予算特別委員会(総括審査)
質 問 者 栗山 雅史 委員(民主党・県民連合)
1 晩婚化・晩産化対策の推進について
(1)総合的な晩婚化対策
最初の質問は晩婚化対策についてであります。
この質問は、企画県民部①の部局審査で、「出会いサポートセンターの現状と20代への取組み」というタイトルで質問をさせていただきました。質問の中で見えてきたものは、「出会いサポートセンター事業は、晩婚化対策というよりも、未婚化対策という色が強い」ということでありました。
出会いサポートセンターで実施している「ひょうご縁結びプロジェクト」事業の平成26年度の登録者数は4,534人。県からのヒアリングでわかった登録者の平均年齢は男性が41.1歳、女性が36.2歳で、個別お見合い事業で昨年度成婚された方の平均年齢は男性38.7歳、女性35.0歳でした。兵庫県内の平均初婚年齢が男性30.8歳、女性29.3歳ですから、登録者の平均年齢及び成婚年齢は高いと言えます。まさに晩婚といえます。
また、平成26年の県内婚姻数は2万8千件弱ですが、「ひょうご縁結びプロジェクト」事業を通じて成婚されたのは120組でした。0.4%です。出会いサポートセンター事業が 県内全体の「晩婚化対策」という期待には十分に応えられていないと感じました。
県は少子化の対策、人口減少への課題として、晩婚化対策と晩産化対策を掲げています。地域創生戦略の最初にも人口減少問題を掲げておられます。由々しき問題であることは、県そして県議会としても、強く認識していることだと思います。
人口減少・少子化対策のカギは、私は「晩婚化対策」だと思っています。しかし、県の施策はどちらかというと生殖医療に対する助成や、子どもを産んでからの子育て環境の整備・支援に力を入れてきており、「結婚を早める」こと、つまり晩婚化対策への有効な施策が少ないのではないかと感じております。若い人たちが、「早く結婚しよう!」と、モチベーションが上がる施策があるのかと言われたらどうでしょうか。
部局審査の中で、私の再質問に対して平野知事公室長は「出会いサポート事業は(晩婚化対策として)深い位置づけではないというのが正直なところです。出会いサポートセンターだけでなく、若い人達に自分たちのライフタイルをどう組み立てるのか。早めに結婚するというのが自分達の生活を組み立てるうえにおいても有意義なものだという意識を根付かせていきたい」と答弁されました。また、「企画県民部だけでなく、全庁一丸となった対策を検討していく必要があるので、今後の課題として受け止めさせて頂きたい」とも言われました。
晩婚化・晩産化がなぜ進んだのか。その理由として大学進学率の向上や、仕事への意欲・価値観の変化、医療の進歩など、時代や環境の変化があげられると思います。しかし、そんな変化によって晩婚化が進んだとしても、人口減少問題の解消のためにも「早めに結婚する方が良いんだ」ということを、若い人たちに伝え、現実に行動してもらわねばならないと考えますが、今後の晩婚化対策について、知事のご所見をお伺いしたいと思います。
(2)キャリア教育における結婚や出産を含めた将来設計
晩婚化・晩産化対策については、知事部局のみならず教育委員会についても取り組むべき課題であることから、あわせてお聞きします。
教育委員会では、キャリア教育の推進として、キャリアノート等を活用した人生設計を検討させる機会がありますが、この中で、どのように結婚や出産を含めた将来設計について考えさせるのか、教育長の所見をお伺いします。
2 里親・特別養子縁組の推進について
次の質問は、里親・特別養子縁組の推進についてであります。
健康福祉部の部局審査で、小池議員より児童養護施設入所者の厳しい現状を踏まえ、さらなる支援の必要性を指摘するとともに、施設への支援だけでなく「里親・特別養子縁組の充実」によって家庭的養護を推進するよう要望いたしました。この件については、昨年6月の我が会派の代表質問で越田議員が取り上げ、環境整備への取り組みを要望したところであります。
今回の予算委員会での答弁では、今年度より開始した新生児段階での里親・特別養子縁組を積極的に進める取り組みによって、昨年度の0件から今年度は3件の里親委託に至り、来年度もさらに強化して取り組むとのことであり、大いに期待するところであります。
しかし、本県の里親等委託率は12.7%で、全国平均16.5%に比べて4%程度低い状況であります。里親委託がなかなか進まない要因として、県が多くの戦災孤児を受け入れる必要性があったことから児童養護施設を充実させてきたという歴史的な経緯があり、こども家庭センターでの判断も施設への措置が中心となっていたということでありました。
里親等委託率が全国一の41.4%を誇る新潟県では、児童相談所職員の充実と、高い専門性により「子供の最善の利益」を高い次元で議論した結果、高い里親委託率につながったと言われております。里親委託率を向上させていくには、兵庫県においてはまずこども家庭センター体制の充実強化が必要となるのではないかと考えております。
また、里親と同様に児童を養育者の家庭に迎えて行う「家庭養護」の形態と位置づけられる「ファミリーホーム」について、平成20年度に法定化されたところです。本県ではまだ4箇所という状況にあり、今後さらなる推進に期待しております。
さて、昨年3月に策定された兵庫県家庭的養護推進計画では、平成41年の里親等委託率を25.7%と見込んでいます。しかし、厚生労働省は、平成23年7月にとりまとめた「社会的養護の課題と将来像」において社会的養護の基本的方向として、里親等の家庭養護を優先するとともに、児童養護施設等でもできる限り家庭的な環境での養育を推進することをめざし、平成41年には、施設とグループホームと里親等の割合が、1:1:1となる目標を掲げたところです。兵庫県としても、少なくとも35%程度を目標に取り組んでいくべきと考えております。さらに、子供の健全育成にとっての家庭の重要性、子供の幸せを考えると、長期的には100%に近くなることを期待しております。
「子供の最善の利益」を考え、子供の健全育成、幸せの実現に向けた里親・特別養子縁組の推進を高い目標として掲げて取り組んでいくべきと考えますが、知事の決意、ビジョンについてお伺いします。
3 多文化共生社会の推進について
次の質問は「多文化共生社会の推進について」であります。
今定例会において、「ひょうご多文化共生社会推進指針」が議決されました。これまで我が会派は、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化の違いを認め合いながら、ともに生きていけるような多文化共生社会を推進するため、計画策定を具体的に検討すべきと主張してきました。今回、同指針が基本的な計画として位置づけられ、議決に至ったことは感慨深いものがあります。
また、同じく我が会派が主張してきた、日本語指導が必要な外国人児童生徒の高校進学等の支援についても、来年度予算案の新規事業として「外国人生徒のための高等学校特別入学モデル校事業」及び「日本語指導支援推進校事業」が挙げられています。いよいよ本格的な多文化共生社会推進に向けた機運が高まってきたと感じております。
しかしながら、多文化共生の実現に向けては、住居や就労等、多岐に渡る課題がありまして、それは「ことばの壁」、「こころの壁」、「制度の壁」の3つに分けられると言われております。この中で最も大きいのは、やはり「ことばの壁」であると、前議員の山本千恵さんも言われておりました。
「ことばの壁」でうまくいかないこととしての事例として、例えば住居に関しては、音やにおいなどに対して拒否感を感じても、「話し合う」というコミュニケーションで解決できない。また、就労においても、人間関係の摩擦や時間の感覚など、就労慣行の違いを「ことば」によって解決できないことがよくあるそうです。
外国人とともに地域に生きるという多文化共生社会の実現のためには、住居や仕事などの質の向上を図ることが大切です。地域社会がダイバーシティを取り込んで、人口減少社会における地域の活力維持にもつなげていくためにも、「ことばの壁」の解消に積極的に取り組むことが重要だと考えますが、日本語指導が必要な外国人児童生徒を含めて、県は多文化共生社会の構築に向けてどのような展望をお持ちでしょうか。当局のご所見をお伺いします。
4 ひょうごのブランド農畜水産物の流通・販売時におけるブランド維持の取り組みについて
次に、「ひょうごのブランド農畜水産物の流通・販売時におけるブランド維持の取り組みについて」について質問します。
農政環境部の部局審査で、石井健一郎委員が神戸ビーフのブランド強化の取り組みについて質問し、食品表示法に基づく監視などのほか、地理的表示統一マークの表示に取り組むとの答弁がありました。農畜水産物のブランド化を進めるとなると、どうしても生産面に注目が集まりがちでありますが、私は商品を求める消費者が本物の商品を手に入れることができる流通・販売面での環境整備にもっと目を向けるべきだと考えております。というのも、産地偽装問題ほどブランドにダメージを与えることはないからです。実際、県内においても平成24年に中国産のたまねぎを淡路産と偽って販売していた業者が逮捕され、これによって当時地域団体商標を得たばかりの淡路島たまねぎがイメージダウンしたことを覚えておられる方は多いと思います。偽装が明るみに出るとせっかくの生産者の努力が一瞬にして不意になってしまう上に、一度失われた信頼を回復することは難しいものです。このような事件はその後もたびたび発覚していますが、そのたびに多くの生産者と消費者を落胆させております。
県では来年度、神戸ビーフ以外にも新たに丹波黒のグレードアップに取り組むほか、ひょうご雪姫ポーク、兵庫米など幅広い農畜水産物でブランド化を図っていくとしておりますが、同時に消費者が本物をきちんと手に入れることができるよう、流通・販売面での規制・監視強化も行っていく必要があると考えますが、地理的表示保護制度の活用も含め、今後どのように取組んでいくのか、当局の所見をお伺いします。
5 但馬空港について
次に、但馬空港について質問します。
コウノトリ但馬空港については、北近畿豊岡自動車道の全線開通を見据えた但馬空港のあり方や、羽田直行便の就航の実現性などについて、我が会派からこれまでに何度も取り上げてきました。今回は石井健一郎議員から、来年度予算に計上されている機材の更新、そして新たに購入するATR機について質問したほか、羽田直行便以外の路線開拓や、地元負担について質問をいたしました。その中で、機材更新については一定やむを得ない状況であること、また新たな機材における運航補助や座席数の増加による収支改善への期待などについて確認をさせていただきましたが、私からは羽田直行便以外の路線開拓について、もう少し突っ込んだ質問をしたいと思います。
昨年5月に作成された「コウノトリ但馬空港の利活用方策」を読みますと、羽田直行便以外に、但馬~関西国際空港路線の新規就航の可能性について言及されていました。そもそも但馬空港設置の狙いは、但馬地域の交流人口を拡大し、地域活性化を図ることが目的でありまして、その対象は決して首都圏だけに限定されるものではありません。県はこれまで「人・もの・情報」が集積する首都圏との交流促進は不可欠との見解を示されていましたが、現在では東京一極集中の打破を目指している地域創生の時代に入っていることを考えると、他地域との交流促進も検討すべきではないかと感じました。また、ご承知のように国内全体でインバウンドが増加し、城崎温泉における外国人宿泊客も大幅に増加している状況を考えると、羽田直行便だけにこだわらず、柔軟に新規路線の開拓を検討すべき時が来ているのではないかと感じました。
北近畿豊岡自動車道の豊岡までの全線開通を控え、伊丹便の将来に大きな広がりを見いだせる状況ではありません。羽田直行便も見通せない状況が続いております。
日本の空港で、平成27年の国際線及び国内線の利用者数が一番多いのはもちろん羽田空港でありますが、2位は成田国際空港、3位は関西国際空港、4位は福岡空港となっています。利活用方策にもあった関西国際空港も含めて、伊丹便以外の就航による但馬地域のさらなる魅力向上と活性化につなげることについて、当局はどのようにお考えか、ご所見をお伺いしたいと思います。
6 奨学金の返還支援による人材確保・誘致について
次に、「奨学金の返還支援による人材確保・誘致」について質問します。
奨学金制度については、我が会派の上野議員が今定例会の代表質問で、そして小池議員が予算委員会の教育委員会審査で、それぞれ給付型の奨学金制度の必要性を訴えました。貧困の連鎖を防止するための教育の機会均等や、高額な授業料の割に奨学金の補助が低レベルにある日本の現状、高額な返済に苦しむ大学卒業後の若年者の問題を提起し、「奨学金制度の改善」を求めてきました。しかし、答弁では「一律給付には問題がある」、「国の検討の動向を見守る」など、県教育委員会からは主体的な答弁はありませんでした。
一方、国では、「人口減少克服・地方創生」という課題に取り組む中で、奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進として、今年度より、地方公共団体が地元産業界と協力して、将来の地域産業の担い手となる学生の奨学金返還を支援するための基金の創設を支援しています。既に、香川、鳥取、山口など4県で導入しており、地方企業への就職を条件に、無利子貸与や奨学金の返還支援等が行われています。そのほか、福井、富山、鹿児島の3県では県独自の支援を行っており、また新聞報道によると13県がこの支援制度の導入を検討中だそうです。
この支援制度の導入は、多額の奨学金返済に苦しむ若年者を救うと同時に、転出抑制策にも転入促進策にもなる可能性を秘めています。実際県内には、人出不足に悩む企業も多く、県もその支援に手を尽くしているところでありますので、小池議員が財政状況審査で指摘したような、まさに「相乗効果が期待できる施策」になると考えられます。
そこで兵庫県でも、国の支援制度を活用した基金を創設し、奨学金返還を支援するとともに、地元企業で活躍する人材の確保、誘致につなげるべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。
7 児童虐待に対する県警察の取り組みと関係機関との連携について
次の質問は、「児童虐待に対する県警察の取組みと関係機関との連携について」であります。
幼い命が虐待によって奪われるといった悲しい出来事が全国的に相次いでいることから、社会全体の児童虐待に対する関心は高くなってきており、その結果、警察への通報も増加の一途を辿っております。
新聞報道では、全国警察が平成27年1月から6月までの間に摘発した18歳未満の子どもへの虐待事件は376件、摘発人数は387人で、被害を受けた子どもの数についても386人と、そのいずれもが過去最多を更新しているほか、虐待の疑いがあるとして警察が児童相談所に通告した児童の数も17,224人と過去最多を更新したと報じられております。兵庫県におきましても、平成27年中の児童虐待の被害児童数は1,052人で、全国と同様に過去最多を更新しています。また、児童虐待に対する関心は高まっているものの、平成28年に入ってからも全国では虐待による児童の死亡事案が相次いでおり、埼玉県では無抵抗な3歳の女児が、同居していた男性から熱湯をかけられるなどの虐待行為を受けて亡くなるといった大変、痛ましい事件も発生しております。この事件は、児童が亡くなる前に2度ほど泣き声に気が付いたご近所の方が警察に通報をしていましたが、警察官が訪問した際には、虐待の形跡が認められなかったことから、関係機関への連絡は行っていなかったとの報道もあります。もし警察と関係機関の間で上手く情報が共有され、事前に保護することができていたらと考えると残念でなりません。
このように、全国と同様に本県においても児童虐待に対する通報件数・事案は増加し続けていますので、今後はこれまで以上に警察と児童相談所等の関係機関が連携の強化を図らなければならないと感じております。
そこで、児童虐待事案に対して警察は今後どのような姿勢で臨まれるのか。また、児童相談所等の関係機関と、具体的にどのような連携を図っていくのか、当局の所見をお伺いします。
8 財政手法・財政運営について
最後に、県の財政手法、財政運営について質問したいと思います。
この議会では、「県債管理基金への集約」についての議案で、我が会派の竹内議員から質問、指摘をしてきたところであります。また、他の議員からも様々に質問、意見があったところであります。
井戸知事からの答弁にありましたように、今回の目的は、一つには実質公債費比率の改善に向けた対策であるということ、そして二つには基金の集約による運用収益の向上を図るというものでした。阪神・淡路大震災からの復旧・復興にあたって財源を確保する必要性があったこと、また起債許可団体から協議団体への移行のためにも、財政指標の算出について国とのやり取りの中でご苦労があったことを聞いておりますし、県が意図することについても理解をしているものであります。
しかしながら、財政運営を進めるにあたっては「原理原則」、そして分かりやすい財政手法であるべきであると考えております。今回の「県債管理基金への集約」や、これまでに質問、指摘をしてきました「単コロ」、みどり公社への「オーバーナイト貸付」などについても同様です。議案には賛成いたしましたが、会派の中には「割り切れない思い」を持つ者もおります。また、県民への説明が難しくなっているという声もあります。
来年度は第3次行革プラン策定から3年目にあたり、総点検を実施することになっております。これからも持続可能な行財政基盤の確立に向けて、県議会・県民とのスクラムを組んでいく中では、財政手法の意図の丁寧な説明と、その選択の意義、そして理解しやすい財政状況の開示がさらに求められるのではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いしたいと思います。