平成27年度予算特別委員会質問要旨(健康福祉部)
質 問 日:平成27年 3月 5日(木)
質 問 者:永富 正彦委員
1 認知症対策の推進について
(1)早期発見・対応に向けた取組みについて
高齢化の進展とともに認知症の人は更に増加しており、現在の462万人から団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、約700万人にまで増えると見込まれています。実に高齢者の5人に1人が認知症患者ということになります。県内でも推計によると現在の約19万人から2025年には30~33万人と約1.5倍以上に急増することになるとしています。
認知症対策については、早期の診断・治療が重要とされていますが、そのためには、家族や周りの身近な人たちの気づきやサポートに加え、日頃から高齢者と接する機会の多いかかりつけ医による正しい診断や介護事業者などの専門家による適切なアドバイスが欠かせません。
しかしながら、認知症は誰にでも起こりうる病気であると言われているように、今では若年性の認知症対策も大きな課題となるなど、医者や介護などのお世話にならない元気な高齢者が周囲の気づかないうちに認知症が進んでしまうことも十分に考えられます。認知症は高齢者ほど発症リスクが高いことから、高齢社会における身近な病気として一層の対策が必要です。
特に、高齢者でも独居の場合は、僅かな異変を指摘してくれる人が周囲におらず、発見が遅れて症状が進行してしまうリスクがあるため、小さな変化を見逃さずに適切なサポートをしていくためには、民生委員や認知症サポーター等による地域での見守り・支えの充実はもちろんですが、そのほかにも、例えば、地域の医師や保健師、介護福祉士など専門家による日頃からの積極的なサポートが欠かせません。国も認知症対策の方向性について、事後的対応から事前的対応に基本スタンスを置いています。
そこで、県には市町が主導する認知症対策の司令塔としての役割が期待されているところであり、来年度から新たに認知症の早期発見・早期対応を推進する認知症相談センターが全ての市町に順次設置されますが、重症化を未然に防ぐためにも、医師や介護事業者などの専門家による早めのアプローチが必要であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。
(2)若年性認知症対策について
認知症は誰にでも起こりうる病気だということは先ほど申し上げましたが、それは高齢者に特有の病気ではなく、若年者であっても認知症になることがあるということが、若年性認知症として最近になって大きく取り上げられていることからもご承知のとおりです。
若年性認知症は働き世代にも起こることから、本人だけでなく家族の生活への影響が大きく、その後の生活環境が大きく変わることがあります。特に、仕事への影響を考えると継続して働き続けることをあきらめざるを得ない場合もあり、生活支援はもとより心のケアも重要です。
若くして認知症になったということを自分で認めたくないと思うあまり、認知症であることを隠したり、あるいは医療機関への受診を拒否したりするようなケースがあるのではないでしょうか。全国で37,800人、本県には約1,600人の若年性認知症の方がいると推測されていますが、このようなことを考えると、実際にはもっと多くの方が悩み、苦しんでいるのではないかと思います。
たとえ認知症になったとしても、できる限り本人の希望する生活が持続できるような支援が必要です。そのためには、家族の理解はもちろんであり、働いている方にとっては、一日の大半を過ごす職場の理解は非常に重要であり、職場における認知症に対する正しい理解とサポートが欠かせません。本人の意思を尊重しつつ職場においては本人の体調や症状に応じた働き方を提案するなどの体制も必要です。
一方で、家族や職場以外に若年性認知症として同じ悩みを抱えている人やその家族との交流は、自分の中だけで悩み苦しんでいる本人にとって、社会活動などを通じて新たな生きがいや楽しみを見つけるきっかけとなるのではないでしょうか。また、こういった交流活動の輪を広げていくことにより、社会全体の理解が深まり、若年性認知症で苦しんでいる方や家族に対する支援のあり方も見えてくると思います。
そこで、若年性認知症の方が心身ともに充実した日々を送るためにも、同じ症状で苦しんでいる人たちとの交流活動を支援していくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。
2 介護分野への若年者の人材確保について
本格的な超高齢社会を迎え、今後とも要支援・要介護認定者数が増加していくことが見込まれている中で、介護人材の確保はますます大きな課題となっています。国では、団塊世代が後期高齢者となる2025年には必要な介護職員数を約250万人と見込んでおり、確保できる職員数215万人に対して約30万人不足するとしています。
しかしながら、介護労働者の多くは非正規雇用と言われており、特に、就労時間が不規則となる訪問介護でその割合が高く、職員の高齢化も指摘されています。また、他の産業と比べても賃金が低いことや夜勤があることなどから離職率も高くなっており、安定して正規職員を確保することが難しい状況にあります。
先日、国において、来年度以降の介護報酬の引き下げが正式に決定しましたが、そのうち介護職員の賃金については平均1万2千円上がることになっています。介護労働を魅力あるものにしていくためには、このように賃金を引き上げるとともに、資格や経験に応じた処遇の見直しが必要であると考えます。
また、人材を確保するだけではなく、労働者一人ひとりがきめ細かな質の高いサービスを提供できるよう人材の育成も欠かせません。介護労働は介護サービスを提供するサービス産業であると言ってもよく、サービスの向上が介護分野全体の質や社会的評価を向上することで、安定した人材確保の循環は生まれるのではないでしょうか。
一方で、誰もがいつかは介護される側になるかもしれないということを考えれば、これまでのサービスにとどまらず、日常の買い物、趣味や社会活動などを含めると支援内容は幅広く、このように自分ならどう介護・支援して欲しいのかという視点をもった改善が新たな人材を確保するきっかけになると思います。
本県にも介護事業者は多数存在しますが、例えば、非常に質の高いサービスを提供し魅力ある職場づくりを実践している事業者の取組みをこれから介護分野で働こうとする意欲ある若年世代に向けて事例的に紹介することも人材確保の面では大きな意味があると思います。
そこで、安定的に介護人材を確保していくためには様々な課題がありますが、なかでもこれからの世代を担う若年者の人材確保について、当局のご所見をお伺いします。
3 次世代へつなぐ戦没者追悼行事のあり方について
今年は戦後70年の節目にあたります。国では、安倍首相が今夏に発表する戦後70年談話に関する有識者会議が先日開催されましたが、平和国家として生きる日本の決意とも言えるこの首相談話に世界中が注目しています。過去の談話をどのように引き継いで、これまで築いてきた平和主義をどう発信していくのか、しっかりと考えていただきたいと思います。
一方、県では、5年ごとに開催している兵庫県戦没者追悼式が今年7月に開催されます。この追悼事業は兵庫県における戦争で犠牲になられた109,553人に追悼の誠を捧げるとともに、戦争の悲惨な体験を伝承することを目的としています。
戦後一貫して、日本が世界に類を見ないほどの安定した平和を維持することができたのも、昭和27年から始まったこの追悼事業の果たしてきた役割が大きいと思います。
人口の80%が戦後生まれです。やがては、国民のほとんどが戦争を知らない世代へと交代していきますが、記憶が次第に薄れつつある今だからこそ、殉国の史実を風化させることなく、生命の尊さ、平和の大切さ、戦争の愚かさを後世に語り継ぎ、再び悲しみの歴史を繰り返さないため、永久に戦争を放棄する「不戦の誓い」を新たにしていくことが大切です。
そこで、戦後70年という節目にあたり、例えば、兵庫県戦没者追悼式を「兵庫県平和祈念戦没者追悼式」にするなど、この追悼行事についても、未来志向の下に次世代に向けた平和への願い・思いを語り継いでいく取組みが必要であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。