議会の動き

迎山 志保議員が代表質問を実施

質 問 日:平成30年6月8日(金)
質 問 者:迎山 志保 副幹事長
質問方式:分割方式

1 規制改革の取組深化について

今年度、県は規制改革推進会議を立ち上げ、5月18日に初会合を開いた。全国的にみてもこのような会議を設置し、規制改革を進めているところは、静岡、徳島、大阪、鳥取ぐらいのように見受けられ、積極的な姿勢で取組を始めたことを評価している。

従来から、本県の規制改革や行政手続き簡素化について、わが会派は度々指摘をしてきたが、今後、これを契機に、県民生活や企業活動をより円滑にすべく、時代錯誤な規制の見直しや厳しすぎる規制の緩和に向けて活発な議論が進められることを期待している。

わが会派では、今年3月、鳥取県を調査した。鳥取県は、国の規制改革推進会議でもプレゼンを行うなど、その先進性は折り紙付きで、県行政の持続可能な体制構築に向け、知事のトップダウンで聖域なき改革に取り組んでおり、その取組過程は徹底して公開されている。本県の規制改革推進会議と比べると、委員の構成は似ているが、鳥取県は公募委員がいること、テレビ会議を開催して委員の多様な参加を可能にしていること、所管が行財政改革局という県民にもその使命がわかりやすい組織であること等の違いが挙げられる。本県の推進会議の構成員は6名であるが、規模を考えると、この体制で十分なのかという懸念もあり、会議での議論に加え、市町や業界団体へのヒアリング、通常業務において各部署に届いている県民の生の声等も丁寧に拾い上げ、幅広い意見を集約して有意義な会議体にすることが必要である。

また、本県の規制改革推進会議では、行政手続の簡素化・簡略化が審議の対象であることが明確ではない。たとえば、国、鳥取県ともに規制改革の両輪と捉えているのが行政手続きの見直しである。徳島県においても、昨年9月の提言の中で、具体的な規制改革の方向性として、最初に挙げているのが、行政手続の簡素化であり、この点において、本県の規制改革は不十分なものになってしまわないか。

今後、県は本格的に規制改革に乗り出すが、どこまで踏み込んだ取組をするのか、国や他県でも重要視されている行政手続簡素化の視点も審議対象にする余地はないのか、改革が県民の利益に直結することを強く意識したものにするために、今回指摘した点にも留意しつつ、どのように規制改革を進めてくのか、当局の所見を伺う。

2 県表彰制度の活用をはじめとした地域づくり活動の機運醸成について

少子高齢・人口減少が進む中、地域の課題は複雑・多様化しており、住民主体の地域づくり活動の展開に向けた機運の醸成がますます重要となっている。そのための有効なツールの一つに表彰がある。

現在、本県の表彰制度は、各部局で多岐にわたって創設されている。それぞれが一定の目的を持って作られ、それに沿った取組をしてきた人々やグループ・団体等が表彰されてきた。もちろん、受賞した県民が大変な栄誉と感じていることは、私も普段の活動の中でよく見聞きしている。

地域活動に係る表彰には、県民ボランタリー活動賞、のじぎく賞、こうのとり賞、くすのき賞等があり、古いものは昭和30年代と半世紀以上前に創設されているが、当初の時代を背景に開始した表彰の目的や対象となる取組等は、時々に即してコンセプトの見直しがされてきただろうか。

また、被表彰者の年齢構成は、永年の取組の評価ということもあり、高齢者の比率が高いようである。永年にわたる活動に敬意を表することは当然だが、併せて今後の活動への期待を込めたものとして、表彰を位置付ける等、これまで以上に幅広い世代に広げていけないか。

表彰されることは、県民の模範となるような顕著な取組であり、取組をより長く、深く、継続し、広く波及してもらうための大きな活力源、自信になる。そのためには推薦元についても、より幅を広げるなど工夫しつつ、表彰制度を活用していく余地があると考える。

加えて、活動内容を発信する機会づくりや活動に役立つ情報の提供等、様々な手段で地域づくりの機運を醸成し、参画と協働により地域づくり活動の質的・量的な充実を図っていくことが重要と考えるが、当局の所見を伺う。

3 災害救助法改正による指定都市への権限移譲について

災害救助法の一部を改正する法律案が、5月8日に閣議決定され、今通常国会に法案提出された。本法案が可決されると、これまで都道府県に委ねられていた仮設住宅の設置や支援物資の給与等の権限が希望する指定都市に移譲される。

今回の法案策定にあたり、国は、「災害救助に関する実務検討会」を設置し、約1年をかけ、道府県や指定都市と丁寧な協議を行ってきたとしている。本県・神戸市も参加していたが、どのような経緯で今回の閣議決定、法案提出に至ったのか。

加えて、本県と神戸市は、宮城県と仙台市、愛知県と名古屋市とともに自治体の代表として、内閣府が設けた協議の場にも名を連ねているが、その「大規模・広域災害時の災害救助事務の連携強化に関する協議の場」は、法改正の説明の場ではなく、指定都市を含めた協力関係の確認の場という認識を示した声明を全国知事会は発表した。ここではどのような議論がなされたのか。

今回の政府の閣議決定を受け、5月11日、全国知事会は、改めて、これまで一貫して、この移譲に反対してきたにも関わらず、本決定がなされたことへの遺憾、権限移譲により広域調整が複雑になることや資源の先取り、救助内容の公平性への懸念から慎重に法案審議を行うよう求める声明を出したが、災害救助法は改正され、新たな枠組みで災害救助に取り組んでいくという流れになっていく。

知事は、これまで災害救助に関する市町との連携については、事務委任方式で充分との見解を示していたと認識している。

そこで、指定都市に権限移譲することによるメリット、デメリットについて、どう認識しているのか。また、今回の法改正を踏まえ、神戸市が権限移譲を希望する場合、本県として、被災者支援にどのように取り組むのか、当局の所見を伺う。
 

4 地域医療を守る体制の構築について

県立淡路医療センターでは、今年4月から全分娩数の25%を占めていた里帰り出産の新規受け入れを当面休止した。当センターの産婦人科医師は、6名中4名が女性だが、産休、育休に入る医師の補充がかなわず、苦渋の決断をしたものと推察する。

女性医師は、近年、増加の一途をたどっている。厚生労働省の調査結果による県内の実数は、平成28年時点で、13,979人の医師のうち、女性医師は2,895人と2割を上回っている。また、10年前の平成18年と比べて、その増減率をみると男性医師の11.2%に対し、女性医師は45.84%と、上昇率の差は歴然である。

20代、30代の女性医師が増える中、育児中の女性医師の勤務状況をみると、通常勤務は28%、多くが時短勤務や勤務日数減を選択しており、女性医師の割合が増えていくに従い、実働できる医師の絶対数に影響が出ることは不可避である。
また、今後は出産等のライフイベントを抱える女性に限らず、高齢化の進展により介護に直面する医師や、高齢医師など、柔軟かつ多様な働き方を希望する医師がますます増えることも予想される。しかし、総務省が行った就業構造基本調査の職業別週労働時間60時間以上の雇用者割合は、全職業の11.6%に対し、医師は38.1%と最も高くなっている。さらに、医師法で応招義務も課されているなど厳しい勤務実態がある。

今年度、厚生労働省は、小児科、麻酔科、産婦人科などの診療科で常勤医に限られていた配置基準を緩和し、週3日以上、かつ週24時間以上働く複数の非常勤医師を組み合わせた常勤換算でも配置可能とする診療報酬改定を行った。特に、女性医師の割合が多い小児科、産婦人科は、医師の偏在と不足が深刻なため、今般の改定は、通常勤務を諦めて離職をしていた医師の掘り起こしには大変有益と考える。
そこで、こうした背景を踏まえ、厳しい地域医療体制を守るために医師会とも連携しながら積極的な医師確保につなげていくべきと考えるが、現状の課題認識と今後の取組について、当局の所見を伺う。

5 アルコール依存症対策について

アルコールは習慣性のある薬物であり、その依存症は、飲酒のコントロールができなくなる脳の病気である。アルコール依存は、本人への影響だけでなく、家族や社会へのダメージも大きく、その社会的コストは無視できない。

厚生労働省の研究班によると、アルコール依存症による社会的損失は、飲み過ぎによる病気やけがの治療に年間約1兆円と推計されているのに対し、飲酒や体調不良により生産性が低下する、病気休暇や死亡により労働力を失う等の労働損失と雇用の喪失は、年間約3兆1千億円と推計され、労働、経済への影響の大きさが浮き彫りになっている。

アルコール依存症が疑われる人は、同じく厚生労働省の推計によると、全国で約109万人にのぼり、その予備軍とも言うべき多量飲酒者は、980万人で、特にそうした人々に対し、飲酒のコントロールができなくなる前に早期の介入支援で深刻化を防ぐ取組が求められる。

また、アルコール依存症は自然に治るというものではなく、精神疾患の一つであるという認識が重要であり、2~3ヵ月の入院治療が基本とされているにも関わらず、アルコール依存症の診断基準を満たすと思われる約58万人のうち、医療機関で治療を受けている患者数は約4万9千人で、8%程度と言われている。統合失調症やうつ病など他の精神疾患罹患者に比べ、受療者の割合が最も低く、回復のための社会資源の充実が欠かせない。

国では、アルコール健康障害対策基本法が施行され、本県でも、実情に即した推進計画の策定を今年度予定している。国のデータをもとに推計すると、アルコール依存が疑われる人が、4万7千人程度県内に存在することになる。医療機関での治療状況等の分析をもとに、減酒外来等の拠点病院の充実、警察・検察・福祉機関との連携、県民への啓発など、様々な取組が考えられる中、実効性ある計画策定にどう取り組んでいくのか、当局の所見を伺う。

6 人材力強化に向けた学び直しの充実について

経済産業省が設置した有識者による「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」の報告書が、今年3月に公表された。「人生100年時代に求められる人材像と学びについて」という項目の中で、「少子高齢化・人口減少、人生100年時代、産業構造の変化、グローバル化等を背景に、個人の職業人生は長くなる一方で、スキルの賞味期限は短期化。一つのスキル・経験でいつまでも活躍することは困難で、個人が活躍し続けるためには、働くことと学ぶことの一体化が必要不可欠」とある。

大きな社会経済変化の中、働く人のキャリアの複線化が進み、今後は企業、働く人双方にとって、有益な兼業や副業が当たり前になると予想されるが、実際、企業では、既に自らの意思で、社内での兼務を認めたり、社外での兼業を認めるなど先駆的に複線化を進めたり、神戸市が副業を推進するなど公務員にまで、その働き方の変革の波は押し寄せている。

先の報告書のとおり、ビジネスモデルが短期化する一方、就労期間はますます長期化する傾向にある中、重要になるのが、個人が希望する職業人生の実現のための学び直しの機会である。これまで企業や組織に委ねられ、職場内での役割に重きが置かれてきた能力開発が、自らの意思、選択で、新しいキャリアに挑戦するスキルを獲得するものへ変わってくる。

会社をベースとした職能主義が主流である日本では、社会人になった後、必要に応じて、教育機関に戻るリカレント教育についての概念も理解も、諸外国に比べ著しく乏しく、文部科学省の資料によると、25歳以上の学士課程の大学入学者の割合は、2015年のOECD各国平均では16.6%に達し、社会人学生が相当含まれる一方、我が国の社会人学生の割合は2.5%に過ぎない。特に我が国では、学び直しをキャリアの中断、ブランクと捉える傾向が強く、企業の中で有給教育訓練休暇を導入している企業は1割もないと言われている。しかし、今後は、ステップアップの貴重な機会と捉える風土の改革や意識の醸成が求められる。国も人づくり革命でリカレント教育の重要性をうたっているが、具体的にどのような支援策が講じるのかまだ明らかではない。

県は、労働局と協定を結び雇用に関する連携を深化するとしている。人材開発、職業訓練にも力を入れるが、これを機に今後求められる人材に鑑み、県内企業の教育訓練休暇の導入促進や、そのための支援、特に在職者向けの職業訓練の充実など、積極的な取り組みに期待したいと考えるが、当局の所見を伺う。
 

7 未来を担う人づくりに資する教育について

5月10日に行われた平成30年度第1回兵庫県総合教育会議において、井戸知事は、教育委員等と意見交換の中で「本県の未来を担う人づくりを進めるために必要な取組」を提案した。

その4つの提案の中で最も注目したのが、一つ目の提案「生徒が自己の未来を切り開くための県立高校における新たな特色教育の導入」である。

具体的な取組として、まず「東京都、大阪府を参考にした、進学指導重点校の指定」を挙げている。例えば、地方で課題となっている医師不足を踏まえ、医学部への進学実績等、具体的な目標を設定し、進学対策に組織的、計画的に取り組む学校の指定を行うものである。

進学指導に重点を置く県立高校の創設は、かつてわが会派から、次世代リーダー育成特色校の創設として提案したが、その際の答弁は、魅力あるひょうごの高校づくり推進事業により、学校ごとのテーマに沿った生徒のやる気を引き出す魅力づくりを進めて、全国に誇れる県立高校づくりを進めるとのことであった。

しかし、今回、先行例として挙げられている進学指導重点校の指定の意義は、本県のような、各学校が創意工夫して取り組むという、学校に任せる、というところではなく、教育委員会が指導力のある教師を公募で集め、進学指導重点校に配置する、という点にあり、現在の本県の教育方針から考えると、簡単に実現するものではないようにも思われる。東京都民は、進学指導に力を入れるこの都の取組を支持しているようだが、わが兵庫県民の意識はどうか。都では、5年に1度、都立高校に関する都民意識調査の結果を受け、このような取り組みを始めたが、本県でも一度、調査をしてはいかがか。

また、「国際的な教育プログラムである国際バカロレアの導入により、グローバルに活躍できる人材を育成する学校」も併せて提案している。国際バカロレアは、わが国では、学校教育法第1条に規定する学校の中で、認定校は、平成29年6月1日現在、20校しかなく、関西では、京都に1校あるのみである。認定を受けるのはハードルが高いと思うが、実現すれば、本県の県立高校の特色づくりの一つになると考えられる。

次に注目したのは、二つ目の提案「中高一貫教育を含め小中高大までを見据えた連携した教育の推進」である。6年間の期間を生かし、専門性や学力の向上に重点的に取り組める教育課程の編成が可能な中高一貫教育の推進を含め、小中高大まで連携した取組を検討すべきとしている。本県の中高一貫教育は、現在3校で取り組んでいるが、今のところ専門性や学力の向上に重点を置いた教育課程をとっているわけでなく、現状の中高一貫教育の導入検討は、生徒数の減少に端を発しているところがほとんどであり、提案の内容とは隔たりがある。

未来を担う有為な人材の育成は何よりも重要であることは論を待たない。国レベル、あるいは世界レベルで活躍する人材が、偶然、本県の出身だったというのではなく、そうした人材の育成を目的として、教育に取り組んでいくことも必要と考えるが、今回の提案は、これまでの教育委員会の見解、方針から少々舵を切ることになるのでないか。
これまでも議論されてきた進学指導重点校の指定、国際バカロレアの導入、中高一貫教育を含めた小中高大の連携の3点について、前向きに取り組む契機と考えるが、本県の教育の柱となる、ひょうご教育創造プランの改定も控えた今、今回の知事の具体的提案について、同席されていた教育長はどのように受け取ったのか、所見を伺う。

8 県民の安心に直結する警察の取組強化について

警察にとって最大の使命は、県民が安心して暮らせる社会を作ることである。ここ10年間の刑法犯の認知件数や交通事故の件数は、減少傾向にあり、警察の取組によるものが大きいと認識している。

しかし、最近も、複数の児童等に対する傷害容疑で服役中の者が、過去に児童を殺害していたとの新たな容疑で再び逮捕されたり、新潟で小学生を下校中にさらって殺害したと思われる容疑者が逮捕されるといった報道を繰り返し耳にすると、刑法犯の認知件数等が減少傾向にあるとはいえ、必ずしも体感治安が向上しているとは言い難いのが実情である。いずれの事件も逮捕に至ったが、こうした事件が続けば、まだ他にも同様の人物がいるのではないかと、特に子を持つ親にとっては安心しきれない気持ちになることも事実であり、大人が地域の防犯力強化に努める必要性を痛感するとともに、警察においても、つきまといや声掛け等、重大事案になりうる前兆行動への適切な対応や取締りをより一層強化することを期待している。

また、身近なところでは、子どもの命が奪われる虐待事件やDVなど男女関係のもつれによる暴力事件等が後を絶たない。県警の統計では、児童虐待の場合、通告人員、検挙件数のいずれも伸び続けており、例えば、平成29年の通告人員は2,884人で、5年前の平成24年の438人と比べると、6.6倍になっている。DVの被害者数は、平成29年の認知件数は、3,380件で、平成25年と比べ、1.6倍になっている。特に、20代~40代の子育て世代が全体のほぼ8割を占めており、子どもたちへの影響も懸念される。
虐待やDVは、閉鎖的な空間で行われることも多い犯罪であり、警察による未然防止は難しいと思われるが、通報やパトロールで得た情報を吟味し、考えうる危険を予見して、最適なアプローチで危険の芽を摘むことが肝要である。

また、未然防止の強化という観点から、警察に届けられた情報のみならず県、市町等の関係機関が把握しているSOS情報の共有が重要になる。近年、相談窓口、ホットライン等の受け皿も拡充する中で、個人情報の壁等もあるが、必要な情報は相互に共有し、アンテナを高く張って重大事案化を防いでもらいたい。

そこで、児童虐待やDV事案等人命にかかわるような事案に関して、県警察としてのこれまでの取組と課題認識、今後未然防止という観点からどう取り組むのか、また関係機関との適切な情報共有について、当局の所見を伺う。