議会の動き

小池 ひろのり議員が一般質問を実施

質問日:平成29年2月28日(火)

質問者:小池 ひろのり

質問方式:一問一答

1.兵庫県こそ、環境防災学の推進を!【企画県民部】

阪神・淡路大震災から22年が経過した今日、大学生以下の若者には、阪神・淡路大震災の記憶はなく、関東大震災と同列の過去の歴史上の大災害と認識されています。又、神戸市内でも阪神・淡路大震災を経験していない住民が4割を超えて、社会から記憶が薄れかけた時に、東日本大震災や熊本地震が起こりました。更に、近い将来には、南海トラフ地震が30年以内に70%、50年以内なら90%の確率で発生すると言われています。

災害はいつやって来るか分からないものですが、50年以内が明日になるかもしれませんし、90%ということは、ほぼ起こると考えた方が良いと思います。だからこそ備えが必要となります。

井戸知事は、防災・減災の重要性と、阪神・淡路大震災の教訓を「忘れない」「伝える」「備える」「活かす」ことが大切だと訴えられておられます。阪神・淡路大震災で甚大な犠牲となった御霊に応えるためにも、兵庫県は震災の経験を風化させることなく、防災・減災の取り組みを積極的に進め、情報発信の拠点となるべきと考えます。そして、全国の防災・減災対策のリーダー的な役割を果すことが、被災県・兵庫としての責務であると、私は思っています。

このように日本の防災の拠点となるべき兵庫県に、防災庁(仮称)の創設を求めているのも、至極自然な流れだと思っています。是非、実現させたいものです。

安心・安全は県政の基盤です。そして、昨今、自然災害が益々巨大化しています。いつまでも想定外とか異常気象とか言うのではなく、まさにNew Normal として位置付け、防災・減災学を研究し対策を講じて行かねばなりません。そこで、安心・安全な社会の実現を目指し、理論武装の為にも環境防災学の推進を図り、減災に向けた先進的な役割を果すことを強く求めるものです。

私は、「防災は人」であるという観点から、自然災害や危機事態に直面した時に、対処する人の育成こそ原点であると考えています。

14年前に、兵庫県は全国に先駆けて県立舞子高校に環境防災科を設置し、防災教育を生徒の“生きる力”を育む教育として位置付けています。生徒たちは自ら考え、行動に結び付け、高校生の防災・減災のリーダーとして活躍する等大きな成果を上げています。

しかし、残念ながら高校で防災・減災に興味を抱いた生徒にとって、県下の大学で本格的に環境防災学を学ぶ“場”が未だにありません。

一方、減災対策の知識を持った人材へのニーズは高まっています。人と防災未来センターの災害対策専門職員の育成講座に、全国自治体職員からの応募が倍増するコースがでる等、自治体の防災・危機管理等への関心が高まる一方、大企業も専門家の配置を求めているように、卒業後の就職先の間口が広がって来ています。

更に、これからは、大学も特色が求められる時代です。このような観点から、私は県立大学に新しい分野の環境防災学を創設し、防災・減災に取り組む人材を育成する拠点になることを願うものです。そして、社会のニーズに応える等、学問も社会と一緒に変わって行くべきだと考えています。

県立大学では、この度、経済、経営学部の再編を検討しているほか、大学改革を加速させるために、理事長と学長を分離することになりました。今春から県立大学大学院に減災復興政策研究科が開設されますが、これを機に、大学に環境防災学部・学科を創設すべきです。そして、環境防災学を確実な学問として定着させ、全国の大学をリードし、減災対策のシンクタンクとなり、全国に減災情報を発信する拠点へと発展させていくべきと考えます。

是非、従来の理系のハード面、文系のソフト面という枠を超え、学際系として社会人入学にも幅広く門戸を開き、環境防災学部・学科の創設に向け本格的に取り組まれることを願います。知事に大きな決断をして頂く時が来ていると思いますが、知事の決意をお伺いします。

2.児童養護施設退所者の支援について【健康福祉部】

最近、テレビドラマなどで児童養護施設が度々取り上げられ、社会的に広く認知されるようになって来ました。しかし、今なお施設には大きな課題が現存しているのも事実です。

顕著な例として、一般家庭の子供の大学等進学率は54.5%であるのに比べて、施設の子供は、約5分の1の11.1%という低さで、これだけ見ても明らかに大きな差が生じています。

戦後、親を亡くした孤児を中心に、生活基盤を提供して来た児童養護施設。最近では、児童虐待やDVなどで親と子供を分離すべきと判断された子供が、入所者の約6割を占め、すっかり様変わりをしています。いずれにしても養育してくれる親がいない子供たちが施設で暮らし、そこから学校へ通っています。

本来なら、民法により、子供は20歳まで親が扶養する義務があります。そして、養育してくれる人がいない子供には、行政が親代わりになって、公的責任の下で養育している一つの例として、児童養護施設があります。

そんな児童養護施設が抱える今日の問題を、是非、皆さんに知って頂きたいという観点から取り上げます。

大規模の児童養護施設では、定員が100名近い所もあり、先ほど述べた子供たちが集団生活をしています。中には、親の顔を全く知らないまま天涯孤独で施設で育ち、施設から小・中学校や高校に通っている子供もいます。そして、施設の多くの子供は、高校を卒業すると就職をします。2011年より満20歳まで入所措置延長は可能となりましたが、多くは先輩に見習って施設を出て独り立ちをしています。

「早く自由になりたい」という意欲とは裏腹に、現実は、親がいる子供と明らかな違いが生じて来ます。親の愛や家庭を全く知らずに育った子供は、社会生活でも問題を引きずる場合があります。そして、助言をしてくれる人も、頼れる人も、相談する人すらいない状況で社会に出ると、余りにも急激な環境の変化に適応が出来ず、就職先を辞めてしまう例が多々あります。

何の応援もなく、中には仕事の探し方さえ知らない子供もおり、今までより条件の良い会社を求めても、安定した仕事探しは並大抵のことではありません。独りぼっちで社会にさらされた子供に対し、世間は決して甘くはありません。

単に大学進学率が低いと言う、教育の機会均等からの問題点だけでなく、児童養護施設退所者がせめて成人になる20歳まで、もっと支援を差し伸べるべきと考えます。子は親を選べませんし、置かれた環境に子供の責任はありません。頼れる親がいない子供に、支援の手を差し出すのは行政しかないと思います。

そこで、児童養護施設退所者の支援について質問します。

児童養護施設の子供の多くは、就職する場合、寮のある会社を選び、施設を退所することになります。ここで、また新たな問題が生じています。

最近では、親がいる子供でも就職後3年未満に、中卒で6割、高卒で4割が離職しているそうです。誰にも相談する相手がいない退所者の離職率は、もっと高いと想像できると思います。会社を辞めた退所者は、自分一人で新しい職場と同時に、さっそく住む家を探さなくてはなりません。保証人や身元引受人もいない、中には住所不定になることもある退所者にとって、アパートを借りるだけでも大変なことです。これを、15歳または18歳の子供に、押し付けるのは酷な話とは思いませんか!

退所者の中には、社会適応がうまくいかず、犯罪に手を染める者もいます。親から見捨てられた子供が、今度は社会からドロップアウトしていくことになります。しかし、このような子供の支援を中心に取り組んでいる福祉関係者には、矯正現場の知識を持たない方も多いと思われます。従って福祉関係者の為に、法務省と連携し犯罪予防に活用できる事例や保護司などの更生活動の紹介などを内容とした研修事業の創設が必要となって来ています。

以上の事から、私は、施設退所者を継続して支援する専門職員を配置することにより、退所者が20歳になるまで相談が出来るよう支援体制の充実を図るべきだと考えます。最終的には、就業支援機関や市町村の生活支援関係窓口との調整を担う職員の配置拡充を図ることが必要となりますが、現在、県は児童養護施設退所者に、どのような支援をしているのかお尋ねします。退所者の追跡調査を行っているのでしょうか、また、こういった退所者の現状をどこまで把握しておられるのでしょうか?以上、施設退所者支援についてお伺いします。

3.“健康づくり”県民運動の推進について

今や、がんと共生する時代に入ったと言っても過言ではありません。そこで、がんに罹っても仕事や学業を続け、治療と両立できる体制を整えたり、小児がん患者には、必要な教育と治療を共に受けられる環境を整備し、がん教育の推進を図り、更にはホスピスの段階であっても終末期治療と言うのではなく、心や体の辛さを和らげ、暮らしの質を高める積極的な生き甲斐を与えるような「緩和ケア」等が求められております。

このようにがんに対する取り組み等が進む中、40兆円とも言われる医療費の高騰は、健保組合の財政の圧迫のみならず、行政全体の財政に大きく影響を与え、喫緊の課題となっています。そこで、メタボにも関係している肝臓がん等、増え続けているがんもあるように、がん予防にも大きな効果がある健康づくりに、もっと力を入れるべきと考えます。

例えば、ティーぺック㈱では健康経営で、社員の25%を占めていた喫煙者が3年足らずでゼロになったそうです。又、会社と健保組合のコラボヘルスの取組に力を入れているコニカミノルタ㈱では、企業ぐるみで健康づくりに取り組んでいます。階段を使うなどにより“1日1万歩”とか歩数に応じて、ポイントが付くと言う制度を導入し、一見簡単そうに見える取組の積み重ねの奨励で、健康づくりに大きな成果を挙げています。本県でも、「健康づくりチャレンジ企業」制度を設け、登録企業におけるメンタルヘルスや運動施設・運動機器の整備への支援を通じて、働きざかり世代の健康づくりを推進されており、こうした取組の輪が広がっています。又、兵庫県庁でも、井戸知事を先頭に、エレベーターを使わないことを意識している職員が増えていると聞くにつれ、大変心強く思っています。

このように、生活習慣の改善では、県民一人ひとりの自らの健康づくりと健康管理という自助努力が必要であると同時に、行政の健康づくりの啓発が必要です。医療費の抑制と健康寿命を伸ばすためにも、県民に健康づくりの積極的な取組を促し、新しい生き甲斐にも通じる県民運動へと発展させることが重要であると考えます。そこで、現在推進されている“健康づくり”事業の今後の展開について、当局の考えを伺います。

4.国際交流の推進について【産業労働部】

私は、昨年8月に高橋・向山議員ら6名で、インド・グジャラート州を視察しました。2010年に井戸知事が同州を訪問された時に、両県・州の友好交流の実施について確認されたのを受け、具体的な交流推進について詰めを行うための訪問でした。

私は、10年前にインドの経済の中心地ムンバイ市を訪問した事があります。当時の日本の大都市では、サラ金の看板が林立していた時代に、ムンバイ市ではやたら英会話とITの看板が目につきました。この看板だけでも、これからどの様に発展して行こうとしているのかが見えたような気がしました。そして、今回の訪問では、まさにこの10年間のインドの成長ぶりの裏付けを確認することが出来ました。

現在のインドは、日本より20年ほど遅れた発展途上中の国です。それでも、就学前教育から大学まで授業料を無償化するなど、教育に大変力を入れています。その結果として、勉強することで貧困やカースト制から脱出できるかもしれないという夢や希望を抱いて、目を輝かせている若者が多くいます。そして、そういった若者の活躍により、最近では、インドは世界のIT産業をリードする国にまで発展していると言えます。

こうしたインドや巨大な13億の民を有する中国との交流を無くして、アジアの経済発展、そして平和への道はないと私は考えます。これから大きく経済発展が予想される両国と、少し早めに経済発展を遂げた日本が、両国間の友好交流、特に若い世代の交流から経済発展へと結びつけることが、これからの日本が進むべき道だと考えます。

今回インドを訪問した私たち一行は、インド・グジャラート州との意見交換を通し、グジャラート州との交流の必要性をお互いが確認し、大きな意義があったと思っています。更に昨年11月に、インドのモディ首相が来日し、わざわざ兵庫県にも来て頂きました。そして、モディ首相・安倍首相立会いの下、兵庫県とグジャラート州の相互協力に関する覚書を締結することが出来ました。

これからは、その中身を充実させるために、具体的な行動を起こす必要があります。このような観点から、今後、グジャラート州と経済分野等の交流を、兵庫県として具体的にどのように取り組んでいくつもりなのか、当局のお考えを伺います。

5.奨学金制度の改善について【教育委員会】

現在、豪華寝台列車による3泊4日で150万円もする旅行の予約が殺到しているそうです。一方、年収200万円以下の人が、およそ1,130万人もいると言われ、富裕層との間の経済格差がどんどん広がっています。そして、貧困層の増大で、子供の6~7人に1人が貧困と言われ、小学校の1学級に約6人の貧困者がいるという、大変な状況に陥っています。

その経済格差を教育格差に広げてはなりません。そして、家庭の貧困は、子供の責任ではないとの観点から、次代を担う若者に、教育の機会均等を保障していかねばなりません。

しかし、今日、日本はOECDに加盟する先進34か国の中で、教育支援が最も少ない国と言われています。そして、日本の大学授業料は、世界的にも圧倒的に高額で、ますます教育負担が大きくなってきている現状です。

一方、親がいないとか、児童虐待やDVで親と分離する必要がある子供が、児童養護施設から学校に通っています。しかし、児童福祉法の適用は、18歳までですので、原則的に18歳で児童養護施設を出なくてはなりません。大学へ行くとなると、生活費以外に住居費が必要となります。住宅費・食費・光熱水費で、切り詰めても月7万円は必要です。これは何とかアルバイトで工面しても、私立大学の4年間の授業料450万円は、施設出身の子供には当てがありません。だから現実に、一般家庭の大学等進学率が54.5%に対し、児童養護施設は11.1%という5分の1の低さなのです。この現実をいつまでも放置していて良いものでしょうか!

私は、誰もが大学に行けば良いとは思いません。しかし、親がいないとか、家庭が貧しくて大学へ行きたくても行けない子供がいれば、親に代わって行政が支援の手を差し伸べるべきと考えます。私は、そのために奨学金制度があると思っています。兵庫県独自の給付型奨学金の創設で、仮に1億円あれば、私立大学の授業料で25人が救われます。これを県内の児童養護施設の対象者約80名に全額充てたとすれば、計算上では施設の大学等進学率は42%になり、現状の4倍に跳ね上がります。それでも、なお一般家庭の進学率より10%以上も低い訳ですが・・・。

一方、日本の貸与型奨学金制度を高校から利用した場合、大学卒業後、社会人としてスタートラインに立った途端に、350万円以上の返済債務(=借金)を抱えることになります。私は、教育で貧困の連鎖を断つべきと考えます。親の経済力が原因で、子供に債務の責任を引き継がせ、貧困を連鎖させるこの制度は、大いに問題があると思います。この貸与型は、ゼロ金利時代に利息が付く上、返還が滞ると5%の延滞金まで付く“ローン”だと言われています。家庭が貧しく進学を迷っている未成年の子供に、貸与奨学金というローンを勧めるだけで良いのでしょうか!朝日新聞の平成29年2月14日の天声人語にも、同じような内容が掲載されていました。

教育長は、「大学卒業後、無理なく奨学金の返還が出来る若者に対しても、渡しきりのお金を提供するのは、政策の面でも課題がある」と昨年の予算委員会で答弁され、貸与型奨学金に頼り何ら有効な手立てをしませんでした。

確かに、奨学金は国の事業ですが、国の支援から漏れ、現実に目の前に困った県民がいれば、県は何もしなくて、見ておれば良いことにはなりません。事業に問題があれば、国に改善を求めると同時に、改善が実現されるまで県や市が独自の支援を差し伸べるという事例は、全国でいくらでも見受けられます。

そこで、是非、兵庫県独自の事業として、給付型奨学金制度と無利子奨学金の創設を検討して頂きたいと思います。大学生等に対する奨学金制度を国にお任せして、改善されるまで待つのではなく、目の前で悩んでいる県民に支援の手を差し伸べて下さい。やる気があるのに経済的な理由で、進学を諦めている子供たちに対し、少しでも光を当てて頂きたいと願うものです。再度、県教育委員会の給付型奨学金制度に対するお考えを伺います。