第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (健康福祉部)
2011年10月12日(水)
1 女性医師の確保対策について
全国の医療施設で働く医師数は、厚生労働省の調査によると、2008年12月末現在で、27万1897人で、うち女性が占める割合は18.1%となっています。また、女性医師が占める割合は、年齢が低いほど高く、20代では36.1%、30代では26.5%となっています。2040年には、女性医師の占める割合が、29.5%~34.3%程度になると予測されています。一方、本県では、2008年12月末現在で、医療施設で働く医師数は1万1688人となっており、うち女性が占める割合は17.2%となっています。
結婚しても働き続ける女性医師にとっては、育児中は仕事のペースダウンを余儀なくされ、25歳の時点では90%強であった就業率は、概ね36歳の時点で76%まで低下していることからも窺い知ることが出来ます。
医師の絶対数の不足や産科・小児科など、診療科偏在が大きな問題となる中、県でも医師確保の一環で、院内保育所への補助制度や女性医師の再就業支援センターの開設など女性医師の確保対策に取り組んでおられますが、ここ3カ年の取組状況からは、なかなか厳しい状況を窺い知ることができます。
医師の国家試験合格者のうち女性が約3割を占めていることからも、退職した女性医師の復帰促進が医師確保対策へ大きな効果が見込まれるものであると思われます。
しかしながら、退職された女性医師を復帰させるためには、以前に働いていた状況と比べて勤務環境が改善されていなくては、働こうという意識も起こらないのではないかと考えます。勤務環境の改善に向けて、全女性職員の育休取得、院内保育所利用者等の短時間勤務、夜勤の免除、さらには、育休中の待遇改善、復帰後の裁量勤務時間制、他の医師に負担がかからないように開業医など外部から当直確保するなどの工夫をされている事例があります。
県内でも、厚生労働省の調査によると院内の保育所の設置数は2005年から3年間で16カ所増え、現在129カ所となっています。院内保育所での病児保育・24時間保育・学童併設などを病院単位ではなく、地域として取り組むことにより効率的な運営が期待できるのではないかと考えます。医師確保対策には、直接的な手段に加え、県が率先して実施しているワークライフバランスの意識改革を病院経営者に対してしっかり根付かせることなど、就労環境を整えていくことも、重要な要素であり、ひいては安心してかかることができる医療の提供につながると考えますが、女性医師の確保対策について、これまでの取り組みをどのように評価しているのか、今後の展望と併せてご所見を伺います。
2 在日外国籍無年金障害者に対する障害者特別給付金について
在日外国籍県民の制度的無年金者の問題についてですが、県では、1998年度に「特別給付金制度」を創設しました。創設当時は、無年金外国籍高齢者等福祉給付金は月額5000円で1906人に支給されており、支給総額は1億1586万円余でしたが、2010年度では、月額16900円で、支給人員は601人に減りましたが、1億2885万8000円の支給総額となっています。
2010年度より、制度的無年金高齢者に対して、老齢福祉年金の1/2に相当する金額の支給を県が実施したことにより、市町の支給分と合わせて、対象の受給者は国の老齢福祉年金に見合う給付金を受給できるようになりました。制度的無年金者の問題を国が責任を果たすまでの措置として、県が高齢者県民の命を保障したものであり、県の対応を評価するものであります。
一方、無年金外国籍障害者等福祉給付金は、創設当時、月額10000円で115人に支給されており、支給総額は1340万円でしたが、2010年度では、月額33800円で108人に支給され、支給総額は4443万9000円となっています。
これまで、障害基礎年金1級に相当する方に対しては、満額とはなっていませんが、障害基礎年金1級相当額の1/2を目指し、着実に支給額を増額していただいているところであります。その一方で、障害基礎年金2級に相当する32人の制度的無年金障害者に対しては、兵庫県下各市では、2008年度から共同事業として、障害基礎年金2級相当額の1/2の金額の支給が実施されていますが、県では、いまだ全く支給されていない状況が続いています。支給対象者の高齢化もあり、県でも早急に対応をすべきと考えますがご所見を伺います。
3 不育症への対応について
不育症をご存知でしょうか。今年になり、ようやくマスコミにも取り上げられるようになりました。妊娠することが難しい「不妊症」と混同されがちですが、不育症は何度も繰り返す流産、いわゆる習慣流産の病気です。厚生労働省研究班の報告では、妊娠経験がある女性の4.2%に起き、年間3万人が発症すると推定されています。私も、死産そして流産3回繰り返した際には、全て自己責任と悩んだ時期がありましたが、産婦人科医の説明で病気とわかり、医師の指導も受けながら無事一子を抱き上げることができました。
わが国では、年間約30万件の自然流産があると推定されています。わが国で最初の不育症外来を開設し、数多くの患者さんに接している牧野恒久医学博士によると、「60%が受精卵の致死的異常のため手のほどこしようがないとしても、残りの40%は、生殖医療の治療対象になる」と言われており、このうち約55%を占める染色体異常・子宮の形態異常・抗リン脂質抗体症候群などは治療法が既に確立しています。
しかしながら、治療を進めていくには、産婦人科での不育症検査・1万6150円から始まり、妊娠判明時には、血栓形成の予防としてのヘパリン注射の開始で・3万6330円など、月5万円前後がかかるため、負担感を訴える患者は多いのが現状です。不育症の治療や医療機関が独自に設けている検査項目は、保険診療の適用外で、自費診療であることが多いからです。
また、不育症外来が少ないうえ、病院までの距離が遠く、通院することが困難なため、病院の近くに短期マンションを借りたりする場合も多く、出産まで150万円程度の出費を覚悟しているとの話もあります。
不育症の治療には、不妊治療と違い公的な助成制度はありません。「不育症そだてねっと」が都道府県を対象に実施した全国調査によれば、11自治体に既に助成制度があり、助成額は3万円から30万円となっています。今年度から茨城県日立市、石川県かほく市、和歌山県、神奈川県大和市などで助成制度が設けられましたが、まだまだ、不育症という疾患が認知されていないのが現状です。また、不育症の専門医がいないケースも多く、患者の病態や事情を把握した上で、その患者に最も適した医師や医療機関を紹介する医療コーディネーターの果たす役割が重要となってきます。さらには、新しい不育症の臨床研究として、免疫学・発生学・内分泌学・代謝学とが協力した取組も始まっていると聞いています。
そこで、県においても、習慣流産を繰り返す不育症という疾患について、広く県民に周知していくとともに、無事出産できるよう県も支援していく必要があると考えますが、当局のご所見を伺います。