議会の動き

◆17年12月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  越田 謙治郎 議員

一般質問  石井 秀武 議員

代表質問

(越田 謙治郎 議員)[発言方式:分割]

1 ひょうご地域創生交付金について
2 保育の安全の確保について
3 ひょうごツーリズム戦略について
4 中小企業の事業承継について
5 インクルーシブ教育の推進について
6 中長期的な視野にたった高齢運転者への対応について
7 公共交通の持続可能性確保について

質問全文

質問日:平成29年12月7日(木)

質問者:越田 謙治郎 政調会長

質問方式:分割方式

(1~4:一括、5~6:一括、7:一問一答)

1 ひょうご地域創生交付金について

「今、人口の減少と少子高齢化という大きな構造変化が進んでいます。人口減少は今後数十年続くでしょう。人口と経済の右肩上がりの成長を前提とした社会のあり方を変える必要があります。その挑戦は始まったばかりです。」

井戸知事は7月の知事選挙に向けて、人口減少社会を迎える中、5期目の決意を述べられました。人口減少という課題は、従来の発想の延長線上では解決できません。過去の成功体験にとらわれることなく、議会の場において新しい発想での議論を行いたいと考えています。

まず、「ひょうご地域創生交付金」について、お聞きします。

現在行われている地方創生は、地方自治体が地域の特性を活かして人口減少に対して独自の解決策を求めるという理念を掲げております。ただ、国の地方創生推進交付金などの具体の事業においては、自治体の提案に対し国が審査し交付決定するというプロセスになっています。午前中の小西議員の質問に対する答弁でもありましたが、必ずしも地域の自主性が発揮できる枠組みとは言えません。

実際に、兵庫県が議会の議決を経て予算化し、国に提案した事業でさえも国の審査が通らなかったという事例もありました。地域の自主性を発揮できる体制整備は、党派に限らず地方自治に関わるもの全ての願いでありますが、この点に関してはまだ不十分だと言えます。

そのような中、井戸知事は、今議会の提案説明において「地域創生戦略に基づく県と市町の多彩な取り組みと連携が不可欠です」と述べられ、40億円の対象事業総枠を確保した「ひょうご地域創生交付金」を提唱されました。市町の負担を1/2としてハード整備も可能とする枠組みとなっており、兵庫県の地域創生がこれにより大きく前進することを期待しています。

私は、ひょうご地域創生交付金について大いに期待をしながらも、この制度が単に交付金を出すという制度ではなく、改めて従来の県と市町の関係を大きく変えていく必要性を感じています。この制度が従来の延長線上ではない制度になるため、以下具体的な提案をさせていただきながら、質問をいたします。

1点目は、県と市町やそれぞれの地域との関係において、既存の事業との整合性をどうとるかということです。県は、過去から「スポーツクラブ21ひょうご事業」や「県民交流広場事業」、さらに「地域再生大作戦」や「防犯カメラの設置補助」のように、地域の活動を支援する仕組みを様々行ってきました。

これらの政策は、それぞれ効果があったとは思いますが、地域創生がまさに地域の自主性を重んじているという発想に基づくのであれば、ひょうご地域創生交付金の導入にあわせ、既存の制度の見直しが必要だと考えています。

次に、制度設計のあり方についても新たな発想が必要だと考えています。県が制度を考え、市町がその制度に従うという制度設計であれば、従来の発想と何ら変わりません。兵庫県はいち早く市町との連携を進めており、2012年には、過去から実施している県・市町懇話会を「県と市町の政策協議の場」と要綱で明文化しました。まさに、上からの地方創生ではなく、地域に根差した地域創生を標榜する本県が、全国に先駆けて実施する制度であるならば、その制度設計においても従来の発想にとらわれずに取り組んでいただきたいと考えています。

三つ目は、県の本来の役割である市町を応援する立場をさらに明確にするということです。単に市町が提案した事業を審査するという形ではなく、それぞれの市町が抱えている課題を共有し、必要に応じてアイディア段階から応援していくという発想が重要です。県民局・県民センターの役割も現地解決型から現地解決を支援する伴走型への変更が必要かもしれません。

以上、ひょうご地域創生交付金が従来の発想の延長線上ではない形でスタートを切ることを期待し、3点提案させていただきました。

地域創生の主役である市町の地域創生を応援する立場として、井戸知事の決意をお伺いいたします。

2 保育の安全の確保について

本県では、待機児童が1年のうちで最も少ないと考えられる本年4月1日現在で、待機児童は1500人を超えており、待機児童が深刻な課題となっています。さらに、年度末に向けて、待機児童の数は増加しているのではないかと推察します。

また、保育に関しては、多様な保育サービスを確保することへのニーズが強いのも事実です。2015年9月定例会の代表質問では、わが会派の栗山雅史議員が問題提起をさせていただきましたが、病児保育や病後児保育のほか、多様な働き方が進む中で、日曜日や祝日には預け先がないということも大きな課題となっています。

単に、保育の問題は現在の国で議論されている無償化の問題や待機児童の解消だけでは十分ではないということです。

このように多様な課題をもつ保育ですが、こうした従来の課題と同時に、今回の質問では「保育の質」の問題をどう担保するのかということに対して問題提起をさせていただきます。

さて、昨年の保育施設等における事故は、全国で875件発生したと報告されています。兵庫県では死亡事故は発生していないものの、9件の重大な事故が報告されています。昨年4月に大阪市内の認可外保育所で起きた死亡事故では、安全対策が不十分であったため、経営者が書類送検されるという事態も起きています。

もちろん、事故をゼロにすることはできませんが、重大な事故がより深刻な事故、死亡事故に発展しないような県の取り組みが必要です。

厚生労働省では、保育事故に関して監査の強化、とりわけ抜き打ちの監査の強化を求めていますが、残念ながら人手不足の中では、十分に機能するわけではありません。ただ、私は単に監査機能を強化するだけでは不十分で、県として増えていく保育施設に対しどのような安全対策を確保していくのかということが問われていると考えています。質の担保は市町で実施する事業でもありますが、監査権限を有する県だからこそ、県に報告のあった事例を分析し、県内の保育施設へフィードバックするような取り組みが必要だと考えます。県としての保育の安全性への取り組みについて、お伺いします。

3 ひょうごツーリズム戦略について

本年、兵庫県は「ひょうごツーリズム戦略」を策定し、ツーリズム人口を1億5千万人とすることを目標として掲げ、各施策に取り組んでいます。また、外国人旅行者の誘致(いわゆる)インバウンド対策については、昨年の約150万人から倍となる300万人という目標を掲げています。交流人口の増加を求める取り組みは、人口減少社会において低迷する県内消費に大きな影響を与える取り組みだと考えています。しかし、この点においても従来の発想の延長線上ではない取り組みが必要だと考えます。

県内の外国人旅行者は、2012年以降大きく増加しているものの、お隣の大阪府や京都府に大きく差をあけられているのが実情です。とりわけ、宿泊客に関しては、兵庫県は約110万泊にとどまっており、こちらも水をあけられている状況です。

ただ、世界的な知名度をもつ「京都」や国際線をもつ「大阪」と隣接している本県が、同じ発想で旅行者の数、宿泊客の数を競うべきではありません。私は、観光政策においても量を競う政策から質にこだわる政策へと転換を求めたいと考えています。

そもそも、観光誘客を求める理由は、来ていただくという数そのものが目的ではなく、県内における経済波及効果がどのくらいあるのかという点が重要なわけです。旅行者の消費額は、「来客数」×「単価」で計算するわけですから、単に旅行客を増やすだけではなく、一人当たりの単価を上げる仕組みを考えていかなければならないはずです。

私は、10月に開催された産業労働常任委員会において、同様の指摘をさせていただき、ターゲットの絞り込みを提案したところ、①アジアを中心としたリピーター対策 ②欧米の富裕層対策 ③ハラールへの対応を行う旨を答弁として述べられました。それぞれの分析は間違っていませんが、戦略的にターゲットの絞り込みができているとは言えません。

とりわけ、客単価を上げるための取り組みとしては、欧米の富裕層の対策が重要であると考えますが、それには欧米の富裕層が宿泊するラグジュアリーホテルがないという弱みもあり、ターゲットを絞るというからには、それらを誘致していくという取り組みも必要です。

さらに、新たな視点として必要なのは、観光客の消費をいかに域内の経済循環につなげていくのかということです。たとえ旅行客が県内で消費したとしても、その消費が県内の食材や県内の生産物の消費へとつながっていなければ、県として観光政策に積極的に取り組む意味がなくなります。域内循環を高める仕掛けに取り組む必要があります。

今後、人口減少による内需の縮小が避けて通れない中、より経済波及効果を高めるため、県の観光戦略の重点化を求めますが、見解をお伺いします。

4 中小企業の事業承継について

本県の経済状況は個人消費の持ち直しや輸出の増加基調に支えられ、緩やかに回復していると分析されています。また、雇用状況も10月の有効求人倍率が1.31倍となり、県内企業では人手不足感が強まっていると言われています。

ただ、このような状況だからこそ、あえて将来を展望した課題に取り組んでいかなければならないと考えています。それは、兵庫県経済において重要な役割を担っている、県内雇用の約8割を占める中小企業が抱える事業承継の問題です。

景気回復の基調が見えるにもかかわらず、昨今中小企業は減少傾向にあり、県内では2009年に234,123あった事業所が、2014年には221,441となっています。とりわけ、大きな問題は倒産よりも多いとされる休廃業・解散です。

東京商工リサーチの調べによると、驚くべきことに、2013年から2015年に休廃業・解散した企業のうち、廃業直前の売上高経常利益率が0%以上、つまり黒字状態で廃業した企業の割合は50.5%であり、さらに利益率10%以上の企業が13.6%、20%以上の企業が6.1%と廃業前でも高い利益率である企業も少なからず存在をしているのです。休廃業した理由は様々ではありますが、2016年に休廃業した経営者の8割以上が60歳以上の経営者であり、過去最高となったことから、小規模企業を中心に事業の担い手である後継者がおらず、黒字のまま休廃業となったと分析されています。

私の所属する産業労働常任委員会では、9月に川西市商工会・猪名川町商工会の方々と意見交換会を行いました。その中で「私がいなくなれば次に継ぐものがいない」という経営者の声、「後継者が決まっていないから先行投資ができず、先行投資ができないから競争に勝てず、競争に勝てないから後継者を探すことができない」という負のスパイラルに陥っているケースも報告をされました。

当然のことながら、企業経営をどのように継続していくのかは、一義的には経営者の自主的な努力によるものでありますが、この後継者不足は現在の中小企業が共通して持つ課題であり、その課題に目を向けて対策をとることも行政の果たすべき大きな役割の一つだと考えています。

実際に、経済産業省・中小企業庁は、事業承継問題をこのまま放置すると、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があると試算をいたしました。中小企業の事業承継の問題は、県内経済を考えるうえで重要な課題だと言えます。

県として、後継者不足による廃業等の影響をどのようにとらえているのか。また、事業承継が進まない原因をどのように分析しているのか。県の中小企業の事業承継に関する現状と県としての対策についてお伺いします。

5 インクルーシブ教育の推進について

昨今、LD、ADHD、自閉症スペクトラム等、いわゆる発達障害と呼ばれる児童生徒は増加傾向にあります。2012年に文部科学省が行った調査によると通常の学級に発達障害の可能性のある児童生徒が約6.5%在籍するとされています。この在籍率からすると、現在、兵庫県内の小中学校には、約29,000人が在籍していることになります。これらの児童生徒の多くは、適切なサポートがあれば円滑な学校生活を送ることができます。

しかし、指導の場となる通級指導教室の設置数も増加傾向にありながら、その専門性の確保は、喫緊の課題となっています。

課題は2つあると考えています。

1つ目は、現場の指導者の確保です。兵庫県では、LD、ADHD等の通級指導担当教員を「学校生活支援教員」として、支援地域拠点校に配置していますが、現在の配置状況では必ずしも十分に児童生徒へ行き届いているとはいえません。阪神間の市町からは「学校生活支援教員」の増員を求める声があがっています。

2つ目は、専門性の確保です。通級による指導を行う担当者への研修の充実が欠かせません。担当する教員の専門的な資質として、障害についての知識や発達段階に応じた指導等が必要です。現在、文部科学省では2020年度をめどに、特別支援学校の教員に特別支援学校の免許取得100%を義務付けようと取り組んでいますが、通級指導担当教員にも同様の専門性が必要であることは言うまでもありません。しかし、現状はどうでしょうか。

私は、昨年の決算特別委員会において、教員への研修が形骸化しているのではないかとの問題提起をさせていただきました。校内の代表者の研修を行い、その代表者が学校に戻り研修を実施するという制度でありましたが、職員会議等で実施しても研修としてカウントしているというのが現状でした。それが、本年度予算では、インターネットによる動画配信による研修など、わざわざ研修所に足を運ばなくても、研修を実施できる体制になっており、小さな一歩かもしれませんが、一定の評価をしているところです。

しかしながら、これではまだ十分とは言えず、更に、来年度からは、高等学校における通級による指導の制度が導入されることからも、県として通級を担当する教員の専門性の確保について、更なる対策が必要と考えます。

これらの課題に対する県の見解及び今後の対策について、お伺いします。

6 中長期的な視野にたった高齢運転者への対応について

近年増えつつある高齢運転者に対する対応は、超高齢化社会となる日本が抱える問題のひとつとなっています。本年3月に改正道路交通法が施行され、高齢者の運転に関しては、更新時の高齢者講習が見直されるなどしました。交通事故全体で占める割合が増加傾向にある高齢運転者に対し、認知機能検査を強化するなどの取り組みは、事故を未然に防いでいく中で、重要な取り組みだと言えます。また、高齢者事故防止に関しては、免許返納の促進といったソフト支援、ドライブレコーダーの設置等、ハードソフト両面での対策が必要です。

また、各市町での施策にはなりますが、運転をしなくなった方への移動支援なども重要です。高齢者の運転による事故という不幸な出来事をなくすという使命と同時に、高齢者を排除するのではなく、自主的に運転を卒業しても生活の質が著しく低下しない方法を模索していかなければなりません。

さて、そのような中、高齢者講習の対象となった方からは、高齢者講習を受講するハガキが届き、すぐに予約を入れようとしても数カ月先まで予約が取れないという声が聞こえてきています。実際に、県内において11月末現在では、待ち日数が平均で85日になっているのが現状です。「法律で受講を義務付けておきながら、その体制が整備されていない」ことから、高齢運転者は排除されているという印象をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

過去にも一般質問等で取り上げられてきた課題であり、県警本部としても運転免許センターでの講習の実施や自動車教習所への委託料の増額など努力も頂きましたが、高齢者講習の実施を委託されているのが民間の自動車教習所であるため必ずしも十分に対応できているとはいえません。

県内の70歳以上の高齢運転者数は、2026年には現在の約41万人から約1.3倍になることが予想されることから、現在の体制で今後十分に対応が可能なのか不安になります。

そこで、今後、高齢運転者が増えていく状況の中、中長期的な視野にたって高齢運転者への対応に取り組むべきだと思いますが、県警本部の見解をお伺いします。

7 公共交通の持続可能性確保について

人口減少によって、地方部では利用者が減少し、公共交通の持続可能性が大きな課題となっています。バス・鉄道それぞれの業界にいえることではありますが、交通事業者のみの力では、維持が困難となる路線もでてきています。

一方、自ら車等を運転することができない高齢者は今後増加していくのも現状です。移動に制約のある県民にとっては、公共交通の必要性は高まっています。移動手段の一つとしての位置づけではなく、生活を維持するための必要不可欠な存在となっているのです。

このような公共交通はいくつかの点で大きな課題を抱えていますが、その一つは現場から切実な声があがってきている人材の確保です。

高齢化が進む中、各産業において人手不足が顕著になってきていますが、公共交通の要の一つであるバス運転者は、全産業平均と比べ高い有効求人倍率となっており、深刻な状況にあります。

運転手不足の背景には、バス運転手に必要な大型2種免許の取得に時間と費用が掛かること、他の職種に比べて拘束時間が長くなる傾向があること、そのうえ、相対的に賃金が安いことなどが挙げられています。特に、現在大型2種の免許保有者は60代が一番多く、現在の60代以上がリタイアすると、運転手の確保が困難になる危険性があります。

このような現状は、路線バスの維持に大きな影響を与えるとともに、多くの自治体で委託しているコミュニティバス等の運行にも影響を与えます。

もう一つの課題は、生産性の向上です。利用者が減少するなかでも、生活交通バスを維持していくためには、経費の節減と同時に貨客混載など収入を生む新たな取り組みを進め、生産性を向上していく必要があります。

まずはバス事業者自身が職場環境の整備や処遇改善によって人材を確保するとともに、生産性向上に努めることが重要ですが、人口減少社会にあっても最も身近な公共交通である生活交通バスを維持するため、県としてどのように取り組むのか、所見をお伺いします。

越田 謙治郎

(選挙区:川西市・川辺郡)

一般質問

(石井 秀武 議員)[発言方式:一括]

1 県民の自発的な地域づくりへの「参加」の促進について
2 地域創生の実現に向けたテレワークの推進について
3 女性職員の活躍促進に向けたテレワークの推進について
4 サイクルスポーツを活用した六甲山の活性化について
5 国際的なサイクルイベントの実施について
6 ひょうご小野産業団地の整備と今後の新たな展開について
7 人生100年時代を踏まえた兵庫の教育のあり方について

質問全文

質問日:平成29年12月8日
質問者:石井 秀武 議員
質問方式:一括

1.県民の自発的な地域づくりへの「参加」の促進について

少子化、高齢化が進む将来であっても、地域の活力を維持するとともに県民が生きがいを持って暮らせる社会づくりのため、地域創生の実現にしっかり取り組んでいかなければならない。
しかし、地域創生の取組は、すぐに結果の出るものではなく、息の長い取組である。また、県民から、それは行政の役割である、として関わることに消極的になるようなことがあれば、真の地域活性化につながっていくことはむずかしいのではないだろうか。

そこで、取組のポイントとして、考えるところを提案させていただく。
まず「縮充」という考え方である。これは、元々は繊維の加工に関する用
語であるが、過日、会派で調査に行った全国過疎問題シンポジウムで講師をさ
れていた東北芸術工科大学教授でコミュニティデザイナーの山崎亮氏が使っ
ている用語ある。その意味するところは、今後、日本は人口や税収が縮小しな
がらも、地域の営みや住民の生活が充実したものになっていくしくみを編み出
していかなければならない、という意味で使っておられた。

確かに、これまでの成長ありきで設計されてきた我々の考え方や社会の仕組みというものは、人口減少等の影響により、無理が生じてくることはありうると思う。山崎氏は、これを衣服に例えておられた。つまり、体が縮んでいくのにこれまでどおりの大きな服を無理に着るよりも、身の丈にあった服に変えていくべきである、というもので、なるほどとうなずかされた。

次に、山崎先生は、「縮充」する社会経済の中で、我々の生活を活性化させていくために不可欠な力は、市民の「参加」であるとされている。
特に、日本は、明治以降の100年間で、「公共」とは国や自治体が提供するものという認識を国民・県民・市民に与えてきたが、欧米では「公共」を「わたしたちのもの」と捉えるのだという。我が国においても、振り返ると、明治以降の100年を除くと、地域の豊かな暮らしのために、個人の力が及ばない作業を地域の「わたしたち」が参加して達成してきていたのである。

今後の人口減少社会において、明治以降に確立された行政主導によるのではなく、過去に学び、明治以前のシステムを踏まえつつも、今の時代に合わせ、県民が様々な分野に楽しみながら「参加」していく社会づくりに取り組んでいくことが、充実した生活を送ることにつながっていくのではないか、と考えている。

しかし、そうした意識改革、社会づくりはすぐにできるものではない。今
から行政として種をまいていくことが必要である。
具体的には、県民が「参加」できる機会を増やしていく取組である。強制や義務ではなく、未来の兵庫県を作ることに楽しんで「参加」することこそが、真の地域活性化につながっていくと考える。

そこで、県が推進する地域づくりの取組において、行政主導ではなく、より多くの県民が強制や義務ではなく楽しみを感じながら「参加」できる機会を十分に用意していくべきと考えるが、所見を伺う。

2.地域創生の実現に向けたテレワークの推進について

東京一極集中を是正し、元気で豊かな地方を創生するため、都市住民の地方への移住を促進することは重要である。
本県においても、社会増対策としてカムバックひょうご東京センターを設置するなどUIJターンに力を入れている。特に、本年4月からは、同センターにハローワークを併設し、移住支援とともに職業紹介を一体的に実施していると承知している。
ただ、県内も多様であるため、どこに移住されてもすぐに仕事があって、支障なく生活できる、というわけでもないと思う。

特に、小さい子供連れの家族の方が移住を検討する場合は、適当な仕事がないようであれば、今の仕事を離れて移住するという決断はなかなか下しにくいであろう。
少し古いが、内閣府が平成26年に行った「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」によると、4割ほどが移住を検討または今後検討したいと回答されている。その中で、移住する上での不安・懸念として最も大きかったのは「働き口が見つからない」で、男性・女性にかかわらず10代から50代の方にほぼ共通する点としてあげられていた。

つまり、移住を促進するためには、生活の糧を得るための手段をいろいろと用意しておくことが、兵庫県を移住先として選んでいただくための重要なポイントであると言える。
では、どういう取組が求められているのか。私が力を入れていくべきと考えているのがテレワークである。

テレワークとは、tele=離れたところと、work=働くを合わせた造語で、国によってはリモートワークとかeワークとか呼ばれているが、その内容は、ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、自宅で仕事をする「在宅勤務」、通常の勤務地以外の職場で勤務する「サテライト勤務」、出張先等でタブレット端末などを用いて業務を行う「モバイルワーク」の3形態があるとされる。

国においては、総務省が、テレワークを都市から地方への人の移動を実現するツールと位置づけ、ふるさとテレワークを推進しており、その地域実証事業に、本県では丹波市が取り組まれていると聞いている。
もちろん、すべての業種、業態でテレワークが可能というわけではないことは理解しているものの、テレワーク環境が整備されているということは、移住を検討するに際して、大いにアピールできる点ではないかと考える。

また、せっかく移住者が増加しても、流出が多ければ効果は薄くなる。テレワークにより地元で仕事ができる環境が整っていれば、流出防止も期待できるのではないかと考える。
そこで、県としても、積極的なテレワーク環境の整備を進め、移住者の取り込みを図ってはどうかと考えるが、所見を伺う。

3.女性職員の活躍促進に向けたテレワークの推進について

昨年、女性活躍推進法が完全施行され、地方公共団体も事業主行動計画を策定・公表、情報開示する義務が課せられた。本県では、第5次男女共同参画兵庫県率先行動計画がそれに位置づけられている。

この計画の目標を見ると、2020年までに採用者で40%、本庁課長相当職以上で15%、本庁副課長、班長・主幹相当職で20%を女性が占めるよう設定されている。
県のホームページで公開されている平成29年4月1日現在の状況を見ると、採用者は42.4%を女性が占めているということで目標を達成できているようである。一方、課長相当職以上は9.1%ということで目標の60%程度、副課長等相当職は15.5%で目標の75%程度となっていた。
昨年4月1日現在の数字と比較すると、いずれも増加はしているので、目標に向けて着実な歩みを進めているように感じた。

後は、数値目標を達成することが至上となって、本人が積極的に昇進を望んでいるわけではないにもかかわらず、また本人の能力とは別に管理監督職に登用されるようなことになっていないか、という点に気をつけて進めていっていただきたいと考えている。

ところで、一般的に、出産を契機として女性の方が離職に至るケースが多い。国立社会保障・人口問題研究所が公表した「第15回出生動向基本調査」を見ると、2010年から2014年の間に、就業している女性のうち、出産を機に退職した方は46.9%にのぼっている。
もちろん、この数字がストレートに県の女性職員に当てはまるというわけでもないとは思うが、ある程度のスキルを身につけ、さあこれからというときに出産で離職せざるを得なくなるようでは、先の数値目標の達成がむずかしくなるばかりでなく、将来の幹部候補、優秀な人材を失うことにもつながる可能性があるわけであるから、継続して就業できるような環境を整備することが非常に重要である。

そのためには、広く職員に向けたテレワーク導入を進め、兵庫県の組織全体で理解を深めていくことが必要だと考えている。
たとえば、佐賀県庁では、全国に先駆け、平成20年に都道府県庁初の在宅勤務制度を導入しているが、それは福利厚生ではなく、経営戦略としてとらえているところに特徴がある。

導入当初は、育児・介護休暇中の職員が対象だったそうだが、新型インフルエンザ業務継続計画策定を機に、平成22年度から誰でも在宅勤務ができるようにしたという。また、職場で働くのが当たり前という雰囲気も強く、毎年20人程度の利用であったが、そうした意識の改革も図るため、平成25年8月から、知事の号令のもと、まず管理職が週1回在宅勤務するよう努力義務を課し、また、総合庁舎等にサテライトオフィスを開設、同年12月からは本庁の知事部局職員全員と地方機関の希望者にも対象を拡大するなど、順をおって導入を進めたという。

そして、現在では、嘱託職員も含め4,000人分のテレワーク環境を整備し、月間の在宅勤務実績が200~300件にまで浸透し、業務改善等に効果を挙げているという。これが兵庫県庁の規模であれば、人数的には2倍程度の件数になると思われる。
確かに、技術的なことや服務、働き方の多様性を受け入れる組織風土づくりなど克服すべき課題もあるとは思うが、効果の大きさはそれを補って余りあると考える。

そこで、職員に対しもっと広くテレワークの導入を進め、本県の女性職員が、途中離職しないで活躍し続けられる環境整備を図ることにより、優れた幹部候
補者の裾野を広げることができると考えるが、ご所見を伺う。

4.サイクルスポーツを活用した六甲山の活性化について

六甲山は豊かな自然と優れた眺望を持ち、スポーツ、レクリエーション、文化活動などが総合的に体験できる場である。そして何より、神戸市街のすぐ背後にあり、手軽に行けるところに位置しているということが、他の大都市にはない魅力であり、神戸の最大の地域資源の一つではないかと思っている。したがって、六甲山の活性化は、神戸のみならず、兵庫県にとっても重要な課題だと認識している。

神戸は明治以降、様々な海外の技術や文化を取り込んできた進取の精神に溢れる街であると言われるが、それはスポーツの分野でも同様である。マラソンは発祥の地とされているが、特に六甲山に限ると、ロッククライミングやゴルフ場も発祥の地である。

現在、六甲山の活性化については、県・市が協調して昨年度「六甲山土地利活用プロジェクトチーム」を設置し、取組を進めているところだと聞いているほか、神戸市においては、今年度企業版ふるさと納税制度を使って、再度公園の活性化事業として、外国人墓地周辺の整備を行い、展望台の周辺整備や外国人墓地の見学会等を行うなどに取り組まれていることは承知している。

そこで、私は、六甲山活性化に向けたさらなる取組として、今回ヒルクライムinマウント六甲(仮称)の開催を提案したい。
ちなみに、ヒルクライムとは、簡単に言うと、山岳コースを自転車で走る種目であり、たとえば、富士山はじめ、大山など、著名な山でも実施されているほか、県内では、ちくさ高原のほか、隣の波賀でも、今年第7回のスーパーヒルクライムin波賀でも開催されている。
六甲山でも数年前まで、芦有道路を使ったヒルクライムの大会が行われたことがあったが、現在は行われていない。

では、なぜ自転車か、ということだが、日本生産性本部が毎年発行しているレジャー白書2017に、ここ10年間のスポーツ参加人口の推移が掲載されている。2016年の数字を見ると、ジョギング・マラソンと器具を使わない体操がともに2,000万人を超え、次いでトレーニング1,500万人、ボウリングと水泳1,000万人が上位5つで、それに次いでいるのは、910万人のサイクリング、サイクルスポーツとなっているのだが、ここ10年安定して多くの方の支持を集めている。

その自転車の普及について、画期的なできごととして、昨年12月、議員立法により自転車活用推進法が成立し、本年5月に施行された。自転車は、環境、防災、健康に資する乗り物である、ということが明確に位置づけられ、今後、国は来年の夏までに自転車活用推進計画を策定するということなので、県においても国の計画を踏まえながら県計画の策定がなされていくのかもしれないが、少なくとも自転車を取り巻く機運の高まりを感じている。

他の自治体でも自転車を活用した取組が図られているが、本県においても、こうした機運を捉まえて、より一層自転車の活用を推進し、六甲山の活性化につなげてはどうかと考えている。

先程、ヒルクライムが全国でも実施されていると述べたが、他と比べて、六甲山での開催が特徴的なのは、神戸という都市からスタートし、六甲を走る、というコースがほかにないからである。つまり、ヒルクライムを楽しむことと、都市の魅力を楽しむことを一緒に行えるところに六甲でヒルクライムを行う最大の魅力がある。
そこで、六甲山活性化のための取組として、「ヒルクライムinマウント六甲(仮称)」の開催を期待するが、所見を伺う。

5.国際的なサイクルイベントの実施について

次に、淡路地域の活性化に資する国際的なサイクルイベントの実施について伺う。
私が実施してはどうか、と考えるのは、一つは自転車・サイクルツーリズムを活用した地域活性化に取り組んでいる「ツアー・オブ・ジャパン」という大会である。

「この大会は、昭和57年から平成7年まで開催されていた「国際サイクルロードレース」を前身とし、平成8年から、国際自転車競技連合に公認されたことを機に、「ツアー・オブ・ジャパン」と名称を変えたもので、一般社団法人日本自転車普及協会が事務局を務めている。

国内では、堺市での第1ステージから東京までの第8ステージで実施され
ており、全ステージを通じて約35万人近くの人々が会場や沿道に集まるなど、
ロードレース・自転車を通じた地域活性化に貢献している。

二つめに考えているのは、「ツール・ド・淡路(仮称)」の開催である。これは、たとえば国内では、「ツール・ド・北海道」「ツール・ド・おきなわ」「ツール・ド・熊野」といった国際的なサイクルイベントが実施されている。

本県には、ホビーレーサー向けのサイクルイベントは既に開催されている実
績がある。中でも、淡路地域では、淡路島ロングライド150の開催を積み重ねてきた素地を持っている。さらに、淡路県民局としても、淡路地域経営プログラムには、「サイクリングアイランドの推進」とあるように、自転車を使った地域活性化に取り組んでいる。
こうしたホビーサイクリストのためのイベントに加え、レース的なサイクルイベントに取り組むことにより、まさに「サイクリングアイランド淡路」の名は、ますます全国そして海外に届くことにつながるのではないか、と考える。

そこで、神戸マラソンが震災15年を契機として開始され、現在、賑わいづくりに貢献し、また、国際色も豊かになり、国際陸上競技連盟のブロンズラベルを目指そうとするまでに成長したように、淡路においては国際的なサイクルイベントを育てていくこととし、「ツアー・オブ・ジャパン」を誘致もしくは、それがむずかしいようであれば「ツール・ド・淡路(仮称)」として開催するよう取り組んではどうかと考えるが、所見を伺う。

6.ひょうご小野産業団地の整備と今後の新たな展開について

国内景気は緩やかな回復基調が続いており、先行きについては、海外情勢や金融資本市場の変動など不透明な部分もあるが、今後緩やかに回復していくことが期待されている。
このような経済環境の中、地域整備事業による産業用地の分譲は、新たな企業立地による設備投資や雇用の拡大によって、地域の雇用を生み、人の流入を促進し、地域経済を活性化させる大変重要な手段だと考えている。

兵庫県内の2017年上期の工場立地件数を見ると、前年度の全国3位から2位に上昇し、立地面積は6年ぶりに全国1位となった。
新名神高速道路が本年度末に神戸まで開通する予定で、交通アクセスの向上が用地取得への意欲を押し上げているようである。
一方、隣接する大阪や京都が産業団地を新たに造成し、積極的に企業誘致に取り組んでいる中、本県の産業団地のストック状況は、物流、食品、医療品などの旺盛な立地により減少傾向にあると聞いている。

このまま手を拱いていていいのか、地域創生を進める観点からも新たな産業用地の確保に取り組んでいく必要があるのではないか、と考えるところである。
そうした中、現在、企業庁が新たに取り組んでいる「ひょうご小野産業団地」には期待している。市との協調で、産業団地を造成するということは、地元の意向を最大限反映できるということであり、それは、当該市の地域創生、ひいては県の地域創生実現に大いに資すると考えられるからである。

また、国においては、今年度から、地域の活性化に寄与することを目的として民間施設直結スマートインターチェンジ制度を創設しているが、スマートインターチェンジの普及が進めば、新たな工業団地の整備促進に追い風になる。
企業庁は、昨年発足50周年を迎えた成熟した企業体であることもあり、新たな展開を期待されている。その歴史に培われたノウハウをもって、市町との緊密な連携により、地域創生の一翼を担ってほしいと考えている。

そこで、まず、ひょうご小野産業団地の整備にあたっては、計画・整備・分譲までをスケジュール感を持って取り組むことが重要と考えるが、現在の取組状況について伺うとともに、企業庁として、今後どのような事業展開を図ろうとしているのか、その意気込みについて伺う。

7.人生100年時代を踏まえた兵庫の教育のあり方について

昨年話題になった本の一つに「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略」がある。お読みになった方も多いと思うが、世界で長寿化が進んでおり、特に日本の場合、2007年生まれ、今の小学4年生の子どもは107歳まで生きる確率が50%あるとのことである。

ちなみに、これは日本だけではなく、アメリカ・イタリア・フランス・カナダで104歳、イギリス103歳、ドイツ102歳と、先進国はのきなみ同じような傾向にあるようである。
日本人の平均寿命のトレンドは着実に右肩上がりしているので、将来的にその平均寿命が100歳を超えるようになるという話は、まったく否定できるものでもないように感じる。

事実、国においては、今年9月に、人生100年時代を見据えた社会・経済システムの実現をするための政策のグランドデザインを検討するため、「人生100年時代構想会議」を立ち上げた。

超長寿社会において人々がどのように活力をもって時代を生き抜いていくか、そのための経済・社会システムはどうあるべきなのか、といった新しいロールモデル(具体的な行動技術や行動事例を模倣・学習する対象となる人材)すなわち人づくり革命に取り組んでいくという。

国だけでなく、地方でも、この人生100年時代を見据えた取組が始まっている。
たとえば、神奈川県では、「人生100歳時代の設計図」として、100歳までのライフプランを県民が描けるよう、生活モデルや社会モデルを提示しようと試みている。
また、福岡市では、保健医療分野における新戦略「福岡100」を今年7月から開始した。誰もが100歳まで健康で自分らしく生き続けられる持続可能な社会システムの構築を実現すべく100のアクションを2025年までに実施するという。

今の子どもたちが100年以上生きていくということが当たり前のようになってくると、人生80年と言われてきた我々大人と比べて、人生の送り方が変わってくるだろう、と考えるのは当然のことだと思う。
たとえば、AIやロボット技術の発達により、将来多くの職業がなくなるだろう、という研究結果が一世を風靡したことがあるが、今のIT技術の進展を踏まえると、学校でのキャリア教育において、将来の職業観を指導するのもむずかしいものがあると思う。

また、現在は、教育、仕事、引退という3ステージ、単線型の人生を皆で一斉に送る社会であるのに対し、人生が長くなると、一つのキャリアだけでなく、新たに学び直し、次のキャリアを始める、など、一人ひとりがマルチにステージを移行する人生を送るのが普通の時代になるという。

今を生きる我々が、人生100年になった時のことを想定するのは確かにむずかしいことであることは理解している。しかし、想定しないというのもいかがなものかと考える。子どもたちのキャリア教育、またその将来の学び直しといった点において、教育委員会としても人生100年時代の到来を視野に入れた検討を始めるべきではないか、と考える。
そこで、人生100年時代ということを踏まえた今後の兵庫の教育のあり方や取組について、所見を伺う。

石井 秀武

(選挙区:神戸市西区)