議会の動き

決算特別委員会 23年09月定例会

理  事  北上 あきひと 議員(川西市及び川辺郡)
委  員  竹内 英明   議員(姫路市選出)  
中田 英一  議員(三田市選出)

北上 あきひと 議員
企画部・県民生活部・部外局 | 福祉部 | 保健医療部 
産業労働部・労働委員会 | 土木部 | 総括審査

竹内 英明 議員
財政状況 | 農林水産部 | 病院局 | 企業庁

中田 英一 議員
総務部・財務部・危機管理部 | 公安委員会 | 農林水産部 | 環境部
まちづくり部 | 教育委員会 | 企業庁

<北上 あきひと 議員>
●企画部・県民生活部・部外局 
1 子どもの視点に寄り添った交通安全対策について
2 LGBTQ等セクシュアルマイノリティの人権確立について
(1)LGBTQ等セクシュアルマイノリティの人権確立に向けた取組の現状と課題について
(2)「パートナーシップ制度」「ファミリーシップ制度」の導入に向けた取組について

全文

令和4年度決算特別委員会 【企画部・県民生活部・部外局】

質問日:令和5年10月5日(木)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 子どもの視点に寄り添った交通安全対策について

警察庁の調査によると、2022年に全国で起きた子どもの関連する歩行中の交通事故のうち、年齢別死傷者数をみると、5歳が185人、6歳になると417人に増え、7歳では676人と最も多く、10歳になると347人とほぼ半減します。子どもの交通事故のうち7歳児が絡む事故が多く「魔の7歳」とも呼ばれているそうです。兵庫県内のデータを調べてみると、5歳が23人、6歳が25人、7歳が40人、8歳が34人、9歳が42人、10歳が17人であり、9歳が最も多いものの、その傾向はほぼ全国と同様です。

安全行動学が専門の大阪大学大学院の岡真裕美特任研究員は「保育園・幼稚園の頃は、保護者らの送り迎えがあったが、小学校に入学し7歳頃には一人での行動が増える。その一方、交通ルールへの理解が不十分で、危険予測が難しいために事故にあうケースが後を絶たない」と指摘しています。また、子どもは大人に比べて視野が狭く「よく見て」と言うだけでは不十分で、具体的にどこを見て何に気を付けるべきか、一緒に歩いて注意するポイントを教えることを勧めておられます。

当局におかれては子どもを対象にした「交通安全教室」を開催する等、交通事故防止に尽力されていると認識するものです。子どもの視点に寄り添ったより効果的な事業展開によって、更に子どもたち自身が安全に行動できる力を養うことのできるよう努めて頂きたいと考えます。痛ましい事故を減らすために一層の取組を期待しますが、当局のご所見をお伺いします。

2 LGBTQ等セクシュアルマイノリティの人権確立について

(1)LGBTQ等セクシュアルマイノリティの人権確立に向けた取組の現状と課題について

本県においては、LGBTQ等セクシュアルマイノリティの人権確立について様々な施策を展開されているものと認識します。2020年度には、県民の理解促進を図るためのリーフレットを作成し啓発に努めるとともに、職員向けガイドラインを作成し県職員や市町職員への研修に活用しておられます。2021年度からは、パートナーシップ制度を実施している県内市町に立地する県営住宅について、LGBTQ等のパートナー同士の入居申請が可能となりました。また、昨年度9月からは専門相談窓口が開設されているところです。真摯で前向きな取組に敬意を表すものですが、当事者の苦悩や困りごとは多様であり、今後一層の施策展開が求められると考えます。セクシュアルマイノリティの人権確立に向けた取組の現状と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

(2)「パートナーシップ制度」「ファミリーシップ制度」の導入に向けた取組について

本年6月の県議会本会議で齋藤知事は、LGBT等性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入を目指すことを明言し、加えて「早ければ来年度」にも制度をスタートする意向を示されました。現在、当局におかれては、先行する自治体の事例を研究するとともに、学識者や当事者団体、民間企業、県内市町等との議論を重ね、ニーズや課題を整理しながら制度設計の作業を進めておられるものと推察するところです。

また、カップルの一方に未成年の子どもがいる場合に、パートナーと子どもの関係を証明できない困り事を解消するために、子どもを含めて家族であることを証明する「ファミリーシップ制度」を設ける自治体もあります。本県においてもその導入が求められると考えるものです。

当局におかれては、制度導入に向けてどのような取組を展開されるのか、当局のご所見をお伺いします。

北上 あきひと
川西市及び 川辺郡

●福祉部
1 「放課後児童クラブ」の量的拡充と質的向上について
2 ヤングケアラー支援について
3 自殺予防策について
4 施設における障がい者への虐待防止について

全文

令和4年度決算特別委員会 【福祉部】

質問日:令和5年10月6日(金)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 「放課後児童クラブ」の量的拡充と質的向上について

「放課後児童クラブ」は1998年の児童福祉法改正によって「放課後児童健全育成事業」として整備されてきました。保護者が仕事などの理由で昼間家にいない小学生に対して、授業の終了後等に適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものとされています。共働きやひとり親家庭の小学生が通うことのできる「放課後児童クラブ」の入所希望は年々増加しており、2022年度には「放課後児童クラブ」に通う県内の子どもの人数は5万6,957人(22年5月)となり、5年前より約1万人増加しました。同時にクラブへの入所を希望するものの叶わずに待機する子どもの人数も1,023人(22年5月)で、前年よりも約100人増えています。施設整備と人員確保を成し、受け入れ人数を増やすことは喫緊の課題となっているのです。

「放課後児童クラブ」の職員は、子どもに寄り添いながら様々な状況に対応しなくてはならず、また子どもだけでなく学校や保護者との関係も良好に築く必要があり、重責を担っています。加えて、勤務時間は変則的であり、普段の平日は夕方からの仕事で勤務時間が短く、一方で夏休み等の長期休暇中は朝から晩までの勤務が求められます。研修機会の拡充や処遇の改善等、職務に相応しい労働環境を整え、必要な職員の確保に努めなくてはなりません。

全国学童保育連絡協議会によると、小学生が放課後児童クラブで過ごす時間は、長い子どもでは約1,680時間に上り、学校で放課後までに過ごす時間よりも400時間以上も多いとされます。「放課後児童クラブ」の現場からは「子どもたちがすし詰め状態になっている」「スペースが狭く子どもたちが希望する活動を我慢してもらうことがある」等の声を聞くところです。「親のいない間、子どもを預かる」ことに留まることなく、子どもたち自身がどんな放課後を望んでいるのか、子どもの声に心を寄せながら「子どもの最善の利益」に繋がる時間と空間を提供する必要があるのではないでしょうか。

県におかれては、待機児童が発生している市町を中心に、施設の新築や空き教室の改修等に係る支援を実施して頂いているものと認識するところですが、「放課後児童クラブ」の量的拡充と質的向上とが益々求められる現状にあって、県の今後尚一層の取組が期待されます。当局のご所見をお伺いします。

2 ヤングケアラー支援について

一般的に本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話を日常的に担う子どもたち「ヤングケアラー」の支援は、大きな社会的課題です。ヤングケアラーの子どもたちは、学業や進路に支障が出る、睡眠や生活リズムが崩れる、交友関係が希薄になり孤独を感じる等の問題点を抱えています。文部科学省と厚生労働省が2021年3月に公表した「ヤングケアラーの実態に関する調査」によれば、中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーであり、その内、自分自身がヤングケアラーであると自覚している子どもは16.3%という結果が示されています。同調査によれば、平日1日あたり7時間以上にわたり家族の世話をしているにも関わらず「特に問題はない」と回答する子どもが3割を超えています。本県の実態調査でも、当事者がヤングケアラーの認識を「持っている」が14.3%、「持っていない」が41.4%との結果であります。ヤングケアラーとしての生活が日常化するなかで、本人や家族の自覚が難しくなっているのです。加えて、家庭内のデリケートな問題でもあり、表面化しにくい面があります。よって、支援のきっかけを把握することが極めて重要だと考えます。きっかけさえあれば、介護保険や生活保護等の福祉制度の活用に繫げることができますし、子どもの心理的ケアや医療的ケアの必要な保護者への受診勧奨等も可能となります。

本県においては「ケアラー・ヤングケアラー支援推進方策」に基づき、専門相談窓口を設置するとともに、配食支援事業を実施したり、シンポジウムの開催等に努めておられるものと認識するところです。県内のヤングケアラーの状況をどのように認識・分析されているのか、また、これまでの取組の成果と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

3 自殺予防策について

兵庫県の自殺者数は1997年から1998年にかけて987人から1,452人へと約1.47倍に急増しました。これは経済状況の変化による倒産やリストラによって、中高年男性の自殺が急増したことが要因だと分析されます。その後も1,300人前後の高い水準で推移してきましたが、職場のメンタルヘルスへの理解も徐々に進み、2006年に成立した自殺対策基本法にそった施策も展開された結果、2010年からは緩やかな減少傾向が続いてきました。しかし、2022年の自殺者数は947人(前年比+31人)に上り、新型コロナウイルス禍が始まった2020年以降、3年連続で増加しているのです。男女別の自殺者数をみると、前年と比較して女性が25人(8.6%)、男性が6人(1%)増加、年齢別の自殺者数でみると、前年と比べ、20歳未満(+5人)、30歳代(+3人)、40歳代(+13人)、50歳代(+28人)、60歳代(+4人)、70歳以上(+17人)と増加しています。新聞等によると、女性の増加率が特に高い要因は、コロナ禍の影響による雇用環境の悪化、育児や介護での孤立、人的交流減少だといわれています。

本年5月、新型コロナは感染症法上の「5類」に移行しました。社会はかつての日常を取り戻しつつある面が見受けられるものの、依然として経済面や精神面でのしんどさを抱えている県民は少なくないと思われます。県のパンフレットに「自殺は個人的な問題ではなく、自殺問題には社会的な取り組みが必要である」と記載されているように、一層の施策展開が求められていると考えます。県においては、自殺予防に係る情報発信、研修会の開催、相談窓口の充実、関係団体の活動支援、ゲートキーパー養成等、自殺対策を総合的に推進されているものと認識するところです。自殺予防についてのこれまでの取組の総括と今後の施策充実について、当局のご所見をお伺いします。

4 施設における障がい者への虐待防止について

障がい者の尊厳を否定する虐待を禁止し、虐待の予防および早期発見等に関する行政機関等の責務等を規定した「障害者虐待防止法」は、2012年に施行されました。虐待を①体罰等の身体的虐待、②暴言等の心理的虐待、③性的虐待、④適切な食事を提供しない等のネグレクト、⑤経済的虐待に分類し、市町村には障害者虐待防止センターを、都道府県には障害者権利擁護センターを設置することを義務づけています。福祉施設における虐待については、市町村と都道府県がそれぞれの関係法令上の権限を行使することを基本的な対応スキームとするものです。

法律が制定される一つのきっかけは、2003年に福岡県内で発覚した重度障がい者施設での虐待事件だと認識します。数年間にわたり施設長を含む5人以上の職員が殴る蹴るの暴行をしたり熱湯を飲ませたり、また預金を流用する等、入所者への数々の虐待が明らかになったことを記憶しています。先月、私は県内の重度障がいのある施設入居者の関係者から、施設内での度重なる深刻な虐待についての相談を承りました。その時に相談者が「入所者の家族の多くは、虐待に気がついているが他に行く施設がないので我慢している」とおっしゃったのです。20年前、福岡での事件の際に聞いた言葉と同じ内容であることに、愕然としました。

厚生労働省の発表によると、2021年度に全国の自治体に寄せられた福祉施設での障がい者への虐待に関する相談や通報は3208件に上り、統計を取り始めてから最多となりました。虐待を受けた障がい者は956人です。専門家は「通報を義務化した法律が浸透してきた。通報によって、虐待がエスカレートすることを防いだり、早期に再発防止策を講じること期待できる」と分析しています。加えて、知的障がいがある人や障がいの程度が重い人が虐待を受ける割合が高いことから「支援が難しい人ほど虐待を受ける傾向がある。質の高い支援ができるよう、研修を通じて人権意識や障がい特性の理解を深める必要がある」と指摘しています。

県におかれては、障がい福祉の増進に日々努めて頂いているものと認識するところですが、施設での障がい者虐待について、事実を調査確認し、職務権限に基づき指導・勧告する役割を担う行政の責務は大きく、県に一層の取組を期待するものです。本県における障がい者福祉施設従事者等による2021年の相談や通報は145件で、その内虐待が認められたのは31件でした。施設における障がい者虐待防止について、これまでの取組の総括と今後の課題についてご所見をお伺いします。

●保健医療部
1 熱中症の予防策強化について
2 産婦健康診査事業・産後ケア事業における県の役割について

全文

令和4年度決算特別委員会 【保健医療部】

質問日:令和5年10月6日(金)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 熱中症の予防策強化について

近年の猛暑は「地球沸騰化」と言われる程で、猛暑日や熱帯夜が増加し、熱中症のリスクが高まっています。兵庫県内の熱中症による救急搬送患者数は、2013年~22年の10年間で計2万8,444人。今年も5月1日~9月24日の間に3,951人が救急搬送されました。その内、初診時における重症者は59人、死亡者は8人に上ります。救急搬送された患者の過半数は65歳以上の高齢者です。

熱中症は、暑さによって体内の熱を発散することができなくなって起こる体調不良で、環境省の資料によれば、気温や湿度、風量、日差し、エアコンの有無等の「環境」、低栄養、睡眠不足、二日酔い等の「からだ」、激しい運動や肉体労働、水分補給不足等の「行動」に起因するとされています。屋外での熱中症は、健康な人がスポーツや作業をしている際に短時間のうちに発症することが多く、室内での熱中症は高齢者に多く、発見が遅れてしまうと重症化してしまう傾向があるようです。

専門家は「暑さを避け十分な水分補給をする等、適切な対策をとることによって、熱中症はほぼ100パーセント予防可能だ」と指摘をしています。暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートの活用をはじめ、熱中症についての知識や情報を積極的に広報・啓発することによって、適切な熱中症予防策を講じるよう促すことが肝要ではないでしょうか。

県民の健康と命を守るために、より一層の施策展開が求められていると考えますが、熱中症へのこれまでの取組と今後の予防策強化について、県当局のご所見をお伺いします。

2 産婦健康診査事業・産後ケア事業における県の役割について

子育てにおける孤独や不安が産後鬱や児童虐待の一因であるとも指摘されるなか、産婦健康診査事業・産後ケア事業の更なる充実が求められていると考えます。2019年12月に母子保健法改正がなされ、それまでは予算事業として実施されてきた産後ケア事業が母子保健法上の施策として位置づけられました。産後ケア事業に取り組む市町は年々増加し、現在、県内41全ての市町において実施されているところです。しかしながら、実施内容のばらつきは大きいと認識します。昨年1月に行われた総務省による産前・産後の支援の取組状況についての行政評価・監査においても、実施内容に地域間格差があることから、都道府県の関与の必要性が指摘されました。

母子保健事業の実施主体は市町でありますが、市町の事業を支える立場として、また広域行政を司る立場としての県の果たす役割は大きいと考えます。産科や助産所等の医療資源が十分でない地域においては、県が広域の連携を支援したり実施事業者との調整を行うことによって、産婦健康診査事業・産後ケア事業のより円滑な展開が図れるのではないでしょうか。また、市町の事業の多くは住民票のある住民を対象にして提供される場合がほとんどであり、他市町へ「里帰り」して出産する場合の対応が課題となります。全国的には、県内の市町村であればどこであっても利用できるようにしているケースもあると聞き及ぶところであり、本県においても何らかの取組を期待するものです。

県におかれては、これまでも市町への財政支援や先進事例の共有などを図り、市町が実施しやすい環境整備を進めてこられたと認識するところですが、今後の尚一層の取組について、当局のご所見をお伺いします。

産業労働部・労働委員会
1 多様な食文化・食習慣に対応した観光戦略について
2 若年世代の労働環境改善について
3 LGBTQ等セクシュアルマイノリティが自分らしく働く職場整備について

全文

令和4年度決算特別委員会 【産業労働部、労働委員会】

質問日:令和5年10月10日(火)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 多様な食文化・食習慣に対応した観光戦略について

観光庁の資料によれば、日本を訪れるベジタリアン、ヴィーガンの外国人旅行者は年間145~190万人、その飲食費は450~600億円と推計されています。

一方、外国人ベジタリアン、ヴィーガンを対象としたアンケート調査では「日本の飲食店等の対応は不十分」という意見が多く、例えば「ベジタリアン、ヴィーガンに対応した飲食店等数が少ない」「ネットでの情報発信や店舗内外での表示が少なく、飲食店がベジタリアン、ヴィーガンに対応しているかどうか分からない」「日本で食べたかった食べ物のベジタリアンオプションがなく、食べることを諦めた」との声があります。

ここ最近は国内でも健康志向やオーガニックへの関心の高まり等からベジタリアン、ヴィーガンが注目され、新聞・雑誌の特集記事も頻繁に見かけるところです。ベジタリアン、ヴィーガン料理へのアクセスのしやすさは、観光の行き先を決める大きな要因になっているのではないでしょうか。全国的には、ガイドブックやサイトでの情報発信をはじめ、ヴィーガン食材を生かした「フード・ツーリズム」等の取組が行われています。

「ひょうご新観光戦略」においては「食習慣や宗教の違いに応じた情報のアクセス環境の整備」の方向性が示され、主な取組として「ハラール・ベジタリアン・ヴィーガン等多様な食習慣の理解促進に向けた普及啓発」が掲げられています。アニマルウェルフェアや食物アレルギー等を理由に何らかの食事制限をする人も含め、多様な食文化・食習慣を持つ国内外の旅行者の受入環境を整備することは、ユニバ―サルツーリズムを推進する本県の理念にも沿うものではないでしょうか。これまでの取組状況と今後の展開について、当局のご所見をお伺いします。

2 若年世代の労働環境改善について

先月公表された厚労省の「労働経済白書」では「少子化を克服していく観点からも、若年層を中心に賃金を引き上げていくことが重要だ」と指摘しています。「白書」によると、1995~2021年にかけて「いずれ結婚するつもり」と回答している男女の割合は、それぞれ80%以上でほぼ横ばいとなっている一方で、有配偶率は、女性は50%台前半から40%台前半に、男性は40%から30%台半ばにまで低下しており、結婚への希望は以前と大きく変わっていないなかで、必ずしもその希望を叶えられていない可能性が示唆されると分析しています。結婚生活をスタートさせるに当たって必要だと思う夫婦の年収については、20~39歳の男性・女性ともに約6割が年収400万円以上と回答し、約4割が500万円以上と回答している一方で、同年齢の未婚者の男性約25%、女性約36%が主な仕事からの年間収入が200万円未満、男性の約半数、女性の約70%が300万円未満であります。実際に結婚した割合は、21歳~25歳の男性では年収200万円の場合は約1割に留まりますが、300万円以上になると約3割に高まります。26歳~30歳の男性でも年収200万円未満の場合は約1割でしたが、300万円以上になると約4割に上がります。

また、男女ともに非正規雇用に比べ、正規雇用の方が結婚する確率を引き上げる効果があり、特に女性においてその効果が大きいと分析しています。

結婚は個人の自由意思に基づくものですが、結婚を希望しながら賃金や雇用形態によって叶えられていない状況は改善していかなくてはならないのではないでしょうか。2022年に国内で生まれた子どもの数は、前年比5.1%減の79万9,728人でした。統計をとりはじめた1899年以降、初めて80万人を割り込みました。また、同年の兵庫県内の出生数は、34,183人で、こちらも過去最も少ない人数でした。日本の少子化に、婚姻数の減少が極めて大きな影響を及ぼしていることを踏まえれば、少子化問題を克服していく観点からも極めて重要な課題ではないでしょうか。

本県では「ひょうご・しごと情報広場」の運営、「ひょうご仕事と生活センター」による支援、中小企業就業者確保支援事業、公共職業訓練による知識や技能習得の支援等を展開されていると認識するところです。若年世代の労働環境改善について一層の取組が必要だと考えますが、これまでの取組と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

3 LGBTQ等セクシュアルマイノリティが自分らしく働く職場整備について

すべての働く人が勤労者としての権利が守られ、自分らしく働くことのできる職場が保障されなければならないと考えます。しかし現実には様々な課題があり、なかでもLGBTQ等セクシュアルマイノリティは多くの「働きづらさ」を抱えておられることが、各種調査や報道で明らかになっているところです。

求人検索エンジンを提供するインディードジャパンが刊行するライフマガジン「BE」によれば、同社が当事者1,000人に実施した意識調査では「職場で生きづらさを感じる」LGBTQ+当事者が約4割(39.1%)であると回答し、非当事者(26.8%)の約1.5倍でした。また、LGBTQ+当事者の3人に1人が「仕事探しや職場において、不安やストレス、嫌な思いを経験したことがある」とし、それに対して「誰にも言わず/何もしなかった」が35.5%であり、5人に1人が「退職もしくは転職」を選択した経験があると回答しています。加えて、LGBTQ+当事者の3割以上が「性自認や性的指向がきっかけで、やりたい仕事に就くことを諦めたことがある」と回答し、そのうち約8割が仕事に応募する前に諦めた経験があるとしています。職場においても、仕事を探す段階でも、LGBTQ+当事者は「働きづらさ」を抱えておられることが、意識調査の結果から伝わってきます。

また、企業の人事担当者500人への調査では、セクシュアルマイノリティの従業員への支援に取り組む企業は全体で24%、大企業39%、中小企業18%でした。取り組んでいない主な理由は、大企業においては「何から取り組んでよいか分からない」、中小企業においては「支援に関心のある社員がどれくらいいるか分からない」となっています。

本県においては「誰もが生き生き働ける環境づくり」に向けて種々取り組んでおられるものと認識するところですが、LGBTQ等セクシュアルマイノリティが自分らしく働く職場づくりについては、今後尚一層の施策展開が求められると考えます。取組の現状と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

●土木部
1 道路の維持管理について
(1)撤去も含めた街路樹の「選択と集中」について
(2)隙間除草問題解決のための取組について
2 河川改修事業における生物多様性の保全について

全文

令和4年度決算特別委員会 【土木部】

質問日:令和5年10月12日(木)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 道路の維持管理について

(1)撤去も含めた街路樹の「選択と集中」について

道路の街路樹は、快い緑陰をつくり、排気ガスや騒音をやわらげ、美しい花やあざやかな黄葉紅葉は、季節の移ろいを感じさせてくれます。また、私の地元川西市には、例えば「多田桜木」という地名がありますが、住民は古くからの沿道の桜並木に深い愛着を抱いており、まちの誇りとなっているところです。私たち県民に潤いや憩いを与え、また郷土愛、シビックプライドにも寄与する道路緑化事業は大変に意義深いと考えます。

一方、繁茂した街路樹、河川や民地から大きくはみ出た草木等が、歩行者や自動車の通行を妨げたり、根上がりによって歩道の縁石や舗装が持ち上がり、安全な通行に支障をきたしたりする事例は多く散見され、県民から数多の要望が寄せられているところでもあります。

各土木事務所においては、限られた予算の中、県民の安全で快適な通行空間を確保するとともに街並み景観の向上をめざし、道路の適正な維持管理に日々努めて頂いているところであり、そのことには心より感謝を申し上げます。

私はかねてより、周囲一帯が山に囲まれているような緑豊かな多自然地域の道路に植樹されている街路樹には意義を感じることができず、伐採・撤去することによって予算の選択と集中を大胆に推し進めることを求めてきました。また、市街地であっても、歩道脇の街路樹を撤去することによって、車いす、ベビーカー、自転車等の利用者を含め、より安全円滑な通行空間の確保に繋がる箇所も多くあると推察するところでもあります。

県におかれては街路樹の維持管理指針を策定する等、種々の見直しを進めておられると認識するところですが、撤去も含めた街路樹の「選択と集中」について、当局のご所見をお伺いします。

(2)隙間除草問題解決のための取組について

道路や歩道、中央分離帯等におけるアスファルトやコンクリートブロックの隙間から大きく繁茂する雑草は、視界を遮ったり通行の妨げになっており、住民から除草の要望が度々寄せられます。各土木事務所にあっては、限られた予算のなかで安全円滑な通行空間確保のために、迅速な対応に努めて頂いているものの、その箇所が多く、また雑草の繁殖繁茂する勢いが著しいこともあって「いたちごっこ」の様相を呈しています。

西宮土木事務所では、「隙間除草問題解決のための施工技術アイデアコンテスト」や「除草技術フォーラム@阪神南」を開催する等、効率的な除草方法の研究に取り組んでおられます。将来的には住民参加の道路管理も視野に入れた研究であると聞き及ぶところであり、その実用化や全県的な展開に期待するものです。

隙間除草問題解決のための取組における現状と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

2 河川改修事業における生物多様性の保全について

本県においては、激甚化、頻発化する自然災害から県民の生命、財産を守るため、「河川対策アクションプログラム」に基づき、2020年度から28年度の9年間で総額約1,800億円を投じ、洪水調整機能強化等の河川改修に取り組んでおられます。防災・減災対策を効率的、効果的に推進し、住民の生命、財産を守ることは行政の使命であり、河川改修事業の円滑な進捗は多くの県民が切望するところです。

河川の流れは、時として人間にとって猛威を振るうものである一方、その流れによって形成される地形や在来動植物の自生を促す機能によって、多様な生物が生育、生息、繁殖する環境が保持されています。猪名川河川改修事業に伴い工事が予定される塩川においては、都市部であるにもかかわらずゲンジボタルが多数生息するとともに、環境省レッドデータブック、兵庫県レッドデータブックに掲載され、絶滅が危惧される生物の生息も確認されているところです。これらは、近隣の心ある住民が30数年にわたり定期的な清掃や自然観察会等、環境保全のための熱心な活動を展開されてきた成果でもあると考えますが、当該住民は、河川改修にあたって、多様な生物が生息できる環境を極力保全するよう、県に対して要望を続けておられます。工事の計画・執行にあたっては、住民の意向の一部を反映することも含め、種々検討中であると聞き及ぶところです。宝塚土木事務所におかれては、幾度にもわたる住民との話し合いや現地での説明会等を真摯に行って頂いており、改めて感謝と敬意を表します。

本県の事前防災対策を重視した河川改修事業の進展を図ることは極めて重要です。また、生物多様性の保全を図ることも大切な課題であります。よって、県においては「兵庫県生物多様性配慮指針」等もふまえ、良好な自然環境の保全に努めながら河川改修事業を進めることが求められると考えます。河川改修における生物多様性の保全について、本県でのこれまでの取組と今後の在り方について、当局のご所見をお伺いします。

総括審査
1 兵庫県森林組合連合会への単年度貸付9億円について
2 若者・Z世代支援について
(1)若年・Z世代の労働環境改善について
(2)若年層をターゲットにした宝くじの販売促進について
3 県職員の勤務形態変更における県民の意向聴取と合意の形成について
4 5類感染症へ移行後のコロナ対策について
(1)今後の感染拡大防止策と医療体制の確保について
(2)罹患後症状(いわゆる後遺症)への対応について
5 県民の健康増進について
(1)スポーツ振興について
(2)「歯及び口腔の健康づくり推進条例」に基づく取組について
6 本県における「盛土」対策の進捗状況と今後の取組について

全文

令和4年度決算特別委員会 【総括審査】

質問日:令和5年10月18日(水)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

1 兵庫県森林組合連合会への単年度貸付9億円について

今月17日、兵庫県森林組合連合会(県森連)に対し、県が貸し付けた9億円が回収困難になっていることが新聞で大きく報道されました。決算書にも2022年度に貸し付けた9億円が返済されず、利子も含め9億270万円が収入未済額として記載されているところです。県森連がバイオマス事業で継続して赤字を出していることを県は把握しておきながら貸付を重ねてきたのではないでしょうか。

単年度貸付の反復ですが、金額を年々次第に増額しておられます。2021年度決算では、県は将来負担比率の算定において、県森連の貸付金に係る一般会計負担見込額として2億1千万円を計上されておられます。これは、県の貸付が返済されない可能性があるとして引き当てたものであり、県が県森連の経営の悪化を把握していたことは明らかではないでしょうか。にも関わらず、2022年度には前年度比5千万円増の9億円を貸し付けられました。

返済が困難であることを承知しながら貸し付けたのであれば、県民に対する大きな背信であると考えますが、県のご所見をお伺いします。

2 若者・Z世代支援について

齋藤知事は「若者・Z世代応援パッケージ」の策定を表明され、高等教育の負担軽減策として「県立大学の授業料等無償化」を打ち出されました。しかし、この「無償化」を新年度から実施する案については多くの課題があるのではないでしょうか。本会議、決算委員会を通じて、我が会派からは様々な指摘をさせて頂きましたが、先ず限られた財源のなかでの優先順位の妥当性、次に県立大学以外の高等教育機関に進学する者とのバランス、そして施策決定・発表に至る庁内議論の熟度や透明性、少子化対策、教育政策全体のビジョンのなかでの位置づけの明確性等であります。

若者・Z世代支援を拡充することの必要性は十分に承知するものであり、県立大学無償化が県内若年者の一つの希望となることや国策としての高等教育無償化を牽引することに繋がることについても理解をするところですが、今後の施策遂行にあたっては、中長期的な視座をも備え、我々の指摘に十分配意して頂くことを切望するものです。

(1)若年・Z世代の労働環境改善について

先日の産業労働部の審査の際にも触れましたが、先月公表された厚労省の「労働経済白書」では、結婚や出産を希望しながら、賃金が低いことや雇用形態が不安定であることによって、結婚や出産を叶えられていない状況があることから、「少子化を克服していく観点からも、若年層を中心に賃金を引き上げていくことが重要だ」と指摘しています。「若者・Z世代応援パッケージのとりまとめ」には「少子化・人口減対策としてこれから結婚・子育てする若者・Z世代」を支援すると明記されていますが、ならば「若年世代の労働環境改善」は殊更に肝要ではないでしょうか。

フルタイムで働いているにもかかわらず、貧困状態にある労働者は「働く貧困層」「ワーキングプア」と呼ばれ、若年層を含む「ワーキングプア」はかねてより大きな社会問題となっています。本県における若者・Z世代支援策として、労働環境の改善についての取組を一層強めて頂きたいと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

(2)若年層をターゲットにした宝くじの販売促進について

本県においては、自主財源確保の一環として「宝くじ販売促進」に取り組んでおられ、その方策として「神戸市及びみずほ銀行と連携して若年層など潜在的購入層をターゲットにした広報活動を展開」することを掲げられています。「宝くじ」はもちろん合法であり、その売り上げの一部が県財政に寄与することは承知しますが、ギャンブルのゲートウェイとの指摘もある宝くじを県が若者をターゲットに熱心に販売促進をすることには、違和感を抱かずにおられません。本年7月に県が後援する「ギャンブル依存症セミナー」に参加しましたが、講師が「ギャンブルを始める年齢が若ければ若いほど、依存症に陥りやすい」「若者を取り込もうとするギャンブル業界の問題がある」と指摘されていたことが深く心に残っています。

若年層をターゲットにした宝くじの販売促進は、「若者・Z世代応援パッケージ」に込められた理念と相容れるのか疑問に思うところであります。が、若者・Z世代支援は全庁における政策展開において果たされるべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

3 県職員の勤務形態変更における県民の意向聴取と合意の形成について

県庁の新しい働き方を巡っては、生田庁舎においてモデルオフィスを実施し、各部交代勤務による出勤率4割のリモートワークを中心とした試行を行っておられるところです。果敢な改革マインドや柔軟な発想力には敬意を表します。

これまでの議会答弁によって明らかになってきた「4割出勤」の課題は、業務資料の電子化を如何に進めるのか、職員間の人間関係構築や意思疎通を如何に図るか、在宅勤務する際の環境整備は出来るのかなど、職員の業務効率や労働安全衛生に関わるものが主だと認識します。職員の意向を十分に聴取するとともに、職員・職員団体との合意に基づく丁寧な対応が求められていることは、既に我が会派の議員が指摘して参りました。

加えて、県民サービスへの影響について、そのメリット、デメリットの緻密な検証が必要ではないでしょうか。県民や事業者との意思疎通や情報伝達が円滑・適切に行われるのか、県民の個人情報や事業者の信用情報が職員の自宅等の庁外において取り扱われることへの懸念が払拭できるのか、緊急事態の対応において初動の遅れ等の瑕疵が生じないのかなど、検証するべき課題は数多くあると考えます。

コロナ禍における在宅勤務は緊急避難的な面があったと存じます。公的な権能を有する県職員の勤務実態については透明性が担保されねばならず、恒常的な職員の勤務形態の変更については、県民サービスへの影響を明らかにしつつ、県民の意向を十分に聴取し、県民の理解と合意のもとに進める必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

4 5類感染症へ移行後のコロナ対策について

2020年3月に本県で新型コロナウイルスの陽性者が初めて確認されてから、3年半が過ぎました。医療や保健の最前線で奮闘頂いた皆様をはじめ、厳しいコロナ禍にあって各々の現場で最善を尽くしてくださった全ての皆様に、改めて感謝と敬意を表します。当局におかれては、県のコロナ対策について総括的な検証を行っておられるところだと存じますが、取りまとめに向けては、新たな感染症にも備え、県内市町からの意見も踏まえ多角的な視点からのより丁寧な検証作業が為されることを期待するものです。

(1)今後の感染拡大防止策と医療体制の確保について

本年5月8日より、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類感染症」になりました。それに伴い、例えばこれまで「患者負担ゼロ」としてきた新型コロナ治療薬の公費支援は見直され、10月からは所得に応じて患者が上限3,000~9,000円を負担する対応になりました。新聞報道によれば、新型コロナウイルス感染患者に、医師が新型コロナの飲み薬を出す「処方率」が、10月1週目(1~7日)に急減したことが明らかになっています。専門家は「10月に入り『お金を払うのであれば薬はいらない』という患者が増えてきている」、秋冬に懸念される再流行についても「ハイリスク者で薬を『使わない』選択をする人が増えると、医療負荷が大きくなる懸念がある」と警告を発しておられます。

様々な取組によって死亡や重症化のリスクは軽減しつつあると認識するものの、コロナ感染症は完全に終息したわけではなく、特に高齢者や基礎疾患のある方々は不安を抱いておられると推察するものです。本県における、今後の感染拡大防止策と医療体制の確保について、当局のご所見をお伺いします。

(2)罹患後症状(いわゆる後遺症)への対応について

WHOは後遺症について、「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの」と定義しています。 ここ最近、コロナウイルス感染症の治療や療養終了後も、倦怠感、味覚・嗅覚の異常、咳や痰等の症状が続くといった後遺症に悩まされる事例をお伺いすることが増えてきました。また、特に子どもの後遺症は、思春期特有のだるさや頭痛といった体調不良との違いを判断しづらい面があり、支援には丁寧な配慮が必要だとの指摘も聞くところであります。

コロナ後遺症については、正しい情報の提供や相談機関の充実、適切な医療的支援等が求められていると考えます。本県における、後遺症対応策の現状と課題について、当局のご所見をお伺いします。

5 県民の健康増進について

(1)スポーツ振興について

2011年に制定された「スポーツ基本法」では、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利」であるとされ、心身の健康保持や長寿社会の実現に寄与するスポーツの推進を図ることが定められました。それに呼応して、本県においては、2012年に「兵庫県スポーツ推進計画」を、2022年には第2期の計画が策定されています。

先日発表された、スポーツ庁の「2022年度体力・運動能力調査」では、週3日以上時間をかけてスポーツをする習慣があると、世代を超えて「大いに健康」と感じている割合や「生活の充実度」、体力が高いことが示されました。県民が生涯にわたり心身を健やかに保ち幸せに暮らすことが叶うよう、誰もが気軽にスポーツを楽しむことのできる環境を整備することが一層求められていると考えます。

また、子どもの頃の外遊びやスポーツ体験が、生涯を通じてスポーツに親しむことに繋がるとの研究報告があります。本県の「スポーツ推進計画」においては、子ども・ユース世代のスポーツ参画機会拡充のために、スケートボートやスポーツクライミング等のアーバンスポーツの環境整備に取り組むことが記述されています。子どもや若者の声を反映させながら、多様なニーズに応え得る未来志向の柔軟かつ効果的な環境整備を期待します。

そうした中、今年度からスポーツ行政を知事部局に移管し、体制強化が図られました。県民が一生涯、スポーツに親しむことができる環境づくりが重要です。本県の取組状況と今後の展開について、当局のご所見をお伺いします。

(2)「歯及び口腔の健康づくり推進条例」に基づく取組について

コロナ禍、学校や保育所で歯みがきやうがいを控えたことによって、子どもたちのむし歯の増加が危惧され、また施設等で高齢者の口腔ケアが行き届かないことによって肺炎の罹患や重症化のリスクが高まることなどが懸念されました。併せて、口腔内の細菌を減らすことは、コロナやインフルエンザ等の感染症予防に繋がる面があることから、口腔ケアへの関心が高まっているように感じるところです。

本県では2015年6月に口腔保健支援センターを設置、2022年4月に「歯及び口腔の健康づくり推進条例」を施行され、乳幼児期から高齢期までの生涯にわたる切れ目のない歯及び口腔の健康づくりと体制の整備に向けた種々の施策が展開されているものと認識するところです。本条例に基づく取組が、県民の健康増進と健康寿命延伸に真に寄与することを願うものですが、取組の現状と今後の展開について、当局のご所見をお伺いします。

6 本県における「盛土」対策の進捗状況と今後の取組について

2021年7月、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生し、甚大な被害をもたらしましたことは記憶に新しいところです。翌2022年5月に成立した新たな盛土規制法では、これまで十分に対応できなかった宅地造成を目的としない盛土も規制の対象に追加し、用途を問わず安全性確保策がより厳格に求められるとともに、命令違反等に対する罰則強化等が規定されました。本県においては、2022年11月に副知事をトップとする部局横断の対策チームを発足して頂き、また県と市町で構成する県宅地防災推進協議会に作業部会を設けるなど、「盛土」対策が的確に図られるよう、体制の構築に努めてこられたものと認識するところです。

2021年の盛土総点検では、県内646ヵ所の点検を実施され、その結果、是正措置等が必要な盛土が7ヵ所(神戸市2ヵ所、西宮市・川西市・猪名川町・佐用町・宍粟市各1ヵ所)あると発表されました。当該盛土近隣の住民は、日々盛土を目の当たりにされ、一刻も早い不安解消を願っておられるのではないでしょうか。

また、県内全域において新たな規制区域の指定が求められるなど、新法に基づいた施策の円滑な遂行が求められると推察するところです。

私は、昨年6月の本会議代表質問で「盛土災害は人災の側面が大きく、県のリーダーシップのもと速やかに対策を講じて欲しい」と訴えたところですが、7ヵ所への対応状況を含めた本県における「盛土」対策の進捗状況と今後の取組について、当局のご所見をお伺いします。

<竹内 英明 議員>
●財政状況
1 2022年度決算における県債管理基金への外部資金集約の解消について
(1)県債管理基金の保有する1株5万円の「関西国際空港土地保有株式会社」の株式(総額125億円)が1株1円(総額25万円)と価値認定されたことについて
(2)県債管理基金からの企業庁地域整備事業への貸付金320億円の解消時期について
(3)外郭団体や補助金支給先団体に対する単年度反復貸付について
(4)総務省出身の財務部長からみたこれまでの兵庫県の財政運営について
2 県始まって以来の黒字決算の理由、投資的経費の削減、決算調整 方針・補正予算についての齋藤知事の考え方
3 経常収支比率の4年連続悪化や全国ワーストが続く「将来負担比率」の中での「攻めの県政」「県立大学の無償化」について
(1)(公社)ひょうご農林機構の県将来負担(見込)額は259億円となっているがこれでよいのか
(2)裾野の広い高校無償化を導入しないのは財政状況が理由なのか(3)「攻め」なのか過去の清算なのか
4 県有環境林等特別会計を今回の検証の対象としない理由

全文

令和4年度決算特別委員会 【財政状況】

質問日:令和5年10月4日(水)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

1 2022年度決算における県債管理基金への外部資金集約の解消について

(1) 県債管理基金の保有する1株5万円の「関西国際空港土地保有株式会社」の株式(総額125億円)が1株1円(総額25万円)と価値認定されたことについて

これは元々、県の土木部(旧県土整備部)が保有していた株式だが、2006年度に他の有価証券や土地などとともに財政状況をよくみせるために県債管理基金に集約された。

ところが、関西国際空港の巨額の負債を分離して経営するために経営の上下分離方式が導入される際、2012年に、上下分離方式に反対する株主に対して、会社側は1株1円で買い取ることを通知した。会社側が依頼した複数の鑑定会社によって1株の価値が1円(備忘価格)と鑑定されたうえでのものだが、同社の役員会でも確認されての買い取り価格だった。その価値判定に反発した一部株主が、貸借対象表上では1株あたりの純資産は3万円以上あるとして訴訟を起こしたが、裁判所も会社側の主張通り1株1円として認めたと報道されている。

あれから10年たち、この2022年度決算で集約基金が解消され、「関西国際空港土地保有株式会社」も元の土木部のもとに戻され、この125億円を含む計218億円の株式が県債管理基金から解消された。

資料として、集約が解消される株式の内訳、旧関空株についての一連の報道、基金の集約解消の状況の資料を提出させてもらったが、この旧関空株が株式の集約の半分以上をしめていたということがご理解いただけると思う。

しかし、10年も前から始まった話であるが、現にそのままこれが受け継がれ、財政指標の改善に用いられてきたという事実は明らかにしておかなければならない。『現金化可能だから基金にいれても問題がない』。お題目のように言われてきた。

分離方式に反対すれば現金化はできたが5万分の一。しかも県としては1円の価値設定に異論をはさんでおらず形式としては賛成している。

同じように同社の株を保有していた東京電力のことも報道されているが、こうした上場企業だったら保有株の減損が必要ということになるのだろう。こうした決定を知らないふりをして知らなかったでは通らない。

そこで伺いたい。斎藤知事はこうしたことを知っているのか。

(2) 県債管理基金からの企業庁地域整備事業への貸付金320億円の解消時期について

2022年度に集約基金が外部へ返済、整理され、県債管理基金について金額的に大きな課題は企業庁の地域整備事業への貸付金320億円が計上されていることを残すのみとなった。これは何の貸付かというと企業庁の地域整備事業会計に対するものでその目的は「北摂開発事業旧住宅金融公庫債繰上償還貸付金:320億4,400万円」ということだ。今聞いてもわかる人はほとんどいないだろう。

これも何度となく指摘してきたが、「企業庁の事業資金として貸し付けているものであり、同事業が終了していないことから、直ちに貸借関係を整理する必要はない」とこれまで答弁されてきた。

企業庁からは逆に一般会計への多額の貸し付けもあり、整理することで斎藤知事のいう県財政の見える化が進む。もとよりこの320億円は県債管理基金のお金ではなく、法人県民税の超過課税を原資としたCSR等のための資金であり、借金返済のための超過課税ではない。

貸付金の解消には企業庁と一般会計との債権債務の解消等が必要となるが、いつ実行するのか。

(3) 外郭団体や補助金支給先団体に対する単年度反復貸付について

県民からわかりにくい制度といえば、年度当初に資金を貸して、年度末に回収するという方法、単年度貸付を繰り返すという方法で融資をするという行政特有の方法も不思議な制度の一つ。まだこうした方法で貸し付けをしている団体があるかもしれない。

2014年の総務省自治財政局長の通知、「第三セクター等の経営健全化等に関する指針」においては、地方公共団体が第三セクター等に対して短期貸付けを反復かつ継続的に実施することは、本来は長期貸付け又は補助金の交付等により対応するべきであって制度の趣旨を逸脱しており、他の方策による公的支援に移行することが必要である。また、短期貸付けは、損失補償と同様に、当該第三セクター等が経営破たんした場合には、その年度の地方公共団体の財政収支に大きな影響を及ぼすおそれがあることから、避けるべきである」とされている。

実施している団体と金額について説明願う。

(4) 総務省出身の財務部長からみたこれまでの兵庫県の財政運営について

北海道夕張市の実質的な財政破綻によって民間企業なら粉飾にあたる決算が表面化したこともあり、総務省の指導助言もあって様々な不適切な財政運営は少しずつ解消されてきた。

公会計特有の5月末までの出納整理期間を活用した単年度転がし、俗にいう「単コロ」、単式簿記をいいことに年度末の数日だけ自治体に資金を戻し、金融機関から融資を受けて黒字決算をつくる「オーバーナイト」融資、こうしたことは全国の少なからぬ財政悪化の自治体や外郭団体で行われてきたことが知られる。

■単コロ:一般会計からの次年度の短期貸付金を財源とする第三セクター等からの返還金を、出納整理期間中(5月末まで)に、一般会計の当該年度の歳入とすることを繰り返す手法。(総務省HP)

■オーバーナイト:一般会計から第三セクター等に貸し付けた短期貸付金について、年度末に一旦全額返済させ、 翌年度初日に再度貸し付けるもの。その間、三セク等は金融機関から1泊2日で資金を借入れ(同)。

本県でも、2006年度まで単コロを活用してきたことを総務省出身の財政課長が認めたので当時驚いたものだが、オーバーナイトは、344億円もの金額だった旧みどり公社が2014年度から民間金融機関からの直接融資に切り替え、その後も、新西宮ヨットハーバーとひょうご産業活性化センターも実施をやめ、すべての団体でオーバーナイトを解消している。

こうした他の団体でも見られた対策に加えて、本県では外部の資金等を県債管理基金に集約し、借りたお金なのに、借金の返済に充てられるお金が存在しているように見せる「見せかけ貯金」(朝日新聞)といったことも行われてきた。

県債管理基金は、法的には減債基金と呼ばれるもので、将来の県債の償還、つまり、借金の返済に充てるための重要な基金であるが、2006年度の補正予算で外郭団体等からの基金集約などが行われた。借りただけで返す必要があるのにこの基金に積むと理論上は県債の償還をしたことになる。財政指標が改善されるのである。

当時、地方財政健全化法により実質公債費比率といった財政指標が導入されることが決まっており、本来あるべき県債管理基金の残高が大幅に不足していたので、財政指標の悪化による財政再建団体等の指定を避けるために、そうしたことが行われた。前知事も「率直に言って、実質公債費比率対策」と認めていた。

2022年4月に総務省から本県に赴任された稲木財務部長には、基金集約の解消などそうした措置の是正に取り組んでこられたと思うが、どのような感想をもたれたか。過去に阪神淡路大震災があったから仕方のないことだったと理解されるのか、お聞きしたい。

2 県始まって以来の黒字決算の理由、投資的経費の削減、決算調整方針・補正予算についての齋藤知事の考え方

こうした中、2021年8月に就任した齋藤知事は、先に指摘したような手法を用いた財政運営について、知事就任以前は知らなかったと本会議で私の質問に答弁したが、いま適正化が行われていることは当然了としたい。

その齋藤知事が2022年度の予算編成から本格関与し、投資的経費を前年比7%削減で計上した当初予算を提案されたことは記憶に新しいが、この度の決算でも、投資的経費は前年度比7%減のままであった。過去最大の黒字が見込まれる2022年度後半に入っても、そうした黒字見込を、財政(調整)基金に積むのではなく、補正予算を編成して他の事業に活用する考えはなかったのか。例えば、削減された土木費等の投資的経費を補正予算で回復させることも可能であったかと思う。当時知事にどのような情報をあげ、知事からどのような指示があったのか。

3 経常収支比率の4年連続悪化や全国ワーストが続く「将来負担比率」の中での「攻めの県政」「県立大学の無償化」について

(1) (公社)ひょうご農林機構の県将来負担(見込)額は259億円となっているがこれでよいのか

将来負担比率の算定にあたっては、外郭団体の債務等で県が負担する額を計上しなければならないルールとなっている。そのうち(公社)ひょうご農林機構については、県の負担見込が259億円となっていた。この金額ですべて県が負担しなければならないものを捕捉していると考えてよいか。

(2) 裾野の広い高校無償化を導入しないのは財政状況が理由なのか

自治体の主な財政指標の一つに経常収支比率がある。これは「県税、普通交付税などの経常的な一般財源収入のうち、人件費や施設維持費などの経常的経費に充当された一般財源の割合であり、数値が低いほど財政の弾力性が高いことを示す」とされ、監査委員の兵庫県歳入歳出決算審査意見書でも、県の「経常収支比率は98.7%で、4年連続して前年度より悪化した」と指摘されている。

県税収入は2年連続で過去最高を更新しても、兵庫県は地方交付税の交付団体であることから、逆に国からの交付税が減るので、高齢化に伴う社会保障費等の増嵩の状況から財政の弾力性の点では良くならずむしろ悪化している。

大学の無償化は国策とはなっておらず交付税措置等の国の支援策はなく、県の一般財源を活用した施策となる。

若者への支援や少子化等の人口問題に寄与するという観点での支援であることは間違いないが、現状は県内高校卒業生の1.7%しか県立大学に進学しておらず、無償化の導入で県民の進学数が増え、ほぼ全員が兵庫県民になったとして毎年4000人。国立大学や私立大学に進学する県民学生への学費支援は県としては特に導入しないということなので対象は極めて限定的である。

国策である大学への支援を国任せにしないという考えは評価するものの、県内の他の大学には新たな支援策を導入しない中で、大学設置者という立場で県立大学だけに手厚い県費を投入するという姿勢については議論がある。国に対する大学無償化の要請を実施しているのは、対象とならない学生からこうした批判が出ることがわかっているからだろう。

神戸市長は、同じ公立大学である神戸市立外国語大学へのこうした支援のあり方を導入するつもりがないかを問われ、「所得に関係なく無償化することが公費の使い方として公正で適切なのか」と会見で答えたという。一つの見識だと思う。

制度の導入の参考にした大阪府の制度と比較するとどうなのか。大阪府では公立大学だけでなく公立や私立の高校の無償化も併せて実施するため、全体として兵庫県よりはるかに多くの層に恩恵がある。

兵庫県は高校を対象としていない一方、大阪府では対象となっていない大学の博士前期課程までを対象としている。全体の対象者の数は大阪府と兵庫県を比べると全く違う。兵庫県は結果的に特定層への多重的な支援策となる。

ちなみに、財政指標である将来負担比率を比べると、大阪府が123.3%、兵庫県が326.4%。大阪府は兵庫県とは比較にならないほど財政は良い。

最終的には兵庫県立大の学生は県民ばかりとなるだろうから、毎年23億円以上の支援となり、対象となる県民からは相当喜ばれるだろうが、逆に国立や私立に子どもを通わせる納税者からは不公平だという批判も出るだろう。

こうした公平性の観点から県立大学の無償化を考える前に、実施するなら高校を優先すべきではないのかと考える。本県の高校への進学率は99%ではるかに裾野が広い。施策そのものについての議論は総務部の審査に委ねるとして、財政当局では大阪府と同じような「高校の無償化」を本県にも導入した場合の費用を試算したと思うが、その額をお答え願う。

(3) 「攻め」なのか過去の清算なのか

県立大学の無償化を公表した翌月に、企業庁の地域整備事業会計や(公社)ひょうご農林機構の分収造林事業といった県の財政負担が必要になるのが明らかな負の遺産というべきものが9月議会冒頭の知事の提案説明の中で出てきた。

2年前の就任からこれまで着手してこなかったのに、県政改革審議会に言われたといった理由で過去の財政運営の検証をするとか、将来負担比率がまだ全国ワーストのまま、自転車ヘルメットの購入補助も4000円と全国最大額とか。県にお金があるのかないのかこれでは県民はさっぱり分からないと思う。チグハグである。財政当局なら地域整備事業やひょうご農林機構の分収造林事業といった大きな課題があるのはわかっているから、攻めるのは少々早いということになるのではないかと思うがどうか。

4 県有環境林等特別会計を今回の検証の対象としない理由

兵庫県の負の遺産をこの際、議論、検証しようというなら、長期保有土地の多くを占める「県有環境林等特別会計」を同時に議論しなければならない。

県では平成20年度に県有環境林特別会計を設置し、先行取得してきた宝塚市西谷地区などの用地をこの会計で取得してきた。こうした先行取得用地の「県有環境林等特別会計」への移管は財源を県債として最大30年間の地方債償還期限まで延ばすもの、つまり、先行取得債から財源を付け替えて、負債を先送りしたということである。

その合計は、現在3333ヘクタール、取得金額は1,900億円となっている。国の交付税措置が363億円あるそうなので、残る1,537億円が本県の負担となる(利払いは別途)。

ことあるごとに「乱開発防止」などという目的で購入された土地のように説明されているが、まさか、これをそのまま信じている人はいない。

これらの土地については、地域整備事業会計が保有する土地やひょうご農林機構の保有する山林と同じく、現金化や利活用は簡単ではない。

先の二つの土地や山林と違って一定の交付税措置があるとはいえ、いずれも県民や国民負担(交付税)が多額となることは間違いなく、刷新とか過去の検証を言うなら「県有環境林等特別会計」を過去の検証の対象とすることは当然ではないか。SDGSではないが、持続可能な財政を考えるうえで、長期保有土地という全体の観点で検証の中に入れて議論すべきだと思うがどうか。

竹内 英明
姫路市

●農林水産部
1 (公社)ひょうご農林機構(旧兵庫みどり公社)の分収造林事業の抜本的見直しについて
(1)先送りがもたらした多額の金利負担について
(2)齋藤知事の求める「抜本的な見直し」と「分収造林事業のあり方検討委員会」の今後について
2 県が損失補償をしていない金融機関からの貸付371億円を県資金により公社が返済し、現在の将来負担率想定以上の負担を県が行う可能性について
(1)今後、県による追加貸付が焦げ付いた場合や追加の損失補償の 履行を求められた場合の対応について
(2)知事への求償の可能性について

全文

令和4年度決算特別委員会 【農林水産部】

質問日:令和5年10月11日(水)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

1 (公社)ひょうご農林機構(旧兵庫みどり公社)の分収造林事業の抜本的見直しについて

(1)先送りがもたらした多額の金利負担について

「公社等については、第三者委員会による専門的見地からの点検・評価のもと、スピード感を持って見直しに取り組みます。とりわけ、ひょうご農林機構の分収造林事業は、包括外部監査において、多額の債務超過に陥る可能性が指摘され、検討委員会であり方を検討しているところです。委員会の検討結果を踏まえつつ、現実的な収支見通しに基づき、抜本的な見直しを進めます。」9/20に本会議で知事が今後の方針について発言した。

公表されている(公社)ひょうご農林機構の貸借対照表では、2022年度決算で、25億円の資本があるとされているが、債務超過に陥るとはなんなのか。原因は資産・森林の価値668億円の価値が簿価であり、過去に支払った金融機関に対する利子が含まれているからである。

668億円の内訳を教えてほしい。

[資料1](公社)ひょうご農林機構の貸借対照表(2022年度決算)

(2)齋藤知事の求める「抜本的な見直し」と「分収造林事業のあり方検討委員会」の今後について

齋藤知事はこの分収造林事業について、過去に総務省が発行を認めた有利な起債「第三セクター債を発行して整理しなかったことが失敗だった」と言っておられるそうだ。

第三セクター債とは正式には第三セクター等改革推進債のことで、特別交付税措置がある有利な起債であった。あったというのは2013年度までの5年間のみ発行が認められた。その対象経費は何だったのか。

第三セクターの場合、地方公共団体が損失補償を行っている法人の法的整理等を行う場合に必要となる当該損失補償に要する経費、とされている。

1法的整理 – 破産手続、特別清算手続、再生手続及び更生手続

2私的整理 – 一般に公表された債務処理のための準則等が該当

つまり、知事の考えは、分収造林事業を法的整理等すべきという姿勢だと判断される。だから抜本的な見直し、と議会で敢えて表明されたと私は理解している。

一方、昨年8月にスタートした「分収造林事業のあり方検討委員会」の資料や議事録を見たが、大変失礼ながら抜本的な見直しという話にはなっていない。今日は直近の資料も提出させてもらったが、再造林を誰がやるとか広葉樹を入れると良いとか、そもそも経営の抜本的な見直しをしてくれという試問があって議論している感じでもない。

事務局は農林水産部とひょうご農林機構の幹部だけ。県の財政支援や公社のあり方、金融機関との関係といった重要事項を判断できる会議体とは思えない。ここで抜本的な見直しの議論と言われても困るのではないか。現在の検討委員会は今後どうなるのか。

[資料2]第三セクター等改革推進債(総務省HP)

[資料3]「分収造林事業のあり方検討委員会」(第3・4回 資料)

2 県が損失補償をしていない金融機関からの貸付371億円を県資金により公社が返済し、現在の将来負担率想定以上の負担を県が行う可能性について

(1)今後、県による追加貸付が焦げ付いた場合や追加の損失補償の履行を求められた場合の対応について

この分収造林事業、これまで金融機関だけは金利で儲けてきたということが先の答弁でもわかったが、これを断ち切るならば県が代わりに無利子で貸付をすれば良いということになる。しかし、公庫貸付分については元利金の損失補償を県が行っているほか、繰上償還等も認められていない。借り続けることになれば、ずっと利息を払い続けなければならない。つまり法的整理等を行うしか出血を止める方法はない。

兵庫県と同じように経営の厳しかった群馬県の林業公社、(社)群馬県造林公社は、2011年に民事再生法の適用を申請して解散した。負債総額は165億円、うち群馬県の負債は150億円で第三セクター債を活用して公庫へ損失補償を実施した。(一財)広島県農林振興センターも同様に2013年に民事再生法を申請、第三セクター債を活用して債務を整理し、事業を県の特別会計で引き受けた。いずれも「公庫」の負債を処理するために法的整理をおこなった。

先日議会に示された資料では、「現在の木材価格・施業コストは、現計画と大幅に乖離した」と記されている。

[材 価]スギ 29,600円/㎥(現計画) → 8,667円/㎥(実勢)

[施業コスト]皆伐 4,000円/㎥(現計画) → 6,169円/㎥(実勢)

実際には木を切ってそのままという訳にもいかず再造林等の追加コストもかかるので実際には現金化すること自体も簡単ではないというのが私なりの結論である。

これまで300億円以上も金融機関に払って、もう伐採売却も難しい。今後も毎年4億円の利息だけを払い続ける。金利が上がる可能性もある。知事のいうように外部借入をなくすために法的整理等を行い、あとは、この事業を特別会計で実施するとかして、2078年まで利息を払い続けるような現計画は破棄すべきだと思う。

いずれにしろ知事の姿勢から法的整理等を採用する可能性が既にあるということ。

公社には金融機関に返済する自己資金がないし、過去には2014年度までオーバーナイト融資で決算を乗り切ってきたことも知られているくらい、経営状況が良くないことは公表資料からも明らか。そんなときに融資に乗り出した金融機関は流石に自己責任である。まさか貸借対照表に基づいて資本超過だから損失補償なく貸したという論理は、森林の担保価値を調べればこれが費用の積み上げに過ぎず、実際の価値と関係がないことはすぐわかる。

そんな中で、公社が金融機関に借りている資金を優先して返済するために県が追加で公社に貸付けをしたとする。県にはその資金は帰ってこない可能性が高い。また同じ意味を有することだが、金融機関からの現在についての融資に対して県が追加で損失補償を求められた場合も同様である。法的整理等を検討していると思われる現時点からは追加の貸し付け等は慎重にすべきであると思うがいかがか。

[資料4]0911県議会説明資料(分収造林)

(2)知事への求償の可能性について

予算書にある農林水産資金特別会計・債務負担行為も資料として提出しているが、現段階で県が利子の損失補償しか行っていない貸し付けがある、そこを融資の元本部分まで支援しよう、そのために追加支援をするというのであれば、金融機関への支援であることは明らかであるから、それが焦げ付いた場合は、当然、オンブズマン等による知事個人への求償へとつながる可能性がある。県による追加の損失補償も同様。こうしたことはあくまで可能性であるが、そう思わないか。

[資料5]農林水産資金特別会計(2023当初)債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末支出(見込)額及び当該年度以降の支出予定額等調書

[資料6]ひょうご農林機構の将来負担額

●病院局
1 粒子線医療センターの患者数の減少傾向、年間病床稼働率が50%を割ってきていることについて
2 病院事業会計の実情について
(1)貸借対照表に反映されていない負債を加味した真の債務超過額について
(2)監査指摘への考え

全文

令和4年度決算特別委員会 【病院局】

質問日:令和5年10月16日(月)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

1 粒子線医療センターの患者数の減少傾向、年間病床稼働率が50%を割ってきていることについて

県立粒子線医療センターは陽子線・重粒子線の2つの粒子線治療が可能でこの分野で日本有数の実績のある病院である。しかし、近年、患者数の減少傾向が顕著で、病床数50床の年間病床稼働率は平均24床、47.8%。県立病院平均が74.8%であるので、かなり劣後している。

2021年度も46.2%。昨年度からあまり改善されていない。想像するに大阪を始め全国に同じ領域をカバーする病院が増えたからであろう。

これは神戸陽子線医療センターも含む数字だが、昨年度の赤字は14.5億円。実患者数は入院で207人、外来が354人、同じ人がたくさんいるのは後ほど紹介する治療実績でわかるが、最大561人の患者さんがいるとして少なく計算しても、1人あたり258万円の赤字になる。これは県の一般会計から5億4千万円を繰り入れた上での数字であるから、別に1人あたり96万円の負担をしているということで、ざっくりいうと患者一人当たり354万円の公費負担をしているということである。結構な数字である。

基本的な病院の経営指標で、一般会計繰入金の影響を受けない、医業収益対医業費用比率で見ると、粒子線医療センターは40.9、次に悪いのは45.5のこころの医療センターであるので、いつの間にか、この病院が根本的な経営問題を抱える病院となってしまったということになる。

先ほど全国で病院が増えたという話をしたが、特に2018年3月に大阪国際がんセンターの隣接地に、大阪城が見える一等地に民間の重粒子線がん治療施設「大阪重粒子線センター」が開業した。この影響を大きくうけていると思われる。

その治療実績は2018年10月の治療開始から2023年5月末までに3,114例、うち前立腺がんが2,099例と同病院のHPに記載されている。一方、兵庫県の粒子線医療センターの陽子線を含む2003年度以降の総治療実績数は2023年3月末現在10,148名となっている。歴史が長いので本県の方が総数は遥かに多いが、直近の大阪の2022年度の実績は1088事例と陽子線を含めて314人の兵庫県の実績と大きく差がある。しかも、大阪府の予算編成過程を調べたが、大阪では重粒子線がん治療患者支援事業として患者への治療費貸付金制度に対する利子補給の制度はあるものの、民設民営で補助金等による経営支援メニューは見当たらなかった。利子補給の府負担は年間予算で1千万円だった。

【診療機能の充実や施設・医療機器の整備状況】

・ 診療機能の充実

1 県立粒子線医療センター、附属神戸陽子線センター、県立がんセンター、県立こども病院によるがん診療ネットワークの運用(テレビ会議システム等を活用したキャンサーボードの実施。(令和4年度実施回数:630 回)

2 保険適用の拡大に向けた臨床試験(先進医療B)の実施

3 肝がん・膵がんに対する粒子線治療の治療成績と安全性の向上

4 紹介元医療機関の新規開拓のための「講演会の開催」(令和4年度実施回数3回、82 人参加)

5 患者・一般向け「ウェビナー」の開催(令和4年度実施回数 12 回、56 人参加)

6 オンライン診療による患者利便性の向上(令和4年度利用者 135 人(たつの:124 人、神戸:11人)

7 神戸陽子線における照射精度の向上(スキャニング照射における呼吸同期機能を付加、R5.3)

【今後の取組】

1 保険適用拡大を受けた広報活動の充実

2 医療従事者専用サイトを活用した症例検討会の実施

3 患者・一般向け「ウェビナー」の開催

など粒子線医療センターも様々な努力はされていると思うが、患者数を戻し、一般会計繰入金以外に経営数値をもう少し改善させる方法はないか。

2 病院事業会計の実情について

(1) 貸借対照表に反映されていない負債を加味した真の債務超過額について

資料を見てもらうと貸借対照表では、退職給付引当金は現在201億円となっているが、実際はこれだけではない。未計上となっている退職給付引当金の金額がある。現在未計上となっている退職給付引当金はいくらか。

(再質問)

引き当てを分割としたことが法令でも認められているのは知っているが、この際、知事の言う経営の見える化を進めるべきでも、一括計上すればいいと思うがどうか。

[資料] 病院事業会計貸借対照表・竹内作成貸借対照表

(2) 監査指摘への考え

監査審査意見書を見ると、「純損益は、前年度から117億円悪化し、86億円の純損失となっている。その結果、当年度未処理欠損金は402億円となり、これに資本金、資本剰余金及び評価差額等を加えた資本合計は112億円のマイナスで、4年連続で債務超過となっている。」と指摘されている。実際は未計上分があるので先ほど指摘したように188億円のマイナスです。

また「令和4年開院のはりま姫路総合医療センターに加え、8年開院予定の県立西宮総合医療センター(仮称)をはじめとする病院の整備においては、減価償却費や人件費総額の大幅な増加が見込まれる一方、病院規模の拡大等により収益の増加が期待される。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症対応と通常医療との両立を推進する中、原材料費や光熱水費の高騰による材料費・経費の増加など、今後も厳しい経営環境が続くものと考えられる。引き続き、コンサルタントなど外部の知見を活用した経営再生本部における経営改善の推進等と併せ、次の事項に一層積極的に取り組むことにより、債務超過の解消をはじめ、持続可能な経営の確保に努められたい。」

とか、「病院局及び各県立病院の幹部職員は経営責任を認識して、「第4次病院構造改革推進方策」及び「令和5年度病院構造改革推進方策実施計画」に示された病院ごとの経営方針や経営改善の取組方策に従い、経営指標に係る数値目標を達成するよう努めること。また、個々の職員も経営改革の重要性を認識するとともに、一人ひとりが経営に貢献しうるという意識を持ち、取り組むこと」とも記載されている。

個々の職員に範を示すのが、まず幹部であると思うが、経営責任を認識せよと監査から言われているが、どのように管理者は経営責任を認識しているのか。

●企業庁
1 企業庁経営評価委員会への県議会議事録の提供について
2 地域整備事業の保有するたな卸資産、進度調整地の時価評価について
(1)「地方公営企業法施行規則第8条第3項」が施行されたときに「たな卸資産」を時価評価しなかったことが、「早いタイミングを逸した理由」
(2)地方財政健全化法による資産評価では地域整備事業会計は13億円の債務超過に転落している
(3)最初に違反状態を指摘されたのは2014年だが公営企業管理者のコンプライアンス感覚について
(4)監査委員の果たす役割について

全文

令和4年度決算特別委員会 【企業庁】

質問日:令和5年10月16日(月)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

1 企業庁経営評価委員会への県議会議事録の提供について

齋藤知事は9/20の本会議で、企業庁の地域整備事業会計について、「当期損益の黒字を確保しているものの、今後本格化する企業債償還を踏まえると、資金不足に陥る可能性があります。企業庁経営評価委員会において、将来の収支見通しや想定される課題等を明らかにしたうえで、事業のあり方を早急に検討します。震災復興に伴う行革を進める中で躊躇があったのかも知れませんが、こうした課題については、当初の経営見通しが現実的に厳しくなっていることを、より早いタイミングで県民や議会に明示すべきだったと考えます。これらの課題を将来に積み残すことなく、残り任期2年間で方向性を定め、抜本的な改革を進めてまいります。」と発言している。その第一回企業庁経営評価委員会が先週11日に開催されたそうだ。

私からすれば「当初の経営見通しが現実的に厳しくなっていることを、より早いタイミングで県民や議会に明示すべきだった」って、今ごろ何を言っているんだである。逆に議会から、地域整備事業が厳しい、法令を遵守した資産評価すらできない状況になっている、と指摘してきた。知事が当選以降も発言してきた。

地域整備事業が保有資産を法令を遵守して適正に評価しておれば、知事が今さら発言する必要もなかった。

私は、すでに地域整備事業の課題やあり方についての議論は終えており、個別プロジェクトの扱いを決めて、販売の目処がたたない土地は県有環境林とするほかないと思っている。改めて第三者委員会を設置する必要はなかったと思っているが、敢えて設置されたのなら、まず過去に県議会で議論された議事録を委員に提供してほしいと思う。議会での議論を知ってもらうことは大いに意味があると思うがどうか。

2 地域整備事業の保有するたな卸資産、進度調整地の時価評価について

(1) 「地方公営企業法施行規則第8条第3項」が施行されたときに「たな卸資産」を時価評価しなかったことが、「早いタイミングを逸した理由」

今年度の決算特別委員会では、財政状況の審査における「県債管理基金」、農林水産部の審査における旧みどり公社の「森林」について質問してきた。いずれも帳簿上の価格と実際の価値が大きく乖離していることに問題があると指摘してきた。

「ないものをあるように見せる」。

これが、地方財政健全化法が施行され、各種財政指標が導入されてからの兵庫県の財政の根底にある基本方針だった。今日取り上げる地域整備事業会計の資産についてもこの方針通りの取り扱いをしてきた。

資料1を見てください。総務省令にしっかり記載されている。たな卸資産は時価評価せよと。もう何度も指摘してきた。こうした状態のまま貸借対照表が作られるとどうなるのか、資料2に示した。

企業庁が作成した貸借対照表では、資本金288億円をはじめ、利益剰余金、有価証券評価差額を入れて資本の額は「412億円」あることになっている。当然、債務超過ではない。これだけ資本があれば経営に問題がないと思われていい。

一方、資産の部を見てもらうと、未成事業資産というたな卸資産、これは土地のことであるが、簿価で750億円となっている。

資料に詳しく記載しているが、この土地は販売土地と進度調整地に分かれている。販売土地は242億円でこれは低価法で時価評価されたものだが、進度調整地という未造成地は508億円もあるが、費用を積み上げただけの原価である。ここは、知事も「抜本的な改革」をいっているのだから企業庁もたな卸資産である土地の時価評価を法令通り実施すべきだと思うがどうか。

[資料1]地方公営企業会計制度の見直しについて(2013年12月 総務省自治財政局公営企業課 通知)

[資料2]企業庁 貸借対照表・竹内作成 貸借対照表

(2) 地方財政健全化法による資産評価では地域整備事業会計は13億円の債務超過に転落している

たな卸資産、すなわち土地全体の実勢価値がわからなければ正しい貸借対照表にならない。そこで地方財政健全化法で将来負担比率の作成において定められ、総務省にも報告している「未売出土地の収入見込額」を現在の土地価格に置き換えて私が作成した貸借対照表を資料2に記載している。

企業庁の貸借対照表では資本は412億円であるが、土地の評価額が低価法によると425億円減少するため、13億円の債務超過となることが見込まれるということだ。この未売出土地のデータや根拠も確認したが、私の指摘によってセグメントごとに低価法を適用するという厳しい評価を導入しており、阪神では含み益もあるなどこれは適正な評価となっている。

こうした実勢に近い財務諸表を自ら公表するのが、知事が求める「財政の見える化」だと思わないのか。まだ「ないものをあるようにみせる」ことに加担するのか。

(3) 最初に違反状態を指摘されたのは2014年だが公営企業管理者のコンプライアンス感覚について

公営企業管理者は、実態を全く表していない財務諸表を、県民をはじめ取引先、金融機関などステークホルダーに示し続け、知事のああいった発言を受けても、法令に基づく時価評価をしないのか。私はこの制度が導入される時、2014年2月の本会議で初めて質問。つまり9年も指摘しているので、企業庁のコンプライアンス感覚はどうなっているのかとすら思っている。管理者は特別職で、ご自身で指示できる大変重い立場だがどうか。

(4)監査委員の果たす役割について

管理者からコンプライアンスは二の次だと言われれば、それをまず止める立場は内部の監査ということになる。地方自治法第2条第16項に「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」とある。これまで監査委員の中には、当局が適正な法令解釈をしていると判断しているから適正だとか、監査制度を否定するような答弁をされた方もいたが、小畑監査委員(独任制のため氏記載)は「地方公営企業法施行規則第8条第3項」に違反して時価評価をしていないことについて、地方自治法第2条第16項に反していない、適法だと考えているか。

<中田 英一 議員>
●総務部・財務部・危機管理部
1 災害時の避難行動について
(1)マイ避難カードの普及について
(2)ペットの避難情報について
2 投票方式について

全文

令和4年度決算特別委員会 【総務部、財務部、危機管理部】

質問日:令和5年10月5日(木)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 災害時の避難行動について

(1)マイ避難カードの普及について

マイ避難カードとは、災害の危険が迫っている時に、「いつ」「どこに」「どのように」避難するかをあらかじめ自分で確認、点検し、書き記しておき、自宅内の普段から目につく場所に掲出しておくなど、いざという時の避難行動に役立てるためのカードで、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県は防災先進県として「マイ避難カード」を推進してきた。

いつ発生するかわからない災害から県民の生命・身体を守る重要なこの取り組みは、実際にどの程度県民に普及・浸透しているか。

先の予算特別委員会で「県内全小学校区の4割超でワークショップ、あるいは出前講座等の取組がなされている」との答弁がなされているが、毎年実施している県民モニターアンケートでは毎年第4回に防災に関する項目を設定しており、これを見ると令和3年アンケートでは「マイ避難カードを記載している」は6.3%、令和4年の同調査では5.8%となっている。

令和3年から4年で0.5%低下している点は、この県民モニターアンケートが約2,500人を対象にしたサンプル調査であり、±5%程度の誤差は許容しているという性質から致し方ないとも思えるが、そもそもの数値が低い、あるいは、多くが固定化された県民モニターに同じ項目を質問しての結果として上昇しておらず、残念ながら普及の進捗が見えるような結果とはなっていないのではないか。

効率的に普及拡大するためには、無差別に広報するのではなく、より必要性を実感できる県民から広めていくことが大切ではないか。

マイ避難カードをあらかじめ作成しておくことの必要性は避難時に困難が伴う県民ほど高い。例えば、土砂災害警戒区域や洪水浸水想定区域等に居住または通勤している県民や、障碍等で即時迅速な移動に困難を伴う県民にはいっそう必要であると考える。

(平成31年から始まり)令和4年で終了した「高齢者・障害者自助力強化推進事業」は、平成30年7月豪雨災害において、岡山県倉敷市真備町では、自宅2階に垂直避難すらできずに多数の高齢者が死亡し、地域と接点がなかったシングルマザーの障害者とその娘が犠牲となるという事例を繰り返さないため、共助・公助による支えとともに、高齢者・障害者の自助力(防災意識)を向上し、早期避難の徹底等を促すことを目的に実施されたが、高齢者・障害者自助力強化推進事業の終了にあたりマイ避難カードの取組みとの関係や事業の成果の検証を含め、マイ避難カードの今後の普及に向けた戦略(進め方)と目標値について伺う。

(2)ペットの避難情報について

マイ避難カードの必要性の高い類型としてペットを飼育している県民が挙げられると考える。災害に遭うかもしれない自宅に、しかも長ければ数日帰れないかもしれない自宅に人生のパートナーであるペットを放置して避難することが難しいからである。

事実、民間事業者が犬・猫(以下、「ペット」)飼育者の1,150名を対象に、ペットのための防災対策に関するアンケート調査、「災害発生時、近隣避難所のペット受入れ可否が不明でも、(安全を確保の上)まずは、近隣避難所へ「ペットと同行避難」するか」の問いに対しては、「同行避難する」と回答した方の割合は83%にのぼった。

しかし、多くの指定避難所ではペットが避難できる環境まで整えられておらず、その事実はあまり知られていない。このため、ペット飼育者が自宅近くの避難所に向かったが、その避難所がペットの受入れを認めておらず混乱するといったことが起こり得る。

こういった例を示しながら、例えばペット飼育者向けにマイ避難カード(避難所の想定)の大切さを広報し、作成をすすめるといった取り組みも実施すべきではないか。

また、この前提には「ペット同行避難の可否」といった避難所毎の情報を集約し、一覧にするといった作業が必要となるが、避難時には自治体の境界線を越える場合もあることから広域行政として県が担うべき作業と考えるが合わせて所見を伺う。

2 投票方式について

R4年度に告示された兵庫県議会議員選挙は、従来通りの「自署式」投票制度で実施されたが、民主主義の根幹を成す民意の集約機能たる投票制度については、これまでも多くの議論や試行錯誤が重ねられ、より的確な民意が反映できるよう目指されてきた。

我が県議会でも、これまでの議論で登場した「記号式投票制度」は、候補者名があらかじめ印字された投票用紙に、○等の記号を記入する等簡易な方法で記入できるものであり、知事選挙では島根、大分、青森、岩手、熊本の5県、市区町村長の選挙では全国1,741の市区町村の12.3%にあたる214の自治体で既に導入されている。

また、平成14年に法整備がなされたが、機器トラブルによって選挙無効となる事例が起きてしまったこと等により、平成28年を最後にどの自治体でも採用されてこなかった「電子投票」制度は、本年8月の市川町長・町議会議員選挙にあわせて模擬投票が実施されている。

こうした投票方式は、集計作業の大部分を機械化することができ、人件費の削減、市町職員の省力化が見込めるだけでなく、高齢者や障碍者など自署が困難な投票弱者に優しい投票方式であり、無効票が減るなどより的確な民意の反映を望むことができるものと考えるが、県下における選挙の投票方式について、このような方式の採用も含めどう考えるか所見を伺う。

中田 英一
三田市

●公安委員会
1 バイパスや主要道路の迂回防止について
2 駐在所のネットワーク環境の整備について
3 アスリート盗撮について

全文

令和4年度決算特別委員会 【公安委員会】

質問日:令和5年10月10日(火)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 バイパスや主要道路の迂回防止について

道路管理者の計画において通過交通車両が通るべきとされている幹線道路で、信号機によって度々停止することを回避するため、いわゆる生活道路と呼ばれる道を抜け道として使用するケースが散見される。

こうした道路の多くは歩道やガードレールなどの設備もなく、道幅も狭いため、抜け道を選択するほど急いだ車両が通過するのは大変な危険を伴うことも多い。

こうした車両による危険を回避するため、抜け道の拡幅や歩道・ガードレールの設置、あるいはゾーン30の指定などの手立てを講じることも考えられるが、まずもって車両を計画通りに幹線道路を走らせる工夫が大切だと考える。

すなわち、主要道の車両がスムーズに流れるよう主要道の青信号は長く、脇道からの信号は短く点灯させ、幹線道路の車両の流れを阻害しないような設定が必要であると考える。

これは、例えば幹線道路ではおそらく県警本部で集中管理をされているため、スムーズな運用になっていると感じるが、生活道路については先に述べたような抜け道通行により歩行者の安全に危険が及ぶ可能性もある。

そこで、まずは、安全と円滑の観点から幹線道路と生活道路における警察の考え方を確認し、さらには幹線道路以外の信号機の設定(道路)について、信号機の故障による設定の乱れの可能性も含めてどのように対応されているのか、所見を伺う。

2 駐在所のネットワーク環境の整備について

地方に住み込みで勤務し、当該地域の犯罪等あらゆる警察事象の対応から、地域のみまもりなど幅広い業務を担って頂いている駐在所であるが、専用の県警ネットワークに接続できる環境の整備が追い付いておらず、各種警察相談から交通事故や遺失物処理など、即時報告が求められる事案が発生すれば、都度最寄りのネットワーク環境まで移動し報告しなければならない状況となっている。

日々の業務報告のためにネットワーク接続可能な本署や拠点交番等へ行かねばならず、地域に根ざした活動が想定されている駐在所員にとって矛盾が生じている。

ネットワーク環境をどのように整備していくのか。費用もかかるが、警察署・交番等の再編に引き続き、検討される駐在所の再編のなかでは整備して頂きたいと考えるがどうか。

また、報告しなければならない事項の精査やタイミングの調整、例えば週に一回まとめて報告できるようにするなどの柔軟な対応により、駐在所員の負担や地域の空白時間を減らす工夫も必要ではないかと考えるが、あわせて伺う。

3 アスリート盗撮について

スポーツ庁は令和4年7月、侮辱罪の法定刑引き上げにともない、スポーツ大会等でアスリートが性的意図を持って写真・動画を撮影されたり、アスリートの写真・動画がインターネット上に性的意図を持って掲載されたりする事案(「アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント」)について対策を講じる通達を行った。

本年成立した性的姿態撮影等処罰法では、競技服を着ているアスリートやチアリーダー等については性的姿態等撮影罪に該当する内的動機があったとしても、構成要件に該当しないこととなったが、京都府では県の迷惑防止条例違反として、アスリート盗撮の被疑者を書類送検している。

Z世代の夢を応援する我が兵庫県は、各種競技場やスタジアムを有するスポーツ立県という立ち位置でもあることから、こうした犯罪を単なる倫理違反とするだけでなく、条例違反として取り締まるとともに、そうした対応を積極的に周知することで、安易な動機でこのような行為に走る者を抑制し、被害者を出さないよう努める必要があると考えるが、県警の対応について伺う。

●農林水産部
1 土地利用の推進について
2 神戸牛の生産及び販売振興について
(1)但馬牛繁殖雌牛・仔牛の頭数の推移と今後の対策について
(2)輸出促進について

全文

令和4年度決算特別委員会 【農林水産部】

質問日:令和5年10月11日(水)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 土地利用の推進について

兵庫県では、令和3年度に人口減少の本格化により、空家の増加や経済活動の縮小等が懸念される中、地域の魅力を創り出し、活力を高めるため、市街化調整区域等の土地利用の推進方策について、有識者等の意見を聴取する兵庫県土地利用推進検討会が開催された。

新たな土地利用を目指そうとするような、接道状況や平坦な地形、日照条件など比較的利便性の高い土地は、おおむね農振法などで保護されるべき農地となっている。

この農地を保護する規制の枠は、今後相当期間(おおむね10年以上)にわたって農業振興を図るべき地域を「農業振興地域」として知事が指定し、その中で、土地改良事業がなされたような生産性の高く農業上の利用を確保すべき農地を「農用地区域」と市町が指定することになっている。

規制の枠から除外する場合は、市街化調整区域において開発を試みる場合と同様に、市町から計画をあげ県は農振法の基準に適合しているか確認を行い、適当であれば同意するということで、あくまでも主導権は市町にあるということである。

これを市町の担当職員に伝えると「そんなことはない。県が認めてくれないから進まない」と言われる。

私の理解としては、この農振法に定められている条件が厳しいために、県としては条件に満たない市町が悪いということになり、市町は認めてくれない県が意地悪という構図になっているのではないかと考えている。

さらに、まちづくり部と農林水産部と2つの部局にまたがる手続きが必要で、その調整に時間を要するなどハードルが高かった。

そのため昨年開催された検討会を元に設立された「農業振興地域整備計画の変更に係る事前検討会」には、部局横断型の対応が予定されているだけでなく、事前相談の段階から申請者・市町に寄り添った伴走型で進めていくということで、これまでのハードルを随分と解消することを期待しているが、令和4年度における本庁協議を要する規模の大きな案件の実績及び概要について、また、今後の大規模開発に対する農林水産部の対応について教えて欲しい。

2 神戸牛の生産及び販売振興について

兵庫県農業が誇る最強のブランド品目の一つに神戸牛がある。

説明するまでもないが、神戸牛は兵庫県外の牛を交配せず純血を保つ但馬牛仔牛を自然豊かな県内で繁殖・肥育した牛肉のうち、脂肪交雑・歩留りともに優秀な個体のみに名乗ることの許された至高のブランドである。

但馬牛についてはその伝統的な飼育システムが世界農業遺産に、そして神戸牛をはじめとする和牛に代表される国産食材は、ユネスコ無形文化遺産に認定された日本食の要として注目を浴びている。

これまでも度々言及してきたが、我が県は先人からのたゆまぬ努力のもとに享受しているこの奇跡的な価値を最大限に活用し、また、それだけにとどまらずより良いものにして次代に引き継いでいく必要があると考える。

(1)但馬牛繁殖雌牛・仔牛の頭数の推移と今後の対策について

県では、需要に見合った神戸牛を生産するために、その素牛となる但馬牛子牛を増やすべく繁殖雌牛の増頭を進めてきた。その一方で、平成24年度の神戸牛の輸出を契機に増大する需要を満たすため、平成26年度からは乳牛への但馬牛受精卵移植による子牛生産にも取り組んでいる。

ついては、その成果として、現在、繁殖雌牛と子牛の生産状況がどのように推移してきたのか、また今後の増頭をどのように見込み、支援を講じていこうとするのか伺う。

(2)輸出促進について

全ての産業において、出口すなわち販売先が確保できていることは、生産に自信を与えるものであり、(1)への影響もあると考える。

国内では少子高齢化などの事情も背景に、和牛全体の消費量は減少の一途であり、神戸牛の出口戦略として輸出の促進は必須であり最大のテーマであるといっても過言ではない。

ところが、令和4年の輸出量は78t前年比107%ということで、ほとんど増えていない。

ブランドを活かした販売をしっかり進めることが、生産頭数の増加につながり、神戸牛ブランドをさらに高めていく方法ではないかと考えるが、当局の昨年の結果に対する評価と今後の取組みについて伺う。

●環境部
1 EVの普及に向けた取組について

全文

令和4年度決算特別委員会 【環境部】

質問日:令和5年10月11日(水)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 EVの普及に向けた取組について

ロシアのウクライナ侵攻にともなう国際情勢不安に乗じ、産油国が供給量を減産したことで、ガソリン価格の高騰が続いている。これは私達の生活に大きなダメージを与えているが、環境負荷の少ないEV普及にとってはチャンスとなっている。

水素社会を見据えるのは否定しないが、発電効率の悪い水素発電は蓄電システムの普及などにより主流とならない可能性もあり、EVの普及はしっかりと取り組むべきと考える。

EV普及率(新車販売台数割合)は、2022年で約1.72%と年々上昇しているが、アメリカは約3.2→5.8%、EU全体は9.1%→12.1%と大きく差をつけられている。この差の原因は何か。

J.D.パワージャパンが昨年実施した「購入検討する車のエンジンタイプやEV購入意向」に関するアンケートの中で「EV購入を検討しない理由」は、1位「充電スタンドが少ない」(53%)、2位「車の価格が高い」(48%)、3位「充電に時間がかかる(38%)」、4位「自宅に充電設備を用意できない(37%)」と続いている。2位の購入価格が高いという回答以外は、充電インフラへの不安が占めている。

県では事業者向けの購入補助制度を設けているが、国や市町の補助と合わせると、75万円~100万円程度受けることができ、例えば日産サクラが車両価格255万円で最大75万円の補助を受けると180万円となり、ガソリン車ルークス165万円と同レベルの価格となる。さらに維持経費(燃油代)もガソリン車と比較してEVは年間5~10万円安くなるとのことなので、仮に10年間乗ったとして50~100万円安くなることを考えれば、大きな逆転現象が生じていると言っても過言でない。

ユーザーがそこまで認知していない可能性はあるから周知はしっかりとしてもらいたいが、やはりボトルネックは充電インフラの整備ではないか。その中でも、個人的には集合住宅に居住する県民の基礎充電である普通充電設備に注目している。EV充電スタンド情報共有サイト「GoGoEV」がユーザーを対象に実施した普通充電に関するアンケートにおいて、実に77%が自宅に充電設備があるとの回答であった。さらに回答者の住居タイプは81%が戸建て、19%が集合住宅で、「自宅に充電設備がある」と回答した人に限ると96%が戸建て、集合住宅はわずか3%だった。一方「自宅に充電設備がない」と回答した人の70%は集合住宅に住んでいると回答しており、集合住宅への充電設備の設置がまだまだ少ないことは明白である。

国はこうした事情も踏まえ、集合住宅への充電器設置補助制度を提供しているが、人気が高く年度途中で予算が尽きてしまい、ニーズに足りていない状況とのことである。

こうしたニーズに応えるため、県独自の普及率向上に向けた取り組みについて、所見を伺う。


●まちづくり部
1 中堅所得者向け県営住宅(サンライフ)の入居率向上に向けた取り組みについて
2 県営住宅の共益費の一括徴収の進捗状況について

全文

令和4年度決算特別委員会 【まちづくり部】

質問日:令和5年10月12日(木)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 中堅所得者向け県営住宅(サンライフ)の入居率向上に向けた取り組みについて

中間所得者層に向けて優良な住宅を供給するという目的で進められた県営住宅「サンライフ」だが、需要は頭打ちし、その後様々な取り組みも試みられたものの、入居率は思うように向上しない物件がある。三田市にあるサンライフ三田もその一つで、現在の入居率は50%にとどまり10年以上停滞している状態である。

集合住宅では、入居世帯数に応じた負担で共用部分の維持管理を行なっていくことを想定しており、それが50%となると各世帯の負担は大きく、また手入れの行き届かない共有スペースが生じるなど、入居者満足を低下させている。

入居者のためにも、また県税を投入したインフラの有効活用のためにも、入居率向上は目指さなければならない課題であると考える。

しかし、物件を見てみると構造がしっかりしている優良建物、100㎡以上の占有面積で賃料も6万円代と安く、市街地にあって利便性も低くない。地元の不動産事業者に聞いても、入居率が伸び悩む理由がよくわからないとのことであった。

そこで、この物件自体や募集条件が知られていない、選択肢に入っていないのではないかと思いインターネット検索をしてみると、案の定この物件はヒットしなかった。サンライフの想定する対象者が、通常転居を検討する際には、県住としてではなく一般賃貸物件を探している方。とすれば、インターネット検索で物件を探す方が大半で、そこから不動産事業者の営業所に出向く。

インターネット掲載は必須であるし、不動産仲介も有力。県のホームページにはそもそも来ない。

県として入居率の低いこの物件の入居率向上のためにどのような取り組みを行ってきたのか伺う。

2 県営住宅の共益費の一括徴収の進捗状況について

兵庫県では令和3年7月改定の「ひょうご県営住宅整備・管理計画」の中で、共益費の徴収や執行が困難な自治会が増加していることから、共益費の確実な徴収に向けた相談や指定管理者の代行徴収制度による自治会のサポートを引き続き行うとともに、家賃と共益費の一体的徴収を実施することとし、昨年から進めている。

東播磨・神戸・阪神南では、アンケート実施からスタートし、東播磨では既に1件で一括徴収が始まっていると聞いている。一方で他の地域についてはどのようになっているのか。自治会役員の負担軽減を考えると、一括徴収を進めていくべきと考えるが、これまでの進捗状況と今後の進め方について伺う。

また、私の地元である、三田市のある県営住宅では自治会が分裂してしまい、同じ県営住宅に2つの自治会が存在し、それぞれで共益費や自治会費の徴収を行なっているが、困惑した住民がどちらにも管理費・自治会費の支払いを拒んだり、共用部分の電気代について一方の自治会が会員数に応じて按分した電気代を支払いたいと主張しても認められず、一方の自治会が全ての共益費を支払うなど、混乱が生じている。

この場合に、この制度に従って75%の住民が一方の自治会に所属して一括徴収に同意すれば、全住民の共益費が一方の自治会に振り込まれるか。そうなればこの問題が解消するのではないかと考えるが当局の見解を伺う。

●教育委員会
1 スクールサポートスタッフの配置拡充について
2 スクールカウンセラーの配置等について
3 研修等のICT化について
4 人と自然の博物館エントランスホールの活用について

全文

令和4年度決算特別委員会 【教育委員会】

質問日:令和5年10月13日(金)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 スクールサポートスタッフの配置拡充について

スクールサポートスタッフは、多忙化が懸念される教員の負担を軽減するため、コロナ禍でさらに増加した学校事務・庶務の負担を担って頂くために、導入された制度であった。

令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の予防対策として、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用し、県のモデル配置校40校に加え、年度途中から6学級以上の全小・中学校に追加配置されたが、令和3年度以降は全額国庫措置されず、県下の多くの小・中学校では配置が減り、現場から多くの苦しい声があげられた。

本年度、兵庫県は補助金として報酬の9分の2を支出し、国に半分の9分の1を、残りの9分の6、すなわち3分の2を市町負担として、全小中学校に配置することのできる制度をスタートした。

補助がない中でも独自予算でつけていた市町と、財政的に苦しい市町とで大きな開きが出てしまっている。

40市町と2つの事務組合を含めた42のうち、25が全校100%実施できている一方で、播磨町0%、淡路市0%、宍粟市5%、丹波篠山市10%、三木市15%、明石市23%、市川町20%、猪名川町25%、上郡町25%、三田市27%、たつの市28%、豊岡市46%と50%を切っている市町がある。

各市町の努力による市民サービスの向上について否定するものではないが、一方で教育サービスについては全県(全国)どこに居住していようが関係なく子供たちのために一定水準を保障するというのも本質である。

コロナに翻弄されてきた部分があるようにも思われるが、兵庫県として、スクールサポートスタッフの配置拡充についてどのように考えるかお伺いする。

2 スクールカウンセラーの配置等について

1995年から導入され少しずつ広がってきたスクールカウンセラー制度は、学校で児童・生徒が抱えるさまざまな課題について解決のための助言や援助などをおこなう専門家を配置する事業である。

本県で実施した令和4年度スクールカウンセラー配置事業実施状況調査結果では、「相談希望者の時間の確保が困難なため、1人あたりの時間を短縮して対応できている。」との回答が12.1%、「相談希望者の時間の確保が困難なため、希望があっても予約を受けられていない。」との回答が13.7%あり、4分の1以上の学校でスクールカウンセラー不足が明確になっている。

さらに、課題となっているのは、スクールカウンセラーに予約できたとして、その待期期間である。

地元小中学校で耳にしたのは、予約できても1・2か月先は当たり前という話である。

もし、子どもが「学校の人間関係で悩んでいる」と打ち明けてきた時に、「カウンセラーの予約が2か月先にできたからそれまで頑張って登校してね」としか告げることができない保護者や教員の辛さを想像する。

当然予算上の制約もあると思うが、スクールカウンセラーの確保や配置についての現状課題と展望について伺う。

3 研修等のICT化について

昨年までのコロナ禍で、学校現場にも大きな混乱と膨大な事務量を増加させるなどの負の影響が大きくのしかかったが、一方で数少ないいい影響をもたらしたものの中に、研修等についてもICT化が進んだことだと捉えている。

具体的には、教育委員会主催の研修や教科ごとの担当者会などのために県下各地から1か所に集まって実施していたものが、ZOOMなどインターネットに接続すれば、移動することなく自校で参加できるようになったり、録画配信を視聴して都合の良い時間に済ませられたり、移動に割く時間が劇的に短縮され、旅費も節約できるというものである。

しかし、新型コロナウイルス感染症の5類移行とともに、徐々にコロナ前に逆戻りをはじめ、こうしたメリットの多い点もコロナ前のやり方に変わっている、すなわち研修のために出張しなければならないことが急増しているとの声を聴く。

これまでもコロナ禍で得られたこうしたプラスの側面はしっかりと維持していってもらいたいとお願いしてきており、働き方改革の面からも研修のICT化を進めることが必要だと考えるが、県教委としてこの点についてどのように考えておられるのか伺う。あわせて研修のICT化を進めていくには、対面で行うのが適当な研修もあると思うので、研修の状況をある程度把握して具体的な方針を示していくことが大切だと思うが、この点についてもお伺いする。

4 人と自然の博物館エントランスホールの活用について

昨年、開館から30年の節目を迎え人と自然の博物館に新たな見せる収蔵施設としてコレクショナリウムがオープンした。高齢化が進むオールドニュータウンにできたこの施設は、人と自然の博物館に新たに地域の交流機能も持たせようとされたものであり、地域からの期待も大きい。

ただ、物理的な位置的にも地域の玄関口、敷地のもっとも道沿いに建設されたこともあり、これまで主として来館者をお迎えしていた円形のエントランスホールとの役割が重なってしまっていると感じる。

そこで、コレクショナリウムのオープンによってこの円形のエントランスホールの役割はどのように変化したのか。実績と所見を伺う。

あわせて、さらなる人と自然の博物館の活性化に向けて、この構造物および周囲のロケーションを活かし、エントランスホールを民間企業に貸出し、地域の人々をはじめ訪れた人々が憩えるカフェのようなものに改装することも検討してはどうかと考えるか所見を伺う。

●企業庁
1 まほろばブレッツァの跡地運用について
2 フラワータウン用地の利用方針について
3 受水義務の見直しについて

全文

令和4年度決算特別委員会 【企業庁

質問日:令和5年10月16日(月)

質問者:中田 英一 委員(ひょうご県民連合)

1 まほろばブレッツァの跡地運用について

カルチャータウン地区センター用地で、昨年まほろばブレッツァが運営事業者の倒産により閉店した。その後次なる運営事業者を募集し、新たに決まった横の店舗で営業するトラハスの別棟として先日オープンした。「地域の利便施設」として物販・飲食サービスの提供が公募要件に記載されていたと記憶している。しかし、現状を見ると、飲食サービス、つまり、レストランが未だに営業に至っていない。

当該公募の期間が年末年始を挟んで3週間程度しかなかったことから、なぜこのような短い期間にしたのかと伺うと、「地域のためになるべく空き店舗の状況を短くするため」との説明があったが、現実として未だにサービスは提供されておらず、目処も立っていないということである。

収益を上げることが難しい立地条件の土地であるという話も聞くが、地域住民の利便施設がこのまま実施されないのではないかと心配している。

住民の交流の場として、肝となる飲食サービス、つまり、レストランを欠いた状態でのオープンは契約上問題ないのか、また、レストランの設置について、今後どのような見通しなのか伺います。

2 フラワータウン用地の利用方針について

三田市に開発されたフラワータウンは昨年まちびらきから40年が経過し、県内オールドニュータウンの代表的な1つとなっている。入居世帯の年代が偏っており、当時は非常に若い街であったが、今では大半がシニアとなっており、若者・子育て世帯の新たな流入が課題となっている。

このニュータウンの中心地にあるフラワータウン用地は、当時開発を手がけた企業庁の前身が町の中心部(商業施設)に土地を保有し、まちに賑わいを作り出すという目的を持っていると聞いている。この場所は事業用定期借地契約を締結していたが、本年6月にこれを終了し現在は空き地となっている。

地元からは、この場所を活用し、新たな街の魅力や活力の源になるような利用を検討してもらいたいという声が多く聞こえるが、企業庁としてどのように考えておられるか所見を伺う。

3 受水義務の見直しについて

令和4年もコロナ禍であったが水道事業は安定的に利益を出されている。コロナ禍を含め県民生活が大きくダメージを受けたことにも鑑みて今季も引き下げる価格改定を提案されていることは大きく評価をしたい。

そのうえで、受水契約についてもう一歩踏み込んで見直すことはできないか。

これまで企業庁では、各受水団体における水源地ダムの開発の負担を平準化し、企業庁収入を安定させる必要があったことから、水道料金の基本料金に①計画受水量に応じて付加される項目と②1日当たりの最大供給量に応じて付加される項目があり、そこに実際の使用量に単価をかけた金額を足して算出される。

ところが、多くの市町の計画受水量は実際よりも過多になっている場合が多く、人口減少期に入った今この契約に基づく水道料金が割高に感じる市町が少なくないと聞いている。

とはいえ、計画水量分の水の買い手が無く、投資した水源開発費等が回収できないこととなって、事業として継続できないこととするわけにはいかない理由も理解する。

しかし、近年各市町が財政や効率化の観点から、独自に水源設備を持てなくなるなど、新規の受水申込も増加しておりこの傾向は当面継続しそうであると伺っている。

そうであるならば、需要と供給が正常に成り立つということであり、過去の契約にしばられ受水義務のある市町に大きな負担を負わせるのではなく、もっと①計画給水量割を引き下げても、水道事業が回るのではないか。そのほうが消費者の目線に立った健全な運営だと考えるが所見を伺う。