質 問 日:令和2年12月4日(金)
質 問 者:竹内 英明 議員
質問方式:分割方式
1 新型コロナウイルス感染症対策について
(1)県の財政(調整)基金を取り崩さず補正予算を編成していることについて
「47都道府県の財政調整基金残高は2019年度末の決算時点で計1兆9,160億円だったが、20年9月末時点では65.5%減の計6,601億円まで落ち込んだ。取り崩した1兆2,559億円のうち、1兆318億円がコロナ対策によるものだった」という報道が10月19日付けの東京新聞でされた。47都道府県のうち42都道府県が基金を取り崩し、基金総額は前年度末の3分の1になったというものである。
東京都では9,000億円以上あった基金を8,000億円も取り崩し、大阪府でも1,562億円が今年度末には980億円になると見込まれている。東京都の場合、約5,000億円が制度融資の預託金なので全額がなくなるものではないが、その他の道府県でも基金が大きく減少することは間違いない。
一方、兵庫県の財政調整基金、本県では財政基金だが、33億円しかないが全く使われていない。飲食店等に対する休業要請等に対する支給金が4月に大きく議論されたが、もしこの事業に国の交付金が充当できないとなれば、どうなっていただろうか。交付金の細かい趣旨、国や総務省の動きを把握し、使えることを見越して先行して補正予算を編成していたと思うが、このあたりは総務省と兵庫県の関係だろうか。また、この支援金については市町に3分の1の財政負担もお願いしたが、この市町負担の考え方も大阪府などに先んじてアイデアを出したと聞いている。
そこで、財政の厳しい中で、国の交付金を最大限活用し、市町の力も借りながら、支給金については他府県にさほど見劣りすることなく、県単独の財源をつかわずに対策をとれたことは良かったと考えるが、経緯や当局の所見を伺う。
(2)補正予算編成に地方負担が見込まれる場合の対応について
国が追加のコロナ対策について地方に実質的な負担を求めてきた場合の対応について質問する。
国は、地方創生臨時交付金の追加配分を決定した。酒を提供する飲食店などの休業や時短要請等に協力する事業者が対象とされ、1日当たり最大2万円、日数は最大30日、上限は60万円で、国の負担割合は80%、地方負担が20%となっている。
東京都や大阪府をはじめ埼玉県でも、この追加配分枠を活用して時短要請を実施するようだが、地方負担分の財源は財政調整基金を見込んでいるようだ。もし、感染が飲食店等を中心に拡がっているとなれば、兵庫県でも再び休業要請が必要となるかもしれない。その場合に、20%の地方負担ができるのだろうか。
この地方負担分について、これまでに交付された国の臨時交付金を活用できるという話も聞いたが、やはり、万が一のときに国に頼らず支出できる基金、いわば貯金がほとんどないというのは県の危機管理として問題があると考える。
そこで、現在、国からの交付金の残余がどれくらいあるのか伺うとともに、国が追加のコロナ対策について地方に負担を求めてきた場合の財源対応について、また平時から財政基金に一定の残高を確保しておくことの必要性について、当局の所見を伺う。
2 債務超過となっている県病院事業の更なる経営悪化対策について
今年の夏、東京都新宿区にある有名な東京女子医科大学病院でコロナによる外来患者等の大幅な減少により、病院の経営が悪化し、夏のボーナスを全額カットする方針が出された。全看護師の5分の1にあたる約400人が退職の意向を示したとされ、大きな社会問題となった。コロナ感染回避のための診療抑制、退院患者の増加、手術の先送りなど、様々な減収要因が重なったことが原因とされている。
県立病院も、県立加古川医療センターを県内全域の患者に対応する新型コロナウイルス感染症拠点病院に、県立尼崎総合医療センターを重症患者等に対応する新型コロナウイルス感染症重症等特定病院に位置づけるなど、コロナ対策を大きく引き受けた。他の県立病院もその使命に鑑みて対応をしていると思っている。
国による診療報酬引き上げや専用病床の空床確保料の嵩上げなど支援策もあったが、経営面では、焼け石に水、県病院事業はその影響をより色濃く受けている状況だと考える。コロナ患者を率先して受け入れて、経営は火の車というのは役割とはいえ忍びないものがある。
ただでさえ、コロナの影響がなくても、退職手当引当金の引当不足が外部監査人から指摘されるなど厳しい状況だったが、2019年度決算では会計が始まって以来はじめて12億円の債務超過となった。県病院事業の経営は極めて厳しいと言える。
そこで、今年度、コロナの影響を受けた県病院事業の外来、入院の医業収益状況、収支見通しについて伺うとともに、県の既存財源による病院事業に対する財政支援が簡単ではないことから、国の交付金を活用した経営支援策などはないのか、また何か新しい国の支援策が検討されていないのか、当局の所見を伺う。
3 コロナ禍での妊娠届減少率全国ワースト2、近畿圏が総じて低い理由について
先ごろ、本県の人口流出がコロナ禍でも増加していると報道されて驚いたが、加えて、妊娠届が減少しているとの厚生労働省の発表もあった。
妊娠届の減少について私なりに分析すると、コロナの影響が生じたと見られる今年4月から7月までの妊娠届の数を都道府県別に前年と比較すると、全国が前年比8.7%減に対して、兵庫県は12.4%減であった。都道府県で減少率の順位をつけると兵庫県は全国ワースト2となっていることがわかった。
注目される東京都はワースト9の10.3%減で、近畿2府4県のうち滋賀県を除く5府県が9位の東京より低いワースト8以内に入っていることもわかった。コロナで妊娠に一番影響を受けた圏域は近畿圏であると見て取れる。
そこで、全国的に出生数が減少する中で、なぜ兵庫県や近畿圏の妊娠の数が特に大きく減少しているか、推測できる理由について伺う。
4 税収減が見込まれる中での財政フレーム・大型投資事業の見直しについて
(1) 県庁舎建替えについて
本県の財政状況を網羅的に示すストック指標である将来負担比率は、新行革プランに取り組み始めた2007年度の361.7%から2019年度に338.8%と22.9%改善された。22.9%の改善とは、県の将来負担比率の分母である8,918億円に乗じると2,042億円、12年間でざっと2千億円の負債が減ったということになる。県の県債残高が5兆円弱あること、この間、都道府県のワーストで変わらないことで、財政が大きく好転していないことがわかる。これがコロナの影響を大きく受けていない直近の2019年度決算の姿である。
コロナ禍での予算編成となる2021年度に向けて、県の財政見通しが公表されている。県税収入は、現2020年度の8,566億円の見込みが1,000億円減の7,500億円想定、2021年度は8,905億円のところ、2,000億円減の7,000億円となる可能性もあるとされている。最悪の想定のようだが、いずれにしろ県の財政フレームは大幅な下方修正が必要になる。
そこで、コロナの影響を見極めるために大型投資事業については、一旦立ち止まって考える必要があるのではないかと考える。
まず、現在、検討されている100億円を超えるような大型投資事業のうち最も計画が進んでいるのが県庁舎等の建替えである。県庁舎と県民会館の建替事業費は約700億円、JR元町駅西口周辺整備を含めると総事業費は1千億円とも言われている。
現在の庁舎が老朽化していること、いつ起こるかわからない南海トラフ地震に備えた防災拠点施設としての耐震基準を満たしていないこと、耐震補強工事と比較した上での建替えの結論を否定するわけではない。
とはいえ、県民がいま望んでいるかというとどうだろうか。建設費等が高額となる一方、住民が直接の恩恵を受けると思えず、県庁舎を利用する県民も多くはない。
県庁舎の建設費用を計画通り本当にまかなえるのかどうかを含めて少し時間をかけて様子をみるべきではないかと考える。現在、コロナの影響で5月に出される基本計画案が12月に延期され7ヶ月遅れとなっているが、さらに遅れる見込みとも聞いている。
そこで、今後、県庁舎建替え事業の進度調整等をすることは考えていないのか。当局の所見を伺う。
(2)但馬空港の滑走路延長について
もう一つの大型投資事業が但馬空港の滑走路延長である。航空法の施行規則改正により、現在1,200メートルの但馬空港を継続使用する場合は2027年3月までに滑走路外側の安全区域を100メートル拡張する必要性がある。
この際、滑走路そのものも800メートル追加して2,000メートルに延長し、プロペラ機しか運航できない滑走路からジェット機を運航可能にして乗客を増やす、羽田直行便をはじめ他地域への運航に参入してくれる航空会社を探す、これが知事の思いだと承知している。
コロナ禍となり、6月の定例議会の代表質問において我が会派の中田議員から、着手の前に慎重に再検討することを求めたが、7月のコウノトリ但馬空港のあり方懇話会の議事録をみると、既に「1,800mか 2,000mかは慎重な検討が必要」といった状況で、そもそもの延長の可否や財源負担、費用対効果はやはり別に議会でしっかり議論する必要があると感じた。
そもそも、この但馬空港の滑走路延長は、航空法施行規則の改正がなければ着手されていなかった可能性が高いものである。その事業規模も施行規則改正の対応だけなら100mで40億円のところ、2,000メートルとなるとその9倍となり、単純計算で400億円程度はかかると思われる。開港時の設置費自体が179億円だったのでその2倍もの金額になる。
近年、阪神間から空港までの高速道路の延伸により、周辺住民の利便性は昔に比べ向上していると聞いている。その意味で観光交流の拡大のための滑走路延長といえると思うが、私自身、羽田直行便があれば観光需要等は増えるとは思うが、県財政の現状からは負担が大きすぎると思う。
そこで、この事業実施については安全区域の100メートルの拡張にとどめ、県財政の状況をみて、財政が十分に回復したと判断されるときを待って滑走路の延長を再検討すべきであり、県庁舎建替え以上に、慎重にならなければならないと考えるが、当局の所見を伺う。
5 公益社団法人 兵庫みどり公社に対する県の早期抜本的経営支援について
もう一つ、いま大型投資事業を慎重に検討すべき理由の一つとして、過去の施策の中で、県が着手できていない財政課題が残っているという話をする。公益社団法人兵庫みどり公社への経営支援についてである。
公社が昨年3月にまとめた兵庫みどり公社中期経営方針の中で、「金利は比較的低利で推移しているものの、公社の年間支払利息は多額であり経営を圧迫している」との記載があった。調べたところ、金融機関からの借り入れは、日本政策金融公庫から324億円、三井住友銀行から344億円で計668億円となっており、支払利息は昨年度だけで5億円。過去10年の支払利息の合計は62億円にもなっていた。
また、同方針には、「膨らんだ投資額の回収が困難なことから見送りしている事業地の主伐を推進するため、投資額(特に利息分)に対する抜本的な支援を要請する」との記載もあった。これは主伐適齢期を迎えた木があるが、切って売却しても、帳簿上の価値に見合う収入が得られない、つまり、売却により赤字が顕在化するので、早期に金融支援をお願いしたい、そんな支援要請だと考える。
公社の財務諸表では21億円の正味財産、つまり自己資本があることになっている。その根拠となる主要な資産である森林の価値を調べてみると、実際の資産価値とは関係がない取得原価によって計算されていた。この原価とは、新植費、保育費、借入金支払利息、人件費等から造林補助金等を控除した額、つまり森林造成にかけた全ての費用から補助金を減じた額ということである。資産なのに経費の積み上げで、売却予定価格とは全く関係がない。この方式だと、支払利息などの経費が増えると、帳簿上、森林の価値は上がっていく。
その森林の評価額がいま668億円である。その内訳は植付け、下刈りや枝打ち、人件費などで構成されているが、最大はやはり借入金利息であり、306億円もの金額となっている。森林の評価額の46%を過去に支 払った利息が占めているということになる。
当初計画では、ヒノキの伐採が本格化するのが2023年度頃とされていたが、こうした帳簿上の価値と実態がかけ離れた状況で、計画どおり伐採を進めるとどうなるだろうか。含み損が顕在化して、債務超過の危機を迎えるだろう。
分収造林事業は国の施策で進めたといま恨み節をいっても仕方がない。林業公社のあった39都道府県のうち、15道府県が既に廃止し、府県が債務を引き受けている。存続中は24都県で、存続していても特定調停により県が巨額の債権放棄をした滋賀県造林公社のような事例もある。いずれも国による巨額の財政支援はない。
そこで、このまま年間5億円もの利息を金融機関に払い続けていいのか、私は知事の20年の在任中で最後に残されている未着手の課題だと思っており、巨額の新規投資事業に着手する前に抜本的な支援の方向性を示す必要があると考えるが、当局の所見を伺う。
6 神戸市長が内閣総理大臣に要望した特別自治市の法制化について
アメリカのトランプ大統領が掲げているスローガンはアメリカ・ファーストである。自国優先。アメリカ軍の駐留費用をアメリカの税金で負担しているのはおかしいとして、追加負担を同盟国にも要求した。
日本にも小池都知事が立ち上げた都民ファーストの会がある。その綱領をみると「私たちが自らの名に「都民ファースト」を冠するのは、 都政の第一目的は、都民の利益を最大化すること以外にないと考えるからである。」とある。
アメリカ・ファースト、 都民ファースト。あなたが払っている税金は、あなたのところで使うと聞いて嫌だと思う人はそういないだろう。
神戸ファースト。こんな言葉は聞いたことがないが、先月、神戸市長らが特別自治市の実現へ向けた法制化を総理官邸へ要望したとの神戸新聞の報道があった。内容を引用すると「神戸市の久元喜造市長と自民党市議団が12日、首相官邸で菅義偉首相と面会し、政令市の権限を強めて道府県から独立する「特別自治市」制度の早期法制化などを要望した」ということである。
特別自治市とは聞き慣れない言葉だが、2010年に指定都市市長会が初めて提案したもので、政令指定都市が都道府県から独立し、市域の県税を全て市税に移管し、市域で県が担っている事務は市に移管するというものである。
この動きをみて、ある歴史を思い出した。飾磨県の分離再設置運動である。兵庫県は今から144年前の1876年、明治9年に当時の飾磨県と豊岡・名東両県の一部を併合して、ほぼ現在の形となった。当初の原案では、飾磨県に豊岡県を併合させるものだったとされるが、当時、新政府の内務卿だった大久保利通が「開港場である兵庫県の力を充実させるように考え直せ」と部下に命じたと兵庫県史に記載されている。
一方、私の育った姫路市の歴史をまとめた姫路市史では、明治天皇の兵庫県巡幸に際して上奏された飾磨県再置請願理由書が引用されている。(飾磨県と)兵庫県との統合に反対である、とし、その根底には、兵庫県の財源としては播磨の国税や地方税が多い割りにその費途が少ないことが再置運動の理由であるとされている。
この請願は採用されず、飾磨県復活は実現しなかったが、神戸港やその周辺の開発や発展のために播磨をはじめ周辺地域が果たした財政的役割は大きかったと思っている。その後も発展を続け、人口、税収ともに随一となった神戸市がいま逆に兵庫県からの独立を目指し、自分たちの税金は自分たちで使うと。播磨の先人が聞き及べばなんというだろうか。
県による税の再配分を神戸市が問題視していることは、近年の神戸市会における県民緑税の議論を聞き及び承知している。また、大阪都構想もあって大都市制度が議論されることが増えてきた。
刺激が強いことを理解しているのか、HP等には記載されていないが、特別自治市となれば神戸市選出の兵庫県議会議員はいなくなる。アメリカ独立戦争時の有名なスローガン「代表なくして課税なし」の逆で課税がなくなるので代表も出せない。
自分たちが納めた税金は自分で使うといった理念は、それ自体が全て間違っているとは思わない。そうした声も踏まえて、納税者の意見にも配慮しながら、県土全体の発展をはかるのが知事の役割だと考える。とはいえ、いま明らかにバランスを欠いた再配分を強行しようとしているならまだしも、神戸市が特別自治市の法制化や兵庫県からの独立を目指していることについて、当局の所見を伺う。
7 知事5期目の最終年、20年目を迎えている県政運営について
井戸知事が知事に就任されたのは2001年(平成13年)。小泉政権がスタートした年、皇太子家に愛子さまが誕生された年であった。
20年という期間をどう評価するか。先月、大統領選挙が行われたアメリカでは50州のうち36州で州知事に多選制限が課せられており、その多くは2期8年までとなっている。日本では法や条例による多選規制は行われていないが、様々な意見があると考える。県の予算編成権、人事権をすべて握ることから職員が忖度をするようになるとか巷間聞く話である。どこかの県では県議との会合にも出席しなくなった知事がいるという話もある。当選を重ねていくと謙虚さが失われ、苦言を呈する人も減っていく。多選の弊害といわれるものである。
私が、13年前に初めてこの県議会本会議に出席したとき、驚いたことがある。井戸知事の議会での姿勢である。議会での首長の答弁は、代表質問や大会派の議員に限定していたり、幹部職員に多くを任せる、答弁そのものをめったに行わない首長もいる中で、井戸知事は少数会派の議員や無所属議員の一般質問にも必ず自ら答弁を行っておられた。また、再質問にも率先して手を挙げ、自らの言葉で答弁しておられる。これはどこの議会でも行われていることではない。議会に向き合う真摯な姿勢として感銘を受けたし、しかも、その姿勢は今も全く変わっていない。
議場において、多選の弊害を感じることはないが、職員や住民の受け止めはどうだろうか。20年というのは普通に考えれば長い期間である。職員の側が忖度してしまう環境が生じていないか、トップダウンでの政策決定の色濃い県政運営に、きちんと職員から指摘や意見が出る環境なのかなど、自身の権力の大きさゆえに自ら注意を払わなければ多選の弊害も生まれかねない。またメディアも含めた住民目線と自身の乖離が生じていないかなどにも注意をはかる必要があると考える。
そこで、自身は弊害は発生していないと考えていると思うが、どういったことに気をつけて知事の職務にあたってきたのか、そして最後に20年は長かったのか短かったのか。20年以上ももっと知事の職務を続けたいと考えているのか、伺う。