第304回定例会(2月)代表質問
2010年2月23日(火)
1 平成22年度における新行革プランの実施方針と総点検の取り組みについて
2月17日、井戸知事から「変化の時代だからこそ、改めてその精神に学び、共に生きる社会を築き、新兵庫再生をめざし、誠心誠意取り組んでいく」と力強い決意とともに、平成22年度当初予算案が提案されました。来年度は、新行革プランがスタートして3年目の総点検の年であり、また、井戸県政3期目初の予算として、従来にも増して非常に重要な予算であると考えます。
予算案の内容を見てみますと、歳入は地方交付税等の見直しなどによって1,158億円の増額となり、また、歳出では人件費の削減や投資的経費の抑制などを実施した結果、新行革プランの財政フレームに示された要調整額が、従来の見込みを下回り、来年度はゼロ、平成30年度までの全体で565億円の減が見込まれています。
しかし、昨今の厳しい経済情勢や所得水準の低下等を背景に、法人関係税、個人県民税など県税収入の落ち込みは続いており、後期高齢者医療事業など社会福祉関係経費の増嵩等によって、なお884億円の収支不足が見込まれるほか、一般会計の県債残高も大幅に増加するなど、県財政の立て直しには依然として厳しい環境が続いており、より一層の「選択と集中」が求められることに変わりはありません。
最初にも述べましたように、来年度は新行革プラン3年目の総点検の年となりますが、私たちの会派では、新行革プランの検討段階から、一貫して県民の生命と生活に直結する医療・福祉、教育、治安等については、極力、行革の対象とすべきではなく、選択と集中によってメリハリのある改革を求めるとともに、プランの対象となった各分野においても、再検討も含めまだまだ精査すべき課題があり、「推進に関する条例」に規定されたフォローアップの仕組みを最大限活用し、県民本位の改革となるよう繰り返し訴えてきたところです。
例えば、事務事業では、1年間の周知期間を経て、昨年7月から老人医療費や乳幼児等医療費など福祉医療の見直しが実施されましたが、県民生活への影響を十分検証する必要があると考えますし、景気が低迷する中、投資事業については、必要性・緊急性など事業の優先順位、事業評価のあり方など透明性、公平性の確保のあり方とともに、事業費総額の段階的な抑制方針における、地域経済への影響もさらに精査する必要があると考えます。
また、新行革プランでは、土木事務所や健康福祉事務所の統合再編が行われましたが、このことが県民、市町、関係機関等から、どのように評価されているのか、そして、県民サービスの確保を図るため設置された保健支援センター、地域普及所も含め検証が求められます。
このように事務事業、投資事業等の見直しが進む一方で、新行革プランに基づく給与の大幅な減額措置に加え、昨年12月には、人事委員会勧告に基づいて、過去最大となる期末・勤勉手当の引き下げを主な内容とする職員の給与改定が行われました。
定員についても行革期間の11年間で概ね3割の削減が予定され、とりわけ平成20年度から22年度までの3年間で削減総数の2分の1となる概ね1.5割の削減がなされ、給与についても秋には、さらに厳しい内容の人事委員会の勧告も予想されることから、行財政構造改革審議会が「専門的な分野における将来の人材育成や職員の意識改革、士気高揚などに特に留意されたい。」と指摘するように、給与は削減しやすいとは言え、削減にも限界があり、本当に職員のモチベーションが保てるのか、また、真の行革となりうるのか大いに危惧するところであり、より慎重な検討・対応が必要と考えます。
新行革プラン策定後、社会経済情勢の変化とともに、県政・県財政を取り巻く環境は、目まぐるしく変化し、県民生活にも大きな影響が及んでいます。
新行革プランは、この2年間、関係方面のたゆまぬ努力により一定の成果を上げることができましたが、今後は、さらに県民自らが自分たちの課題と捉え、その理解と協力を得るためのプランでなければならないと考えます。
そこで、平成22年度における新行革プランの実施方針について伺うとともに、新行革プラン3年目の総点検にどう取り組まれるのか、とりわけ聖域なき改革という方針の下で、定員・給与、事務事業、投資事業の3つの柱について、現状を踏まえた上で、来年度以降、どのような考え方で臨まれるのか知事の方針をお伺いします。
2 県政課題に立ち向かう県民運動の構築について
急激な社会経済情勢の変化等により、少子高齢対策、自殺防止対策、環境問題への取り組み、さらに、今年に入り女子中学生らが大麻所持容疑で逮捕・補導されるというショッキングな事件に象徴される麻薬対策など、その改善・解決に向けて、担当部局だけでなく、広範な連携を必要とした、短期、また中・長期にわたる取り組みが必要な県政の課題が山積しています。
当初予算においても、各課題解決に向けて、手厚い予算配分、また新規事業も打ち出されていますが、対症療法的な対応に終始せざるを得ない施策もあり、例えば、後ほど質問します自殺防止対策など、懸命な取り組みにもかかわらず、結果として十分な成果を上げるに至っていないと思われる面も多々見受けられます。
どの課題についても、その解決・改善に向けてのより効果的な対策は、行政サイドのよりきめ細かい取り組みに加え、県民の参画と協働による、つまり、県民が自身の課題として捉え、その解決に向けて行動を起こすか、すなわちいかにして全県的な県民運動としての意識づけ、動機づけをすることができるにかかっていると考えます。
思い起こせば、15年前の阪神・淡路大震災の際、全国各地から、また県内各地から仕事も休み手弁当で、救援・支援活動に約140万人とも言われる多くの方に来ていただいたこと、さらに、子どもの命を助けるための募金活動も、厳しい経済不況の中であっても数日にして億単位の募金が全国から寄せられることなど、その目的が理にかない、人々の正義感に訴え、共感を得ることができれば、県民の誰もが率先して行動を起こしていただけるという大きな証明だと考えます。
そこで、県民に身近な県政を推進する上で、神戸・阪神・播磨・但馬・丹波・淡路というそれぞれの地域性を重視し、地域に根ざして地域の活性化を促し、市町との連携と適切な役割分担のもとで、県民や市町の声に応える現場重視の施策を実現していくという重要な役割を担うために、県民局が設置されています。
まず、各県民局において、前述した県政課題を選択して、良い意味での競い合いの中で、より確かな成果を上げるため、市・町単位、地域単位で県民運動を喚起し、より県民に直結したきめ細かい施策を展開することによって、確かな成果を上げ、その効果・ノウハウを全県的な施策として県下全域に広めていくという仕組みづくりを考えてはどうでしょうか。
現在、県民局長の裁量で執行できる予算として、一律5千万円の地域戦略推進費が措置されており、その予算を有効活用するということも一考の価値があると思います。
また、毎年度、「兵庫宣言」とも言うべき、兵庫ならではの一大県民運動を提起し、その解決に向けて県民総参加の取り組みを発信することも考えてはいかがでしょうか。
そこで、県民自らが県政課題の解決に立ち向かう県民運動の構築、意識の醸成について、当局の所見をお伺いします。
3 自殺対策の推進について
警察庁の調査では、昨年1年間で自殺を図り亡くなった人は前年と比べ504人増加し3万2,753人となり、12年連続で自殺者が年間3万人を超える最悪の事態となりました。自殺未遂は、その10倍とも言われていますが、実に、1日に100人の方が自殺で亡くなっているという深刻な状態が毎年繰り返されています。
特に、雇用情勢と自殺者数との間に強い相関関係があると指摘されていますが、とりわけ一昨年の金融危機以降の急激な景気の落ち込みによる失業者の増加が影響していると考えられ、「ハローワーク心の健康相談」を利用した失業者のうち、1か月以内に「死にたいと思ったことがあった」と回答した人は78%、「実際に自殺をしようとしたことがあった」と回答した人は22%にも上っています。
失業者が増加傾向にある現在の経済・雇用状況の中にあっては、さらに自殺者が急増しかねませんし、とりわけ憂うべきは、20歳、30歳代の死因第一位が自殺であり、30歳代の自殺は一昨年に過去最多を記録するなど、我が国の将来を背負って立つ若い世代が、何ものにも代え難いたった一つの尊い命を自ら絶たつという悲劇が繰り返されているという現実があります。
一方、ある公的調査機関が行った試算では、我が国の自殺者数が急増し初めて3万人を超えた1998年から、2000年の3年間の平均で約1兆3千億円のGDPが損失されたという報告もなされています。自殺対策は、心理学的視点、社会・文化的視点に加え、県民の福祉向上を最大の使命とする地方公共団体として、経済・財政施策や雇用施策など多角的な視点から総合的に推進していくことは、言うまでもありません。
このような状況に鑑み、本県では、これまでの全国に先駆けた対策に加え、昨年5月に、全庁的な推進体制として知事を本部長とする「兵庫県自殺対策本部」を設置し、補正予算では自殺対策強化基金を造成するなど、「県民の自殺予防に対する理解の促進」や「こころの健康の保持対策」などの実施、さらに、来年度予算では、自殺対策に取り組む市町への補助制度の全市町への拡大など、さまざまな視点から自殺対策の強化に努めておられることは大いに評価をいたします。
しかし、残念ながら県内の自殺者数は、懸命の自殺防止対策、施策の実施にもかかわらず、平成20年にはいったん減少に転じたものの、昨年は再び増加し1,354人の方々が亡くなられており、依然として高い水準で推移しています。
以前にも取り上げましたが、昨年度に、我が会派が調査のため訪問したフィンランドでは、国の主導のもと、地方自治体レベルで自殺防止対策を行い、関係諸機関があらゆる枠を超え、民間団体との協力も含めた横断的な連携を実施しており、市民への広報の徹底、とりわけ、我が国においても、国・県段階において、今後、検討しなければならないとされている報道機関との防止に関する協力・連携が密に行われたことにより、大きな効果を上げています。
また、国内に目を向ければ、神奈川県では、平成19年度から、地域自殺対策推進事業の一環として、都市部におけるモデル地区を選定し、3年計画で体制整備、人材育成、地域づくりなどを実施し、取り組みの成果を各市町村に還元しようという施策を関係機関の協働事業として展開しています。
昨年11月に、内閣府が取りまとめた「自殺対策100日プラン」では、一人でも多くの人に、「自殺は私たちにとって身近で深刻な社会問題であり、社会全体で自殺対策に取組まなければならない」といった意識を共有してもらうためにも、国民運動として啓発活動を推し進めていくことを基本戦略の一つに掲げています。
県では、平成28年までに県内の自殺による死亡者を1,000人以下に減少させることを目標に、前述したような総合的な自殺対策事業を県政の最重要課題の一つとして推進されていますが、昨年までの数値を見る限り、現状では、残された7年間でその目標を達成することは非常に困難であると指摘せざるを得ません。
何度も指摘してきたように、県民自らがお互いを見守り、助け合うという体制をつくり上げるためにも、また、県民に県としての防止対策の総合的な施策内容と取り組みの重要性をアピールする意味でも、横断的な全庁挙げての施策の拠点として、県庁内に自殺防止対策の専門部署としての課・室を設け、中・長期的な県民運動としてさらに推進体制を強化すべきと考えますが、当局の所見をお伺いします。
4 少子対策の推進について
近年の急速な少子化の進行は、労働力人口の減少、高齢化の進展をもたらし、我が国全体が直面している経済成長の鈍化、税や社会保障費の負担増、地域社会の活力低下など、深刻な問題の多くは、そこに起因しているといっても過言ではありません。
国においては、先月29日に、今後の子育て支援の方向性についての総合的なビジョンである「子ども・子育てビジョン」を策定し認可保育所の定員増をはじめ各種施策に関する数値目標の設定、子育て支援策を一元的に扱う「子ども家庭省(仮称)」の検討など多岐にわたる重要政策に関し、子どもを生み育てることに夢を持てる社会を実現するために、政府を挙げて強力に推進することを掲げています。
一方、本県では、平成17年に庁内横断組織として少子対策本部を設置して以降、5年間で25万人の出生数を目標に掲げた「ひょうご子ども未来プラン」の策定をはじめ、私たちの会派が少子化対策調査特別委員会等を通じ強く主張してきた、法人県民税の超過課税による少子対策を総合的に強化する施策として、多子世帯の保育料軽減、子育てと仕事の両立支援、子育て世帯への支援などを、予算に反映してこらたことは、大いに評価し敬意を表したいと思います。
また、プランが策定された平成17年と20年を比較してみますと、県下の出生数は47,951人から49,222人、合計特殊出生率では1.25から1.34と上昇傾向が見られるものの、有配偶者率や出産適齢期の女性人口の減少、さらに、景気、雇用の悪化といった厳しい経済環境が若者の賃金水準や就業に影響を及ぼし、そのことが結婚・出産を躊躇させるなど、まだまだ多くの課題が残されているとともに、近年、若者の結婚観自体が大きく変化してきていることも見逃すことができません。
本県では、全国に先駆けた先導的な取り組みとして、平成18年3月に県・連合兵庫・経営者協会が「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」を行い、20年10月には、兵庫労働局を加えた四者による「仕事と生活のバランス」ひょうご共同宣言を採択しており、この三者合意や宣言の趣旨を確かなものとし、この分野の施策をより一層促進することも重要であると考えます。
県では、この度、これまでの「ひょうご子ども未来プラン」の達成状況や少子化問題を取り巻く状況の変化等を踏まえ、平成22年度から5年間を計画期間とした「新ひょうご子ども未来プラン」を策定することとしていますが、例えば、前述したように、内閣府が昨年実施した調査では、結婚しても必ずしも子どもを持つ必要がないと考える若者が20歳代で63%、30歳代で59%に上り、若い世代ほど子どもを持つことにこだわらない傾向が顕著に表れており、新たなプランに掲げる目標数値の設定、達成のためには、このような若者の意識の変化や生き方の多様化に対する対策も十分考慮しなくてはなりません。
来年度予算案に計上された待機児童解消に向けた各種の事業や、子どもの健全育成を図るためのヒブワクチン接種への支援といった施策については大いに評価をいたしますが、「新ひょうご子ども未来プラン」には、このような現状に即した対症療法的な施策だけではなく、過去5年間のプランの数値目標達成に対する評価と課題に加え、若者の意識の変化や生き方の多様化に切り込んだ将来を見据えた施策を推進していく必要があると考えます。
そこで、現行のプランで検証された評価と明らかになった課題に基づき、新たに設定される新プランの重点目標に対して、その達成のためどのような対策を講じていくのか、その決意と併せ、考え方をお伺いいたします。
5 若年者の雇用就業機会の確保・拡大について
我が国経済は、新興国向けの輸出の回復などにより、一部に持ち直しの兆しも見られるものの、物価が持続的に下落するデフレや円高などで経済の先行きは不透明感が強まっており、企業は人員抑制を続けています。
県内の昨年12月の有効求人倍率は0.43倍と3か月連続の横ばい状態からマイナスに転じる一方、新規求職者は前年同月比で5.1%増となっており、県下の雇用情勢は依然として非常に厳しい状況にあります。
とりわけ、今春卒業予定の県内高校生の就職状況は、昨年12月末時点の内定率は78.9%にとどまり、前年同期から8.6ポイント下がり下落幅は過去最大、また12月1日時点の大学生の内定率は、73.1%で調査開始以来最低となり、2000年前後の就職氷河期と言われた時期に匹敵する厳しい雇用状況にあることが改めて浮き彫りになっています。
一方、就職意欲を持たないいわゆるニートの存在も大きな社会問題となっており、現在、県内のニートは約2万8千人と推計されています。若年失業者やニートの増加は、本人にとって、職業能力・技術が蓄積できない、また経済的自立ができず将来の展望が持てないなどの問題があり、社会全体にとっても、職業能力や技術力の低下に加え、職業能力等の乏しい世代の増加による社会的不安要因、すなわち納税者や保険料負担者の減少による社会保障制度の崩壊を招く危険性の増大など、国家的課題として看過できない問題となっています。
さらに、発達障害や何らかの事情で精神疾患を抱える若者にとって、現在の不況の中で、就職へのハードルはより一層高くなっているという憂慮すべき実態があり、このような若者がさらに就業から追いやられてしまうのではないかと大きな懸念を抱かざるを得ません。
そこで、フリーターなど若年失業者やニートへの支援として、県では「若者しごと倶楽部、同サテライト」を設置し、国では「若者サポートステーション」を県下4箇所に順次設置するなど、国、県ともに若者への就職支援に努めるとともに、県では、平成19年7月に、とりわけ就職意欲が乏しく、社会性が薄く引きこもりがちな特性を持つニートに対して、関係機関によるネットワークを構築し、各支援機関の特性を十分に活用するとともに、支援実績の情報交換を行うなど、ニートの総合的な支援を目的とした「ひょうごニート支援ネットワーク」の運営が行われています。
若年者の就職率が低下すれば、新たなニート・フリーターを生み出し、県内経済の停滞や少子化に拍車をかけることが懸念され、従来のように各機関・施設が行う縦割り的な個別の取り組みでは限界が来ており、このようなネットワークをより有効に活用し、ワンストップ機能を一層高めていくことが求められていると考えます。
また、引きこもりや発達障害等を抱え働く自信をなくした若者に対しては、合宿形式の生活訓練を行う「こうべ若者自立塾」が平成19年に設置され、昨年までの入塾者50人のうち、半数を超える28人が入塾時に「うつ病」や「発達障害」等を抱えているという中で、医療関係者との連携、職業訓練、就業支援の取り組みを行い、大きな成果を上げていますが、さらに継続・拡充した取り組みも望まれます。
そこで、県として、若年者への雇用就業対策の充実強化に加え、不況、雇用不安が深刻化する中で、ニート・引きこもりなど何らかの問題を抱えた若者が置き去りにされないよう、若年者全体に目を向け、自立を含めた訓練をはじめ就業に至るまでの入口部分の対策とともに、安定した雇用就業機会の確保と拡大に向けた施策を加速させていくべきだと考えますが、当局の所見を伺います。
6 「観光立県ひょうご」への取り組みついて
観光は旅行業、宿泊業、運輸業、飲食業、土産品業などに関連する裾野の広い産業であり、観光産業は我が国の経済、人々の雇用、地域の活性化に資するもので、新時代の成長産業として期待されるとともに、とりわけ訪日外国人旅行者の増加は、国際的な友好親善の促進加え、国内の旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化といった大きな経済効果が期待できます。したがって、今、観光分野における施策はより重要となっています。
しかし、世界的な景気後退や円高、新型インフルエンザ等の影響によって、昨年、日本を訪れた外国人観光客は697万人と、前年の835万人から18.7%減少し、23年ぶりに2桁台の落ち込みとなるなど非常に厳しい1年になり、本県も同様の傾向が表れています。
本県では、昨年4月から6月にかけて、兵庫の魅力を全国に発信する「あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン」の実施、さらに、新型インフルエンザの風評被害から早期回復を図るため、7月から9月には「やっぱり、ひょうごキャンペーン」を展開するなど、切れ目のない観光客の誘致に全庁挙げて努めてこられましたが、まだまだ入込数の回復・底上げを図るための施策を講じなければなりません。
兵庫には、例えば、有馬温泉や城崎温泉、北野異人館や姫路城といった多様で魅力ある観光資源が数多く存在していますが、今後は、このような全国的に知名度の高い資源だけではなく、各地域に存在するさまざまな地域資源の見直しと掘り起こすことによって、リピーターを増やし、新たな観光スポットを体感してもらう取り組みの強化を図るため、例えば、一つのアイデアとして、来年度、企画県民部で新たな交流促進事業として導入予定の県民の県政や地域活動にポイントを付与する「ひょうごポイント」のノウハウを参考に、観光施設・観光スポットなどの連携の中で、観光を重ねることによって、観光客に何らかのメリットを付加するという仕組みも検討してはどうかと考えます。
また、国際観光に目を向けると、訪日外国人旅行者数は、韓国、台湾、中国など東アジアの国・地域が上位を占め、兵庫県を訪れる外国人旅行者にも同様の傾向が見られます。特に、これまでの団体旅行に加え、昨年7月に訪日個人観光ビザの発給が始まった中国については、目覚ましい経済成長と相まって、今後、観光客の一層の増加が期待されるところです。
本県の外国人誘客数は、全国9位と比較的好位置にありますが、さらに上位を目指すためには、東アジアの国・地域からの誘客に、より一層力を注いでいくことが必要と思われます。
昨年12月には、中国杭州において、兵庫・大阪・京都の3府県知事による観光プロモーションが行われましたが、本県では、これまでにも友好姉妹都市である広東省や海南省を中心に、さまざまな人的交流を行ってきた歴史があり、このような交流を県への誘客へとさらに発展させていくことも非常に重要です。
中国からの誘客を促進するためには、先の12月定例会の一般質問で我が会派の吉本議員からも問題提起をしましたが、中国圏における海外事務所の設置を改めて検討していくなど、海外事務所を単に行革の対象として、廃止・縮小するのではなく、現地に密着した事務所として逆に有効に活用する方策を講じるべきだと考えます。
そこで、厳しい経済・雇用環境と財政難の中、地域資源の見直しや掘り起こしを行い、さらに、観光客が県下各地を周遊できるような観光拠点が連携した誘客の仕組みを積極的に講じるとともに、中国をはじめとする東アジア、さらには各国からの誘客を促進することによって、観光振興と県内経済の活性化、雇用の創出に寄与できる「観光立県ひょうご」への取り組みをより充実・強化すべきだと考えますが、当局の所見をお伺いします。
7 新たな環境施策への取り組みについて
かつての大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済構造は、国民、県民の生活に大きな恩恵や利便性をもたらしたという側面をもつ一方で、膨大な量の廃棄物の発生による埋立地等の最終処分場のオーバーフロー、不適正な処理による環境負荷の増大、天然資源枯渇への懸念、また地球温暖化など、深刻な環境問題を引き起こしてきました。
国土が狭く埋立地の確保が難しくなっている我が国において、家庭や事業所から発生するゴミの約8割が焼却あるいは埋立処理をしている現状があり、焼却炉からの有害な化学物質発生への懸念、衛生問題等、今後の立地は非常に困難な状況にあります。
焼却処理においても、エネルギーの蓄積物でもある製品を一瞬にして灰にしてしまうため、近年「もったいない」と捉えられ、リサイクル、リユースを支持する声も高まっていることもあり、焼却炉による処理・埋立処理自体の見直しを含め、今、多くの自治体にとって、ゴミの減量、リサイクルのための分別は避けて通れない懸案となっています。
このような状況に鑑み、国においては、これまで「循環型社会形成推進基本法」をはじめ、各種リサイクル法の制定を進め、国、自治体挙げて3Rや5R等を通じた持続可能な循環型社会の構築に向けた取り組みを進め、本県でも、「兵庫県廃棄物処理計画」の推進、廃棄物の一層の排出抑制、資源化・再生利用、さらに、ゼロ・エミッション社会の実現を目指した各種の施策を推進しているところです。
そうした中で、近年、さらに進んだ施策としてゴミを焼却せず、環境負荷を減らしながら堆肥化するなどの方法によって、燃やすゴミをゼロにする、すなわちゴミの発生回避を目的として、エネルギー消費が少なく、環境負荷の少ない自然代謝を最大限に活用した社会を目指すとともに、そもそも「ゴミになる物を作らない」「使わない」あるいはリサイクル、リユースがしやすい設計も視野に入れた「ゼロ・ウェイスト」という、これまでのゴミ政策を大きく転換する考え方が注目されています。
この「ゼロ・ウェイスト」は、イギリスの産業経済学者マレーが提唱した概念で、「無駄」「浪費」「ゴミ」がゼロであるということを意味しています。
海外では、1996年にオーストラリアのキャンベラ市が、焼却ゴミや埋め立てゴミをゼロにするため、目標年度を決めて埋立場を減らしたり、再資源化率を高めるなどの具体的な施策を推進するとともに、「ゼロ・ウェイスト」宣言を採択したのを皮切りに、その宣言を採択する自治体が世界各地に広がっています。
私たち会派が調査したところ、ニュージーランドでは、半数以上の自治体がこの宣言を採択しており、地方自治体のゴミ政策に対する積極的な取り組みや要求が環境省を動かし、国のゴミ政策にもゼロ・ウェイストを取り入れる原動力になり、生ゴミの堆肥化によりゴミの減量に成功したり、その関連施策で新たな雇用を生み出すことができ、さらにゴミの減量化によって埋立地の建設が凍結され、また焼却炉も不要になり予算化もしなくなったという財政的にも大きな成果が現れています。
一方、我が国の廃棄物処理方法は、前述したように安全な処理、減容化処理として焼却が広く普及しており、ダイオキシン類などの環境保全対策も進んでいることから、焼却を避けるという考え方、必要性については必ずしも十分な賛同が得られていない現状にありますが、2003年には徳島県上勝(かみかつ)町が2020年までに焼却処理・埋め立て処理の全廃を目標に、国内初となる「ゼロ・ウェイスト」宣言と行動宣言を行い、一昨年には福岡県大木町もこの宣言を採択しています。
県では、平成20年12月に「第3次兵庫県環境基本計画」を策定し、各分野の環境施策に取り組んでいるところですが、このような海外や国内の取り組みを参考に、次世代に継承する環境適合型社会の実現に向け、市町と連携し県民を巻き込んで「ゼロ・ウェイスト」の考え方を取り入れた環境施策を推進し、モデル地区の指定をはじめ、その取り組み、アイデアを県下全域に広める施策展開を検討してはどうかと考えますが、当局の所見を伺います。
8 実効ある「ひょうご教育創造プラン」の推進について
改正教育基本法が平成18年に施行され、地方公共団体には、教育の振興のための施策に関する基本的な計画、すなわち教育振興基本計画を定めることが努力義務として規定されました。
この法改正を受け、県では、平成20年8月に検討委員会を設置し、昨年の6月定例会において、今年度から平成25年度までの5年間を計画期間とする「ひょうご教育創造プラン」(兵庫県教育基本計画)が議決されました。
本県における教育の施策を見てみますと、これまで、本県においては、全国に先駆けて、小学校3年生の「環境体験事業」、5年生での「自然学校」、中学2年生での「トライやる・ウィーク」、また高校1年生の地域貢献事業や2年生の就業体験事業など、児童生徒の発達段階に応じた体系的な体験活動の推進、ADHD等の児童が在籍する小学校へのスクールアシスタントの配置、35人学級編制の小学校4年生までの拡大、小学校5・6年生を対象とした「兵庫型教科担任制」、さらには、震災の教訓を生かした生きる力を育む教育の推進や、個性や能力を伸ばす教育の推進に力を注ぎ、全国に誇れる教育施策を鋭意実行してこられたことは大いに評価されるところです。
一方で、教育施策において、学力問題、特別支援教育や県立高等学校教育改革等々、喫緊の課題も山積しています。
さらに、教育現場においては、近年、モンスター・ペアレントと呼ばれる、度を超えた苦情や要求を寄せる保護者の問題が顕著になっています。来年度、小・中学校に続き、高校にも、教育関係OBや弁護士、精神科医らによる「高等学校問題解決サポートチーム」が発足し、教職員が教育に専念できる体制づくり、また学校側の対応の瑕疵も含め、課題の早期解決や教育現場の信頼を得る取り組みが充実、拡大されます。
教職員に関しても、県教育委員会の調査では、平成20年度に病気のため休職した本県の公立学校の教職員は202人で、このうち精神疾患による休職者は94人と過去最多を占めるという憂慮すべき結果が出ています。さらに、危機的な財政状況を反映し、新行革プランでは、財政面からの県単独教職員、事務局職員の定員削減や、全国的にも評価の高い事業の予算上の見直しが行われるなど、教育を取り巻く環境はかつてないほど厳しい状況にあります。
私たちの会派では、兵庫の教育をより前進させるため、「ひょうご教育創造プラン」の策定と実施に当たっては、前述した課題に加え、教職員が子どもと向き合う環境をつくり子どもを中心に据えた教育を実現するための実効ある施策、さらに、教え込むのではなく、子どもの心を大切にした教え育む教育の実践等、繰り返しその充実と実効ある施策展開を求めてきたところです。
今定例会に「ひょうご教育創造プラン」策定後、初めてとなる予算が提案されました。そこで、兵庫の教育をより前進させるために、5年間の「ひょうご教育創造プラン」を実施するに当たり、前述したような教育を巡るさまざまな課題をどのように捉え、また、教育施策を実効あるものとするために、どこに重点をおいて取り組もうとしておられるのか、教育長の所見をお伺いします。