議会の動き

◆19年9月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  迎山 志保 議員

一般質問  北上 あきひと 議員
      石井 健一郞 議員
      小池 ひろのり 議員

代表質問

(迎山 志保 議員)[発言方式:分割]

1 将来を担う県職員の確保・育成について
2 女性活躍について
3 持続可能な救急搬送体制の維持に向けた取組について
4 放課後児童クラブの質の確保について
5 就職氷河期世代への支援のあり方について
6 移動手段確保対策について
7 小・中学校における教育課程編成の見直しについて
8 交通安全施設の適切な維持管理について

質問全文

第345回 定例県議会 代表質問

質 問 日:令和元年9月27日(金)

質 問 者:迎山 志保 議員

質問方式:分割

1 将来を担う県職員の確保・育成について

知事は就任5期目の折り返しを迎えた今、これからの県職員のあり方について、制度の枠組みからアプローチして実現可能性をまず考えるのでなく、前例にとらわれない積極的な発想と行動力が重要であり、令和という新時代に求められる変化を見通す構想力や企画力で課題発見・解決能力を高めることが必須であると述べられました。要するに、従来発想の限界に言及されたわけでありますが、知事が求めるこのような有能な職員を県はどう確保し育てようとしているのでしょうか。

近年、採用試験改革として公務員試験で必須だった難易度の高い一般教養、専門知識試験を取りやめ、民間試験で採用されているSPIを使うなどして受験者の幅を広げ、いわゆる公務員試験対策をしていない人にも門戸を開くなど優秀な人材を何とか確保しようと試行錯誤する自治体も見受けられます。組織の要諦は言うまでもなく人でありますが、その組織だけを目指す人で固められると同質化、硬直化します。

試験時期、中途採用なども含めて、長期的な視点で幅広く優秀な職員を確保する術を講じる必要があるのではないでしょうか。

また、県では従来より面接重視の採用を行なっていますが、そういう意味では面接官の責任も重大です。経験則に加え、従来発想にとらわれないこれからの時代に必要な人材を見極める力量が求められます。専門学校で面接トレーニングを積んできた受験者達の中から、兵庫県が求める人材を選抜する面接官の技量の担保も、また採用にあたっては欠くことはできません。

そしてその上で、確保した優秀な人材を優秀な職員に育てるためには、多様な人材を活かしきる風土の醸成が重要な観点となってきます。

先月、47歳で急逝した経営コンサルタントの瀧本哲史氏は言論で若者を牽引し続けた人物でありますが、変化を担うのは若い、新しい世代だとして、上の立場の皆さんは若い人に上手に利用されてほしい、自分が彼らをどう利用するかではなく。と、組織のパラダイムシフトに向けたメッセージを残していますが、そのような観点をもって実践されている管理職の皆さんがどれだけおられるでしょうか。

地方創生に向けた取組や住民ニーズの多様化などにより様々な業務が増え、一方で行財政改革により職員は大幅に削減される中、少数精鋭による対応が求められていますが、多様な人材の確保に加え、その人材を活かし育てるためには、本人のスキルアップに加えて、人材を育てる職場環境の充実も重要となります。

そこで、知事が求める県職員をどのように確保・育成し、目指すべき新時代の兵庫を具現化していくのか、ご所見をお伺いいたします。

2 女性活躍について

人口減少、労働力不足が叫ばれる中で女性の存在感は確実に大きくなっています。今年6月の労働力調査によると国内の女性の就業者数は3,003万人と初めて3千万人を超えました。これは全就業者の44.5%にあたり、ここ1年の就業者数の伸びを見てみると、全体の増加数約60万人の9割近くを女性が占めています。

ただその内実はというと、目下の人手不足を補うという意味合いが強く、役所や金融機関の窓口で手続きを進めてくれる女性、接客をはじめあらゆるサービス業を担っている女性の大半は非正規雇用です。55%という非正規雇用比率は男性の2.4倍であり、中長期的な観点から大きな課題といえます。単に就業者数の伸びだけではなく、各人が希望に沿った働き方、生き方ができてこその女性活躍だと思います。

私は教育現場にもよく足を運びますが、兵庫県に限らず、学校では女子児童、生徒が存分にリーダーシップを発揮しています。生徒会長やクラブ活動の部長はじめ県主催の各種イベントでも彼女達の活躍は眩いばかりです。

また、兵庫県の教育熱、水準は極めて高く、大学進学率を見ると男女ともにそれぞれ57%、65%と全国上位でありますが、特に女性に限ると東京、京都に次ぐ高水準です。このように、兵庫県は素晴らしい人材を育てています。しかしながら彼女達が社会に出て引き続き持てる力を発揮できるフィールドを私たちは提供できているのでしょうか。

兵庫県の本年度大卒程度の採用試験における一般事務職の合格者で初めて女性が男性を上回りました。これはエポックメイキングな出来事と言えます。一般的に生涯安定的に働きやすいイメージの強い公務員という職種を女性が求めるのは至極当然です。

女性は男性に比べて格段にライフとワークを切り離すことが難しく、働き続けても、結婚や子育てのために離職しても、ある時振り返ればこれでよかったのかと自問自答します。子供としっかり向き合ってきたと胸を張れるのか、仕事を辞めていなければ今頃どんな自分になっていたのか。

もちろん、働く場の提供だけが全てではありません。家庭や地域、職場において、一人一人が自らの意思や価値観に基づいて個性と能力を十分に発揮できる社会を実現することが大切です。そして、「女性活躍」や「男女共同参画」という言葉自体が過去の遺物となる社会が到来するよう努力していく必要があると思います。

県では男女共同参画社会づくり条例やひょうご男女いきいきプラン2020に基づいた様々な取組を実施されており、「ひょうご女性の活躍推進会議」を中心として機運醸成に努めておられることは承知していますが、まだまだ取組は道半ばではないでしょうか。

そこで、本県における女性の活躍を一層促進し、わが県で育んだ大切な女性の力をわが県で十分発揮できる社会を構築するため、これまでの取組を踏まえた現状をどのように認識し、今後どのような施策展開を図っていこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

3 持続可能な救急搬送体制の維持に向けた取組について

県の平成30年版消防防災年報によれば、平成29年中の県内の救急出場件数は前年比3.4%増の28万5,265件、救急搬送人員は同3.3%増の25万3,412人であり、平成21年以降増加の一途を辿っています。しかし、その内実は急病にかかる搬送人員の半数近くは軽症者であるなど、必ずしも搬送が必要でないケースも散見されます。

このような不要不急の救急出動を抑制し、救急医療にかかる不安解消を目的として、神戸市では24時間年中無休の「救急安心センターこうべ・短縮ダイヤル#7119」を平成29年10月に開設しました。1年目の対応件数は約9万3000件にのぼり、市内の救急医療機関への問い合わせが24%ほど減ったことから、救急現場の負担軽減に一定の効果を認めています。しかし、この対応件数の中の1割以上となる約1万1000件が神戸市単独の取り組と知らずに電話をされたと思われる県内他市町からの発信であり、兵庫県内においてもこのような救急相談に対する潜在的な需要は高いのではないでしょうか。

県単位で♯7119を実施しているのは、令和元年7月時点で大阪府、奈良県をはじめ10都府県に及び、また#7119以外の番号で同様の取組を実施している所を含めると14都府県で対応済みです。兵庫県でも、全県での取組を検討してはいかがでしょうか。

また、併せて現在多くの方が利用しているスマートフォンを使って病気やけがの際に医療機関を受診するタイミングや手段、利用できる医療機関等の情報を提供してくれる全国版救急受診アプリQ助の浸透も進めるなど、適切な救急業務を行う環境を整えていくことが必要であるのではないかと考えています。

地域の限られた資産である救急車、救急隊員の有効的な活用は、本来必要とされる緊急性の高い疾病者への適切な救護に直結します。これから独居高齢者はますます増加し、また、いわゆる看取り搬送といわれる施設からの要請も増えていると聞いています。増え続ける救急需要への対策が求められています。

そこで、県民の救急に対する不安を解消するとともに救急業務への県民の理解を深め、持続可能な救急搬送体制を維持するため、#7119の全県化検討など現場の負担軽減につなげるための県の積極的な取り組みを期待したいと思いますが、当局のご所見をお伺いします。

4 放課後児童クラブの質の確保について

来月から幼児教育・保育の無償化が始まります。本政策がもたらすメリットデメリットは様々議論されていますが、無償化によって保育所の利用希望が増えることは確実視されており、定員に余裕がある地域ではこれまで働くことを躊躇していた女性が働くきっかけにもなるでしょう。その影響は必然的に放課後児童クラブへのニーズにも及ぶことが予想されます。

今年5月31日参議院本会議で可決成立した地方分権一括法では、放課後児童クラブ1ヶ所に対し常時2人以上配置、そのうち1人は放課後児童支援員の資格を持つ者とする全国一律であった職員配置基準が緩和され、来年度からは各市町が国基準を参酌し条例で定めるものとなりました。

職員配置が各自治体に委ねられることで、児童数が少ない地域、利用が少ない土曜日や夜間の開設が可能になる一方、児童を一人で預かる責任の重さから、なり手不足に拍車がかかるのではないかとの指摘もされています。現に、保護者や現場の職員からは安易に人員削減されることへの危惧、質の低下への懸念の声が上がっています。

県はこれまで定員、質の確保策として放課後こども教室との連携や長期休暇中の支援加算、開所時間延長への人件費補助など体制の充実を図ってきましたが、残念ながら実績が伴っていません。問題の根底には慢性的な人材不足があります。低い処遇、多様化するニーズと大きな責任、時期によってまちまちな勤務体系などを理由に人材確保、定着は容易ではありません。

例えば、職員を学校や児童クラブを開設する保育園などと兼務にしてフルタイム雇用にすることや、保育士、小学校教諭を目指す学生とのマッチング、地域ボランティアの活用など、その解決策を模索すべきではないでしょうか。

また、職員配置基準が緩和されるからには、質の担保が欠かせません。現在、兵庫県にある1,013クラブのうち第三者評価を受けている児童クラブは400と伺っています。各市町に運営を委ねた以上、国、県はせめて評価事業に取り組むべきであると考えます。学校外の教育機能の低下が危惧されている中で、放課後児童クラブは保護者にも児童にも無くてはならない大切な存在です。

そこで、国の基準緩和を受けた県下市町の受け止め、対応状況と人材、質の確保への支援、取組みについて、ご所見をお伺いします。

5 就職氷河期世代への支援のあり方について

政府はいわゆるロスジェネ・失われた世代の中心層として、35~44歳の1,689万人(平成30年)を位置づけ、本年6月に「就職氷河期世代支援プログラム」を閣議決定し、この程、厚労省から伴走支援型の就職相談体制の構築やリカレント教育の充実、採用企業側の受け入れ機会の増加につながる環境整備、また自立支援に向けたアウトリーチの展開など、具体の支援プログラムが示されたところです。

私もまさに北海道拓殖銀行や山一證券など金融機関の破綻が相次いだ平成9年に就職活動した貧乏くじ世代とも言われるロスジェネ世代であり、日本経済の景気低迷が原因ではあるものの何ら対策がなされず新卒一括採用、終身雇用という日本型雇用維持のもとに新卒採用がぐっと絞られるという、ある意味政策的に作られた世代の雇用に対する現在にも続く辛さは、身にしみて感じているところです。

就職氷河期といわれた時代、少なくない学生が新卒時に非正規雇用への従事を余儀なくされ、実態として上の世代の雇用を守るための調整弁として使われました。そして、現在もその苦境は続いており、社会保障などが十分手当されないまま雇用流動化の時代に突入した今、ワーキングプアに陥りやすく、また正社員として働いている場合でも、ここ5年で平均月給が低下している正社員は20歳から59歳の全世代の中で40代のみとなっています。今年8月に宝塚市が就職氷河期世代を対象に実施した正規職員の募集の結果を見ても倍率が約600倍に達するなど、その競争率の高さからも未だにこの世代の苦境が続いていることがわかります。

さて、この世代をどう支援するか。兵庫県内では今年9月に全国に先駆けて兵庫労働局が県下4拠点にキャリアチャレンジ応援コーナーという専用の相談窓口をハローワークに開設し、支援に乗り出しました。県内対象者は約1万人としていますが、就職相談や教育訓練をする余裕もなく、その日暮らしで精一杯であったり、不安定雇用又は無職の子に無職の親の7040問題や、長期引きこもり、ミッシングワーカーなどそれぞれに積年の事情を抱え、短期間の伴走で就労につなぐことが困難なケースも多いのではないでしょうか。

今回の国のプログラムでは、3年で30万人を正社員にすることを目標に掲げ、人材不足分野へのマッチングなども項目に掲げられていますが、その側面が度を過ぎれば、それこそまたこの世代への政策的な押し付けになります。ブーム的な取り組みで人材ビジネスや企業へのばらまきに終わることがないように、この世代の個々の希望に沿い、まずは就労につなげるきめ細かな伴走支援が求められます。

そこで、県の就職氷河期世代に対する認識と、今回の国の支援を受けて、県として今後どのように対策を進めていくのか、当局のご所見をお伺いします。

6 移動手段確保対策について

時代の変容とともに公共交通のあり方が問われています。モータリゼーションの進展や人口減少、高齢化とともに通勤通学の大量輸送需要も減少し、民間事業者に全面的に委ねていた公共交通が各地域で限界を迎え、これまでも様々な議論、試みがなされてきました。しかし、1人で移動しづらい人の割合や買い物困難者の割合は年々増加し、平成27年における兵庫県内での1人で移動しづらい人は65歳以上で約28万人、同じく買い物困難者は65歳以上で約37万人と推計されるなど、県内でも多くの高齢者が困っている実態が確認されます。

平成30年度の国土交通白書によると将来的な不安要素として、子育てや介護、災害対策などの項目が並ぶ中、群を抜いているのが「公共交通が減り自動車がないと生活できない」ことであり、地方に行くほどその傾向は顕著であります。私の地元、加古川市の調査結果も同様の傾向を示し、鉄道沿線から離れた北部地域の交通問題は特に大きな課題になっています。

市や地域主導でコミュニティバス等を走らせ対策を講じてはいますが、深刻なドライバー不足の問題などもあり、根本的な課題解決は難しい状況です。市が実施した市民意識調査では転居したい理由に交通が不便であることがあげられるなど、人口流出、人口減少の要因ともなっており、加古川市という、県内でも比較的地理的条件の良い地域でもこのような状況であることに、県下全域を考えた場合これは非常に深刻な問題ではないでしょうか。

県では平成25年3月にひょうご公共交通10カ年計画を策定していますが、近年の自動運転技術の向上やMaaSなどのICTを活用したモビリティサービスはまさに日進月歩でダイナミックに進展しており、計画策定時の前提条件、想定、展望などが現状に即した実効性あるものかといえば疑問を感じます。

環境の変化に対応していくためには国に必要な規制緩和を求め、その緩和された制度を的確に活用することが必要であり、また進化する新しい交通サービス、新技術を活用して地域の諸課題解決に繋げていく必要があります。その最適化を考えると現在公共交通を一義的に担っている市町の範囲を超えた広域的な取組も期待されます。ぜひ市町とともに県民の最も深刻な不安の一つである移動手段の確保に取り組んで頂きたいと考えています。

加えて、公共交通は、移動手段はもとより環境配慮、健康維持、地域活性化など多面的な機能をもつ社会インフラだという意識を今一度持つべきではないでしょうか。事業者単体での採算性に依る公共交通ではなく、道路行政とのイコールフッティングという考え方からも、行政のより積極的な関与を期待したいと思います。

そこで、地域の公共交通の維持に対する県の姿勢、取り組みについて、当局のご所見をお伺いします。

7 小・中学校における教育課程編成の見直しについて

小・中学校における教育課程は、学校や地域の実情に応じて編成するものであり、学校での総授業時数は、各教科等の指導に充てる時間と学校行事等に用いる時間を合わせた時間と聞いています。

しかし、今春、明石市の中学校において平成29年度は13校中12校、平成30年度は13校中8校が文科省の定める各教科等の指導に充てるべき1,015時間を確保できなかったことが判明し、不足時間は、最も大きかった学校では年間76時間にのぼっていました。この原因として、教科毎に定めている授業時数を学校行事に充てたことにより、本来指導すべき授業時数の不足が生じたと聞いています。

実際に教員や生徒など現場の声は、従来通り野外活動に向けた指導の時間や体育大会の練習時間を多くとったり、家庭訪問等の行事を行えば、限られた日数の中で、各教科等の指導と学校行事を合わせて行うことが難しい状況があると聞きます。

特に、今年は10連休になったゴールデンウィークを始め、祝日やハッピーマンデーの影響に加え、警報による休校やインフルエンザなどでの休校も心配です。現場では対応案として、定期試験を一日にまとめたり、試験の後に授業をしたり、帯でカリキュラム編成をしたり、長期休暇を短縮したりと努力されています。

また、令和の時代にスタートする新学習指導要領に新たに示されたカリキュラム・マネジメントでは、児童生徒や学校、地域の実態を適切に把握し、教育内容や時間の配分、その実施状況に基づく見直しなどを通して、教育活動の質を向上させ、学習効果を高めることが求められています。

そのことからも、スクラップ無しのビルドアンドビルドとなっている現状の教育課程の組み方の見直しや工夫が必要ではないでしょうか。例えば、全国に誇るトライやる・ウィークは、毎年3月に開催している推進協議会においても5日間を前提として議論されていますが、事業の趣旨にてらして、実施期間や時期等について、今の時代の状況をふまえながら考えていくことが大切だと思います。

そこで、教育活動の質を向上させ、学習効果を高める教育課程編成の見直しに関する県下の取組と、県教委として新しい時代に求められる教育課程編成の推進にどのように取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

8 交通安全施設の適切な維持管理について

将来的に少子高齢化による人口減少が急速に進み、社会構造が変化する中で、公共インフラの整備の在り方について見直しが必要とさている中、警察が維持・管理している交通安全施設についてもその例外ではありません。

現在、県内には7,231基の信号制御機、約12,000本の大型標識柱が整備されていますが、これら交通安全施設については、本県の厳しい財政状況そのままに、更新基準年数を超過した交通安全施設が多数存在しています。中でも信号制御機にあっては、平成30年度末の老朽化率が38.0%と全国ワースト1位であり、非常に厳しい状況となっています。

こうした交通安全施設の老朽化の現状を踏まえ、県警察では、平成29年度に交通安全施設の維持管理・更新等を着実に推進するための中長期的な計画「交通安全施設管理計画」を策定し、同年度から3か年、別枠予算として計上された5億円を活用し、この老朽化対策に取り組んで来られましたが、その解消には相当な期間を要するものと聞いています。

このような状況の中、老朽化対策を更に推進するためには施設の計画的な更新だけではなく、必要性の低下した信号機や道路標識の撤去を進め維持すべき数そのものを減らす取組が必要不可欠であると考えます。

県警察では、全国で公共インフラの老朽化が社会問題化した頃から、信号機等の撤去にも積極的に取り組まれており、昨年度は新設信号機11基に対し、撤去信号機16基で、総数としては5基減少していますが、7千基を超える信号機のことを考えると、もう少し加速的に進めなければならないのではないでしょうか。

一度設置された信号機を撤去することは地元住民の理解を得るなどのハードルが高いことも容易に想像がつきますが、倒壊の危険性回避や無駄な信号待ち時間の解消などの利点も訴えるなど、地道に取り組むことが重要です。

道路の利用状況も変わる中で、将来にわたって、必要な場所に信号機をはじめとした交通安全施設を設置していくためにも必要性の低下した交通安全施設は撤去していくという観点を県民に広く理解してもらうべきであると考えます。

そこで、時代の変化を見据えた信号機等交通安全施設の整備についてどのように取り組んでいるのか、ご所見をお伺いします。

迎山 志保

(選挙区:加古川市)

一般質問

(北上 あきひと 議員)[発言方式:一括]

1 児童虐待防止について
(1)助産師等による産前・出産・産後の一貫した寄り添いケアについて
(2)子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置について
2 LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立について
(1) LGBTなどセクシュアルマイノリティへの理解の推進について
(2)当事者に対応する「職員対応ガイドライン」の策定について
(3)社会生活上の制約による苦痛の解消について
3 ロシア連邦ハバロフスク地方との今後の友好交流について
4 道路の維持管理について

質問全文

第345回9月定例会 一般質問要旨

日 程   2019年9月30日(月)

議員名   北上あきひと 議員

質問方式  一括

1 児童虐待防止について

最初の質問は、「児童虐待防止について」であります。

昨年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、速報値によりますと前年度比2万6072件増の15万9850件で過去最多を更新しました。対策の拡充が益々求められていると認識するものです。そこで、児童虐待を防止するために以下2点伺うこととします。

(1)助産師等による産前・出産・産後の一貫した寄り添いケアについて

1点目は「助産師等による、産前・出産・産後の一貫した寄り添いケアについて」であります。

地域社会の変容や核家族化、情報化の中で、「今ほど孤独で不安な子育てを強いられる時代はない」と言われ、孤独や不安が産後うつや児童虐待の一因であると指摘されています。

ニュージーランドやドイツ、カナダ等では、助産師等が「かかりつけ専門家」として、妊娠初期から出産、産後にかけて一貫して親と子に寄り添い支援を提供する仕組みが制度化されているところです。日本でもフィンランドのネウボラを参考にし「子育て世代包括支援センター」が全国展開されていますが、より一貫性のある取組が求められると考えます。

また、世界保健機構は、ポジティブな出産体験を推奨しています。出産時に「母子が命を落とさないようにするだけではなく、母子が強く成長し健康に生きるための潜在能力を発揮させること」を目指すようになったのです。ポジティブな出産体験とは、女性自身の個人的・社会文化的信念や期待を満たす体験であり、女性自身が出産に関する意思決定に参加し達成感やコントロール感を得ることであり、安全な環境で技術的に優れ思いやりのあるスタッフから臨床的・心理的な支援を継続的に受け出産することを含むと、世界保健機構は指摘しています。全人的で人権を重視したポジティブな出産体験によって、穏やかで逞しく肯定的な育児に繋がることが期待されるところです。

兵庫県保健医療計画第4部第4章周産期医療「助産師の資質向上と活用促進」の項には、「産科医との連携のもと、助産師がより専門性を発揮するとともに、妊産婦の多様なニーズに応えるため、専門的かつ質の高い助産師の確保及び資質の向上を図るとともに、助産師が正常産を担う院内助産、助産師外来の設置を促進する」と記されています。

助産師等によって、産前・出産・産後にかけて一貫して親と子を支えることは、児童虐待を防止することに有効であると考えます。県内市町において、妊娠初期から出産、産後にかけて一貫して同じ助産師のケアを受けられる「マイ助産師制度」のモデル実施をする等、助産師等による「産前・出産・産後の一貫した寄り添いケア」実現に向けた研究を進める必要があると考えますが、見解をお伺いします。

(2)子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置について

2点目は「子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置について」であります。

2016年3月10日付社会保障審議会「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告」、4「子どもの権利擁護に関する仕組み」において、「自分から声をあげられない子どもの権利が確かに保障されているかを監視するため、第三者性を有する機関の設置が求められ」ており、「当座、現存する都道府県児童福祉審議会を活用し、子どもの権利擁護」を図るとされました。また同年6月に成立した「改正児童福祉法」において、子どもの意見表明権と子どもの最善の利益の原則が盛り込まれ、その付帯決議(参議院厚生労働委員会)で「自分から声を上げられない子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討すること」とされています。

本年1月、千葉県野田市で「ひみつはまもりますから、しょうじきにかいてください」と促されたアンケートに、「お父さんにぼう力を受けています」、「先生、どうにかなりませんか」と訴えた小4女児の命は、残念ながら救われることはありませんでした。

虐待や体罰は、本来ならば最も信頼できるはずの大人から受ける人権侵害です。また、教育委員会や児童相談所が所謂「大人の都合」によって「子どもの最善の利益」を見失うことは皆無とは言えない現状です。施設や里親に養育を委託する子どもたちはもちろんのこと、すべての子どもが自ら意見を表明する主体として尊重される制度、子どもの最善の利益にのみ関心を払う第三者機関の設置が求められています。

そこで、社会保障審議会報告の提案にあるように、本県においても「社会福祉審議会児童福祉専門分科会」の活用を含め、子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置に向け、前向きに研究を進めるべきだと考えますが、如何でしょうか。

2 LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立について

2つ目の質問は「LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立について」であります。

心と体の性が一致しない性同一性障害や同性愛などのセクシュアルマイノリティーとされる人は、さまざまな調査から人口の約5%~8%と言われます。しかし、本人が告白しない限り、その姿は見えづらく、これまで正しい情報が伝わらず、制度や政策の対応は十分ではありませんでした。

2015年4月に文科省から、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の文書が全国の教育委員会に通知され、性同一性障がいをはじめとするセクシュアルマイノリティーの児童生徒への対応が求められました。また全国の自治体では、同性カップルへのパートナーシップ証明書発行や公営住宅入居要件の緩和など、さまざまに前向きな取組が始まっています。

県民一人一人の多様性を認め合い、誰もが人間として尊重され、自己肯定できる社会を築くために必要な手だてを講じていかなくてはならないと考えるものです。

そこで、以下3点伺うこととします。

(1)LGBTなどセクシュアルマイノリティへの理解の推進について

1点目は、「LGBTなどセクシュアルマイノリティへの理解の推進について」であります。

2012年9月定例会における我が会派の前田ともき議員の「性的マイノリティーへの理解推進について」の質問に対し、当時の健康福祉部長は「根強く残ります差別、偏見を解消いたしますために」、「継続的な人権啓発に努め必要な対策を講じてまいりたい」とご答弁されました。さらに、2015年6月定例会における前田議員の「性的マイノリティへの理解促進について」の質問に対し、知事は「性的マイノリティの方々を含む、あらゆる人権が尊重される社会の実現を図る」とご答弁されました。それから4年以上経過しましたが、人権啓発の現状と成果、また今後の課題を明らかにしてください。

(2)当事者に対応する「職員対応ガイドライン」の策定について

2点目は「当事者に対応する「職員対応ガイドライン」の策定について」であります。

2015年8月、一橋大学法科大学院生の男性が、同性愛者だと同級生に暴露されたことをきっかけに大学内の建物から転落死し、遺族が同級生と大学を裁判に訴えたことで、公にしていない性的指向を本人の同意なしに暴露した同級生の「アウティング」や、大学の対応の在り方などについて、社会的な議論が起こりました。

ある新聞記事によりますと、専門家は「性的少数者への差別や偏見が根強く存在する中、アウティングは当事者の生活を破壊しかねない行為だ。行政が率先して対応する必要がある」と指摘し、都道府県や政令市が危機感をもって対応を整備するよう求めています。

本年2月、三重県は「多様な性のあり方を知り、行動するための職員ガイドライン~LGBTをはじめ多様な性的指向・性自認について理解を深め、行動する~」を策定しました。「職員が多様な性的指向・性自認に関してより理解を深め、適切に行動していくため、また、職員自身がLGBT等の当事者である場合においても安心して働ける職場としていくため、職員や職場がどのような姿勢で、どう行動すべきかについての基本的な考え方をまとめたもの」であります。ガイドラインには、カミングアウトや相談は真摯に受け止める、多様な性のあり方に配慮した言動をするなど、多様な性のあり方について知って行動するための「六か条」が記されています。三重県の他、東京都、大阪府、熊本県、さいたま市、千葉市、大阪市、京都市などでも、職員や教職員を対象にしたLGBT当事者に対する対応指針を策定しており、今後更に多くの自治体や民間企業でも同様の取組が広がることを願うところです。

先程の新聞記事で、共同通信社が今年4月から6月に全ての都道府県と政令市に対して行った調査によりますと、「アウテイング行為」の禁止を定める職員向けのマニュアルなどを作成している自治体は1割にとどまり、残念ながら「兵庫県」は策定していません。

そこで、本県においても、LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立を目指す一環として「職員対応ガイドライン」の策定を検討するべきだと考えますが、見解をお伺いします。

(3)社会生活上の制約による苦痛の解消について

3点目は「社会生活上の制約による苦痛の解消について」であります。

LGBTなどセクシュアルマイノリティの方々は、社会生活上の制約による苦痛が多くあると認識します。同性のカップルであれば、賃貸住宅への入居を拒まれたり、また病院での手術同意書にサインする権利者になれないなどです。

茨城県では、本年7月より同性同士など性的少数者のカップルに証明書類を発行する「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。同様の制度を都道府県で導入するのは初めてとのこと。この制度を利用すれば、県営住宅への入居申請の受付や、県立病院などでの面会・手術同意などで家族同等の扱いが認められます。

水戸市は、市営住宅への入居申請を8月1日から認めることとしました。市によりますと、市営住宅の入居は親族以外に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」と規定されており、県の同性パートナーシップ宣誓制度で受領証を交付されたカップルにも同様に対応することとしています。

また笠間市も、市営住宅の入居申請や市立病院での手術同意について8月以降、市内13ヵ所計353戸の市営住宅と市立病院を対象に、県の施設と同様の対応を取ることとしました。

そもそも大井川茨城県知事がこの制度の導入を表明した際には、一部に「時期尚早」として慎重な対応を求める声が根強くありましたが、知事の強い説得で導入に漕ぎつけました。同知事は、「スピード感をもって取り組まなければならないのは、この問題が基本的人権に関わるものだからだ」と導入方針を説明しています。

こうした知事の英断により、県内市町村への理解が進み、宣誓制度に基づく支援策を実施する自治体の動きが加速し始めているのです。

同様の証明書の発行は、県内外の20を超える市町や特別区でも導入されているところです。これらに取り組んでいくことは、今や世界の潮流となっています。

本県においても、LGBTなどセクシュアルマイノリティの方々の、社会生活上の制約による苦痛を少しでも解消するために、是非とも知事のリーダーシップを発揮いただき前向きな取組を期待します。諸制度の新設や改善の研究を進め、広く県民の理解を得つつ、その実現を追求するべきだと考えますが、見解をお伺いします。

3 ロシア連邦ハバロフスク地方との今後の友好交流について

3つ目の質問は「ロシア連邦ハバロフスク地方との今後の友好交流について」であります。

兵庫県とハバロフスク地方は永年に渡り、友好訪問団や文化・経済・青少年交流団の相互派遣、北東アジア地域自治体連合の取組推進、コウノトリの保護増殖事業の相互支援・協力など、継続的かつ着実な交流を積み重ねてきました。本年は、ハバロフスク地方との友好提携50年の節目の年であります。

先月、県議会として長岡壮壽議長を団長とする日露友好訪問団を組織し、団員の一員として私もハバロフスクを訪問しました。現地では地方議会議員や首長、日本語学習者など多くの方々と交流をする機会を得、現地の人々の「兵庫県との友好交流を更に深めたい」との熱い思いを直に感じることができました。ハバロフスク地方におけるコウノトリの保護増殖や自然環境保全の取組などの調査では、その成果と共に、コウノトリ保護増殖事業の相互支援・協力を通じて、子どもたちを含む多くの人々の交流が図られていることを知りました。また井戸知事とセルゲイ・フルガル知事との共同声明調印式にも立ち会うことができました。両知事による共同声明には、これまでの友好交流事業を継続するとともに、こども病院間の相互支援など医療分野における新たな取組も記されました。関係者のご尽力によって、共同声明が実り多いものとなることを心から願うものです。

今回の訪問を通じ、僭越ながら私も一県会議員として、ハバロフスクとの友好交流の進展に努めたいと思うところであります。

2020年、21年は「日露地域交流年」であります。ハバロフスク地方とのこれまでの友好交流の蓄積を活かし、文化・経済・青少年など幅広い分野での事業展開によって、両県地方のより深い信頼と友好、北東アジアの未来志向の平和と繁栄に資することを期待するところです。

そこで、次の5年後を見据え、両国にとってより素晴らしい交流の節目を迎えられるよう県の決意と取組内容についてお伺いします。

4 道路の維持管理について

4つ目の質問は「道路の維持管理について」であります。

1956年8月、米国のラルフ・j・ワトキンス率いる調査団が日本の道路事情について「信じ難い程悪い。工業国にしてこれ程完全にその道路網を無視してきた国は日本の他にない」との報告をまとめています。この「ワトキンスレポート」を契機とし、日本は道路の「量的充足」に邁進してきました。この報告書から60年余を経た今日、道路整備は着実に進展しているものと認識します。もとより、名神湾岸連絡線をはじめとするミッシングリンク解消等の課題は未だ多く残っているものの、今日まで蓄積してきた道路資産の確実な維持修繕は、経済活動を活性化し日常生活を支えるうえでの新たな課題として顕在化しています。「量的充足」に加え「質的充足」が大きく求められる時代になったと言えます。

これら道路資産の維持管理について、本県では「ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画」を策定し、計画的かつ効率的な老朽化対策を推し進めており、これは「質的充足」の一環とも評価でき、その進展に期待するものです。その一方で、地域住民からは、沿道の雑草繁茂対策や植樹の剪定、車道のわだちやひび割れの修繕等、道路利用者の快適性や安全性の確保に繋がる身近な要望が多数寄せられています。

これらの要望に応えていくためには、もちろん必要な予算を確保していくことが重要ですが、例えば、多自然地域などもともと緑豊かな地域の道路に植樹されている街路樹を伐採・撤去するなど、これまで以上に大胆に、予算の選択と集中を推し進めていくことが求められるのではないでしょうか。

道路は経済活動を活性化し、安全で快適な日常生活を支えるうえで極めて重要な社会基盤であり、計画的で効果的な維持管理が必要です。とりわけ除草や街路樹、舗装といった日常的な維持管理について、今後どのように取り組まれて行かれるのか、ご所見をお伺いします。

北上 あきひと

(選挙区:川西市・川辺郡)

(石井 健一郞 議員)[発言方式:分割]

1 ひょうごe-県民制度の今後の取組について
2 非常勤職員及び高齢層職員が活躍できる環境整備について
3 外国人患者への対応について
4 県内宿泊施設のバリアフリー化について
5 神戸空港における新たな路線拡大や航空会社の就航に向けた取組について
6 通学路等の対策について

質問全文

第345回 定例県議会 一般質問

質 問 日:令和元年10月1日(火)

質 問 者:石井 健一郞 議員

質問方式:分割

1 ひょうごe-県民制度の今後の取組について

関係人口は2016年頃から始まった考え方であり、首都圏など都市部に住む地域外の人材であって、観光に来た短期的・一時的な交流人口でもなく、移住した長期的な定住人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人のことであります。

国でも2018年から関係人口創出事業を始めモデル事業を選定し、先進的な取組を全国に普及させることを目標として関係人口の取組を推進しています。既に多くの道府県で関係人口に関する取組が実施されている中、本県においては2019年1月から「ひょうごe-県民制度」を開始しました。

関係人口を増やす取組では、関係人口の人たちが地域住民と交流できる交流施設の整備が不可欠であると言われています。また、地域において関係人口の人が関われる、関与・貢献出来る余地があること、関係人口の人の思いと地域ニーズをマッチングする機能や組織の整備の必要性等も挙げられています。

関係人口の取組については、本格的な人口減少化時代を迎えたにも関わらず、これまで国内の各自治体がこぞって移住・定住の施策を推進してきた結果、疲弊感と徒労感が残るだけの争いに陥りつつある中、減っていく人口を各自治体でシェアする、また人材の共有をすることはこれから必要な取組の一つと考えています。

しかし、関係人口の取組促進にあたっては関係人口の客観的な数え方が確立されておらず、自治体としての施策や事業をどのように企画・立案するのか。また、事業成果をどのように評価するのか等、関係人口の取組については課題も多いのではないでしょうか。

しかも、全国の自治体で似たような取組事例も多く、兵庫県として特徴的・魅力的な打ち出しをしていかなければ、移住・定住の取組と同じような状況に陥る可能性が高いと考えています。

そこで、この関係人口の取組について、実際にひょうごe-県民制度に登録いただいた方をさらに兵庫県と結びつけるため、今後どのように取り組もうとされているのか、当局のご所見をお伺いします。

2 非常勤職員及び高齢層職員が活躍できる環境整備について

厳しい地方財政の状況が続く中、多様化する行政需要に対応するため、地方公務員の臨時・非常勤職員の総数は、総務省の調査によれば、2016年4月現在で約64万人と、対2008年度比で約15万人増加しています。

現状において地方行政の重要な担い手となっている臨時・非常勤職員については、官製ワーキングプアとも言われる正規・非正規職員の待遇格差の改善等、適正な任用・勤務条件を確保するため、2017年に地方公務員法と地方自治法が改正され、会計年度任用職員制度が創設されることとなりました。2020年4月の施行に向け、本県においても今定例会に議案が提出されているところです。

この制度改正により、特別職は専門的な知識経験等に基づき助言、調査を行う者、臨時職員は欠員となった職員補充に厳格化し、大部分の非常勤職員は新たに制度化される会計年度任用職員に移行することとなります。

フルタイム、パートタイムとも期末手当を支給できるとのことでありますが、退職手当の支給がフルタイムに限定されているなど、不安定な身分は変わりありません。今回の改正は、人口減少と慢性的な人不足が続く中にあって、本県非常勤職員の処遇改善や継続的な人材確保に資するものとなるのでしょうか。

一方、年金支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられ、無年金期間が最大5年間まで拡大していくことから、雇用と年金の接続を推進するため、2016年以降、本県でもフルタイムの再任用職員の増加が目立っております。

加えて、2018年8月に人事院から国会と内閣に対して、国家公務員の定年を65歳まで段階的に延長を行うことや、人事の滞留を防ぐため、一定の年齢になれば役職をはずすこと、また、現在の定年退職者向けの再任用制度は定年延長に合わせて段階的に廃止することなどを求める意見書が提出され、現在政府において法案提出に向けた調整が行われていると聞いています。今後、地方自治体にも、その影響が波及されることが予想され、一層高齢層職員が活躍できる環境の整備が必要になると考えます。

そこで、知事は行革で3割減を実現した職員数を基本に人員配置を行うとされましたが、限られた人員の中で、増大・多様化する行政需要に対応していくためには、これまで以上に非常勤職員や、再任用職員等の高齢層職員の役割が重要になってくることから、非常勤職員の処遇改善や、高齢層職員のモチベーションの維持・向上に向けた取り組み方策について、当局のご所見をお伺いします。

3 外国人患者への対応について

国では平成28年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人にする目標を掲げ積極的に取組を進めています。その結果、着実に訪日外国人旅行者が増加しており、実際に昨年のインバウンドは3,000万人を越え過去最高を更新しました。また、今年4月からは人手不足の建設業界や介護業界など14業種に外国人が就業できるよう、新しい在留資格である「特定技能」が新設されるなど、今後も日本での外国人の観光や就労は増え続けるものと考えられます。

本県においても、インバウンドについては大阪や京都への流れを兵庫県へ持ってくる取組をさらに進める必要はありますが、訪日外国人旅行者数は平成27年から連続して100万人を越えるなど堅調に推移しており、今後も増加が期待できるのではないでしょうか。

また、就労についても、県では外国人技能実習制度による外国人介護人材の確保を進めていることを考えると、今後の外国人のインバウンドや就労は兵庫県でも都市部に限らず郡部でも増加していくことが想定されます。

このように、今後も本県における外国人の増加が想定されますが、一方で病気等への対応について十分に対応できる体制が整っているのでしょうか。

単に体調を崩されて病院にかかる場合は、通訳がいる病院の紹介だけで対応できるのかもしれませんが、先日の台風15号や17号をはじめ、昨年の北海道胆振東部地震など、近年自然災害が頻発しており、その発生状況や規模によっては、一度に多くの外国人患者への対応が必要になることも考えられます。自然災害は特殊な事例ではありますが、そういった対応について、人員が限られた現場の病院の対応に任せることには限界があります。

通訳や食事の問題、現在既に国内でも問題になっている未収金の問題等取り組むべき課題は多いですが、外国人の方も安心して兵庫県に来て下さいと呼びかけている以上、外国人患者も日本人患者と同じように対応していくことが基本であると思います。

外国人患者に対しては予期せぬ自然災害はもとより、インバウンド増加や県内医療圏の整備などには注力する一方で、県内の外国人が増えることにより当然起こるべきして起こる安全・安心面の課題に対して、問題認識が不足しているように感じるところであります。

そこで、今後益々増えるであろうと思われる外国人患者への対応について、県として積極的に取り組む責務があると思いますが、当局のご所見をお伺いします。

4 県内宿泊施設のバリアフリー化について

2020年に東京オリンピック・パラリンピックが、また2021年にワールドマスターズゲームズ2021関西の開催が予定され、多くの方がこの日本を訪れることになります。

特にワールドマスターズゲームズ2021関西では、おおむね30歳以上であれば誰でも参加が可能で、しかも障害の有無に関わらず、誰もが一緒にスポーツを楽しめるインクルーシブな大会を目指しており、高齢者や障害を持つ方など、多くの方がスポーツを通した交流に参加されることとなります。

また、このイベントを見に来られる方についても、海外から様々な方が訪れることが予想され、公共施設や公共交通機関では一定バリアフリー化が進んできたと感じられるものの、旅行の際に利用するホテル等の宿泊施設についてはまだまだ不十分ではないでしょうか。

国では障害者の方や今後の高齢化社会の進展を見据え、2006年に公共交通機関を対象とした交通バリアフリー法と、ホテルや大規模なビルを対象としたハートビル法を統合し、宿泊施設等の建築物のバリアフリー化を含む、バリアフリー法が施行されました。また、オリンピック・パラリンピック開催地の東京では、今年9月から全国で初めてとなるホテルの一般客室を規制する建築物バリアフリー条例が施行されました。

兵庫県においても、これら海外から来られる方々に、誰もが利用しやすいまちとして、兵庫県という選択肢を提供することを心がけていくべきではないかと思います。

また、この問題は当然インバウンドに限ったことではありません。国内の高齢者や障害を持つ方も旅行に行きたい、家族とも出かけたいしといった需要に応えられている場所は少なく、その対応は今後必要となってくるとともに、そういった需要に応えることを兵庫県の特色として打ち出すことも、今後の対応として大切であろうと考えています。

将来的には顧客満足度を高めるため、障害の内容や何がしたいかを事前に聞く中で、ニーズに合った宿泊先の紹介や、場合によっては付添人の斡旋派遣ということも考えられますが、まずは受け入れ対策の基本となるハード対策であるバリアフリー化が望まれます。

そこで、宿泊施設のバリアフリー化の取組を進めることによって、兵庫県に訪れて良かったと思って頂けることが、インバウンドもさることながら、これからの時代に向けた取組ではないかと考えますが、本県における宿泊施設のバリアフリー化をどのように進めていくのか、当局のご所見をお伺いします。

5 神戸空港における新たな路線拡大や航空会社の就航に向けた取組について

神戸空港は2006年2月に国内で97番目の空港として開港し、今年開港13周年を迎えました。開港当初はANA、JAL、スカイマークが就航し、開港2年目に利用者が約297万人を記録するなど順調な滑り出しを見せましたが、その後低迷した時期もありました。JALは当初7路線27便のうち6路線10便の発着があり、開港翌年の利用者数も全体の40%となっておりましたが、破綻後、神戸空港から撤退し現在に至っています。

しかしながら、近年は景気拡大等の影響から利用者が着実に増加してきており、昨年4月には3空港の一体運営を経て、2018年度の利用者は過去最多の約319万人を記録しています。

また、訪日外国人客の急増や格安航空会社の普及といった航空需要の変化を背景として、昨年12月に8年ぶりに関西3空港懇談会が開催され、各空港における規制緩和等が議論された結果、今年5月の関西3空港懇談会で神戸空港の発着回数の上限を従来の60回から80回に増やすことが決まったことを受けて、現在就航しているANA、スカイマーク、ソラシドエア、エア・ドゥの4社に加えて、10月27日からはフジドリームエアラインズが参入を決め、出雲、松本に新たに路線が開設されるなど、神戸空港の潜在的な需要を見込んだ動きも出てきております。

今後、神戸空港の活性化のためには、路線拡大や新たな航空会社の就航が必要です。例えば、日本のフラッグシップを担う航空会社の一つであるJALの再就航では、阪神・神戸間に奄美諸島の方が多く居住されることから、阪神・神戸間から奄美諸島等の離島への直行便も展開できる可能性があるのではないでしょうか。

そこで、今後、神戸空港の更なる規制緩和を進め、現在就航している航空会社のさらなる路線拡大はもとより、新たな航空会社による国内線の路線展開を進める必要があると考えますが、当局の所見を伺います。

6 通学路等の対策について

交通事故については、交通安全施設の整備充実や交通安全指導取締りの強化、交通安全教育の普及など様々な取組が行われており、本県においても平成28年6月に「第10次兵庫県交通安全計画」が策定され、交通事故ゼロを目指した取組が進められております。これらの取組により県内の交通死亡事故件数は近年減少傾向にあります。

しかしながら、車両が関係する痛ましい事故は未だなくなることはなく、歩行中・自転車乗車中の死者数の約半数が自宅から500m以内で事故に遭われており、身近な道路において死亡事故が発生しやすい傾向にあります。

平成24年4月、京都府亀岡市において発生した集団登校中の児童等の列に自動車が突入した事故をはじめ、同種の事故が続発したことを受けて、道路管理者、学校、警察等が連携し通学路等に対する合同点検を実施していますが、通学路において児童等が被害者になる交通事故は今もなお発生しており、未来ある子供たちの命を守るということに傾注していかなければなりません。

通学路対策としては、最高速度30キロの規制を実施するゾーン30の整備や可搬式オービスによる取り締まり、道路管理者への速度抑制の効果を上げるためのハンプや狭窄などの導入等の働きかけ、学校関係者等と連携した通学路見守り活動等が展開されているところでありますが、本年5月には滋賀県で保育園児ら16人が巻き込まれて死傷する交通事故が発生し、通学路だけでなく未就学児の集団移動経路についてもよりきめ細やかな対応が求められるところであります。

通学路ではこれまでの例からも、それぞれの場所で思いもかけない危険が潜んでおり、そうした危険箇所を把握している地元住民との情報共有を図ることにより事故防止に向け適切な対応をすることは大変重要な課題の一つです。

そこで、県警察として地元住民からの通学路等における危険箇所等の改善要望等をどの様に把握し、安全対策を行っているのかお伺いします。

石井 健一郞

(選挙区:神戸市灘区)

(小池 ひろのり 議員)[発言方式:一問一答]

1 がん検診受診率の向上について
2 体験型ツアーの誘客拡大による兵庫の発展について
3 県立夜間中学創設について
4 キャリア教育の必要性について

質問全文

第345回9月定例会 一般質問要旨

日 程  2019年10月2日(水)

議員名  小池ひろのり 議員

質問方式 一問一答

1 がん検診受診率の向上について

本県のがんによる死亡者数は、昭和53年に脳卒中を抜いて第1位となり、以後も高齢化の進行に伴って、増加の一途をたどっています。そして、今や二人に一人ががんに罹患する時代となりましたが、一般的に元気な人ほど、がんを他人事と思っている人が多いと思います。医者から「あなたは、がんです。放っておけば、余命〇カ月です」と告知されると、頭が真っ白になり、急に死の恐怖にかられるようになります。周りのがんで亡くなった人の顔が浮かび、現実身が帯びてきます。当事者にとっては、今でもがんは死と向き合う怖い病気と言えます。

しかし、近年のがん医学の急速な進歩と相まって、告知時に死を覚悟して絶望する病気から、がん教育の普及もあり、がんは長く身近に付き合う病気へと変化してきているのも事実です。

これまで、兵庫県は、がんを取り巻く環境の変化や時代のニーズに向けて様々な施策を、「がん対策推進計画」に基づき実施してきました。しかしながら肝心要のがん検診受診率はあまり改善されていない現実があり、より実効性のあるがん対策が求められています。このような県民の声を受け、私は、長年県独自の「がん対策推進条例」の制定を訴え続けました。そして、この要望がようやく実を結び本年4月にがん条例が制定され、大変嬉しく思っています。今後は、条例に基づいて、いかに実効性のある施策が行われるかにかかっていると言えます。

ここで、検診受診率について考えてみたいと思います。がんの予防対策として、まず県民自ら、喫煙習慣をはじめ生活習慣の改善に取り組み、がんに罹らないように努めるように啓発していくことが重要です。その上で、がんの早期発見には、がん検診受診率の向上が喫緊の課題と考えます。

更に、たとえがんに罹患したとしても早期に発見し、確実に治療に繋げること、すなわち症状などが出る前に定期的にきちんとがん検診を受けることが重要であると考えます。早期にがんを発見できれば、体への負担が少ない治療法を選択できる確率が高くなると共に、生存率が向上し、治療後の生活の質の向上にも繋がります。このことは、5年相対生存率が、進行してから発見された時の13.6%と比較して、早期に発見された場合が90.4%と、著しく良好であることからも明かです。

しかしながら、残念なことですが、本県における職域を含むがん検診受診率は極端に低い状態が続いています。胃・肺・大腸・乳・子宮頸がんの全てにおいて、全国都道府県の中で最低に近いレベルに位置しており、極めて憂慮すべき状況にあると言えます。これに対して、県では、国保特別交付金による市町支援や、大学生を対象とした啓発、そして、がん検診受診を促進する中小企業への助成等の取組をしていると言われますが、必ずしも顕著な成果を挙げているようには思えません。検診受診率の低さは大いに問題があると言わざるを得ません。

“お金がかかる”、“時間がない”等の理由で、がん検診を受診しない県民の方も多いと聞きますが、こうした意見に対しては、がん教育の推進が不可欠です。学生の頃に、科学的な根拠に基づいたがん検診の重要性を十分認識してもらい、自らチャンスを放棄してしまうことのないよう、がん教育の推進で一層の理解を得る取組が必要と考えます。

そこで、若い時からがん検診を受ける習慣を身に付けるような取組と共に、がん検診を受けやすい環境整備を一層図っていくことが、がん検診受診率の向上・死亡率の逓減に繋がるものと考えますが、県の所見とがん対策としての具体的な取組と意気込みについて伺います。

2 体験型ツアーの誘客拡大による兵庫の発展について

2018年、日本を訪れた外国人観光客は、3,000万人を超えました。観光客による消費額も4兆円を超え、経済効果は大きく、今や何処の自治体でも観光業に力を入れています。そのような状況下で、ラグビーワールドカップが9月20日に開幕し、神戸でも4試合が行われています。また、来年には東京オリンピック・パラリンピック、2021年にワールドマスターズゲームズ、2025年に大阪・関西万博などの国際的なイベントが目白押しです。

私は、これらのイベントを通じ、国内外からの観光客の大幅な増加が見込まれるこのチャンスを的確に捉え、兵庫の発展につなげるべきと考えます。

今年5月の関西3空港懇談会で、神戸空港について、当面1日の発着回数を60回から80回に拡大、運用時間を夜10時から11時まで延長することが決まりました。そして、早速8月からスカイマークが増便し、10月27日からの冬ダイヤではフジドリームエアラインズが新規就航に乗り出します。神戸空港の潜在需要が大きい事が示され、まだまだ発展する余地があると容易に推測出来ます。

今後、神戸空港の規制を更に緩和させ、アジアなどの近場の国際線の就航で更なる海外からの誘客促進を実現させて頂きたいと願っています。

しかし、単なる観光地への誘客の呼び込みでは、ますます大阪・京都・奈良に差をつけられます。私は、兵庫が海外からの観光客を呼び込むには、兵庫独特の体験型ツーリズムを展開すべきと考えます。ファムトリップなどで海外のツーリストの担当者に、体験型ツーリズムを味わってもらい、その感動を国で広めてもらい、リピーターにつなげていくことが必要だと思っています。

医療ツーリズムでも、先進的な医療サービスと観光を組み合わせた患者の長期の滞在に、家族を含む健康づくりまで幅広く連携した兵庫に似合った独自の施策や、ゴルフツーリズムに温泉とスポーツをからめ、アジアの富裕層に焦点を当てた体験プログラムの充実など、具体的な体験型ツーリズムの提唱を求めます。

最近では、神戸港に大型クルーズ船の入港が増えています。船のツアーデスクに兵庫の体験型ツアーを働きかけ、神戸市と協力して無料のシャトルバスで体験型ツアーに連れ出すことに努めるべきと考えます。

話は変わりますが、私は、1983年から20年間かけ、毎年夏に中国大陸全土サイクリングを続けました。テレビ、新聞などマスコミでも大きく取り上げられ、参加者募集の記事が新聞に掲載されると、すぐに定員に達しました。外国人が初めて行く地域も多く、受け入れキャパの関係で、晩年の頃はお断りするのに苦労をする程でした。

自ら資金を出し、暑い中、砂漠や不便なインフラが整っていない中国サイクリングでしたが、多くがしんどい旅に感謝をし、満足していました。延べ1,000人近くもの参加者の中には、ちょっと考えられないことですが、リピーターも多く、10回以上参加した人達もいます。サイクリングは、単なる観光ではなく、体験型の典型で、地域の人との触れ合いがあり、しんどいですが感動があり、充実感や達成感があります。一旦、サイクリングの醍醐味を味わうと止められません。

また、体験型で誘客に成功している北海道のニセコ町の例があります。ニセコ町はオーストラリアにスキーツアーの積極的な売り込みをしました。それが功を奏し、現在では、人口約5千人のニセコ町に、昨年度、21万7千人の外国人観光客が押し寄せています。体験型は、感動を味わった人たちがリピーターとなり、自分たちの言葉で醍醐味を語り、口コミで自然と輪が広がっていきます。定着すれば、後は宣伝しなくても、今はSNS等で拡散してくれます。

例えば兵庫の体験型ツアーによる誘客拡大に向け、ベテランサイクリストには、淡路島のトライアスロンやセンチュリーランを、初心者には乗り捨て自由のレンタル電動自転車などの活用も考えられます。そして、食文化を味わい、世界をリードするアニメに触れ、モノづくりや温泉・ゴルフを楽しむ、先端医療を活用した医療ツーリズムをからませた複合体験型をパックで売り出し、兵庫の魅力を連結させ、兵庫トレイルとして示すことでリピーターにつなげていくことが重要だと考えます。

そこで、兵庫のツーリズム戦略として、体験型ツアーの誘客に力を入れ、兵庫の発展に結びつけていくことを提案しますが、当局の所見をお伺いします。

3 県立夜間中学創設について

現在の夜間中学は、創設時の目的が大きく変貌しています。戦後の義務教育から漏れた人に加え、現在の義務教育に馴染めず、授業をほとんど受けず不登校のまま中学校を卒業した“形式卒業生”にとって、夜間中学が学び直す場となっています。更に最近では、国策として外国人労働者を招き入れた結果、その労働者と子弟が生きていくための力をつけるために、日本語を学ぶ場として活躍しだしています。

一方、一昨年、不登校生は全国で19万3千人。また義務教育未修了者、いわゆる形式卒業生は、文科省の発表で少なくても12万8千人以上と言われています。この中には、中学校に入学していない生徒、無戸籍の人、DV等で逃げている人、外国人とその子弟等が加わっていません。このような人たちの中で、学齢期が過ぎ、生活が落ち着き、もう一度、義務教育を受け直し、『生きる力を付けたい』と言う入学希望既卒生が夜間中学への入学を希望しています。

しかし、行政の義務教育の未就学者調査では、なかなか実態が掴めにくいのも事実です。なぜなら、よほど該当者に寄り添った調査でない限り、該当者が「小学校もろくに出ていません」という声は挙げにくいものです。

私は、東京・名古屋・神戸の夜間中学を訪問し、10歳~80歳代の生徒の声を聞いて来ました。実際の生の声として『「学校へ行っていないことがバレるのが、イヤやった」でも、「本当は学び直したい」とも思いました。』

そして『「買物時に、おつりが計算出来るようになりたい」「自分の名前ぐらい漢字で書けるようになりたい」「チラシが読めるようになりたい」との思いから、迷いに迷った挙句、夜間中学の門戸をたたきました』と切実な声を聴きました。

岡山県で一昨年、自主夜間中学が開校されました。何万枚ものチラシが撒かれ、公民館等に掲示されました。それでも、開校時に集まった生徒は、わずか3人でした。その後、ボランティアの教師などの懸命な努力で、噂が口コミで広がり、翌年3月には生徒は40人になったそうです。読めないチラシをいくら配っても、対象者には届かないと言うことでしょうか。しかし、隠れた夜間中学入学希望者は、どこの地域にもいるという証だと思います。

兵庫県内でも、不登校等で義務教育の未就学生徒として、毎年約500人が形式卒業生となって増え続けています。そこで、いじめ・虐待など様々な原因で義務教育を十分受けられなかった人にとって、夜間中学は学び直す場として、大きな役割を果たしているのです。

平成28年に施行された“教育機会確保法”に「義務教育の未就学者で、既卒入学希望者であっても、自治体は学び直す場を提供する義務がある」と明記されています。そして、昨今、この法律に基づき、文部科学省も本年度の予算要求を3倍に増額し、全国の夜間中学創設を積極的に支援しています。

とは言うものの、現実は厳しく、夜間中学に通いたいと思っても、居住地や職場の近くにない場合には難しいものです。兵庫県内には、神戸に2校、尼崎に1校あり、他府県に比べれば良い方だとの声も聞かれますが、該当者にとっては、通える範囲に学校が無ければ、無いのと同じです。兵庫県の北中部・西部地区には、該当者がいないのではなく、学び直したくても通う学校がないのです。不登校の未就学生は、どこの地区にも必ずいるはずです。行政の調査に対し、『該当者なし』は弱者に目を向けず、切り捨て政策の何物でもないと思います。

該当者自ら声を挙げることは、難しいことですが、寄り添った調査をすれば、必ず『生きる力をつけたい』と言う声は聞こえてきます。

また、不登校生に夜間中学で前向きな姿勢を支援することは、現在、内閣府発表で、15~64歳の115万人以上いると言われるひきこもりを、少しでも減らすための有効な施策にもなり得ると確信します。こうした引きこもりや不登校になった若者が、世代を乗り越え人生の大先輩と同じ教室で共に学ぶことで、お互いが大変良い影響を受けているという報告があります。そして、これが社会での真の意味での共生につながると思っています。夜間中学に対する新しい存在意義を確認し、夜間中学を県として強力に支援して頂きたいと思います。

義務教育だから市町に任すと言う声を聞いたことがありますが、兵庫県として義務教育から漏れた多くの人たちが、どこの地区にもいるという事を認識すべきだと思います。また、対象者が点在すればするほど広域から通える県立夜間中学が必要となります。

このような観点から西播地区に広域から通える県立夜間中学の創設を求めるものですが、教育委員会の見解をお伺います。

4 キャリア教育の必要性について

私は、長年の高校・大学の教師の経験を振り返ってみると、これまでの学校現場では、大学受験を中心に据えた知識を習得するための教育がなされてきたと言っても過言ではないと思います。生徒は、大学に入学することを最大の目的として、大学受験に合格することで目的達成とする生徒も多く見受けられます。

しかし、私は、中学・高校生の段階で、もっと自分の将来の仕事や進むべき道を考え、夢・目標に向っての努力をする中で、真の生きる力をつけるべきと考えています。

そのような観点から、私は、教え育むキャリア教育に大きな関心を抱くようになりました。これまで学校現場では、キャリア教育を狭い意味で就職指導として活用していました。しかし、今日では、キャリア教育で生徒の個性を伸ばし、将来の社会での生き方まで結び付け、今、何をすべきかを考えさせる教育として、大変注目が寄せられています。

そこで、私はキャリア教育を推進している姫路市立白鷺小中学校と、全国的にも有名なキャリア教育のモデル校の荒川区立第3中学校を視察しました。

荒川区立第3中学では、全教科にキャリア教育を結び付けており、生徒たちは、これまでの“やらされる勉強”から自立し、将来、社会に出て活躍するために、獲得した知識をいかに活用するのか学んでいました。そして、結論の暗記ではなく、過程での主体的・対話的な深い学びを通じ、自己表現と課題解決に向けた能力を養うことに重点が置かれていました。

また、生徒自身の興味・適正に合った進路を模索し、自主的に学び、生徒の能力を伸ばし、社会で生きる力を育むためのキャリア教育に力が注がれていました。結果、これまでの“やらされていた勉強”から、自主的な課題に沿った勉強に取組むことにより、学力的にも大きな成果を挙げていることにも興味を持ちました。

キャリア教育は、これまでの知識偏重の詰込教育を一新し、真の教え育む教育に繋がるような気がします。そのためにも、これからの兵庫のキャリア教育を更に充実させるべきと考えます。

将来は、こんな程度だろうと安易な目標を設定し、キャリアパスを計算するのではなく、キャリア教育で、夢と誇りをもって将来の自分のキャリアを切り拓き、意欲を高める努力をするように導くことが重要です。

大学試験も2021年度入試から大きく変わります。今までの暗記詰込的な知識では解けず、思考力・判断力・表現力を問うような出題内容になります。そのような入試改革に対応するために、今までの詰込教育から大きく転換し、自分の考えを整理し、他人との比較、自他の違いを認め合い、共に考え深めるキャリア教育の実践を推進し、真の生きる力を身に付けることが必要だと考えます。

兵庫県の義務教育では、キャリア教育がキャリアノートを中心に進めておられますが、そのノートは高校でどのように活用されているのか?つまり、キャリア教育の中高の連携と、高校でのキャリア教育が、どのように推進されているのかをお伺いします。

小池 ひろのり

(選挙区:神戸市中央区)