予算特別委員会(予算審査・健康福祉部)
質 問 者 小池 ひろのり 委員(民主党・県民連合)
戦後、親を亡くした孤児を中心に、生活基盤を提供してきた児童養護施設は、最近では、児童虐待等で親と隔離すべきと判断された子供が、入所者の6割を占める等、すっかり様変わりをしています。
本来なら、親は子供が成人(20歳)になるまで扶養する義務があります。しかし、扶養してくれる人がいない子供に、行政が親代わりに手を差し伸べているのが児童養護施設と考えられます。
そんな児童養護施設が抱える今日的課題を、是非、皆さんに知って頂きたいという思いから質問を取り上げます。
1.児童養護施設入所者等への支援について
(1)児童養護施設入所者の現状について
現在、都市部の大規模な児童養護施設では、100名近くの子供が集団生活をしています。子供たちは、施設から小・中学校や高校に通い、卒業し就職をすると同時に施設を去って独り立ちをします。
ここで、現実に進学率の問題が生じてきています。
最近では、全中学生の98.4%が高校へ進学をしており、ほぼ全入に近い高校進学率で、大学進学率は53.8%です。しかし、児童養護施設入所者は、中学生では95.4%が高校へ進学し、高校生では11.4%が大学へ進学しています。特に、大学進学率では、親のいる子供の約5分の1という低さで、進路の面で明らかな差が生じています。
また施設の子供の多くは、高校卒業後、寮のある会社に就職し、施設を退所していますが、ここでも新しい問題が生じています。
例えば、近年、約4割の高卒生が、就職後3年以内で会社を辞めてしまう現実の中、誰にも相談する相手がいない施設退所者の離職率は、もっと高いことが容易に想像できると思います。施設側も入所者だけで精一杯で、一旦退所した子供までは、面倒を見られない状態のため、退所者は一人で問題を解決していかねばなりません。
会社を辞めた退所者は、自分一人で新しい職場を見つけるのと同時に、さっそく住む家を探さなくてはなりません。身元引受人も保証人もいない退所者にとって、アパートを借りるだけでも大変なことです。これを、15歳または18歳の子供に押し付けるのは、酷な話とは思いませんか?!
現実に、新しい家や職場が見つからずに、社会適応がうまくいかずドロップアウトしていく若者も少なからずいます。中には、犯罪につながる場合もあり、社会問題にもなっています。
大学進学希望者であっても、大学入学金、授業料、さらには生活費まで工面しなくてはならないという不安から、大学進学を断念するという子供も多いようです。扶養してくれる親がいないことで大学を諦めざるを得ないということは、明らかに教育の機会均等という観点からも、大きな問題があると思われます。
子は親を選べません。頼れる親がいない子供に、せめて成人まで、又、大学進学する場合は卒業の22歳までは、行政が支援の手を差し伸べ、せめて住居だけでも確保すべきだと思います。また、一旦、施設を退所しても、20歳までは帰ってくる所があれば、崩れていくのにも歯止めがかかります。
このような児童養護施設の現状と課題に対して、兵庫県はどのように認識しているのか、まずお聞きします。
(2)今後の取組等について
このような厳しい現状にある児童養護施設入所者や退所者について、教育の機会均等、貧困の連鎖の防止、若者の社会からのドロップアウト防止、さらに犯罪への悪循環の防止など、様々な観点からきめ細かな支援が必要な事は言うまでもありません。
そこで、施設入所者あるいは退所者へは、どのような支援を行っているのか、
また、このような厳しい現状を踏まえ、今後どのような取組を行っていこうとしているのかお聞きしたいと思います。
2. 新生児里親委託等の特別養子縁組の充実について
親が育てられない6歳未満の子供を、別の夫婦が引き取り、法的にも親子となる制度として里親(特別養子縁組)制度があります。さらに生みの親に代わって育てる里親制度は、早ければ早いほど良いという専門家の意見もあり、好まない妊娠や生みの親が養育できない、またはしないという赤ちゃんの相談を受け、産科医と連携して特別養子縁組を前提に、赤ちゃんを里親に託すという制度が進められています。
国連子どもの権利条約20条では、“永続的な家庭を提供する”ことが国の責務であると記されています。0~3歳の乳幼児期に家庭を知らずに育つ事の問題がいかに大きいかは想像に難くありません。
ルーマニアのチヤウシェスク・ベビーの研究では、“施設で2歳まで育った子供は、里親委託された子供に比べ、甚大な脳の障害を負う”というデータが公表され、今では、家庭の愛を知らない“アタッチメント障害”が定説となりつつあります。その結果、イギリスのように、すべての施設入所者を里親制度に移管しようとする国も出てきています。
施設の職員がいくら一生懸命に仕事をしても、親代わりは出来ません。また、これだけ多くの子供たちが入所していると、目の行き届く保育、個性に合った養育をすることは至難の業であると思われます。
そこで、厚生労働省は改善策として、当面、大規模施設入所者の割合を減らし、小規模グループホームや里親制度の充実を目指しています。しかも、その割合を1:1:1になるような数値目標まで掲げています。
しかし、兵庫県の現状は、乳児院・児童養護施設が87.3%と依然として施設に頼る傾向が強く、里親はわずか12.7%です。そして、里親委託率は、全国都道府県中42位で、平成24年度の新生児の里親委託は0人という状況です。
例えば、愛知県では、愛知方式という新生児里親委託が、30年以上も続けられ、130人以上もの実績があります。そのような実績と比較して、なぜ兵庫県では、新生児里親委託は進んでいないのか、また、新生児里親委託等の特別養子縁組の取組に対して、どのようなお考えなのかお聞かせ下さい。