議会の動き

11年6月定例会代表・一般質問

代表質問

1.原発事故を想定した原子力防災計画の見直しについて
2.地域防災力の更なる向上について
3.節電対策について
4.ボランティア休暇制度の更なる普及と活用について
5.本県経済の活性化について
6.地域包括支援センターの更なる活用について
7.小中学校における食育の推進について
8.警察官退職者の積極活用による治安向上について

質問全文

第309回定例会(6月)代表質問
2011年6月21日(火)

 代表質問に先立ち、3月11日に発生いたしました東日本大震災により、尊い命を亡くされた皆様のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に対し、衷心よりお悔やみを申し上げます。また、今なお被災地で避難されておられます皆様に対して、心よりお見舞いを申し上げます。
 想像を絶する困難な状況の中、多くの方々が懸命に救援活動を続けておられます。本県からも、井戸知事のリーダシップのもと、警察・消防職員並びに県の職員や各自治体の職員の皆様が被災地に派遣され、日夜、救援・支援活動に取り組んでおられます。我が会派が被災地調査に参りました際にも、現地の方々からたくさんの感謝のお言葉をお聞きしました。被災地の復旧・復興に熱心に取り組んで頂いている皆様に対しまして改めて感謝申し上げ、深く敬意を表するとともに、今後とも更なる被災地・被災者への支援をお願い申し上げます。
 この東日本大地震発生を受け、私は県民の皆様から寄せられた提言を踏まえ、民主党・県民連合議員団を代表して、以下8点にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。

1 第2次行財政構造改革推進方策の今後の推進について

 質問の第1は、「原発事故を想定した原子力防災計画の見直しについて」です。
 去る3月11日に発生した東日本大震災では、これまでの想定を超える事態が生じ、戦後最大規模の災害となり、今なお多くの方々が不自由な生活を余儀なくされております。
 震災後のニュースや新聞記事等でも「想定外」や「未曾有」といった言葉が多用され、それだけ今回の震災が予想を超える大きなものであったことが伺われますが、県民の安全・安心を守る義務を負う我々は、このような言葉を安易に使うべきではありません。阪神・淡路大震災の経験と教訓、そして今回の震災から学んだ教訓を踏まえ、事前にあらゆる危険性を想定し、未然に災害を防止するための対策に、早急に取り組んで行く責務を負っています。
 既に、本県を含め、全国の多くの自治体が防災計画の見直し作業に着手しておりますが、その際、地震・津波対策に加え、忘れてはならないのが原発事故対策です。本県では2001年に、原発から10キロ圏外の自治体としては全国で初めて「原子力防災計画」を策定しましたが、県域から最も近い原発でも約50kmも離れていること等から、同計画は主に放射性物質の不法廃棄や運搬中の事故を想定したものとなっています。
 しかし、今回の福島第1原発事故では、半径20km圏内が警戒区域として立入が制限され、それ以外で放射線量の高い地域に計画的避難区域が設定されています。また、数百km離れた関東地方の水道水や農産物から放射性物質が検出されるなど、放射能汚染も広範囲に及んでいます。
 関西では、福井県内に14基の原発が集中しており、万が一、これらのいずれかで今回のような事故が発生した場合、その被害は福井県内のみに留まらず、本県を含め関西全域に広く及びます。
 例えば、仮に琵琶湖が汚染されたとなれば、県内では神戸市や阪神地域の一部の水供給に大きな影響が生じますし、天候状況によっては、但馬・丹波地域をはじめ県内各地域へ放射性物質が降り注ぐ恐れもあり、こうしたことも十分に考慮し、原発事故発生時の様々な事態に対処できる具体的な対策を盛り込んだ防災計画を早急に策定すべきです。
 また、発生した事故のレベルによっては、より大きな被害を受けた府県から被災者や被災家畜等を受け入れるといった被災地支援の取組も求められる可能性も高く、周辺府県とも相互に情報を共有し、連携・協力して検討作業を進める中で、あらゆる事態に対応できるよう、早急に原子力防災計画の見直しに取り組む必要があると考えます。
 そこで、今回の東日本大震災による福島第1原発事故を踏まえ、現在の原子力防災計画について、今後、どのような方針のもと、どのようなスケジュールを想定して見直し作業を進めていくのか、また、その際の他府県との連携のあり方についてどのように考えているのか、当局のご所見をお伺いします。

2 地域防災力の更なる向上について

 質問の第2は、「地域防災力の更なる向上について」です。
 この度の東日本大震災を受けて、全国の自治体が防災計画の見直しの検討を始めています。本県や関西広域連合においても、近い将来に発生が確実視されている東海・東南海・南海地震の3連動地震等を想定した見直し等が進められていますが、そもそも国が、今秋を目途に地震被害想定の再検討を行うこととしていることから、これら見直し後の防災計画が最終的に取りまとめられるのは早くともそれ以降になるものと思われます。
 しかし、阪神・淡路大震災やこの度の東日本大震災の例を見ても明らかなように、地震をはじめ自然災害はいつ起こるかわからず、我々が計画の見直しを終えるまで待ってくれるという保証はどこにもありません。防災計画を見直している間にも地震、そして津波が我々を襲ってくる恐れはあるのであり、早急な防災計画の見直しを進めると同時に、日頃から、いざという時のための備えを怠ってはなりません。
 この点、防災対策を考える上で、「自助・共助・公助」という言葉をよく耳にしますが、我々は、もう一度、これら三つの視点の関係をしっかりと考えてみるべきです。
 公助、すなわち行政機関等による支援にはおのずから限界があることは明白であり、「行政が何とかしてくれるだろう」という行政依存の考え方だけでは、災害を未然に防ぐ、あるいは災害発生直後に自らの安全・安心を確保することはできません。行政機関自体も被災し機能麻痺に陥る恐れがあることを考えれば、むしろ、自分や家族の命・安全はまず自らで守る、その上でご近所や地域の中でお互いに助け合う、支えあうと言った視点を持つことが必要です。まずは一人ひとりの個人が自立することが重要であり、次いで家族や親類などによる自助、そして職場や地域などの共助、最後に地方自治体や国による公助を求めていくべきだと考えます。
 しかし、突如として人々が自助・共助の力を発揮することはあり得ず、災害発生時に急に助け合いや支え合いを求めても機能する訳はありません。いざと言うときに備えるためには、あらかじめその力を発揮できるような仕組みを構築しておくこと、普段から支え合いの絆を作っておくことが必要です。
 すなわち、県民一人ひとりが、常日頃から、防災に関する正しい知識を習得し防災意識を高めるとともに、災害時における適切な行動力を養うことにより、自助能力を高めること、そして、自主防災組織をはじめ、日々の活動や業務を通じて地域の実情を把握されている消防団、郵便局員といった地元の方々など地域とのつながりの中で共助の精神を養うことが重要です。
 この度の東日本大震災の津波により、岩手県釜石市では1300人以上の死者と行方不明者が出ましたが、約2900人の児童生徒のうち、死者・行方不明者はわずか5人に止まり、「釜石の奇跡」と呼ばれているそうです。これは、同市が5年前から防災の専門家の指導を受けながら何年もかけて防災教育に取り組んできた成果だということであり、常日頃からの備えが、いざと言うときにどれだけ大切かを如実に表している実例だと思います。
 そこで、県として、早急な防災計画の見直しを進める一方で、それぞれの地域における防災力の更なる向上に向け、今後どのように取り組んで行くのか、当局のご所見をお伺いします。

3 節電対策について

 質問の第3は、「節電対策について」です。
 この度の東日本大震災により発生した福島第1原発事故は、これまで安全だと言われ続けてきた原子力発電所に対する国民の信頼を根底から覆しました。現在、全国の原子力発電所54基のうち35基が、震災や定期検査などのために停止中ですが、定期検査を終えても、地元の合意が得られず再稼働できない状況が続いており、日本の総発電量の約3割を占める原発の稼働率が徐々に低下する中、安定した電力供給に対する国民の不安が次第に高まっております。
 東京電力及び東北電力管内では、福島第1原発をはじめ太平洋沿岸の発電所が軒並み被災し、電力供給力が大きくダウンし、夏の消費ピーク時の需給が逼迫する恐れがあります。こうした夏の電力不足に対応するため、去る5月13日、政府は、両電力管内における使用電力を昨年夏比で15%削減する節電目標を正式に決定いたしました。
 また、中部電力管内においても、政府の要請に基づく浜岡原子力発電所の全面停止の影響による夏の電力不足が予測されており、節電への協力要請がなされています。
 さらに、本県を含む関西電力管内においても、今年度の供給計画では、8月のピーク時の最大需要2956万キロワットに対し、供給能力は3290万キロワットと11.3%の供給予備率が見込まれていました。
 しかし、福井県内にある関西電力の原発11基のうち4基が既に運転を停止しており、地元福井県は国が福島第1原発の事故原因を踏まえた新たな安全基準を設定し、関西電力がこれに対応したことを確認できない限り再稼動は認められないとの方針を示しています。7月には、更に2基が定期検査入りする予定であり、このまま再稼動が認められなければ、関西においても、電力需給が逼迫する可能性も否定できません。
 このような状況を踏まえ、先月26日に開催された第7回関西広域連合委員会においては、関西全体における省エネ・節電対策について議論がなされ、家庭や会社事務所に対して、5~10%の節電努力を呼びかけることが合意されました。
 これを受けて、本県においても、サマータイムの導入をはじめとする県自らの追加的な取組に加え、産業・業務部門や家庭における節電対策の推進にも取り組むこととされています。
 ただ、県や神戸市をはじめ、行政機関では既に従来から積極的な節電対策に取り組み一定の効果を挙げており、新たな対策に苦慮する現状にあることや、サマータイム導入に伴う節電効果が明らかでないことを考えれば、行政分野における効果には、大きな期待は寄せられません。
 むしろ、今回の節電対策が実効性あるものになるか否かは、産業・業務部門や個々の家庭における取組が進むかどうかにかかっているのではないでしょうか。
 そこで、県として、産業・業務部門や個々の家庭における節電対策をこれまで以上に促進し、実際の節電効果につなげるため、具体的にどのような対策に取り組んでいくのか、また、その取組を進める上での今回のサマータイム導入が与える効果について、知事のご所見をお伺いします。

4 ボランティア休暇制度の更なる普及と活用について

 質問の第4は、「ボランティア休暇制度の更なる普及と活用について」です。
 阪神・淡路大震災の発生から既に16年以上の月日が経過しました。あの大震災は、我々の生活や心に大きな傷跡を残しましたが、その一方で、多くの方々が立ち上がるきっかけにもなりました。
 被災地の状況を目の当たりにした大勢の人々が、全国から兵庫県に向かい、県内の至るところで様々な支援活動を行ってくださいました。こうした動きから、1995年は、後に「ボランティア元年」と呼ばれ、その後、災害支援をはじめとする様々なボランティア活動の高まりにつながっています。
 このように、阪神・淡路大震災以後、ボランティア活動はわが国社会に定着してきましたが、こうした活動に参加するための特別有給休暇は、育児休暇や介護休暇等の法定休暇とは異なり、企業には導入義務が課されておりません。
 確かに、阪神・淡路大震災を機に制度化する企業や団体は増えましたが、厚生労働省の平成19年就労条件総合調査によると、ボランティア休暇制度があると回答した企業は全体の2.8%とまだまだ少ないのが実態です。
 従業員1千人以上の会社が17.7%に対して30~99人の会社では1.8%、電気・ガス・熱供給・水道業20.0%、金融・保険業12.7%に対して卸売・小売業では1.6%と、企業の規模や業種によっても導入率は異なっております。
 大企業では、この度の東日本大震災を機に、制度の新設、拡充に取り組んだ企業も見られました。
 例えば、ある食品メーカーでは、従来の休暇制度に加え、ボランティアに参加した社員に交通費・宿泊費として3万円を補助する「ボランティア活動費用補助制度」を新たに導入しました。
 また、既存のボランティア休暇制度とは別に、希望する社員を「業務」として宮城県に派遣する「企業ボランティア」制度を導入した企業もあります。出張と同じ扱いで労災も適用されることから、現在、常時10人の社員が被災地でがれきの撤去作業などに携わっており、今月末までに延べ200人が参加する見通しだそうです。
 薬剤師の資格を持つ社員を社内公募し、被災地に派遣している製薬会社もあります。派遣される社員は出張扱いとし、手当や交通費も支給され、1~2週間程度、被災地で医薬品の仕分けや避難所での保健衛生・健康指導などに取り組むそうです。
 このように、大企業で制度の新設、拡充が進む一方、従業員が1人でも欠けると仕事が回らなくなる中小企業では、社会貢献したくても本業を優先せざるを得ず、法定以外の休暇制度の導入は難しいのが実態のようです。
 また、制度を新設した大企業の中にも、本業との兼ね合いが難しく、社内での休暇取得がなかなか進まないところもあるようです。
 阪神・淡路大震災をきっかけに人々にボランティアの心が根付いたように、この度の東日本大震災を機に、企業が社会的責任、社会貢献のひとつとしてボランティア活動に積極的に関わる流れを作って行く必要があります。
 東日本大震災の被災地では、まだまだボランティアの人数が足りないと言われています。あの阪神・淡路大震災の際、多くのボランティアの方々に助けられた本県として、規模や業種等に関わらず、より多くの企業にボランティア休暇制度が普及するよう、また、同制度のより一層の活用が図られるような職場の意識改革が促進されるよう、積極的に働きかけていくべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

5 本県経済の活性化へ向けた中小企業支援対策について

 質問の第5は、「本県経済の活性化に向けた中小企業支援対策について」です。
 皆様のご記憶にまだ新しいことと思いますが、今から4年前の2007年8月に表面化したアメリカのサブプライムローン問題に端を発する世界金融市場の混乱は、翌2008年にはアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破たんを招き、以後、2009年にかけて主要国の景気後退による世界同時不況を巻き起こしました。我が国もその例外ではなく、リーマン・ショック直後の2008年10~12月期の実質GDPの成長率(年率換算)は11.6%減、翌2009年1~3月期が18.0%減と、大きく落ち込みました。
 その後、経済界や産業界の懸命の努力や、国や地方自治体による積極的な経済対策の効果もあり、我が国経済は少しずつ持ち直し、中小企業の業況についてもやや持ち直しの動きがみられていた時期に東日本大震災が襲ってきたのです。
 この度の東日本大震災により、企業の生産活動や個人消費等が急激に落ち込み、日本経済にブレーキがかかっています。リーマン・ショック後の落ち込みからようやく立ち直りつつあった我が国の経済は、再び、大きな試練の時を迎えています。
 そもそも、近年、益々顕著となったグローバル化や新興国の台頭による競争条件の変化等の影響もあり、今2月に内閣府が発表した我が国の昨年の名目GDPは5兆4742億ドルと世界第3位へ転落するなど、世界経済における我が国の地位が揺らいでいます。また、我が国経済は、少子高齢化の進行に伴う人口減少による国内市場の縮小、長期的な円高傾向の定着や資源原材料価格の高騰、企業海外展開比率が30%を超える等の国内産業の空洞化といった深刻な状況にも直面しております。
 このような中、内閣府が6月9日に発表した2011年1~3月期の国内総生産の速報値によると、年明けから回復基調にあった日本経済は、東日本大震災により、実質GDPは、2010年10月~12月期に比べて年率換算で3.5%減となり、2四半期連続のマイナス成長となり、震災後、企業の資金繰りは厳しさを増しております。
 特に、大企業の下請けや孫請けを担う中小企業では、計画停電や部品調達が困難なことによる大企業の操業休止等により大きな影響を受けております。本県内にも、東日本立地の工場の被災、部品調達の困難などにより大きな影響を受けている中小企業が多数あります。
 今後、夏場の電力不足、節電対策等により、仮に大企業が操業休止等を行えば、中小企業を取り巻く情勢は、より一層厳しさを増す恐れもあります。
 中小企業は、国内における企業数で99.7%、従業者数で69.0%を占めており、我が国経済をけん引する原動力であり、社会の主役であります。地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承にも大きな機能を果たしております。
 そこで、本県経済、ひいては我が国経済を活性化する上で中小企業が果たすべき役割の重要性を十分に認識し、この度の震災の影響を受けている中小企業が引き続き円滑な事業継続を行えるよう県としてより一層の支援に取り組むべきと考えますが、その具体的な取組内容を含め、当局のご所見をお伺いします。

6 地域包括支援センターの更なる活用について

 質問の第6は、「地域包括支援センターの更なる活用について」です。
 2025年は、超高齢社会日本を象徴する年となるようです。
 いわゆる団塊の世代が75歳以上となる年に当たり、内閣府の平成23年版高齢社会白書によると、総人口1億1927万人のうち30.5%に当たる3635万人が65歳以上の高齢者となり、65歳以上の高齢者1人を支える15から64歳までの生産年齢人口数は2.0人と推計されており、いわゆる現役世代2人で高齢者1人を支える時代となります。
 また、65歳以上の高齢者のいる世帯は増加の一途を辿っており、2009年現在で2013万世帯と全世帯の41.9%を占め、そのうち一人暮らしと高齢夫婦のみの世帯を合わせるとその半数を超える状況にあります。65歳以上の高齢者が世帯主である高齢世帯も年々増加傾向にあります。
 さらに、高齢世帯数に占める家族類型別割合の変化をみると、「単独世帯」の割合が一貫して上昇を続け、2030年には37.7%へと上昇することが見込まれております。
 かつて、高齢者の多くは老後を子どもや孫と同居して、人生の最後を安らかに過ごした時代もありました。しかし、核家族化の進行や家庭環境の変化に伴い、子どもと同居する割合が徐々に減少し、一人暮らしあるいは高齢夫婦のみの世帯が増加、家族による介護は期待できなくなってきました。また、認知症高齢者やがん患者の増加等により、医療と介護を必要とする高齢者も増加しています。
 こうした社会状況の変化に対応し、高齢者の暮らしの安全を確保し、安心して生活を送ってもらうため、各市町では、介護保険サービスの強化・充実のみならず、住み慣れた地域で不安を抱かず安心して過ごせるよう、見守りや安否確認に関する様々な取組が、地域の方々の協力のもと、次第に広がりつつあります。
 国においても、住み慣れた地域において高齢者が自立し地域との、よりしっかりとした連携を図ることを目指し、2005年の介護保険法の改正により、「地域包括支援センター」を制度化しました。
 この地域包括支援センターは、昨年4月末時点で全国に4065カ所、設置保険者数は1589と、全ての保険者に設置されることになり、高齢者の暮らしを支える総合的な窓口として関係機関との「橋渡し役」となっているほか、地域住民にとっても「よろず相談所」として大きな役割を果たしております。
 その支援対象は、介護支援業務以外にも認知症や精神疾患、虐待、家族の失業など広範にわたっており、円滑な業務遂行のためには、支援が必要な方に必要な支援を適時的確に行えるよう個別ケースの早期発見および地域住民からの早期相談が重要です。また必要に応じて保険者や介護事業者、民生委員、警察、消防、弁護士等と密接に連携を図ることも不可欠であります。
 しかし、現状では、このセンターの存在すら知らない住民もおられます。
 認知症や1人暮らしなどにより自ら支援を求めることが困難な高齢者が増えているにも関わらず、個人情報保護を理由に、必要な情報を関係者間で共有することが困難となり、地域の見守り活動等の推進に支障が出ているという指摘もあります。
 こうした現場での課題に鑑みれば、地域包括支援センターの機能を強化するためには、人材や財源確保だけではなく、地域におけるセンターの認知度をより一層高めるとともに、適切な個人情報保護策を講じた上で、関係者間において、市町が保有する要保護者に関する情報を共有できる仕組みづくりが重要ではないでしょうか。
 そこで、広域的見地から、県下各市町に通ずる高齢者福祉の改善に取り組むべき県として、今後、県下各地域の地域包括支援センターが、より実効ある取組に積極的に取り組んでいけるよう、どのように支援していくのか、当局のご所見をお伺いします。

7 小中学校における食育の推進について

 質問の第7は、「小中学校における食育の推進について」です。
 「食」は、我々の命と健康を支え、人が生きていく上での基本となります。
 こうしたことに鑑み、国では、平成17年7月、国民が健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむ食育を推進するための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的に「食育基本法」が施行されるとともに、本県においても、「食の安全安心と食育に関する条例」が平成18年4月に施行されました。
 同条例では、食育に関する基本理念や、県や事業者の責務、市町や県民の役割等を定めており、県では、この内容を踏まえ、食育に関する総合的な施策展開を図っておられます。
 中でも、特に成長期にある子どもにとって、健全な食生活は健康な心身をはぐくむために欠かせないものであると同時に、将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすことから、こうした子ども達が健やかに生きるための基礎を培う上で、食育が果たすべき役割は極めて重要であり、同条例も、学校設置者・管理者の食育の推進義務について定めております。
 それぞれの学校では、子どもが食に関する正しい知識を身に付け、自らの食生活を考え、望ましい食習慣を実践することを目指し、学校給食等を活用して食に関する指導、食育が行われております。
 この食育は、各学校に配置された栄養教諭が中心となって推進しますが、本県における栄養教諭の配置は、平成19年度からスタートし、本年4月1日現在の配置数は338人となっています。文部科学省の調査によると、この人数は、大阪府の442人、北海道の404人に次いで全国第3位ではありますが、食育を推進していく上で、栄養教諭が既に配置されている学校と未だ配置されていない学校との間で、大きな格差が生じているのではないかと懸念しております。食育基本法の前文において、食育は、生きる上での基本であって、教育の三本の柱である知育、徳育、体育の基礎となるべきものと位置付けられていることに鑑みれば、早急に県内の全ての公立小中学校に栄養教諭を配置すべきではないでしょうか。
 学校給食における地場産食材の活用、米飯給食の普及・定着、郷土料理や行事食等を献立へ取り入れることは、地域の自然、食文化、産業等の理解を深める上で有効でしょう。また、学校における農林漁業体験を通じて世界を取り巻く食料事情や食料自給率に関する知識や理解を深め、自給自足の重要性を学んだり、自然の恩恵、農林漁業者への感謝や尊敬の念の醸成に役立つなど、食育の推進を通じて様々な教育的効果が期待されます。
 そこで、県として、小中学校の義務教育における食育の位置づけや重要性についてどのように認識しているのか、またこれを踏まえて、今後、栄養教諭の全校配置を含め、小中学校における食育の推進にどのように取り組んでいくのか、教育長のご所見をお伺いします。

8 警察官退職者の積極活用による治安向上について

 最後の質問は、「警察官退職者の積極活用による治安向上について」です。
 わが国の刑法犯の認知件数は、バブル期の頃から増加し始め、1998年に200万件を突破、2002年に戦後最悪の285万件を記録しました。政府も「治安回復」を政策の大きなテーマに掲げ積極的に取組を進めた結果、警察官は1万人以上増え、空き交番は解消されたと聞いております。また、防犯ボランティアが平成17年度からの6年間で52万人から270万人に増えるなど地域の防犯意識も高まりました。
 こうした成果もあり、我が国における刑法犯の認知件数は、2002年をピークにその後8年連続の減少となり、昨年は前年比6.9%減の約158万6000件と、1987年以来23年ぶりに160万件を下回る数字となりました。本県内での認知件数も、前年比10.8%減の8万860件となっています。
 この数字を見る限りでは、我が国の治安は着実に回復軌道に乗って良くなっているはずなのに、何故か国民・県民の体感治安は一向に解消されていないというのが現実ではないでしょうか。
 刑法犯の認知件数は減少しているものの、その反面、検挙件数は6年連続で減少し、2010年の全国検挙率は31.4%、兵庫県においては29.2%に止まっています。検挙率のアップが治安回復の鍵であることは言うまでもありません。
 県内に目を転ずれば、性犯罪、侵入犯罪、すりや自転車盗といった犯罪は依然として目立っています。ひったくりや強盗は、景気や雇用情勢との相関関係が強いと言われており、昨今の不況による雇用不安あるいは経済格差の拡大等に伴う治安の悪化も懸念されます。
 犯罪防止のためには、これまで警察官の大幅増員や空き交番対策と言った「力による封じ込め」による対策において一定の成果を収めてまいりました。
 本県においても、県内414交番に交番相談員を配置することにより、地域住民からは「交番相談員が何時でも交番に居てくれるので気軽に相談できる」との評価を得るなど、行政サービスの向上に結び付いております。また、交番勤務の警察官からは「街頭活動に専念できる」との声もあがっており、地域防犯等に一定の効果をもたらしております。
 しかし、その一方で、本県における警察官1人当たりの負担人口は482人、全国42位であり、全国1位の長野県の648人の約7割となってはおりますが、広い県土を持つ本県では都市部と郡部の状況も大きく異なり、数字には表れない部分もあると思われ、昼夜を分かたず職務に精励されている警察官の方々のご負担、ご苦労は、まだまだ大きいものと思われます。
 このような現職警察官の方々のご負担、ご苦労を少しでも軽減し、県内の治安向上、ひいては県民の体感治安の向上に資するため、現場職務に精通している警察官退職者を再任用するなど、これまで以上に積極的かつ有効な活用に取り組むべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

徳安淳子
(尼崎市)

一般質問

1.災害発生時の警察官の支援活動について
 (1) 東日本大震災の被災地に対する本県警察の支援状況について
 (2) 原発事故を想定した警察官に対する教育訓練の充実について
2.リスク分散対策を契機とした企業誘致の推進について
3.農業に関心を持たせる教育の充実について
4.踏切に起因する交通渋滞の緩和について
5.宝塚市北部地域の未利用土地の有効活用について

質問全文

第309回定例会(6月)一般質問
2011年6月22日(水)

1 災害発生時の警察官の支援活動について

(1) 東日本大震災の被災地に対する本県警察の支援状況について

 質問の第1は、災害発生時の警察官の支援活動についてであります。災害発生時には、自衛隊、警察、消防、行政などが中心となって復旧復興活動に取り組みますが、今回は、警察官に焦点を当てて2点質問させていただきます。
1点目は、東日本大震災の被災地に対する本県警察の支援状況についてお伺いします。
3月11日に発生いたしました「東日本大震災」は,国内観測史上最大のマグニチュード9.0を観測し,東北地方を中心に広範囲にわたり,想像を絶する被害が発生しました。死亡者約15,500名、行方不明者約7,800名、の尊い命が一瞬にして奪われ、自然の力の恐ろしさとともに、自然の力に対する人間の無力さを改めて感じた次第であります。犠牲になられました方々に深く哀悼の意を表し,被災者の方々にお見舞いを申しあげるとともに,一日も早い復興をお祈りいたします。
さて、兵庫県警察では、地震発生後直ちに被災者の救援救助を目的とした「広域緊急援助隊」を被災県からの要請を見越して派遣したとのことで、発災から1時間以内に先発隊を派遣したと聞いています。
その後も、被害の大きい岩手、宮城、福島の各県で、被災者の安全と安心を目的として、機動捜査隊や機動パトロール隊による24時間のパトロ-ルや、女性警察官により編成された“のじぎく隊”による避難所訪問を通じた被災者の心のケアのほか、交通支援、身元確認、パトロールの強化など、積極的な支援活動を展開され、心より敬意を表する次第であります。
その一方で、派遣された警察官は、過酷な勤務環境に晒されることとなることから、過度のストレスや精神的ショックによりPTSD(心的外傷後ストレス障害)になることが懸念されます。また、福島第一原子力発電所周辺地域の警察活動に従事している警察官は、放射線の被ばくによる健康面も心配されるところでありますので、県警察としても、派遣の前後には肉体的、精神的ケアを講じていく必要があります。
今回の東日本大震災の被災地においては、阪神・淡路大震災を経験し、その教訓から得られた様々なノウハウを活かした、本県警察ならではの支援活動が展開されているものと認識していますが、その一方で、今回の東日本大震災は、阪神・淡路大震災に比べて規模が大きく、津波による被害が殆どであったことや福島第一原子力発電所の事故の発生など、被害状況が大きく異なることから、阪神・淡路大震災で得られた教訓やノウハウにはない、課題も新たに出てきたのではないかと思われます。
そこで、今回の東日本大震災の被災地における本県警察の復興支援の活動をどのように評価し、今後の災害支援活動にどのように活かしていくのか。これまでに派遣された各部隊の活動状況の概況と併せてお伺いします。

(2) 原発事故を想定した警察官に対する教育訓練の充実について

 次に、原発事故を想定した警察官に対する教育訓練の充実についてお伺いします。
東日本大震災では、巨大地震とともに発生した大津波により、東日本太平洋沿岸の街は壊滅的な被害を受けるとともに、福島第1原子力発電所においては原子力発電史上初めて、大地震が原因で炉心溶融事故が発生し、多量の放射性物質が外部環境に放出されるなど、震災から3ヶ月余りが経過した現在でも収束の目途がつかない状況であり、日本国内はもちろん、国際的な大問題として、世界中の人々に多大な影響と不安を及ぼしております。
日本は世界有数の地震災害多発国にも関わらず、全世界の原子力発電所の約13%が密集しています。今回の福島第1原子力発電所の事故においては、緊急時の電源が確保できなかったことや、使用済燃料プールへの冷却水を機動的に供給することができなかったことなどを踏まえ、現在判明している知見に基づき、他の原子力発電所に対しても緊急安全対策の実施が経済産業大臣より指示されるとともに、安全対策の実効性を担保するための省令改正が行われたところであります。
そのようななか、橋下大阪府知事が原発の新規建設の停止などを求めるという考えを関西広域連合の委員会で提案されたところ、「早急に方針を決定するのは『時期尚早』ということで、これから研究していく」と結論づけられました。私個人としても、「代替エネルギーの開発・導入は積極的に進めていく必要性は強く感じています。現在のところ、原子力発電に頼らざるを得えない状況である」と感じています。
いずれにしても今後のエネルギー政策の中で原子力発電をどのように位置づけて見直していくのか議論を進めていく必要があるのは言うまでもありません。
本県には、原子力発電所はありませんが、昨日のわが会派の徳安議員が行った代表質問にもありましたように、関西では、福井県内に14基の原発が集中しており、万が一、これらのいずれかで今回の福島第1原発事故と同様の事故が発生した場合やテロ攻撃を受けた場合には、本県にも被害が及ぶ事態が想定されます。
今回の福島第1原子力発電所の事故に対しては、本県警察も含め、各都道府県警察からの派遣部隊により、避難誘導、放水活動、行方不明者の捜索や警戒区域の検問、一時立ち入りの支援などの業務に従事されているところであり、業務に際しては、必要に応じて、防護服、防護マスク、線量計を着用することとなります。3月17日には、政府は、公務員が許される被ばく量の限度を定めた人事院規則が今のままでは、自衛隊や警察による十分な作業時間が確保できないことから、今回の地震の対応に限り、被ばく量の上限を今の100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げました。人事院は今回の対応について「厚生労働省からは人体に影響が出ないぎりぎりの値だと聞いている」としていますが、取り返しの付かない健康被害を受ける可能性もあるのではないかと感じています。
そこで、今回の派遣では、時間的余裕が無かったこともあり、派遣者に対して、放射能の基礎知識の座学と防護服の着脱方法や線量計の使い方などの実技をそれぞれ1時間程度講習しかできなかったと伺っていますが、今後は原子力発電所の事故等に備え、警察官に対する教育研修や訓練を充実しておく必要があると考えますが、ご所見をお伺いします。

2 リスク分散対策を契機とした企業誘致の推進について

 質問の第2は、リスク分散対策を契機とした企業誘致の推進についてであります。
 今回の東日本大震災により自動車大手8社はサプライチェーンの混乱で製造ラインが停止するなど、各社とも前年同月比で3割から8割減と大幅な減産となり、さらに、福島第1原発事故による電力供給不足や計画停電により、部品等の生産が減少するなど、国内企業に大きな打撃を与えました。
 さらに、5月25日には経済産業省から、今後の大幅な電力供給不足に対応するため、東京電力と東北電力管内において、15%の節電を求める使用制限を発動しました。電力需要が高まる夏場に全国的な電力不足が懸念されることから、企業や自治体において、節電対策に取り組んでいるところです。
 需要のピークをずらすために土日勤務を検討する企業やサマータイムを導入する企業も現れはじめ、本県においても本日よりサマータイムが導入されました。また、保育園では、延長保育の拡大や休日保育の確保などの対応に追われたりしています。
 就業時間の変更やサマータイムの導入に加えて、生産拠点や本社機能を移転する動きも見られはじめています。帝国データバンクの調査結果によれば、電力不足への対応として首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川の1都3県)に本社がある企業のうち約8%(7.6%)が他地域に生産拠点を移すことを検討しており、移転先は、近畿が最も多くなっているとのことです。
 そのようななか、6月10日には関西電力も、管内の企業や家庭などすべての契約者に対し、7月1日から9月22日までの平日午前9時から午後8時まで、昨夏より一律15%程度の節電を要請するとの発表がありました。これは福井県が定期検査中の原子力発電所の安全対策の強化を求めて再稼動に難色を示していることによるものであり、地元自治体が納得できる新たな安全基準を政府に対して期待するところであります。
 既に、東日本大震災で被災された企業の皆様に対しては、引き続き国内で生産等の機能を維持していただけるよう、関西広域連合における関係構成府県が有する情報をもとに、用地やオフィス情報に関するポータルサイトを開設されるなどの取組をされているところですが、今後、被災されていない企業にあっても、リスク分散の観点から、本社機能や生産拠点を移転する動きが今後加速していくことが予想されるところであり、石原東京都知事も「東京に対する過度な集中集積というのは、私、ちっとも好ましいと思わない」と発言されています。
 そこで、企業のリスク分散対策や東京一極集中を打破の観点から、首都圏の企業を中心に、生産拠点や本社機能、本社のバックアップ機能の移転先としてもらえるよう、定期的に情報提供を行っていくなど、積極的な誘致活動を展開していくべきと考えますが、今後の展望についてご所見をお伺いします。

3 農業に関心を持たせる教育の充実について

 質問の第3は、農業に関心を持たせる教育の充実についてであります。
 我が国の農産業は、輸入農産物の増加や農業従事者の減少、耕作放棄地の増加をはじめ厳しい状況に置かれています。なかでも、農業の担い手不足は今後ますます深刻化していくことが見込まれます。
 全国の農業就業人口の動向では、2010年には、約261万人まで減少し、およそ6割減少しており、30年前と比べて約4割、10年前の約3分の2となっており、本県の動向についても、概ね全国の動向と同様となっています。
 一方、農業就業人口のうち65歳以上の高齢者数については、1985年から2008年までの間、1割程度の増減が見られるものの、ほぼ同水準で推移してきていることから、農業就業者については「高齢化」の問題ではなく、従事者数の「減少」が問題であることがわかります。
 さらに、最近はこの傾向が特に顕著に現れ、2008年から2010年のわずか2年間で、農業従事者総数、65歳以上ともに約1割減少しており、担い手不足は加速度的に深刻化していくことが予想されます。
 新規就農者の確保については、農業の担い手育成を一元的に進めるために設立された、兵庫県担い手育成総合支援協議会の中に設置している「ひょうご就農支援センター」や各地域に設置した「地域就農支援センター」では、幅広く学生から社会人、企業等を対象として相談から就農、経営確立までの一貫した支援を行っているほか、兵庫楽農生活センターにおいても、新規就農駅前講座や就農コースなど就農に関心がある方から、実際に就農や企業化を目指す人まで新たな担い手の着実な育成に取り組んでおられ、今後も引き続き積極的に取り組んでいただきたいと願っているところです。
 しかし、これらは、あくまで農業に関心を持った方を対象としているものであり、裾野を広げる観点から、都市化の進行により農業・農村の役割を認識・理解する機会が減少している児童・生徒に対して、学校教育において農業教育を充実させ農業に興味・関心を持ってもらう取組が必要ではないかと考えています。
 学校における農業教育には、スペシャリストの育成だけではなく、農業について興味・関心を高めたり、農業の社会的な意義や役割を正しく理解させたりする役割を担っていることから、今後は、学校教育において農業を職業として認知させていくことが、大きな役割の一つとして求められてきているのではないかと感じています。
 子どもたちには自然と触れ合う機会を持たせる事により、環境問題や農業へ関心が生まれまるだけでなく、自然のすばらしさ、偉大さを感じ、農業の大切さ、重要さを実感できるような体験が「豊かな心」を育む教育の観点からも大切であります。
 本県の小中学校における農業体験活動としては、小学3年生の環境体験事業や小学5年生の自然学校推進事業や中学2年生における「トライやる・ウィーク」などでわずかに行っている程度であり、十分といえるものではありません。
 そこで、農業体験活動は、農業に対する正しい理解を醸成していくうえで重要な場であることから、学校教育において小中一環の体験プログラムとして充実させるべきと考えますが、学校教育における農業体験活動の必要性についてどのようにご認識されているのか教育長のご所見をお伺いします。

4 踏切に起因する交通渋滞の緩和について

 質問の第4は、踏切に起因する交通渋滞の緩和についてであります。
 一昨年の9月、県会議員になって初めての定例会において、同じタイトルで一般質問させていただきましたが、今回も引き続きお伺いしたいと思います。
 最近では、有川浩さん原作の「阪急電車 片道15分の奇跡」が4月に映画化され、注目されることとなった“歌劇のまち宝塚”ですが、神戸・大阪からのアクセスが良いこともあり、閑静な住宅地として発展してしまったため、かつての観光要素が少なくなってしまった感はありますが、今でも歌劇を中心に、清荒神、売布神社、中山寺への参拝客や市内10箇所あるゴルフ場の利用客など、多くの観光客やレジャー客が宝塚を訪れています。
 なかでも宝塚歌劇場前交差点は、宝塚市内の交通の要所ともいうべき交差点であり、東西方向には国道176号が、南北には、市道川面宝塚線と県道明石神戸宝塚線が通っています。しかしながら、南北方向、東西方向ともに朝夕のラッシュ時はもとより、平常時でも断続的に渋滞が発生しており、通過する交通に大きく影響しています。
これまで同交差点の渋滞対策として周辺信号機と連動させて円滑な交通の確保や道路交通情報通信システムなど県警による各種対策が講じられてきましたが、一向に改善されていません。
 宝塚歌劇場前交差点が渋滞するのは、市道川面宝塚線を分断するJR福知山線の学校前踏切の遮断機が、長時間に亘って降りていることが原因しており、特に清荒神参拝時期の交通停滞はひどい状況となっています。
 一昨年の9月定例会の一般質問においては、当時の河野県土整備部長から、当該踏切が平成18年度に策定された「踏切すっきりプラン」において要対策箇所として位置づけられていること、市道561号の完成により、踏切を通過する交通量は減少し、踏切に起因する宝塚歌劇場前交差点の渋滞が緩和されるとのご答弁をいただきました。
 これは、市道561号の完成により、市道590号、新荒神橋を通り、国道176号の旧道及び国道176号によるネットワークの確保が図られることにより宝塚歌劇場前交差点の渋滞が緩和されるということで、学校前踏切を南から北に向かう車を中心に、ご答弁いただいたものと認識しています。
 しかしながら、踏切を起因とする渋滞は、南から北に向かう車だけでなく、北から南に向かう車にとっても深刻であり、特に、踏切の北側には、ニュータウン「ラ・ビスタ」があるすみれが丘や御殿山の住民にとっては、とりわけ深刻であります。朝の通勤・通学時には、1,2本早いバスに乗車しても学校や会社に遅刻したという声をよく聞きます。
 4月20日に市道561号が完成した後でも、宝塚歌劇場前交差点やネットワークを形成する交差点において学校前踏切を起因とする渋滞が発生していることもあり、渋滞対策としては、十分ではないと認識しています。
 そこで、市道561号完成後、学校前踏切を起因とする渋滞の解消について、県としてどのように認識、評価されているのか、今後の対応と併せてご所見をお伺いします。

5 宝塚市北部地域の未利用土地の有効活用について

 質問の第5は、宝塚市北部地域の未利用土地の有効活用についてであります。
 兵庫県においては、三木市新都市用地や淡路市多賀用地など、社会経済情勢の変化や今後の先行き見込み等から、当初の構想や計画の変更を余儀なくされたり、計画どおりに進捗していない土地があります。
 私の地元である宝塚市の北部地域においても、かつて新都市の用地として1,100億円余りの資金を投じて先行取得されたものの、当初の計画どおりに進捗していない13クラスターからなる約1,120haの土地があり、公共事業用地先行取得事業特別会計の保有用地として、現在は県土整備部の所管となっています。
 この用地は、昭和60年代の初め、ゴルフ場や住宅団地などの開発圧力が高まり、乱開発が懸念されたことから、秩序ある開発のため、宝塚市や地元住民からの強い要望を踏まえ、平成4年度に県において宝塚新都市の基本計画が策定されるとともに、用地の先行買収に着手されたものであります。その後、平成12年度に計画の見直しがなされ、平成13年度には、企業庁が整備に係る計画策定等の業務を行うこととされました。
 この宝塚新都市計画について、本会議、決算・予算特別委員会で過去3回質問させていただきました。直近では、昨年10月の決算特別委員会において、企業庁に対し、「宝塚新都市計画の今後について」質問したところ、「企業庁としては、独立採算制のもと、企業会計にて地域整備事業を進めており、事業の採算性の確保ということが重要な要素とならざるを得ない。現在の厳しい経済環境下にあっては、新たな開発の見通しが立てにくい状況にある。」とのご答弁をいただきました。
 私も現在の社会経済情勢、今後の土地需要を考えたとき、産業用地や住宅地の開発手法による地方公営企業としての事業では、採算性の確保が見込めないと思うところであります。
 また、宝塚市の北部地域は、平成9年度に「進度調整地」とされ、平成20年に策定された「新行革プラン」や本年3月に策定された「第2次行革プラン」において、「長期的な視点も踏まえ、適切な利活用を検討するが、現時点では直ちに利活用が見込めないため、水源涵養、CO2排出抑制など、森林の持つ公益的機能に着目し、環境林として県が計画的に取得し、適切な管理を行う。」対象用地の1つとして位置づけられています。
 しかし、クラスターの元の所有者やNPO法人など地元の方々からは、すぐに利活用できるような土地も数多くあるにもかかわらず、未利用になっている宝塚市北部地域の土地を有効活用できないのかという想いをよく耳にします。
 一方、現在、平成28年度の開通を目指して、鋭意工事が進められている新名神高速道路(高槻~神戸間)においては、宝塚市にスマートインターの設置実現に向けた検討も行われていると聞いています。
 こうしたことから、私は、宝塚市北部地域の活性化や地域交流の促進に向け、例えば、お茶等を栽培する農地に転用することやNPO法人等が運営する貸し農園として貸し出すこと、さらには、わが国の今後の大きな課題であるエネルギー政策として太陽光発電設備の設置など再生可能な自然エネルギーへの取組などに利活用できないかと思うものであり、実際に近隣府県などから地元へクラスター用地の利用に対する要望の声もあります。
 そこで、利活用に際しては、地方公営企業の事業手法では、事業収入をもって事業に要する費用を賄うという採算性の確保が大前提となるため、利活用方策に一定の制約をもたらすことにかんがみ、この際、全庁的な立場に立って、地域振興を図る観点から、当該用地の有効な利活用方策について、検討していただきたいと考えますが、地域の期待を込めて、当局のご所見をお伺いします。

池畑浩太朗
(宝塚市)

1.原子力発電に関する考え方について
 (1) 原発に対する知事の基本的スタンスについて
 (2) 関西地域における原発の安全性確保について
2.節電対策について
3.応急危険度判定と家屋被害認定調査について
4.首都機能バックアップ構想について

質問全文

第309回定例会(6月)一般質問
2011年6月23日(木)

1 原子力発電に関する考え方について

 質問の第1は「原子力発電に関する考え方」について、2点お伺いします。

(1) 原発に対する知事の基本的スタンスについて

 まず、「原発に対する知事の基本的スタンスについて」です。
 この度の東日本大震災では、地震に伴う強い揺れと大津波が東北地方から関東一円までを襲い、更に福島第一原子力発電所で深刻な大事故を引き起こしています。
 想像を絶する自然災害を前に人間の予想などは無力ですが、これまでマグニチュード9を超える地震や10メートルを超える津波を予想する専門家の声がなかった訳ではありません。不都合な事実から目を背け、都合の良い範囲に「最悪」のラインを引く身勝手さもあったのではないかと感じます。いつかくることはわかっているが、普段はできるだけ考えない。もし、自然災害に遭えばそれが到底納得できなくても、天災として受け入れるしかないという一つの宿命なのかもしれません。
 その一方で福島第一原子力発電所の事故は天災や宿命とは別に考えなければなりません。人が作ったモノである以上、不都合な事実から目を背け、都合の良い範囲に「最悪」のラインを引く身勝手さはあってはならないものです。また、原発の事故はいつかくることはわかっているが、普段はできるだけ考えないという類のモノではありません。人知の及ばない自然災害と比べれば、はるかに容易に予測することが出来、予め回避しなければならないし、そうでなければ世の中に存在してはいけないものです。そういったことからもこれは明らかに人災です。
 東京電力は「これまでの想定を超える津波だった。考えられる部分での津波対策は講じられていた」としています。しかし、原子炉の冷却に欠かせない発電機を通常用電源も非常用電源も仲良く海沿いに並べ、東電が言うところの「想定外の津波で」水をかぶり故障し全て動かなくなった、東北電力から電気を引くのに何日もかかったというようなことは、私たちがある程度は信頼していた電力会社のあるべき危機管理の姿として笑えない冗談にもなりません。
 津波対策にしても過去において今回規模の津波が度々起こっていると指摘されていたことを考えても、津波に負ける原発を何十年も運転していたが、たまたま今まで震災に遭わなかったから大事故が起こらなかっただけで「原発は絶対に安全」とは言えないということが明らかになりました。
 東日本大震災後、私たちは日本のエネルギー政策、特に原子力発電の是非についてこのままでいいのかということを改めて考えています。
 そもそも、原子力発電の利点は一定量の核燃料を長期的に発電のエネルギーとして使うことができるという点ですが、一方で、核反応が長期間継続して起こるという長所は、いったんその制御を失うと重大な事故につながるという欠点でもあります。
 核燃料はそれ自体及び核反応によって育成される様々な放射能を持ち、もし環境に放出され拡散すれば、長期にわたって生体に悪影響を及ぼし、飛散した地域が長期にわたって耕作不能な地となり人も住めなくなってしまう、一度事故が起これば取り返しのつかない重大な事態にもつながります。だからこそ核エネルギーの利用については慎重にならなければならない。このことを私たちは何となく理解はしていたのです。
 その上で、私たちが核エネルギーの利用という道を選んだのは、資源の乏しい日本にとって原子力発電がエネルギー政策を安定させる有効な手段と考えたからです。これまで、反原発の動きが大きくならなかったのは原発は絶対に安全である、重大事故は起こらないという暗黙の信頼があったからですが、今回の原発震災で、そのような信頼関係は木っ端みじんになりました。
 風力、水力、太陽光などの自然エネルギーを用いた発電はエネルギーを安定的に供給し、さらに効率よく需要側に届けるには今のシステムではおぼつかないのが現状であるということも理解をしていますが、信頼関係が吹き飛んだ今、 国民の中に、地震や津波の多いこの国で、もし事故が起きれば重大な事故を招きかねない原発を操業し続けることへの深刻な懸念が生じています。
 また、全国の原子炉の使用済み核燃料を再処理する青森県六ヶ所村の再処理工場の本格運転に目途が立たない中、個々の原発が保管する使用済み燃料は増える一方である上、仮に本格運転が始まっても、その過程で生じる高レベル放射性廃棄物の受け入れ先が全く見通しのつかない現状では、そもそも今後、原子力発電を継続していけるのか自体が疑問です。
 記者会見での発言をお聞きすると、知事は、安全性のコントロールの目処が立たないならば原発をやめる、もしくは縮小していかざるを得ないと考えておられるようです。安全性のコントロールの目処が立たない原発の存続があり得ないのは当然ですが、たとえ、安全性のコントロールの目処が立ったからと言って、この100日間に福島第一原発で起こった深刻な事故は取り返しのつかない大きなダメージを日本に与えていることからも看過するわけにはまいりません。
 現時点で、原子力発電所で発電するエネルギー全部を自然エネルギーに代替することは非常に難しいことは承知をしていますが、まず一つには、今回の原発事故を受け、また、使用済み核燃料の抱える現状の問題を踏まえ、私はやはり「脱原発」の方向へシフトすることが県民の思いに通じるのではないかと考えますが、知事のご所見を伺います。

(2) 関西地域における原発の安全性確保について

 次に、「関西地域における原発の安全性確保について」です。
 現在、本県内には原発は設置されておりませんが、近隣である福井県内には多くの原子力発電所が稼働している上に、この若狭湾周辺の原子力発電所には老朽化した原発が多いという問題があります。また、やはり過去において大きな地震が起こっているという事実も見逃せません。
 使用電力の半分以上を原子力発電所に依存している関西の現状を考えれば、これを止めろと言うことはできないでしょうが、東日本大震災級の災害に耐え得る改修工事を早急にして欲しいというのは、関西地域の全ての住民の願いであると思います。この度の福島第一原子力発電所の事故や周辺地域における状況を目の当たりにしている中で、改修工事が終わるのが数年後という計画では到底納得できるはずがありません。
 現在、福井県知事は、国が福島第1原発の事故原因を踏まえた新たな安全基準を設定し、関西電力がこれに対応したことを確認できない限り再稼動は認められないとの方針を示していますが、県民の命を預かる知事として当然の判断です。
 井戸知事におかれましても、県民の安全・安心を守る県知事として、また関西広域連合の連合長として、原発立地県である福井県と歩調を合わせ、周辺府県とともに、国と関西電力の双方にしっかりと申し入れを行い、今後の関西地域における原子力発電所の安全性確保に早急に取り組んでいくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

2 節電対策について

 質問の第2は、「節電対策について」です。
 この度の東日本大震災に伴い、東京電力と東北電力管内では、夏場ピーク時間帯における使用最大電力の需要を企業、家庭とも去年に比べマイナス15%とする目標を設定しました。 一方、関西電力も、大企業から一般家庭まで一律に昨夏ピーク比15%の節電を求めています。
 関電社長は、「原発の再稼働の時期が明確でない。顧客から節電が必要なら早期に示してほしいと言われた。夏が目前に迫ってきたので苦渋の選択をした」と節電要請は原発停止による電力不足によることを強調していますが、どうして首都圏と同じ15%で、時間帯もピーク時のみならず午前9時から午後8時までと長いかということについて明確な説明はないようです。
 今回の節電要請と同時に、関電は今夏の電力需要の想定を「平年並み」から「猛暑」に変更し、今年3月に公表した供給計画でのピーク需要にさらに約100万キロワットプラスし、3,138万キロワットまで引き上げましたが、同じ西日本でも中国電力などは「猛暑」とは想定していないようです。また、予想しにくい気候を要素に入れる一方で実際の電力需要の増減は見込んでいないともしています。
15%節電の根拠についても猛暑時の電力不足分6.4%に予備率として5%を足した11.4%に、「節電が必ずしも同じ曜日や時間帯にならないことを考慮し、15%に設定した」と発表しています。
 しかし、いずれもその根拠が不明確であり、知事も約100万kW積み増しの根拠や需要量を想定方法等に疑問が残るとし、フレーム自身の精度をもう少し上げて説明しないと、直ちにわかったということにはならないと発言していますが、全くその通りで私も含めて多くの県民も疑問に思っています。
 そもそも、震災後に、関西電力では関西では電気の供給に問題はないとしていたにも関わらず、震災から3ヶ月も経過した後に、原発停止による電力の供給不足を理由に節電要請し、「原発再稼働に全力を挙げる」などと発言する感覚は私には理解できません。今取り組むべきは「原発再稼働に全力を挙げる」ではなく「電力供給に全力を挙げる」ことであるはずです。関電はこの度の原発事故の当事者ではありませんが、震災後の3ヶ月間、刻一刻と事態が悪化する福島第1原発事故の様子を目の当たりにしながら、関電の経営陣は一体何を考え、何をされていたのか甚だ疑問です。
 そもそも、真夏の日中における、ほんの一時的な大量ピークの電力需要をまかなうことを目的として、原発の再稼働を強引に進めたりすること自体が極めて不条理な話です。そのピークの電力需要の大半は企業や自治体、学校等組織的な活動によるもので、以前から私が申し上げている通り、基本的には家庭の電力需要の問題ではありません。
 大阪府の橋下知事のように「原発を動かさないといけないと煽るために節電要請を打ち出してきたとしか思えない。」ととられてもしかたがありません。15%の根拠となる資料の積極開示等を含め、関西電力の真摯な対応が待たれます。
 いずれにしろ、従来より環境適合型社会の実現を目指す我が国にとって、節電は引き続き重要な課題の一つであることは間違いありません。そういった意味では今回の原発事故により電気の大切さを改めて国民が認識をしたこの大きな節目の時にライフスタイルの転換を進めることは意義があります。
 今回の関西電力の節電要請により、節電に対する県民の意識は否応なしに高まるとともに、県をはじめ各地方自治体においても率先して節電計画を実行しています。そのことをもって間違っているとは思いませんが、私はこのことに多少違和感を感じます。
 東電や関電が要請する節電は、真夏の日中に使用される電力需要のピーク時に供給量が追いつかなくなると大規模停電につながる可能性がある。そうならないようにその時間帯には15%節電して欲しいということです。つまり、ピーク時以外の時間帯に電気を使用せずに15%節電しても電力会社の意図する節電にはなりません。しかし、環境適合型社会の実現をめざしCO2を削減するという観点からは、これはまさに正しい節電であり、私達はこの二つの節電の意味をしっかりと考えなければなりません。
 例えば冷水器の使用停止や室内灯の間引きは節電には違いありません。しかし、電力会社の節電要請に応えるのであれば夏の需要ピーク時に取り組むだけでいい訳ですが、環境問題を考えて実施するのならば、冷水器や余分な電灯はそもそも撤去すべきでしょう。
 現状を見ておりますと、どうもその当たりが混同されており、現在の節電のやり方は「欲しがりません、節電までは」、というような節電対策のためなら何でもOKのような進め方は、ややヒステリックな印象を受けます。
 サマータイムの導入もそうです。県では率先して節電に取り組むことを見せることに意義があるとしていますが、サマータイムのそもそもの趣旨は節電というより、仕事を早く終わった余暇時間を有効活用しようという意味合いであったと思います。堅実な行政手腕を誇る井戸知事にしては珍しく、あまり議論もなくやや拙速に導入を決めてしまった感があり、その思いとは別に新聞等では結局開庁時間が45分伸びただけで節電に逆行するといった厳しい指摘もあります。
 原発から自然エネルギーへという意気込みで太陽光発電や風力発電にシフトするのも良いことです。しかし、今までそれらが普及しなかった背景には、効率性が悪いなど何らかの理由があるはずで、そのことは精査する必要があります。原発事故が起こったからと言って一気呵成に取り組むのではなく、費用対効果を十分に精査し、それから実施することが必要でしょう。
 社会全体のエネルギー量を削減するという観点から、エネルギー効率化や省エネがよく挙げられますが、それだけでは不十分です。仮に太陽光発電の機械が環境に優しいとしても、その製品を一斉かつ大量に消費すれば、大量の資源とエネルギーを使用することになり、かえって環境悪化を招くことにもなりかねません。実際に日本のエネルギー消費が増大している事実や、地球温暖化の主な人為的負荷とされるCO2は一向に減少しておりません。環境問題を視野に入れた省エネでは、最終的なエネルギーの消費をいかに抑えるかが重要です。 私たちは今まで、絶えず生活レベルの向上をめざしてきたこととも相反する問題であり、一朝一夕に解決できるものではありません。
 節電の意義は大切でありますし、しっかりと推進していくべきではあります。しかし、あまりにも今回の電力不足報道に漠然とした不安を感じている時に、そのこととは直接関係のない節電まで求めることは経済活動や私たちの生活にも大きな影響を与えますし、過度に負担をかければ熱中症等思わぬ事故が起こりかねません。また、のど元過ぎればで夏が過ぎたら元の木阿弥ということにもなりかねません。本来の節電が目指すもの、あるべき姿をしっかりと踏まえ、長いスパンで取り組んでいくことこそが重要であると思いますが、当局のご所見をお伺いします。

3 応急危険度判定と家屋被害認定調査について

 質問の第3は「応急危険度判定と家屋被害認定調査について」です。
 地震発生後、通常はまず、建物の応急危険度判定が開始され、その後、罹災証明の発行等につながる家屋被害認定調査が始まります。最近では、応急危険度判定の調査結果の用紙には、「罹災証明のための調査は別に行われる」旨が明記されるようになったとはいえ、まだまだ応急危険度判定と家屋被害認定調査を取り違える被災者は少なくないと聞きます。中には、応急危険度判定結果に基づいて貼られた「危険」(赤紙)という表示を見て、住宅を解体せざるを得ないと大きな誤解をする被災者もあるようです。
 この問題は、阪神・淡路大震災以降から繰り返し指摘されているものの、なかなか改善が進まないのが現状です。
 先月半ばに、我が会派として、東日本大震災の被災地調査に参りましたが、これら二つの調査自体は災害を重ねるごとにシステム化され、円滑に行われるようになってきているとは感じましたが、それぞれの調査の意味や目的は未だ被災者へしっかりと理解されていない面があり、そのため前述のような大きな誤解が生じることにつながっています。
 この問題を解決するには、応急危険度判定の意味や目的を、被災者一人ひとりがはっきりと認識できるよう調査結果用紙に明記するとともに、日常における住民への防災教育等でもこれら二つの調査についての説明を行い、その理解を深めていくような地道な取り組みが大切であると考えます。また、応急危険度判定士の養成研修においても、被災者に対して二つの調査の意味をわかりやすく説明することの意義を浸透させることも求められます。加えて、長期的にはこれまでも何度となく議論されている応急危険度判定と家屋被害認定調査の二つの一元化について、再検討する必要があるように思います。
 そこで、一元化の可能性を含め、今後のこれら二つの調査のあり方について県としてどのように考えているのか、また、これらの二つの調査に係る県民の理解を得るため、県としてどのような取組を進めているのか、当局のご所見をお伺いします。

4 首都機能バックアップ構想について

 最後の質問は、「首都機能バックアップ構想について」です。
 東日本大震災で震度5強を記録した東京都内では、交通網がストップ、計画停電による混乱や日用品の買い占め騒動も起きたことは記憶に新しいところです。それを上回る地震が起きれば、大パニックになり首都機能が停止することは想像に難くなく、東京の街や首都機能の震災に対する脆弱さを見せつけました
 また、直下型の大震災がおこれば東京だけの被害では終わりません。東京は政治・経済の中枢機関が集中しているため、これらの機能が麻痺すれば、国内が大混乱に陥る可能性が極めて高く、そのような中、首都機能を代替できる副首都構想、首都機能バックアップ構想が改めて急浮上しています。
 この副首都構想では東京都の石原都知事も首都機能移転反対から東京への過度な集中は好ましくないと立場を変えたことが報道されている他、国においても首相が国会答弁で首都機能代替の必要性に踏み込み、国土交通省も危機管理都市構想に向けた動きを本格化しています。また、関西広域連合も、過日、政府に対し「首都機能バックアップ構造の構築に関する提言」を提出しました。
 この提言は、危機的な状況が生じて首都機能が機能しなくなった時に、首都機能をどこかで替わって行える仕組みを事前に用意しておくことが必要であるとしており、東京との距離、また、現実に東京に次いでインフラやソフトの集積がある関西が首都機能のバックアップを担うという考え方は大変現実的であり評価できるものです。
 提言のとおり、マスコミや企業、あるいは各企業の分野別の全国団体が東京にある中、東京が万が一の時の対策を事前に考えておく必要があります。首都機能が麻痺した時には代替機関が動き出すという対応を事前に用意しておいて、事前に訓練なども重ねることが大切であり、この提言を踏まえた取組は積極的に進め早期に具体化して行くべきです。
 その一方で、NEMIC―国家危機管理国際都市構想を推進するため、政府が国土交通省内に新しい課を設けるほか、国会の危機管理都市推進議員連盟が超党派で副首都構想の実現に向けて急ピッチで作業を進めています。また、橋下大阪府知事が、首都機能バックアップ構想を巡って、石原東京都知事と本格的な協議を開始するとの新聞報道がなされるなど、様々な動きがあるように思います。
 阪神・淡路大震災やこの度の東日本大震災の例からも明らかなように、災害はいつ発生するかわかりません。このことを考えれば、井戸知事は、連合長として、また、防災担当府県の知事として、国としっかりと連携し、まずは前述の提言に基づく取組を早急に進めるとともに、様々な動きがある中で、関西広域連合の構成府県間の意見調整をしっかりと行うなど、より一層、議論を深めていくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

石井健一郎
(灘区)

1.災害に備えた海岸保全のあり方について
 (1) 兵庫県における高潮対策について
 (2) 津波対策の現状と今後について
2.東南海・南海地震等に備えた地域防災計画の見直しについて
3.家庭と地域における太陽光発電の普及推進について
4.小水力発電の推進について
5.被災地を支援する自治体間の相互連携について

質問全文

第309回定例会(6月)一般質問
2011年6月23日(木)

 この度の東日本大震災で亡くなられた方々へ心よりお悔やみ申し上げますとともに、被害に合われた方々へのお見舞いを申し上げます。先月、我が民主党・県民連合議員団は、東日本大震災の被災地に対する調査班を編成し、2回に分けて現地を訪問して調査を行いました。
 私は宮城県の仙台・名取・石巻及び東松島の各市を訪れましたが、その調査を踏まえ、以下6項目にわたって質問を行います。

1 災害に備えた海岸保全のあり方について

(1) 兵庫県における高潮対策について

 災害は忘れた頃にやってくるといいますが、今年3月に発生した東日本大震災では、特にそのことを思い知らされました。
 かつて阪神淡路大震災を経験した我々は、どこに住んでいても、さまざまな自然災害を想定し、平常時からの危機管理意識や防災力を備えておくことの重要性を学びましたが、この度の東日本大震災では、通常考えている以上の災害が起こり得ることを改めて思い知らされました。
 この度の東日本大震災では、特に巨大な津波が大きな被害をもたらしたわけですが、本県にあっては、津波に限らず、台風や発達した低気圧が原因となって発生する高潮による大きな被害が出る可能性があるといわれております。
 特に三大湾といわれる大阪湾・伊勢湾・東京湾では、過去、室戸台風、キティ台風、ジェーン台風、伊勢湾台風、第2室戸台風等の大型台風が猛威を振るい、壊滅的な高潮災害をもたらしました。
 また、過去に5,000名以上の死者や行方不明者を出した伊勢湾台風の際には3メートル台の高潮が発生したといわれておりますが、総延長約840㎞の海岸線を持ち、北は日本海、南は瀬戸内海及び太平洋に面し、それぞれ特徴のある海岸を有している本県では、高潮に対する万全の備えが欠かせません。
 本県は、「海岸の防護」や「海岸環境の整備と保全」等の目的で推進する「海岸保全基本計画」を策定するとともに、高潮対策としては、防潮堤等の海岸保全施設の新設・改良を行うといった取り組みを進めてきました。
 私の地元の神戸市垂水区を含む東播海岸でも、明石海峡の潮流等の影響から侵食が進み、台風時等に多くの被害が生じてきたことから、昭和36年度より防潮堤整備を、昭和44年度からは、消波ブロックの設置、離岸堤の整備等を、昭和57年度以降は、新たに高潮対策を兼ねて海浜を生み出す養浜工を、国・県・市町の連携のもと行ってきました。
 神戸市垂水区では計画高潮位を2.8メートルとするなど、県内各エリアで計画高潮位が設定されて防潮堤整備が進められています。
 しかしながら、高潮対策にあっては、地震で防潮堤が破損した直後に高潮に襲われるなどといった複合作用なども想定しておかなければなりません。
 そこで、本県における海岸保全の現状と、今後の海岸の防護や利用面を含めた、高潮対策のあり方について伺います。

(2) 津波対策の現状と今後について

 海岸の保全に際しては、東日本大震災のような、大規模な津波の発生を想定した対策を検討しておかなければなりません。
 「ツナミ」という言葉が世界的に使われていることからも明らかなように、我が国もこれまで何度も大きな津波被害を受けてまいりました。
 東日本大震災による津波被害は改めて申し上げるまでもありませんが、遡って1960年に南米チリで起きたマグニチュード9.5の大地震では、発生した津波が太平洋を越え、日本列島の太平洋岸に来襲した結果、波の高さは三陸で5~6メートルになって、北海道南岸、三陸沿岸を中心に大きな被害をもたらしました。
 日本海側でも、1983年に発生した日本海中部地震では、速いところでは地震発生からわずか7分後に津波が押し寄せた結果、主に秋田、青森、山形県では、津波による多くの犠牲者がでました。
 今後、近畿地方において最も甚大な被害が予想される地震津波として、和歌山沖を源とする南海地震の危険性が指摘されていますが、東南海地震を含めた津波による被害予想は、死者約8,600人、全壊建物約40,000棟などと言われています。
 幸いにも我が県は、想定震源地からは、比較的離れており、南海地震津波による被害限定的と考えられていますが、例えば、太平洋沿岸地域で安政南海地震規模のマグニチュード8.4相当の地震が発生した場合には、淡路島の南部では、津波の第1波は地震発生から約50分で最高5.8メートルの津波が来ると予測されており、それに対する防潮堤の高さは1.8~6.4メートルとなっていることからも、必ずしも充分な備えとは言い切れず、淡路島の南西端に位置する福良港をはじめ、一部の地域については甚大な被害も考えられます。
 東南海・南海地震発生と津波の脅威の高まりに備え、県民の生命、身体、財産を守るためにも、そのハード面の予防対策はこれまで以上に急ぐ必要があります。
 そこで、本県における津波対策の現状と今後の方向性について所見を伺います。

2 東南海・南海地震等に備えた地域防災計画の見直しについて

 海岸の保全は、地域の安全・安心を支え、国土を守るために重要ですが、人口や経済活動が沿岸部に集中する本県にあっては、特に危機管理に際しての避難のあり方が重要です。
 大阪湾沿岸のゼロメートル地帯を中心とする地域には、特に高度経済成長期以降、急速に人口・資産等が集積していることから、一旦、大規模な浸水が生じれば、都市の中枢機能の麻痺により地域の社会経済は計り知れないダメージを受けることとなります。
 一方、海面の上昇や台風の巨大化等、地球規模の気候変動に伴う自然環境や気象条件の変化は、高潮災害に対する沿岸域の危険性が、さらに高まると、懸念されています。
 このような状況をふまえ、大阪湾沿岸において不測の大規模浸水が発生した場合、どのようにして人命を守り、どのようにして都市の中枢機能や社会・経済機能への影響を最小化させるかをあらかじめ検討しておくことが重要となってまいります。
 高潮対策としては、大規模浸水が発生した場合を想定し、近畿地方整備局は、本県と大阪湾岸の自治体含む29機関で構成する「大阪湾高潮対策協議会」を設置し、平成22年3月には、関係機関が取り組むべき危機管理方策を検討する「大阪湾高潮対策 危機管理行動計画 ガイドライン」を策定して、高潮対策への取り組みを進めてきました。
 津波対策としては、本県における地域防災計画において「津波からの防護、及び円滑な避難の確保に関する事項」として、体制整備や情報伝達の方法、避難対策や関係機関との連携などといった項目を設定し、具体的な対策のあり方を定めてまいりましたが、この度の東日本大震災のような事態を改めて考えた場合、今後起こるかもしれない不測の津波対策に対処するための改訂を早急に進める必要があると考えます。
 知事は6月15日の本会議冒頭の提案説明の中で、「国の中央防災会議」の調査結果を踏まえた本格的な津波被害想定の見直しを行うまでの間、暫定的な「津波被害警戒区域図」を作成し、避難対策ガイドラインの改訂や、避難のあり方の点検を進める」と、津波被害対策の重要性を述べられましたが、津波に備えた県の地域防災計画を今後、どのように見直そうとされているのか、所見を伺います。

3 家庭と地域における太陽光発電の普及推進について

 東日本大震災は、福島第一原子力発電所に対する甚大な被害を与え、我が国は原子力のあり方やエネルギー政策の見直しを迫られることになりました。
 5月25日には、電力供給不足に対応するため、東京電力と東北電力管内において、15%の節電を求める使用制限が、経済産業省により発動されましたが、今後大幅な電力不足が予測される中、エネルギーの需給バランスを図るためには、再生可能エネルギーの活用をはじめとする抜本的な見直しが必要となっております。
 また、5月17日に政府で閣議決定された「政策推進指針」でも、「環境・エネルギー大国戦略の見直しに向けた検討を開始する」などとされており、中でも、太陽光発電は、天然資源に乏しい我が国においても広く普及が可能なエネルギーとして注目を集めています。
 太陽光発電装置は一般に設置時の初期費用が高額となりますが、メーカー間の競争によって性能向上と低価格化、施工技術も進み、維持経費は安価であることから、世界的に需要が拡大しております。
 国では、太陽光発電システムの導入に対する「補助事業」を進めるとともに、
 この度の原発事故を踏まえたエネルギー政策の見直しの中、太陽光発電を2030年に現在の15倍に増やすことなどを盛り込んだ「サンライズ計画」構想をまとめたと聞きます。
 また、自治体においても、太陽光発電に対する補助金などを助成する取り組みが進んでおり、例えば一般住宅を対象に、太陽光発電への助成を行っている自治体数は都道府県と市町村をあわせて、650に至っており、本県でも20の市町が実施しております。
 本県でもこれまで、再生可能エネルギーの普及拡大を進めるため、平成22年度までに太陽光・風力合計発電容量を30万キロワットに拡大する一方、「住宅用太陽光発電施設」設置世帯を40,000世帯に増やすことを目標とするなど、一般家庭での再生可能エネルギーの導入に取り組んでまいりました。
 そうした中、兵庫県では県庁舎をはじめ、県有施設への太陽光発電設備を積極的に導入してきたことも手伝って、県民の環境に対する意識が高まり、太陽光発電設備の導入、特に住宅用システムの導入において、本県は全国的にも上位に位置づけられるようになったと聞ききます。
 さらに、先般の知事の提案説明では、「家庭における太陽光発電設備の導入」を促進するため、「住宅用太陽光発電 設備設置資金貸付金」を創設し、さらに1キロワットあたり2万円の設置費補助を行うとともに、中小企業者に対する貸付金の融資限度額を1億円に拡充するとともに、償還期間を延長する措置を図る」などと、太陽光発電設備導入への意欲を述べられました。
 そこで、家庭や中小企業を含めた地域における太陽光発電の導入促進に向けた、これまでの取り組み実績を伺うとともに、提案説明でいわれた施策の導入によって見込まれる効果、そして今後家庭や地域に太陽光発電を一層普及・浸透させるための取り組みを如何にすすめられるのかについて、知事の心意気も含めた所見を伺います。

4 小水力発電の推進について

 東日本大震災による影響は、私たちに改めてエネルギー対策の重要性を認識させました。
 今後は本県においても、省エネルギーの推進はもちろんのこと、太陽光・風力等の新エネルギーや、水力などの活用を一層検討する必要がありますが、次に「小水力発電」について質問をさせていただきます。
 「水力発電」は、現在でもわが国の電力供給の約1割を占める重要なエネルギー源ですが、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」という持続可能な社会を実現するにあたっても、二酸化炭素等を発生しないクリーンなエネルギーであることや、繰り返し使える再生可能なエネルギーであること、特に我が県は、山紫水明の自然環境に恵まれて、広い県土と山や谷・川を含む変化に富んだ地形と水資源が豊富であり、水力の優れた特性を考えれば、自然環境に配慮した、その活用を進める必要があると思います。
 中でも、小水力発電は小さな小川にも設置が可能であり、数十~数千キロワット程度の比較的小規模な発電として、水量が確保できれば、経済的に有利で、出力の安定や電力品質への悪影響が少なく、比較的簡易な設備であれば短期間の建設が可能で、維持管理も容易に行える特徴を持っております。
 主要先進国の中で低いとされる我が国のエネルギー自給率向上にも貢献できる国産エネルギーであるといえ、既にEU諸国やカナダなどが積極的に推進しておりますし、ヨーロッパの「小水力協会」などは、エネルギー不足に悩む開発途上国への普及拡大を目指しているとも聞いています。
 また、工事が比較的簡単な場合が多く、発電設備を設置する際の地形の改変が小さいことから、河川水質や水生生物等の周辺生態系に及ぼす影響も小さい環境調和型エネルギーともいわれています。
 さらに、例えば生み出した電力の一部を売って地域の活動資金に充てて地域の活性化に役立てることや、小規模な設置工事であることから、地域の施工業者に委ねることで、雇用の創出を図るといった効果も考えられます。
 このように、小水力発電は、クリーンエネルギー利活用だけでなく地域振興や、コミュニティづくりへのきっかけとしても期待できるのではないでしょうか。
 本県では、地域特性等を踏まえて、地球環境問題や防災に配慮した「 グリーンエネルギー推進プログラム」等に取り組んできましたが、小水力の利用可能地点・場所は本県内でも多いと推察されますし、地域の活性化とエネルギー自給を支える一環として、小水力発電の積極的な活用の検討が必要と考えます。
 折しも東日本大震災に伴うエネルギー対策の重要性が議論されているとともに、地球温暖化対策が未だ解決途上に有るなか、特に小水力発電の推進に向けてどのように取り組まれるのか、所見を伺います。

5 被災地を支援する自治体間の相互連携について

 東日本大震災では、被災地の多くで役場の機能そのものが大きな損害を受けたほか、津波被害や原発事故で多くの住民の長期避難が必要となったことから、被災自治体に対しては、震災直後から全国の自治体がさまざまな支援活動を展開しています。
 大がかりな自治体職員の現地への派遣や、また各自治体の避難住民の受け入れなどが進められ、県や政令市が特定の自治体を集中的に支援するような工夫もみられる中、例えば全国市長会によれば、3月末時点での支援要請673人に対し、4月11日時点で、約400の自治体が約2,000人を派遣することを表明したとのことです。
 その中にあって、例えば、今回、関西広域連合では、いち早く、各府県分担によるカウンターパート方式による被災地支援を採用し、本県と鳥取県・徳島県が「宮城県」を、大阪府と和歌山県が「岩手県」を、そして滋賀県と京都府が「福島県」をそれぞれ、「被災地対策」「支援物資等の提供」「応援要員の派遣」「避難生活等の受け入れ」の内容で応援する運びとなりました。
 さらに、府県レベルの支援に加えて、神戸市でも「仙台市や名取市」へ職員を派遣、大阪市では「岩手県釜石市」に現地対策本部を置くことで、支援内容が釜石市役所の日常的な業務にも広げることが可能となるなど、一定の成果に繋がりました。
 かつて、2008年に中国で発生した四川大地震では「四川省都江堰市と上海市」など、被災自治体と被災地外の自治体が一対一でペアを組んで復興を推進し、成果をあげたといわれております。
 本県では、これまで計14陣にわたって宮城県北部沿岸市町への支援隊を編成・派遣するとともに、これまで県と市町等あわせて、のべ50,000人を超える職員の派遣を実施して、災害救助や物資搬送、被災者の健康相談や学校支援、道路復旧や被災住宅対策といった多方面からの被災地の支援を行ってまいりました。
 去る5月に我が民主党・県民連合議員団が宮城県を訪問した際には、「兵庫県や神戸市のように阪神・淡路大震災を経験した県・市町による支援内容と、それ以外の自治体からの支援では、被災地のニーズ把握や、支援情報や技術的知識といった面で差が大きい」などという現地職員の声も聞かれました。
 阪神・淡路大震災を経験した本県として、支援に取り組もうとしている他の自治体へのフォローが必要ではないかと考えさせられる意見であり、これから被災地が一層の、復旧・復興を進めていこうとする中で、より良い支援を効率的・効果的に進めるためには、支援する側の協力・協調体制をしっかりと構築していくべきと考えさせられます。
 そこで、今回の被災地支援にあたり、本県と他府県及び県内市町との関係において、本県の有している情報やノウハウの提供や、「支援側自治体間」の相互連携の推進についてお聞かせ戴くとともに、本県が見直す「地域防災計画」にも、こうした「支援側自治体間」の相互連携の意義や必要性を反映させるべきではないかと考えますが、所見を伺います。

黒田一美
(垂水区)