議会の動き

◆24年2月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方  提案説明  討論 

代表質問  上野 英一 議員
一般質問  小西 ひろのり 議員、橋本 成年 議員

代表質問

(上野 英一 議員)[発言方式:一問一答]

1 魅力ある兵庫県を目指して
(1)職員の出勤率4割と県庁舎整備のあり方について
(2)職員の声の把握と理解について
(3)神戸市との信頼関係と今後の県市協調について
(4)知事と議会との関係について
2 行政としての県民への説明責任について
(1)分収造林事業について
(2)兵庫県森林組合連合会への貸付金について
3 今後の病院事業の展開について

上野 英一

(選挙区:神崎郡)

代表質問

上野 英一 議員が代表質問を実施

質 問 日:令和6年2月 21 日(水)
質 問 者:上野 英一(ひょうご県民連合)
質問形式:一問一答

2年前、20 年ぶりに若い斎藤知事が誕生しました。誕生に至るまではいろいろなことがありました。井戸知事の後継者・金澤元副知事の対立候補として斎藤現知事が出馬を表明した際には、自民党県議団が二つに割れ、ひょうご県民連合にも亀裂が走りました。私はこの2年間、是々非々とはしながらも、斎藤知事に期待をしており、支えようとしてきました。しかし、知事の県政の進め方、提案の仕方についていささか疑問を感じており、期待をするだけに姿勢を改めて頂きたく厳しく質問を行います。

1 魅力ある兵庫県を目指して

(1)職員の出勤率4割と県庁舎整備のあり方について

知事から職員の出勤率4割の方針が示されてから、令和5年6月議会以降、代表・一般質問、決算特別委員会の質疑において、県庁の働き方改革やモデルオフィスなども含めて 15 人の議員が質問や指摘を行っています。それだけ今後の県政を大きく左右する課題だからこそだと言えます。

これまでの知事の答弁では、兵庫県の厳しい財政状況から、当初計画の県庁舎整備のため 1,000 億円を超える費用の捻出、あるいは執行は、現時点では行うべきではない。令和5年 12 月議会での竹内議員の質問に対する答弁においても、今の県庁舎のあり方や県民理解を踏まえたときに、「この道を行くしかない」と、あくまで出勤率4割の主張をされました。

出勤率4割、すなわち6割は在宅やサテライト勤務となりますが、非常にエキサイティング、あるいはチャレンジングな発想と言えます。他県から多くの注目を浴びているのもそういうことからでしょう。しかしながら、その実現の可能性については、多くの議員の指摘や質疑、寄せられた多くの県職員の疑問や危惧する声の中に答えがあると思います。知事からは、現在実施しているモデルオフィスは、テレワークと対面のハイブリッドの働き方を実践するというトライアルの場で、テレワークを円滑に進めるために、ウェブ会議スペースの確保、徹底したペーパーレスの実施、対面コミュニケーションにおいては、オープンオフィス、フリーアドレスといったオフィス改革を実行しているとのことでありました。また、アメリカ・シアトルのアマゾン本社は、非常に働きやすいクリエイティブな感じを創出させる取組で、一つの参考にしたいとの話もありました。私もヤフージャパンの本社ビル等の視察をさせていただき、働き方を変える創意工夫も見られましたが、これらは一概に県庁業務と比較するものではありません。魅力ある県庁、職場とするために、県民からはもちろんのこと、全職員の意見を集約してより良い結論を導き出して頂くことを願って止みません。

また、民間の先進事例や NTT ファシリティーズのビジネスコラム等を見ると、テレワークが進む一方で対面の重要性が述べられているだけでなく、コミュニケーションの不足から生産性の低下も述べられています。知事がおっしゃるとおり、リモートワークと対面業務の相乗効果が重要になるとされていますが、一部の企業では出勤率6割が限界といった意見もあります。多種多様にわたる業務を担う県庁組織においての出勤率4割は、極めて厳しいものと考えます。

昨年 12 月の段階では、モデルオフィスに関する職員アンケートは実施中で、全部局が終了後、取りまとめて、これらを分析の上、公表したいとのことでしたが、来年度当初予算上の計画では、繁忙期の課題等を検証するため、モデルオフィスは6月まで延長する方針が示されたところです。その後はサードプレイスの活用として、サテライトオフィスやコワーキングスペースを最大限活用するとのことですが、モデルオフィスの分析結果や、必要とされる県庁舎の規模はいつ示されるのでしょうか。先の見えない現状を危惧しているのは、私だけではないと思います。

1・2号館と同様、耐震基準を満たしていない議場棟のあり方については、現在、議会内で協議を進めているところですが、私としては、1,000 億円を超える庁舎整備はともかくとして、これらと併せてオープンオフィス、フリースペースを十分に確保した一定規模の庁舎建設が必要と考えております。万が一、本県が大規模災害に見舞われた際には、災害対策センター・本部機能とし、また、議場棟も閉会中は会議場・コンサート会場として貸し出すなど多様な使い方も考えることができます。議場棟を含め本庁舎は県のシンボルであり、県民に開かれたものでないといけません。あわせて、県民サービスの維持向上や危機事案への対応など、十分に機能する県行政に向けた庁舎整備のあり方を検討する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

(2)職員の声の把握と理解について

2020 年以降、新型コロナウイルス感染症を契機に、兵庫県でもテレワークが普及しました。当時はやむを得ない措置であり、職員が試行錯誤しながら努力して取り組んだことは記憶に新しいです。出勤率4割は、コロナ禍での実績を踏まえたものであり、ここを目指して挑戦していくとのことですが、あくまでもコロナ禍対応です。将来にわたって対応できるものでしょうか。

一方、厚生労働省による企業向けのガイドラインでは、テレワークは労働者本人の意思によるべきとなっております。令和2年 12 月の「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」においても、テレワークを希望しない労働者がいる場合もあり、労使間でミスマッチが生じないよう話し合いの機会を持つ重要性が報告されております。

地方公務員でも同じことが言えます。テレワークを実施するのは職員一人ひとりの意思によるべきで、決して命令するものではないと考えます。モデルオフィスに関する職員アンケートは実施中であり、また、職員労働組合に対しても、一定の説明はされていると思いますが、将来にわたる県職員の働き方を考えたときには、より丁寧な対応が必要です。

具体的には、職員の勤務環境、とりわけ出勤率4割を目指すような重大な労働条件の変更などに関しては、職員労働組合との協議にとどまらず、管理職を含め、モデルオフィスを経験していない職員の声にも耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。

ワーク・ライフ・バランスなど、職員にとってメリットも多いテレワークの推進を否定するものではありませんが、県庁舎のキャパを理由に半ば強制的にするものではないと考えます。職員の働き方の維持改善を図る観点から、多くの職員の声を把握、理解した上で対応していく必要があると考えますが、当局の所見を伺います。

(3)神戸市との信頼関係と今後の県市協調について

三宮・元町周辺の再整備については、兵庫県と神戸市が更なる連携を図るため、令和2年5月に県市合同による「都心エリアの再整備計画に関する検討会議」が設置されました。令和3年2月には、検討会議のとりまとめが公表されましたが、各ゾーンにおける県市のプロジェクトは、平成 27 年9月に策定された“神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]”の目指すべき都心像に基づき検討を進めるとともに、各プロジェクトを連携させ相乗効果を発揮させながら、県市連携のもと都心エリアの一体的な整備を実現することとされていました。

しかし、その 10 か月後、知事は行財政運営方針の見直し(一次案)にかかる記者会見において、県庁舎整備の凍結を表明され、将来の元町全体のグランドデザインを描く中で、民間投資も導入しながら、県庁舎のあり方をしっかり検討した上で対応していきたいと述べられています。また、令和4年9月 13 日に開催された総合事業等審査会においても、「元町周辺再整備の推進について」の資料の中で、従前計画(県庁舎等再整備)策定後の社会経済情勢の変化により、元町周辺再整備のグランドデザインを検討する中で、県庁舎の場所や整備手法を改めて検討、一定の期間をかけて魅力あるまちづくりを考えるとの説明がなされています。

三宮地区では、神戸市役所2号館の供用開始が令和9年(2027 年)、JR三ノ宮駅ビル開業が令和 11 年(2029 年)、また、元町南側も神戸ウォーターフロントビジョンに沿ってメリケンパーク等の整備を行っている一方で、元町北側においては、県庁舎を含め今後再検討していくとなっていますが、いつ着手できるのか、今の状況ではわかりません。先行する三宮地区に取り残されることによって、今後県市協調は保たれるのでしょうか。

私は二十歳で大河内町役場に就職しましたが、その当時、神戸市と県との関係は決して良くないと聞いていました。それが阪神・淡路大震災以降、創造的復興の中で県市連携会議等の開催、冒頭述べました兵庫県と神戸市との「都心エリアの再整備計画に関する検討会議」等々で、協調・信頼関係が構築されたと考えています。県庁舎整備計画の変更案について、神戸市にはどの様に報告されたのでしょうか。神戸市の受け止めと信頼関係はどうなったのでしょうか。大変危惧をいたします。

昨年 11 月、神戸市公式 note に、「市が県から独立?神戸も無関係じゃない『特別市』とは」との見出しで、将来の神戸市のあり方を考える記事が掲載されました。その中では、「指定都市市長会としては、特別市制度の制度化を目指します。制度化されたとしても、それを神戸市が活用するかは別問題」とは記されていますが、先に述べたようなことを県がしていればわかりません。

これから三宮エリアは大きく生まれ変わろうとしています。知事の決断に対する神戸市の反応や信頼関係に加え、これまで元町周辺の活性化に期待を寄せていた地元市民との議論はどうなっているのでしょうか。また、今後の元町周辺再整備に向けた県市協調をどのように考えているのでしょうか、あわせてお伺いします。

(4)知事と議会との関係について

知事は、現場主義の徹底と対話の重視を掲げ、県内各地を駆け巡り、さまざまな関係者と意見交換をしておられます。一方、政策の打ち出しにあたっては、密室の議論はしない、すべてオープンの場で行うとともに、ステークホルダーとの懇談や面会はしないと聞いております。

2年前の県政改革方針・条例提案の撤回については初めてのことであり、その後、議会との議論の積み重ねで修正案を議決するに至りましたが、プロセスに反省点があったことは否めません。その時にも、議案の提出前に骨子案などを議会と議論することは、決して密室の議論ではないと申し上げました。ステークホルダーとの面談も、知事の言わんとされる理念・信念のもとで会われても揺るぐことはないでしょう。

県庁2号館等の今後の対応や働き方改革(4割出勤、6割在宅勤務)、県立大学の授業料等無償化についても、議会への丁寧な説明もなく、公表なども唐突でした。それらの政策一つひとつについて、置かれている現状の背景や目的、政策目標については理解をするところですし、評価できる部分も多くあると考えています。しかし、事前の議論や関係部局での調整も不十分であったようにもお聞きしています。ですから知事の思い入れが優先して、各分野・方面に対する配慮が欠けており、不十分な提案、説明になっていることを、先ほどより指摘させて頂いています。

今年度の予算編成にあたって、知事は「県民一人ひとりに寄り添った県政に重きを置く」と述べられています。今年度初めの辞令交付式においても、新たに入庁した職員に対し、「県民一人ひとりの声に耳を傾けてほしい」との訓示を述べられています。

知事にとって重要視される「対話」とは、何も公の場での議論だけではないはずです。知事が考える政策をより良い形で実現するとともに、一人でも多くの県民の理解を得るためにも、議会との丁寧な議論を踏まえた県政運営を期待するところですが、知事の所見を伺います。

2 行政としての県民への説明責任について

県の組織では必ず異動があり、一定期間で担当業務が代わりますが、一方で業務・政策の継続性も重要です。またその業務は、国の政策によるところも多くあります。知事は4年任期で、選挙あるいは無投票信任もあります。その業務・政策の推進において、次の事業では県民に多大な損失を与えようとしております。その責任は、誰がとるのでしょうか。前知事の責任、前部長や前担当者時代からの課題で済まされるのでしょうか。

まずは、分収造林事業についてお伺いします。

(1)分収造林事業について

令和5年 12 月議会で竹内議員が、旧兵庫みどり公社による不適切な民間金融機関の借入スキーム、国債の預託について指摘していますが、稲木財務部長は、「県として借入に内在するリスクを予見し、県民や県議会に対し説明すべきだったという反省点はあるが、この現行の契約について無効と解することはできないと考えている。また、契約の時点においては、農林機構の財務状況は安定をしており、かつ行革プランの長期収支見込みが黒字であったため、地方自治法等で定められている安全・確実な基金の運用という要件を満たすものと認識をし、この契約時は総務省等に対して報告などは行っていない」と答弁されています。

分収造林事業については、以前、伐期(50 年から 80 年に見直し)や分収割合を見直すなど取り組みを進めていると説明を受けた記憶があります。その時、特に伐期の延長に関しては課題の先送りだなと感じました。木材価格の低迷もあり、やむを得ないと考えましたが、ただ単に先送りとせずに、分収造林事業のあり方をしっかり議論すべきでありました。また、行革プランの中では、第3次行革プランでスギの価格を38,000 円/㎥から 29,000 円/㎥に、最終2カ年行革プランで 29,600 円/㎥に見直されたところです。

具体的なことを申し上げます。これまでの分収造林事業のあり方検討委員会資料では、例えばスギの価格は最終行革プランの 29,600 円/㎥に対して実勢価格 8,667 円/㎥であり、大幅に乖離している旨が記されています。ところが、兵庫みどり公社中期経営方針(2019 年3月)では、「ここ5年来、スギは 12,000 円/㎥と比較的安定しており、今後、急な上昇は期待できない状況と考えられる」と記されています。また、その根拠である近畿農政局調査では、スギは 13,500 円/㎥と記されています。

設定された木材価格については、将来の成長を見越して価値を割り出したものであることは承知しておりますが、果たしてこの計画は本当に妥当であったのでしょうか。木材価格の下落で収益が急激に悪化した時点で手を打つことはできなかったのでしょうか、疑問でなりません。負担を被るのは県民であり、仕方なかったでは済まされません。

公社、当局の間でどのようなやり取りがあり、責任の所在はどこにあるのでしょうか。また、県民への説明責任と、当時の意思決定に至った経緯、知事の関与などについて伺います。

(2)兵庫県森林組合連合会への貸付金について

令和4年度決算において、県森林組合連合会(以下、「県森連」と言います。)への貸付金9億円が収入未済となり、昨年 10 月以降、新聞等でも大きく報道されました。決算特別委員会では北上議員、12 月議会では竹内議員がこの問題を取り上げましたが、私は別の観点からお尋ねをします。私は、今回質問にあたり、バイオマス発電用燃料納入業者とバイオマス発電事業者に聞き取り調査を行いました。そのことを踏まえながら疑問点を指摘します。

そもそも、なぜ県森連の be 材供給センターが赤字になり、それを補填するために県が貸付を行わなければならなかったのかということです。

通常のスキームならば赤字などは発生しないはずです。通常スキームでは、be 材供給センターが(be 材供給協議会)の各森林組合等から持ち込まれた原木を燃料チップに加工をして、(株)関電エネルギーソリューション(Kenes)が買い上げるであろう単価からチップ加工等に要する経費を差し引いて、各森林組合等に支払いを行います。

そうしていれば、赤字にはならないのです。
兵庫県 be 材等供給基本方針では、いずれの集積基地においても、be 材の集積基地着価格は 6,700 円/t(生トン)に統一、チップ工場等からのチップ買取りにあたり、県森連はシステムの管理・運営等の経費を徴収、全ての供給者が利益を平等に享受するため、また、朝来バイオマス発電所及び be 材供給センターにおける事業状況を明らかにして透明性を確保することとされていました。

平成 30 年6月期の県森連の決算では、1億 1,200 万円の赤字を計上しておりますが、その理由として、県内外の燃料材需要の高まりで他施設へ流出したことによる原木集荷の低調による加工量の減、及び割高原木を購入したこと、高い水分率により原木消費量が増大し、売上原価が高騰したこと、また、チップのエネルギー不足等があげられております。

しかし私としては、be 材の集積基地着価格を 6,700 円/t(生トン)に統一していたことが一番の問題点だと考えております。当時の原木の取引価格は、兵庫・岡山県では 5,000 円/t であり、6,700 円/t は決して安い値段ではありませんでした。

一方で、「但馬に行くときには弁当忘れても傘忘れるな」と言われているように、おそらく原木の水分率は計画の 50%をはるかに超えていたはずです。県森林林業技術センターによる be 材供給センター建設予定地での試験結果においても、58%が平均です。水分率が高ければ高いほど、納入業者には美味しい話となります。仮に計画の50%に対して 58%だとすると、材積は 16%減と考えられ、換算すると約 8,000 円/t となります。

統一価格 6,700 円/t との差は約 1,300 円/t となり、この部分が損失となります。原木からチップにすれば水分率は下がりますので、この点も考慮する必要があります。

また、朝来市生野町では乾燥しにくいため、神河町の旧神崎町森林組合の土場に仮置きすることなども行っており、そのための経費として、土地賃借料以外に約 700 円/t の運搬費が掛かっています。

さらに、以上のことに加え、お粗末なことに規格外チップの混入による発電停止の補償やコンベア修理費などが重なりました。赤字になって当然とも言えます。縷々、矛盾点を指摘してきましたが、当初の事業計画、経営改善計画、運営も極めてお粗末と考えます。平成 31 年度には経営改善計画をもとに、前年度の貸付額4億円を3億円増額して7億円としています。大きな矛盾と疑惑を抱きます。

現在、債権回収に向けて鋭意調整を進めていますが、当然ながら全額の回収は不可能です。県森連や当局の責任は大きく、県民に対する重大な背信行為と言わざるを得ないのではないでしょうか。県民に対してどのように説明するのか、また、当局としての責任を伺います。

3 今後の病院事業の展開について

このたびの第5次病院構造改革推進方策の策定にあたり、今後の県立病院事業の収支見込みについて報告がありました。経常損益は、令和5年度以降、赤字が継続、また、連続した建替え整備に伴う企業債償還の実質負担額増加の影響もあり、資金収支が悪化し、それらに伴い、内部留保資金は令和6年度にマイナス目前になる見込みであるとのことでした。

これらの突然の報告は、分収造林事業や地域整備事業会計等の課題の表面化があっただけに、病院事業会計も報告する必要があったのかと思いました。債務超過状態であることは、包括外部監査での指摘もありましたので承知はしていましたが、改めて厳しい現状を理解しました。分収造林事業や地域整備事業会計とは異なり、不明瞭な会計処理が原因ではありません。しかしそれだけに、今後の経営改善は大変であると考えます。強いて言いますと、前田議員が以前から指摘してきた粒子線医療センターの存廃を含めた議論の問題はあります。方策の策定過程において、粒子線医療センターのあり方検討の必要性について病院構造改革委員会で議論されたと聞いております。

県立病院は、各時代における県民の医療ニーズに対応するため、他府県と比較しても充実した設備や医療体制を構築するとともに、県民への高度医療の供給など努力を続けていることも承知しています。物価高騰や患者の受療行動の変化など、病院事業における経営環境の悪化は全国的な傾向であることも理解しております。

これまで4次にわたり病院構造改革推進方策を策定し、県民から信頼される県立病院づくりのため不断の改革を進めてこられていますが、以上のような困難な課題を乗り越えるため、どのような基本姿勢で第 5 次病院構造改革推進方策を策定しようとしているのか。また、県立病院の役割をどのように捉え、今後の病院事業を展開しようとしているのか、お伺いします。

一般質問

(小西 ひろのり 議員)[発言方式:一問一答]

1 兵庫県の災害対策における民間団体等への支援・連携について
2 不登校となっている子どもへの対応について
3 「ともに生き、ともに学ぶ」教育の推進について
4 県庁職員との対話、「4割出勤」・県庁舎の今後のあり方について
5 県立病院で働く職員の勤務環境の整備について
6 高校生と県内企業とのマッチング支援のあり方について

小西 ひろのり

(選挙区:西宮市)

一般質問

小西 ひろのり 議員が一般質問を実施

質 問 日:令和6年2月22日(木)

質 問 者:小西 ひろのり(ひょうご県民連合)

質問形式:一問一答

1 兵庫県の災害対策における民間団体等への支援・連携について

能登半島地震をはじめ、これまでの災害において、多くの人命が奪われました。また、避難生活の長期化で体調を崩す方、「災害関連死」の疑いで亡くなった方もたくさんいらっしゃいます。

さらには、避難所運営だけでなく、自宅での避難生活を余儀なくされている方へも救援物資やインフラ状況等の情報が確実に伝わるような工夫が必要です。

6月定例会において、私は「地域と連携した災害への対応について」伊丹市の天神川で発生した堤防の決壊に関連した質問をさせていただきました。

その際の答弁は、「地球温暖化の進行などを背景に災害が頻発化、激甚化する中、公助には限界がある。自助・共助を強化して、地域防災力を向上することが重要」、「今後とも市町と緊密に連携し、自分の身は自分で守る、そして困っている人は地域で助けるといった地域や住民一人ひとりの防災意識を高め、災害に強い地域づくりにつなげる」という内容でした。

県が担う災害対応として何よりも大事なことは、県民のいのちや財産、生活を守ることです。

地域防災力を高めることも大切ですし、必要なことですが、兵庫県がとりくむ災害対策「公助」として、「どこまで備えができているのか」、「今後、どれだけ備えておく必要があるのか」について検証し、対応する必要があると考えます。ものごとには限界があることは十分に理解していますが、「公助の限界」を最大限高めていくために、今一度、各部局単位でできることにとりくんでいただきたいと考えています。

実際に南海トラフ地震発生の切迫性が高まっている今、想定外の事態であっても、それに対応する日常的な備えが必要です。具体的には、避難生活に最低限必要な環境整備や物資の確保をしておく総合防災公園の拡充、避難所での生活スペースとトイレの確保、人工透析治療を継続するための環境整備等、どのような生活環境におかれている方であっても、災害発生後の生活がしっかりとできるような対応策を県が「公助」として準備しておく必要があります。

また、津波対策をはじめ、道路や港湾等のインフラ整備の観点も重要です。

さて、これまで「公助」の必要性について述べてきましたが、今回の質問では、「共助」を担う民間団体への支援や連携についてお伺いします。

例えば、今回の能登半島地震の被災地支援では、西宮市の認定NPO法人「日本災害救援ボランティアネットワーク」をはじめ、県内のボランティア団体、社会福祉法人、青年会議所等の団体がいち早く被災地に駆けつけられました。各団体どうしの日常的なネットワークから、物資の保管やボランティアの宿泊所等の支援にあたる拠点をいち早く確立し、初期段階での炊き出しをしたり、和菓子をもって被災者に寄り添い、被災経験を共有することで心の安定をはかったりするなど、「心のケア」をおこなう活動をされました。

県が自ら県内の災害対策をおこなうことはもとより、今後の被災地支援にあたり、NPOやNGOをはじめとした団体や民間団体等への県としての支援や連携も必要であると考えます。

阪神・淡路大震災から、来年で30年を迎える兵庫県。これまでもその経験を活かし、民間団体等への支援をおこなってきたと思いますが、このたびの能登半島地震をふまえ、災害への備えという観点からも、民間団体等のとりくみへのより一層の支援や連携が必要だと考えますが、当局の所見をお伺いいたします。

2 不登校となっている子どもへの対応について

文部科学省における「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果によると、小・中学校における不登校児童生徒数は過去最多となっており、近年の増加が顕著になっています。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合も増加しています。

不登校児童生徒の61.8%にあたる18万4,831人が、学校内外の機関等で相談・指導等を受けており、指導要録上出席扱いとされた児童生徒数は、3万2,623人、自宅におけるICT等を活用した学習活動を出席扱いとされた児童生徒数は1万409人でした。

しかし一方で、学校内外での相談を受けることができていない子どもたちが約11万4,000人もいます。その内90日以上欠席している児童生徒数が約5万9,000人とともに過去最多となっており、生活指導の観点からも喫緊の課題となっています。

兵庫県の公立学校においても、小学校で4,938人、中学校で9,239人、高校で1,400 人が不登校となっており、教育機会の確保や相談体制の充実等、対策を強力に推進していくことがもとめられています。

国においては、「こども大綱」が令和5年12月に閣議決定されました。

そのなかで、「『こどもまんなか社会』~全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる社会~」を目指すと記載されています。

また、文科省は、都道府県や教育委員会などに対し「不登校児童生徒への支援の在り方について」や、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」において、子どもたち一人ひとりのニーズに応じた体制を整備するとともに、保護者も含めた必要な支援を行うことが重要であるとし、子どもたちの居場所づくりや早期発見・早期支援にとりくむことで、不登校対策の速やかな推進をはかるよう通知を発出しています。

兵庫県では、「不登校は、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要」、「支援に際しては、登校という結果のみを目標とするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」という基本的な考えのもと、『全県一丸となって進める「ひょうご不登校対策プロジェクト」の推進』にとりくんでいます。

現在、「不登校対策推進センター」の設置や「校内サポートルーム」への不登校児童生徒支援員の配置補助をはじめ、不登校対策について提案されていますが、校内サポートルームの運営方針、不登校児童生徒支援員の担い手の確保等について具体的にどのようにお考えでしょうか、県の見解をお伺いいたします。

 3 「ともに生き、ともに学ぶ」教育の推進について

2022年9月に国連障害者権利委員会から日本政府に対して、総括所見が出されました。

まずは国が対応すべき内容であることは理解していますが、国連の障害者権利委員会は特に、障害者の権利に関する条約第19条の「自立した生活及び地域社会への包容」第24条の「教育」の内容について、勧告の中で「特に支援を多く必要とする、あるいは偏見にさらされやすい人の権利が守られていない」と指摘されているのではないでしょうか。

どうすれば、みんなが幸せに暮らしていけるのか、どうすれば、同じ社会のなかで暮らしていくことができるのか、「生きづらさ」を抱えるすべての人にとってバリアをなくすこと、誰ひとり「取り残されない」社会をめざして「障害」を社会モデルとしてとらえることができる環境をつくることが急務であると考えます。

また、障害者差別解消法の改正にともない、令和6年4月1日から民間事業者においても合理的配慮の提供が義務化されます。

私個人の見解ですが、合理的配慮の「配慮」ということば自体が対等という意味を感じられず、同じステージに立ってものごとを考えようとする姿勢が不足しているのではないかと考えています。

しかし、合理的配慮の意味するところは、だれもが暮らしやすい、生活しやすい環境をみんなでつくっていくこと、建設的な対話をお互いに重ねていくことで、知事が『ひょうご人権ジャーナル「きずな」1.2月号』でも表明されていた「だれもが夢や希望を持って挑戦できる社会」にもつながるのではないでしょうか。

兵庫の教育においてこれまで大切にしてきた「ともに生き、ともに学ぶ」ことを基本理念とした教育施策をさらに推進していくことが必要だと考えます。本人や保護者の希望を尊重することは当然のことですが、「障害があるから」という理由だけで別の場所で生活や学習をするのではなく、学校においても、さまざまな個性のあるなかまの多様性を互いに認め、尊重し合う環境をつくらなくてはならないと考えます。

そこで、県として今年度策定する「兵庫県特別支援教育 第四次推進計画」における「ともに生き、ともに学ぶ」教育の推進についての考え方や、「インクルーシブな学校運営モデル」について県の見解をお伺いいたします。

4 県庁職員との対話、「4割出勤」・県庁舎の今後のあり方について

知事自身は、就任以前も含めて、これまでに在宅勤務、「4割出勤」を経験されたことはありますか?

県職員の在宅勤務の割合を増やすことで、業務の効率があがり、さらには、県民の期待に応える「攻めの県政」が推進できるとお考えでしょうか?

知事は、神戸新聞の「2024新春座談会」において、「大事なのは対話と現場主義です」とおっしゃっています。私が考える「対話」とは、パソコン等の機器を通したオンラインでの対話ではなく、同じ空間で同じ雰囲気を感じながら、お互いの顔をみあわせ、相談をしながらものごとをすすめることととらえています。

メールやLINE等の文字だけでのやりとりでは人の本意や真意は伝わりません。

また、実際にモデルオフィスを経験した職員からは、「在宅勤務では職員どうしのコミュニケーションの時間が減ってしまい、人財を育成する上で大きな課題となってしまう」といった今後の県政を懸念する意見もきいています。知事はモデルオフィスを経験した職員のアンケートを検証し、職員のみなさんと実際に対話は十分にされましたか。

県民サービスの充実や、県民のいのちをまもるとりくみを中心になってすすめる県の職員に必要なことは、在宅勤務ではなく、一人ひとりが県庁や県の機関内に「居場所」や「拠点」をしっかりともって県民と向きあうことではないでしょうか。そして、その場での「対話」を通して職員どうしが信頼関係を構築し、チームで県政を推進してはじめて県民の期待に応えることができる施策が実現すると考えます。

オンライン会議が拡がり、働き方や働くスタイルも多様化していますが、感染症の影響による現状は変化しています。また、自治体職員としての働き方やあるべき姿について、一度立ち止まって考えていただきたいのです。

1月19日付の読売新聞朝刊に、『「出社したい」オフィス拡大~テレワークから回帰~』と題した記事が掲載されました。記事によると、就職活動をする学生の8割以上が企業選びにおいてオフィス環境を重視しており、「社員同士が顔を合わせて意思疎通を図りながら創造性や生産性を高められる仕掛けを導入」する企業が相次いでいるとのことです。

県庁は民間企業ではありませんので、その役割のちがいはあるにしても、同じ空間で職場のなかまとコミュニケーションをとることで新たな気づきや刺激が生まれることは、「躍動する兵庫」を推進するにあたって、よい方向性にすすむことになるのではないでしょうか。

今、被災地の支援を継続的に、みんなでとりくもうとしているこの期、「4割出勤」・県庁舎の今後のあり方についてはやはり「この道を行くしかない」のでしょうか。知事の見解をお伺いいたします。

5 県立病院で働く職員の勤務環境の整備について

県立病院で働く職員は現在、人員不足という大きな課題を抱えながらも、患者のニーズに応えるため、必死で働いています。その結果、日常的な超過勤務が続き、疲弊している状況にあり、勤務環境の整備は喫緊の課題となっています。

令和6年4月より医師の時間外労働の上限規制が始まることから、県立病院における医師の働き方改革に資するとりくみを検討するため、「医師の働き方改革プロジェクトチーム」が設置されています。

では、同じ病院現場で働く、看護師、栄養士、臨床検査技師等の医療技術職、事務職員をはじめ、医師以外の職員の勤務環境の整備についてはどのようにお考えでしょうか。

医療現場では患者のニーズの高まりや医療の高度化により、医療従事者に求められる内容が増えています。看護師や医療技術職員をはじめとした病院職員からは、「看護補助者が十分に確保されていない」、「業務改善が進まないため、超過勤務が依然として多く、休憩時間がとれないほど忙しい」、「夜勤帯の看護師は誤嚥性肺炎や転倒による外傷を防ぐために、常に注意を払っており、精神的負担が大きい」、「多忙な病院ではゆとりのなさが人間関係にも悪影響を及ぼしている」等、数多くの厳しい現場の声をきいています。

また、私の地元西宮市では、令和8年度の開院をめざし、西宮総合医療センター(仮称)の整備がすすめられています。「兵庫県立西宮病院と西宮市立中央病院の統合再編基本計画」にもとづき、西宮市域及び阪神圏域における中核的な医療機関として、高度急性期・急性期医療を担う新病院となる計画です。

その基本方針では、救急医療体制の充実、関連大学等との連携による先進医療への対応、感染症対応機能の充実・強化等が掲げられ、AI、ICTの活用をはじめとする医療技術の進歩に対応できるよう、将来の拡張性を考慮するともあります。県民が安心してかかることができ、職員にとっても働きやすい新病院の整備が期待されています。

現在、第5次病院構造改革推進方策(「公立病院経営強化プラン」)として3月の策定・公表にむけ、準備がすすめられています。

病院事業の今後の収支見込が非常に厳しい状況のなか、県立病院で懸命に働く職員にとって、働きやすく、魅力的な病院となるよう、どのようにとりくんでいかれるのか当局の見解をお伺いいたします。

6 高校生と県内企業とのマッチング支援のあり方について

近年、県内の企業において、就職後3年以内離職率が高いとききます。本県では、産業労働部が中心となり、奨学金返済支援制度の推進、理工系人材獲得の促進、UJIターンの支援、ダイバーシティ&インクルージョン等の対策にとりくんでいますが、とりわけ高校生と県内企業とのマッチング支援のあり方についてお伺いします。

今、どの業界も人財不足が深刻な課題となっています。厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」によりますと、「学歴別就職後3年以内離職率」は、3割から4割でほぼ横ばいとなっています。そのうち高校生は、令和5年のデータで37%と大学生の32.3%を上回っています。

「県内高校の卒業者数減少も相まって人財不足が急速にすすんでいる」、「高卒者の離職をなんとか食い止めたい」との声も聞いています。この背景には高校生が就職する際、高卒者の職種が限られていることや、マッチングが上手くいっていないことが考えられるのではないでしょうか。また近年、普通科では就職希望者が少ないため、進路指導教員と企業との接点が少ないことが背景として考えられます。

例えば、就職を希望する高校生や進路指導教員に対して、労働基準監督署、ハローワークやひょうご仕事と生活センターとのさらなる連携をはかる等、在学中に進路情報が十分に提供できる機会をつくることが必要であると考えます。

高校生と県内企業とのミスマッチをなくし、どのように県内に就職する人財の確保に繋げていくのか、今後の県のマッチング支援のあり方について、見解をお伺いいたします。

(橋本 成年 議員)[発言方式:一括]

1 在宅介護を支える介護人材の確保対策について
2 公共交通事業従事者の確保対策等について
3 交通渋滞対策の今後の展開について
4 JR武田尾駅のバリアフリー化について
5 新型コロナウイルス感染症対策の検証について
6 部活動改革の推進について
7 投資名目の詐欺防止のための対策強化について

橋本 成年

(選挙区:宝塚市)

一般質問

橋本 成年 議員が一般質問を実施

質問日:令和6年2月26日(月)

質問者:橋本 成年(ひょうご県民連合)

質問形式:一括方式

先日、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が主催する21世紀文明シンポジウムに参加してきました。タイトルは「気候変動問題と社会の大転換」というもので、東京大学准教授の斎藤幸平さんが基調講演されました。その中で、私は「ケア革命」という言葉に感銘を受けました。労働の価値というものを、他者や自然からの収奪・略奪もいとわない冷たい生産性至上主義から、他者や自然へのケアを中心とした新たな豊かさと幸福の追求へ転換すること、というふうに私はその言葉を理解しました。

戦争や災害による破壊を目の当たりにして、無力感に襲われることもある私たちですが、言論の力に信頼し、「ケアによる新しい文明」を創出することを願って、通告に従い7項目一括方式で質問させていただきます。

1 在宅介護を支える介護人材の確保対策について

介護の現場を担う人材の不足が深刻さを増しています。2022年度の施設介護職員の有効求人倍率は3.79倍、訪問介護員(ヘルパー)は15.53倍となっています。また、全国社会福祉協議会 中央福祉人材センターの調査によると、介護支援専門員(ケアマネージャー)の有効求人倍率も3.69倍となるなど、全産業平均の有効求人倍率1.31倍を大きく上回っています。

特に、介護が必要な方の自宅へ訪問し、介護を行うヘルパーの不足は深刻で、在宅で介護を担う人材が枯渇すると、生活が成り立たなくなるご家庭が続出し、介護離職の増加を招く恐れもあるなど、経済全体への打撃も懸念されるところです。

そのような中で、来年度は介護報酬の改定が予定されていますが、訪問介護にかかる基本報酬は2%程度のマイナス改定と発表されました。厚生労働省の説明によると「介護職員処遇改善加算のプラス幅を大きくして、実質的に増額となる」とのことですが、基本報酬の引き下げによって処遇改善加算のプラスと相殺されてしまう恐れがあると考えます。マイナス改定の理由としては、直近の全介護サービスの介護事業経営実態調査(2022年度)の結果から、訪問介護の利益率が7.8%と、前年度の5.8%から2ポイント改善していることがあげられています。しかし、特に小規模の訪問介護事業所は、処遇改善加算についても上位区分での算定ができていないなど、経営実態は大変厳しいとお聞きしています。利益率が改善しているのも、収入が増えない中で、人材確保が困難で人手不足による人件費の減少があるためで、現場のひっ迫状況には変わりない、との分析もあります。事実、昨年の訪問介護事業者の倒産件数は67件と過去最多を記録しています。

また、訪問系サービスについては、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった入居施設に併設する形で、多くの利用者を囲い込んで収益を上げているケースも含まれています。こうした一部の事業所のビジネスモデルが訪問介護の利益率向上の一因と思われます。実際、介護報酬では同一建物減算、これは事業所と同一または隣接する敷地内に所在する建物に居住するサービス利用者への介護報酬の減算措置ですが、この算定を受けている訪問介護事業所の方が利益率が高く9.9%、個々の利用者の自宅を訪問してサービス提供を行う減算を受けていない事業所は6.7%と、減算を受けていてもなお3.2ポイントの乖離があります。

在宅介護の肝である介護支援専門員(ケアマネ)の成り手不足や離職も深刻です。従来は介護現場で経験を積んだ方が、キャリアアップとしてケアマネを目指すキャリアパスが想定されていましたが、介護職員には処遇改善加算が適用される一方で、在宅介護を支援するケアマネの処遇改善が進んでいないため、ケアマネを目指すインセンティブが減少しています。ケアマネに求められる5年ごとの資格更新に際しては、費用面や時間的な負担を考慮して離職を選択するケースも多いと聞きます。

私は、在宅介護の現場を支える訪問介護のヘルパーや居宅介護支援のケアマネの存在が、2040年に向けて更なる高齢化と生産年齢人口の減少が進む地域社会にとって、極めて重要だと考えます。県としてできることは限られるかもしれませんが、良心的な事業者が撤退せざるを得ない状況は、何としても避けねばなりません。

一方で、介護保険法の改正により、本年4月から「介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析」が制度化され、都道府県には介護サービス事業者の経営情報に関する調査及び分析を行い、国へ報告する義務が発生します。これにより、収集した経営情報を属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表し、国民に分かりやすく情報提供していくことになります。

兵庫県では、介護支援専門員の研修を通じてケアマネージャーの資質向上に取り組み、併せて費用面や時間的な負担軽減に資する取組みも行っているとお聞きしています。ついては、在宅介護を支える介護人材の確保対策について、県の取り組みの現状と課題認識、新年度の介護報酬や制度改正への対応についてお聞きします。

2 公共交通事業従事者の確保対策等について

コロナ禍を経て、厳しい状況が続く公共交通事業において、もっとも切迫した課題が従事者の人材確保です。私の住む宝塚市内においても、すでにバスの運転手不足による減便や路線廃止が行われていると聞きました。公益社団法人日本バス協会による全国のバス会社への聞き取りによると、2023年度では必要なバス運転手12万1000人に対して、実際に従事しているのは11万1000人と、約1万人の不足となっています。また、いわゆる2024年問題による運転手の労働時間規制強化によって、さらに不足は深刻化する恐れがあります。同協会では、国や自治体への補助算定の改善のほか、人材確保のために必要な賃上げの原資となる定期的な運賃改定や、特定技能の在留資格を活用した外国人運転手制度の創設などの対策も求めているところです。

バスやタクシーなど有償旅客運送をする場合に必要な第二種免許の保有者は、2018年の約180万人から2022年には158万人まで減少しており、そのうち65歳以上が約81万人と過半数を占めるなど、絶対数の不足と高齢化が著しく、運転手の成り手不足の大きな要因です。また、取得に要する費用も普通二種で20万円以上、大型二種では30万円以上を要するうえ、二種免許取得の年齢要件などを緩和する受験資格特例教習には別途30万円程度が必要になるなど負担が大きく、新たな人材を確保するために事業者が補助することで何とか免許取得を促しています。

今後の地域公共交通を守っていく趣旨から、二種免許の取得を公的に支援する必要性があると考えますが、令和6年度の地域公共交通事業者の人材確保支援事業について、どのような支援を考え、効果を期待しているのかお尋ねします。

また、いわゆるライドシェアに関する議論について、本議会でも平成29年6月議会において、「白タク行為の容認を旨とした規制改革の自粛を求める意見書」が議決され、安全の確保や利用者保護の観点から、極めて慎重な検討が必要との認識が示されています。現在、国土交通省において「法人タクシー事業による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い(いわゆる日本版ライドシェア)」がパブリックコメントに付されていますが、公共交通事業従事者、なかでもタクシー運転手にとっては非常に不安が大きいとお聞きします。同取り扱いが根拠とする道路運送法第78条第3号の「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」に該当するとの判断には、少なくとも、タクシー需要に供給が追い付かない客観的な状況が示され、かつ旅客運送の安全性の確保についても十分に配慮されている必要があると考えます。兵庫県として、この件についてのご見解を伺います。

3 交通渋滞対策の今後の展開について

交通渋滞の発生は、社会経済活動の低下や大気汚染等の沿道環境悪化、温室効果ガスの排出増など、日常生活や環境面に支障を来たしており、渋滞解消に向けた取組みは喫緊の課題となっています。県では渋滞交差点解消プログラムを策定し、すでに実施済みの第3期までのプログラムで、平成14年度から30年度にかけて、渋滞交差点は223か所から35か所に減少したと承知しています。その効果は、渋滞による時間損失を金額に換算すると、平成14年度の約440億円から平成30年度には約125億円まで改善したとお聞きしており、大きな成果が出ています。

現在の第4期プログラムでは県内57か所の渋滞交差点を選定し、今年度末までに半数の交差点で解消・緩和を目指すとしています。私の地元である宝塚市内においても、宝塚歌劇場前交差点など4か所が選定され、渋滞解消に向けた取り組みが実施または検討されています。

渋滞対策には、交差点改良などのハード対策と、交通需要マネジメントなどのソフト対策がありますが、やはりハード対策が分かりやすく渋滞解消に直結するため、中心的な役割を担っていると考えています。一方で、ハード対策は設計や用地交渉も含め相当の時間を要し、短期間での事業実施が困難なケースも多いものと思われます。また、現プログラムにおいては渋滞交差点に選定されていないものの、例えば、宝塚市役所前交差点など、かなりの渋滞が発生している個所も存在するなど、課題も残されています。

宝塚市内の渋滞交差点に関しては、完成目前の県道尼崎宝塚線小浜南工区の完全4車線化が実現すれば、中国道宝塚ICへのアクセスが大幅に改善するため、一定の効果があると想定されます。その際、西宮方面から中国道宝塚ICへ向かう車両に対して、宝塚市役所前を通らずに、武庫川新橋経由で南から宝塚ICへ誘導するなど、渋滞解消の効果を最大限発揮できるようなソフト対策も、併せて実施していくことが必要と考えます。

また、令和6年度予算案において「ビッグデータ活用等渋滞対策検討事業」が計上されています。これにより、詳細な渋滞情報の収集分析を行い、交通需要マネジメントなどソフト面での対策も含めた新たな検討が進むものと期待しています。

そこで、ビッグデータ活用等渋滞対策検討事業を含めた交通渋滞対策の今後の展開について、お尋ねします。

4 JR武田尾駅のバリアフリー化について

宝塚市内で唯一残されたバリアフリー未対応の鉄道駅であるJR武田尾駅は、乗降客数は一日1000人程度ですが、市北部にあたる西谷地域の玄関口として、重要な役割を担っています。もともとは武庫川の渓谷沿いに単線の未電化路線が走っていましたが、1980年代の複線電化によって、駅プラットホームの半分がトンネル内、半分が橋梁上という非常に珍しい形態の駅舎となりました。現在、県・市・事業者であるJR・地域住民などによる駅周辺も含むバリアフリー基本構想の取りまとめが進んでいますが、それに基づく駅のバリアフリー化整備については、国庫補助金の対象となる見込みとお聞きしています。

住民の期待が高い駅舎のバリアフリー化、中でもエレベーターの設置については、橋上に設置された駅の構造上、技術的な課題もあることから、バリアフリー基本構想案では6~10年以内の完了を目指す中期の事業と示されています。一方、高齢化が進む地域住民にとって、10年後にエレベーターがついても生きとらへんなあ、といった声も聞こえてきます。

駅舎整備については、事業者であるJRが実施主体となって進められると承知していますが、地域住民の願いでもあるバリアフリー化の早期実現に向け、県としても引き続きの事業推進をお願いしたいので、ご所見を伺います。

5 新型コロナウィルス感染症対策の検証について

2020年3月に初めて県内で感染者が確認されて以降、3年以上にわたって前例のない取り組みを続けてきた新型コロナウィルス感染症対策について、検証報告書のとりまとめが行われました。感染症法上の位置づけが5類に移行するまでに、保健・医療関係の専門家も参画する全庁体制の対策本部会議を合計81回開催するなど、各フェーズに応じて機動的な対応を図ってこられたものと承知しています。

もちろん、初めてのことゆえ、関係者間での情報共有一つとっても、何を誰と共有すべきか、の認識合わせから困難もあったことでしょう。かなりの混乱の中で手探りの対策を進められ、徐々にやり方を構築してきたのではないかと推測します。今回の検証報告書は、県の新型インフルエンザ等対策行動計画や感染症予防計画に反映して、今後の新たな感染症へ備えるため、県民モニターから約1800件の意見回答をお寄せいただいたほか、県内市町・各種団体・兵庫県新型インフルエンザ等対策有識者会議などの意見も聴取しながら、作成されました。作成に当たっては、保健医療・福祉・経済・生活・社会活動・教育・体制および広報の8分野について、様々な知見が集約されたものと思われます。

一方で、新たな感染症危機も含めて、危機対応とは想定外のことが起こるのが常であり、いかにして想定外を想定していくかの想像力が求められます。様々な現場や立場から寄せられたご意見は、ある種、主観的な物語かもしれませんが、そこに含まれた知見にも大いに汲むべき価値があると考えています。

ついては、今回の検証を踏まえ、何を教訓として引き継いでいくのか、どのような心構えや備えが今後の危機対応において意味を持つのか、知事のご見解を伺います。

6 部活動改革の推進について

部活動改革について、国の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」に基づき、県においては現在、地域連携・地域移行に向けた実証事業を実施しているものと承知しています。昨年2月にまとめられた「中学校運動部活動の地域移行検討に関する実践研究の実施成果報告書」によると、休日の部活動の段階的な地域移行について、拠点校でのアンケートからは、参加した生徒・保護者はおおむね肯定的に評価しているものの、平日と休日で異なる指導者の連携・協力体制の構築など課題もあり、地域連携・地域移行を統括する推進協議会等の組織が必要ではないか、などの指摘がなされています。

県教育委員会では来年度において、各市町の個々の課題を踏まえた円滑な改革を進めていくために、①地域移行型、②地域移行と地域連携のハイブリッド型、③地域連携型の3タイプによるロードマップを検討していくとお聞きしています。これら3つの類型には、学校管理下での部活動であるのか、もしくは学校管理外で地域クラブによる受け入れによる活動とするのか、あるいはそれらのミックスかというにとどまらない、部活動が持続可能な形へ移行していくための、大きな課題が示されているように感じます。冒頭に触れた国のガイドラインにおいても、新たな地域クラブ活動は社会教育の一環ととらえられており、責任の主体も、基盤となる理念も従来の部活動とは大きく異なることから、連携・協力のあり方が課題となるのも当然です。

このテーマの一番大きな課題は、そもそもクラブ活動とはどのようなものであるべきかといった根本的な理解と、なぜ改革が必要なのかという目的意識を関係者が共有し、意識改革を進めることだと考えます。学校部活動が持っている初心者が気軽に参加できる間口の広さ、同じ興味関心を持った生徒が自主的・自発的に参加して人間形成に資するといった、体力や技能の向上にとどまらない意義を活かしながら、教員の負担を軽減し、活動の持続可能性を高めていく道筋を、生徒をはじめ教員や保護者、地域スポーツ関係者などを巻き込み、対話によって見出していくプロセスこそが重要だと考えます。

また、中長期のスパンでは地域移行により、学校から地域社会への流れが実現していくとしても、いままさに、来年度のクラブ活動がどうなっていくか、不安の中にある生徒や保護者のことも忘れてはなりません。できれば、部活動改革を通じて、中学生が自主的・主体的に「部活動がこうなったらいいな」「こんなクラブ活動がしたいな」といった意見を実現する機会となることを希望しています。

地域移行への取組みの一方で、教員の負担軽減と、専門的な技術指導を受けられない生徒への指導を目的に、部活動の指導や大会引率等を単独で実施できる部活動指導員の配置も進められています。これは学校管理下での部活動に地域人材を招き入れる地域連携の一環だと理解しています。これまで教員が担ってきた仕事の一部を、新たな人材への人件費として予算化、見える化することにもつながり、各市町からの要望も多いと聞きます。従来の部活動との連続性を考え、地域連携を進めていくことを地域が選択することも引き続き可能となるよう、予算の確保も含め、さらなる対応を進めていただきたいと思います。

以上のような観点から、学校部活動の改革に向けた具体的な進め方と、外部人材の活用における課題認識をお伺いします。

7 投資名目の詐欺防止のための対策強化について

報道によると、4月から警視庁に特殊詐欺対策本部が設置され、広域にまたがる特殊詐欺への対策を強化するほか、全国の捜査員を含めて200人規模の「特殊詐欺連合捜査班」も設置されるなど、取り組みが進むと期待されています。一方で、投資名目で勧誘しつつ、実際には事業の実態がなく、集めた資金を配当金と偽って横流しする「ポンジスキーム」といった詐欺の手口が横行して、若年層から高齢者まで被害に遭うケースが続出しています。こういった投資名目の詐欺被害を抑止するため、取り締まりの強化と広報啓発が重要と考えます。

聞くところによりますと、県内での昨年の詐欺被害届は約3300件あり、前年比で約600件増加しており、うち特殊詐欺の増加が約150件、残る増加分に投資名目の詐欺が含まれるとのことです。投資名目の詐欺は、手口が多様であることから違法性のない投資勧誘行為との区別が難しく、外面的に一瞥しただけでは詐欺と特定しにくい特徴があります。

こうした実態から、投資名目の詐欺をどのように実態把握していくか、が一つの課題として挙げられます。詐欺罪等の中でも特殊詐欺は、「被害者に電話をかけるなどして、対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振り込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪」と定義されていますが、投資名目の詐欺は対面する機会を持つなど、相当程度のやり取りを通じて実行されることが多く、特殊詐欺の概念になじまないとも考えられます。

しかしながら、投資名目の詐欺は特殊詐欺と同じく単独犯は想定できず、相当程度に組織だった犯罪集団が背後に存在すると考えられます。不特定多数の者へLINEをはじめSNS等のデジタルツールも使いながらアプローチするなど、特殊詐欺への捜査との共通点もあるように思われます。特殊詐欺の一種と位置付けるかどうかはともかくとして、いわゆる半グレ的な集団も含めて、組織的な犯罪集団への捜査という側面からもアプローチが必要だと考えます。

さらに、一般的に高齢者が狙われると言われている特殊詐欺と比較して、投資名目の詐欺については、副業や投資に関心を持つ若年層にも被害が広がっているうえ、マルチ商法的な手法により被害者が巻き込まれて加害者になってしまうケースも見受けられ、広報啓発の重要性は高まっています。実際に、SNS等を通じて「絶対に儲かる」などの詐欺としか思えない勧誘は日々見受けられ、サイバー空間を利用して実行される詐欺の取り締まりも重要になっています。

そこで、以上のような側面を踏まえて、投資名目の詐欺に対する県警としての課題認識や対策対応の在り方、そして今後の展開方針についてお聞かせください。