令和2年 令和元年度予算特別委員会(総括審査)
日 時:令和2年3月17日(火)
質問者:迎山 志保 委員
1 新型コロナウイルス対策について
(1)県下におけるマスクの確保状況について
兵庫県下でのマスク不足の状況は改善の様子が見られず、県民の感染予防への不安は変わっていない。そんな中でも、優先されるべき医療機関で使う医療用のマスクの確保については、12日現在の状況として県下約4割の病院で1か月以内に枯渇すること、また11 県立病院についても3月末には備蓄が枯渇するとして、使用枚数の抑制や入手ルートを模索されていることが報告された。
また、同時に介護施設など高齢者が利用する社会福祉施設等でのマスク不足も日に日に深刻な状況になっている。
3月11 日の神戸新聞では、県が2月下旬から3月上旬に介護施設・事業所1,318 か所のマスクの備蓄について実態調査した結果、特に訪問介護現場では「4週間未満でなくなる」が半数以上、「1週間未満」が15%に及んでいると報道されている。
部局別審査時に、わが会派から県が備蓄しているマスクや消毒液を早急に困っている社会福祉施設等に提供すべきだと指摘したが、その際には「国の動向も見極めながら必要な対応を行う」と協議していることを明かしたが、具体的な動きはまだない。
この報道では、県の担当者の「緊急の要請はない。施設で調達しているのではいか」との対応も記されているが、こうした調査を実施してから既に10日程度経過しており、現場はより深刻な状況になっていると思われる。東京都では備蓄していたマスクのほか、企業や各種団体から寄贈を受けたマスクも配布してきたが、さらに追加対策としてマスクを約 350 万枚調達し、医療機関や社会福祉施設等に提供すると12 日公表した。
今月末には枯渇する医療用マスクの確保の見通しと、介護や保育現場など優先されるべき配布対象者へのマスクの供給の現状について伺うとともに、市町でも適宜可能な限りの配布など行っているが、本県でも各方面に寄贈を呼びかけ、備蓄マスクの配布など、マスクが必要な方に提供すべきではないかと考えるが、ご所見をお伺いする。
(2)感染症病床の追加確保について
現在、県内の感染症指定医療機関は8圏域9医療機関54病床であるが、既に発症者数はこの数を超えている。県は当初追加で100床の増床をはかることとしていたが、12日の対策本部の発表ではさらに100床、計254床の確保を目指すとされている。
このように、感染者が急激に増加した場合に、指定医療機関の専用病床だけでは足りない場合も想定しておかなければならない。厚生労働省が公表した推計式によると、兵庫県の流行ピーク時の入院患者数は9,820 人、うち重症床患者数は330 人と推定される。
こうした数字が正確かどうかは別として最悪の想定をしておくことも必要である。帰国者・接触者外来医療機関31病院をはじめ感染症患者を追加で受け入れる医療機関の負担は極めて重いことのほか、風評被害による患者数の減少も予想される。
大阪府の吉村知事は、「軽症者や無症状者も感染症の専門病院に入院していたら、体制がもたなくなるので選別が重要だ」と述べ、今後は患者の症状に応じて、入院先を感染症の指定医療機関以外の一般病床などにも広げていく考えを示しているが、既に54 の病床数を超える82名の陽性患者が出ている現在、確保できている病床数と空き病床の状況、目標の254 病床確保に向けた今後の見通しについて伺う。
(3)経済対策について
急激な売上の落ち込み等に対する事業継続のため、資金繰り支援を目的とした制度融資の利率や信用保証協会による保証料率の引き下げ、借換での低金利等の適用、融資までの日数短縮など、県独自の事業者支援は一定の支援をあげるものと理解している。
一方、資金繰り困難な事業者の中には、信用保証協会と聞いただけで審査に落ちると諦めてしまう人も多いだろう。また、低利とはいえ先の見えない中で新たな借入を行うことに躊躇う経営者も多いだろう。
2019年12月13日に県議会で全会一致で改正された「中小企業の振興に関する条例」では、「中小企業者の災害時の事業継続支援」として「県は、地震、風水害その他の災害時において中小企業者が速やかに復旧復興を図り、事業を継続することができるよう必要な施策を講ずるものとする」の条文を追加した。まさに今、災害時である。国の対応をただ待つのではなく、県として主体的に必要な措置を講じる必要がある。
東京都では、雇用保険に加入していない非正規雇用の人を含む中小企業の従業員向けに、100 万円を上限に実質無利子で融資を行うことなど独自の対策を打ち出し、これらの財源に、不測の事態が生じた場合にすぐ執行できる約40億円の予備費を充当するということである(兵庫県R1 予備費5億円)。本県でも、もうこれ以上は持ちこたえられないという状況にある事業者の悲鳴に何とか応えるべく、委縮している経済活動をどう動かしてくのかも大変重要である。
そこで、感染拡大が抑えられ、通常の経済活動が再開されることを前提として、知事が先頭に立ち、県民の閉塞感をなくし、先の希望を見いだせるように、緊急対策の他、できる限り早期に真の経済対策を実施する必要があると考えるが、今後の取組方針について、所見をお伺いする。
2 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた財政フレームの見直しと大型投資事業について
行財政運営方針の変更案が提起されているが、その主なものは、将来負担比率の目標設定の下方修正と県税収入見込の実態に即した減額である。
将来負担比率については、現方針では目標を2028年度に「震災関連県債残高を除き2016年度の全国平均200%程度」としていたが、今回、震災関連県債残高を含めて280%程度とし、想定では274%になるとしている。
実に54.7%、将来負担比率の分子である将来負担額約4,800億円分の下方修正である。その主な原因は、地方交付税の基準財政需要額算入見込額を約3,500億円過大に見積ってきたからであるが、大変大きな見直しである。
県税収入については、本年度の330億円の減少から2028年度の690億円の減少見込まで10年間の減少見込額は5,545億円。今回の変更で見込んでいない新型コロナウイルス感染症の影響を考えた時、下方修正は必至である。
県は毎年度の予算編成の際に適切に税収を見込み、財政フレームを毎年ローリングするので問題は生じないとしているが、現在検討されている大型投資事業に着手するかどうかの判断には財政フレームが基となる。
投資の裏打ちとなる財源に余裕があるのかないのか、財政フレームは楽観的であってはならないと考える。大型ビッグプロジェクトの検討にあたっては慎重にならなければならない。
既に着手に向け具体化が進んでいる県庁舎等再整備事業だけで700億円。加えて神戸三宮雲井通5丁目地区市街地再開発事業に、2019~2026年度の間で総額約78億円。
更に但馬空港の滑走路延長や2万人規模のアリーナ設置も検討されるが、いずれも数百億円規模のビッグプロジェクトである。これらが、経済が順調に成長するという税収見通しに基づき、着手妥当と判断されることは時期尚早ではないだろうか。
県では、昨年まで11年間に渡って職員の給与カットを含む新行革プランを実施し、収支均衡を達成することができたが、将来負担比率でみると2009年度の361.7%から2018年度の339.2%と22.5%改善されたに過ぎない。
財政の改善が容易でないことをよく示している。県庁舎等再整備事業以外の大型プロジェクト投資については、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響、企業収益や消費税の落ち込み等を慎重に見極め、ゼロベースで考える必要があるのではないか。
真に効果の発現が高いもの、県民が誇りに思えるもの、自信をもってこんな時代だからこそやるべきだというものにしっかり投資をしてほしい。現状を鑑み、県税収入等の見込みを改めて精査し、財政フレームを見直すなど一度立ち止まって考えるべきではないか、見解をお伺いする。
3 社会情勢の変化に対応した自治体職員の災害対応力の向上について
阪神淡路大震災から25年。1995年と現在では、地域や社会の状況は一変している。18歳未満人口は2割減少し、65歳以上の高齢者数は約2倍になった。
介護認定においても、2000年2月時点で約12万7千人だったのが、2020年2月現在で約31万2千人となり、この20年で約2.5倍増加した。人口減少、少子高齢化は自治体財政の縮減に直結する。さらに兵庫県は独自の大きな課題、震災からの復興に向けてこの間、強力な行財政改革を進めてきた。
このことにより、2019年4月時点で1995年と比較し兵庫県職員は約38%減、市町の職員数は約22%減少している。この事実からわかることは、兵庫県の地域としての災害対応力は大幅に縮減しているということである。
災害時対応の基本は相変わらず自助、共助、そして公助だが、自助・共助の主体は高齢化、多様化しており、公助を担う人材は減少している。
ボランティアの数も阪神淡路に比べ、東日本、熊本、西日本豪雨と年追うごとに確保が困難になってきていると思われる。来たるべき巨大地震のみならず、毎年のように災害がおこり、全国同時多発的に被災している状況は、これまで日本が経験したことがない事態であり、支援人材も資金も、阪神・淡路大震災の時のように集中することはないと考えなければならない。
限られた資源の中で的確に且つ迅速に対応を進め被害拡大を防ぐためには、時間、マンパワー、経済的ロスを生まない効率的な対応が可能な環境が必要ではないか。
兵庫県では危機管理部門が災害対策、防災を所管しているが、福祉分野、住宅分野など復旧復興、被災者の生活再建にはスムーズな庁内連携が求められる。現在、県職員新任研修プログラムの中で災害に関する研修を行なっているが、それで十分といえるだろうか。
特に福祉や住宅など、発災の際には基礎自治体との調整役が求められる部局の職員については防災、災害対策業務のOJTを実施するなどして日常から防災を意識し、部局間の連携を構築しておくべきではないだろうか。災害復旧には幅広い分野の連携が求められる。
より多くの職員が一定の知識を共有していることで一刻を争う現場対応が変わってくるのではないか。ある意味、今も災害対応の真最中といえる。
部局間連携、県内の広域連携、情報共有は十分にできているといえるだろうか。社会情勢の変化に対応した自治体職員の対応力の向上が求められると考えるが、ご所見をお伺いする。
4 女性に選ばれる兵庫県に向けて
兵庫県が直面する大きな課題の一つに若い女性の流出がある。関西においては同様の傾向が強く、大阪と滋賀を除いた4府県で女性転出者数が転入者数を上回っている。
関西の女性の分析として大学・短大進学率をみてみると、69.5%で一位の東京のほか、京都、兵庫65%、奈良、大阪が上位に並んでいる。その一方、就業率は先ほど挙げた4府県が全国平均以下である。そして、若年女性は流出傾向となっており、この関連をどう考えるか。
もともと関西には老舗企業、大手企業の本社が多く存在した。
しかしながら、本社機能が次々に東京へ移った結果、女性が希望するような事務系職種が減った。兵庫県でいえば、もともと盛んだったファッション産業なども衰退し、大学短大を卒業した全体の7割近くの女性を地元にとどめる受け皿が格段に減っているのではないか。
志望職種に就きたいという思いが地元にとどまりたいという思いに勝り、不本意ながら故郷を離れていくという女性も少なくないのではないかと考える。
兵庫県は現在3,385人の転出超過である20~30代女性を2024年には転出転入均衡を目指すとしている。かなり厳しい目標設定だが、70,562人の女子学生に、様々な形で学生へのアプローチを進めている。
来年度の施策では、県内就職の促進として地方創生交付金を活用し、県内で活躍するロールモデルを世代別に発掘し、県内女子大生等とのネットワークを構築することで、若年女性の県内定着を促進する「若年女性に向けた県内定着PR事業」や、女子学生に対し就職活動前からキャリア相談の開催などによるライフプランを考慮したキャリアプランニングの取組支援を行う「女子学生と企業のプレマッチング支援事業」の拡充など、女性の就業につなげる取組が実施されることとなっている。
しかしながら、どれだけ接点を持つ機会を増やしても、希望する将来を描けるような就職先がなければ止まることはない。今ある企業の魅力を知ってもらうとともに、新たな産業、働き方を生み出す必要もある。
単に、希望する企業に就職するだけでなく、希望する生き方を選択でき、結婚し、子育てしやすい環境がなければ、魅力あるふるさと兵庫に帰りたいと思う女性も増えない。
関西圏の産業構造や伝統的な価値観の根強さから、多くの有能な女性が流出しているという現状にどう対応していくのか。今後ますます子供は減り、教育熱は高まり、女性はより自由に主体的に生き方を選んでいくだろう。
多様な価値観が認められ、女性が希望する生き方を選択して活躍できる地域になってこそ、関西で、兵庫で暮らすことを選択したいと思われる、選ばれる地域になるのではないかと考えるが、そのための方策について、所見を伺う。
5 教職員の業務の見える化について
教職員の業務改善については、これまでも様々に取り組んで来られた。しかしながら、直近の勤務実態調査における超過勤務の結果などを拝見すると目を見張る成果が出ているとは言えず、改めてこの課題の難しさを感じている。業務改善がなかなか進まない理由は、まずはマンパワー不足、財政的なものによるところが大であるが、もっと根源的なところに教員という仕事に対する教員本人の強い思い、地域や家庭からの過度な期待があるのではないだろうか。
登下校の指導や見守り、家庭訪問、校外学習に部活、運動会や卒業式の練習など、教員が抱えているさまざまな業務に教育的意義のないものはない。これらは業務の見直しの際、俎上に載せたとしても、いや待て、それぞれに大切だと逡巡することだろう。
部局審査でも申し上げたように、教育は無限だが教員は有限である。不要な業務は適切に切り離していかねばならない。地域も家庭もそれを理解し、そして教員本人こそがそこの肚落ちをしっかりやらなければ、教員の働き方を変え、真に質の高い教育を実現することはできないと考える。
昨年、教育現場では想像を絶するような教師間のいじめ事案が発覚した。
体罰やわいせつ事案も残念ながらなくならない。ストレスや過労による不本意な休職や退職を余儀なくされた教員もいる。
教員は自分たちが苦しければ恥じることなく苦しいということを見せるべきだと考える。閉鎖的と言われる学校空間の現実を可視化することでこれまでの当たり前を変えていけるのではないだろうか。
質の高い教育を目指すための本気の業務改善を進めるには、超勤の縮減等の単に対外的に説明のしやすい数値目標を押しつけるだけではなく、現場の思いを汲み、納得感を得ながら進めるべきだと考える。そのためには、学校組織や教職員、家庭や地域も含めた意識改革が必要だと感じるがいかがか。