議会の動き

◆12年09月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方

代表質問  石井 秀武議員
一般質問  前田 ともき議員・黒田一美議員・池畑浩太朗議員・山本 千恵議員

代表質問

(石井 秀武 議員)[発言方式:分割]

1 行財政構造改革の今後の展開について
2 南海トラフにおける巨大地震の被害想定に対する本県の対応について
3 局所的集中豪雨や台風による都市型水害対策について
4 地域社会における共生の実現に向けた障がい福祉施策の展開について
5 ディーセントワークの実現とワーク・ライフ・バランスの推進について
6 教職員の多忙化への対策について
7 県民から信頼される警察行政の推進について
8 民主党政権による地域主権改革の成果について

質問全文

第314回兵庫県議会 代表質問(平成24年9月28日)

                    質 問 者:石井 秀武 議員
                    質問方式:分割質問

民主党・県民連合議員団を代表して、以下8項目にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。

1 行財政構造改革の今後の展開について

  質問の第1は、行財政構造改革の今後の展開についてであります。
2008年度に策定した新行革プランも中盤に差し掛かり、間もなく折り返し地点を通過しようとしています。
今年の2月の定例会において、「過去のしがらみの中で、手つかずの聖域化した施策の検証や地域のしがらみの中で進めようとする施策の検証に取りかかる必要があり、場合によっては立ち止まる勇気も必要である」と指摘いたしました。これに対し井戸知事より、「今年度の予算編成にあたり、220の事業を廃止する一方、88の新規事業を創設し、スクラップ、スクラップ・アンド・ビルドに徹し、ゼロベースの見直しを行った」との答弁がありました。
 8月31日には国から今年度の中期財政フレームが示され、来年度の地方の一般財源の総額も今年度地方財政計画の水準を下回らないように確保するとのことであり、実質的には2010年度と同水準ということになっています。しかしながら、引き続き増嵩する社会保障関係費を確保するため、地方独自の投資的経費や行政経費が削減されており、その厳しさは年々増加の一途をたどるものであり、施策の「選択と集中」についても、既に限界を通り越している感が否めない状況となっています。
 職員に対しても、本来削減すべきでない給与についての抑制措置が2008年度に始まり、既に5年目に入っています。給与抑制措置は将来にわたる生活設計への直接の影響だけでなく、頑張っているのになぜ給料を減らされないといけないのかという気持ちの部分が大きい中で、職員の頑張りで現在の行財政構造改革の取組みが続いていることを忘れてはなりません。
  行革の取組みについては、現状に即し、弾力性を持った推進は当然のことですが、柏原看護専門学校に関して、丹波市から市立施設として存続した場合の各般の支援策の要請を受け、8月上旬に丹波市への移管並びに運営費や建替整備費等の支援案が示されました。看護師不足や地域偏在の解消への対応として柏原看護専門学校の存続・移譲そのものに反対するものではありませんが、方針の変更に対しては時間をかけて慎重な議論があっても然るべきと考えます。
  さて、社会保障と税の一体改革により、消費税及び地方消費税率の引き上げが行われることとなりましたが、先行き不透明な部分も多くある中で、社会保障制度の枠組み自体の見直しや国民負担のあり方などの課題、また上乗せが謳われている地方消費税部分の本県の福祉施策への影響等、行財政構造改革に取り組んでいくにあたり、これらの課題に対しても的確に対応していく必要があります。
今年度の当初予算を踏まえた財政収支見通しでは収支不足は2017年度まで見込まれ、今後とも厳しい財政状況が続きますが、このような中にあっても「21世紀兵庫長期ビジョン」に掲げる諸課題を克服し、「創造と共生の舞台・兵庫」を実現していく必要があります。
そこで、知事にお伺いします。来年度、2回目の3年目の総点検を迎えるにあたり、これまでの行財政構造改革の取組状況を踏まえ、どのように取り組んでいこうとされているのか基本的な考え方についてお伺いするとともに、今後、選択と集中の更なる徹底をどのように具体化していくのかあわせてご所見をお伺いします。

2 南海トラフにおける巨大地震の被害想定に対する本県の対応について

質問の第2は、南海トラフにおける巨大地震の被害想定に対する本県の対応についてであります。
先月、国より、南海トラフ沿いで巨大地震が発生した場合、最大で32万3千人の死者が発生するとの被害想定が発表されました。また、これと併せて、津波による被害想定についても、3月公表分よりさらに詳細に推計した結果も公表されました。
しかしながら、被害想定の性格としては、各項目の想定手法は必ずしも確立されたものではなく、不断の点検・見直しを行い、必要に応じて修正すべきものであることや、主として広域的な防災対策を検討するためのマクロの想定を行ったものであり、今後各地方公共団体において、地域の状況を踏まえたより詳細な検討を行う必要があるものであることとされています。
国民に改めて危機感を感じてもらうという点では、一定の効果があったものと見受けられますが、関係する自治体、特に想定死者数が多い自治体では、どのような対策を取ればいいのか戸惑う声も聞かれます。
その一方で、国が「津波から逃げるのを諦めないでほしい」と強調するように、多くの自治体の首長より、避難行動の重要性を指摘するコメントが出されています。
先日、文教常任委員会で管外視察に行った岩手県釜石市で、いわゆる「釜石の奇跡」と言われる現地を案内していただきました。子供たちが、日常の防災教育により、災害時には、自分で判断し、行動することの重要性を学び、今回は率先して、高い所に逃げる行動をとったことにより、学校に残った児童・生徒は、津波の難をさけ、安全な場所まで全員無事避難できた。また、子供たちは避難しながら介護施設のお年寄りに手を貸し、一緒になって逃げ、子供たちのおかげで今生きていることができているとの証言もあり、「いかに逃げるか」は大きなキーワードになっています。
本県の死者数が最大になるのは、冬の午後6時、紀伊半島沖から四国沖にかけて大きく動いた場合であり、死者数は7,400人に上るとされています。この7,400人の想定死者数も堤防や水門が機能すると約1,600人減少するとのことです。さらに、地震発生直後に全員が避難した場合は、津波による死者数は、約30人まで激減するとのことです。
  そこで、国による南海トラフにおける巨大地震の被害想定について、知事の評価を今一度お伺いするとともに、本県のこれまでの地震津波対策の取組みに照らして、今後の対応すべき課題を、どのように認識しているのか併せてお伺いします。

3 局所的集中豪雨や台風による都市型水害対策について

質問の第3は、局所的集中豪雨や台風による都市型水害対策についてであります。
  先の質問では、地震・津波は最大クラスのものを対象としましたが、浸水被害については、津波によるもののほか、洪水、土砂災害、高潮、ため池災害による発生が想定されています。なかでも、最近では7月の九州北部豪雨や8月の近畿地方の豪雨災害が記憶に新しいところです。
  特に、近年のいわゆるゲリラ豪雨により、都市型水害が増えてきています。
本県においても、最近の異常気象からは、広範な地域が水没するような都市型水害がいつ発生しても不思議ではない状況であります。
  しかしながら、先月、兵庫県警が実施した運転免許更新者に対するアンケートによれば、県が公表している津波被害警戒区域図で自宅の浸水の危険性を確認した人は約1割にとどまっており、浸水区域に対する関心の低さが明らかとなりました。津波以外の浸水については、さらに関心が低いことが予想されます。
浸水の危険性が、個人の問題意識として浸透していないことは大きな問題であります。阪神・淡路大震災以降、これまで、長きにわたりあらゆる機会を通じて、防災・減災の取組みを行ってきた本県としては、誠に残念な結果といわざるを得ません。
  県においても、浸水対策について、従前は河川や下水道対策を中心に取り組んでこられましたが、最近の頻発する集中豪雨や局地的大雨への個別対応は困難なことから、現在では、本年4月に全国初の条例として施行されました総合治水条例に基づき、河川や水路への雨水流出を抑制する「流域対策」、浸水時の被害を軽減する「減災対策」を組み合わせた総合治水として推進されているところです。
しかしながら、都市部においては、河道拡幅が物理的に困難であることや、雨水が地下に浸透せず、下水道に集中するなどの問題があるうえ、総合的な治水対策としている『ながす』『ためる』『そなえる』のうち、『ながす』『ためる』については、河川改修、下水道の容量拡大など、根本的な対策の実施が困難な場合が多く、現在の財政状況に鑑みれば、『そなえる』に重点を置くことにシフトしていかざるを得ないように思います。
『そなえる』の代表格ともいえるハザードマップは、県民の防災意識の向上を図り、災害時に県民がより的確に行動できることを目指して、浸水想定区域や危険箇所などの危険度や避難に必要な情報を掲載されていますが、いくら優れたマップが作られても、適切に活用されなければ目的を達成することができません。
単にハザードマップを全戸に配布したからといって解決するものではありませんが、浸水被害に限らず、災害被害の多くは、あくまで一人ひとりの「いのち・暮らし」に帰結する問題であります。最近では、減災を口実とした大幅な公共事業の拡充を求める意見が目立ってきています。一定のハード整備はもちろん必要ではあります。しかしながら、お金をかけなくてもできることはまだまだあるように感じています。
そこで、最近の局所的集中豪雨や台風の状況を踏まえ、本県における都市型水害対策への取組状況を総合治水条例の理念に照らして、どのように評価しているのか、今後解消していくべき課題、取り組みとともにご所見をお伺いします。

4 地域社会における共生の実現に向けた障がい福祉施策の展開について

質問の第4は、地域社会における共生の実現に向けた障がい福祉施策の展開についてであります。
障がい者の権利の保護等に関する「障害者の権利に関する条約(仮称)」が2006 年12 月に国連総会において採択され、2008 年5月に発効されました。我が国は、2007 年9月、同条約に署名はしましたが、締結には至っていない状況であり、昨年8月の障害者基本法の改正は、条約の締結に向けた国内法の整備の一環として行われたものであります。
法の目的に「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」が新たに掲げられ、その実現に向けて、「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」など3点が規定されました。
先日、文教常任委員会の西播地区の管内調査の際に実施した、県立播磨特別支援学校評議員との意見交換会において、「‘地域’が大きなキーワードであり、障がいを持っている人が地域に慣れ、地域も障がい者に慣れ、お互いに慣れていくことで地域を変えていく。地域が変わっていけば、入所している方は地域に帰っていける。また、特別支援学校に通っている児童生徒も地域の学校に帰っていける」との意見がありました。
このように、障がい者が地域社会に溶け込み共生していくためには、障がいや障がい者に対する正しい理解を深めていくことが、何より重要であり、障がいのある人とない人とが共に尊重し支え合って暮らす共生社会の実現に繋がっていくものであります。
特に、知的障がい者や精神障がい者については、科学的知見に基づき、社会の誤解、偏見を解消し、社会人として経済的に自立していけるよう、障がいや障がい者に対する正しい理解を深めていく必要があります。
従前より障がい者については、地域社会で暮らしていく上で様々な障壁があることから、人権課題として、障がい者に対する差別や偏見の解消に本県も含め、各自治体において取り組まれてはいますが、障がい者が地域に共生していけるよう、障がいや障がい者に対する正しい理解の普及が積極的に行われているとは言えません。
そこで、障害者基本法の改正目的を実現すべく、障がい者が自立し社会参加ができるよう、県としても障がいや障がい者に対する正しい理解の普及につとめ、障がい者が地域社会において共生していくことができるよう積極的に取り組んでいく必要があると考えますが、障がい者の地域社会との共生の現状をどのように認識し、取り組んでいるのか、当局のご所見をお伺いします。
  

5 ディーセントワークの実現とワーク・ライフ・バランスの推進について

質問の第5は、ディーセントワークの実現とワーク・ライフ・バランスの推進についてであります。
  ILO(国際労働機関)では、1999年の総会で「ディーセントワーク=働き甲斐のある人間らしい仕事の実現」を新戦略として打ち出し、以後各国はその実情に応じたカントリープログラムを策定して、具現化に努めています。
これに伴い、我が国でも、政府が2010年に閣議決定した新成長戦略において、「ディーセントワークの実現に向けて、『同一価値労働同一賃金』に向けた均等・均衡待遇の推進、最低賃金の引上げ、そしてワーク・ライフ・バランスの実現に取り組む」としています。また、今年7月に閣議決定された「日本再生戦略」においても、経済社会を支える人材の育成、正規雇用と非正規雇用の間の公正な待遇の確保、女性・高齢者等の多様な働き方による社会参加の促進とともに、ディーセントワークの実現への取り組みが盛り込まれているところです。
  そして、これを踏まえる形で、同じ職場で5年を超えて働いているパートや契約社員等を対象に本人が希望すれば無期限の雇用への切り替えを企業に義務付ける労働契約法の改正と、希望者全員を65才まで継続雇用するよう企業に義務付ける高年齢者雇用安定法の改正が行われ、また最低賃金の一定の引き上げが決定されたところです。
今後、これらの改正を実効あるものにするためには、本県においても労働局や労使関係団体との一体的な取り組みが求められることは当然でありますが、その際、併せて重要な取組課題となるのが、個々の働く人すべてが生涯にわたって、意欲と能力に応じて働く機会と権利が確保され、家庭生活と職業生活が両立出来、公正・平等な扱いを受けるというディーセントワークの理念の実現であり、その手法の一つがワーク・ライフ・バランスの推進でないかと考えます。
幸い本県においては、2008年にいち早く県と連合兵庫、県経営者協会の三者と兵庫労働局による「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」を掲げ、これに基づいて2009年6月には全国でも類例のないワンストップの相談支援拠点「ひょうご仕事と生活センター」を立ち上げられた。そして、以後ここを拠点に、地域や企業現場に出かけ、啓発・情報発信、相談・実践支援、企業顕彰、企業助成の4本柱について活動を展開されている訳ですが、早3年が経過する中で、ワーク・ライフ・バランスの推進、特にディーセントワークの理念にもつながる質的な雇用就業環境の改善に対する取組は進んでいるのでしょうか。とりわけ、今日の中小企業現場においてこのような命題を具体化していくには、相当にハードルが高く、まずは経営者や従業員に課題の所在に気づかせ、その改善のための計画作りや研修等を通じて実践支援を行い、そしてそれが高い意識をもつ従業員の確保定着と経営理念への反映という企業の自立につながるような、企業の課題と状況に応じた柔軟かつ体系的な実践支援スキームの充実強化が重要であると考えます。
  そこで、ディーセントワークの理念の実現に向けて、県としての役割と取組課題をどのように認識し、ひょうご仕事と生活センターの設置から3年経過した今、ワーク・ライフ・バランスの推進について、今後どのように充実強化していこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

6 教職員の多忙化への対策について

  質問の第6は、教職員の多忙化への対策についてであります。
大津市の中学2年の男子生徒が昨年10月に自殺した問題について、学校・教育委員会等の対応が明らかになるにつれて我々にとっても大きな課題が突きつけられたところですが、先月には川西市でも自殺した県立高校の男子生徒がいじめを受けていた問題が発生しました。新聞報道によると、川西市の問題では、自殺の約2カ月前には嫌がらせがあると担任がクラスの別の生徒から相談を受けていたにもかかわらず、「いじめ」に対しての真摯な対応が出来ず、またどのような経緯があるにせよ、遺族に対してあまりにも配慮に欠ける言動など、学校や教育委員会の対応のまずさが指摘されています。このたびの事案につきましてはしっかりと対応していただき、二度と同じようなことが起こらないように万全の対策を取っていただくよう、我が会派からも強く要望いたしておきます。
さて、「いじめ」が深刻化する要因の一つには、教職員の多忙化により、子どもと向き合う時間が十分確保できず、子どもの変化を見逃してしまうことも考えられることから、尊い命が今後失われることが二度とないよう願う気持ちを込めて「いじめ」問題解決に向けての課題の一つとして教職員の多忙化への対策について質問する次第であります。
  教職員の多忙化の問題については、これまでより、既に全国各地で議論されているところであります。多忙化の背景には、教職員が、①成績処理、調査・報告書の作成などの事務処理に係る時間が多いことや、②様々な教育課題や教育改革への取り組みのための会議・研修などが多いこと、③部活動の指導、さらには、④親の教育力の低下により学校の課題、役割が拡大し、教職員の業務範囲・内容が拡大していることが挙げられています。
本県においても、多忙化対策として2008年度には「教職員の勤務時間適正化対策プラン」が提言されました。その翌年度には、作成したプランを実効あるものとするため、「学校業務改善実践事例集」が作成され、学校業務の改善に取り組まれてきており、報告文書等の簡素化や会議回数の削減、時間の短縮化などをはじめとする事務量の縮減等には一定の成果を上げてきているものと思われます。しかしながら、現場の先生からは、業務が改善された、多忙化が解消されたなどの声が聞こえてくることはありません。3年余りを経過した今も、当時の状況とさほど変わっていないのではないでしょうか。
  複雑化する生徒指導上の問題や、保護者・地域の学校に対する様々な要望への対応、さらには、昨年度より小学校で、今年度より中学校でそれぞれ新学習指導要領が実施され、ますます過密になる時間割など、新たな多忙化を生みだす要因も発生しています。そのような中にあっても、教職員は、子どもたちに対して、楽しく分かりやすい授業ができるように教材研究にも熱心に取り組み、高い志を持って取り組んでおられます。
  教職員が、子供たちと向き合う時間を作り出していくには、県単定員としての教員を増やすに越したことはありませんが、厳しい行革の折、これは極めて難しいでしょうから、退職教員や民間人コーチなど地域の眠っている教育力を積極的に活用していくことが必要です。特に、教育委員会においては、この際さらに思い切った事業の見直しを行い業務のスリム化を図っていくべきではないでしょうか。
  教職員の多忙化は、言うまでもなく一朝一夕で解消していくものではありませんが、何よりこの多忙化の影響が最終的に及ぶのは子どもたちであり、教職員として情熱を持って学習指導・生徒指導など本来の担うべき業務に専念することができるよう教職員の勤務が多忙化している現状を改善していく必要があります。
 そこで、教職員の勤務状態が多忙化している現状についてどのように認識しているのか。また、現状を踏まえ、今後、子供たちと向き合える環境づくりにどのように取り組もうとされているのか、教育長にご所見をお伺いいたします。

7 県民から信頼される警察行政の推進について

  質問の第7は、県民から信頼される警察行政の推進についてであります。
誠に残念なことですが、皆さんご承知のとおり、全国各地で警察官の不祥事が止まりません。今年の上半期に免職・停職の処分を受けた全国の警察官や警察職員は前年同期より27名多い83名に上り、警察改革が始まった2000年以降、上半期としては過去最悪になったとの報道がありました。
本県におきましても、減給・戒告も含め上半期で既に7名の処分者が出ていると伺っています。また、最近5年間の処分の状況を見てみますと、2007年度以降22名、9名、13名、13名、18名となっており、警察官の不祥事は、残念ながら、毎年、一定数確実に発生している状況であります。
処分事由についても、窃盗詐欺横領、異性関係及び公文書偽造等をはじめ、勤務規律違反、暴行等など、多岐にわたっており、警察官に対する信用は著しく低下した状態であります。
不祥事を撲滅させ警察官の信頼を取り戻していくにあたり、現職警察官に対する倫理教養を改めて徹底していくことは言うまでもありませんが、入口である新規採用のあり方や採用後の警察学校での対策も重要であると考えられます。
警察官の新規採用については、辞退者数も多く、初任科研修での退職者数も相当数に上っていることにより、本県の警察官は、約12,000人の定員に対して、約400人の欠員が生じている状況となっています。行革の折であっても、県民生活に直結する医療・福祉・教育・警察については、一律に削減するのではなく、特に、県民の安全と安心を守る警察官の人員については、増強するよう、常々主張してきた我が会派としては、誠に残念でなりません。
と申しますのも、先ほど教職員の多忙化について質問いたしましたが、教職員の場合は、現在の教育現場を取り巻く環境を改善に向けて定員を増やそうにも増やせない状況であるのに対して、本県警察においては、守られるべき法定定員さえも充足していない現状となっています。欠員については、業務に支障のないとのことですが、果たしてそうなのか、甚だ疑問を感じるところであります。そのしわ寄せが個々の最前線の警察官に及び、更なる多忙化やストレスに繋がり、様々な課題が生じるのではないか不安を感じております。
本部長におかれましては、欠員の充足について早急に取り組んでいただきたくとともに警察官にふさわしい人格を備えるよう、警察官教育を行っていただきますようお願いしておきます。
警察庁のホームページによると、警察改革は、1999年から2000年にかけて、警察をめぐる不祥事が続発し、国民の警察に対する信頼が大きく失墜したことを受け、国家公安委員会の求めにより、2000年3月、各界の有識者を構成員とする警察刷新会議の設置から始まったようであります。その後、10年の節目の年に当たる2010年には、これまでの取組みの総括を行っています。
  しかしながら、2010年以降も、全国において非違事案が増加傾向にあるほか、警察署の幹部が非違事案を組織的に隠蔽した事案なども発生しており、警察改革の取組み12年が経過した現在、効果に陰りないし、曇りがあると言わざるを得ない状況になっています。このような状況を受けて、本年8月9日に、「「警察改革の精神」の徹底のために実現すべき施策」に基づく各施策の着実な実施について」と題した警察庁長官通達が発せられたところです。
  そこで、先の警察庁長官からの通達を兵庫県警察として、どのように受けとめているのか。また、不祥事を撲滅し、県民から信頼される警察行政を展開していくにあたって、現状の課題並びに今後の取り組み方について、本部長としての強い決意をお伺いします。

8 民主党政権による地域主権改革の成果について

  
国の出先機関原則廃止について、法案が提出されず、国会が政争に明け暮れ、閉会したことは誠に遺憾であります。
しかしながら、民主党政権が誕生して3年が経過して、子ども手当・農家への戸別所得補償・高校授業料無償化については、多くの国民から一定の評価をされ、政権交代の効果が徐々に表れてきているのではないかと実感しているところです。「ばら撒く」のではなく、将来に向かって「種を蒔く」のが、民主党政権の本来の姿でございます。
そこで、最後の質問として、「民主党政権による地域主権改革の成果について」お伺いします。
地域主権改革とは、「明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を大きく転換する改革であり、国と地方公共団体の関係を、国が地方に優越する上下の関係から、対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換し、国民が、地域の住民として、自らの暮らす地域の在り方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負うという住民主体の発想に基づいて、改革を推進していかなければならない。」と謳われております。
このような地域主権改革を裏打ちとして、地方自治体は、国主導による全国一律の施策から個々の地域の実情に即して地方主導による施策への転換を図り、住民により身近なところで政策決定を行う分権社会への移行を懸命に模索しております。そうした中、今後の広域課題に取り組むことを目的に、一昨年の12月には関西広域連合が、全国初の府県を構成団体とする広域連合として発足し、今年の8月には、京都市・神戸市の加入も正式に認可され政令市4市の加入も完了したところであります。また、大阪都構想を後押しする「大都市地域特別区設置法案」も8月に成立いたしました。この大阪都構想は、これまでの府市の枠組みを抜本的に変える選択肢であり、地方発、特に関西発の地方分権改革は活発になってきています。
一方、「義務付け・枠付け」の見直しについては地方分権を推進する観点から、地方の自主性を強化し、政策や制度の問題を含め、その自由度を拡大するとともに、地方自治体が自らの責任において行政を展開できる仕組みを構築するために進められているものであります。これまで、国の地域主権改革の推進とは裏腹に、激しい関係省庁の抵抗により、思うように進まなかったところでありますが、地方の強い要請の中で、ようやくここまでたどり着いたといった感じであります。
そこで、この3年間、民主党政権において紆余曲折しながらも、真摯に地域主権改革に取り組んできた結果、国と地方の協議の場が設置され、また、先ほど触れました「義務付け・枠付け」の見直しや「ひも付き補助金の一括交付金化」等が実施されたことにより、本県としてどのような効果が出てきているのか、現段階での成果についてお伺いいたします。
また、併せて、今後、本県として国にさらに何を望んでいくのかお伺いいたします。

石井秀武
(神戸市西区)

一般質問

(前田 ともき 議員)[発言方式:分割]

1 性的マイノリティへの理解推進について
 (1) 現状認識について
 (2) 教育現場での取り組みについて
2 スポーツ行政の総合的な推進について
3 スポーツを通じた観光産業の振興について
4 人口減少・高齢化社会への対応ついて

質問全文

第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月1日)

                    質 問 者:前田 ともき 議員
                    質問方式:分割方式

以下4項目5問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
なお、質問は分割方式により行います。

1 性的マイノリティへの理解推進について

(1)現状認識について
最初のテーマは、性的マイノリティへの理解推進についてです。
さて、性的マイノリティとは、セクシャルマイノリティやLGBTという呼び方もされております。
LGBTは、女性同性愛者レズビアンのL、男性同性愛者ゲイのG、両性愛者バイセクシャルのB、性同一性障害トランスジェンダーのTから構成されていますが、その他にも多様な性のあり方が存在します。
さて、この性的マイノリティの存在。実は国内でも人口の5.2%いらっしゃるという調査レポートが2012年2月に電通総研から発表されました。イギリス政府の調査では人口の6%など、諸説ありますが、どの国にも人口の5%程度は存在することが定説となっています。つまり、兵庫県内で約29万人、1学級に1人。この議場にも数人いらっしゃる計算になる訳ですが、皆さん方が身近に感じることがないのは、カミングアウトする方が10%以下とごく少数であり、そこには偏見や差別が存在するからです。
男性同性愛者の自殺リスクは異性愛者の約6倍と、最も高いリスクを示し、リスク要因として、いじめ被害者や薬物使用者を圧倒しているという調査結果も報告されています。更に、本年8月に閣議決定された自殺総合対策大綱には性的マイノリティが自殺の要因として取り上げられ、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、理解促進の取組を推進する。と記載しました。
この性的マイノリティ、数十年前までは精神病と認定されていた時代が長く続いていました。その後、同性愛については、1990年に世界保健機関が「いかなる意味でも治療の対象にならない」と宣言し、疾病の対象から除外され、2008年の国連総会では、「性的志向と性自認に基づく差別の撤廃と人権保護の促進を求める」声明を決議し、日本も署名しています。
現在では性的指向は好みの問題であり、多様性があって当たり前という考え方が一般的であります。
そうした中、世界各国では同性婚制度がオランダ・スペイン・スウェーデン等で法制化、夫婦に準じる権利を同性カップルにも認めるパートナーシップ法もイギリス・ドイツ・スイス等で制定されており、法整備が進んでいます。
また、性的マイノリティであることをカミングアウトした政治家も増加傾向にあり、アイスランドやベルギーでは首相が誕生し、パリやベルリン市長も同様です。
一方、日本では2004年に性同一性障害特例法により、条件を満たした場合、戸籍上の性別変更ができるようになっただけであり、同性愛に関する権利や理解については後進国であるといえます。
さて、わが兵庫県は、人権教育及び啓発に関する総合推進指針において、人権課題として障碍者や外国人、同和問題等を挙げておりますが、性的マイノリティは挙がっていません。性的マイノリティの方々が直面する問題の深刻さや人口等を考えると、今後大きな人権テーマとして挙げるべきであり、本県の「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」にも盛り込んだ上で、積極的な対応策を講じるべきと考えています。
そこで、性的マイノリティの人々に対する差別、偏見、社会的不利益について、人権上の課題として、どう捉えているのか、今後どのような対策を推進していくのか、ご所見をお伺い致します。

(2)教育現場での取り組みについて
次に、教職員や児童・生徒への理解など教育現場での取り組みについてお尋ねします。 
この性的マイノリティの問題をどのように解決していくのか?最も大切な対応策は正確な知識を広く、啓発することだと考えます。更に、人格の形成の早い段階が望ましく、それはすなわち教育現場における取り組みが必要であるということです。
内閣府の人権擁護に関する世論調査でも、性的指向・性同一性障害者に関する問題としてトップに挙げられているのは理解不足です。
岡山大学が行った性同一性障害に関する調査によると、自分の性への違和感を自覚したのは、大半が小学生までであり、4人に1人が不登校を経験し、5人に1人が自傷・自殺未遂を経験しているとのことです。
唯でさえ、非常に多感で悩み多い時期である思春期において、子供たちが自身の性的指向について更に思い悩み、時として追いつめられてしまう実態が想像できるかと思います。
にもかかわらず、学校で同性愛について一切習っていないが78.5%、習っている場合でも、異常なものとして習っている生徒が3.9%、その他否定的情報として習っている生徒が10.7%と、全体で93%以上となっており、教育の遅れが露呈した調査結果も報告されています。
結果として、ホモやオカマといった言葉によるいじめ被害を受けた生徒の割合は約6割にも上っていることからも、性的マイノリティに関する正確な知識が子供たちに伝わっていないことが偏見となり、イジメにつながり、その後の社会生活や人生にも大きく影響していることが考えられます。
更には、日々、子供たちと接する教職員の方たちについても同様に対応が遅れています。
岡山県内の小中学校では24%が性別に違和感を持つ子供に接した経験を有しながらも、小学校教員で約38%、中学校教員で約63%がそれに対応できなかったと回答しています。おそらく本県においても、それほど大きな差はないと思われます。
そこで、教育長にお尋ねします。わが兵庫県下の教育現場において、性的マイノリティの児童・生徒に対する対応について、どのように行っているのか、また、児童・生徒に対する教育、教職員に対する研修はどのようになされているのか、今後の方針も含めてお伺いいたします。

2 スポーツ行政の総合的な推進について

質問の第2は、「スポーツ行政の総合的な推進について」です。
204か国が参加し、全世界で48億人がTV視聴したという、ロンドンオリンピック、パラリンピックの熱狂は今でも記憶に新しく、銀座での凱旋パレードには50万人もの人々が参加するなど、スポーツの素晴らしさを改めて実感した次第です。
さて、そのスポーツをめぐる行政の動きですが、2010年8月に、文部科学省がスポーツ立国戦略を策定しました。また、翌2011年6月にはスポーツを取り巻く社会状況の変化に対応すべく、スポーツ振興法を50年ぶりに全面改正し、スポーツ基本法として施行されました。従来はスポーツを教育活動の一環として位置づけていましたが、今回施行された同法では、「スポーツ権」の確立や、青少年の健全育成、地域社会の交流と再生、心身の健康の増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上等、スポーツの有する多様な役割を明確化するほか、営利目的のプロスポーツや障碍者スポーツも新たに法律の対象とし、地域スポーツクラブの事業支援、国際競技大会の招致・開催支援に特別の措置を規定するなど、新たな視点・施策が盛り込まれています。また、多様化するスポーツの役割を総合的に対応すべく、従来から、スポーツ庁構想があるのは皆さんご存知の通りかと思います。
さて、地方自治体においては、平成20年4月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行により、教育委員会所管の文化行政とスポーツ行政について、学校における体育及び文化財の保護、学校教育活動と一体不可分のものを除き、知事部局に移すことが条例制定により可能となりました。
これにより、スポーツのもつ多様な役割を総合的に推進していくには、首長から独立した教育行政中心の教育委員会では、スポーツ・ツーリズムやスポーツコンベンションの推進さらにはプロスポーツの支援、観光や産業の振興に関わる部分を扱うことには一定の限界があると考えられます。そのことから、既に16の都道府県がスポーツ行政を教育委員会から知事部局に移行し、沖縄県では文化観光スポーツ部を新設し、部長を民間から登用するなど組織・人事面でも新しい展開をスポーツの役割変化に合わせて対応しています。本県において、このようなスポーツの持つ多様な役割を総合的に推進していくには、教育委員会の枠組みを越えて、全庁的な推進体制を構築していく必要があると考えます。
そこで、以上の点を踏まえスポーツが広く国民に浸透し、スポーツ基本法も施行され、スポーツを行う目的が多様化するなか、県として果たすべき役割も広範になっていくものと考えますが、どのように対応していこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

3 スポーツを通じた観光産業の振興について

質問の第3は、「スポーツツーリズムの推進とスポーツコミッションの設立について」であります。
観光産業の振興は私の重要テーマの一つでありますので、今回はスポーツツーリズムをテーマに質問いたします。
スポーツツーリズムは野球やサッカー、競馬などのプロスポーツを「見る」スポーツや、マラソンや登山、ゴルフなどの「する」スポーツを目的とする、ニューツーリズムの一つであります。財団法人日本交通公社の調査では、スポーツツーリズムの市場占有率は国内旅行で15%から20%と予想されているほか、スポーツビジネス社の報告でも、世界のツーリズム市場のうち10%を占めるとされているなど、スポーツを観光の目的とする層は意外なほど多く存在しています。
2010年、観光庁は観光連携コンソーシアム内で初めてスポーツ観光を取り上げ、翌年にはスポーツツーリズム推進基本方針を策定しました。また、スポーツツーリズムと地方のスポーツコミッション創出支援を目的とする一般社団法人スポーツツーリズム推進機構が設立されるなどスポーツをツーリズム資源として開発、推進していく機運は高まっております。
そして、そのスポーツツーリズムを総合的に支援する組織がスポーツコミッションであります。
スポーツコミッションは、スポーツ大会やイベント、合宿の誘致や運営・財政支援を行い、地域振興を行うものであり、2月本会議で私が質問したフィルムコミッションのスポーツ版といえるものです。
アメリカではスポーツコミッションが500を超え、スポーツ産業都市を標榜しているインディアナポリスは全米初のスポーツコミッションを設立し、400を超える国内・国際スポーツ大会が開催され、その経済効果は、累計で 30億ドルを超えると試算されています。競技団体本部の招致も積極的に進めており、全米陸上連盟や全米体操連盟を筆頭に 20以上のスポーツ統括団体がインディアナポリスに本部を置くなど、大きな成果を挙げています。日本でも2011年にさいたま市が日本初のスポーツコミッションを創設し、本年4月には関西経済同友会の主導で関西スポーツコミッションが設立されるなど、徐々に国内でも活発化しつつある状況です。
我が兵庫県を見てみると、見るスポーツとしては観客動員数でリーグトップクラスの阪神タイガースや、ワールドカップ優勝のなでしこジャパン主力メンバーを有するINAC神戸が本県に本拠地を置いています。また、するスポーツでもゴルフは日本初のゴルフ場である神戸ゴルフ倶楽部を有するほか、国内2位のゴルフ場数を誇り、ゴルフ場利用税だけで、約45億円の税収を本県に納められています。他にも、神戸マラソンや六甲全山縦走など本県には人気を博しているスポーツがたくさんあります。
これらは、立派な観光資源であり、一つの産業として、より成長させていくためには、しっかりとした組織と予算が必要であり、それが私の提言するスポーツコミッションの設立です。
そこで、わが兵庫県におけるスポーツツーリズムの取り組み方針とスポーツコミッションの必要性についてどのように認識されているのか、ご所見をお伺いします。

4 人口減少・高齢化社会への対応ついて

最後に、人口減少・高齢化社会への対応について、インフラを「使う」から「捨てる」へ、そして、縮小都市へ方針転換すべきとの観点から質問致します。
  先般、会派にてドイツ出張に行ってまいりました。目的の一つにこの縮小都市政策がありました。ドイツは、東西統一による急速な人口移転から、旧東ドイツでは急速な人口減少が進み、高い空室率と増加する建物とインフラの維持管理費用を削減すべく、建物の取り壊しを行う減築と人口移転施策を行っています。人口減少への先進的対応策として、非常に参考になりました。
さて、本県において、地方、特に小規模集落や多自然居住地域において、農地・森林保全を通じた環境・防災対策や伝統文化の維持、そして住民の住む権利の保護という目的から維持・活性化施策が進められてきています。
また、小規模集落元気作戦、交流人口の拡大や定住人口の増加といった人口増加策から、交通ならデマンド交通、産業なら農業の6次産業化や商店街活性化など、きめ細かく施策を実施されているところです。
しかし、私はこれらの施策は人口動態が今後もある程度維持されるという前提ならば機能するかもしれませんが、これから指摘する前提条件を踏まえて考慮した場合、根本的な解決策にはならないと考えています。
そこで、以下3つの観点から、今後は緩やかな移転・消滅・統合に軸足を置いた施策を実行すべきと提言します。
1つ目の理由は、人口減少です。
2050年の予想人口9515万人、04年の人口ピーク比からの人口25.5%減は、あくまでも全国平均の数値にすぎず、1キロメッシュでは、約66%の地点で人口は半減以下、更に居住地域の2割が無居住化=消滅地域となる状況が予想されています。
半減以下という急激に人口が減少していく地域において、これまでの交流・定住対策で人口減少をカバーすることができるでしょうか?市場規模が半減した商店が復活できるでしょうか?固定費比率の高い交通は補助金を使っても持続可能なのか計り知れず、局地的な対処療法では解決困難な問題です。
2つ目の理由は、街のライフラインでもある、インフラ維持管理コストの増加です。
日本総研の調査によると、社会資本ストックの更新・維持管理が財政上の課題として、既に顕在化していると回答した自治体は全体の73.5%。また10 年以内に顕在化すると回答した自治体をあわせると90.7%となっています。国土交通省の調査でも、2050年の1人当たりのストック維持更新費は兵庫県の場合で2010年の約3倍とされています。施設が老朽化し、今後、維持更新費が増加していくことを考慮すると、現在の長寿命化や指定管理、PPPといった管理コストの効率化だけでは上昇を抑えきることは難しく、長く「使う」ことも大事ですが総量を減らす「捨てる」発想に切り替えていく必要があると考えます。
3つ目の理由は、財政上の制約です。兵庫県の財政状況が既に全国ワーストクラスなのは今更言うまでもありません。
都道府県と市町村を合計した全国の地方自治体の歳出推移は、1999年~2008年の10年間で1割以上の約12兆円減少しています。その、最大の要因は、約13兆円減少した投資的経費であり、約半分の水準まで減少しています。今後は社会保障費の増大がある中で、予算の制約条件は厳しくなっています。
つまり、現在の水準の社会資本の関係コストや行政コストの維持は、今後の財政上の制約下においては持続不可能であり、ライフラインであるインフラを居住地域で「捨てる」訳にもいかないため、移転・統合によりコントロールされた無居住地域の創出とセットでのインフラ削減が必要です。
この考え方が全ての地域に合致するとは考えていません。守るべき地域も当然多くあるでしょう。しかし、従来からの維持・活性化一辺倒の政策からは方向転換を図り、移転・消滅・統合を支援する施策も選択肢として取り組んでいくべきと考えますが、知事・当局のお考えをお聞かせください。

前田 ともき
(選挙区:神戸市東灘区)

(黒田 一美 議員)[発言方式:一問一答]

1 地域主権改革の推進について
 (1) 社会福祉施設等の設置・管理基準条例化における本県の独自性について
 (2) 「地域主権改革」の更なる促進について
 (3) 県民の参画と協働について
 (4) 現場職員の意見を反映する仕組みづくりについて

質問全文

第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月2日)

                   質問者:黒 田 一 美  議員
                   形 式:一問一答方式

1 地域主権改革の推進について

(1) 社会福祉施設等の設置・管理基準条例化における本県の独自性について
質問の第1は、「社会福祉施設等の設置・管理基準条例化における本県の独自性について」であります。
平成21年の政権交代以来、民主党が進めてきた地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる活気に満ちた地域社会をつくっていくことを目指しています。
すなわち、明治以来の中央集権体質から脱却し、国が地方に優越する上下の関係から、国と地方とが対等なパートナーシップに立つ関係へと、この国の在り方を大きく転換することを目指すものであり、その具体的な施策を検討していくため、平成21年11月17日の閣議決定により、内閣府に地域主権戦略会議が設置されました。
以後、多くの面において、地域主権改革の具体の成果が上がっておりますが、中でも、地方自治体に対する国による義務付け・枠付けについては、地方分権改革推進委員会の勧告、地方分権改革推進計画(平成21年12月15日閣議決定)及び地域主権戦略大綱(平成22年6月22日閣議決定)を踏まえ、地方自治体の自主性を強化し自由度の拡大を図る観点から、「施設・公物設置管理の基準」等について、昨年5月及び8月に、いわゆる第1次一括法・第2次一括法が公布されました。
この2次にわたる見直しにより、合計200余もの法律に関して、義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大が実現されたことは、特に大きな成果であると言えます。
こうした国の動向を受けて、昨年来、これまで国が定めていた施設・事業等の基準を、各地方自治体の新たな条例で定めるなどの取組が積極的に進められております。
本県においても、本年の2月定例会での審議を経て、本県における環境保全や労働、陸運等に関する基準を定める「法令の規定により条例に委任された基準等に関する条例」が制定され、この4月1日付けで施行されたことは、皆様もご記憶に新しいことと思います。
さて、この度、社会福祉施設等の設置・管理基準を新たに条例化するとして、この8月のパブリックコメント手続による県民意見の募集を経て、今定例会に同条例の改正案が上程されております。
言うまでもなく、保育所や老人ホームをはじめとする社会福祉施設等は、多くの県民にとって最も身近で生活に直結する施設であることから、各地方自治体の実状や住民の方々のニーズに応じた、最適なサービスの提供が求められる施設の代表格であります。
そこで、今回、社会福祉施設等の設置・管理基準の条例化にあたって、どのような点において本県の独自性が発揮されているのか、また、パブリックコメント手続において県民の方々からどのような意見が出され、この度の条例案にどう反映されているのか、当局のご所見をお伺いします。

(2) 「地域主権改革」の更なる促進について
質問の第2は、「「地域主権改革」の更なる促進について」であります。
先ほども少し触れましたが、「地域主権改革」とは、憲法の理念の下で、住民に身近な行政は地方自治体が自主的かつ総合的に広く担うとともに、住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革であります。
この改革の根底に掲げられている「地域主権」の理念は、憲法が定める「地方自治の本旨」や、国と地方の役割分担に係る「補完性の原則」に基づいて、住民に身近な行政はできる限り地方自治体に委ねることを基本としており、国による義務付け・枠付けの見直しと地方自治体における条例制定権の拡大は、基礎自治体への権限移譲の取組とともに、このような視点から進められているものです。
すなわち、わが国における行政の仕組みを、住民代表である議会の審議を通じて、各地方自治体自らが、その判断と責任において実施する体制に改め、それぞれの地域実情に合った最適な行政サービスの提供の実現を目指していくことは、この改革を進めるにあたって最も重要な課題のひとつだと言えます。
とりわけ、住民がより良い行政サービスを受けるためには、そのサービスを提供する自治体が地域の実情や住民のニーズを個々に把握し、その内容に基づいて、個々の施策を決定、実施することが必要であることに鑑みれば、「地域主権改革」の取組を推進していく上で重要となるのは、国や都道府県ではなく、より住民に近いところで、その声を身近に聴くことのできる基礎自治体の役割であることは言うまでもありません。
特に本県は、異なる地勢や歴史背景を持つ、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の五つの国を県内に有し、北は日本海、南は瀬戸内海・太平洋に面する多彩な地域性を持った県であります。同じ兵庫県と言えども、個々の地域における実状や住民のニーズは一様ではなく、国による一律の義務付け・枠付けが不適当であるのと同様に、県条例による一律の縛りが、個々の市町の実状や住民ニーズにぴったりと来ないものも多々あるのではないでしょうか。
これらを総じて考えれば、より住民に身近な場所で、地域の実情や住民ニーズに即した総合行政に取り組むことのできる基礎自治体に、その独自性と自由度を高めるため、可能な限りの権限を集約していくべきという「近接性の原理」に基づいて、更なる県内分権の推進に取り組んでいくことが必要だと考えます。
そこで、県内市町への権限移譲により一層取り組んでいくことはもちろん、今回の義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大により、県条例に権限が委任された事務についても、市町の独自性と自由度を高めるため、県内各市町の意見、要望に応じて市町条例に委任できるような法令改正を含め、「地域主権改革」の更なる促進に向けて、国に積極的に働きかけていくべきだと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

(3) 県民の参画と協働について
質問の第3は、「県民の参画と協働について」であります。
先ほども述べました通り、「地域主権改革」は、地域のことは地域の住民が責任を持って決めることのできる、活気に満ちた地域社会づくりを目指す取組です。
私は、その実現のためには、「地域主権改革」を進めて行く過程における県民、地域住民の参画と協働が必要不可欠だと考えます。
この点、本県では、今回の義務付け・枠付けの見直しの一環として、県営住宅の入居基準に関して、新婚子育て世帯の収入基準の拡大と併せ、対象となる子どもの範囲を小学校就学前の子どもから中学校卒業まで拡大する内容を含む条例案が今2月定例会に上程され、可決されました。
この県営住宅の入居基準の拡大は、内閣府地域主権戦略室においても非常に高い評価を受けており、先進事例として全国にも紹介され、大きな注目を集めています。
この新たな基準そのものは、直接、県民や地域住民の方々の声やニーズを踏まえて定められたものではないようですが、その背景には、阪神・淡路大震災を経験した本県が、被災者である県民の皆様とともに、まさにその参画と協働を受けて創造的復興で取り組み、歩んできた、これまでの積み上げの成果が生きていると考えます。
震災当時、本県内では多くの震災復興住宅が建設されましたが、当初から、その入居者は高齢者の方々が多くを占め、コミュニティづくりや一人暮らしの入居者の方々の安心ケア対策が大きな課題となっていました。こうした課題の解決へ向けて、住民自らの取組が進められる中で、住宅の多様な入居のあり様、とりわけ、若い世代の入居を促進する必要性が指摘されるようになりました。
県民、ボランティア、NPO、NGO等様々な立場の方々が参画し協働し、粘り強く取り組み続けた「被災者復興支援会議」でも、そのような議論が重ねられました。
その後も、公営住宅政策の議論は続けられ、さらに、子育て支援の充実が県民にとって重要な課題となり、そのための住宅政策、特に県営住宅の有効な活用が指摘されるようになりました。
このような背景と積み上げの上に、今回の県営住宅の入居基準の拡大という、本県独自の基準が設けられ、全国的に大きな評価を受けているものと認識しております。
一例を挙げましたが、「参画と協働の推進」は、阪神・淡路大震災からの創造的復興に取り組む中で、本県が得た大きな財産です。私は、今後、「地域主権改革」の取組を進めていく上でも、県民の参画と協働は欠かせないと考えています。
この点、今回の義務付け・枠付けの見直しについては、国からの期限が切られる中で条例制定したものであり、その多くは十分な県民や関係者等の意見、提案、擦り合わせ等を経て内容を固める時間的余裕がなかったのではないかと考えます。
そこで、今後、これらの条例の内容が、より地域の実情や県民ニーズに沿った内容となるよう不断の見直しと更なる改善を進めて行くにあたって、県民の参画と協働を得る仕組みづくりが必要だと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

(4) 現場職員の意見を反映する仕組みづくりについて
質問の第4は、「現場職員の意見を反映する仕組みづくり」についてです。
「地域主権改革」を推進するためには、地域の実情を的確に捉え、地域ニーズをしっかり把握するとともに、県民からの声にしっかりと耳を傾け、受け止めていくことが重要です。
また、基礎自治体である市町の実情を把握し、相互に顔の見える信頼関係を築き、お互いに連携して、住民、県民のために取り組んでいく人間関係も必要だと考えます。
それを担えるのは、何よりも現場を担っている県職員の皆さんです。
現場の県職員一人ひとりが「地域主権改革」の必要性を認識し、日頃の個々の業務や取組の中において地域主権の推進を意識すること、住民による活気ある地域づくりに向けて県政を推進する大切な役割を担っているのだという自覚を持つことが必要です。
加えて、こうした自覚を持つ職員が、それぞれの地域や現場で、直接、県民の方々と接することを通じて得られた問題意識や、業務改善へ向けた意見を、的確に県の「地域主権改革」の取組に反映させていく仕組みが必要だと考えます。
この点、県では、職員の意見を県政に反映させる仕組みとして、職員提案制度を設けて、行政サービスの向上・改善や事務の効率化を目指す職員からの提案を募って県政運営に反映させており、特に優秀な提案については表彰も行っていると聞いております。
そこで、より地域の実情や県民ニーズに即した県政運営を行っていく観点から、地域主権改革の推進に特化した職員提案制度を設けるなど、現場職員のアイデアや意見を、今後の「地域主権改革」の取組に生かして行ける仕組みづくりを進めるべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

黒田 一美
(選挙区:神戸市垂水区)

(池畑 浩太朗 議員)[発言方式:分割]

1 未来の農業の担い手を育成する農業高校について
2 本県産の農水産物のブランド化と販路開拓について
 (1) 本県産の農水産物のブランド化について
 (2) 但馬牛の海外輸出について
3 県の農協に対する指導・監督のあり方について
4 宝塚新都市計画の今後について
 (1) 今後の活用方針について
 (2) 有効活用へ向けたアイデア募集について

質問全文

第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月3日)

                    質問者:池 畑 浩 太 朗  議員
                    形 式:分割方式

1 未来の農業の担い手を育成する農業高校について

最初の質問は、「未来の農業の担い手を育成する農業高校」についてです。
現在、県下の農業高校は10校、生徒数は2,672人となっております。
但馬農業高校では神戸ビーフの素牛となる但馬牛の受精卵移植、播磨農業高校では生徒が栽培したぶどうの販売、有馬高校では全国大会で5年連続金賞を受賞したフラワーデザインなど、それぞれの地域や学科の特性などを生かした特色化を進め、大きな成果を上げておられます。
このように特色ある取組を進める農業高校ですが、昨年度の卒業生における就職者総数416名のうち、直接農業に従事した者は、専業農家に1名、農業生産法人等に6名とわずか7名ですが、農協や森林組合、農業機械の販売等、その他農業関連を加えると4割になります。
農業高校での生活はわずか三年間とはいえ、専門的な教育を受けた人材が就農する割合を、より一層高める必要があると考えます。
しかし、農業高校では即就農などにつながる授業が継続的に行われているとは言えない面もあります。
例えば、総合実習や課題研究など農業高校ならではのカリキュラムも各高校に託されており、実習等の指導方法も、学校や学科によって異なっているのが現状です。
たとえ、卒業後すぐに就農しなくても、大学等に進学後、農業関連の仕事に従事する方や、農業関連以外の道に進んだ後に就農する可能性を考えれば、農業高校の取組は、将来、農業を志す人材を育成するには格好のステージとなります。
一般的に新規就農につながらない原因として、農業機械等の投資が多額であること、就農する際の農地確保が困難であること、技術の習得に時間を要することのほか、最近の若者はサラリーマン志向が非常に強いことなどが挙げられ、農業を取り巻く現状は大変厳しいものとなっています。
真の担い手とは、家族経営、法人経営を問わず、産業としての持続性のある農業経営を自立実践する人材であり、そのことを通じて、農業の活力と農村の活性化、ひいては食料供給力の確保に貢献し、攻めの農業、農政の担い手になる人材であると考えます。
農業高校は、真の農業経営を背負う将来の農業経営者のスペシャリストの育成をめざして、例えば、夏休み等を利用した農業技術、経営能力習得のための研修開催や、新しい技術、機械設備の導入等に対する生徒の理解醸成プログラムなど、就農全般にわたる個別指導を行っていく必要があると考えます。また、独立就農を目指す生徒には、就農地確保等のための情報提供などの進路指導も必要でしょう。
そこで、生徒の卒業後の就農を見越した、より実践的な模擬授業をカリキュラムに組み込むなど、農業高校における「農業経営学」の学びを取り入れ、農業高校の更なる指導充実を図るべきと考えますが、教育長のご所見をお伺いします。

2 本県産の農水産物のブランド化と販路開拓について

質問の第2は、「本県産の農水産物のブランド化と販路開拓」について、2点お伺いします。
 (1) 本県産の農水産物のブランド化について
1点目は、「本県産の農水産物のブランド化」についてです。
本県が世界に誇るブランドでもある神戸ビーフが、今年初めてマカオと香港に輸出されました。香港のみならず、昨今、アジア諸国を中心とした世界各国において、安全で安心な日本の農水産品への関心は高く、今後、こうした県産の農水産物のブランド化の取組を他の農産品についてもどんどん進め、国内のみならず世界に目を向けて、更なる販路開拓に積極的に取り組んでいくべきだと考えます。
この点、今までの当局の戦略としては、中国をはじめ成長著しい東アジア地域の富裕層をターゲットに販路拡大を図るため、販路開拓の窓口となる香港や姉妹・友好提携先における展示会や商談会の開催等を通じて、販路開拓に取り組んで来られました。
この8月には、香港で開催されたフード・エキスポへ出展され、また、この11月には、広東省友好提携30周年の機会を捉えた広州での展示会、商談会なども予定されていると聞いております。
しかしながら、こうした販路開拓に取り組んでいるのは本県だけではありません。例えば、この8月の香港フード・エキスポには、本県を含め日本から225団体の出展があったと聞いております。こうした状況を見れば、他府県産のものとの区別を如何に図り、本県産の農水産物のブランド化をどのように戦略的に進めていくかが、勝敗を決するポイントと言っても過言ではありません。
また、継続的に農水産物の海外輸出を行うには、徹底した品質管理とブランド維持に確実に取り組む必要があります。国内での製造、加工から輸出に至る各段階における品質管理を徹底するとともに、例えば偽物が出回りやすいといった国内事情を持つ輸出先においては商標登録を取得するなど、徹底的なブランド維持対策に取り組むことも必要不可欠であります。
そこで、本県の農水産業を世界との競争に負けない力強い産業として発展させていくためにも、今後、どのように本県産の農水産物のブランド化を戦略的に展開していくのか、当局のご所見をお伺いします。

 (2) 但馬牛の海外輸出について
2点目は、「但馬牛の海外輸出」についてお伺いします。
近年、特に東南アジア諸国では経済発展に伴い生活レベルも向上し、富裕層の増加や世界的な日本食ブームの広がりを受けて、農畜産物のマーケット開拓は着実に進んでおり、現実にベトナム、韓国等が既に有力な市場となっています。
その中でも神戸ビーフは、世界で最上級の牛肉として高級銘柄牛の代名詞となるなど、海外バイヤーや著名人からの評価も大変高くなっております。
牛肉輸出は、国内の牛肉需給のバランス調整という点においても重要であり、今後の国内の景気動向に対応して輸出が調整弁の役割を果たせば生産者の経営安定にもつながるため、いずれにしても、さらに踏み出していただきたいと思います。
生産者から消費者に至る全ての段階の関係者で構成される「神戸肉流通推進協議会」の規約によれば、但馬牛とは、「本県の県有種雄牛のみを歴代に亘り交配した本県内で生まれ育成された但馬牛を素牛とし、肉牛として出荷するまで当協議会の生産者が本県内で肥育し、本県内の食肉センターに出荷する県内一貫生産体制をとった生後28カ月齢以上から60カ月齢以下の牛で、歩留等級が「A」「B」等級であるもの」とされています。
ちなみに、一昨年度、本県内では約7万頭の牛が処理され、うち約6100頭が但馬牛、さらにそのうちの約3100頭が更に厳しい基準をクリアして神戸ビーフと認定されたそうです。
このように、神戸ビーフに限定すれば、その頭数は非常に限られており、今後、輸出規模が大きくなってきた場合に、海外からの需要に十分に対応できるだけの供給を確保できるかは微妙な状況ではないでしょうか。
こうしたことを考えれば、但馬牛も神戸ビーフと同様の飼養管理の下で生産されており、その肉質は、十分に世界に通用するものと思われます。
先日、農政環境委員会の管内視察で、建設会社が異業種への参入として設立した但馬牛の繁殖肥育を行う新会社を訪問しましたが、そこで働く方々も、「神戸ビーフが海外で高い評価を受けるのは当たり前だが、肥育に携わっている者としては、但馬牛も世界市場で十分に通用するレベルにあるのではないか」と自信を持って仰っていました。
そこで、但馬牛や神戸ビーフの積極的な海外輸出に関して、今後、県としてどのように取り組んで行かれるのか、当局のご所見をお伺いします。

3 県の農協に対する指導・監督のあり方について

質問の第3は、「県の農協に対する指導・監督のあり方」についてお伺いします。
そもそも農業協同組合は、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図ることを目的として設立され、「国際化に対応した持続可能な力強い農業」の実現を目指す本県農政において重要な一翼を担うべき組織です。
この点、農林水産省によれば、全国の農協の正組合員と、農業者ではない准組合員の数は、2009年度に初めて逆転したそうですが、これは、高齢化と後継者不足によって農家である正組合員が減る一方、3千円から1万円の出資金を払えばなれる准組合員が、農協貯金や共済加入を契機に増加したためであると思われます。つまりこのことは、「農協の金融機関化」が進んでいることの現れであり、私は、農家を支援する本来の姿から、大きなズレが生じているのではないかという疑問を感じております。
中には、地域住民へのサービスということで、スーパー、GS、葬祭場、介護施設などの設置・運営に乗り出している農協もありますが、私は、あくまで正組合員である農家、あるいはこれから正組合員になろうとする候補生へのサービスに重点を置くべきだと考えます。
こうした状況の中、主食用米の本県における系統出荷率は約4割と伺っています。その理由を商系に離れていった農家に聞くと、①仮払い-精算方式のため即金で支払ってくれない、②庭先まで集荷してくれない、③頑張った農家の米もそうでない米も混ぜて売られ、高く売る努力をしてくれないとの声がありました。
本来、農協との縁を積極的に切りたいという農家は少なく、デフレの状況の中でやむにやまれず商系に離れて行かざるを得ない組合員も多いのではないでしょうか。
農協の経営が厳しいということであればまだしも、本年1月の閉会中審査の際にお聞きした説明では、自己資本比率が法令基準4%のところ、最低の農協でも13%もあるとのことです。だとすれば、商系に行かなくても済むような対策は、組合員等から集めた年金等の貯金や共済掛け金の運用益でいくらでも講じられるのではないでしょうか。
それが金融機関については他業禁止の規制があるにも拘わらず、農協においては、総合事業体であることを法律上許され、かつ、協同組織ということで法人税に関し軽減税率(普通25.5%のところ19%)が適用されているなど、特別の取り扱いを受けていることの意義ではないでしょうか。
農協法第98条に基づき、農協の指導・監督機関は、都道府県知事となっています。また、同法93条第1項によれば、知事は、単位農協や中央会から、定款、規約、農業経営規程を守っているかどうかを知るために必要な報告を徴したりすることができるとされています。
この際、県は、農協に対する指導・監督機関として、農家組合員サービスの向上、ひいては、農政全般の進展のため、法律上の権限を適切に行使すべきだと思いますが、指導・監督の現状と評価、今後の取組方向について、当局のご所見をお伺いします。

4 宝塚新都市計画の今後について

最後の質問は、「宝塚新都市計画の今後」についてです。
この宝塚新都市計画については、これまで本会議では2回、決算・予算の特別委員会でも質問致しました。直近では、昨年6月定例会において知事より答弁を頂きました。
今回お尋ねするにあたって、毎回同じ質問を重ねるのは如何なものかと自問自答しましたが、ひとつの前進も見られない中で、この問題を終息させる訳にはいきません。
そこで、以下2点について、改めて当局のご所見をお伺いいたします。

 (1) 今後の活用方針について
まず1点目は、「今後の活用方針」についてです。
地元の要請を踏まえ、県が、平成4年度に基本計画を策定、約1,100億円の予算を投じて1,200ヘクタール余りの用地を購入した宝塚新都市計画を巡っては、これまで様々な紆余曲折を経てきましたが、平成13年度には、計画策定事務が県土整備部から企業庁へ移管され、一部のクラスターについて、新名神高速道路の検討状況を踏まえつつ土地利用についての検討を行うとされましたが、経済状況や事業採算性の厳しさから、平成15年度の企業庁経営ビジョンでは、進度調整事業と位置づけられました。
平成20年7月には、大原野第3クラスターに宝塚西谷の森公園が開園し、県民の方々に親しまれるなど、一部に有効活用が図られている例もありますが、その多くは、平成20年度策定の新行革プラン、また、昨年3月策定の第2次行革プランにおいて、長期的な視点も踏まえ適切な利活用を検討するが、直ちには利活用が見込めないため、水源涵養、CO2の排出抑制など森林の持つ公益的機能に着目し、環境林として県が計画的に取得し、適切な管理を行う対象用地の一つとして位置づけられ、現在に至っております。
しかしながら、元の土地所有者やNPO法人など地元の方々からは、すぐに利活用できるような土地も数多くあるにも関わらず未利用になっている当該用地を何とか有効活用できないかという声をよく耳にすることや、近隣自治体や企業等から、当該用地を利用したいという要望の声が聞こえてくることは、昨年6月定例会の質問の際にも申し上げた通りです。
これに対して、井戸知事からは、当該用地は、都市とも近接する自然豊かな地区にあり、地域全体の振興のための活用について、幅広い観点での検討が求められており、今後、利用可能性のある用地について、地元意見を聞きながら、社会経済情勢の変化を的確に把握しつつ、利活用の検討を進めていくとの答弁を頂きました。
この点、現在、宝塚市玉瀬地区において、西日本高速道路(株)により、新名神高速道路の整備と併せ、関西でも有数の規模となる宝塚サービスエリア(仮称)の整備が進められているとともに、この4月には、2016年度の完成を目指し、同高速道路のスマートインターチェンジを新設する計画も発表されました。
サービスエリア及びスマートインターチェンジが設置されれば、アクセスや利便性の向上のみならず、広域的な救急搬送や緊急輸送の機能充実、物流の円滑化、観光面や雇用面でも大きな効果が期待でき、周辺地区はもとより、宝塚市ひいては阪神北地域一体の活性化にも寄与するものと思われます。
こうした当該用地を取り巻く状況や社会情勢の変化に鑑みれば、私は、当該用地の有効活用は決して夢物語ではなく、その可能性を十分に秘めた土地であると考えます。
そこで、来年度は第2次行革プランの3年目の見直しを行うこととなりますが、今まさに県として、宝塚新都市という従前の計画にとらわれず、例えば、里山や貸し農園、太陽光発電用地として活用するなど、その積極的な利活用へ向けて大きく舵を切り、新たな一歩を踏み出す時期に来ているのではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

 (2) 有効活用へ向けたアイデア募集について
2点目は、「有効活用へ向けたアイデア募集」についてです。
そもそも、宝塚新都市計画は、宝塚北部地域の乱開発を防止し、公的な整備による適正な土地利用を図るために、宝塚市や地元の要請も受けて開発構想の検討がなされてきた経緯があり、地域特性や立地特性等を生かしたまちづくりのあり方については、現在においても、地元を中心に、引き続き検討が行われていると伺っています。
私も、地権者を含む地元の方々から様々なご意見をお聞きしますが、その過半数は、何の方針も示されないまま放置されていることに対する不安と、何らかの有効活用を考えるべきとの内容です。
このような中、地元では、市長をはじめ、地元住民やNPO団体の方々など、様々な活用案を持った方が数多くおられると聞いております。また、先ほども申し上げましたが、近隣自治体や企業等の中にも当該用地の利用ニーズがあるようです。
そこで、当該用地の有効活用を図るにあたっては、こうした様々な方々からの企画案やアイデアを内外に広く募集し、その中から、今後の具体の活用方針を検討していくべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

池畑 浩太朗
(選挙区:宝塚市)

(山本 千恵 議員)[発言方式:分割]

1 多文化共生施策の推進について
 (1) 地域国際化推進基本指針の改定について
 (2) 日本語指導が必要な外国人児童生徒の支援体制について
2 発達障害がある子どもの学習環境の整備に向けた職員研修の見直しについて
3 3号指定条例の制定について
4 DV被害者自立支援のためのステップハウスの整備について

質問全文

第314回兵庫県議会 一般質問(平成24年10月3日)

質 問 者:山本 千恵 議員
質問方法:分割方式

 以下4項目5問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
 なお、質問は分割方式により行います。

1 多文化共生施策の推進について

(1)地域国際化推進基本指針の改定について
最初の質問は、多文化共生施策のさらなる推進に向けた地域国際化推進基本計画の改定についてお訊ねいたします。人口減少、少子高齢化、グローバル化が進む今日の社会において、人的多様性に配慮した地域づくりが求められていることは、誰もが認識しているところです。兵庫県では、男女共同参画社会づくり条例、福祉のまちづくり条例等を策定し、人的多様性配慮があらゆる施策へ、横断的に取り込まれるように展開されています。
多文化共生に関する取り組みは、21世紀兵庫長期ビジョンでも、「将来像を実現するための基本戦略」の中で「世界に開かれ、住民参加で多文化共生が実現する兵庫の暮らしづくり」として明確に示されており、具体的な指針としては、平成6年に策定した「地域国際化推進基本指針」を拠り所となっています。
 全国を見てみると、平成18年に総務省が地域における多文化共生推進プランを発表し、全国の都道府県や基礎自治体において、多文化共生に関する指針づくりが進み、何らかの形で多文化共生に関する指針を策定している都道府県は44に上ります。兵庫県の地域国際化推進基本指針は、平成6年に策定されており、以降、改定は行われておらず、先の44自治体のうち、最も古い指針となりました。全国に先駆けて、外国人県民の暮らしやすさを施策の中に取り込み、国籍が違っても、誰もが暮らしやすい地域づくりを目指した指針も、18年の時を経過してしまっては、地域社会の様子やニーズの変化が十分に反映されているとは言いがたいのではないでしょうか。例えば、指針の中の「防災」の項目にあげられている現状・課題は、「プロパンガスの安全な使用方法等を記載した外国語によるパンフレットを作成しており、今後とも防火・防災についての情報提供に努めることが求められる。」としか記載されておらず、阪神・淡路大震災を経験した本県としては、踏み込んだ災害時対応について記載されるべきと考えます。社会の変化や今後の本県の国際化を考えれば、「地域国際化推進基本指針」の検証と見直しが必要だと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

(2) 日本語指導が必要な外国人児童生徒の支援体制について
 次に、日本語指導が必要な外国人児童生徒の支援体制についてお伺いいたします。兵庫県の公立学校において日本語指導が必要な外国人児童生徒は、平成23年9月1日現在276校、802人。調査データのある平成16年度から経年では増減はあるものの、全体傾向として子どもの数、学校数ともに増加しています。日本語指導が必要な外国人児童生徒の学習支援等のために、兵庫県では全国に先駆けて平成15年に子ども多文化共生センターを設置し、授業中の通訳等のサポートを行う子ども多文化共生サポーターを派遣したり、学校からの相談に応じるなど、外国人児童生徒が置かれている教育環境のビハインドを補っています。教育委員会が子ども多文化共生センターのような機関を設置して支援を展開するケースは、全国的にも例がなく、行政としての最大限の支援体制を整えていると感じています。
 しかしながら、子ども一人一人にとっては、平成23年度からは在留4年間に拡大されたものの1日4時間以内、週1回~3回のサポーター派遣では心もとなく、地域の学習支援教室や日本語教室の支援を利用しているケースが多く見られます。私も、いくつかの支援教室を見てきましたが、多くは、県国際交流協会の助成金を活用しながら、厳しい財政状況の中で教室運営を行い、マンパワーの部分では、熱意をもって子どもの指導にあたる無償ボランティアに支えられていることがほとんどです。一人一人に応じた細かな日々のサポートは、行政の苦手とする部分であり、地域にゆだね、地域の人たちが地域の子どもをはぐくむ、ということが、実際の地域で行われているわけです。これは、まさに県と県民との「参画と協働」による地域課題の解決ですが、地域での大きな課題は人材の確保です。
 人材の確保について、支援団体にお話を伺うと、自治体等の広報や自前のチラシでボランティアを募集しているとのことでしたが、実際には、なかなか人は集まらないとのことでした。そもそも、外国人の子どもの学習支援に関心を持ってくださる全体の人数を増やしていく必要があります。例えば、県として多文化共生や外国人の子どもが抱える問題、指導スキルなど基本的な知識を得るための研修会を行ったり、大学との連携を進め学生パワーを活用したり、子ども多文化共生センターが持っているボランティア登録制度が地域の支援組織と結びつけられるように昇華させるなど、学校だから教育委員会、地域社会のことだから産業労働部や国際交流協会ということではなく、教育委員会と国際交流協会の、より積極的な連携により、外国人児童生徒に必要な支援ができる人材を増やしていくべきと考えます。
 また、連携は十分に図られているということであれば、地域人材の循環がうまくいっていない状況について、どのような課題認識を持っておられ、今後の取り組みの方向性はどのようなものなのか、ご所見をお伺いいたします。

2 発達障害がある子どもの学習環境の整備に向けた職員研修の見直しについて

 第2の質問は、発達障害がある子どもの学習環境の整備に向けた職員研修の見直しについてです。
 平成18年度より通級による指導の対象障害種にLD、AD/HD等が加わり、平成18年6月に学校教育法等の改正が行われ、平成19年4月からは特別支援教育が明確に位置づけられたことにより、障害のある児童生徒の対応へのニーズが急増しています。平成14年に文部科学省が実施した調査では、知的な発達に遅れはないが、学習や行動面で困難を示す児童生徒の割合は、6.3%に上ると報告されており、クラスに2人程度の割合ともいわれています。このような児童生徒は、LD、AD/HD、高機能自閉症など、発達障害と総称される障害があることが多く、発達障害児の教育環境の整備は急務であり、ひとりひとりに応じた学習環境にはまだまだ到達できていないのが実情です。
 兵庫県では平成19年から、発達障害児のライフステージに応じた継続的な支援を行うためのサポートファイルの作成が各市町で進められています。平成20年には文部科学省から支援情報のファイルの有効性が示されています。しかしながら、とりわけ通常学級の発達障害がある子どもの場合、サポートファイルの存在を行政・関係機関から知らされていない保護者も多く、個人情報保護の課題も含め、現場において有効に活用されていないという声も聞こえてきます。
また、学習指導面においては、個別の指導計画は保護者にその内容はほとんど知らされておらず、計画作成が遅れているケースもあります。年度の早い段階で、学校と保護者が意見交換の場を持ち、同じ方向を向いて1年間取り組めた方が、子どもにとってより良い学習環境となります。
一方、現在、兵庫県の教職員の特別支援教育に関する研修の受講率は、幼稚園85.8%、小学校84.9%、中学校66.4%、高校38.8%です。研修内容を見てみると、発達障害に関するプログラムは障害の特徴などが主であり、具体的なツールの使い方や保護者とのコミュニケーション・外部との連携方法などは、特別支援教育コーディネーター専門研修で行われています。特別支援コーディネーターは、おおよそ1校に1人の指名ですが、子どもたちの個性が様々であり、どのように対応していいかわからないという先生もおられるのではないかと推察すれば、コーディネーター以外の先生方にも必要な研修だと思います。
サポートファイルや指導計画の活用不足改善のためには、発達障害に関する研修の裾野を広げ、適切に対応できる人材の育成が急務と考えますが、教育長のご所見をお伺いいたします。

3 3号指定条例の制定について

 質問の第3は、個人県民税の寄附金控除に関する条例、いわゆる3号指定条例の制定についてお訊ねいたします。
 3号指定条例の制定については、NPO法の改正と関連して我が会派の迎山志保議員が平成23年12月定例会において、質問を行っています。その際、当時の高井政策監は、「相当な額の県税収入の減が見込まれる」「ボランタリー基金で1億円程度の助成を行っている」ことを上げ、「寄附控除、助成金による直接支援、いずれがふさわしいのか今後検討する」との答弁をされています。3号指定条例は、NPO法人の他、学校法人や社会福祉法人等も対象とすることができるもので、県財政が非常に厳しい折、対象となる組織への寄附控除による県税収入減を伴うとなれば慎重な検討も必要かもしれません。
 しかしながら、3号指定条例は単に「寄付を集めやすくなる仕組み」という側面だけではなく、「寄付という行為で地域の課題解決に参画する」という県民協働の側面を持ち、限りなく公に近い仕事を民間に託す、民が民を支える地域の資金循環の仕組みです。中長期的にみれば、県の事業負担の軽減と県民サービスの向上につなげることも可能なはずです。制度を整えた後に、どのような効果を導き出すかが、県としての腕の見せ所ではないかと考えます。
 3号指定条例の持つ趣旨を踏まえ、平成23年12月定例会から約9ヶ月の間、3号指定条例の制定について、どの程度の税収減を試算しており、条例制定に向けてどのようなハードルがあると認識し検討してこられたのか、NPO法改正後の認定・仮認定の状況も踏まえながら、今後の方向性と併せて、ご所見をお伺いいたします。

4 DV被害者自立支援のためのステップハウスの整備について

 最後の質問は、DV被害者自立支援のためのステップハウスの整備についてお訊ねいたします。
 兵庫県におけるDV相談・一時保護の件数は、年々増加しています。DV相談件数は、平成19年度に1万2,490件、平成23年度には1万4,441件で、約1.2倍に、一時保護の実人員は、179人から230人に増加し、約1.3倍に、一時保護の延べ日数に至っては、1,427日から2,752日と2倍近く増加しています。
 県では、平成18年4月(平成21年4月改定)に「兵庫県配偶者等からの暴力対策基本計画」を策定し、被害の予防、被害者の早期発見、相談、保護、自立支援、支援体制の整備を柱として、DV対策を推進してきました。具体的には、相談窓口を広く設置したり、市町の配偶者暴力相談支援センターの設置支援、女性家庭センターの運営、民間シェルター等への一時保護委託などを行っています。DV被害者の自立支援では、県公営住宅優先入居や生活保護申請、就労支援、メンタルケアなど、市町窓口やハローワークと連絡を取り合いながらの支援が提供されています。
 しかしながら、現在の自立支援策は、それぞれの機関が取り組んでいる支援であり、DV被害者に対してパッケージ提供されていないと感じます。何より必要なのは、寄り添いと見守りのケアであり、孤立させないためのサポートが必要です。このことは、平成20年に総務省が実施したアンケートでも、59%の被害者が「被害者を孤立させない支援」をあげていることからもわかります。
 真の自立のためには、生活基盤を築くと同時に、自尊心を取り戻し、人間関係を作っていくことへの恐怖から逃れる必要がありますが、これは数か月で達成できることではなく、自分で判断する力が衰えている状態では、当事者に寄り添った、包括的支援が中長期にわたり必要です。
 DV支援の専門家にお話をお伺いすると、アメリカのシェルターでは、6週間滞在できる緊急シェルターの他、1年~1年半滞在できる集合住宅形式のステップハウスがありその中で食事を一緒にしたり、自助グループが開かれるなど、人間関係を育てる事もできるとのことです。神奈川県では、「かながわDV被害者支援プラン」を策定し、緊急一時保護のためのシェルターとは別に、「中期滞在型シェルター」を整備しています。
 兵庫県では、県営住宅を活用して5戸のステップハウスを用意していますが、平成21年から、その利用はありません。これは、ステップハウスが必要ないのではなく、DV被害者の自立に向けたニーズに合っていないからではないでしょうか。
 DV被害者の真の自立に向けた支援は、寄り添い・見守りのケアがベースにあり、パッケージ化されたサポートが提供されるステップハウスが必要だと考えますが、現在のステップハウス利用がないという事実をどのように分析し、ステップハウスの必要性をどのように認識しておられるか、当局のご所見をお伺いいたします。

山本 千恵
(選挙区:伊丹市)