議会の動き

◆13年02月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  岸口 実議員
一般質問  盛  耕三議員・徳安 淳子議員・小池ひろのり議員

代表質問

(岸口  実 議員)[発言方式:分割]

1 兵庫県政の今後の展望について

(1) これまでの県政運営に係る知事の自己評価と今後の地方の将来像について

(2) 第2次行革プランの見直しについて

2 今後の社会基盤整備の進め方について

3 救急医療体制の充実について

4 障がい者の法定雇用率達成に向けた取組について

5 農協への指導強化と農家の競争力強化について

6 通学区域変更に伴う課題について

(1) 学区拡大に伴う生徒・保護者・進路指導担当教員間における情報共有について

(2) 第1志望加算点について

7 警察官の不祥事根絶等へ向けた取組について

(1) 警察官の綱紀粛正について

(2) 警察官のメンタルケアについて

質問全文

平成25年2月 第317回定例県議会 代表質問要旨案

質 問 日 : 平成25年2月25日

質 問 者 : 岸口 実 幹事長

質問形式 : 分割方式

1 兵庫県政の今後の展望について

最初の質問は、「兵庫県政の今後の展望」について、2点お尋ねします。

(1) これまでの県政運営に係る知事の自己評価と今後の地方の将来像について

1問目は、「これまでの県政運営に係る知事の自己評価と今後の地方の将来像」についてです。

井戸知事におかれては、3期目の締め括りの年を迎えられました。これまで自然災害等への備えをはじめ、経済・雇用対策や高齢化対策の推進、第2次行革プランの推進、関西広域連合への取組など、県民生活にとり喫緊の課題から中・長期に亘る課題まで、幅広い分野で県民生活の向上に向けた取組を続けておられます。

わが会派では所属議員全員が参加し、知事の今期のこれらの取組について評価・検証を行っている最中であり、本日の答弁も踏まえて結果を取り纏め、後日、知事へお伝えしたいと思います。

さて、昨年末の衆議院総選挙で再び政権が交代しました。国と地方の関係が大きく見直されます。前政権では、地域主権改革一括法による義務付け・枠付けの見直し、「地域自主戦略交付金」の創設など、地方の裁量を広く認めた分権型社会の構築を目指し、国出先機関の移管に向けた関連法案の閣議決定にまで至りました。しかしながら新政権では、道州制基本法の早期制定や「ひも付き補助金」の復活、国から地方への交付税を盾に地方公務員の給与を国家公務員に準じて引き下げるよう求めるなど、まさに上意下達の中央集権体制そのものです。これまで分権型社会の構築を目指し取り組んできた関西広域連合の今後のあり方が問われるとともに、地方分権分野の事務を担い他府県をリードしてきた本県の存在意義が、今まさに問われています。地方分権が、政権交代の度に、政権の政治的な思惑に振り回されることを繰り返してはなりません。

このような中、県では、国主導による中央集権型道州制となる懸念があることから、来年度に研究会を立ち上げ、当事者としての地方から今後の広域行政体制のあるべき姿を発信していくための検討を進めることとされており、関西広域連合長でもある知事の実績とリーダーシップに期待したいと考えます。

そこで、3期目のこれまでの3年半にわたる県政運営を振り返り、ご自身としてその成果をどのように評価されているのか、また、今後の課題、中でも特に、自立した分権型社会の将来像をどのように描き、その実現に向けどう取り組んで行かれるのか、知事のご所見をお伺いします。

(2) 第2次行革プランの見直しについて

2点目は、「第2次行革プランの見直し」についてです。

寺島実郎日本総研理事長監修の「日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング」によると総合ランキング全国1位は長野県で、わが兵庫県は22位、分野別では文化分野が3位と好成績ながら基本指標は46位のワースト2でした。あくまでこれは一つの見方で一喜一憂するものではないことを申し添えますが、人口増加率、県民所得、投票率、食料自給率などからなる基本指標には、本県の評価をもっとも下げる要因となった財政健全度が含まれています。

この財政健全化への取組として、県では平成20年度に、同年度~30年度までの間の改革の内容を定めた新行革プランを策定しました。平成22年度にはこの新行革プランの総点検を踏まえ、第2次行革プランを策定し、来年度にはその見直しを行うことになっています。

第2次行革プランには、歳出対策として人件費、行政経費、投資的経費の見直しにより効果額を積み上げることとなっています。人件費や行政経費については、目標額に対しおおむねの効果が上がっていますし、また投資事業についても2月補正で公共投資679億円(一般会計ベース)に加え261億円の公共施設整備基金が創設され、少なくとも26年度までは予算執行面で余裕が生まれます。

しかし、その一方で、借換債の平準化対策の影響により、実質公債費比率の減少が見られるものの、財務体質自体や一般会計の54%を義務的経費が占める硬直化した財政構造そのものが改善された訳でなく、また、来年度当初予算案とともに示された平成30年度までの財政フレームによれば、変更後の財政フレームで予定する財源対策を行った後もなお残る各年度の不足額の1/2、435億円を要調整額として、国に解消を求めていかなければならない現状を考えれば、引き続き行財政構造改革に真摯に取り組んでいく必要があることは言うまでもありません。

ただ、肝心なことは、これらの行革プランはあくまで財政上における数値の是正に過ぎないことです。プラン推進のため県民の皆様に多くの負担をお願いしています。だからこそ行革プランを推進し財務体質を強くすることが、ひいては県民サービスの量・質の向上につながらなくてはなりません。

そこで、来年度、第2次行革プランを見直しするにあたって、今回の見直しにより県民生活がどのように向上するのか、将来へどのようにつながるのかを県民に対して、明確に示す必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

2 今後の社会基盤整備の進め方について

質問の第2は「今後の社会基盤整備の進め方」についてです。

東洋大学の根本祐二教授は、その著書の中で、わが国における社会基盤を更新するための投資額は、今後50年間で総額330兆円と推定されること、アメリカでは既に社会インフラの崩壊が始まっており、わが国でも一つの自治体で一つの橋が危険にさらされていることなどを述べておられます。現実に、私の地元でも、一昨年、国道2号にかかる橋のたもとが陥没する事故が発生しました。

また、昨年度の国土交通白書では、20年後には道路橋梁、河川管理施設、港湾岸壁の過半数が建設後50年以上を経過し急速に老朽化が進むとされています。このまま従来どおりの維持管理・更新を行った場合、投資総額を上回るとの推計もあります。

本県においても、今後10年程で橋梁、排水機場等の約4割から6割が耐用年数を迎え、修繕を行わず一律に更新する場合、30年後の維持・更新費は、現在の約3倍程度と試算されますが、仮に施設の長寿命化に計画的に取り組めば、これを2倍程度に抑えられます。

この点、今後、ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画を策定し、計画的・効率的な老朽化対策に取り組むとともに、津波防災インフラ整備5箇年計画に基づき、防災・減災対策にも迅速かつ着実、積極的に取り組んで行かなければならない中、私は、いくつかの懸念を感じております。

1点目は、予算執行の自由度への懸念です。今年度の社会基盤整備事業費1,566億4,200万円のうち、維持・更新費は311億9,700万円と19.9%を占めますが、仮にこれが2倍に抑えられるとしても約40%となり、今後、新規投資は抑制され、予算執行の自由度が下がるのではないでしょうか。

2点目は執行力の確保です。近年、約1,000億円程度の繰越が常態化しています。加えて、今回の2月補正では、多額の公共事業費や公共施設整備基金の積み増し等が予算化され、例年以上に事業量は膨大なものとなっております。このような中、積算、発注等の契約事務の遅延や受注業者の人手不足など、現場が対応しきれないという事態が起きる虞はないのでしょうか。

3点目は市町との連携の必要性です。先日、わが会派で長崎県の橋梁長寿命化修繕計画について調査した際、補修マニュアルや独自の歩掛の作成など、様々な配慮をしながら進めているとお聞きしました。中でも、市町管理の橋梁は県管理の数倍に上り、老朽施設の増加に対応する市町職員の技術力向上が課題であるとのことでしたが、橋梁に限らず、本県でも同様の課題があるのではないでしょうか。

そこで、県として、これらの点をはじめ様々な課題があることを踏まえた上で、今後、どのように社会基盤整備を進めて行こうと考えているのか、当局のご所見をお伺いします。

3 救急医療体制の充実について

質問の第3は「救急医療体制の充実」についてです。

ここ10年足らずの間に地域医療を取り巻く環境は大きく変化しましたが、特に平成16年の新医師臨床研修制度の導入により、医局制度が崩壊し、医師の科目偏在と過疎地域での医師不足、病院崩壊・地域医療の崩壊へと負の連鎖が続きました。県内でも平成16年~20年にかけて医師数は県全体で6.4%増加しているものの、北播磨・但馬・丹波・淡路での医師不足が顕在化し、姫路市でも、吐血し救急を要請した男性が18の医療機関で搬送を拒否され死亡する事件が発生するなど、地域医療崩壊を象徴する事件が起きました。

これに対し、県では、様々な施策を展開し医師の量的確保や地域・特定診療科の偏在への対応を進めるとともに、救急医療の最後の砦となる第3次救急医療体制の整備にも取り組み、地域医療体制の構築を進めています。

一方で、昨年11月消防庁より出された「平成24年版救急・救助の現況」によると、平成23年の救急車の出動件数は前年比24万3,973件増の570万7,655件あり、搬送人員も20万3,192人増の518万2,729人と過去最高を記録しております。5.5秒に1回の割合で救急隊が出動し、国民の25人に1人が搬送されていることになります。

県内においても、平成23年の転院搬送を除く救急搬送人員数は前年から7,184人増え20万358人となり、3次救急医療施設への搬送割合は7.2%から8.7%へ、重症以上の人数は14,929人から15,265人へと増えています。

こうした中、兵庫県民間病院協会の会長は、地域の救急医療の状況を考える場合、「重症以上の傷病者で病院交渉回数が4回以上の事案の割合」「重症以上の傷病者で救急車現場滞在時間30分以上の事案の割合」という二つの指標が重要であると仰っておられますが、県内での前者の割合は1,017件6.7%、後者の割合は886件5.8%で、いずれも全国の平均値を上回り、全国ワースト10に入る厳しい結果となっています。

個々の医療圏では、阪神北・南地域が最も厳しい状況にあり、特に市町ごとで大きなばらつきが見られ、近隣市町相互の連携を図り、この状況を早急に改善すべきです。

先日、常任委員会の調査で伺った県立西宮病院でも、救命救急センター指定後、3次に加え2次救急患者搬送依頼用ホットラインを増設し対応していますが、3次救命救急を守るため年間約1,000件の搬送を断らざるを得ないと聞きました。

そこで、現在、保健医療計画の改定作業が進められていますが、県民の命の最後の砦となる3次救命救急体制を維持するためにも、県として積極的に各市町間における広域連携体制の構築を進め、阪神北・南地域をはじめ県下における2次救急体制の強化に速やかに取り組むべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

4 障がい者の法定雇用率達成に向けた取組について

質問の第4は「障がい者の法定雇用率達成に向けた取組」についてです。

先日、健康福祉常任委員会の管内調査で、社会福祉法人ホーム塩屋の役員の方々と「知的障がい者への自立支援」をテーマに意見交換させて頂きました。「障がい者の自立には色々な形がある」「仕事を通して生きる喜びを学び、仕事をやり遂げた自信が自立へ繋がる」という理事長のお言葉が印象に残っています。障がいの有無を問わず仕事を持つことは豊かな人生を送る為には欠かせません。

さて、県下の障がい者は平成23年現在約30万9千人で、その1/3の11万5千人が18歳以上65歳未満の方と推計されます。仮にこれらの年齢の方のすべてが就労可能とするならば、昨年6月1日現在、県下で雇用されている障がい者は約1万1,400人と全体のわずか1割に止まっており、就業を希望する一人でも多くの障がい者の方々の働く場の確保を続けなければなりません。

このような中、法令改正により、この4月に法定雇用率が1.8%から2.0%へ引き上げられますが、県下の民間企業における障がい者雇用率は昨年6月1日時点で1.79%と、僅かですが法定雇用率に届いていないのが実状です。

これを企業規模別に見れば、常用雇用労働者数が100人以上の企業の50%以上が法定雇用率を達成しているのに対し、56~100人未満の企業では48.3%と半数が未達成となっており、規模の小さな企業における雇用をより一層促進していく必要があります。

特に4月からは、障がい者を雇用しなければならない事業主の範囲がこれまでの常用雇用労働者数56人以上から50人以上へと拡大されます。これにより、対象となる県下の企業数及び常用雇用労働者数は約3,000社、約65万人と推計され、単純に計算した場合、法定雇用率2.0%を達成するには、昨年6月1日時点に比べ、更に約1,600人の障がい者の雇用を確保しなければならないことを考えれば、今回範囲が広げられる小規模企業への支援は喫緊の課題です。

産業別に見れば、不動産・物品賃貸、金融・保険、教育・学習支援等では全国に比べ本県の雇用率が下回っており、これらの分野における対策も重要です。

県では、これまでから種々の関連施策を工夫するとともに、今年度には特例子会社制度の積極活用を進める企業への支援や、兵庫県雇用開発協会に専任コーディネーターを配置し、初めて障害者を雇用する中小企業を対象に、各種相談や研修も行うなど、法定雇用率達成へ向けた取組を強化されています。また平成27年4月には、常用雇用労働者数100人超200人以下の事業所が障害者雇用納付金制度の対象となることから、取り組みを加速させる契機としなければなりません。

そこで、より一層の雇用促進と法定雇用率の達成を目指し、これまでの取組の成果を踏まえ、更に個々の企業の規模や業種・業態などに応じた個別ピンポイントの施策も展開していくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

5 農協への指導強化と農家の競争力強化について

質問の第5は「農協への指導強化と農家の競争力強化」についてです。

政権交代により来年度から「農業者戸別所得補償制度」について一部施策の組換えが行われます。まずは現場での混乱が生じないよう担当部局の適切なご対応をお願い致します。

さて、昨年、神戸ビーフの輸出が開始されました。安定した供給と採算の確保にまでは至らないようですが、明るい兆しが見え始めています。海外戦略は今後の農業を占う重要なテーマであり、中でもTPPの議論は、先の衆議院選挙において争点の一つとなりました。全国の農業団体の会長からはTPPへの対応を選挙支援の判断材料にするとの発言もありましたが、世界的な規模で貿易自由化の流れが加速していることを認識しなければなりません。

県内の平成22年の販売農家の平均年齢は全国平均を2歳上回る67.8歳となっており、高齢化が進行しております。また、耕作放棄地や休耕田の増加など農地は10年間で3,900ha、甲子園球場約1000個分も減少しており、産地の衰退を食い止め、産業としての農業への転換が急務です。

このような中、県では平成24年3月「ひょうご農林水産ビジョン2020」を策定し、農家の競争力強化や他産地との差別化など、農林漁業者、農協、事業者等と連携した施策展開を図っています。

これに対し、昨年9月議会では、わが会派の池畑浩太朗議員が、このような農協と連携した農業モデルが硬直化しているのではないかとの懸念から、「県の農協に対する指導・監督の現状と評価、今後の取組方向」について質問したところですし、常任委員会の管内調査でも、県内の農協を調査しましたが、法令の規定や総会での決定によるものと承知はしていますが、多額の内部留保金を有していることなど、組織や事業の運営方法を見直した方が良いのではないかと考えられる事例も見受けられるところです。

これまで、わが会派では宮崎県の農業生産法人「新福青果」や千葉県の農事組合法人「和郷園」、山口県の「(株)秋川牧園」や佐賀県の野菜直売所「マッちゃん」など多くの事例を調査してきました。これらの調査先に共通するのはこれまでの農家・生産者の概念を越え、独自で農薬・肥料を管理した生産を行い、消費者と生産者のニーズの把握や出口対策・流通経路の確立などを行うなど、まさに企業経営そのものだという点です。産業としてうまく回転すれば後継者もどんどん出てくるとも言われています。

そこで、より競争力ある農家を構築するため、農協の本来の役割である営農指導、技術支援をはじめ、肥料や必要な資材の共同購入などの経済事業において組合員ニーズを十分反映させるよう、今後の組織のあり方なども含め、今一度、農協への指導を強化するとともに、県施策の推進にあたって、多様な民間企業や先進的な農家等の事業能力を積極的に活用していくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

6 通学区域変更に伴う課題について

質問の第6は、「通学区域変更に伴う課題」についてです。

県では、高校改革の一環として平成12年から2次にわたり「県立高等学校教育改革実施計画」を策定し、学びたいことが学べる学校づくりを進めています。平成21年度から25年度までの第2次計画の下、16学区中12学区へ複数志願選抜制度の導入拡大が図られました。あわせて「県高等学校通学区域検討委員会」での検討を経て、一昨年11月、高校進学の選択肢確保と魅力ある高校づくりの更なる推進・発展を目的として、現行の16学区から5学区への再編と県下全学区への複数志願選抜制度導入を要旨とする最終報告が纏められました。

同最終報告では、この度の全県での通学区域の再編はおよそ半世紀振りとなることや一部学区では選抜制度を変更し間もないことから、遠距離通学等による負担の増加、志願の偏り、受験競争の激化、選抜制度変更による混乱などの課題が述べられています。県ではこれをもとに、昨年1月、新通学区域に係る基本方針を示すとともに、学区再編後の選抜制度の改善などの諸準備を進め、昨年12月に新通学区域に係る公立高等学校入学者選抜の改善について決定・公表されたところです。

高校選びは人生設計を考える上で重要な社会への第一歩です。高校で知り合った友は生涯の友となり、学校生活は人生の宝ともなります。より夢のかなえられる選択ができるようにしなければなりません。

そこで、制度変更にあたって、以下2点についてお尋ねします。

(1) 学区拡大に伴う生徒・保護者・進路指導担当教員間における情報共有について

1点目は、「学区拡大に伴う生徒・保護者・進路指導担当教員間における情報共有」についてです。

私の地元の明石学区では、全日制普通科高校における入学者選抜については、現在、複数志願選抜制度が導入されており、生徒が自分の学力、学校の特色・難易度などを見定め5校の中から選択しています。生徒・進路指導担当教員はもとより、保護者もこれまでに多くの情報を蓄積しており、通学の負担等も十分に考慮しながら志望校を決定しています。

今回の学区拡大に伴い、明石、加印、北播の3つの学区が新第3学区24校に、また阪神間と丹有の5つの学区が新第2学区34校に再編され学校数、通学エリアとも急激に拡大します。

これにより、確かに選択の幅は広がりますが、新学区全体を見据え志望校を選択・決定するために必要な情報の確保・蓄積はこれからであり、スムーズに志望校を決定できるのか懸念されます。とりわけ進路指導に影響を与える教員が日常業務に忙殺される状況下では、十分な進路指導を期待するのは困難だと思われます。

そこで、スムーズな志望校決定のため、県教育委員会として、生徒・保護者・進路指導担当教員間における情報共有をどのように図っていくのかお尋ねします。

(2) 第1志望加算点について

2点目は、「第1志望加算点」についてです。

昨年12月に発表された「新通学区域に係る公立高等学校入学者選抜の改善」において、複数志願選抜制度の県下全学区への導入に際し、これまで弊害が多いとされて来たその他校希望が新通学区域では廃止されることとなりました。これにより進学を保障するセイフティネットの効果が薄れ、第1・第2志望決定はより慎重を期すことになりますが、その動向を大きく左右するのが第1志望加算点です。

ある塾のホームページでは、実際の合否判定の際に学力検査の点数は0.5倍換算されることから、「加算点は入試本番の2倍の価値がある得点、実際に第2志望に合格するのは大変難しく第1志望合格90%に対し第2志望合格5~10%とかなり低い。」と紹介されています。

特に、第1志望加算点が大きい学区では、第2志望を選択しようとしても、その合格をより確実なものとするためにはより慎重に選択して志望校を変更するなど、本来の希望とは全く違う学校を志望せざるを得なくなるケースも生まれます。また第1志望と第2志望の合格者では入学後も実力差があるように思います。

これまで教育委員会は、複数志願選抜制度導入前の制度の違いによって受験者の平均点が異なり、その差によって学区ごとの第1志望加算点の設定も異なると説明しており、例えば、これから1つの学区となる第3学区内でも明石学区は15点、北播学区では35点と大きく異なっています。

そこで、受験動向を大きく左右する第1志望加算点について来年度中に見直しを行うとされていますが、これまでの制度・教育風土などが大きく違う学区を統合するにあたり、県教育委員会として、どのような基本方針で臨むのかお尋ねします。

7 警察官の不祥事根絶等へ向けた取組について

最後の質問は、「警察官の不祥事根絶等へ向けた取組」について、2点お伺いします。

(1) 警察官の綱紀粛正について

まず1点目は、「警察官の綱紀粛正」についてです。

本県における昨年の刑法犯認知件数は75,651件と、ピークであった平成14年の164,445件に比べ、大幅に減少しています。

これまでの様々な取組の成果と評価するものの、殺人などの重要凶悪犯罪をはじめ、空き巣・ひったくりなどの街頭犯罪、高齢者を狙った振り込め詐欺などの特殊詐欺やサイバー犯罪などが連日のように新聞やテレビで報道されています。引き続き、徹底した検挙と発生抑制に向けた取組をお願い致します。

さて、昨年12月、尼崎の連続変死事件の容疑者が県警本部内の留置場で自殺する事案が発生しました。先月検証報告書がまとめられましたが、二度とこのような事案が起こらないよう反省すべきところを反省し、改めるべきところをしっかり改めて頂きたく思います。

あわせて残念なことに警察官の不祥事が急増しています。生田署の巡査長が万引き容疑者を暴行、県警本部の警部補が万引き、セクハラで巡査部長戒告、情報漏洩の疑いで警部補ら4人送検、姫路署での供述調書改ざん容疑、社署での調書捏造事件など、ここ数か月の事案だけでもこれだけあります。つい先日も、捜査資料紛失により、計6人の警察官が本部長注意等の処分を受けたとの報道がありました。

過去の懲戒処分件数をみると平成20年は9件9人、21年は13件13人、22年は12件13人、23年は18件18人、24年は20件27人と、ここ5年で倍増しているほか、昨年の27人中10人が停職処分となるなど懲戒対象となった行為の質も劣化しています。

このような中、警察庁では非違事案防止対策委員会を設置し、警察官としての資質の不適格者の採用をどう防ぐかについての検討を行い、採用試験にポリグラフ検査を導入する案が出たとの報道もありましたが、そのようなことを真剣に議論しているのかと思うと、身命を賭して住民の安全・安心を守るべきはずの警察は一体どうなってしまったのだろうとの思いを禁じ得ません。

そこで兵庫県警察本部長就任にあたり、綱紀の粛正と県民の信頼回復にどう取り組むのか、本部長の決意のほどをお尋ねします。

(2) 警察官のメンタルケアについて

2点目は、「警察官のメンタルケア」についてです。

先日、神戸水上署の庁舎移転に当たり、署内に設置された留置施設を丁寧にご案内頂きました。単独または複数の被疑者が入る施設が横に並び、薬物使用などが疑われる被疑者が入る施設は、我々の日常生活では考えられない光景と言うのが私の印象です。看守勤務員の警察官は、これらの施設に入った被疑者と四六時中対面し動静を監視し続けなければなりませんが、その心理的なストレスは相当厳しいものではないかと容易に想像できます。

また、監視勤務員のみならず、警察官の職務は常に危険と隣り合わせであり、高い職業意識を保ちつつ常に緊張しながらその職務に当たっておられることと思います。加えて、私生活の面においても厳格な自己管理が社会的にも求められており、これらにより日々生じる精神的なストレスが先の質問で述べた不祥事発生の要因の一つと言っても過言ではありません。

個々の不祥事に対する処分も大切ですが、同時に警察全体として不祥事を生まない基盤をどう整えるのかということを考えていくことも重要と考えます。

また、警察学校入校者は、入校前から厳しい訓練を承知しているはずであるのに、平成23年度514人、24年度418人の入校者に対し、23年度は110人21.4%、24年度は84人20.1%が在校中に退職しています。民間企業であれば新入社員が半年や1年で2割も辞めてしまうことは考えにくく、本県にとって大きな損失であり異常事態であり、こうした中途退職者の発生を防ぐ必要があります。

そこで、警察本部として、すべての警察官が健やかな精神状態のもとで、自信と責任感を持って自らの職責をまっとうできるよう、そのメンタルケアについて、これまでどのように取り組んで来たのか、また、昨今の不祥事案件や警察学校在校中の途中退職者の増加を踏まえ、今後その取組をどのように充実して行くのか、ご所見をお伺いします。

岸口 実
(明石市)

一般質問

(盛  耕三 議員)[発言方式:分割]

1 業務量の把握と適正な職員数について

2 安心して子供を産むことが出来る環境整備について

(1) 産科の地域偏在について

(2) 助産所の設置促進について

3 中学校のクラス内における人間関係について

(1) スクールカーストについて

(2) いじめの背景としてのスクールカーストについて

質問全文

平成25年2月 第317回定例県議会 一般質問要旨案

質 問 日 : 平成25年2月26日

質 問 者 : 盛 耕 三  議員

質問形式 : 分割方式

1 業務量の把握と適正な職員数について

最初の質問は、「業務量の把握と適正な職員数」についてです。

県では、行財政構造改革に伴い平成30年度には平成19年度を基準として30%を目標に職員数の削減を図るとしており、今年度時点で基準年度に対し正規職員1,637人19.8%の削減となっている。

一方、基準年度に対する今年度の非正規職員数の比率を見たところ、臨時的任用職員数は38.8%、非常勤職員数は97.0%、日々雇用職員数は87.5%にそれぞれ減少、雇用対策に係る若年者等の雇用については131.9%に増加した結果、非正規職員全体としては92.1%に減少しており、正規・非正規の合計人数では82.5%に減少しております。

このような現状を踏まえ、以下2つの視点からお尋ねします。

まず1つ目の視点は、「業務量の把握」についてです。

年度当初の予算規模(一般+特別+公営企業)を比較すれば、平成19年度の3兆6,058億円に対し今年度は3兆2,377億円と89.8%となっております。

必ずしも業務量が予算規模に連動するとは言えませんが、仮に業務量が予算規模に比例すると考え、職員1人あたりの負担を増やさないとするならば、職員の削減比に合わせて、平成30年度には予算規模も70%とすることが求められますが、来年度当初予算(案)とともに示された財政フレーム(事業費ベース)によれば、平成19年度に比べた平成30年度の歳出規模は104.7%となっており、今後、職員削減により1人あたりの業務量はますます増えていくと予想されます。

ところで、皆さんもご存じだと思いますが、工場などの製造現場を持つ企業においては、前年度の実績から、直接製造に関わる作業員の1時間当たりの人件費(時間等価単価)を算出して、それを基にした工賃を見積金額に反映し受注競争に臨みます。

また、利益を出すため、コストダウンの一環として製造に要する時間を減らし、製造原価を下げる努力を惜しみません。各製造工程の作業時間を的確に把握するため、作業員自らが作業標準を作り作業内容の見直しを行うことが当然とされています。これにより受注製品の製造工数を計算することができ、納期に間に合わせるために、どの作業にどの程度の作業員を投入すれば良いかを把握することが出来るのです。

これに対し、設計など製造部門の間接要員には作業標準が無いものの、各工程に間に合うように事務や交渉などをこなさなければならず、担当者やその上司は、事前におおよその必要時間を把握して必要であれば要員の増員を要請します。

このように民間企業では作業時間の把握は当然とされております。

私は、行政においても、職員の健康管理を行うとともに効率的な事務執行や人員配置を行う観点から、これに倣い、それぞれの業務について業務量を定量的に把握するとともに、その執行に必要な業務時間を算定するための全庁的な業務標準を作成すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

2つ目の視点は、「適正な職員数」についてです。

業務量とそれに対する必要時間を定量的に把握することが出来れば、これを基に業務執行に必要な職員数を導き出すことが出来ます。

先ほど述べた平成30年度における職員数の削減比70%と財政フレームでの歳出規模の増104.7%から単純計算すれば、1人あたりの業務量は約1.5倍に増える計算となります。

このように今後も増え続けるであろう業務の見込み量から考えると、非常勤職員数について、仮にこれまでと同様、今後も減らしていくとすれば、正規職員の負担を増やすしかありませんが、それには限界があると考えます。

職員の負担が限界を超える部分について、非常勤職員の増で対応する、指定管理者を含めた民間へ委託する、あるいは、市町への権限移譲を実施するなどの方法も考えられますが、いずれの場合であっても、その業務に要する職員数をほぼ正確に把握しておく必要があるのではないでしょうか。

そこで、県として、正規職員の定数を定めるにあたってどのような基準に基づいているのか、現在の職員数は適正なものだと認識しているのか、また、来年度の第2次行革プランの見直しに当たり、平成30年度までの定員削減計画も見直す予定はあるのかについて、1つ目の視点に対するご見解も含め、知事のご所見をお伺いします。

2 安心して子供を産むことが出来る環境整備について

2番目の質問は、「安心して子供を産むことが出来る環境整備」についてです。

私の住む相生市では、平成12年11月に最後の産婦人科医院が産科の診療を止めてから、市内で子供を産むことが出来なくなりました。また、近隣の赤穂市民病院産婦人科の医師不足により、平成20年4月から平成23年6月までの間、同病院での新規の受診及び分娩は赤穂市民及び同市内に里帰りされた方に限るとされた時期がありました。

自分が住む場所あるいは親元で、安心して子供を産むことが出来るかどうかは、出産に思いを巡らせる世代にとっては大変重要なことであり、住まいを定める際に考慮する重要ポイントの一つにもなっています。

そこで、以下2点についてお尋ねします。

(1) 産科の地域偏在について

まず1点目は、「産科の地域偏在」についてです。

県内の各医療圏域における現状を比べてみると、産婦人科医の人数では、人口10万人あたりの人数は、神戸圏域が但馬圏域の2.2陪、面積100㎢あたりの人数は、阪神南圏域が但馬圏域の154倍となっています。また、産婦人科の数についても、人口10万人あたり及び面積100㎢あたりの数は、ともに、阪神南圏域が但馬圏域の2.7倍、194倍となっています。

県では、このように大きな地域偏在があることについては十分認識をしておられるとのことですが、その原因は、そもそも産科医の人数が少ないことに加え、出産数が少なくなり産科の経営が成り立たず、病院や医院が産科を廃止することなどもその要因の一つとなっていることはご存じの通りであります。

加えて、産科医特有の勤務環境・条件の悪さや近年多くなってきた医療訴訟への抵抗感などから、産科医を目指す医師が少なくなったことも、産科の地域偏在に拍車をかけています。麻酔科や脳外科でも同様ですが、医師が少なくなった病院では、ローテーションもままならず、残された医師にますます負担が掛かり、耐えきれずに辞めていくにもかかわらず補充が出来ない、という悪循環に陥っています。

そのような現状に鑑み、県は、産科医が不足している圏域においては、限られた産科医を集約し拠点病院へ配置することで、個々の産科医の負担を減らし、産科の存続を図っており、その取組自体は十分に評価ができます。

ただ、このことは面積が広い圏域においては、もともと点在していた産科医院や病院がもっと少なくなることを意味し、地元あるいはその近くでの出産をますます困難にさせることにつながります。このような環境では、若い世代は結婚して新居を構える場合、地元を選ぶことを躊躇せざるを得ないと推察できます。

しかし、県民福祉の向上と安全・安心な生活を守るべき我々としては、このような状況を憂いて、手をこまぬいてばかりはおられず、こうした地域偏在の是正を図っていくことが強く求められます。

そこで、県として、これまで産科の地域偏在の是正をどのように進めて来られたのか、また、今後、いつ頃までに偏在を完全に解消させることを目指し、どのように取り組んでいくのか、当局のご所見をお伺いします。

(2) 助産所の設置促進について

2点目は、「助産所の設置促進」についてです。

仮に産科の地域偏在の完全解消が困難であるとしても、県として何らかの代替的な手立てを打つ必要があります。それは、県として果たすべき県民の方々に対する義務でもあります。

私は、その最も有効な手立てとして、助産師をもっと積極的に活用していくべきだと考えます。つまり、現在、県が推進している病院内助産所の設置支援に加え、産科の開業が望めない空白域において病院外助産所の設置を積極的に促進していくことで、県民の要望に県として、より応えていくことが出来ると考えます。

ただ、助産所が増えていかない現状には、多くの課題があります。助産師の方のお話では、最も大きな課題は、連携病院を見つけることとのことですが、何故、連携を取ってもらえる病院がなかなか現れないのでしょうか。

産科医からすれば、重篤な妊婦を急に連れて来られても、処置をするのに大変な苦労がある。加えて、もしもの時には、産科医が責任を問われる。正常分娩のみを扱う助産所の乱立は、産科の経営を圧迫しかねない等の思いがあるでしょう。

一方、助産師からすれば、妊娠中の検査は連携病院を受診させるなど連携病院とは常に意思疎通を図ることができる。故に異常な状況は事前に判明し、適切な処置をすることで異常分娩になる割合は非常に少なくなる。また、病院ではなかなか出来ない産前産後の心身両面からの細やかなケアを行えるなど、助産所には大きなメリットがある等の思いがあるでしょう。

このように、それぞれの主張があるとは思いますが、助産所の設置を促進し、助産師の積極活用を図っていくためには、まずは産科医と助産師の間における信頼関係を築いて行くことが必要です。産科医と助産所は、相互に補完し合うことで、今以上に様々な課題に対応していくことが出来ると私は考えます。

そこで、今後の方向性として、病院内のみならず病院外も含め更なる助産所の設置促進へ向けて、産科医と助産師とがお互いに補完関係になることが出来るような政策を推し進めていくことが必要だと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

3 中学校のクラス内における人間関係について

3番目の質問は、「中学校のクラス内における人間関係」についてです。

「いじめ」、特に学校現場における「いじめ」ということが、1980年代半ばから、社会問題として報道機関等で大きくクローズアップされ始めました。

それ以降、多くの方々が検証を重ね、問題解決のために様々な取組がなされていますが、状況は酷くなるばかりだというのが、多くの方の見方ではないでしょうか。

県教育委員会においても、他人を思いやる心や人間性豊かな心の育成を図るとともに、スクールカウンセラーによる相談業務を始め、いじめを予防するための様々な取組を行っています。これまでの取組そのものについては、私も評価しておりますが、どこまで効果が出ているのかは疑問を感じています。

以上のことを踏まえ、以下2点についてお尋ねします。

(1) スクールカーストについて

1点目は、「スクールカースト」についてです。

同学年の児童や生徒の間で共有されている「地位の差」としての「スクールカースト」について、東京大学社会科学研究所の鈴木翔氏は、生徒側の捉え方として、『スクールカーストで上位グループに位置する生徒の特徴は「人気者で気が強い」。下位グループに位置する生徒は特徴がなく、強いて言えば「地味で目立たない」。下位グループは、クラスに影響力を持つ上位グループに恐怖心を抱いており、この地位は固定的で、クラス替えがあったとしても、努力では変えられない。上位の生徒と下位の生徒が同じことをしても、教師の反応が違うと捉えている』と分析され、これらのことから、『生徒側は、スクールカーストを「権力による序列」と捉えている。』と説明されています。

その一方で、教師側の捉え方を『上位と下位の生徒の特徴こそ生徒側と同様に感じているが、スクールカーストを、積極性、生きる力やコミュニケーション能力といった「能力」による序列だと肯定的に捉えている。』と分析され、『スクールカーストの中で、自分の「能力」の足りない部分に気づき、「努力」や「やる気」を通じて社会性を身に付けることで、この序列は改善可能と捉えている。』と説明されています。

仮に、これらの分析が事実であるとするならば、この「スクールカースト」が一人ひとりの生徒に与える影響には計り知れないものがあります。すなわち、一つには、スクールカーストの中で下位に置かれた生徒は、クラスメイトから身分の低い目下の存在だと見なされて、いじめの標的になりやすくなること、二つには、たとえいじめに遭わなくとも、クラスが居心地の悪い場所となるばかりか、自分に自信を無くし、学校生活への適応だけでなく、将来にわたり大きな影響を及ぼす恐れさえあります。

にも関わらず、いじめのように問題が顕在化しない限り、クラス内における生徒の人間関係は、大人の間では「ささいなこと」とされ、これまで解明すべき重要な問題として捉えられてこなかったと思われます。

しかし、近年、学校現場で頻発しているいじめ問題の大部分は、この「スクールカースト」の存在が大きく影響していると考えれば、非常に的確な分析と説明ができるのではないでしょうか。

そこで、これまであまり重要視されて来なかったクラス内における生徒間の人間関係について、平時から、市町教育委員会とも連携し、個々の教師一人ひとりがその状況を把握できるよう積極的に支援していくとともに、県教育委員会としても、その現状について、より正確に把握しておくべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

(2) いじめの背景としてのスクールカーストについて

2点目は、「いじめの背景としてのスクールカースト」についてです。

先程紹介した鈴木翔氏は、いじめとスクールカーストの関係について、『日本におけるいじめは、絶対的な優劣関係が生じやすい縦のつながりの場面ではなく、同じ学年の児童生徒が集められた教室で多く起こるが、自他ともにはっきりと認識できる定義通りのいじめは、実はかなり少ない。教室という閉じた空間で大部分の時間を過ごさなければならない日本の学校は、効率的に知識を伝達しやすいという利点がある一方で、本人に隠れて悪口を言う、くすくす笑う、無視するといった、「コミュニケーション操作系」と言われるいじめを生み出しやすいという副作用を持つ。いじりや悪ふざけなどを含め、こうした「いじめのようなもの」は、ささいなことと見逃されがちではあるが、それがいじめと認識されるか否かに関係なく、行為それ自体を対象として検証する必要がある。「スクールカースト」はそのような状態により近い現象である。』と分析されております。

県教育委員会では、今年度の新規事業で、「他人を思いやる人間性豊かな心」を育むため、「学級経営指導員」として教員OB5人を小中学校へ派遣し、若手教員を中心に指導力向上を図るとともに、高校40校において「いじめ対策教育に関する実践」を実施するなど、いじめ防止に向けた取組を強化されています。

しかし、言うまでもなく、それらの施策が十分に効果を発揮するためには、現に起こっている事柄を十分に把握することが必要であります。つまり、どのようなことであれ、根本的な解決を図るためには、その原因ないし背景を綿密に分析・検証し、これに的確に対処していくことが肝要であります。

そこで、来年度、県立教育研究所の心の教育総合センターにおいて、大学等の専門機関と連携していじめ問題に関する研究を推進するとされていますが、その研究の中で、学校現場でのいじめ根絶を目指し、いじめの原因ないし背景としての「スクールカースト」の現状についても分析・検証を行い、有効な対策を検討していくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

盛 耕三
(選挙区:相生市)

(徳安 淳子 議員)[発言方式:一問一答]

1 女性の活躍による社会の活性化について

(1) 女性警察官が働きやすい職場環境づくりについて

(2) 消防団の充実について

2 教育現場における諸課題への対応について

(1) 体罰防止に向けた対策について

(2) 問題行動への対応について

3 山手幹線の大阪府側との接続について

質問全文

第317回 平成25年2月定例会 一般質問

質 問 日:平成25年2月27日(水)

質 問 者:徳安 淳子 議員

質問方式:分割方式

以下、質問をいたします。なお、質問は分割方式により行います。

1 女性の活躍による社会の活性化について

質問の第1は、「女性の活躍による社会の活性化について」であります。

少子高齢化の進展や人口減少社会の到来に伴い、労働力人口が減少するなか、意欲ある女性が活躍できる環境を整備していくことは、労働力確保の観点のみならず、男女共同参画社会の実現や社会を活性化していく観点からも不可欠であります。

その中で、今回は女性警察官、女性消防団の2点について、それぞれお伺いします。

(1)女性警察官が働きやすい職場環境づくりについて

はじめに、「女性警察官が働きやすい職場環境づくりについて」お伺いします。

警察では、女性警察官の採用に積極的に取り組んでおり、平成14年度以降、毎年1,000人を超える採用を行っており、その数は年々増加しています。昨年度も、約1,200人が採用され、新規採用者総数の10.9%を占めており、昨年4月1日現在、全国の都道府県警察では、女性警察官約1万7,700人が勤務していますが、警察官に占める女性警察官の割合は6.8%に留まっています。

本県警察においては、「兵庫県警察における女性警察官の採用・登用拡大に向けた計画」に基づき、平成31年4月1日までに警察官に占める女性警察官の割合を9%とするべく、年間採用予定人数を50名程度に拡大しています。昨年4月1日現在では、801名が勤務し、その割合は、6.8%となっています。

また、女性警察官の幹部への登用についても、進めているといわれていますが、都道府県警察に採用され、警部以上の階級にある女性警察官は、昨年4月1日現在でわずか224名にすぎず、本県警察においても、現在6名しかいません。その内訳は警視4名、警部が2名であり、全警察官の0.05%、女性警察官の0.7%に過ぎず、女性警察官の幹部職員への登用は限りなく皆無に近い状況と言わざるを得ません。

女性警察官は、体力面で男性警察官には劣る面があることから、喧嘩の仲裁や交番や駐在所で夜間に一人で勤務出来るかといえば、難しい面はありますが、その一方で、性犯罪や電車内での痴漢などの被害にあった女性への事情聴取など、警察には、女性が行うことがのぞましい業務が数多く存在します。ましてや、逮捕された女性被疑者の身体捜検を男性警察官が行うことはできません。

女性に絡んだ事件に対しては、女性警察官による対応の方が望ましい場合が多く、DV・ストーカー・性犯罪を中心に、女性警察官の活躍が求められる場面は今後ますます増大していくことが見込まれます。

このように、女性警察官は、警察にとってまだまだ貴重な存在でありますが、警察現場を見渡してみると女性専用の仮眠室やシャワー設備を設置している警察署や交番は、非常に少なく、女性警察官の採用を積極的に進めようにも受入体制が整っていないと言わざるを得ません。今後は、少子化が進み、警察官希望者の減少が懸念され、能力・適性等を有する女性警察官の確保が困難になっていくことが見込まれることから、女性警察官が働きやすい職場環境を作っていくことが、女性警察官を積極的に採用し、登用していくうえで、真っ先に取り組むべき課題であるといえます。

そこで、女性警察官の特性を活かし、活躍の場を広げることが重要であると考えますが、女性警察官が活躍できるよう働きやすい職場環境づくりに向けてどのように取り組んでいこうとされているのか、現状抱える課題とともにお伺いします。

(2)消防団の充実について

この項目の2点目に、「消防団の充実について」お伺いします。

東日本大震災や一昨年の紀伊半島を中心に大きな被害を受けた台風12号災害における消防団の活躍は、記憶に新しいところであり、消防団が改めて注目される契機になったのではないかと感じています。

特に、大規模災害時には、構成員が地域住民である消防団は、地域の実情に精通しているうえ、動員力や即時対応の面で優れており、危険箇所の警戒や住民への避難の呼びかけ・誘導、さらには行方不明者の捜索活動にあたるなど、地域の安心・安全を確保するために欠かせない組織となっています。

しかしながら、既に周知の事実となっていますが、消防団員数は全国的に下降の一途をたどっています。昨年4月1日現在の県内の消防団員数は44,077人となっており、平成6年度と比較して、約7,200人、比率にして約14%減少しています。

また、少子高齢化の影響もあり、平均年齢も年々上昇しているうえ、消防団員に占める被雇用者団員、いわゆるサラリーマン団員の割合が約7割を占めており、被雇用者が入団し、活動しやすくなるよう活動環境を整えていく必要があります。

消防団は、災害の無い平常時においては、訓練のほか、応急手当の普及指導、住宅への防火指導、特別警戒、広報活動など多岐に渡っており、地域の防災リーダーとして幅広く活動し、地域における消防力・防災力の向上だけでなく、地域コミュニティの活性化にも大きな役割を果たしています。特に、昼間は男性が仕事のために留守の場合が多く、地域の安全を守っていく上で女性消防団員の役割は大きくなっています。また、一人暮らしの高齢者や寝たきり家庭等への防火活動など、各家庭への訪問による活動は、きめ細かな気配りができる女性団員の方がより適しているように思います。

これまでも、消防団へ女性の登用は積極的に行ってきており、本県では昨年4月1日現在386名の女性団員が活躍されています。震災前の平成6年の110名と比べて約3.5倍となっており、飛躍的に増えてはいますが、消防団員数に占める割合はわずか0.9%にすぎず、1%にも満たない状況であります。

私の地元尼崎市では、既に32名の女性団員が在籍し、市民の防火普及啓発を中心に活躍されています。また三田市では、昨年1月に女性消防団「三田ファイヤーレディース」が発足するなど、積極的な動きがある一方で、県下の21市町においては、いまだ女性消防団員の採用が無い状態が続いています。

今後、災害の形態が複雑化、大規模化していくことが見込まれる中で、消防職員のみで地域を守っていくことが困難な場合も十分に想定されることから、地域の実情を熟知し、動員力を有している消防団の活動がますます期待されるところであります。

そこで、消防団をより一層充実させていくには、女性団員をこれまで以上に積極的に確保していく必要があると考えますが、県内市町に対し、消防団の充実に向けて今後どのような働きかけや支援を行っていこうとされているのか、消防団における女性の役割と併せてご所見をお伺いします。

2 教育現場における諸課題への対応について

質問の第2は、「教育現場における諸課題への対応について」であります。

(1)体罰防止に向けた対策について

この項目の1点目は、「体罰防止に向けた対策について」お伺いします。

大阪市立桜宮高校で顧問教諭から体罰を受けた男子生徒が自殺した問題は、学校現場に重い課題を突きつけています。自殺原因は、暴行が起因しており、絶対に許されてはならない行為であります。また、その後の一連の報道で、体罰問題は桜宮高校に限らず、本県においても体罰が行われていた学校があったことが明らかになっており、誠に遺憾であります。

学校教育法第11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」と定められているとともに、同条のただし書きには、「体罰を加えることはできない。」と定め、懲戒が体罰に及ぶことを禁止しています。

戦前から現在に至るまで、わずかな期間を除いては体罰は一貫して、法律で禁止されており、教育関係者であれば、この規定はよく知っているはずです。にもかかわらず、「体罰に至る懲戒」は、無くなる気配が全くありません。

文部科学省は、2007年2月に「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」という通知を出し、その別紙として「学校教育法11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」が示されました。その考え方の中には、「児童生徒に対する有形力の行使により行われた懲戒はその一切が体罰として許されないものではなく、教員が児童生徒に対し行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある」とのことであります。「有形力行使による懲戒」が体罰に該当するかどうかは、「個々の事案ごとに判断する」とのことであり、タイトルのとおり「考え方」であって、現場の教員が判断できる「基準」といえるものにはなっていません。その後の2009年4月に出された最高裁判決も、この通知を追認しています。

毎日新聞が今月2日から3日にかけて、実施した世論調査によれば、体罰を「一切認めるべきでない」との回答が53%あった一方で、「一定の範囲で認めてもよい」との一部容認派が42%も占めていました。この結果からは、体罰を与えることが効果的な教育方法であるとの認識を持つ方が教員も含めて一定程度いるのではないかと推測させるものであります。

県教委でも一連の体罰事件の後、当該通知をもとに、体罰防止の徹底を図ったと伺っていますが、体罰問題を再発させないためには、「体罰に至る懲戒」がなぜ起こるのか研究し、予兆のある教諭に対して指導を行えるよう対策を講じていく必要があります。

そこで、県教委として最近の一連の体罰問題をどのように受け止めているのか、県教委として再発防止に向けて今後どのような方針で臨んでいこうとしているのか、教育長にご所見をお伺いします。

(2)問題行動への対応について

次に、「問題行動への対応について」お伺いします。

体罰教師の問題がある一方で、児童生徒に問題があるケースも相当あります。大阪市立桜宮高校の事件発生後、神奈川県小田原市の中学校では授業に遅れてきた生徒の入室を促した男性教諭が生徒から「死ね」「ハゲ」などの暴言を受けて、2年生の男子生徒16人を平手打ちする体罰事件がありました。

授業に遅れてきたうえ、教諭に「死ね」「ハゲ」などと暴言を吐いたとのことで、学校教育以前の問題であります。社会生活上必要な倫理観、道徳観などの本来家庭で行うべき教育がなされておらず、家庭での教育力の低下を如実に表しているものではないかと感じています。

学校では、教師の懸命な取組を行っているにもかかわらず、対教師あるいは生徒間の暴力行為やいじめ、施設・設備の毀損・破壊行為等は依然として多数にのぼり、一部の児童生徒による授業妨害等も見られます。もちろん、私の身近なところでも、学級崩壊の事例をよく耳にします。

度を超した不良行為やいじめ、あるいは周りに著しく迷惑を及ぼす行為に対して、教師が口頭で指導しても、全く埒が明かない場合、実際問題として、教師はどのように対応していけばいいのでしょうか。一定の有形力の行使を伴う懲戒が必要な場合もあるのが現実であるように思います。

先の小田原市のケースにおける平手打ちが、先ほどの質問で紹介した判例に照らして、本当に体罰に当るのか、いささか疑問に感じる部分もありますが、当該教諭は生徒や保護者に謝罪し、当分の間は教壇に立たないということであります。

有形力の行使が即体罰に繋がるものではありませんが、最近では、教師の体罰が過度に問題視されるようになってきていることと相俟って、現実的には、「有形力の行使イコール即体罰」という風潮が教師側にも児童生徒側も含め世の中全体に蔓延しているように思います。

児童生徒は、どんなに悪いことをしても先生が手も足も出せないことを見透かして、好き放題な行動を行い、教師は、どんなに酷い挑発やイジメ、暴言を受けても黙っていなければならない状況ではないかと感じています。

これでは、現場の教師は萎縮し、他の多くの児童生徒への教育の妨げになってしまします。現場の教師が、統一した見解で萎縮せずに毅然とした態度で指導にあたることができるよう教育委員会がしっかりと学校現場をサポートできる体制を整えていく必要があります。

そこで、問題行動が実際に起こったときには、十分な教育的配慮のもと、現行法制度下において採り得る措置である出席停止や懲戒等の措置も含め、毅然とした対応をとり、教育現場を安心できるものとしていただきたいと考えますが、本県における問題行動の現状及びその対応状況についてお伺いします。

3 山手幹線の大阪府側との接続について

最後に、「山手幹線の大阪府側との接続について」お伺いします。

この件については、一昨年の2月定例会の一般質問において、災害時には冠水するおそれがある国道43号及び2号の代替輸送手段として、山手幹線の大阪府側の接続が必要であることから、大阪府への働きかけについて、質問を行いました。

関西広域連合長でもあります井戸知事からは、「山手幹線と接続する三国塚口線の整備は、道路ネットワークの形成や広域的な防災上の観点から重要な課題である」と深い理解が示されるとともに、「県としては、今後とも迂回路対策を進めるとともに、尼崎市とも連携しながら、連絡調整会議などの場を活用して、大阪府側との早期接続が図られるように取り組む」とのご答弁がありました。

現在、大阪府側では、都市計画道路三国塚口線のうち都市計画道路穂積菰江線との交差部について今年度末の完成に向けて整備を進めています。しかしながら、兵庫県側が完成してから丸6年が経過しようとしていますが、接続部の対策としては、答弁にもありました大阪府域での迂回路対策についても進展がみられず、地域住民である戸ノ内の方は、苛立ちを感じています。

また、兵庫県側との接続部分である府道大阪池田線との交差部から西側部分については、阪急電鉄神戸線との立体交差計画や地元の合意形成に多くの課題があることから事業計画すら目途がたっていないとお伺いしています。

災害への対策が東日本大震災以降、特に急がれているところですが、災害は道路整備の完了を待ってはくれません。現在の迂回路も非常に狭く、地域住民は不安な日々を過ごしています。

大阪府は、「府県間との整備にあたっては、兵庫県側からの交通流入に対応するため、まずは、府道大阪池田線との交差部から東側の整備により交通容量を確保する必要があり、その後事業を進めていく計画である」としていますが、兵庫県側からの交通流入に対しては、交差する幹線道路でもある府道大阪池田線への迂回により十分可能ではないかと思われます。

地域住民にとってみれば、自治体の境界は生活するうえで、何ら関係がありません。災害発生時に備えて、隣接する自治体との連携を図っていくことは、大変重要であり、府道大阪池田線との交差部以東と並行して、西側部分についても、早期に事業化できるよう、大阪府に対して強く働きかけていく必要があります。

そこで、山手幹線の大阪府側との接続について、県として現状をどのように認識しており、今後、県として大阪府に対して今後どのような方針で臨んでいくのか、知事の決意とともに改めてお伺いします。

徳安 淳子
(選挙区:尼崎市)

(小池 ひろのり 議員)[発言方式:分割]

1 県立大学環境防災学部・学科の創設について

2 神戸空港の活性化による兵庫の発展について

3 がん対策推進について

(1) がん検診受診率向上への取り組みについて

(2) 小児がん対策の推進について

4 県立(知的障害)特別支援学校の新設について

5 再犯率低減に向けた対策について

質問全文

第317回兵庫県議会 一般質問(平成25年2月28日)

質 問 者:小池ひろのり 議員

発言方式:分割方式

1.県立大学環境防災学部・学科の創設について

来年は、阪神・淡路大震災が発生して20年目になります。

私は、20年という節目に向けて、被災地兵庫県として相応しい後世に残る事業を行うべきだと考えています。

私たちは18年前の阪神・淡路大震災の教訓として、「防災は人」であることを学びました。いかに多くの資材を投入して高価な設備やシステムを整備しても、結局はそれを運用するのは人であり、また、危機事態に直面した時、適切に対処する人の育成こそ自然災害や危機対処の原点であるとの認識を新たにしました。

兵庫県では11年前に、全国に先駆けて県立舞子高校が環境防災科を設置しました。以来、同校は、県下だけでなく全国の高校での防災教育の先導的役割を果たしております。防災教育を生徒の“生きる力”を育む教育として位置付け、単に知識を吸収するだけではなく、学んだ知識や技術を使う場として捉えています。知識として留まるのではなく、将来的に“やる気・夢を持った生徒”を育て、実践に結び付けることを目指しています。

さらに、神戸の中学校でも生徒会を中心に「つながろう仙台・神戸プロジェクト」を立ち上げ、防災や復興支援を考える取り組みを行っています。このように兵庫県下の中学・高校が防災・減災に関して全国をリードする役割を果たしていることを誇りとさえ感じます。

一方、大学では、一昨年8月に、県立大学に防災教育センターが誕生し、本年度からは防災の専門教育をユニット制で、全学生が履修出来るようになりました。また、宮城大学と連携して、産業・医療福祉・まちづくりの分野で、地域再生の原動力となるような人材育成を目指していると伺っています。兵庫の防災教育が一歩一歩前進していることを評価し、関係者のご尽力に改めて敬意を表するものです。

しかし、残念ながら未だ大学に環境防災学部・学科はなく、本格的に防災教育を取り組む“場”がありません。だからこそ私は、永年、県立大学環境防災学部・学科の創設を訴え続けているのです。

私は、客員教授として永年、大学に籍を置いてきました。従って、大学の自助努力での学部・学科の新設が、大学にとって非常に難しい事業であることも理解しています。学部・学科の新設は、既存の学部・学科の削減に繋がり、よほどのことでない限り、大学内の合意が得られないからであります。この問題を大学自治だけに任せていては、なかなか現実化するものではありません。設置者である県が、大所高所から判断し、推進することが必要だと考えます。

そこで、近い将来、かなり高い確率で発生すると言われている次なる大地震・津波災害などに備えると共に、阪神・淡路大震災20年の節目に、兵庫の防災教育の拠点として、県立大学に環境防災学部・学科の創設を強く求めますが、当局のお考えをお聞かせください。

2.神戸空港の活性化による兵庫の発展について

昨年7月に関西国際空港と大阪国際空港が経営統合され、一体運営されるようになりました。さらに、関西全体の航空需要をより一層高め、利便性向上と関西経済の発展のためには、神戸空港を含めた3空港、それぞれの特色を最大限に活用し、一体運用していかなければなりません。

そこで、立地条件にも恵まれ、更なる需要が見込める神戸空港の活性化を目指すべきと考えます。

神戸空港の近くには、理化学研究所の「京」コンピュータやSACLAなどの世界有数の科学技術基盤の利活用によって、我が国のものづくり技術の高度化、難病などの薬品開発、地震・津波災害のシミュレーションなどを研究する人材育成と教育の拠点があります。また、隣のポートアイランドには、神戸学院大学・兵庫医療大学・神戸夙川学院大学の他に、県立大学大学院応用情報科学研究科、甲南大学フロンティアサイエンス学部、神戸大学統合研究拠点や神戸低侵襲がん医療センター、神戸国際フロンティアメディカルセンターなども集積しています。

さらに県立こども病院のポーアイへの移転や、多くの関連企業の進出もあり、高度専門医療機関の整備と共に、産学官挙げて先進医療拠点づくり、人材育成拠点づくりで、世界の先端医療特区になりつつあります。このような環境に恵まれた神戸空港をフル活用し、是非兵庫の発展と関西の復興に結び付けて行きたいと考えます。

そのためには、昨年7月に兵庫県・神戸市・神戸商工会議所が連名で出した「神戸空港の機能充実に関する要望」①運用時間の延長 ②発着枠の拡大 ③国際チャーター便運航規制の緩和などを早急に実現する必要があります。

現在の運用時間は、7時から22時までで、平成23年度の全体搭乗率は70%ですが、早朝・夜間の羽田便の搭乗率は、開港以来それぞれ73%、84%と利用度が高く、早朝・夜間の時間帯の首都圏と関西圏を結ぶ主要路線としての神戸空港の価値があります。また新たなビジネスと観光ニーズで更なる需要も見込まれます。是非、運用時間の延長と1日30便が上限という発着枠の拡大を求めたいと思います。

さらに国際チャーター便の規制緩和は、観光の誘客に結びつき、国際観光都市・神戸を元気づけるものであり、確実に兵庫の発展を導きます。また国際会議や姉妹都市との交流、医療の国際化の促進などのためにも規制緩和は不可欠であると考えます。

このような観点から、県・市協調して国に対して神戸空港の規制緩和などを積極的に働きかけ、県としても神戸空港を核とした活性化を全力で推進し、兵庫の発展に結び付けるべきと考えますが、当局のお考えを伺います。

3.がん対策推進について

(1)がん検診受診率向上への取り組みについて

がんは、日本で1981年から死因の第1位であり、2011年には年間約36万人が亡くなり、生涯のうちに約2人に1人が、がんにかかると推計されています。こうしたことから、依然としてがんは、国民の生命と健康にとって重大な問題です。本県でも、がん対策推進計画が策定され、がん予防と早期発見の推進、医療体制の充実が謳われています。そして、積極的にがん対策が取り組まれることになっています。

しかし、残念ながら本県の取り組みで、必ずしも効果が出ているとは言えない現状にあると思っています。例えば、がんの早期発見の為には、がん検診が必要です。兵庫のがん検診受診率は、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮がんのすべてで、全国平均より3~5ポイント低く、子宮がんにおいては、20歳代で12.9%と大変低いのが現状です。

推進計画では、がん検診受診率を50%に上げ、20歳代を2倍の26%にするとなっていますが、どのようにして上げるのかが重要です。

そこで、がん対策推進のために、検診受診率を具体的にどのように高めていくのかをお伺いします。

(2)小児がん対策の推進について

小児についても、がんは病死原因の第1位で、死亡原因の約7%を占めます。また、乳幼児から思春期・若年成人では、発生しやすいがんの種類も異なり、脳・脊髄腫瘍、神経芽細胞腫、軟部腫瘍を初めとした固形がんや白血病などの血液がんなど、希少で多種多様ながんがあります。

小児がんの年間患者数は、全国で2,000から2,500人と言われ、小児がんを扱う医療機関は、全国で約200と推定されます。そして、医療機関によっては患者数の少ない所もあり、専門性の高い医療が受けられていないとの懸念があります。

また、成長発達期の治療で、治癒した後も発育・発達障害、内分泌障害、臓器障害、性腺障害、高次脳機能障害、二次がんなどの小児特有の合併症の問題があります。長期にわたって日常生活や就学・就労に支障をきたすこともあり、患者の教育や患者を支える家族に向けた長期的な支援や配慮が必要となります。さらに、治療や医療機関に関する情報提供、再発への不安などに対処する相談支援体制や、セカンドオピニオンなどの充実などが求められています。

昨年6月に閣議決定された国の「がん対策推進基本計画」では、小児がん対策を重点的に取り組むべき課題とし、医療・人材育成・相談体制の整備が新たな目標に掲げられました。本県に於きましても、小児がんにおける課題に取り組み、小児がん患者や小児がん経験者が、安心して暮らせる社会を構築する必要があると考えます。

そこで、次期がん対策推進計画では、小児がん対策をどのように位置づけて取り組もうとされているのか、当局のご所見を伺います。

4.県立(知的障害)特別支援学校の新設について

現在、少子高齢化が進んでいます。教育現場においても、児童生徒数が減少し、学校の統廃合が取りざたされております。

しかし、知的障害の特別支援学校高等部への進学希望者は、逆に増えております。親が、障害のある子供に「生きていく力をつけてやりたい」という思いもあり、高等部への進学希望者が増えてきていると聞いております。

県では、阪神・東播磨地域で立派な特別支援学校を新設し、姫路地域でも新設に向けて整備を進めるなど、順次特別支援学校の充実に向け努力していることを、私は大いに評価をしております。しかし、神戸市内の知的障害の児童生徒数は、平成18年から7年間で約1.5倍に増え、今後も進学希望者は増え続け、神戸市教委の推計によると、現在よりも500人近く増え、大変な状況になっています。

ただでさえ狭い敷地の既存の学校で対応してきたため、運動場に仮設校舎を建て、特別教室を不足する教室に転用して応急避難的な対応でしのいでいます。継ぎ足し、継ぎ足しのプレハブの仮校舎で、エレベーターもなければトイレさえ不十分な状態の学校もあります。しかし、それももう限界に来ています。

兵庫県では、すでに三田市と伊丹市に職業科の県立高等特別支援学校を運営しており、就労支援のノウハウも蓄積されています。そこで、卒業後には自立できる職業訓練的な県立高等特別支援学校を神戸市内に創設し、一人一人の生徒の適性に応じた就労ができる環境整備を進めて頂きたいと思います。

札幌や横浜、さいたま、新潟、堺、岡山などの政令指定都市には、県立の高等部の特別支援学校があります。同じ政令指定都市の神戸でも、県が積極的に取り組んでも何ら問題がある訳ではありません。

このことは、神戸市からも強い要請があり、神戸市内選出の県会議員団で作る“神戸会”にも重要施策に加えて頂きました。

これまでの協議の経緯や県と政令都市との役割分担など課題は多いとは思いますが、是非、神戸市と連携し、高等特別支援学校の新設も含めた中長期的な推進計画の策定など、特別支援教育の充実に向けて取り組む必要があると思いますが、県当局のお考えをお尋ねします。

5.再犯率低減に向けた対策について

昨年6月、大阪で通り魔殺傷事件が発生しました。犯人は以前にも刑事事件を起こしており、刑務所出所間もない再犯事件でした。出所後、仕事がなく、住む家もなく、生活苦から自暴自棄に陥り、「誰でもよいから襲いたかった」と供述しています。これでは、被害者及びその家族はたまったものではありません。被害者のご冥福をお祈り申し上げますと共に、再犯防止に向け早急な対策を講じなければならないと考えます。

法務省の犯罪白書によると、一般刑法犯により検挙された者のうち再犯者は、平成9年から10年間増加し続け、平成19年から若干減少しているものの、23年は133,724人で、再犯者率は43.8%と大変高い数値を示しています。また、入所受刑者の再入者率も16年より毎年上昇し続け、23年は57.4%と非常に高いものとなっています。

さらに、入所度数が多いほど累積再入率は高く、ほぼ半数を超える者が5年以内に再入所しており、入所度数を重ねるに従って更生改善の困難さが増しているという現状です。私は、これらの状況にしっかり着目し、対策を講じなければ、犯罪を抑え安全・安心な社会を迎えることは出来ないと思っています。

一方、一人の犯罪者を検挙し、裁判にかけ、刑務所での収監など刑が満期になるまでにかける税金は膨大なものです。犯罪を起こさせない環境づくりに向けた施策が、費用対効果の面でも重要な課題であると認識されるようになってきており、特に異常に高い再犯率の抑制が、今最大の課題であると言われています。

しかし、現在、刑の満期と同時に法務省などの支援は殆どなくなり、現実には就労できずに生活さえ営むことが困難な状態の者が少なくありません。就労に関しては、国のハローワーク、生活保護などの福祉支援は、市町の福祉事務所、犯罪が再び起これば警察と各機関がバラバラで対応しており、大変効率も悪い状態です。

私は、出所者の就労支援や福祉支援について、関係機関が調整・連携し、地域社会で立ち直りを支援する仕組みを作ることが重要なことだと考えます。

大阪府では、全国初の“子供を性犯罪から守る条例”を制定しました。犯罪者は刑期満了から5年以内に住所を定め、性犯罪者が自らの住所を届け出ることを義務付け、相談などの社会復帰支援を受けるという、従来の犯罪を覆い隠す傾向から発想の転換を図り、社会復帰支援対象者と面談・相談に応じ、積極的に再犯防止策を打ち出しています。

そこで、兵庫県に於きましても、再犯率を低減し、安全・安心な社会にするために、例えば、高齢者や障害のある出所者への支援を地域生活定着支援センターが行っているように、県がもっと積極的に関係機関との調整や連携を行い、更なる施策が必要であると考えますが、当局のお考えをお伺いします。

小池ひろのり
(選挙区:神戸市中央区)