議会の動き

竹内 英明議員が一般質問を実施

質問者:竹内 英明 議員

質問日:12月9日(金)

1 投票所の減少傾向について

人口減少社会を迎え、過疎地などでは人口の50%以上が65歳以上という限界集落も増加しつつあり、人口推計から消滅自治体リストなども示されている。一方、少子化も進み、小学校の統廃合などで、それまで投票所として活用されていた小学校が廃止される事例も出ている。

選挙の投票所数(投票区)は、昭和44年の自治省選挙部長による「投票区の増設」通知に基づき、一定の基準が定められている。

つまり、①投票所から選挙人の住所までの道程が3Km以上ある地区を含む投票区にあっては、当該投票区の分割、再編成等の措置により遠距離区域の解消に努めること。②1投票区の選挙人の数が概ね3,000人を超えるものにあっては、概ね 3,000人を限度として投票区の分割を行い投票区の規模の適正化を図ること。③この2項に該当しないものであっても、投票所から選挙人の住所までの道程が2Km以上あって、かつ1投票区の選挙人の数が2,000人を超える投票区等については、再検討を行い、投票区の増設に努めること。となっている。

この夏の参議院選挙から、それまで町内に37箇所あった当日投票所を一気に19減らして18箇所にした佐用町の取り組みを調べてみると、削減の理由は、「高齢化や人口減少などで、投票管理者や投票立会人の確保が困難な投票区があること。期日前投票制度の浸透による期日前投票者数の増加、投票日に投票する有権者が減少するなど、投票の変化への対応が必要であること。また、国政、県政における選挙執行の国県交付金の減少や町職員数の減少に伴う投開票事務従事者の確保が困難」などがあげられており、合併後の佐用町域全体のバランスや投票管理の合理化及び経費の削減を目的に見直されている。また、この見直しにより投票所まで遠距離(概ね5km以上)となる地域は、交通手段のない有権者を対象に、無料送迎バスの運行を実施している。

近年、高齢者や認知症が疑われる悲惨な自動車事故の顕在化等によって運転免許の返上も増えており、徒歩圏に投票所がない高齢者が更に増えることが容易に想像できる。島根県浜田市では、全国で初めて、この夏の参院選から山間部にワゴン車を巡回させ、車内で期日前投票を実施した。移動投票所である。これはオーストラリアのような国土が広い国では一般的に行われている。

選挙参加は、国民の権利であり、義務でもある。投票者の利便性確保は、民主主義の基本中の基本である。

そこで、県内の(当日)投票所はピーク時に比べてどのくらい減少しているのか。また、有権者の投票利便性を確保するため、市町選挙管理委員会に対してどのようなことを具体的に要請しているのか、県独自の支援施策があればあわせて伺う。

2 少子社会における県立高校の適正規模について

2017年の公立高校入試にかかる募集定員について、中播磨・西播磨地域全体で構成する「第四学区」の定員が4校4クラス160人の削減となることが公表された。

削減されるのは、県立姫路別所高校、姫路飾西高校、香寺高校、姫路市立姫路高校の4校で、学区再編前の区分で言うと、生徒数の減少率が多い旧西播学区ではなく、全てが旧姫路・福崎学区に属していることに違和感を感じた。

そもそも学区統合の際には、中学校の卒業生が減少すること、都市部へ生徒が流出することが想定できたはずである。交通利便性の低い学校に対しては、魅力の高い、また特色のある学校でなければ都市部からの流入は簡単には見込めない。

一方、実情を調べてみると、交通アクセスの悪い学校などの中には、生徒が行きたかったからではなく、学費が私学に比べて安いからという理由で、倍率の低い、定員割れしている公立高校を狙って志願したという話も聞こえてくる。そして、入学後、交通費の補助などを望む声が出るそうである。

10月に行われた中播磨地域づくり懇話会で、私が知事に対して、高校の適正配置について質問したところ、知事は「(1学年1クラスの単学級の学校の場合)1学級が10人を割るような場合は原則として統合する」とし、「(その前提では)あと10年位は統合しなくていい、と教育委員会の予算査定の際に言っている」と言われていた。

「県立高等学校教育改革第二次実施計画」における「望ましい規模と配置」でいう、すべての学年が1学級となった学校において、入学者が生徒定員の2分の1、つまり20人に満たない状態が3年間続き、その後も生徒数の増加が見込めないときには、原則として募集を停止するという文言は今や有名無実ということだ。

最悪、1学年10人で3学年で30人の生徒数の高校となる可能性があるが、この人数で、はたして後期中等教育、単科ごとの授業ができるかについては、専門的な観点も大切だ。

県立学校の果たす地域のシンボル的な役割は、簡単に費用対効果で割り切れないことはよく承知しているし、地域創生の方向性とも違う。

私は、まず、平成 19年度に策定され、21年度から5年間を実施期間とした「県立高等学校教育改革第二次実施計画」を見直し、真の人口減少社会に応じた県立高校の適正規模や配置についての新たな指針を策定する必要があると考える。

平成25年度に出された「県立高等学校長期構想検討委員会報告」でも、課題として「『第二次実施計画』では、普通科で6~8学級、総合学科で4学級以上、職業教育を主とする学科の単独校で3学級以上が望ましい規模としているが、少子化に伴い、10年後には兵庫県内の中学校卒業者数は約6,000人減少し、望ましい規模に満たない学校の増加が見込まれる。」と、少子化が進んで、「第二次実施計画」でいう「望ましい規模」に満たない学校の増加が見込まれることを既に指摘している。

そこで、人口減少社会に備えた高等学校の適正規模のあり方を含めた新しい高校教育のあり方を、新しい実施計画として示すべきであると考えるが、ご所見を伺う。

なお、冒頭指摘した来年の第四学区の定員削減のように、クラス数の削減余地のある旧姫路・福崎学区を減らしていくだけのような消極的誘導策では、望まない遠距離通学者が増えるだけという結末になりかねないことを付言しておく。

3 ふるさと納税の返礼品制度の見直しについて

地方創生の一環で、地方、ふるさとを税制面で支援しようと始まったのが「ふるさと納税」制度である。「納税」という言葉がついているが、実際には、都道府県、市区町村に納税者が「寄附」をするもので、原則として自己負担額の2,000円を除き全額が所得税・住民税の控除の対象となる。

そして、今一番話題になっているのが、寄附した自治体から届く特産物などの返礼品。ふるさと納税を増やそうと各自治体が趣向を凝らした特産品をお礼で寄附者に送るというのが慣行になってきている。

ふるさと納税の返礼品ランキングを出している専用のHPサイトやふるさと納税の返礼品を扱うショッピングモールも多数あり、楽天といった大手でも専用のコーナーがある。また、最近ではテレビCMも見られる。還元率ランキングを出しているサイトもある。総務省も金券等換金できる返礼品を自粛するよう通知したが、法律上は返礼品を現金化することも禁止されていない。

「ふるさとチョイス」というサイトをみると、静岡県小山町(おやま)という町の返礼品が紹介されている。1万円を寄附すると、全国のサーティワンアイスクリーム店舗で使用可能な商品券4,000分がもらえると書いてある。

1万円を寄附すると寄附の証明書がもらえ、翌年度申告することで自己負担の2,000円を除いた8,000円が住民税・所得税から控除される(戻ってくる)。

つまり、2,000円で全国で使えるアイスクリームの商品券4000円分がもらえるということ。

この商品券には有効期限もなく金券ショップで80%以上で現金化も可能である。総務省の通知なんておかまいなし。それを大手サイトが取り扱っている。

小山町は、ざっくりいうと、1万円の寄附収入に対して、商品券代4000円の支出があるので差し引き6000円の収入増となる。

納税者が2000円、小山町が6000円の黒字となる一方で、本来、住民サービスの対価である住民税と国の所得税は実際に住んでいる都道府県と市町村、国の合計で8000円の赤字になることになる。

兵庫県では、平成27年の寄附受け入れが2,290万円である一方、控除額は21億5,480万円で、差し引き21億3,190万円の赤字となっている。県内市町の収支をあわせて計算すると、総額で寄附受け入れが42億710万円、控除額が53億8,410万円と11億7,700万円の赤字となる。

県としては返礼品で他の自治体に対抗していないが、基礎自治体の中には、人気で売り切れとなっている特産品を持つところも多くあり、年間の市民税を上回る収入をあげる自治体も現れている。

ふるさと納税の理念は「地方創生」である。総務省のふるさと納税ポータルサイトによれば、ふるさと納税には三つの大きな意義がある。

第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。

第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。

第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。

これらの理念には反対しない。今年の選抜高校野球大会に初出場した県立長田高校の応援で募ったところ、約3,200万円のふるさと納税が集まった。今年度からは「県立学校環境充実応援プロジェクト」として「教育の一層の活発化を図るため、学校毎に寄附金活用事業を設定し、学校機能向上、学校の特色づくりや部活動の応援、教育環境の充実等に充てる」という。こういった事例は特産品目当てといったものではなく、良い事例である。

しかし、本来、税として居住地に納められるべきものを、居住地以外に寄附して、その対価が高価な返礼品というのは明らかに間違っている。

総務省のふるさと納税ポータルサイトには、全額控除されるふるさと納税額の年間上限額の目安が掲載されている。この控除額は、平成27年度に2倍に増額されており、さらにこの制度を促進させようとしている。

例えば

給与収入500万円

夫婦+子2人(大学生と高校生)

控除上限28,000円=30000円ふるさと納税(寄附)可能

給与収入1000万円

控除上限144,000円=146,000円ふるさと納税(寄附)可能

給与収入2500万円

控除上限800,000円=802,000円ふるさと納税(寄附)可能

返礼品の中には100万円を超える高額なものが多数ある。高額所得者ほど控除額が大きくなるため、それらの人が皆ふるさと納税を選択するとなると居住地の税収減少は相当な金額となる。

税金の支払先を変更しただけでなぜ特選肉などの返礼品がもらえるのか、住民税はそもそも居住自治体の提供する住民サービスの対価や負担ではないのか、本当のふるさとに納めている人がどれだけいるのか、大半は返礼品目当てではないか。

税収全体が減る一方、行政サービスの全体量が変わらないと考えると、特産品の支出にまわった分は、行政サービスの負担者が減少したとみることができる。矛盾が多すぎる。

自治体の財源を公平に配分するのは地方交付税制度だが、国の交付税特別会計の財源は枯渇し、臨時財政対策債などで急場をしのいでいる。一方、還元率の高い返礼品で潤い、他の自治体では真似のできないような少子対策を始めた自治体もあり、メディアでは好意的に取り上げられている。返礼品制度については矛盾だらけの制度であると考えるが、ご所見を伺う。

4 県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院統合移転後の跡地医療の考え方について

県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合・移転問題については、姫路市議会の12月定例議会の中でも多くの議員から質問があったと聞いている。姫路市は、イベントゾーンと呼ばれる姫路駅東側の一等地を、統合される新県立病院に無償提供するために、製鉄記念広畑病院移転後の姫路市南西部医療の後継医療機関の誘致を条件としてあげている。製鉄記念広畑病院は姫路市南西部の救急医療の拠点であり、これが単になくなるということでは、住民の理解も得られないということだろう。

知事は姫路市長らも同席した中播磨地域づくり懇話会で、製鉄記念広畑病院の移転後の後継医療機関について、「国立病院機構姫路医療センターに移転する考えがないか打診している。年内の回答を待ち、その考えがない場合は、新たに民間医療機関の誘致も考える。」と発言されていたが、回答があったのか、現時点での状況について伺いたい。また、併せて、今後の製鉄記念広畑病院跡地における姫路市南西部の医療確保に向けた取り組み方針についてご所見を伺う。

5 財政改革について

(1)最終2カ年行革プランにおける他会計間の債権債務の存在公表について

① 会計間の債権債務の存在を行革の最終2カ年を前に初めて公表する決意について

② 相殺(県債管理基金積立不足拡大)に伴う実質公債費比率悪化の見通しについて

このほど公表された最終2カ年行革プラン企画部会案・企業庁の取り組みの中に、これまで触れられてこなかった「一般会計との貸借関係の整理」として、「一般会計が企業会計に対して事業推進のために実施してきた支援と、企業会計が一般会計に対して実施してきた資金融通等の支援について、今後、順次整理を進めていく」との記載があった。

実は、今回の最終2カ年行革プラン企画部会案を見て、私が驚いたのは、65~69歳までの県単独高齢者医療支援の廃止と新たな制度の創設、赤字路線にかかるバス対策費補助の市町一般財源化への移行のほか、最大の驚きがこの企業庁地域整備事業と一般会計・県債管理基金との貸借関係の整理方針とその内容明示だった。

自治体の財政指標である実質公債費比率には、各会計の間で債権債務があったときにそれを相殺するといった明文化された規定はないものの、民間企業の本支店間や連結決算で、「内部取引・債権債務の相殺消去」をすることは簿記2級程度の常識であることから、実質公債費比率の算定にあたっても「外郭団体や他会計等との債権債務の相殺消去」をすることが望まれていた。

しかし、債権債務の相殺消去をすることで、県債管理基金貸付金として計上していた320億円の北摂開発事業旧住宅金融公庫債繰上償還貸付金をはじめ、会計上、一般会計、県債管理基金、企業庁の3者で行っていた3角融資のような関係が整理されることになり、県債管理基金の残高は減少することになる。

実質公債費比率の算定において債権を計算する一方、債務について控除してこなかったということ。

私は、これまでこの債務不計上の債務を財政フレーム外債務と呼んで、ポスト新行革プランの課題であると認識し、決算特別委員会等で指摘してきた。今回自主的に公表し、整理する方針ということで、ある意味で高く評価している。その解消に向けた決意を伺いたい。

また、現に相殺して計算すれば、県債管理基金積立不足が拡大し、実質公債費比率が悪化すると思われるが、どの程度悪化するのか、併せて示していただきたい。

 (2)土地・美術品の県債管理基金計上の解消について

今回の大きな債務の公表という事実は、県の行革、財政問題にとって新たなステージを迎えること。過去の遺産もこの最終2年で解消できるものは、整理すべきだ。

私が県議1期目で初めて県議会決算特別委員会で財政状況の質問に立ったのが平成21年。県債管理基金の中に含まれていた「土地」「美術品」を見つけて問うてからはや7年が経過した。

国の実質公債費比率という新たな財政指標導入に対して窮余の策として他の特定目的基金を集約した際、私が当選する前年、平成18年度の補正予算で措置されていたものだ。

来春の補正予算でこれらが集約前にあった「土地基金」「美術品等取得基金」にそれぞれ87億円、29億円戻して除外し、県債管理基金の適正化をはかるべきだと考える。それにより実質公債費比率が多少悪化するが県民の皆さんにありのままの兵庫県の財政状況を示すことになり、評価されることになると思うがどうか。