代表質問
1.本県財政運営の健全性確保について
2.防災先進県「兵庫」の役割について
3.小児周産期専門医療の充実について
4.国際観光都市・神戸の活性化と兵庫の発展について
(1) 中国事務所の再開による観光・貿易振興について
(2) 神戸空港の有効利用について
5.原発依存から自然エネルギーへのシフトについて
6.県立高校における通学区域の検討について
質問全文
第310回定例会(9月)代表質問
2011年9月28日(水)
1 本県財政運営の健全性確保について
本県では昨年度、「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づく3年目の総点検を行い、県議会でも「行財政構造改革調査特別委員会」を設置して精力的な議論を重ねる中、我が民主党・県民連合議員団としては、将来にわたって持続可能な行財政基盤を確立すべきことを主張してまいりました。
特に、財政運営に関しては、「今後の収支バランスをしっかりと精査し、事業を確保するための起債発行は、県民生活にとって将来負担と比較して、より大きなメリットを享受できるようしっかりと検証すること」などを求めてまいりました。
そうした議論を重ねた結果として、本年3月に第2次行革プランが策定されましたが、その内容は、経済・雇用対策などの臨時的課題に対応しつつ、県民福祉の向上に向けた積極性も認められたものと、一定の評価が可能といえる内容でありました。
しかしながら、阪神淡路大震災からの復興対策と、それに伴って生じた収支不足解消のために、これまで多額の県債を発行してきたことから、県債残高も平成22年度決算見込ベースで3兆2千9百億円となるとともに、平成23年度当初予算ベースでもいまだ3兆2千8百億円となっております。
加えて、第2次行革プランにおける財政フレームに目を転じると、平成30年度までの収支不足額が1,740億円に達するという厳しい見通しの中、国の財政対策をみながら、さらなる事務事業の見直しや、投資規模の適正化と共に、県債管理基金590億円分の取り崩しなどが必要という厳しい事態に直面するなど、なお予断を許さない状況が続いております。
特に、財政フレームにおける収支不足額を解消するための活用が想定されている県債管理基金に関しては、その残高が平成22年度決算見込ベースの約2,461億円から平成23年度当初予算ベースでは約2,663億円へと増加しているとはいえ、本来あるべき積立額に対する不足率は、なお50%を超えている状況にあります。
ご承知のように、この県債管理基金の過度な取り崩しは、積立不足率の増加を招き、それが地方財政の健全化判断比率の要ともいえる実質公債費比率の悪化に繋がることを考慮すれば、慎重かつ充分な思慮・検討があってしかるべきです。
就任10年を迎えた知事が記者会見で「基金の積み立て不足と県債の償還が弱点」などと述べておられることや、歳出面の見直しがもはや限界に来ていると伺っています。
さらに、東日本大震災の影響や昨今の急激な円高・デフレ経済を鑑みれば、今後の財政運営のあり方は、一層、健全でバランスの採れた取り組みとしていくことが肝要です。
そこで、平成22年度決算や本県経済動向等を踏まえつつ、本県の財政運営をいかにして健全化に導かれるか、特に、巨額な県債残高の逓減や見込まれている収支不足の解消に向けて、知事はどのような認識と姿勢で取り組もうとされているのか伺います。
2 防災先進県「兵庫」の役割について
鴨長明は「方丈記」の中で、元暦(げんりゃく)2年(1185年)の地震に触れ、地震を“なゐ”と呼んでいるのですが、「歳月が過ぎると、地震(なゐ)のことを誰も口にする人はいなくなった」と書いています。
今から800年以上前に書かれたこの書物の一節は、現代の私たちが地震や災害に対してどのように向き合い、平素からの備えや心構えをどのように持つべきなのかを教えてくれているように思います。
私は、阪神・淡路大震災を契機に、ことあるごとに防災・減災の重要性を説き、防災教育・人材育成の必要性を訴え続けてきました。
同時に、私は、安全・安心な兵庫を築くことが、被災地兵庫の責務であり、そのためには、防災の専門教育が極めて重要であると認識し、被災地内の公立大学である県立大学に環境防災学部、学科を創設することは極めて意義深く、必要なことであると言い続けて参りました。
昨年9月30日の県議会本会議で、知事から「防災に特化した学科について検討を進めながら、当面、各学部を横断して総合的・体系的に防災に関連する科目が履修できるユニットを整備する」との前進した答弁がなされました。
本年8月17日には、兵庫県立大学防災教育センターの開所式が行われ、着々と進んでいるように聞き及んでいます。しかし、防災教育ユニットの開設だけでは必ずしも充実したとは言えません。
是非、環境防災学部、学科を創設し、環境防災学を4年間通じて学び、県立大学が防災・減災の先進県兵庫の人材育成拠点としての役割を果たしてほしいと思います。
3月11日に東日本大震災が発生し、兵庫県は、地震発生49分後に、45名の警察官を、さらにその日の内に121名を全国に先駆けて派遣、職員も9月23日現在、延べ76,252名を派遣し、被災地から大いに感謝されています。
これは、兵庫県が防災先進県として日頃から対策が出来ていたからこそ素早い対応が出来たと思っています。
我が会派も、5月に早速、被災地を視察しました。
大自然の猛威で根こそぎガレキ化してしまった荒れ地を目の当たりにし、防災・減災教育、専門人材育成の必要性を改めて痛感しました。
防災教育は、自ら調べ、考え、判断し、行動する教育を基盤としたものでなくてはならず、その防災教育をいかに実践していくかが大切なことだと思います。このことは、日頃から防災教育に取り組んでいた釜石市の小中学校で死者をほとんど出さなかった例が実証しています。
兵庫県は、阪神・淡路大震災の教訓を活かすため、9年前全国に先駆けて、県立舞子高校に環境防災科を設置しました。しかし、せっかく高校で環境防災に関心を持ち、動機付けされた生徒が、卒業後の進路としての環境防災学を専門とした大学に進学することが出来ないまま推移して来ましたが、最近、関西学院大学、神戸学院大学等、被災地内の私立大学で、環境防災に関する教育の取り組みを始めました。
近い将来必ず襲ってくると言われている東海・東南海・南海地震が、同時発生すれば、現在想定されている大きさより遙かに大きなエネルギーの地震となり津波も心配されます。火山列島・日本、いつ何処で地震が起きても不思議ではありません。東日本の津波、豪州の洪水、ニューヨークのハリケーン、今月の15号台風を見ても、人間が自然を制覇出来るというおこがましさを捨て、自然の驚異を冷静に見直さねばなりません。自然に対する謙虚さを持ちながら、減災に対する新しい発想で望んでいきたいと思います。
折しも、今年4月、県立大学大学院応用情報科学研究科と日本初のシミュレーション学研究科が、ポーアイ二期の演算能力世界一のスーパーコンピューター“京”に隣接して設置されました。
これから世界一のスパコンの防災面での活用を含めて、社会科学的な面からも総合的に防災・減災を取り上げ、本格的な防災拠点の集大成として県立大学環境防災学部、学科を位置付けて頂きたいと願うものです。
また、「人と防災未来センター」や「こころのケアセンター」など、国内のみならず海外からも高い評価を得ている機関を、県立大学の附置研究所として位置付け、防災・減災政策を相乗的に高めていくことが可能になるとも考えます。
「防災・減災」は、今や兵庫の県是であり、トレードマークであります。
東日本大震災という我が国全体で取り組むべき課題に対して、兵庫が全国を先導する決意を示す視点からも、減災情報発信と行動の拠点にするための同学部、学科を設立して環境防災を学問として研究する人材養成に取り組んで頂きたいと願うものです。防災に深い理解をお持ちの井戸知事の所見を伺います。
3 小児周産期専門医療の充実について
少子化の進展の中、小児救急医療や周産期医療の充実は、安全で安心な県民生活を実現する上で極めて重要だと思います。
本県ではこれまでも、小児救急医療電話相談や地域周産期母子医療センターの充実強化に努めてきました。しかし、医療ニーズの高度・多様化や、産科・小児科医の不足などによる地域医療の深刻化が増す中、特にリスクの高い妊娠に対する周産期医療や、高度な新生児医療等を行える全国で2番目のこども専門病院として「県立こども病院」の存在意義は極めて大きいと考えます。
私は先日、県立こども病院を視察しましたが、その際に、院長初め職員の方々から自信に満ちた説明を受け感銘を受けました。
私は、従来からこども病院は、「子どもの命を助けて欲しい!」という親の願いに応えるため、命を救う“最後の砦”として、小児疾患における高度医療を提供し、日夜、大いに奮闘して頂いている病院と理解し、感謝していましたが、改めてその役割を認識しました。
現在、入院患者の約4割が神戸市民ですが、県外からも高い評価を受け、小児周産期における生死の狭間にある患者が多く訪れています。
こども病院は、「近くて便利」という病院ではなく、「命を救ってくれるなら遠くてもわざわざ訪れる」という病院と言えます。
そのこども病院が、築42年という建物の老朽化の問題を抱えています。
院長からは、水周りを初め先端医療の提供に支障を感じながらも、やりくりをして頑張っていることや、老朽化した病室内で、身動きが難しい状況の中、身をかがめながら精密な診療・看護に携わる病棟スタッフが医療に取り組んでいるという説明を受けましたが、こうした努力も限界が来ており、改築し課題に対応していかなければならない時期に来ていると痛感しました。
県は小児、周産期医療の全県拠点病院として診療機能の充実を図るため、こども病院の建て替え整備の計画を進めています。整備候補地等の調査に着手しつつ、先般には「県立こども病院建替整備基本構想」を公表し、今年度中に基本計画の策定を行うとされたところです。
この構想の中でも、重症患者の増加、入院の長期化等こども病院が提供する診療機能に係る課題を取り上げています。
また、小児疾患を抱えたまま成人してしまったキャリーオーバー患者への対応や、子供だけでなく妊娠している母体に異常が発生した時、合併症や感染症等で緊急事態に陥る可能性も想定すれば、小児医療、周産期医療の全県拠点病院としての役割を確実に果たしていくためには、他の総合病院と医療連携に基づく相乗的な効果も極めて重要になってくるものと確信します。
また、遠方からの患者を多く受け入れているという面から言っても、建て替え整備を行う際には、新幹線、空港、ドクターヘリ、ドクターカー等の交通アクセスが優れた場所、また子供に付き添う親が宿泊できるファミリーハウス等の整備等、家族にとっても優しい環境下にある場所に立地していくことを視野に入れる必要があると思われます。
そこで、小児専門医療の充実という観点から、「小児医療の最後の砦」としてこども病院の建替整備にあたっては、診療機能の充実を図るとともに、全県の拠点病院としての機能発揮にふさわしい整備場所を選定していく必要があると考えますが、当局の所見をお伺いします。
4 国際観光都市・神戸の活性化と兵庫の発展について
(1) 中国事務所の再開による観光・貿易振興について
679万人から861万人に、これは東日本大震災直前までの外国から日本を訪れた観光客数の前年からの推移です。
その75%にあたる652万人が、アジア地域からの訪問者であるという実情や、これからのアジアの発展を考慮すれば、アジアの中での日本の役割を冷静に、長期的な視点から見つめなくてはなりません。特に若者の交流、しかもお互いが直接訪れることでの相互理解が最も必要なことと思われます。
これからのやり方次第では、国際観光都市・神戸への観光客の増加が、兵庫県の産業の発展に大きく寄与するものと確信します。特に、アジアからの誘客、東アジアの富裕層の観光団の日本訪問で、元気な神戸を取り戻し、兵庫県の発展に繋げて行くべきだと考えます。
ご承知の通り、神戸は、神戸ビーフ・日本酒・ケーキ・パン・各国のハイカラなレストランなどの食文化を有すると共に、日本最古のゴルフ場やファッション・真珠・シューズなど世界に誇る優れた文化や産業があり、さらに歴史的な港町神戸に国立公園六甲山があり、温泉もある地形的にも大変恵まれた観光地です。また、中国・台湾など、アジア地域からの観光客の主な訪日目的が、温泉・リラクゼ―ション・ショッピングであることから、まさに最適な観光地と言えます。
観光による平成21年度の日本国内における旅行消費額は22兆円で、雇用創出効果は400万人を上回るという観光庁のデータも見受けられます。
さらに中国については、昨年7月に日本への個人観光客を対象としたビザが緩和されると共に、中国の取り扱い旅行会社も、48から290社に増えたことから、東アジア旅行社の取扱関係者を日本に招くファムトリップや誘客のプロモーションを行い、しっかりした種を今、積極的に蒔く時だと考えます。
本県は1982年には香港事務所を開設して、1983年に、日本でいち早く広東省と友好提携し、順調に中国と経済・文化交流を進めて来ました。
しかしながら、行財政構造改革に伴って、3年前に中国の在香港兵庫県事務所を撤退させました。
財政状況の悪化に伴う判断であったこととは思いますが、海外との観光・経済交流の推進にあっては、目先の経費より、産業の発展で雇用・税収入など多方面の成果を大きな視野から、よりグローバルな視点で見つめる必要があると思います。
今や、日本の貿易の50%以上が対アジアで、中国が20%以上のシェアを占めます。その約30%が関西で、中国との交流はこれからが本番だと思われる時期に、こうした撤退は、交流のモチベーションにも影響しかねず、余りにも“もったいない”と考えます。
本年7月に、私達民主党・県民連合議員団は、鹿児島県を視察しました。
同県は平成21年7月に「上海マーケテイングプロデユーサー」の活動拠点となる現地代表事務所を上海に設置し、10年後のマーケット戦略ロードマップを作成しています。
さらに、ここ数年で、岩手・宮城・長野・大分・沖縄県等が中国事務所を開設しており、現在28府県が35の事務所を中国に開設しています。
中国事務所を拠点にした、将来を見据えたアジア戦略を、兵庫県も打ち出す必要があると考えます。
本県の財政が厳しい状況は理解できますが、コスト以上の成果につながるポテンシャルと魅力が、アジア・中国には十分あると確信します。
国際交流の推進にあっては、常に先を見越した事業展開が必要であり、早急に兵庫県の中国事務所を再開し、それを拠点とした積極的な交流事業を展開すべきだと考えますが、知事の所見をお伺いします。
(2) 神戸空港の有効利用について
今年は、辛亥革命から100周年の年にあたります。
孫文は、18回も訪日をした好日家で、最初に訪れたのも神戸で、日本を去る最後の大アジア主義の講演を行ったのも神戸です。
神戸市垂水区の舞子に孫文記念館・移情閣があり、未だに中国でも台湾でも尊敬されている孫文と所縁が深い兵庫県が、積極的に中国交流を政策的に進めるべきだと考えます。
申し上げたように、兵庫県は、全国でいち早く中国の広東省と友好姉妹提携を交わし、これまで日中経済・文化交流の中心的な役割を果たしてきました。
今、日中交流が低迷していますが、こうした時だからこそ積極的に、戦略的にアジアとの交流を進めるべきと考えます。
ご承知のように、神戸空港は、兵庫県の中心地・三宮からポートライナーで18分、関西国際空港と29分で結ぶ海上ベイ・シャトルもあり、大変アクセスも良い海上空港です。
将来目指すべき24時間の国際空港貨物の拠点として、また医療搬送用として、さらに観光立国として歴史遺産が多い関西のアクセスの拠点として、神戸空港は非常に利便性が高く、その最大限の活用を通じて兵庫県の発展に繋げるべきと考えます。
そのためにも発着時間や便数制限、そして海外便の運航などの規制緩和・撤廃を、兵庫県は神戸市と協調して国交省にもっと積極的に働きかけるべきです。
そして、現在認められているオウンユースチャーター便の利用拡大を図り、国際ビジネスジェット・チャーター便を積極的に受け入れるべきと考えます。
さらに神戸空港の規制緩和は、ポートアイランドに整備されている先端医療施設への遠方患者の受け入れや、演算能力世界一を誇るスーパーコンピューター“京”がもたらす企業誘致などに、拍車がかかるといった相乗効果をもたらし、神戸市並びに兵庫県全体の活性化に繋がるものと確信します。
国際観光都市・神戸、医療特区で先端医療を活用した神戸空港の有効利用で、兵庫県の発展に繋げていくべきと考えます。
申し上げたアジア・中国との交流の重要性、そしていわゆる東アジア共同体の一員として、兵庫県が果たすべき役割は大きく、東アジアと世界への窓口としての神戸空港をより適切に活用していくべきと考えますが、ご所見を伺います。
5 原発依存から自然エネルギーへのシフトについて
2011年3月11日に発生した東日本大震災により日本の、いや世界の原子力エネルギーの見方は大きく変わりました。
安全神話と安価が売りであった原子力発電は見直され、ヨーロッパでもフランスなどを除き、2050年を目途に80%以上を自然エネルギーに転換するとしたドイツを初め、スイス・スペイン・イタリア・オーストリアなどの国々が脱原発を表明するなど、脱原発への動きを加速させつつあります。
こうした機運の発信源である日本が、原発推進、あるいは従来通りの原発依存と言う訳には行かないと考え始められています。
もともと日本の本格的な原子力平和利用への動きは、1950年代から始まりました。1955年12月に「原子力基本法」「原子力委員会設置法」「原子力局設置法」の原子力3法案が可決されると共に、政府には「原子力委員会」が設置されました。
さらに、国策として、東京大学に原子力工学科を創設、資源に乏しい日本にとって原子力の平和利用が、強力に推し進められました。そして、原子力工学は、その利用に肯定的ないわゆる“原子力村”と言われた一部の産学官集団により、強力に推進されて行きました。
今回の事故直前、資源の乏しい日本では、エネルギー自給率は18%でした。
そのうち原子力がエネルギー源の約14%を占めていたことからも、原子力依存体制が出来上がっていたと言えます。
一方で、私達は、原発について余りにも情報を知らなさ過ぎた、否や、きちんと情報を知らされていなかったと言った方が正しいかも知れません。
単価の面で、経済産業省の試算によれば、電気1キロワット時を作り出すのに、太陽光が49円、水力が8~13円、風力が10~14円、火力7~8円かかるのに対し、原子力は5~6円であると報じられ、原子力エネルギーの優位性が強調されていました。しかしながら、公表されていた発電コストには、原発を誘致した地域に国から支給されていた交付金が含まれておらず、今後大きく問題となってくる放射性廃棄物処理費用や、今回のような事故に対する補償費用も全く計算されていないことなどが明らかになりました。
これまで、自然エネルギーの典型とも言える太陽光発電については、我が国がオイルショックを経験した1970年代から開発と普及に力を入れ、産業界の努力もあって、日本の太陽光エネルギーのパネル作成技術は、世界最高水準となり、その生産シェアもトップを誇った時期がありました。また単価についても、工夫によっては、許容できるコストで相当量を導入が出来、適切な普及促進が可能になってきているとも聞きます。
今後、国策として、太陽や風力エネルギーなどへのシフトを進め、生産規模の拡大で資材の量産や、新技術の開発を進めていけば、価格の低下と安定供給の実現に結びつくことが容易に想像出来ます。さらに、自然エネルギー産業が
純国産であることを考慮すれば、日本経済再生の起爆剤になるとも考えられます。例えば、環境省の試算では、2020年までに年間約6,000~8,400万トンのCO2排出量削減に相当する再生可能エネルギーを導入した場合、生産誘発額が約9~12兆円、雇用創出が約46~63万人等と見積もられています。
私は、直ちに原発を止めることは得策とは思いません。
しかし、前述したような原発の安全・安価神話への疑問に基づけば、今後は原発依存度を徐々に低下させる一方で、自然エネルギーへのシフトが適切だと考えます。
本県としても将来的な新エネルギー戦略を見据えた施策を速やかに打ち出し、省エネルギーの推進と併せて、太陽光や風力、バイオマスといった自然エネルギーの導入促進を図ることが肝要です。
すなわち、自然エネルギーの拡充に向けて、県民の取り組みへの支援はもとより、企業がより積極的に導入に取り組めるような仕掛けづくり・誘致の推進が重要となってくるものと考えます。
「県民生活の利便性確保」と「本県経済の持続的発展」、そして「地球環境問題への効果的な対応」を実現するため、今こそ積極的なエネルギーのシフトを取り組んで行くべきと考えます。
そこで、今や重大な国家的課題である“原発”に対する知事の考え方と、自然エネルギーの導入に向けた取り組みのあり方についてお伺いします。
6 県立高校における通学区域の検討について
県教育委員会は、県立普通科高校の学区見直しで、3年後の平成26年度を目途に全県を5学区に再編するという「兵庫県高等学校通学区域検討委員会報告(素案)」を公表し、検討を行っていると聞きますが、解決すべき課題があると考えており、それについてお尋ねしたいと思います。
まず1つ目に、8年前から順次取り入れた複数志願選抜がどう総括されたのか、何処に問題があったのかを明らかにする必要があると思います。
複数志願選抜入試が導入されて年数も浅く、今年の4月から導入されたばかりの学区があり、まだ導入できてないのも4学区あります。
その検証を十分に仕切らないままで、平成26年度から県下を5学区に見直すという学区検討委員会の案は、あまりにも拙速と言わざるを得ません。
2つ目に、各々の進路や目標を定めて、その達成に向けて努力する生徒達を支援する教育体制の構築こそが大切であるという点です。
県下を5学区に見直すことの影響の一つに、受験戦争の過度な高まりが結果的に高校の序列化を進めるという課題が聞かれます。
学区見直しの効果の一つは、高校間の競争及び切磋琢磨を促して、いわゆる昔の“日比谷”を再現し、トップクラスの生徒をしっかりと磨きたいということと、生徒に合った学力保障をしたいということだと思います。
しかし、高校は本当に知識だけを教える所なのでしょうか!
私が、高校の担任をしていた時、身体障がいがある生徒が入学して来ました。
教室の扉が開けられなくて、苦労をしていると、日頃ゴン太(いたずら好きで腕白)な生徒が、ごく自然体で扉の所へ行って、扉を開け通り過ぎて行きました。
一人の障がいを持つ生徒のお陰で、勉強の面でも生徒同士で教え合い、何事にも協力的でいろんな面で団結力を持った、まとまりのある素晴らしく優しいクラスが出来上がりました。
また、私は、10年ほど前、短期留学のお世話をして、アメリカに高校生を引率したことがあります。
ある日、老人ホームを訪問した際に、非常に頭の良い女子生徒が、99歳の日系アメリカ人のおばあちゃんと、折り紙をしながら話し込んでいました。
そのおばあちゃんは「半世紀振りの日本人!」に会えたと言うことで、英語と思い出すように片言の日本語の単語を交え、涙を流しながらの交流をしていました。
やがて別れる時がやって来て、おばあちゃんが玄関の外までやって来て、ずっと手を振って見送ってくれました。
かつてこの女子生徒は、「年寄りは嫌いです。直ぐ壊れそうだから」と言っていたのですが、この日の彼女の日記には、「私は、この日を境にお年寄りの見方が変わりました」と告白していました。
この経験は、彼女にとって短期留学での一番の収穫であると共に、立派な勉強であったと思います。
子供にとって勉学とは、単に知識を得るだけではなく、得た知識をどう活用し、将来の目標や夢にどう繋げるのかだと思います。
多くの親と生徒が、高校に期待することは、良い大学へ進学させてくれることと言われますが、高校は、大学入学するための受験予備校ではないのです。
繰り返しますが、様々な特性を持った生徒にもまれ、自らの目標をつかみ、その進路に向かって努力していく生徒を支援する教育体制こそが重要なのです。
もちろん基礎教養を学ぶことは大事なことです。しかし、生徒の全員が数学を好きになる必要はありません。何か一つ好きなことや得意な分野を見つけ、自分の夢・目標に向かって努力することが大切で、その努力の結果、生徒は大きく伸びて行きます。
自らが目的を持ち自覚した時、それに向かって努力をした時、一気に学力が伸びます。これが真の学力に繋がると考えます。
3つ目に、通学区域の見直しで、地域に自分の学力に合った学校が無い場合には、遠くまで通わなければなりません。遠距離通学を余儀なくされる生徒の増加とそれに伴う精神的・経済的負担についても考えねばなりません。わざわざ遠方まで通い、魅力を感じられない学校であれば、退学者が増えることも考えられます。
このようなセーフテイネットについてもよく考えたうえで、学区見直しの是非を検討して頂きたいと思います。
最後に蛇足(私見)ですが、私の永年の教師経験で、生徒を伸ばす一番大切なことは、教師が生き生きと頑張れる学校現場であるかどうかと言うことです。校長は一般教師に「多少のミスの責任は、私が取る。生徒のために頑張って欲しい」と意気に感じられる学校に、生徒は、目が輝く教師に魅力を感じ、師と仰ぎ勉学に力が入れられるような教育環境整備こそが、一番大切なことと思えてなりません。学びたいことを学べる魅力ある学校作りへの取り組みを一層強力に推進して行きたいものです。
日本の縮図と言われる兵庫県は、日本海から瀬戸内海まで広範囲で、地域によって背景・実情が異なります。地域の面積や交通事情も異なります。このような特色のある兵庫県の高校学区見直しについては、しっかりとした理念を基に、地域の実情に合わせ、保護者を初めとする県民の理解を十分に得ながら熟慮した結論で改革を進めることが肝要です。
今回の新学区構想は、拙速に変更するのではなく、しっかりした総括を行った後に、新構想の検討に入られることを願うものです。
以上のことを提議し、どのような検討がなされ、教育委員会として、申し上げた課題についてどのように取り組もうとされるのか所見を伺います。
小池ひろのり
(中央区)
一般質問
1.県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みについて
2.西宮北有料道路の早期無料化について
3.サイバー犯罪対策について
(1) 県警での取組状況について
(2) 県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃の対策について
4.若手医師の確保対策について
質問全文
第310回定例会(9月)一般質問
2011年9月29日(木)
皆さま、おはようございます。民主党・県民連合議員団の栗山雅史でございます。本年4月に行われました統一地方選挙におきまして、西宮市より初当選をさせていただき、今回初めて一般質問をさせていただきます。至らぬ点があろうかと思いますが、県民の皆様のご期待にしっかりと応えられるよう、精一杯がんばる所存でございますので、議場の皆さま、最後までお付き合いいただきますようよろしくお願い申し上げます。それでは通告に基づきまして、4項目5問にわたって質問をさせていただきます。
1 県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みについて
質問の第1は、県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みについてであります。
私は、この春の統一地方選挙で兵庫県議会議員に当選させていただく前は、西宮市議会議員として2期8年務めさせていただきました。その中で、阪神南県民局の方々と意見交換することもあり、阪神南県民局で実施されている事業のいくつかを知ることになりました。その中には、いくつか疑問に思うような事業がありました。それは、「これは本当に県民局がやらなくてはならない事業なのか?圏域の市でも同じようなことをやっているのではないか」という疑問であります。
つい3日前、会派の重要政策提言のご説明にあがるため、阪神南県民局を訪れました。その際、県民局からあるチラシをいただきました。「絵本フォーラムin阪神南」というものであります。阪神南県民局主催で、10月22日に西宮市の大手前大学アートセンターで150人を対象に実施されるものであります。内容は、絵本の読み聞かせ講座、大型絵本絵巻の上演、人形劇などであります。
絵本を読み、豊かな感情の醸成を目的に事業をなされることはとても素晴らしいことだと思いますが、このときも再び思いました。「これは阪神南県民局で積極的にやるべき事業だろうか」と。「西宮市や尼崎市や芦屋市でも、同様のことをやっているのではないか」と思い、私はすぐに調べてみました。例えば西宮市では、全く同じ事業というわけではないものの、絵本ということで関係するものとしては、「図書館での絵本えらびのための絵本ポケットというリストの作成」、「大型絵本の貸出し」、「絵本の読み聞かせ事業」、「西宮市子ども読書活動推進計画」、大谷記念美術館で開催の「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」などがありました。その他、県民局には「子育て関係」や「青少年育成関係」を中心に、市と同じような事業を実施しているのではないかと感じるものがありました。
こういった「類似事業ではないかと感じるもの」に出会うたびに、私は、都道府県の役割、市町村の役割について考えるようになりました。それぞれの役割については地方自治法上に定められていることであり、ここであえて言う必要もないとは思いますが、都道府県は広域にわたる事務や、市町に関する連絡調整に関する事務、市町が処理することが適当でないと認められる事務などと定められています。一方、市町村は都道府県が処理する事務を除き、地域における事務等を処理することと定められています。特に最近、基礎自治体である市町は、これまでの市町村合併や中核市などへの移行によって、「地方自治や地方分権の主役は私たちだ」との自負を持つようになってきていると私は感じております。県は、広域自治体としての使命、役割を忠実に実行し、市町にやっていただくべきところは任せていくという、そういう姿勢でこれからは良いのではないでしょうか。
地方分権が進んでいく以上、国と県との関係だけではなく、いわゆる県と市の「二重行政」、「類似事業」といわれるようなものも極力なくさなくてはなりませんし、県財政は現在大変厳しい折ですから、市町が実施している、例に出しましたような「類似事業」は、思い切って手を引くという選択をすべきではないでしょうか。行政サービスを受ける市民からも、「県も市も似たようなことをやっているような気がする」との声がよく聞かれます。
県民局には、圏域の市町との類似事業の有無をきちんと把握していただき、県民局が本来果たすべき役割が何であるかをさらに認識しておくべきだと思います。そのために、例えば、県民局と市で似通った事業がないかを確認する協議会の開催、あるいは県民の声を定期的に収集していく取り組み、定期監査においてチェックを行うなど、県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みを行っていく必要があると考えますが、県当局として現状をどのように認識し、今後どのように取り組んでいかれるのかご所見をお伺いします。(6分)
2 西宮北有料道路の早期無料化について
次に、地元選挙区西宮市の課題について取り上げます。質問第2は、西宮北有料道路の通行料早期無料化についてであります。
この課題については、これまでに地元選出の議員が質問をされてきたところでございますが、現在の運営状況などを踏まえて、未来志向の質問をさせていただきたいと思います。
西宮北有料道路は、阪神間北部と南部市街地とを結ぶ幹線道路として、盤滝トンネルを含む4.3kmを道路公社が整備し、平成3年3月から供用され、現在で20年が経過しています。この有料道路の総事業費は、南伸事業も含めて128億円で、平成32年度で借入金等の償還を終了し、平成33年3月25日から同有料道路が無料になる予定となっています。
この道路は、峠を越える県道大沢西宮線よりも格段に利便性が高いことから、産業経済の発展に資することだけではなく、西宮市民の足ともいえる「さくらやまなみバス」が開通するなど、通勤や通学などにも使われる市民のまさに生活道路となっています。私は、多くの市民の方から「西宮南部市街地に出ていくのに、毎回往復500円を支払わなくてはならない。これは大きな関所だ。利益が出ているなら、出来る限り早く無料化してほしい」との強い要望の声を聞いております。また、西宮市からも要望事項として提出されている重要な案件でもあります。
この道路の無料化は、西宮市民のまさに悲願であり、圏域の県民の皆さんにとりましても、早期に必要な取り組みではないかと私は強く感じております。
現在の西宮北有料道路の収支状況を見てみますと、計画値を上回る償還状況であり、通行料収入から維持管理費や支払利息、損失補填引当金を差し引いたいわゆる収支差、これを償還準備金と呼んでおりますが、この償還準備金が平成22年度での累積で約105億円となっており、直近の単年度収支差、平成22年度の6億5千万円が今後も続くようであれば、計算上はあと4年で総事業費の償還がすべて完了することになり、平成32年度を待たずとも、少なくとも平成20年代後半には無料化することが可能になると考えております。
しかし、無料化は償還計画上の計算だけで簡単に決断できるものではなく、無料化後に想定される課題、例えば、交通量の増大によって引き起こす渋滞などがありますが、既に渋滞が時折発生している同区間の前後の交差点対策などについてもよく考えておく必要があると思います。
そこで当局にお尋ねします。県は今後の収支見通しや無料化後の課題をどのように考え、償還期限よりも早期に無料化することについて、どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。(3分30秒)
3 サイバー犯罪対策について
質問の第3は、サイバー犯罪対策についてであります。
(1) 県警での取組状況について
この質問の最初の項目として、県警での取組状況について質問をします。
近年、社会全体のコンピュータ・ネットワークに対する依存度が増大する一方で、インターネットを利用した詐欺や名誉毀損、他人のID・パスワードを窃用する不正アクセスのほか、インターネット上での薬物等禁制品の密売、わいせつ図画の陳列、利殖願望につけ込んだ悪質商法等犯罪行為が増加し、国民生活、社会経済活動に大きな悪影響を及ぼしています。
昨年のサイバー犯罪の検挙件数は、全国で6,933件と過去最多に上っており、中でも、インターネットを利用して個人情報をだまし取る「フィッシング」と呼ばれる被害が多発しておりますが、このフィッシング行為については、取り締まる法律すら制定されていないのが現状であります。
サイバー空間は、もはや国民の生活の一部となって重要な公共空間を形成しています。しかしながら、サイバー空間は匿名性が高いことや犯罪の痕跡が残りにくいなどの理由から、犯罪が起こりやすい状況にあり、かつては想定していなかった犯行手口が相次いでいることから、インターネット上の治安は極めて不安定であると言わざるを得ません。
こうした状況を解決するため、県警では今春、「サイバー犯罪対策室」を設置され、インターネット環境の浄化及び取締り等を強化するとともに、「大学生サイバーボランティア制度」を始められるなど、官民一体となった取組みをされていますが、サイバー犯罪対策室の環境はまだ十分な体制でないと聞きます。
まず、サイバー犯罪対策室設置からこれまでの取組状況についてお聞きします。合わせて、大学生ボランティア制度の運用についてもその状況をお聞かせください。
(2) 県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃への対策について
次に、県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃への対策について質問します。
今月19日に、三菱重工業の「神戸造船所」など、潜水艦や原子力発電プラント、ミサイルなどの研究・製造拠点計11ヶ所で、サーバー45台、パソコン38台がウイルスに感染し、情報漏洩の危険性が判明したと発表されました。セキュリティー会社による解析では、パソコンを外部から自由に操作できる「トロイの木馬」と呼ばれるウイルスも含まれており、また、製品や技術情報を抜き取られたり、複数の電子ファイルが盗まれたりする「標的型メール」が送りつけられるなど、被害が出ているようであります。
この「標的型メール」を使った手口は、企業などに電子メールを送りつけてウイルス感染させ、秘密情報を盗み出す「サイバーインテリジェンス」と呼ばれるスパイ活動であり、先日の警察庁の調査では、本年3月以降、国内の民間企業に約900件送りつけられていたことが判明しています。
また、今月17日夜から18日夜にかけて、人事院のほか政府インターネットテレビ、政府広報オンラインサイトで最大2時間余りにわたり、閲覧しにくい状態になりました。調査機関によりますと、複数のパソコンから大量のデータを送りつける「DDos(ディードス)攻撃」がなされたとのことでした。この「DDos攻撃」というプログラムは、ネット上で無料配布されていて、ITの知識が高くなくてもハッカーに変身できてしまうそうであります。さらに先月には、防衛省、経済産業省、警察庁のホームページもサイバー攻撃を受けていることが判明しています。サイバー攻撃に関連する報道は、現在も続いており、国民生活や社会経済活動に甚大な支障を生じさせるサイバーテロの脅威がますます現実のものとなってきています。
そこで、兵庫県警としては、県庁をはじめとする県内の官公庁や県内企業などに対し、サイバー攻撃に対する防御策の指導等を行っていかなければならないと思いますが、どのような対策をお考えでしょうか。ご所見をお伺いします。(5分30秒)
4 若手医師の確保対策について
最後の質問項目は、若手医師の確保対策についてであります。
県は公立病院を中心とした医師不足を補うため、平成19年度以降、若手医師を「後期研修医」や「地域医師」として採用し、医師不足が深刻な地域に派遣する制度を設けて、毎年10~20人程度を募集してきておられますが、採用実績が5年間でわずか16人と低迷しているとの報道がありました。その原因としては、都会志向が強い若手医師を惹きつける決め手を欠いているからだとされています。研究環境や報酬など、若手医師にとって、魅力的で十分な制度となっていないのではないでしょうか。
そもそも、兵庫県は医師の絶対数の不足と偏在が問題になっていました。特に偏在については深刻であります。国の直近の調査から算出しますと、約150万人が生活する神戸市の医師数は1,000人当たり2.9人で、約180万人が生活する西宮・芦屋・尼崎・宝塚などの阪神地域は2.2人となっています。一方、明石・姫路・赤穂などの播磨地域は深刻な状況となっており、この地域には約190万人が生活していますが、医師数は1,000人当たり1.7人という状況であります。
しかし、播磨地域だけでなく、兵庫県には医師が充足していると言える地域はありません。県庁所在地の神戸市が人口1,000人あたり2.9人に対し、他の政令指定都市の福岡市で人口1,000人あたり3.5 人、大阪市では同3.3人、京都市では同4.0人と比べれば、かなり少ない状況であります。
県養成医師の派遣制度では、僻地の医師不足を解消するため、自治医科大学及び兵庫医科大学、神戸大学、鳥取大学、岡山大学の各医学部において、僻地等勤務医師を養成し、市町からの要請に基づき、僻地の医療機関に派遣しています。現在では5大学で年間合計16名~17名の養成枠を設けており、3億4500万円ほどの予算をつけられています。この派遣制度は、医学生として6年学んだ後、県職員として臨床研修2年、前期僻地派遣3年、後期研修2年、後期僻地派遣2年の9年間、県の指定する僻地医療機関等で勤務することとなっています。合計するとこの間15年を経ることになり、18歳で入学したとしても33歳になってしまいます。
その後も、県は派遣制度で確保してきた若手医師たちを、僻地医療機関の医師として採用したいという思いがあり、平成21年度から年間50万円を上限とする研究・研修費を助成することを条件とした、県が指定する公立医療機関等に4年間派遣する「地域医師県採用制度」をスタートしています。しかし、現在、年間で20名を募集されていますが、その採用実績は残念ながら毎年1名から4名といった状況であります。
9年間の僻地医療を経て、今度は都会の医療機関や、設備の整った医療機関、そして開業という選択をする医師が多くいるということではないかと思われます。また、そもそも、県養成医師の派遣制度で学び、9年間の僻地等勤務を終えられた方々は、毎年10名にも満たない状況でありますので、募集人員20名ということであれば、この制度は派遣制度の医師を確保するための制度というよりも、実質的には「外部の医師を確保するための制度」と言えるのではないでしょうか。そして、これまで募集人員20名に達していないのは、この「地域医師県採用制度」が、外部の医師にとって魅力的ではないということではないでしょうか。研究・研修費の助成だけで、4年間、県が指定する僻地の公立医療機関等に派遣される制度は、外部の医師にとって魅力的な制度ではなく、むしろ敬遠されがちな制度なのではないでしょうか。
僻地の医師不足を解消するために、強い気持ちを持って外部からも医師を確保し、兵庫県の医師不足と偏在を解消していただきたいと思います。「地域医師県採用制度」の大幅な見直しを図る必要があると考えますが、今後どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見を伺います。
また、医師不足が顕著な地域には、若手医師よりもベテラン医師の方が必要とされるのではないかと思われますが、ベテラン医師を確保するための新たな制度を創設することは考えていないのか、併せてお伺いします。(5分)
以上、壇上での質問とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
栗山雅史
(西宮市)
1.井戸県政10年の取り組みと今後について
(1) 多自然地域の活性化と自立を促す取り組みについて
(2) 参画と協働の推進について
(3) 21世紀兵庫長期ビジョンの見直しについて
2.地域格差の解消と社会基盤整備の適切な実施について
(1) 医療格差の解消について
(2) 選択と集中による道路整備の透明性・公平性の確保について
3.兵庫県立大学の公立大学法人への移行について
質問全文
第310回定例会(9月)一般質問
2011年9月30日(金)
おはようございます。民主党・県民連合議員団、神崎郡選出の上野ひでかずでございます。ただいまから、知事並びに県当局に対して一般質問を行います。
その前に2期目の最初の質問でありますので、今時点での私の問題意識を述べさせていただき、その問題意識から兵庫県政について3項目、6点について質問いたします。
今般の東日本大震災について、私は被災をされた方々に対しては只々1日も早い復旧・復興と生活再建をお祈りするところでありますが、同時に日本社会に対する大きな警鐘と問題提起があったと考えています。
その大震災、津波、原発災害から発信されたメッセージとは、効率を優先した経済構造、企業活動が生み出した日本社会の現状と脆弱点として、都会への人口の集中、少子・高齢・過疎、人口減少社会への突入を生み出し、エネルギーをはじめとした大量消費社会が安全性を置き去りにした原発依存社会を推進させたといっていると思います。
震災からの復興は、自然環境や地形を十分に考慮した街づくり国づくりでなければならず、自然を征服する科学技術ではなく共存するための科学技術でなければならないと考えます。さらに復興には多額の財政を必要とします。
しかも、国・地方合わせて1千兆円にも財政赤字は膨らもうとしています。多世代間負担と言って、済ませられるものでもありません。国家財政、地方財政制度、国民負担の在り方等について、十分な議論を通じて国民納得の結論を導き出さねばなりません。国任せでは済まないと思います。それでは質問に入ります。
1 井戸県政10年の取り組みと今後について
(1) 多自然地域の活性化と自立を促す取り組みについて
井戸知事は就任されて10年間が経過しましたが、副知事時代の平成12年2月に策定された「行財政構造改革推進方策」として1兆600億円の収支不足の改善と、1千億円の新規施策の財源確保を定め、平成16年2月の「後期5か年の取り組み」を経て、平成20年10月には、「新行財政構造改革推進方策」、いわゆる新行革プランとして1兆1,980億円の収支不足改善と300億円の新規施策の財源確保を図られ、平成23年3月には、「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づく3年目の総点検の結果として、「第2次行革プラン」を策定されるなど、持続可能な行財政運営に努めてこられました。
また、第2次行革プランの策定の過程では、平成22年度当初予算時に算定した財政フレームの収支不足額が315億円からわずか1年後には1,740億円に拡大する事態もありましたが、財政収支を見通す難しさを認識させられるとともに、改めまして10年間の大変なご努力・ご苦労に対しまして、敬意と感謝を申し上げます。
10年間の行財政改革・財政運営を一言で言いますと、義務的経費、特に約2倍となった福祉関係経費を投資的経費と人件費の削減で対応してきたといっても過言ではないかと思いますが、それも既に限界に来ているように考えます。
さらに、今回の東日本大震災の復興の在り方とその復興財源、原発災害復旧財源、頻繁に発生する集中豪雨による土石流等による大規模災害復旧財源、電力をはじめとするエネルギー対策及び急激な円高対策、人口減少社会への突入等々計り難い国家財政への需要が生まれており、地方の行財政もそれ相応の影響が出ると考えます。
私は、今後の県政の推進にあっては、こうした厳しい社会経済情勢の中で、県としては、国に出来るだけ依存しない自立した施策の推進が必要であると考えます。
さらに、少子・高齢化や過疎化等が進む県内の多自然地域にあっては特に、その活力が失われつつある状況を踏まえるとともに、多様化・複雑化する県民ニーズに対応して効率的・効果的な施策展開を進める意味からも、県の経費補助等に出来るだけ依存しない、地域自らの知恵と工夫を凝らし、豊かで多様な自然や農といった資源を活かした自主的・主体的な取り組みが重要になってくると考えており、県はそのための支援や仕掛けづくりが求められてくるのではないかと考えています。
そして、こうした取り組みを通じた地域活力の増進は、結果として県の財政支出の抑制や改善、ひいては持続可能な行財政基盤の確立に繋がっていくのではないかと推察いたします。
そこで、国頼みでは済まない今日の社会経済環境下にあって、第2次行革プランの基本的方向を踏まえ、多自然地域の活性化と自立を促す施策を如何に推進していくのか、その基本的な認識についてお伺いいたします。
(2) 参画と協働の推進について
本県は平成15年4月に「参画と協働の推進に関する条例」を施行して、県民と県民、県民と県行政とのパートナーシップという2つの側面から参画と協働の推進に取り組んできました。
県民向けガイドブックには、「参画と協働」を地域づくりに当てはめると「自分たちの地域を住みやすくするため、知恵や力を出しあって、地域のことをみんなで考え、力を合わせて、さまざまな地域づくりに取り組むこと」と記されており、地域づくり活動の分野の例として、「保健・医療・福祉」、「社会教育」、「まちづくり」、「文化・芸術・スポーツ」、「環境保全」、「災害救援活動」、「地域安全」、「人権擁護・平和の推進」、「国際協力」、「男女共同参画社会の形成」、「子どもの健全育成」、「情報化社会の発展」、「科学技術の振興」、「経済活動の活性化」、「職業能力の開発・雇用機会拡充」、「消費者の保護」、「ボランティア・NPOへの支援」の17分野が掲示されています。
また、地域づくり活動に取り組む団体・グループとしては、自治会、婦人会、老人会、子ども会などの地域団体、ボランティアグループ・団体、NPOが挙げられています。
わたしは、今後の「新しい公共」の充実に向けて、また適正な行財政改革・財政運営の観点からも行政と県民のパートナーシップに関しては、大変重要であると考えます。
しかし現状は、具体的な事業等の取り組みも身近な地域課題への対応のみに終始しているように見受けられますし、加えて、人口減少、価値観や生活様式の変化、特に共働き世帯で塾や習い事、スポーツなど子供を中心とする暮らしの中で、自治会活動や婦人会活動は厳しい実態もあります。
わたしは、質問に先だって効率を優先した経済構造、企業活動が生み出した日本社会の現状と脆弱点として、都会への人口の集中、少子・高齢・過疎、人口減少社会への突入を生み出したと言いました。
こうした状況を鑑みれば、これからの参画と協働の施策を進めるにあっては、21世紀の成熟社会にふさわしい地域づくりを進めるため、より将来的な展望を見据えて、例えば、自然環境の素晴らしい田舎における農業を中心に据えながら、療養型病床や介護施設、大学や研究機関など社会資本の設置又はそれらとの緊密な連携を念頭に置きつつ、地産・地消及び地域循環型経済や地域コミュニティを再構築する視点、すなわち、地域づくりに関する包括的な参画と協働を目指す必要があるではないかとも考えます。
そこで、これまで条例の実効性や施策の推進状況の検証をどのように進めてこられたのか、また、改正NPO法の施行も踏まえ、今後どのような社会像を描かれつつ、多様な主体による県内各地の活性化に向けて取り組まれるかお伺います。
(3) 21世紀兵庫長期ビジョンの見直しについて
平成13年2月に策定された21世紀兵庫長期ビジョンについて、策定から10年を経た人口減少などによる時代潮流の変化や、地域課題が顕在化していることを踏まえ、今年秋を目途として2040年の兵庫の目指す姿と実現に向けた課題と重点方策を調査・審議するための作業が進められており、大いに期待をするところです。
私は、長期ビジョンの見直しにおいては、時代潮流の変化とその原因や、地域課題を的確に捉えて分析するとともに、その課題を克服して2040年の社会を創造するものでなければならないのではと考えます。
同時に、長期ビジョンの見直し作業と将来社会への創造・実現が、まさしく県民の参画と協働による成果でなければならないと考えます。
今年の6月に示された全県ビジョン改訂版(素案)を見ますと、よくこれだけ整理ができたものだと感心する反面、特にこれから申し上げることを充分に踏まえ、より踏み込んだ見直しと施策の展開を図って戴きたいと感じました。
例えば、10年前のビジョン策定後に顕著になった「人口減少社会の到来」という時代潮流が記され、客観的なデータが示されていますが、そもそもなぜ人口減少社会に入って行ったのか、なぜ、未婚化・晩婚化・夫婦の出生力の低下が起こったのかといった根本原因を踏まえた対応が求められると思います。
さらに、「持続する地域構造」というテーマの中では、「多自然地域の集落の衰退」として、「空き家の増加と荒廃」、「自然に戻る耕作地の拡大・森林の荒廃」、「地域内でまかないきれない生活サービス機能」といった課題が、「疎住化が進む地方都市」としては、「多自然地域の中心都市周辺でのスプロール」、「都市近郊でのロードサイド近辺への都市機能・居住機能の拡散」、「中心市街地で進む生活機能の再配置」、「自動車依存の都市構造と衰退する公共交通」等々の課題が挙げられておりました。
こうした様々な課題に対しては、「これからの兵庫の将来像」を描きつつ、様々公民協働の取り組みを進めることが必要となってまいりますが、素案の中では、各地域における先進的なあるいは頑張っておられる事例が挙げられています。
その中には、私の地元の神河町の村営ふれあいマーケット・ガソリンスタンドの事例も紹介されていますが、本当によく頑張っているものの、運営実態もかなり厳しいのが現実です。
私は、こうした事例紹介ももちろん大切ですが、特に申し上げた課題を克服して、地域社会の自立を目指すためには、課題を抱える地域の起爆剤となるような取り組みを、県が主体的かつ具体的に打ち出していく行動が欠かせないと考えます。
長期ビジョンの見直しにあっては、全庁的に知恵を結集しながら、ご指摘した原因分析や県による主体的行動による地域づくりといった視点も盛り込んで、
将来に対する県民の不安解消と、将来の兵庫に希望を持てるシナリオを県民に示すことが必要と考えますが、現在の見直し状況と今後の進め方についてお伺います。
2 地域格差の解消と社会基盤整備の適切な実施について
(1) 医療格差の解消について
私は、行政の果たすべき役割として、地域特性を生かしながら均衡・均等ある県土の発展、行政サービスの確保が重要であると考えています。
人口が密集するところに、多くの施設が集中することは当然でありますが、都市公園や農村公園、美術館や博物館、県立病院をはじめとする医療施設等々の設置状況を見渡すと、必ずしも均衡・均等な配置になっているとは言い切れないと思います。
公園や美術館・博物館などの憩いや文化や教養、スポーツ施設などの有無は直接的に県民の命に直結するものではありませんが、少子高齢化や疾病構造の変化に伴い、多様化・高度化するニーズに対応した医療提供体制の確保が、喫緊の課題となっている中、県立病院をはじめとする医療施設等々については出来得る限り、人口の少ない地域にも一定の配慮をすべき必要があると考えます。
ここで私に寄せられた県民の声を紹介いたします。
『中学一年の娘は甲状せん機能低下症(橋本病)で須磨のこども病院に通っています。橋本病は殆どの場合治ることがなく、症状の重い娘は一生通院することになります。小学四年生の時、姫路のマリア病院小児科で内分泌の検査を受けたところ、マリア病院では手に負えないので、こども病院に行くように言われました。最初は2~3週間ごとに、症状が安定してからは2ヶ月ごとに通院しました。こども病院では受付時間の枠があり、8時15分~9時半の1枠、9時半~10時半の2枠、10時半~12時15分の3枠となっています。住まいから須磨まで2時間以上かかり、1枠には間に合わないので、2枠に間に合うよう通っていました。診察券を出し、2~30分待ち血液検査をうけます。3分ほどの診察は1時半~2時頃になり、会計を済ませて病院を後にするのは2時半過ぎです。通院するのに学校も休んでの一日仕事で、こどもも付き添いの大人もくたびれ果てます。症状も安定したので、血液検査と投薬のみなら、姫路の日赤病院やマリア病院でも良いのではと思い、主治医に相談しましたが、娘にはダウン症候群の既往症がある上、思春期のこどもを診てくれる先生はいないとの事で、二ヶ月に一度の通院を四ヶ月に一度と通院回数を減らす事になりました。四ヶ月に一度の人は受付時間が3枠のみとなります。3枠の10時半受付だと終わるのが4時になります。』
こども病院の受付時間は患者さんの状況により異なるとのことですが、こうした手紙を読みますと、遠方からの通院者を優先して受診、もしくは、高度な小児専門医療を実施できる医師を姫路の病院に配置できないものかと痛感するとともに、建て替えが予定されている「こども病院」では、遠方からの通院者への配慮、すなわち、建て替え位置の検討や、滞在時間の長期化にも対応できるよう児童公園の拡充、待ち会い室ではディズニーやジブリ等こどもも大人も楽しめる映画ビデオを放映する設備の設置、食堂、売店等に寛げる空間の設置、診察時間等のより細かな受診計画などの配慮が求められてくると率直に思います。
さて、こうした事例を持ち出すまでもなく、地域医療の確保が危ぶまれている今日にあっては、特に、救急医療、災害医療、周産期医療、小児救急を含む小児医療体制の偏在及び、へき地における医療資源の不足は、県民生活に対して深刻な影響が及ぼします。
私の地元の中播磨地域でも、特に3次救急については、救命救急センターである県立姫路循環器病センターが、主に循環器疾患、脳卒中を中心に対応しているものの、重症外傷患者等の受け入れ体制が不十分であるため、医療機関相互の連携も含め、早急な体制整備が求められています。
このように、医療資源が不足する地域に在住する県民ニーズに的確に対応できるよう、均衡ある医療施設の体制整備や医療サービスの提供が求められると考えますが、その現状と今後の対応のあり方について、当局の所見をお伺いします。
(2) 選択と集中による道路整備の透明性・公平性の確保について
多様な県土を有する本県では、都市部における社会基盤整備に比較をして当然のことながら郡部の社会基盤整備が遅れています。
私が見聞きする一部の範囲だけでも、毎日の生活の基本となる生活道路整備等に関する県民の要望が多くあります。
また、第2次行革プランを踏まえた投資的経費に関しては、プラン実施前の平成19年度の当初予算2,796億円と比較して、平成23年度は1,870億円の、△926億円と遂に2,000億円を割り込み、率にして実に△33%となっています。
それだけに県当局の言われる「選択と集中」を踏まえた社会基盤整備が大変重要と考えます。しかもその「選択と集中」は、誰もが納得する透明性と公平性とが確保されるものでなくてはなりません。
県では、社会基盤整備の実施過程の透明性を確保するため、県民局単位で「社会基盤整備の基本方針・プログラム」を策定し、計画的な社会基盤整備を進めるとともに、1億円規模以上の事業は内部委員会で、10億円規模以上の事業については外部有識者による公共事業等審査会で、その事業着手の妥当性が評価されています。
このプログラムは、地域ビジョンに示される地域の将来像の実現をめざし、各地域における社会基盤整備の基本的な方向性や道路・河川などの事業箇所や概ねの整備時期を示したものと位置づけられていますが、地元県民や市町の声・ニーズ等が極力反映された内容であるべきであるとともに、その整備効果が適切に県民にフィードバックされていることが実感されなければならないことは申し上げるまでもありません。
とりわけ、道路やトンネルの整備は、県民の日常生活はもとより、地域における社会経済活動を支える礎(いしずえ)でもあり、県民が安全・安心して、豊かな生活を営むためにも必要不可欠であることを考えれば、極めて重要な社会基盤といえる一方、その事業化にあってはその採択のプロセスや判断等が特に重要となってまいります。
例えばトンネル整備では、その必要性を判断する場合、住民ニーズやコスト面の精査はもとより、周辺道路を含めた交通量や人口の多寡、環境面への影響や投資額に見合う経済効果の有無などが検討要件となってくるのではと推察しており、私の地元でかつて予定されていた県道下滝野市川線「釜坂トンネル」などは、当面の事業着手が見合わされるなど、事業化にあっての慎重姿勢が伺えた事例も認められます。
第2次行革プランに基づく厳しい財政状況の中、「選択と集中」による道路整備事業の採択にあっては、その透明性と公平性の確保が肝要であり、どのような認識のもと事業を進められているのか、当局のご所見をお伺います。
3 兵庫県立大学の公立大学法人への移行について
県立大学は、第2次新行革プランの中で、「平成25年を目途とした法人への移行に向けた検討」が示されました。
我が会派は、以下述べるような解決すべき課題を含んでいることから、法人への移行期間はもとより、移行そのものについても、慎重かつ十分に検討するよう強く提案してきたところです。
本来、県立大学は、県内唯一の公立総合大学であり、県民の資質向上のための「安価な高等教育と研究施設の提供」を通じて地域住民の高等教育機会確保、地域社会の発展に寄与、さらに県政推進に向けての連携といった県立大学本来の使命である公的責任を果たすものと考えています。
今次の国公立大学の法人化への移行に関しては、例えば、法人化された国立大学では運営費交付金が毎年1%ずつ削減され、公立大学でも設置者の財政悪化を理由に大幅な予算削減が行われるなど、教育や研究に影響が生じているケースもあると聞いています。
全国的にも、公立大学法人化した事例は数多くありますが、本来の趣旨を離れ、財政難に苦しむ自治体が不採算部門の大学を切り離すことを主目的に法人化されたというケースが多いと聞きます。
また、教員・職員の身分についても課題があり、他府県の事例に目を向けると、首都大学東京や横浜市立大のように、法人化の際に任期制や年俸制の導入をめぐり教員側と自治体が対立し、大勢の教員が辞職する事態も起きた事例もあるなど、「教員の意見が大学運営に反映されにくくなるのではないか」という不安の声があることも事実です。
去る9月14日に我が会派が知事に対して行った重要政策提言でも、「地域社会への還元と社会貢献、県政との連携といった視点に立ち、県立大学のあるべき姿を確認しながら運営を行うこと」と提案したところですが、厳しい経済・雇用情勢が続く中だからこそ、今後とも自治体のシンクタンクとしての期待・役割も一層高まっていくと思います。
そこで、有識者からなる県立大学改革委員会の提言を受け、9月には県立大学としての方針決定を行うと聞いていますが、申し上げた課題解決に向けて、今後どのように取り組まれようとしているのか、ご所見を伺います。
上野英一
(神埼郡)
1.地域県民防災拠点事業の推進について
2.NPOの自立を促す協働事業評価について
3.地域分散型エネルギーの推進について
4.住宅のエコ性能表示制度の更なる推進について
5.高等学校教育改革について
6.地域・郷土を愛する心の教育の推進について
質問全文
第310回定例会(9月)一般質問
2011年9月30日(金)
1 地域県民防災拠点事業の推進について
質問の第1は「地域県民防災拠点事業の推進」についてである。
東日本大震災、台風第12号の災害等、自然災害が続く中、ライフラインからライフポイントという考え方に移ってきている。いざ災害が発生したときに、一旦、電気・ガス・上下水道・情報通信などのライフラインが断絶してしまうと、被災者の日々の生活は困難を極め、高齢者や乳幼児等にとっては生存の危機に陥ることもある。大規模災害時に他地域から孤立してしまう、いわゆる孤立集落、県下でも456集落が想定されているが、この孤立集落では災害発生から救助までの72時間を、また、その他の地域でも避難所での長引く避難生活を、ライフラインに頼らず過ごすことができるような仕組みが必要である。阪神淡路大震災、東日本大震災をはじめ、今夏に発生した台風第12号災害など、様々な災害時における経験、教訓を踏まえれば、一旦ライフラインが断絶しても、しばらくの間は自活できるよう、太陽光発電施設を含む自家発電機能、蓄電池、バイオトイレ、耐震性雨水貯水槽を備えるとともに、衛星携帯電話や非常食などの物資を備蓄したライフポイントを整備しておく重要性は高い。
孤立集落対策については、前倒しで衛星携帯電話や防災ヘリ臨時着陸場の整備を進めているとのことだが、これと併せて、救助の手が届くまでの数日間を生き延びるためのライフポイントの整備を進めるべきである。
一方、大規模災害が人口集中地域で起こった場合、一部遠距離避難ということもあるが、大部分の住民は住み慣れた地域内の避難所で一定の期間、生活を送ることとなる。障害者や高齢者をはじめ、皆が安心して避難できる環境づくりも求められる。この点、いざ災害が発生した場合に避難所となるのは地域の小学校や地域センター等であり、平時の防災訓練等の自主防災活動も小学校単位での開催が主となっている。そのため、小学校区単位において、災害発生後当面の期間を自己完結できるライフポイントの整備を行っておくことが望ましい。
災害発生時の避難所での問題としていつも指摘される問題の一つは、避難所での管理体制や外部などとの連絡調整機能、必要な情報の収集、避難者の管理等である。つまり避難所での自治、マネジメントである。こうしたソフト面も含めて、普段からの防災訓練だけでなく、具体的な避難所設置を想定したシミュレーションが必要である。そのように日頃より地域の結束力を高め、災害に備えることで初めて、災害時に地域の力を発揮することができるのではないだろうか。
少子高齢化、核家族、単身家族などの増加などにより、日本の社会構造は大きく変化した。地域社会においては、ともすれば人間関係は希薄となりがちだが、地域交流を活発にし、住民相互の連帯感を高め、安心で豊かな市民生活が営めるよう、新しい地域社会をつくっていこうとする取組が重要である。特に災害時には市民レベルでの助け合いのシステムが重要であり、地域コミュニティの果たす役割は大きくなっている。
県では県民交流広場事業により、地域の交流拠点づくりを行ってきたが、交流拠点の整備、交流活動の支援を通じて地域リーダーの育成に資する効果、地域活性化の効果も出ていると思われる。
そこで、今後、地域防災という観点に立ち、災害時に地域リーダーとしての役割を担う人材の更なる育成を進め、災害時には地域リーダーを核として助け合うという意識を醸成するとともに、市町とも連携・協力しながら、災害発生時に自己完結出来る地域防災拠点となるライフポイントや、これを核とした地域防災組織を整備し、防災先進県“兵庫”をさらに推進する、言わば、地域県民防災拠点事業という考えを進めるべきと考えるが、知事の所見を伺う。
2 NPOの自立を促す協働事業評価について
質問の第2は「NPOの自立を促す協働事業評価」についてである。
阪神淡路大震災からの復興過程においては、公共的課題は行政のみが担うのではなく、社会全体で担うという考え方が徐々に浸透し、行政と市民をつなぐ復興の推進役として、中間支援組織等が重要な役割を果たすという経緯をたどってきた。
兵庫県では、公共的領域における活動を担うボランタリーセクターを社会の中に確立することを重要な課題と位置づけて「県民ボランタリー活動の促進等に関する条例」を制定・施行し、さらに、平成14 年には「ひょうごボランタリープラザ」を県民ボランタリー活動の全県的支援拠点として開設するなど、地域支援拠点や中間支援組織に対する支援、県域の情報ネットワークの基盤強化等、総合的な支援に取り組んできた。
このように本県では、これまでも県民、行政が連携し参画と協働による先駆的な取組を進めてきたが、その中で、①「新しい公共」の活動を今後進めていく上で、NPO等の担い手が必要な情報を入手できる仕組みの構築や、他団体との連携・協働や人材確保等の役割を担う中間支援組織等のコーディネート力・指導力の強化、②新しい公共の担い手の裾野拡大、③NPO等を取り巻く社会の寄付文化の醸成、④NPO等の自立的・継続的な活動の確保などは、今後の課題とされている。
この点、今年度から「地域づくり活動支援事業」として、行革推進、多様化社会の中、国の交付金を活用し、新たな公共の担い手の活動を支える中間支援組織、市民ファンドの活動を支援する事業がスタートした。NPO法改正を機に、地域づくりに貢献している団体に対し、この事業を通じて、行政による一定の評価を与え、その活動をアピールすることは、広く県民からの信用度を上げることにもつながる。市民寄付やボランティアなどが集まりやすいシステムづくり、社会風土を醸成していくことで、NPOの自立的活動を支援することは新しい公共を担っていくNPOの財政的自立をうながすための対策として非常に有効と思われ、同事業の積極的な推進が望まれる。
一方で、大きく二つの理由から、NPOに対しての外部評価が必要であるとの考え方がある。
理由の一つは企業が社会貢献の一環として寄付や協働を企画する場合、あるいはNPOから寄付等の協力要請があった場合、企業はそのNPOがどのような団体なのか、信頼に足る団体なのかを知る必要があることである。これは企業にかかわらず、寄付をしたい個人にとっても同様である。
もう一つは、寄付を受けるNPO自身にとっても、企業や個人から寄付を集めるためには、積極的な情報公開を必要とし、同時に自らの信頼を高めるために第三者の評価機関による客観的評価が大きな意味をもつことである。
さらに、地方自治体にとっても、NPOとの協働を推進していく場合、「信頼に足る」NPOと言えるかどうかの客観的指標が必要となる。
このように、NPOの外部評価は、本来、第三者的な機関等が行うべきと考えるが、行政の委託事業や補助事業によるNPOと行政の協働事業は、税金を使っての事業である以上、その事業終了後において、事業目的との整合性、達成度、事業効果等をしっかり客観的に、行政が評価・検証を行い、予算の使われ方の妥当性を検証することが必要である。のみならず、当該NPOとの協働の有効性についても検証を行い、事業遂行上の成果が上がったのであれば、これを適切に評価すべきである。そのことがNPO自身の社会的評価に通じるし、その後の事業展開にもプラスとなる。さらには行政との協働事業だけでなく様々なコミュニティビジネスなど地域における事業を行う上での利点にもなり、寄付を募る事業においても幅広い募集活動につながり、財政的にもNPOを自立させる後押しとなる。また、一つの成功例となり次を担うNPOのビジネスモデルとなる。このような効果は、ひいてはNPO全体の資質向上につながり、新しい公共をさらに推進していく原動力になっていくのではないか。
そこで、「地域づくり活動支援事業」をはじめ各種施策を積極的に展開するとともに、県民及び行政の参画と協働を基調に、中間支援組織のレベルアップや寄付文化の更なる醸成に向けて、協働事業終了後にその成果を評価する制度を新たに構築し、より一層、NPOの自立を支援していくべきと考えるが、当局の所見を伺う。
3 地域分散型エネルギーの推進について
質問の第3は「地域分散型エネルギーの推進」についてである。
現在、我が国では、化石燃料等を元に大規模発電所からエネルギーを電気としてのみ取り出し、高圧送電線で送るという一極集中型の発電方法を採っているが、この方法では60~65%ものエネルギーロスが生じると言われている。
東日本大震災の原発事故を受けエネルギーの在り方が見直される今、過度な一極集中型システムを見直し、身近で地域に根ざした太陽光、風力、小水力、バイオマスなど環境に負荷のかからない再生可能な資源からエネルギーを生み出し、地域で消費するという小規模分散型の構造への転換を図っていくべきよい機会と言える。
中央集権による「支配の道具」となっているエネルギーを地域ごとに作り出していくことは各地域の自立にも繋がっていき、エネルギーのみならず、食糧、水、資源、人材などの地域流出を防ぎ、それらを地域の中で有効に活用できる社会システムの構築にも繋がる。
その一方で、エネルギーの効率を上げていくことも重要な要素である。電力を必要とする場所に分散型電源を置いて発電し、その場で電力を消費する。一つの燃料から複数のエネルギーを同時に取り出せる発電システムであるコ・ジェネを活用する。出力が一定しない再生可能エネルギーには電力を一旦ためることでより効率のいい利用ができる蓄電池を組み合わせる。などの対策が有効である。コ・ジェネを利用すると最大80%までエネルギーの利用効率を高められるというデータもある。
また、分散型電源には送電網への投資が少ない、分散することで事故・テロのリスクが回避できるなどの利点もあり、一極集中型の発電システムだけに依存するのではなく、分散型と組み合わせることで、より安定した電力網を構築できる。
太陽光パネルを設置するとなると、補助金等の助成を活用しても、導入に一定の初期負担があり、これまでは一気に普及することが難しい状況だった。この8月末に、再生可能エネルギー特別措置法が可決されたが、電力の全量買取制度が実施されると状況は改善へと向かうと予想される。
しかし、もうひと工夫すれば、さらに入口の敷居を下げることが可能ではないか。本県は、新たな特区施策としてあわじ環境未来島構想の中で大規模なメガソーラーの構想があるが、市民出資による市民発電所という観点から言えば、たとえば「マイパネル」という発想がある。これは各家庭の屋根に太陽光パネルを付けるのではなく、何十、何百と張り巡らせた大規模なメガソーラーを活用し、その一部のパネルを買い取り「マイパネル」にするという仕組みである。形を変えた一種の市民出資だが、そうすることで、より多くの市民参加が得られるのではないかと考える。
再生可能エネルギーは国民一人ひとりが参加できる参加型エネルギーである。身近な問題であるエネルギーの問題を通じて社会づくりへの参加を促すことは国民の意識を高め、社会のあり方を変えていく契機となり得るのではないか。ひいては、そのことが、現在の我が国のエネルギー生産における一極集中型システムを見直し、地域分散型システムへの移行を促すきっかけにもなるものと考える。
そこで、地域の住民が共同で、当該地域に自分達が消費するエネルギーの生産拠点を整備しようとする場合、財政的な支援を通じてその試みを後押しするような仕組みを設けることにより、地域分散型エネルギーの取組を推進していくべきと考えるが、当局の所見を伺う。
4 住宅のエコ性能表示制度の更なる推進について
質問の第4は「住宅のエコ性能表示制度の更なる推進」についてである。
住宅におけるエネルギー消費量は、民生部門において依然わずかながら増加傾向にあり、地球温暖化、化石燃料の消費に大きな影響を与えている。産業部門においても様々な省エネやCO2発生抑制に努力されているが、民生部門、特に住宅における対策が我が国においては特に遅れているとの分析がなされている。
今回の東日本大震災においては、津波による被害を受けた原子力発電所の操業停止が余儀なくされ、その代替エネルギーとして、再生可能エネルギーの論議が盛んになされているが、とても再生可能エネルギーだけで補えるものではない。そのため、再生可能エネルギーについて考える場合、創エネと省エネを不可分一体のものとして考えねばならないが、省エネに関しては、建築物、特に民間住宅における消費エネルギーをいかに削減するかがポイントであると言われている。東日本大震災以降の防災の観点も加わり、人々の住まい方や、住宅を巡っての社会意識の変化が指摘される中、住宅の省エネ化を推進することで、今後、家庭部門のエネルギー削減が期待出来る。その意味でも今まさに建築における省エネ化は取り組むべき重要な課題であると考える。
もともと昔から、日本の住宅は湿度調整がしやすく、風通しの良い住宅が良しとされてきたが、近年、温暖化由縁の気候変動や夏の超高温化の対策、省エネ需要の増大等により、一般住宅もオフィスビルと同様、密閉型の空間を作るのが良しとの傾向にある。
一部の民間分譲住宅では、断熱性能に優れ、省エネルギーに配慮し、光熱費がかからないことを分譲のアピールの柱に据える業者もある。
また賃貸住宅においても、エコ性能や省エネルギー度合いの高さは、同様に、借り手が住宅を選択する時の重要な判断基準の一つと考えられ、住宅の省エネ化を誘導、推進していくべきであると言える。
住宅の省エネルギー、断熱等の対策は先行投資となり、確かに住宅建築時においては出費となるが、その後長期にわたって入居者の光熱費負担の軽減のみならず、地域全体の省エネルギー等の効果が期待できる。加えて、住宅のリフォームといった民間の需要の喚起にも繋がり、県内の関連企業の新たなビジネスチャンスや雇用の創出といった効果も期待できる。このような点から考えても、住宅のエコ性能表示制度の導入を、行政が誘導、推進していく必要性は高いと考える。
現に、環境先進国の北欧・中欧諸国においては、古くからこのような住宅エコ認証制度が定着しており、不動産取引において同制度に関する表示・説明義務が課されており、市民の住宅選択時の大きな判断基準となっている。社会全体で住宅のエコ化はしっかり認知されており、住宅メーカーや不動産業界においても積極的に住宅のエコ化に取り組んでいる。
我が国においても、長期優良住宅の普及促進など各種施策を推進する中で住宅のエコ化に取り組み、また、本県においても建築物環境性能評価制度に取り組んでおられるが、こうした既存の取組を、更に積極的に県民の方々に広報を行い、その普及促進を図っていく必要がある。
例えば、石川県においては、住宅の省エネ化をさらに進めるために、環境先進国のドイツで普及している住宅の省エネルギー性能を評価する制度をモデル的に導入し、新たな住宅のエコ性能評価システムを導入する検討が進められていると聞いている。
そこで、東日本大震災を契機に、エネルギー問題や省エネに市民・社会の関心が集まっている今こそ、本県においても、こうした他府県の例も参考にしながら、住宅の省エネ度合い、エコ性能を公に表示・認証する制度の更なる普及促進、さらには拡充に取り組んでいくべきと考えるが、知事の所見を伺う。
5 高等学校教育改革について
質問の第5は、「高等学校教育改革」についてである。
高等学校教育改革が進められる中、現在、特に普通科の通学区域の検討を中心に様々な意見が出ており、あたかも改革=学区統合のごとき議論となっている。議論の方向性に対する関係機関、団体、県民からの性急過ぎるとの危惧が主なものであるが、さて、いったい制度改革の本来の目的は何であろうか。議論を戻して考えてみた時、改革の本来の目的は多様化する社会の中、様々な生徒のニーズに対応した制度設計を行うことであり、その為に生徒の「選択肢を拡げる」こと、魅力ある学校づくり、特色ある学校づくりを進めることに他ならない。
この点、特色ある学校づくりについては、これまでの施策、制度設計の中で、様々な取組が行われてきた。専門学科ではこれまでの工業科、商業科、農業科に加えて、芸術・スポーツ分野での美術科、音楽科、演劇科、体育科や環境防災科などの創設、また、普通科の中にも、ある分野を深める自然科学系コース、国際文科系コースなども設置された。さらには、総合学科、単位制高校や、中等教育学校の設置等にも取り組まれており、各分野において、多種多様な人材を輩出してきた。
しかし、これらの様々な学科、コース設定がはたして生徒の多様なニーズにどこまで合ったものなのか、質的に、また提供する量に関しても、的確に対応したものだったのか、その配置はどうだったのか。教育分野におけるこのような効果検証というのは非常に難しい要素もあると考えるが、それらをどう評価しているのか、課題はないのかなどについては、残念ながら、ほとんど聞こえてこない。
私は、今回の改革をこのような各学科、コースなどの検証や評価、課題の認識をきっちり精査した上での改革としなければ、本来の改革の目的から離れたものとなる危惧が否めないのではないかと考える。改革とは何か、特色ある学校づくりとは何か、もう一度再考することが求められていると考える。
そこで、これまでの高校教育改革の取組に関する検証評価の状況及びそれを踏まえた課題認識を含め、教育長の所見を伺う。
6 地域・郷土を愛する心の教育の推進について
最後の質問は、「地域・郷土を愛する心の教育の推進」についてである。
戦後一貫して、時代や社会が、世界をまたにかけ国際化社会に通用した視野と知識を持った人材の養成を必要とし、教育機関においても「国際化」という看板を掲げ、学部や学科、コース、カリキュラム等が具体的に設置され、グローバルな視点からの教育が重視されてきた。
しかし、社会全体が成熟した現在、そうした一方向的な社会情勢は変わりつつある。行き過ぎたグローバル化は、世界的には超大国の不寛容と自国の利益のみを重視する姿勢に起因する軍事・経済支配、国際金融においても実経済から逸脱した投機による国際商品・為替取引やそれに伴う富の集中といった弊害を招いており、世界的にもっとも中間層が豊かと言われた我が国にも、ついにその悪影響が襲ってきたという状況である。
ただ、私はグローバルな社会を否定しようとは思わないし、戦後のグローバルな世界経済の中で懸命に努力してきたからこそ、我が国は経済大国の道を歩んでこられたと考えている。
しかし、その一方で、勝ち組、負け組などという発想に象徴されるような物質至上主義的な考え方が良しとされる中で、地域を基礎とした人間本来の幸福のあり方がなおざりにされ、本来、大切にすべき人の心の豊かさがおろそかにされている現状は非常に残念である。
たとえ生まれ故郷を一時期離れようとも、また離れた状態にあっても、いつか生まれ育った地域に何か恩返しをしたいという思い、自分がお世話になった地域にいつかお返しをしようという気持ち、その地域に生きる次の世代につないでいこうという気持は大切ではないだろうか?
学校教育の中で、トライやる・ウイークなど様々な職種の会社、工場などの働く場を実際に体験し、地域の働く人とふれあうことを経験する実習があるが、さらにもう一歩進んで、地域に根ざして働く人の体験を聞き、考え方、生き方を学ぶというカリキュラムがあってもいいのではないか。
そこで、ゆくゆくは地域に生き地域社会を背負って立つ人づくりにつながるような、地域・郷土を愛する心の教育に積極的に取り組んでいくべきと考えるが、教育長の所見を伺う。
大塚たかひろ
(須磨区)