議会の動き

掛水 すみえ 議員が一般質問を実施

平成25年12月 第320回定例県議会 一般質問要旨案

質 問 日:2013年12月10日(火)

質 問 者 : 掛水 すみえ 議員

質問形式 : 分割質問

1 「新しい公共」のしくみづくりについて

(1)円卓会議を活用した障がい者雇用・就労の促進について

早速ですが、通告に基づき、以下3項目6問にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
質問の第1は、「『新しい公共』のしくみづくりについて」2点お伺いします。この項目の1点目は、「円卓会議を活用した障がい者雇用・就労の促進について」お伺いします。
知事は、今任期の始まりにあたり、将来の課題を見据え事前対策を計画的に進めるために「県民の知恵と力を結集する参画と協働の推進」を基本姿勢の一つとして掲げられています。

阪神・淡路大震災を契機に「参画と協働」の理念が生まれました。その後、1998年にはNPO法が施行され、15年の年月が経過した現在では、県内のNPO法人は2,000団体を超える状況となっています。財政基盤や人的基盤が脆弱なNPOもまだまだあるものの、若い社会起業家の活躍やNPOに若者が携わるようになるなど、新しい公共の兆しを感じています。

このようななか、多様なステークホルダーが社会責任を分かち合い社会課題を解決する円卓会議は、自助・共助の意識の高まりつつある兵庫県にとって大きな推進力となるものです。
今後、新しい公共の仕組みづくりを着実に進めていくべきと考えます。

特に、障がい者の雇用・就労においては、その仕組みを早急に構築していくべきであります。法定雇用率が今年の4月より引き上げられ、常用雇用労働者50~56人未満の企業にも障がい者の雇用義務が発生しています。また2015年には、法定雇用率未達成に伴う納付金の対象が常用雇用労働者100人超の企業にまで拡大されるなど、今後も引き続き改正障害者雇用促進法が順次施行されていきます。特に障がい者雇用の経験の乏しい中小企業にとっては、法制度や雇用管理の理解が急務となります。

障がい者の雇用に積極的に取り組んでいる中小企業の事例を見ますと、障がい者の雇用自体を経営改善のための積極的方策として捉えています。具体には、専用機器の導入による訓練や作業工程の見直しにより、改善プロセスが確立されています。このことにより、従業員の働き方が変わり、個人の生産性の向上につながるだけでなく、組織の生産性の向上へもつながり、さらなる雇用を生み出す結果となります。

また、このような企業は、普段から社員・地域社会・顧客・学校など大事な利害関係者とのコミュニケーションを大事にしてているように感じています。
コミュニケーションを行うことにより、障がい者の雇用に対して二の足を踏んでいる企業は障がい者に対する理解が進むだけでなく、障がい者の側にとっても、自身の状況と照らし合わせて、企業に受け入れてもらうにはどのような能力が求められているのかを理解することができます。

県においても、今年の3月に障がい者の雇用及び就労対策の総合的な調整・推進を図る全庁的な推進体制として対策本部を設置され、各種取り組みが進められていますが、障がい者の雇用は必ずしも順調に運んでいるとはいえません。その要因の一つとして、関係者とのコミュニケーションが不足しているのではないかと感じています。

そこで、以上の点を踏まえ、県においても、地域の課題が複雑・多様化する中で、NPOをはじめとする民間団体や企業・市民など地域で活動されている方で構成される円卓会議を活用し、広く実態を聞く機会を持つことにより障がい者の雇用・就労の現状を理解し、施策に反映させていくべきと考えますが、現状認識についてご所見をお伺いします。

(2)地域で担う生活困窮者への支援について

この項目の2点目は「地域で担う生活困窮者への支援について」です。
生活困窮者に対する自立支援については、今年の6月定例会のわが会派の代表質問において、複合的課題への対応が困難であることから、総合的な支援体制の構築が必要である旨の質問を行ったところ、社会福祉協議会やNPO法人との民間団体とのネットワークづくりを進め、ワンストップ型の相談支援体制の構築を図るとの答弁がありました。

生活困窮者自立支援法は、生活保護に至る一歩手前の人たちを支援し、就労に導くことを目的として今年の5月に生活保護法の一部改正案とともに国会へ提出されましたが、審議未了のうえ、一旦廃案となりましたが、現在、開催中の国会に両法案を再提出し、先週末にようやく可決されました。

法案の内容を見てみますと、①就労その他の自立に関する相談支援や事業利用のためのプランを作成する自立相談支援事業の実施や②離職により住宅を失った生活困窮者等に対して「住居確保給付金」の支給が、福祉事務所設置自治体が必ず実施しなければならない必須事業とされている一方で、①就労準備支援事業、②一時生活支援事業、③家計相談支援事業、④学習支援事業については、任意事業とされており、福祉事務所設置自治体に裁量を委ねています。

従いまして、自治体の取り組み方の違いにより地域差が生じることとなります。
このほか、就労準備のための支援を受けても一般就労へ移行できない方を対象として、事業者が就労の機会の提供を行い、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等を行う就労訓練事業を実施する場合には、その申請に基づき一定の基準に該当する事業を都道府県知事が認定する仕組みが設けられました。これは、一般就労への追い込みではなく、いわゆる中間的就労と呼ばれるもので、たとえ部分的であってもしっかりと社会参加できる手だてを確保していこうとするものであり、私も大変評価しているところです。

法案の基礎となった社会保障審議会の報告書にも『個々人の事情と段階に応じ、想いに寄り添った支援は、社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOや社会貢献の観点から事業を実施する民間企業などのいわゆる社会的企業、民生委員・児童委員その他様々なインフォーマルな支援組織など、民間の柔軟で多様な取組が活かされ、国や自治体がこれをしっかり支えることで可能になること、加えて、すでに地域ごとに多様な民間団体が活動を展開しており、その達成は新たな生活支援体系においても継承されていくべきである』ことが記載されています。  既に今年度より、全国68自治体でモデル事業が始まり、兵庫県においても神戸市で実施しています。

法案が成立し、予定どおり施行されれば、2015年度より県を含む全国900の福祉事務所設置自治体で事業が実施されることとなり、本県においても、遅くとも来年の夏頃までには、少なくとも取組の方向性について、明確にしておくなど、準備をする必要があります。

そこで、経済的に困窮状態にある者や、社会的に孤立状態にある者など、生活困窮者に対しては個別の状況に応じた生活再建支援が求められるものでありますが、地域社会が崩れつつある中、地域で担う生活困窮者への生活支援体系の構築に向けて、どのように進めていこうとされているのかご所見をお伺いします。

2 ピア・サポートについて

質問の第2は、「ピア・サポートについて」であります。
最近、「ピア・サポート」という言葉をよく耳にするようになってきています。ピア・サポートとは、同じような立場にある仲間である「ピア(peer)」によるサポートで、家族や専門家によるサポートのように「支援する人」と「支援される人」が明確な関係であるサポートとは異なったアプローチによる支援で、注目されつつあります。

今回は、その中でも、活動が盛んになりつつあります①がん対策、②精神障がい者、③教育の3分野におけるピア・サポートについて、順次質問してまいります。

(1)がん対策におけるピア・サポートについて

はじめに、「がん対策におけるピア・サポートについて」お伺いします。
医療技術が進歩し、治療方法が多様化する一方で、情報端末の多様化に伴い多くの情報が溢れ、患者やその家族が治療方法の選択に迷う場面も多くなってきています。これまでは、拠点病院を中心に相談支援センターが設置され、患者や家族に対する不安や疑問に対応してきたところであります。

本県でも、今年の3月に改訂されました「兵庫県がん対策推進計画」では、「拠点病院の相談支援センター等は、相談支援に十分な経験を持つ患者団体等と連携し、ピアサポーターによる実体験を活かした相談を実施するよう努める。」とし、ピアサポーターによる支援も視野に入れた取り組みがなされているところです。

また、国においても、2012年6月に改訂されたがん対策推進基本計画において、学会、医療機関、患者団体、企業等を中心として、がん患者サロンや患者と同じような経験を持つ者による支援(ピア・サポート)などの相談支援や情報提供に係る取組も広がりつつあるとされています。しかしながら、その一方で、相談支援センターの実績や体制に差がみられ、こうした差が相談支援や情報提供の質にも影響していることが懸念されている現状が指摘されているとともに、取組むべき施策として、「がん患者の不安や悩みを軽減するためには、がんを経験した者もがん患者に対する相談支援に参加することが必要であり、国と地方公共団体等は、ピア・サポートを推進するための研修を実施するなど、がん患者・経験者との協働を進め、ピア・サポートをさらに充実するよう努める。」と明記しています。

 計画に基づき、公益財団法人日本対がん協会では、2011年度より厚生労働省から委託を受け、がん患者またはその家族の方が行うピアサポーターなどの相談員に対し、ピアサポーターとしての質を確保するため、ピア・サポートの目的・内容・守るべき事柄・基本の医療知識に関する研修プログラムを作成し、テキストや模擬相談を収録したDVDなどの提供を行っています。

兵庫県においても、2011年度から2年間ピアサポーターの養成をNPO法人に委託して行っており、がん患者には、治療のために離職を余儀なくされた方も多く、自身の体験を通じて活動できるピアサポーターが働く場の一つになればと願っています。

そこで、相談者の気持ちに寄り添い、必要に応じて医療の専門家につないでいくことできるピアサポーターには、今後相談支援体制の充実に貢献する役割が期待されているところですが、今後、がん対策におけるピア・サポートの充実に向けてどのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

(2)精神障がい者によるピア・サポートについて

先ほどの、がん対策に引き続き、ピアサポーターの先駆けともいえる「精神障がい者によるピア・サポート」についてお伺いします。
有志の議員で構成している兵庫県議会議員精神保健研究会では毎年地域に出かけて調査を実施しており、昨年淡路地区の淡路障害者生活支援センターを調査した際には、施設案内をしていただいたのは精神障がいの体験がある方で、現在は、ピアサポーターとして活動しているとのことでした。

また、会派で訪れた富山型地域共生複合施設「にぎやか」でも、パワーポイントで説明していただいたのは施設入所者でもある精神障がい者で、有償ボランティア・ピアサポーターとして活動している人達であり、徐々にではありますが、ピア・サポートによる支援が拡がっている様子を実感しています。

これまでの精神障がい者への福祉サービスは、治療という名のもとで一方的なサービスを提供してきた結果、精神障がい者に、生活力をはじめ主体性や自尊心、そして生きる希望を失うなどの施設症という二次的障がいを生み出す結果となったことが指摘されています。

このような状況の中、厚生労働省が2004年9月にまとめました「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本方針が示されましたが、ピア・サポートによる支援は、いまだ十分なものとはなっていません。

また、ピア・サポーターは、「当事者スタッフ」「メンバースタッフ」「ピアスタッフ」「ピア・カウンセラー」「ピア・ヘルパー」と様々な呼び方をされており、精神障がい者の雇用の場としても注目されています。

そこで、ピアサポーターとして支援する側だけでなく、支援を受ける側の精神障がい者も社会復帰し、地域において社会生活を営むことができるよう、積極的にピアサポーターを養成していくべきと考えますが、本県における精神障害者によるピア・サポートの現状並びに今後の取組の方向性についてご所見をお伺いします。

(3)学校教育におけるピア・サポートについて

ピア・サポート関連の最後に、「学校教育におけるピア・サポートについて」お伺いします。
昨今の社会構造や家族構成の変化に伴い、大人だけではなく、子どもたちの人間関係も希薄化しています。その結果、他者を思いやる気持ちや規範意識が低下し、人間関係がうまく築けずに悩む子どもが増加しています。その背景として、仲間集団であるピア・グループによる体験が不足していることがその大きな要因であると考えられています。

このような状況を受けて、子どもたち相互の人間関係を豊かにし、対人関係能力を育成するために、教師の指導援助のもと、各学校の状況に応じた学習の場を設定し、そこで得た知識やスキルをもとに仲間を思いやり、支え合う実践活動を行っているケースが増えてきています。

例えば、大阪府寝屋川市では、2009年度から市内の小中学校全校で、小学6年生と中学1年生を対象にピア・サポートによる学ぶ取り組みを実施しており、互いを思いやることができる人間関係を作りながら、児童・生徒同士に起こるトラブルの未然防止や問題が発生した時に自分たちの手で解決する方法などを身につけています。
また、今年の8月には、『情けは人のためならず』ということわざを初めて科学的に実証したとの報道がありました。

大阪大学大学院の大西先生の研究グループが米オンライン科学誌で発表したもので、大阪府内の保育園の5~6歳児70人を観察対象にし、うち親切な行動をよく取る12人を「親切児」とした。園児らが遊んでいる時に、親切児が他の子の服のボタンを留めたり、物を貸したりするなどした際、1メートル以内にいてこれを見た園児が10分間にどのように振る舞うのかを観察しました。

その結果、親切児が親切をした場合と、しなかった場合を約250回にわたり比較した結果、親切をした場合の方が、周りの園児が親切児を手伝ったりする頻度が高くなり、親しく話し掛け、体を触るなど他者を好ましく思う言動も増え、「親切が回り回って自分に返ってくること」が結論付けられました。

人が生きていくためには、他者との協力が不可欠であり、親切な行動を評価し、親切を周りから返してもらえる仕組みが進化の過程で備わったものであります。
兵庫県の学校教育においてもお互いの学びを高め合う活動が重視され、教育目標として「自立的に生きる力を培い、創造性を伸ばす教育に取り組む」ことが掲げられていますが、学習障害・困難を引き起こしている状況に対して、何とか手立てを講じて学業に専念できる手だてを考えていきたいと考える次第であります。「学校現場で困った子は困っている子」とある県立高校の校長先生の言葉が胸に残ります。

そこで、以上の点を踏まえ、友人からの温かい励ましが、やる気を失いかけた子どもに学習に対する自信を持たせ自己効力感を高めることなど、教育現場におけるピア・サポートの役割が各地で実証されていますが、本県の学校教育におけるピア・サポートの活用についてどのように認識しているのか、教育長のご所見をお伺いします。

3 癒しの川づくりについて

最後の質問は、「癒しの川づくりについて」です。
普段の川は、雄大な流れや綺麗な水面に自然の美しさを写し出し、各種の活動の場を提供してくれるとともに、癒しの空間としてやすらぎやくつろぎを感じさせてくれますが、一度、大雨が降ると一夜にして水の海に一変し、脅威へと変わります。

2000年に当時の東北地方建設局秋田工事事務所が実施した調査結果によりますと、入院中の患者の約90%が川を眺めると心が安らぐとしており、医療・福祉関係者の約70%が、川での活動によって心因性疾患の予防・治療・ケアにおける補助的効果が期待できるとしています。

また、秋田県の本荘第一病院の調査でも、秋田県子吉(こよし)川で、1日30分、10日間に亘って散歩する患者の表情・会話・反応・情緒安定を記録したところ、心の安定さが認められたとの結果が発表されています。その結果を受け、「高齢化社会における川づくり委員会」を利用市民の参画で立ち上げ、せせらぎ水路の整備、流域全体の癒しの川づくりへ向けた活動に発展しているようであり、医療だけでなく福祉・教育での効果も期待されています。

私の地元を流れる武庫川でも、「尼崎の髭の渡しのコスモス園」の美しさは格別であります。髭の渡しのコスモス園では、地域の力により維持されており、震災後20年近く経過した今も続いていることに感動し、散歩をしながら癒されている心地よさを楽しむことができます。このように普段は心地よく楽しむことができる武庫川ですが、約1.5キロ離れた県立芸術文化センターの建設の際には、武庫川の川砂に残された弥生時代の足跡が見つかり、暴れ川だったことが判りました。

今年のような相次ぐ台風等による大雨や集中豪雨、局地的大雨が頻発する状況にあっては、防災・減災としての河川整備は欠かすことができません。
これまでより、川を支配するのではなく、川をなだめながら治めるという考え方に基づき、人が川と向き合いながら治水を行ってきましたが、局地的大雨により河川内の親水公園で水遊びをしていた子供たちなどが流されて亡くなる事故もあり、危険性がクローズアップされる現下の状況を鑑みれば、川から人を遠ざけ、人が川から離れてしまい川の効用の一つである「癒し」の部分が削がれてしまうのではないかと懸念しています。川は平時にあっては、身近な自然環境の一つであります。

そこで、県でも、治水・利水や親水等に関して、「ひょうご・人と自然の川づくり基本理念・基本方針」を策定し、その具体的な推進方策を2002年にとりまとめられてから10年の年月が経過した現在、治水・利水面が重要視されますが、本県において親しみがある癒しの川づくりを今後どのように進めていくのか、ご所見をお伺いします。