2014年12月16日
兵 庫 県 議 会 議 長
梶 谷 忠 修 様
兵庫県議会 民主党・県民連合議員団
兵庫県議会 改革への提言について
本年7月以降に発覚した政務活動費の不正使用に関する一連の問題で、兵庫県議会は県民の信頼を大きく損ないました。私たち民主党・県民連合議員団は、この問題を単なる議員個人の資質の問題として捉えるのではなく、兵庫県議会という組織の問題、課題として、真摯に受け止めなければならないと考えてきました。
兵庫県議会では、7月11日に「政務活動費のあり方検討会」を発足させ、9月22日の9月定例会初日において、政務活動費の交付に関する条例の改正案を可決しました。具体的には、個人支給から会派支給へと変更し、前払い方式から事後精算方式へと変更することで不適正な支出を防ぐとともに、会計帳簿のインターネット公開、県民感覚から見て不自然な支出と見られる切手購入に関する制限額の設定、さらには是正命令など適正使用について審議する第三者機関の設置などの改善策などを盛り込んだ内容とし、政務活動費の手引きも大幅に見直したところであります。このように、政務活動費の不適正な支出に対する再発防止策は大きく前進したところでありますが、県議会議員が県民に高い倫理観を求められていることを再認識し、県議会として今後も常に制度の改善に取り組んでいく必要があります。
「政務活動費の使用適正化」だけでは、県議会への信頼が十分回復できるとは言えません。なぜならば、政務活動費の適正化や透明性の確保は県民にとって当然のことであり、今回の取り組みは、信頼回復へのスタートラインに立ったにすぎません。
兵庫県議会議員の一人一人は、今後改めて襟を正すとともに、信頼回復に向けてさらなる兵庫県議会の改革に取り組む必要があると考え、会派内で議論を重ね、この度、議長宛に「兵庫県議会 改革への提言書」として、提出させていただくことに致しました。
なお、今任期における議会改革の取組みについては、その検証が議長より議会運営委員会に諮問されたことに基づき、6月11日に設置された「議会改革検証委員会」において8回にわたり検証の議論が行われてきました。その結果は、12月12日に議会運営委員会に報告されたところですが、同委員会での検証の中で我が会派が強く主張した内容に関しては、今回の提言としても重ねて提案させていただきます。
一度失われた信頼を取り戻すことは決して容易ではありません。地方分権が進む中、議会の果たすべき役割はますます重要になっていることを強く自覚し、改めて「県民とともに歩む」という自治の原点に立ち帰ったうえで、不断の努力を続けることを誓いながら、県議会の改革案をご提言申し上げます。
■兵庫県議会 改革の4つの視点
Ⅰ.県民が未来を託す「機能する」県議会
兵庫県議会が、本来果たすべき行政へのチェック機能や政策立案力を強化するため、議会における質疑時間のさらなる確保や、議会機能のさらなる向上を目指します。
①本会議、予算・決算特別委員会における質問時間、質問機会の確保
本会議における一問一答方式、分割方式などの質問方式の多様化により、答弁の合計時間が長くなる傾向にある。質疑・質問に係る申し合わせ時間は答弁時間を除いた質問者の発言時間のみで行うなど、質問の設問数の確保、及び質問内容の充実を目指すこと。
②基本計画条例にかけられる「議会議決計画」の対象の拡大と審議時間の確保
5年以上となっている対象計画を3年以上に拡大するとともに、常任委員会・予算特別委員会、あるいは特別委員会を設置したうえで、審議の集中日を設けること。
③予算特別委員会の常設化
突発的な事案などに対する県議会としての体制が機能していないと考えることから、機動的に対応できるよう予算特別委員会を常設化すること。
④政策立案機能の強化
県議会が独自の政策立案・提言等を行う機関であることに鑑み、政務調査会長会のさらなる活用や、地元大学との政策連携などを進めるなど、政策立案機能の向上を目指すこと。
⑤議会スタッフ体制の充実
「議会事務局」を「議会局」へと名称変更するとともに、有資格者などの任期付き職員を採用するなど、議会スタッフの充実を目指すこと。
Ⅱ.県民感覚の県議会
政務活動費の議論の中で出てきた指摘の一つに「議会の常識は必ずしも県民の常識ではない」という声がありました。「県民とともに歩む県議会」を前提として、あらゆる議員活動を見直し、県民感覚の県議会を実現します。
①費用弁償を見直し、実費支給へ変更
本会議、常任委員会の費用弁償について、招集交通費は、予め届け出た交通手段による実費精算とするとともに、議会開会中の宿泊料も実費精算とする制度へ変更すること。
②政治倫理審査会(仮称)の設置
倫理基準を明確化する「政治倫理基準」を定めるとともに、「(仮称)政治倫理審査会」を設置し、議会において措置を決定する仕組みとすること。「(仮称)政治倫理審査会」のメンバーは、政治性を排除し、公平性、透明性を担保するため、弁護士や学識経験者などの第三者とすること。
③応招通知及び本会議の署名の簡素化
県議会受付での署名に拘らず、議員控室での署名や押しボタン式の出退庁システムへの変更を目指すこと。
④正副議長の立候補制の導入と、1年交代という慣例の廃止
正副議長の選出過程が不透明であることから、立候補制としてその対象を明確にすること。また、名誉職的な要素で1年交代するのではなく、二元代表制の一翼である議会の長としての権限を最大限に発揮するため、まずは2年での交代に変更すること。
⑤副議長の選出
議会運営を円滑に行うため、議長選出会派以外の会派から副議長を選出すること。
⑥各種審議会の議会選出委員の日当を廃止(交通費は除く)するよう取り組むこと。
⑦政務活動費の事務の合理化
新たな手引きによる事務の厳格化を進めていくと同時に、会計帳簿、領収書添付様式、活動報告書に同様の記述が求められるなどの課題を解消し、事務の合理化など適宜見直しを図ること。
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Ⅲ.県民に見える「開かれた」県議会
「開かれた」県議会を実現することは、今後もますます重要な要素となると認識しています。県民に対する透明性の確保を進めていくと同時に、さらなる情報の提供を行うなど、不十分な点についての改善を目指します。
① 全常任委員会のインターネット中継実施
初期投資の額及びランニングコストについて考慮するとともに、アクセス件数の推移も踏まえつつ、実現を目指すこと。
②常任委員会等での傍聴者への資料提供の実施
傍聴者には十分な資料の提供が行われていないので、配布できるような仕組みを検討すること。また、インターネット上への資料掲載の実施を目指すこと。
③議事録の全面公開
現在、議事録には当局からの説明の部分が記載されていない。説明も含めた全面的な公開を目指すこと。
④本会議、各委員会等の傍聴者のためのバリアフリー化
乳幼児をお連れの方も傍聴できるよう本会議場に親子室を設置することや、事前予約制による手話通訳者・一時保育預かりを導入するなど、傍聴者のためのバリアフリー化を目指すこと。また、議場のバリアフリー化にも配慮すること。
⑤本会議の夜間開催など開会日時の多様化
職員の勤務体制などを考慮しつつ、例えば代表質問のみ夜間に試行実施するなど、県民が傍聴しやすい環境づくりを目指すこと。
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Ⅳ.県民の声が届く「身近な」県議会
県議会は、市町や市議会などに比べて、県民にとって必ずしも身近な存在とはなっていません。身近な県議会を実現するために、県民の参画を促す仕組みが必要であると考えています。
①請願における発言機会の付与
現在、当局側の見解は求めるものの、請願者の意見開陳の機会は与えられていない。委員長及び委員会の許可制などにより、意見開陳の場を付与できるようにすること。
②常任委員会における県民との意見交換会の拡充
現状は常任委員会の管内調査の一環で特定の団体と意見交換を行っているが、必ずしも十分な時間をとれているわけではない。団体を含め、多くの県民の意見が聞くことができる機会を拡充していくこと。
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■改革にかかる費用について
これらの改革に要する費用は、政務活動費を1割削減したことにおいて生まれた財源によって捻出できると考えています。二元代表制の一翼である県議会の運営に関する費用は、単に削減の対象とするのではなく、有用な形で活用するべきと考えています。
以上