる防災や観光、産業振興、環境保全など7分野の事務を通じて、広域的連携の意義を追求されようとしているわけであります。
この点、確かに広域医療への取組としてドクターヘリの配置・運航に取り組まれるなど、部分的に効果のあった例もいくつかあると感じています。しかし、住民の立場で率直に申し上げますと、このような一部の事例を除き、広域連合が私達の暮らしを向上させたという実感があまり湧かないのが現状であり、防災分野以外では、現在のところ、住民にその存在価値が見えにくいのではないかと感じております。
関西広域連合は、他の地域に先駆けて始まった取組です。これまでの取組の成果をしっかり分析し、同時に現在の課題を検証して広く情報発信するとともに、これからもその存在意義をさまざまな分野で発揮していく、そのような役割が関西広域連合には課されているのではないかと思います。
そこで、この2年間における7分野の広域的事務、広域的課題を通じ、住民生活や行政効果の向上、効率的な事務執行の観点でどのような成果があったと認識しているのか、とりわけ兵庫県への効果について、知事のご所見をお聞きします。
栗山 雅史
(選挙区:西宮市)
(石井 健一郎 議員)[発言方式:分割]
1 エネルギー政策について
(1)原発の抱える問題の認識について
(2)今後のエネルギー政策における県の認識について
(3)大口需要家への自家発電設備の設置促進について
2 県民緑税を活用した六甲山系の整備について
3 兵庫みどり公社の分収造林事業に対する県民理解の醸成について
4 暴力団の資金源対策について
質問全文
第315回兵庫県議会 一般質問(平成24年12月10日)
質 問 者:石井 健一郎 議員
発言方式:分割
以下、質問をいたします。
なお、質問は分割方式により行います。
1 エネルギー政策について
(1)原発の抱える問題の認識について
質問の第1は、「エネルギー政策について」であります。
この項目の1点目は、「原発の抱える問題の認識について」です。
東日本大震災の発生に伴う福島第一原子力発電所の事故以来、脱原発や原発維持で活発な議論がありますが、二度とこのような事故を起こしてはいけないということについては国民の共通認識であろうと思います。
そもそも原発の問題点は、核燃料がそれ自体及び核反応によって生成される放射性物質が放射能を持ち、もし放射性物質が環境に放出され拡散すれば、長期にわたって生体に悪影響を及ぼし、飛散した地域が長期にわたって耕作不能な地となり、人も住めなくなってしまう、一度事故が起これば取り返しのつかない重大な事態にもつながりかねない、だからこそ核エネルギーの利用については慎重にならなければならないということであります。
さて、日本全国の原発がほぼ止まっている状態が続いています。福島第一原発の事故を振り返ってみますと、地震発生後、原子炉の安全装置は正常に稼働し、全て臨界停止しました。その後、全電源喪失により、原子炉や原子炉建屋の中のプールに貯めこまれていた使用済み核燃料を水で冷却できなくなり、核燃料が熱暴走し、その時に発生した水素気体に引火し、1、3、4号機が爆発し放射性物質が外部に放出されたというものです。
ここで考えなければならないのは、4号機は定期検査中で原子炉の中には全く核燃料は充填されていなかったという事実です。使用済み核燃料プールが爆発した直接原因ではないかもしれませんが、行き場のない使用済み核燃料を一時的に保管している原子炉建屋内のプールが危険なことに変わりはありません。
原子炉については、現代科学を結集して何重にも頑強な安全装置を作り、その安全性が追及されているとのことですが、その原子炉のすぐ横の、本来は一時的な作業をするためだけの使用済み核燃料プールが日本の実質的な中間貯蔵施設になっていることは大変大きな問題です。原発の安全性の問題は、高レベル放射性廃棄物の最終処理の問題があるものの、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の整備など、原子力発電所施設における安全性に直結する問題に対する議論が進んでいないことをもっと問題視すべきであります。
福島第一原発の事故例からも、原発を停止させることが、原発の安全性を必ずしも高めるわけではないという事実を冷静に捉え、原発を再稼働させるとか、させないという議論ではなく、まずは、原子力発電所施設の安全性を高めていくことが喫緊の課題です。使用済み核燃料の中間貯蔵施設については電力会社だけで対処できる問題ではなく、政府の政治判断が重要であり、総選挙後の新政権の対応が注視されます。
福島第一原発の事故では、まさに「神頼み」で事態収拾をはかろうとしたわけですが、何か事故が起こった時に「神頼み」で事態の収拾をはかるのが原子力発電であれば、今後とも国民の理解は得ることができません。
その一方で、原子力発電は建屋さえ整備することが出来れば、その燃料費は火力発電の数割程度といわれています。現在は、停止しても安全とは言えない原発をとりあえず停止し、電気を生まないままその維持費を払いながら、その分の電気を確保するために莫大な化石燃料を追加購入し非常に大きな経済損失を発生するという状態が続いていると言えます。
これらの解決には、早急に国の原子力規制委員会の新たな判断基準を示すよう、また、電力会社に対し、計画を前倒ししても、施設の安全対策を進めるよう、改めて強く要望して頂きたいと思いますが、知事のご認識をお伺いします。
(2)今後のエネルギー政策における県の認識ついて
この項目の2点目は、「今後のエネルギー政策における県の認識ついて」です。
東日本大震災の発生に伴う福島第一原子力発電所の事故が発生するまでは、地球温暖化の原因になる温室効果ガスの放出を伴わず、安価であるとされたことなどから原子力発電を基幹電源としてまいりましたが、どの程度の時間をかけてどこまで減らすべきか、あるいはどのエネルギーで補っていくのか、さらにはどの程度のコストをかけて国民生活や産業活動の構造転換を図っていくのかについては、様々な議論が飛び交っている状況であります。
このような中、政府は、深刻なエネルギー問題への対応として、昨年6月にエネルギー・環境会議を設置し、我が国のエネルギーの在り方について検討を進め、本年7月から国民からの意見聴取会や討論型世論調査の実施を経て、9月14日には、2030年代に原発稼働ゼロを可能とすることを柱とする「革新的エネルギー・環境戦略」を決定しました。
現在、政府・自治体・企業など日本中で、太陽光を中心に太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの普及促進に、積極的な取り組みが進められています。
本県においても、昨年改訂された21世紀兵庫長期ビジョンにおいて、「多様な再生可能エネルギーが最適な組合せにより最大限活用され、原子力への依存度が下がっていること」を将来像として描いており、知事からも「過度な原発依存は避け、再生可能エネルギーの割合を上げていくというのが本県の基本姿勢である」ということをコメントされています。
しかしながら、現実としては申し上げるまでもなく、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーは、発電コストが高いうえ、天候や時間帯による制約がある不安定な電源であり、現在のところ化石燃料発電でバックアップしていくことが必要不可欠です。井戸知事も関西広域連合のエネルギー検討会で「再生可能エネルギーについては、代替エネルギーの主役になることは難しいが、ピークカットには寄与するとの認識である」とコメントされていますが、エネルギーのベストミックスという観点から考えると、関西は原子力発電に5割以上依存してきたこともあり、その方向性については再考していかなければなりません。
原発がほぼ止まっている今、関西圏では恒常的に電力不足に悩まなければならない状態でありますが、現実的には再生可能エネルギーの取組みとは別にベース電源となる代替エネルギーを確保していく必要があります。関西圏では原発の代替として老朽化した火力発電所も稼働させていますが、地球温暖化ガスの問題やフル稼働時の故障等も懸念されています。安定した電力供給のためには、ガスコンバインドサイクル発電所や最新型の石炭火力発電所の設置を電力会社により一層促すといったことが必要ではないかと考えております。
そこで、9月に政府が策定した革新的エネルギー・環境戦略について、原発の廃止時期については議論がありますが、私自身方向性についてはさほど間違っているようには感じませんが、この点について知事はどのような所感をお持ちになっているのか、また、兵庫県は、県内の発電能力で必要量をほぼ補っているとされる現況下、原子力発電を含め、今後のエネルギー政策においてどのような理解で担っていこうとされているのか、併せてご所見をお伺いいたします。
(3)大口需要家への自家発電設備の設置促進について
この項目の3点目に、「大口需要家への自家発電設備の設置促進について」お伺いします。
先ほどの質問でも採り上げました、革新的・エネルギー戦略において、「エネルギーの安定供給の確保に向けて」政府は、①火力発電の高度利用、②コージェネレーション(熱電併給)など熱の高度利用、③次世代エネルギー関連技術、④安定的かつ安価な化石燃料等の確保及び供給の4点を挙げています。
なかでも、原子力発電の代替エネルギーとして、注目されているのが、ガスコンバインド方式による火力発電です。関西電力管内では、平成7年に姫路第一発電所、平成22年には堺港発電所が既にガスコンバインド方式により稼動しており、現在、姫路第二発電所においても設備更新工事を行っています。「ガスコンバインドサイクル」は、天然ガスを燃焼させてタービンを回し、さらにまだ高温の排気ガスを利用して蒸気でタービンを回転させる複合方式による発電であり、メリットとしては、発電効率が原子力発電所のおよそ倍の約60%であることや、仮にタンクが爆発しても周辺被害の恐れが低く、安全であることなどがあげられており、ここ数年天然ガスの供給量が飛躍的に増え、安定供給されていることからも注目されています。
さらに、東日本大震災の発生直後、多くの企業が、計画停電の情報に振り回される中で、六本木ヒルズは、自社で発電設備を持っていたため、計画停電の影響はありませんでした。それどころか、六本木ヒルズのビル群を開発した森ビルは震災発生から間もない3月17日に、一般家庭約1100世帯分に相当する最大4000kW(4MW)もの電力を東京電力に供給しました。
六本木ヒルズの地下にある発電設備は、ガスコージェネレーション方式です。先日、北海道・小樽市にある大規模商業施設で使用されているガスコージェネレーション方式の発電設備を視察してまいりましたが、先ほどのガスコンバインド方式と比較すると、ガスタービンやディーゼル発電機で電気を一次出力する処までは同じですが、排気ガスを再利用するに当たって水蒸気で蒸気タービンを回し二次出力として電気を出力するのがガスコンバインド発電、排気ガスの熱エネルギーをそのまま使用して温水、冷却、動力などを二次出力とするのがガスコージェネレーション方式であります。
この夏の節電要請期間中のピーク時の最大電力は、平成22 年夏と比較すると、平均で約300万kW、約11%減少したとの結果が10月に報告されていますが、うち、家庭部門は約55万kW(構成比率にして約18%程度)にすぎません。以前から繰り返し申し上げている通り、個人の節電努力は大切であり尊いものであるわけですが、ピーク時の電力需要の大半は企業や自治体、学校など組織的な活動によるもので、基本的には家庭の電力需要の問題ではございません。
現在の電力会社は法律で電気の安定供給の義務を負っているため、真夏や真冬の数日間のピーク電力を補うために余剰な発電施設を抱えています。奇しくもそのおかげで原子力発電所が停止しているにもかかわらず、電力供給を続けられた側面もありますが、これらは電力会社の大きな負担の一つともなっています。
例えば、六本木ヒルズのように、大口需要家が自家発電設備を備えれば、原発の代替エネルギーとしての役割だけではなく、災害時の電源供給の多様化、さらには節電期間中のピークカットとしての役割も期待できるうえ、結果として事業者も、地域貢献として一翼を担うこととなります。また、送電ロスがないので非常に発電効率が高く、地球温暖化ガスの抑制にもつながります。
国においては、既に自家発電設備導入に向けた補助金を行っていますが、10月には自家発電設備を導入する際の審査基準を緩和されたことから、今後、特にコージェネレーションシステムの導入が進むことが見込まれます。
そこで、本県においても中小企業向けには一定の取り組みがなされているようですが、電力の大口需要が見込まれる一定規模以上の既存の工場や商業施設などを、これから新しく建設する際には、自家発電設備を備えてもらえるよう、例えば、滋賀県では燃料費の一部補助等を実施しているようですが、施設の設置者に対する設置の義務付けなどを検討するなど、県としても大口需要家の自家発電設備の設置促進に向けて取り組んでいく必要があると考えますが、ご所見をお伺いします。
2 県民緑税を活用した六甲山系の整備について
質問の第2は、「県民緑税を活用した六甲山系の整備について」であります。
県民緑税は、県民共通の財産である緑の保全、再生を社会全体で支え、県民総参加で取り組む仕組みとして、平成18年度から導入したもので、一昨年(平成22年)の9月定例県議会において、平成23年度以降、平成27年度までの5年間の継続が議決されました。税収は毎年約24億円で、これを財源として、「災害に強い森づくり」と「県民まちなみ緑化事業」を実施していますが、財源配分は、計画ベースで災害に強い森づくりが73%、県民まちなみ緑化事業が27%となっています。
「災害に強い森づくり」については、①緊急防災林整備(流木・土石流災害の恐れのある渓流域内の防災機能の強化)、②里山防災林整備(集落等裏山森林の防災機能の強化)、③針葉樹林と広葉樹林の混交林整備(高齢人工林の機能強化)、④野生動物育成林整備(人と野生動物が共存できる森林の育成)、⑤住民参画型森林整備(地域住民等による森づくり活動への支援)の5つの区分により、間伐、危険木伐採、広葉樹植栽等の森林整備や簡易防災施設(柵工、筋工等)の設置等を実施しています。
事業実施箇所については、事業の性格から偏在性があり、第2期計画(平成23~29年度)では、神戸・阪神地域の民有林面積が約53,000haと県全体の約10%を占めているにもかかわらず、整備計画の面積の割合は約5%にとどまっています。
六甲山における森林整備は、国土交通省が実施している「六甲山系グリーンベルト整備事業」等との役割分担が必要であり、本県の「災害に強い森づくり」とも連携した取り組みが必要ではないかと思われます。また、神戸市にあっても、六甲山で植林が始められて110年を迎えた今、樹種や樹齢の多様性が乏しいうえ、十分な手入れがされずに荒廃が進むところもみられ、土砂災害の発生、景観の悪化、病害虫の発生などが懸念されることから、新たな都市山・里山として再生することが求められており、今年の4月に「六甲山森林整備戦略」を策定されたところです。
そこで、神戸・阪神地域にある六甲山系の森林において、県民緑税を活用して森林整備を行っていくことについては、神戸市からも強い要望が出ているようでありますが、納税者の多くを占める都市部の住民に対するPRや県民緑税への納税者の理解という観点からも、県として積極的に役割を果たしていく必要があると考えますが、県としてのご所見をお伺いします。
3 兵庫みどり公社の分収造林事業に対する県民理解の醸成について
質問の第3は、兵庫みどり公社の分収造林事業に対する県民理解の醸成について、お伺いします。
兵庫みどり公社は、戦後、国、地方公共団体、森林・林業関係者が一体となって造林を推進する中で、森林所有者による整備が進みがたい地域において、分収方式によって造林を推進するため、昭和37年に県の主導の下で設立された「兵庫県造林公社」を母体とする社団法人です。これまで約2万haの森林を造成し、森林の公益的機能の発揮、地域の森林整備水準の確保や雇用の創出などに重要な役割を果たしてきました。
しかしながら、造林事業の経営は、森林整備に係る国県の補助金を除く投資額のすべてが借入金で賄われており、現在、造林事業会計においては、562億円の長期借入があります。この借入額は、全国的に見ると、岡山県の「おかやまの森整備公社」に次ぐ、全国第2位の額となっており、本県の将来負担比率に少なからず影響を与えているものと考えられます。
このため、本県の行財政構造改革においても、公社については、「団体の統廃合や経営改善の促進、県の財政支出・人的支援の見直しを図る」とされており、兵庫みどり公社の造林事業について、平成90年の事業終了時に収支が均衡するよう、事業管理費の削減のほか、造林地を、収益性の高い林(経済林)と、収益性の低い林(環境林)、収益が見込めない林(自然林)に区分し、それぞれに応じた施業方法への見直しや、土地所有者の分収割合の見直しに取り組んでいると承知しています。
しかしながら、この造林事業の債務問題は、やはり、そう簡単に解決する話ではありません。投資を行ってから利益を得るまでの期間が長期にわたるという林業の特殊性に加え、その間の社会経済情勢の変化等にも大きく影響を受けるものであり、事業には相当高度な経営能力が求められるところです。その前提条件として、現在の経営状況等の実態把握や情報開示が重要であります。この点について、平成21年6月に総務省、林野庁及び地方公共団体で構成する検討会がまとめた報告書でも指摘されているところであり、その一例として、会計基準の問題が挙げられます。
一般に造林事業は、国県の補助金と金融機関からの借入金で運営していますが、これまでの林業公社の会計基準では、この借入額をそのまま取得原価として、固定資産に計上することとされていたため、財務諸表において「債務超過」になることはなく、経営状況を適切に表すことができませんでした。このため、先の検討会の報告書では、「森林資産の具体的な算定方法について検討を行い、その上で、公社の経営状況及び資産債務の状況について議会や住民に積極的かつ分かりやすい説明を行うべき」と指摘しているところです。
また、公益法人会計基準のなかでも、公益法人の資産について具体的に含み益や含み損を明らかにすること、資産の時価評価を取り入れることなど、適正な会計処理を導入するよう要請されているところです。
現在、全国に約40団体ある都道府県が出資する林業公社は、いずれも多額の借入金を抱えていますが、分収造林を積極的に推進し、無責任とも思える多額の融資を長年続けたのは、専ら、国と当時の農林漁業金融公庫であり、県や公社に経営責任を押しつけること自体、疑問を感じています。
しかしながら、新行革プラン策定の際も問題として取り上げられましたが、兵庫みどり公社の造林事業への県の対処について、理論上は可能かもしれませんが、一般県民感情とは相違しています。
そこで、このような状況を踏まえ、本県のみどり公社の分収造林事業についても、将来世代に対して責任をもって説明ができるよう、今一度、資産状況について十分に把握し、経営計画について積極的かつ分かりやすい説明を行い、県民理解を求めていく必要があると考えますが、県としてのご所見をお伺いします。
4 暴力団の資金源対策について
質問の第4は「暴力団の資金源対策について」お伺いします。
暴力団排除に向けた取り組みが進む中、福岡県では昨年以降、飲食店の経営者が刃物のようなもので襲われる事件や建設会社の会長が帰宅したところ拳銃で撃たれて殺害される事件など暴力団との関係を断とうとする市民や企業を狙ったと思われる事件が相次いでいます。暴力団排除が進むにつれ、資金の獲得が困難になった暴力団による報復ではないかと推測されるところです。
暴力団を衰退させていくには、ヒト・モノ・カネを遮断していくことが効果的であり、今年の2月には、アメリカ財務省からも指定暴力団山口組と6代目組長、ナンバー2の「弘道会」組長に対して、米国内での資産凍結などの制裁措置が発表されたところです。
しかしながら、先日公表された警察庁などが実施した「『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』に関するアンケート」の結果によれば、過去5年間に不当要求を受けた企業の割合は、回答のあった企業のうち11.7%あり、そのうち18.4%にあたる企業が何らかの要求に応じていたとのことであります。
また、応じた要求額も50万円未満の要求に応じた企業が7割弱を占める一方で500万円以上の高額の要求に応じた企業が8%あり、暴力団などの不当要求を「断りきれない」企業の現状が明らかとなったところであります。
福岡県での事件を受けて制定された改正暴力団対策法が10月30日に施行され、「特定危険指定暴力団」に指定されると、不当な要求をしただけで逮捕できるようになりました。本県警察におかれましても、暴力団対策を進める市民や企業が被害に遭わないように対策を進めるともに、警察への信頼確保に向けてもこれまで以上に精励していただきたいと思います。
改正暴力団対策法が施行され、暴力団を排除する取組みだけでなく、暴力団との関係を遮断しきれない個人事業主や企業に対する取組みを進めるとともに、一般市民が暴力団の矢面に立たされることのないよう、警察による支援を充実させていくことが求められています。
そこで、暴力団対策は、新たな段階に入ってきていると認識していますが、暴力団排除の機運を衰退させないよう、企業等への不当要求をはじめとする暴力団の資金源対策に取り組んでいく必要がありますが、今後の展望について、本部長の意気込みとともにお伺い致します。
石井 健一郎
(選挙区:神戸市灘区)
(掛水 すみえ 議員)[発言方式:分割]
1 ディーセントワークの理念を生かす労働政策について
(1)労働政策の説明責任について
(2)兵庫県における労働行政について
(3)ディーセントワークの労働政策について
2 障がい者雇用について
3 インクルーシブ教育の実現について
4 移動権確保のための総合政策について
質問全文
第315回兵庫県議会 一般質問(平成24年12月11日)
質 問 者:掛水 すみえ 議員
発言方式:分割
1 ディーセントワークの理念を生かす労働政策について
質問の第1は、「ディーセントワークの理念を生かす労働政策」について、3点お伺いします。
(1) 労働政策の説明責任について
1点目は、「労働政策の説明責任」についてです。
兵庫県では、2009年8月から2014年3月まで重点的に取り組むべき政策の目標と工程を定めた「県政推進プログラム100」について、3年目に当たる昨年度の取り組み状況を7月に発表し、新聞にも掲載されました。このプログラムは、「安全安心」「産業立県」など6つの分野について100のプログラムにまとめ、それぞれの達成のため413の施策群と具体的な施策592を設定しています。
私は、事業推進について、常に検証を行うことは重要と考えますが、施策設定にいつも疑問を感じていました。それは、県が率先して取り組む重点的政策と施策設定との乖離があると考えているからです。例えば、現在、厳しい雇用状況下ですが、プログラムの「多様な雇用機会の創出による生活の早期安定化」の項目では、緊急経済・雇用対策の推進は全てに目標達成を示す◎が付いており、特に緊急雇用就業機会創出事業・ふるさと雇用再生事業について、マスコミは100点と報道しました。しかし、それには、あまりにも肌感覚のずれを感じました。これは、目標10,201人に対して24,808人の雇用創出を受けてのことでしょうが、特に若年者雇用に依然と厳しい状況を量だけの判定では、県の労働政策の説明になるといえるのでしょうか。
緊急雇用就業機会創出事業とふるさと雇用再生事業を合わせた2012年度の雇用創出基金事業は県全体で64億円に上る高額です。産業労働部の労働施策に係る24年度当初予算が約86億円ですから、その規模の大きさが分かります。しかし、事業の執行に当たっては、積み上げられた基金を各部局で短期雇用に消化するだけになってはいなかったでしょうか。緊急対策としての公的就労事業の場合も、ディーセントワークの実現を優先的に追及しなければならないと考えます。
文部科学省が8月に公表した学校基本調査速報によると、大学卒業者の22.9%、12万8千人が安定的な雇用に就いておらず、若年層に厳しい雇用現状が示された形です。問題は、社会に新たに参入する若者達が最初の段階で非正規雇用を強いられ、適切な労働能力の形成から排除されることです。一定の経済成長の確保というマクロ的対応も必要と考えます。
そこで、目標達成の◎をつけるためには、喫緊の課題である若年層の雇用対策に全部局あげての対策・戦略があってこそのプログラムと考えますが、県としての労働政策の説明責任をどのように考えておられるのかご所見を伺います。
(2) 兵庫県における労働行政について
2点目は、「兵庫県における労働行政」についてです。
神戸市ハーバーランド内に「八時間労働発祥之地」という碑が立っています。碑文には、「大正8年当時の川崎造船所が我が国で最初に8時間労働制を実施したこと」が記されています。先駆的な労働条件提示が神戸発祥ということで有名な碑です。
県ではこれまで、労働行政に対して、県内の実態を踏まえて各県民局商工労政課が地域の相談などきめ細やかに対応し事業を推進してきました。特に、1995年の阪神・淡路大震災後、厳しい状況下で被災者の声を拾い集めて、経済雇用活性化プログラムを策定し、働き方を考え、早急な復旧・復興に取り組みました。また、雇用確保のため政・労・使三者の合意を経て、初めてワークシェアリングにも取り組みました。その後、ワーク・ライフ・バランスについては、政・労・使三者連携の実績を生かして「ひょうご仕事と生活センター」を設置しました。今後、労働時間の短縮を基底に、より前進することが求められます。
そして、地方分権一括法により、地方の役割は増大しましたが、労働行政は国の一括管理となり、県としての労働行政の存在が薄くなりました。産業労働部として、この不況の折、商工関係の事業を推進されていますが、商工と労働は表裏一体のものです。
そこで、阪神・淡路大震災からの復興の過程で培ってきた兵庫県独自の取り組みを今後の推進にどのように生かすのか。また、県民局商工労政課の組織強化が重要と考えますが、ご所見を伺います。
(3) ディーセントワークの労働政策について
3点目は、「ディーセントワークの労働政策」についてです。
ディーセントワークは、1999年ILOのファン・ソマビア事務局長が提唱し、日本では、「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されています。ILOは雇用の危機の克服には数年必要としており、ディーセントワークを危機克服の要石として位置づけ、2006年から10年間を「ディーセントワークのための10年」に指定し活動を進めています。
先日、ハローワークに行き、所内の実態調査をしました。約6割の方々が雇用保険を受給されており、その中で気になったのが、高齢者や転職を求める若い人達、そして赤ちゃんを抱きかかえて職探しをしている若いシングルマザーでした。つまり、生きるための働きを求めている人達でした。
2008年の労働経済白書には、「日本におけるディーセントワークに向けての課題として、正規雇用化に向けた取組や長時間労働の是正が重要である。こうした問題を解決するためにも、仕事と生活の調和に向けた取り組みを進めると共に、ディーセントワークの意義を政・労・使が改めて考え深めていく中で更なる取り組みを進めていくことが求められる」とディーセントワークを避けて通ることができないとの認識があります。経営者側にも労働組合にもディーセントワークへの言及がなされ、働く者の生活安定のための施策の必要性が問われています。今こそ、県行政として、ディーセントワークを中核に据えた施策展開は喫緊の課題です。兵庫における政・労・使三者連携の実績を県民局単位にきめ細やかに地域で実行することによって、働きやすい環境整備が進むことを国内外に発信できるものと考えます。
そこで、県としてディーセントワークの理念を生かす労働政策についてどのように考えられるのかご所見を伺います。
2 障がい者雇用について
質問の第2は、「障がい者雇用」についてお伺いします。
先日、「障がい者年収200万円以下99%」という新聞記事を目にしました。全国の障がい者福祉施設でつくる団体の全国調査によるものです。加盟施設などを通じ、身体・知的・精神などの障がい者が通所施設などで働く本人や家族ら約1万人(平均40.4歳)の生活保護、障害手当、給与、工賃などを合わせた月収は、4万2000円以上8万3000円未満が最多の41.1%、年収では100万円以下が56.1%、200万円以下が98.9%との回答を得たもので、障がい者の自立を取り巻く環境が裏づけられているといえます。また、生活状況では、親と同居が56.7%、きょうだいと同居が18.3%と障がい者の多くが十分な収入を得られず家族に依存して生活しています。障がい者の収入保証制度や障がい者を雇用した企業への公的支援の充実が求められます。
一方、国では、「障害者自立支援法」に代わる「障害者総合支援法」や、障がい者の働く施設からの優先的購入等を促す「障害者優先調達推進法」が、来年4月に施行されます。また、障害者法定雇用率が来年4月から、民間1.8%から2.0%へ、官公2.1%から2.3%へ、教育委員会2.0%から2.2%へ引き上げられます。いつも雇用率を達成したかどうかが問題視されますが、特別支援学校の卒業生のうち約60%が法定社会福祉施設に入所、一般企業への就職は1~2%、就業移行支援を受ける方が16.4%という状況です。
9月に開催された「障がい者雇用フェスタひょうご2012」において、県立精神保健福祉センター所長の精神障がい者の雇用支援の講演の中で「障害に対応するのではなく、障がいのある個人に対応すること、これは、どの職員とも同じ対応が必要となる。」という言葉が印象的でした。そこで、障害者雇用にあたっては、まず特別支援学校の卒業生が、社会・地域での活動や雇用の願いが叶えられるよう企業と教育の連携強化を形作ることが重要と考えますが、そのことも含め、今後、県としての障がい者雇用にどのように取り組んでいかれるのかご所見を伺います。
3 インクルーシブ教育の実現について
質問の第3は、「インクルーシブ教育の実現」についてお伺いします。
1993年、国連は「障害者の機会均等化に関する基準規則」を採択し、「統合された環境における初等・中等・高等教育の機会均等の原則を認識すべき」との統合教育の動きが急ピッチで進んでいます。今日、国際的動向として、分けてから一緒にする統合教育から最初から分けないインクルージョンが強く唱導されているところです。
我が国においても、2011年に障害者基本法が改正され、16条1項に「可能な限り障がい者である児童及び生徒が、障がい者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しなければならない」と明記されました。先の6月議会で我が会派の越田議員の代表質問に対して、「国のインクルーシブ教育システムの構築の動向、本県の児童生徒の実態を踏まえて検討する」と答弁されましたが、既に新たな取り組みが国内で見られることを県としても認識し、率先して取り組んでもらいたいと思います。
例えば、特別支援学校のICT活用は、視覚障害や肢体不自由の分野で先行して導入され、知的障がいの場合は「知的な活動より体を動かして学ぶ」ことが強くあるために、高等部においては就労に向けてのICT教材活用は少ない状況の中にあって、沖縄県では、知的障がいの子ども達の支援ツールとしてタブレット型端末の利活用が進み、本人の本来の能力を支援機器で補うことで理解ができる状態を作り出しています。また、東京都・埼玉県では、学籍は特別支援学校に置きつつ、居住地域の小・中学校を地域指定校として、副次的な学籍を置く「副籍・支援籍制度」が進んでいます。
今春、同一敷地内に開校しました阪神昆陽高校・阪神昆陽特別支援学校において、共に学べる学習形態やノーマライゼイションの科目を設定し、障がいへの理解を進めていることは承知していますし、児童・生徒が学ぶための環境整備が直近求められますが、それ以上に、障がいのある児童生徒の自尊感情を育み、働くこと・生きることへ個としてのステップアップするために従来のものさしではなく、新たな中核となる方針を持つべきと考えます。
そこで、インクルーシブ教育の実現に向けて、県として第二次特別支援教育推進計画をどのように立てられようとされるのかご所見を伺います。
4 移動権確保のための総合政策について
質問の第4は、「移動権確保のための総合政策」についてお伺いします。
1992年、県は全国に先駆けて「福祉のまちづくり条例」を制定しました。中でも、条例の前文には、「すべての人々が、一人の人間として尊重され、等しく社会参加の機会を持つことにより自己実現を果たせる社会の構築こそ人類の願いであり、我々に課せられた重大な責務である」とあり、当時として「すべての人々」の文言を用いた先見性を大いに評価します。その後、少子高齢化の急速な進展、障がい者の施設居住から地域居住の流れ、子育てしやすい環境への要求の高まりやニーズの多様化、人々の自己主張と意欲の高まり、そして、それらを統括する形での、より安全・安心な快適社会への希求がユニバーサル・デザインの理念をつくり、現在、実践へとつながっています。
福祉のまちづくり条例は、2010年の改正において第1条に「ユニバーサル社会づくりの視点」を取り入れ、対象者が追加されました。国においては、1994年・ハートビル法、2000年・交通バリアフリー法、そして2005年国土交通省は、ユニバーサル・デザインが政策の重要な柱であると明確にした「ユニバーサルデザイン政策大綱」を発表し、2006年、適用対象を拡大したバリアフリー新法を制定し、建築と公共交通・道路の連携強化、即ちアクセシビリティ整備をまちづくりとして進めやすくする方向性を打ち出しました。
また、2006年12月には、国連総会において障害者権利条約と同選択議定書が採択され、日本でも、2011年に障害者基本法が改正され、適用対象者が社会に出て、職業を持つこと・学校で学ぶこと・外出するためには、移動しやすいまちに変えていくことが不可欠なものとなり、移動しやすいまちづくりには、だれもが利用できる公共交通の整備も欠かせません。
しかし、ユニバーサル社会実現のためには、移動権が重要であるということを考えたときに、単に交通政策として考えるのではなく、観光・産業・福祉・教育・環境などの地域課題への視点が重要であり、それらを総合的に考え政策を進めていくことが必要です。
そこで、年齢や性別、文化の違いにかかわりなく、誰もが安心して暮らせるまちづくりのために、それらさまざまな分野の地域課題と関連づけた移動権確保のための総合政策の取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。
掛水 すみえ
(選挙区:西宮市)