議会の動き

前田 ともき議員が一般質問を実施

1 兵庫県立大学の成績優秀者に対する優遇策について

子育て・教育への予算を厚く配分していく流れができつつある。

みなさんご存じのことなので、その意義や細かいことはここで申し上げることはしない。

大学の学費でいうと、既に県立大学でも昨年度約9%の学生が受けている授業料減免がある。更に国の給付型奨学金も来年度から計画されているが、それでもまだまだ足りないと考える。

日本学生支援機構の調査によると、下宿生の場合、授業料以外でかかるお金は月約10.5万円。授業料を無償化しても、相当苦しい学生がいることは事実だ。現に中途退学した人の理由の1位は「経済的理由」。ここで今回提案したいのは、国の動向を見守ることではなく、今、県が実行できること。

その1つは、兵庫県立大学の成績優秀者トップ1%に授業料相当の奨学金給付を実施することである。給付型奨学金には基本的な2つの考え方があるが、それは、1つ目は、学業等が優秀な人に提供するメリットベース。2つ目は、経済困窮者に提供するニーズベースである。

本提案にはこれに加えて、3つ目の優秀な人材を兵庫に集める地域創生ベース、さらに、県立大学の競争力を高めるという4つの意思を込めている。

実はこの奨学金の創設に、必要な金額はたった3,300万円弱である。

これは兵庫県立大学の学生数は約6,500名で上位1%は65名程度、これに授業料約50万円をかけた概算値であるが、やる気と工夫で何とかなる数字だと思われる。外から集める、予算配分を組み替えることで捻出できるレベルではないだろうか。

既に、県立大学は約1億円の寄付金を原資に学生飛躍基金を創設し、各学部・学年成績最優秀の20名程度に25万円の奨学金を給付している。しかし、恒久制度ではない上、20名・25万円ではインパクトが不十分である。

インパクトがなければ、全国の高校生・保護者に認知してもらうのは困難であり、認知されなければ存在しないと同じである。また、優秀な人材を全国から集めるという意義も薄れ、「所得に関わらず進学できる!」という希望を持ってもらうこともできない。

私大は既に多様な給付型奨学金を整備しており、例えば、早稲田大学は校友会や個人からの寄付とその運用益を原資に、100種類の学内奨学金による年間20数億円規模の給付型奨学金を創設。著名私大はどの大学も、数百名規模を対象に、1人あたり年間50万円程度の給付型奨学金を創設しており、学生の経済面への支援はもちろん、いかに優秀な人材を呼び込むかに腐心している。

私大に比べて遅れを取っていた公立大学も、岩手県立大学はIT企業スターティアをスポンサーにするなど、徐々に取り組みが進んできている。

そこで、兵庫県立大学においても、特色のあるエッジの効いた学部・学科再編はもちろん、他の公立・有力私大に負けない給付型奨学金の創設をしなければ、大学として埋没してしまうのではないかと懸念するがゆえの提案だ。

2つめの提案は、住居面の支援だ。先ほど述べた日本学生支援機構の調査では、下宿生が授業料以外でかかるお金約10.5万円のうち、その3分の1の約3.7万円が住居・光熱費用となっている。そのような状況の中では、例えば児童養護施設・里親出身者はどうしているのだろうか。

そこで私が主張したいのは、生活に困る中でも、努力してトップ1%という優秀な成績を修めている学生には、県営住宅やさらには市町とも連携した空き公営住宅の提供を行うことを検討すべきということだ。公営住宅には、住宅に困窮する低額所得者に対し低廉な家賃で住宅を供給するという基本的な使命があることは承知している。

しかし例えば、明舞団地では地域再生法の認定を受け、学生シェアハウス事業が展開されている。このスキームなども活用しながら、優秀な学生に住居を提供すれば、学生の生活支援はもちろん、公営住宅の効果的運用、地域に若者を呼び込む活性化にもつながると考える。

この2つの提案の実現によって、学生に希望を、兵庫に人材を呼び込むことができれば素晴らしいことだと思うが、県立大学の成績優秀者に対する優遇措置の実施について所見を伺う。

2 県立集客施設の運営について

(1)料金体系の改善について

県会議員になって約5年半。視察で県立の集客施設を数多く視察してきた。

そこで感じたことが二つある。

1つは、お客さんの圧倒的な少なさ。平日昼間ということを差し引いても、お客さんより係員の方が多いなと思うことがままあった。2つ目は、高齢者優遇の料金体系。例えば、一定規模の集客実績があるフラワーセンターの料金は一般510円、高校生250円に対して、65歳以上は260円と、高校生と変わらない金額となっている。

内閣府と総務省の統計によると、65歳以上の高齢者の年間所得は年金を中心に約300万円、貯蓄は中央値で1,500万円程度であり、これで高校生と同じ料金しか払わなくてもよい価格設定というのはいかがなものか。

そこで、高齢者優遇の料金体系を廃止して一定の増収を確保したうえで、県民の方は月に1度入場料無料とするように料金体系を変更するべきと考える。高齢者の方は比較的時間もあるだろうから、どうしても高いと思われる方には、月に1度入場料無料の日に来場していただければいいのではないだろうか。

しかし、無料化となると気になるのが入場料の減収だ。

ただ、多くの県立施設の収入は入場料収入がメインではなく、県負担金の割合が高い。先のフラワーセンターの例でいうと、1億9、000万円の県費負担に対して入場料収入は4,000万円。したがって、仮に入場料収入が減少しても個別施設の収支悪化に大きなインパクトを与える内容ではない。更に、月に1度無償化を実施しても、入場料収入は減少しない可能性すらある。

なぜなら、フラワーセンターの入場料収入は昨年度で約4,000万円、うち高齢者料金枠での売上は約900万円。価格弾力性や県民比率を考慮せずにざっと試算すると、月に1度無料化で150万円以上の減収に対して、高齢者の値上げで最大900万円の増収となり、月に1度無料化を行っても収支への悪影響はほとんどないのではないだろうか。

ちなみに、他の都道府県も無料開放日を設定しているところは意外に多く、神奈川県だと県民スポーツ週間中の概ね2週間はスポーツ施設無料、東京都だと都民の日に無料、滋賀県だとこどもの日は親子無料などとされている。しかし、年に1度や一部施設の無料ではインパクトは薄く、広く県民に周知・覚えていただくことは困難で、政策効果も薄くなる。

ちなみに、私が長年住む神戸市も10月3日をKOBE観光の日と称して10年以上前から施設を無料開放していることを、先週初めて知った。私が月に1度にこだわるのは県民への定着度を考えた結果でもある。

今ある県立施設は県民の税金を使ってせっかくつくった施設、県民の財産であり、より多くの人に使ってもらうことが大事だ。また、高齢者に限らず、大家族・所得の低い方など、様々な状況の方に使っていただける料金体系に改めるべきである。

そこで、県立施設の入場料無料日の設定を含めた料金体系の改善について伺う。

(2)県立美術館無料化の検討について

続いて県立美術館を対象に質問を行いたい。

美術館も対象にした博物館法では、入館料等は徴収してはならないが、やむを得ない事情がある場合は対価を徴収してよいとしている。2009年に文科省の審議会で作成された「新しい時代の博物館制度の在り方」においても、入館料については同趣旨の内容だった。理念として、基本は無料が当たり前なのだ。しかし、日本博物館協会の調査によると、常設展が有料の施設は約7割、そして兵庫県立美術館も有料である。財政状況や受益者負担を考えると、有料化は仕方ないのだろう。

しかし、芸術文化立県ひょうごを標榜する本県としては、知恵と工夫で県立美術館の月に1度の無料化に取り組んではどうかと提案したい。ただ、単純に無料化すべきだと主張しても、財源は?という話になるため、いくつか私からもアイディアを示したうえで、無料化の実現可能性についてお伺いする。なお、県立美術館の常設展を例に挙げると、1日の観覧料収入はざっと2万円であるから、月に1度の無料化をしても年間では24万円程度である。

そのことを指摘した上で、対策を3つ述べる。

1つ目は、65歳以上の料金を一般料金に変更する。先に述べたことに加えて、高齢化につれ、現行の料金体系では一般料金で入場する比率はどんどん低下し、減収トレンドが続いてしまう恐れも指摘したい。

2つ目は、企業スポンサードの強化。

ニューヨーク近代美術館、世界的にも有名なMOMAはアパレルのユニクロからスポンサードを受けて、毎週金曜日4時以降はユニクロナイトと称し、入館料無料で運営している。以前、私もニューヨークに行ったときに、金曜日を狙ってMOMAを訪れ、その恩恵にあずかった。

既に、県立美術館も寄贈や直接的な寄付を法人・個人を問わず受けている。これをもう少しブラッシュアップできないだろうか。

ユニクロナイトのような命名権に近いアプローチでも十分まかなうことは可能と考えるし、企業版ふるさと納税を活用すれば寄付単価が数千万円単位へ向上できるかもしれない。

3つ目は、プライマリーギャラリー展の開催。

ギャラリーは美術品を購入する画廊のようなもので、プライマリーギャラリーとは作家が商品を発表し、即売するギャラリーという意味である。

これには設営費がかかるため、売上高が単純に増収になるわけではないが、常設展・特別展ともにこれまでの収蔵品・レンタル可能作品にとらわれない作品展示の多様化や集客力の向上にもつながる。

更には、若手アーティスト支援にもつながる。一般的なプライマリーギャラリーではアーティストとギャラリーの取り分は、フィフティーフィフティーが相場といわれている。商品売り上げのうち、アーティストの取り分を増やす、県立美術館という立派な建物で自身の作品を展示できるといったメリットを訴求することで、県立美術館を若手アーティストの聖地・登竜門にすることもできるかもしれない。また、学芸員の調査研究・収集保存に過度にとらわれないマーケットインの発想を涵養していくことにもつながっていく。

以上、3つの対策を申し上げたがこれにこだわっているわけではない。

1960年に採択されたユネスコ勧告でも、観覧料はできるだけ無料とすべきこと、常時無料でない場合は、1週間に1日相当は無料にすること、低所得者・大家族には観覧料を免除すべきことが謳われている。

どうすれば、全ての人に県民共有の財産である、芸術文化に触れていただく機会を作ることができるのかという観点から、芸術立県ひょうごの県立美術館の月に1度の無料化に向けた考えを伺う。

3 花粉症被害の抑制に向けた取り組みについて

大気汚染対策や水質汚染対策は、既に行政で積極的に取り組まれているが、花粉症はどうだろうか。今回は、患者数の拡大と大きな経済損失を招く、花粉症の被害軽減に向けた取り組みについて伺う。

スギやヒノキの花粉が飛んできて花粉症になる。自然による被害だから仕方ないと思っている方も多いかもしれない。しかし、花粉症の大きな要因は、戦後の植林政策によるスギの大量植林とされ、公害といっても過言ではない。

2008年の全国疫学調査では既に国民の約3割が花粉症。1998年の調査では約2割であったものが、たった10年で患者数は1.5倍増と被害は急拡大している。

花粉症はスギやヒノキ、ブタクサなどによって引き起こされるアレルギー疾患で、くしゃみ、鼻水、頭痛などといった症状が中心である。しかし、実は経済損失が非常に大きい問題でもある。

2000年発表の科学技術庁の調査では、医療費や労働力低下といった経済損失は2,860億とされているが、調査後の患者の増加状況等の条件を加味すると、この調査を元とした私の試算では、現在8,500億超の損失が想定できる。

第一生命研究所の調査では、花粉により外出が控えられることで、個人消費が約4,000億円の減少。様々な機関の調査でも集中力や生産性が2割~3割近く減少する報告もされており、たかが花粉症とは言えない状況だ。

国は、本年5月閣議決定の森林・林業基本計画において、スギ人工林等の利用を進めるとともに、花粉症対策苗木の生産や植栽、広葉樹の導入などで、花粉の少ない森林への転換を図る方針を示している。

花粉発生源対策の予算は2015年度の約1億2,000万円から2016年度は約4億円と大幅に増額されており、政府においてもようやく対策を本格化させる見込みである。

地方自治体でも、鳥取県は2008年に10か年計画である「スギ花粉症発生源対策推進プラン」を策定したほか、中国地方知事会でも花粉症対策に広域連携で取り組む動きも見られる。とはいえ、対象となる森林は広大で民有林もあり、更には都道府県域をまたぐため、一朝一夕にできる対策ではなく、数十年という時間軸で考えていく必要がある。

そこで、まず兵庫県における花粉症被害に対する認識、次に、本県においても2008年度にスギ花粉発生源対策推進プランを策定しているが、その進捗状況と効果について伺う。あわせて今後、少花粉スギの植栽などの花粉症対策を推進していく上で、課題は何か、また財源上の問題があるということであれば、例えば県民緑税条例の改正による対応も視野に入れた検討が考えられるが、当局の所見を伺う。

4 動画配信を活用した新しい学習環境の整備について

2年半前にも本会議で同内容の質問をしたが、動画配信を活用した、新しい学習環境の整備について、改めて伺う。

時間・場所・費用・教師の指導力に依存しない教育動画の配信による学習環境の整備こそが、家計の教育費用軽減、長期の入院生活や不登校の子供たちへの学習機会の提供、人口減少で地域に専科教員や学習塾がなくなった子供たち、日本語が不自由な外国の子供たちに低コストで高品質な学習環境を提供する、そして公教育をアップグレードする唯一の方法だと確信している。

既にタブレット・電子黒板を導入したICTを活用した授業もあるが、それよりも放課後学習に動画配信をするほうがより効果的と考える。

兵庫県は地域未来塾とひょうごがんばりタイム事業による放課後の学習支援を行っているが、費用が掛かる割には効果が薄いと考える。なぜならば、国語・算数・社会という教科数の軸。小1から高3という学年の軸。偏差値という軸。この3つの軸に60万人の児童・生徒がおり、それに合わせた学習環境の整備となると児童生徒の個々に対応した学習を展開するためには、予算・教える人材の面などから限界があるからだ。

また、学習動画の配信は家計の大きな負担となっている学校外の学習費負担軽減にもつながる。学習塾全体の年間売上は9,000億円とも言われているが、塾に行かなくても学力を向上させることができる学習環境を整備することで、2割でも塾に行く生徒が少なくなるとすれば、この9,000億円のうち1,800億円をカットできる。

更に、株式会社リクルートホールディングスの調査では、大学新入生で塾や予備校に通わなかった人は65%。その理由は経済的事情が約半分。すなわち、学校外の学習費負担軽減はもちろん、そもそも負担できない世帯にも学習環境を提供する必要がある。

既に動画配信は民間が先行しており、同社が運営するオンライン学習塾スタディサプリは月額980円で3,000講座を提供している。有料会員は25万人を突破し、700の高校で活用され、生徒側だけでなく教師側のニーズでつまずきポイントの可視化や生徒個別の学習管理にも活用されているようだ。本来であれば、このようなサービスは公教育で提供するべきで、文科省が先導して取り組みを行うべきだと考えるが、残念ながらその動きはいまだ見えない。

そこで、兵庫県として、様々な環境の子供たちに高品質な学習環境を提供し、そして教育費の負担軽減に向けて動画配信を活用した新しい学習環境の整備を行う事について、所見を伺う。

5 パチンコ台の不正改造防止について

パチンコ・パチスロ市場は1995年から2015年の20年間で、遊技人口は2,900万人から1,070万人と約3分の1に減少している。一方で、売上げは30.9兆円から23.2兆円の減少にとどまっており、ヘビーユーザー化が進み、遊戯レベルでなくなり賭博に近づいている状況に懸念している。

この要因の一つとして考えられるのが、大当たり用の釘間を広くするなどしてくぎを不正に改造し、射幸性を向上させることである。従来からくぎの調整は、へたれた釘のメンテナンスという名目もあり、暗黙の了解のもとで行われていたようだ。しかし、釘の調整で著しく射幸心をそそっていたのであれば、遊戯ではなく賭博、刑法や風営法の重篤な法令違反であると考える。

これまで、本音と建て前的な管理がなされてきたが、適正管理の強化が求められる調査結果が昨年から続々と明らかとなっている。

昨年の遊技産業健全化推進機構の調査では、全国161店舗の調査で風営法に適合したパチンコ台は1台も存在しなかったという結果であった。

また、別の調査では、この不正改造が個別ホールで実施されているものだけでなく、メーカー出荷段階から不正改造された状態で納品されているとの指摘がある。

このような調査結果もあり、業界団体は、日本全国の店舗に設置されている約290万台のパチンコ台のうち、23メーカー、72万台、実に25%を年内に回収させる方針を示した。

不正改造は、個別の店舗やメーカーの問題だけでなく、業界全体に及ぶ大規模かつ構造的な問題である。

本年4月の内閣委員会でも河野太郎国家公安委員長は違法な機械が大量に出回っていた認識を示した。そして今後は、メーカーに対しては型式検定の取り消し、ホールに対しては営業停止を含む行政処分を科すという警察の意思を明確に出していく方針を明らかにした。

各都道府県警レベルでも取締り体制の強化が図られており、福井県警では昨年6月から全ホールを対象に独自の釘調査を開始した。

パチンコ・パチスロ業界に関しては、ギャンブル依存症対策や青少年立ち入り防止に対する実効性など、外部不経済に対する取り組み不足。を問題視している。

そこで、県警察ではこれまでどのような方針の下、パチンコ店の調査を行い、指導監督を行ってきたのか。また、昨年の調査結果に基づく、業界団体による年内72万台回収の方針に対してどのように実効性を求めていくのか伺うとともに、今後の再発防止策についても併せてお聞きする。