議会の動き

◆17年2月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方 討論

代表質問  上野 英一   議員

一般質問  小池 ひろのり 議員
石井 健一郎  議員
向山 好一   議員

代表質問

(上野 英一 議員)[発言方式:分割]
1 真の行財政構造改革について
(1)人口減少社会における社会の担い手づくりについて
(2)人口減少を見据えた基幹道路ネットワークの整備について
(3)県政150周年記念事業について
2 地域創生の真髄について
3 県立大学の今後の目指す大学像と経営について
4 働き方改革について
(1)時間外労働の現状と縮減の取り組みについて
(2)育児・介護と仕事の両立支援について
5 本県におけるキャリア教育について
6 災害時のスムーズな交通確保を見据えた県警の取り組みについて

質問全文

質問日:平成29年2月23日(木)

質問者:上野 英一幹事長

質問方式:分割方式

1.真の行財政構造改革について

(1)人口減少社会における社会の担い手づくりについて

最終2ヵ年行革の特別委員会での議論の中で明らかになったことは、社会保障関係費が増え続ける中で、地方一般財源総額が平成27年度と同水準に据え置かれても、平成30年の収支均衡については、財政運用を含めてめどは立った。

しかし、平成31年度以降もこの状態が続けば、新たな財源を見つけるか、真の行財政構造改革を行うかであるということでした。 それでは真の行財政構造改革とは何か。最終2ヵ年行革プランに対する意見開陳でも申し上げましたが、第一に、生産年齢人口の見直しを通じた社会の担い手の拡大です。地域創生戦略では、「団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、15~74歳を『拡大生産年齢人口』として、地域経済を含め広く地域づくり活動の担い手となるよう、その取組を進める」こととしています。

また、高齢者問題の研究者でつくる日本老年学会でも、「高齢者を75歳以上に、65~74歳は准高齢者、現代人は10~20年前と比較し、加齢に伴う衰えが5~10年遅く『若返り』がみられる。65~74歳では活発に活動できる人が多数を占め、社会一般の意識としても高齢者とすることに否定的な意見が強い。その上で、高齢者の年齢を75歳以上に引き上げ、65~74歳は就労やボランティア活動ができるように後押しし、『社会の支え手』として捉えなおすべき。」としています。

私は、最終2ヵ年行革プランにおける老人医療費助成事業の廃止や県立施設高齢者減免要件の見直しなどはその考え方の一環であると捉えています。持続可能な行財政構造の構築には、健康寿命の延伸を進め、医療・介護費の大幅な削減を目指すとともに、さらなる参画と協働を進め、社会の担い手を増やす施策の充実が必要不可欠と考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(2)人口減少を見据えた基幹道路ネットワークの整備について

第二に、組織やハコモノの抜本的な見直しも主張してきました。例えば、 (公財)兵庫丹波の森協会の丹波県民局との業務の一体化により、業務上はもとより、住民サービスの観点から効率化を図るとともに、地元による多額の運賃補助を必要としている但馬空港については、但馬地域への交通アクセスが格段に改善している中においては、現実的な認識に沿った抜本的な見直しを行うべきです。

新西宮ヨットハーバー(株)についても、県はいつまで経営に関与を続けていくのでしょうか。収益性が求められる事業については、運営を民間に任せるべきです。我が会派としては、今後の人口減少を見据え、これらの組織・ハコモノの見直しを本格的に進め、質的な改革を成し遂げなければならないと考えています。

これに関連して、人口減少を見据えた基幹道路ネットワークの整備について質問します。本県では、従来からミッシングリング解消を目指し、国やネクスコ等関係機関と連携する中で基幹道路整備に取り組んできました。もちろん、県土発展という観点からみるとミッシングリング解消に取り組むことは理解をして参りました。

一方で人口減少に伴い交通量も減少していくことが確実です。県としてもこれらの社会状況を前提に計画を見直す時期に来ています。従来の社会基盤整備プログラムは、成長経済等を前提とした計画作りでありました。

これからは、人口減少を前提に、新たな社会基盤整備を考えるべきであると考えます。この度改めて「ひょうご基幹道路ネットワーク整備基本計画(仮称)」を策定するに当たり、人口減少や交通量の減少をどのように評価し今後の計画に盛り込むのか、ご所見をお伺いします。

(3)県政150周年記念事業について

第三に、限られた財源の中での持続可能な行財政運営実現のために、スクラップの意味での既存施策の見直しだけではなく、ビルド部分、つまり新規施策展開時における優先順位の明示のほか、既存施策の方針転換を行う際の丁寧な説明が欠かせません。

特に投資事業の実施にあたっては、将来にわたって維持管理費が発生するため、その判断には、より一層の慎重さが求められます。我が会派では、県政150周年記念事業や、小野市市場地区開発等の企業庁の施策展開について色々と指摘してきましたが、人口減少社会へ進む今だからこそ、ビルド部分に関する意識改革をさらに進めるべきです。

100周年記念事業は、戦後復興から高度成長への時代でありました。そして未来への兵庫県民の希望の象徴として、県民会館、芸術文化協会、こども病院が建設・設立されました。現在、あるいはこれからは、低成長・人口減少社会、経済の縮小社会であります。この厳しい社会情勢の中で、150周年記念事業は、ひょうごの未来に向けて県民の気持ちを一つにする事業を行うべきであります。そのためにも、シンボル的な施設ではなく、五国、県民局単位、あるいは各部局でそれぞれにおいてソフト事業を中心に展開すべきであると考えます。

例えば、先日も「めざせ、日本遺産!! 銀の馬車道 鉱石の道」フォーラムが3市3町の住民の総決起で開催されましたが、播磨・但馬の150周年事業として展開するなど考えられます。部局の1例では、県立高校で考える県政150周年記念事業などもなかなかなものと考えます。当局のご所見をお伺いします。

2.地域創生の真髄について

平成27年4月1日に施行の兵庫県地域創生条例に基づき地域創生戦略が策定されて、2020年までの目標として9つの基本目標と70の施策の全県対策、さらに各県民局・県民センターでの地域別の対策が策定されています。また、各市町においても総合戦略が策定されています。その総合戦略策定に当たっては、それぞれ総合戦略会議が開催されています。さらに兵庫県では、地域創生戦略アクション・プランが策定され、戦略の3本柱である「自然増対策」「社会増対策」「地域の元気づくり」ごとに、平成31年度までの年次目標値の達成状況を明確にするため、9つの基本目標のもとに設定した70の施策ごとに、成果指標である「総括KPI」を設定するとともに、平成28年度当初予算及び平成27年度補正予算(緊急経済対策等)の中から、70の施策の「総括KPI」を達成するために必要な主な事業について、「事業KPI」を設定されています。

また、「地域創生トップフォーラム」が、平成28年2月16日にラッセホールで開催、地域創生NEWSレターの発行、地域創生リーフレットの作成などの取組を進められています。 県民・市民との協働による戦略の策定、アクション・プランによる成果目標の設定、各種広報・啓発活動と精力的に進められています。戦略などの計画づくりやアクション・プランは、素晴らしい中身・出来栄えになっていると思います。 知事は新年交礼会の中で、計画づくりよりも、県民が夢や希望を感じるビジョンを示すことが大事であると仰っていました。

また、以前からふるさと意識の醸成を仰っています。私は神河町の戦略会議に参加をさせて頂きましたが、どうしても戦略の策定にタイムリミットがあるため、やはり計画づくりに終わっていたのではないかと思います。これまでも、地域の協働社会づくりを進めるチャンスは、市町村合併、スポーツクラブ21事業、県民交流広場事業、地域の夢推進事業などがありましたが、合併特例債や補助金獲得のための計画づくりに終わったのではないかと思います。

地域創生は、これからの県民・住民の協働作業で地域を考え作っていく最後のチャンスだと考えます。 私は、人口減少、東京一極集中になった根本的な原因は、経済活動にあると考えます。その自由主義経済の中で、この現状を変えるためには、私たちの価値観を問い直すことが必要ではないでしょうか。

自由主義経済の下での物資的豊かさだけではなく、地域循環型経済を確立して、自然環境の豊かさや自然の恵みでの生産活動、これらをベースにした起業、牧歌的な地域コミュニティ、新たな農村コミュニティを創造することではないでしょうか。都会も田舎も県民・住民の協働で、人と人がつながり、命と絆を大切にした人間社会を再構築することではないでしょうか。ご所見をお伺いします。

3.県立大学の今後の目指す大学像と経営について

法人移行3年が経過して、組織及び業務全般にわたる検証の実施が行われました。その中で理事長と学長の一体型でも、「メリットである機動性を発揮して、概ね計画に即した成果を挙げたものと評価できる」とされています。ただし、大学改革(教育・組織・ガバナンス)については、「国による様々な改革が矢継ぎ早に打ち出されていることから、特に教育面を中心に取組の加速化が必要である。」とされています。

さらに、「3年間の取り組み、残された課題を踏まえると、多様な学部・研究科等を有する分散型キャンパスという本学の特性により、他大学よりマネージメントが難しい要因となって、理事長兼学長が、経営・教学両面にわたる重要課題のすべてに十分なリーダーシップを発揮することは困難であったことは否めない。」とされています。そして、平成29年度から、理事長と学長の分離型への移行となっています。

神戸商科大学・姫路工業大学・看護大学のOBの皆さんからは、兵庫県立大学に移行してからは、一体化することによって旧大学の良さが埋没するだけでなく、知名度も下がっているのではないかとの声を聞いています。

それは一流企業への就職状況にも表れています。週刊ダイヤモンド2014.10.18号では、関西地元17社(積水ハウス、大和ハウス工業、武田薬品工業、神戸製鋼所、京セラ、シャープ、日本電産、パナソニック、村田製作所、ダイキン工業、川崎重工業、京都銀行、近畿日本鉄道、NTT西日本、JR西日本、関西電力、大阪ガス)の就職者数は関西の大学で20位です。

また、地元16社(積水ハウス、大和ハウス工業、武田薬品工業、神戸製鋼所、京セラ、シャープ、日本電産、パナソニック、村田製作所、ダイキン工業、川崎重工業、京都銀行、近畿日本鉄道、JR西日本、関西電力、大阪ガス)の役員数では5位です。

このことは、旧大学時代には地元関西の大手企業に多くが就職するだけでなく多くの役員を生み出したと言うことです。近年多くの公立大学が誕生していますが、兵庫県立大学も、企業の人事には新設校と思われているのではないでしょうか。一方、日経グローカル2014.12.1号の全国の地域貢献度ランキングでは、2012年55位、2013年26位、総合順位12位と上位に位置しています。 そこで、兵庫県立大学として目指す大学像と、その経営方針について伺います。

4.働き方改革について

働き方改革、1億総活躍社会の創造が議論されていますが、兵庫における現状はどうなっているのか。兵庫県が率先して進めることが行政としての使命と考えます。次の2点についてお伺いします。

(1)時間外労働の現状と縮減の取り組みについて

第一は、時間外労働の現状と縮減の取り組みについてであります。電通高橋まつりさんの過労自殺で、改めて長時間労働の実態が明らかになり、残業上限・罰則導入の議論がされています。労働基準法では労働時間を1日8時間、週40時間までと規定しており、使用者は労働者に残業をさせるには労使が合意して協定(36協定)を結ぶ必要があります。

厚生労働省は36協定の残業を月45時間、年間360時間までとしていますが、労使で合意し特別条項付き協定を締結すればこれを上回ることが可能となっており、上限に取り決めはありません。事実上青天井となっています。厚生労働省は、脳・心疾患を労災認定する基準を、発症前1か月におおむね100時間の残業があったことを目安の一つとしており、「過労死ライン」と呼ばれています。80時間を下回る残業でも過労死と認定される場合もあります。

兵庫県では、要綱や36協定で残業を月45時間、年間360時間、特別な場合月100時間としておりますが、平成27年10月14日の決算特別委員会での竹内英明議員の質問に対して、人事課長から、「平成26年度の職員の超過勤務時間については、知事部局の対象人数が約5,400人である。総時間数が82万時間、手当の支給実績については24億円となっている。

また、お尋ねの年間1,000時間を超えて超過勤務をした職員であるが、これは人数で18人である。上位ベスト3ということであるが、最も超過勤務時間の多かった職員は、年間1,422時間、手当額にして約370万円を支給している。2番目に多い職員は、年間1,186時間で約430万円。3番目に多い職員は、年間1,167時間で約320万円というふうになっている。」との答弁がありました。

また、行革調査特別委員会の議論の中では、平成27年度の時間外勤務時間が年間360時間を超える職員は約550人でした。実に1割の職員であります。 ある民間企業の商品の発送作業では、包装のビニール袋を机の下から机の横にセットすることで1工程9秒の短縮を行い、1日200工程で30分の時間短縮を可能にした取り組み、また、ありとあらゆる工程の見直しで生産性の向上を果たしたという報道がされていました。行政と民間の労働実態は異なりますが、工夫をすれば時間短縮を生み出すことが可能ではないでしょうか。 そこで、県職員の勤務実態をどのように考えておられるのか。また、具体的に時間外労働を減らす方策を考えているのかお尋ねします。

(2)育児・介護と仕事の両立支援について

育児・介護と仕事の両立支援についてでありますが、これも民間の取り組み事例ですが、育児・介護に関する休暇を勤務時間の始め、途中、終わりでそれぞれ30分単位で取得可能にしたところ、こどもの送り迎えや親の介護の対応に対してイライラすることがなくなり、仕事に集中できるようになり生産性が向上したということです。育児・介護と仕事の両立支援は、大企業を中心に制度の普及が進んでいます。

しかし、職場が休暇を取りにくい雰囲気であったり、実情に合った制度になっていない等の理由で、制度があっても充分活用できているとは言いがたい状況が多々見受けられます。 県職員については、様々な育児・介護に関する休暇があり、テレワークも含めて、育児・介護の支援制度の充実は図られているところです。

しかしながら、制度を充実するだけではなく、職員が制度を十分に活用できるような環境づくりや制度の改善を行う必要があると考えます。 そこで、県職員の育児・介護と仕事の両立支援に向けて、どのように取り組んでいく方針なのか、ご所見をお伺いします。

5.本県におけるキャリア教育について

子供の貧困と奨学金問題、学ぶことの保障が活発に議論され、いよいよ給付型奨学金の創設も始まります。私たちは、貧しくても勉強して社会に貢献したいと考える意欲を持った若者達を、是非とも応援したいと考えています。 人間にとって進路を決めることは大変重要なことであります。それは幼稚園・小学校のお受験に始まり、中・高・大学受験と続きます。さらに、社会参加、この世界・日本の社会の中で自分は何を成すべきかと続きます。

特に、中学から高校、高校から大学へは、人生にとって特に大切な進路選択の準備期間となります。 過去においては、貧しいから中学あるいは高校を卒業し就職をして、夜間・通信教育で高校・大学へ通う苦学生がたくさんいました。

また、中学から高校の選択において工業・商業科等の職業科の選択も非常に難しいことであります。中には「僕は勉強苦手やから職業科を選んで大学には行かず就職します。」という方もいました。 私は、自分の進路を自分で決めることができる教育と進路指導が重要と考えます。現行学習指導要領では、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和を重視した「生きる力」を育むことが重要とあります。そのために職業観にとどまらず人生観を養うキャリア教育が重要と考えます。

加えて、アクティブラーニングの視点も取り入れたキャリア教育にも期待しています。 そこで、本県におけるキャリア教育をどのように取り組んでいくのか、教育長のご所見をお伺いします。

6.災害時のスムーズな交通確保を見据えた県警の取り組みについて

昨年、4月には熊本県で震度7の大地震、10月には鳥取県で震度6弱、11月には、東北地方で再度マグニチュード7.4の地震に見舞われました。

本県においても、南海トラフ地震が今後近いうちに高い確率で発生すると言われています。また、地球温暖化・異常気象による豪雨被害や豪雪被害などが多発をしています。 大規模災害が発生した場合、発災後72時間を境に生存率が大きく低下すると言われており、救出・救援活動は、まさに時間との闘いであります。

災害応急対策を的確かつ円滑に実施するためには、人命救助や緊急支援物資の搬送等に従事する車両が速やかに被災地へ入ることが肝要であり、こうした車両の通行を確保するため、災害対策基本法では、公安委員会が路線と区間を緊急交通路として指定し、一般車両の通行禁止・制限を行うことが規定されています。

本県においても、阪神地域18路線、但馬・丹波地域9路線、東・西播地域22路線、淡路地域2路線が緊急交通路に事前指定されています。熊本県では風水害などの広域災害を想定した計画は立てられていましたが、直下型地震の想定はしておらず、各地で混乱が生じたと報道されています。

また、大規模災害時には、停電による信号機の滅灯等により車両事故が増加する傾向が東日本、熊本でも確認されており、救援活動の障害となったと聞いています。 これらに対応するため、緊急交通路を指定するときには、災害の発生場所や規模等に応じた適切な路線を迅速に指定することが求められます。

県警察においては、災害発生時の停電等に備えた信号機の整備を順次進めていると聞きますが、財政的な面においてその整備は十分に進んでいないのではと危惧をするところです。 そこで、その整備状況と、災害発生時における交通規制対策にどのように取り組まれているのか、ご所見をお伺いします。

上野 英一

(選挙区:神崎郡)

一般質問

(小池 ひろのり 議員)[発言方式:一問一答]

1 兵庫県こそ、環境防災学の推進を!
2 児童養護施設退所者の支援について
3 健康づくりの推進について
4 国際交流の推進について
5 奨学金制度の改善について

質問全文

質問日:平成29年2月28日(火)

質問者:小池 ひろのり

質問方式:一問一答

1.兵庫県こそ、環境防災学の推進を!【企画県民部】

阪神・淡路大震災から22年が経過した今日、大学生以下の若者には、阪神・淡路大震災の記憶はなく、関東大震災と同列の過去の歴史上の大災害と認識されています。又、神戸市内でも阪神・淡路大震災を経験していない住民が4割を超えて、社会から記憶が薄れかけた時に、東日本大震災や熊本地震が起こりました。更に、近い将来には、南海トラフ地震が30年以内に70%、50年以内なら90%の確率で発生すると言われています。

災害はいつやって来るか分からないものですが、50年以内が明日になるかもしれませんし、90%ということは、ほぼ起こると考えた方が良いと思います。だからこそ備えが必要となります。

井戸知事は、防災・減災の重要性と、阪神・淡路大震災の教訓を「忘れない」「伝える」「備える」「活かす」ことが大切だと訴えられておられます。阪神・淡路大震災で甚大な犠牲となった御霊に応えるためにも、兵庫県は震災の経験を風化させることなく、防災・減災の取り組みを積極的に進め、情報発信の拠点となるべきと考えます。そして、全国の防災・減災対策のリーダー的な役割を果すことが、被災県・兵庫としての責務であると、私は思っています。

このように日本の防災の拠点となるべき兵庫県に、防災庁(仮称)の創設を求めているのも、至極自然な流れだと思っています。是非、実現させたいものです。

安心・安全は県政の基盤です。そして、昨今、自然災害が益々巨大化しています。いつまでも想定外とか異常気象とか言うのではなく、まさにNew Normal として位置付け、防災・減災学を研究し対策を講じて行かねばなりません。そこで、安心・安全な社会の実現を目指し、理論武装の為にも環境防災学の推進を図り、減災に向けた先進的な役割を果すことを強く求めるものです。

私は、「防災は人」であるという観点から、自然災害や危機事態に直面した時に、対処する人の育成こそ原点であると考えています。

14年前に、兵庫県は全国に先駆けて県立舞子高校に環境防災科を設置し、防災教育を生徒の“生きる力”を育む教育として位置付けています。生徒たちは自ら考え、行動に結び付け、高校生の防災・減災のリーダーとして活躍する等大きな成果を上げています。

しかし、残念ながら高校で防災・減災に興味を抱いた生徒にとって、県下の大学で本格的に環境防災学を学ぶ“場”が未だにありません。

一方、減災対策の知識を持った人材へのニーズは高まっています。人と防災未来センターの災害対策専門職員の育成講座に、全国自治体職員からの応募が倍増するコースがでる等、自治体の防災・危機管理等への関心が高まる一方、大企業も専門家の配置を求めているように、卒業後の就職先の間口が広がって来ています。

更に、これからは、大学も特色が求められる時代です。このような観点から、私は県立大学に新しい分野の環境防災学を創設し、防災・減災に取り組む人材を育成する拠点になることを願うものです。そして、社会のニーズに応える等、学問も社会と一緒に変わって行くべきだと考えています。

県立大学では、この度、経済、経営学部の再編を検討しているほか、大学改革を加速させるために、理事長と学長を分離することになりました。今春から県立大学大学院に減災復興政策研究科が開設されますが、これを機に、大学に環境防災学部・学科を創設すべきです。そして、環境防災学を確実な学問として定着させ、全国の大学をリードし、減災対策のシンクタンクとなり、全国に減災情報を発信する拠点へと発展させていくべきと考えます。

是非、従来の理系のハード面、文系のソフト面という枠を超え、学際系として社会人入学にも幅広く門戸を開き、環境防災学部・学科の創設に向け本格的に取り組まれることを願います。知事に大きな決断をして頂く時が来ていると思いますが、知事の決意をお伺いします。

2.児童養護施設退所者の支援について【健康福祉部】

最近、テレビドラマなどで児童養護施設が度々取り上げられ、社会的に広く認知されるようになって来ました。しかし、今なお施設には大きな課題が現存しているのも事実です。

顕著な例として、一般家庭の子供の大学等進学率は54.5%であるのに比べて、施設の子供は、約5分の1の11.1%という低さで、これだけ見ても明らかに大きな差が生じています。

戦後、親を亡くした孤児を中心に、生活基盤を提供して来た児童養護施設。最近では、児童虐待やDVなどで親と子供を分離すべきと判断された子供が、入所者の約6割を占め、すっかり様変わりをしています。いずれにしても養育してくれる親がいない子供たちが施設で暮らし、そこから学校へ通っています。

本来なら、民法により、子供は20歳まで親が扶養する義務があります。そして、養育してくれる人がいない子供には、行政が親代わりになって、公的責任の下で養育している一つの例として、児童養護施設があります。

そんな児童養護施設が抱える今日の問題を、是非、皆さんに知って頂きたいという観点から取り上げます。

大規模の児童養護施設では、定員が100名近い所もあり、先ほど述べた子供たちが集団生活をしています。中には、親の顔を全く知らないまま天涯孤独で施設で育ち、施設から小・中学校や高校に通っている子供もいます。そして、施設の多くの子供は、高校を卒業すると就職をします。2011年より満20歳まで入所措置延長は可能となりましたが、多くは先輩に見習って施設を出て独り立ちをしています。

「早く自由になりたい」という意欲とは裏腹に、現実は、親がいる子供と明らかな違いが生じて来ます。親の愛や家庭を全く知らずに育った子供は、社会生活でも問題を引きずる場合があります。そして、助言をしてくれる人も、頼れる人も、相談する人すらいない状況で社会に出ると、余りにも急激な環境の変化に適応が出来ず、就職先を辞めてしまう例が多々あります。

何の応援もなく、中には仕事の探し方さえ知らない子供もおり、今までより条件の良い会社を求めても、安定した仕事探しは並大抵のことではありません。独りぼっちで社会にさらされた子供に対し、世間は決して甘くはありません。

単に大学進学率が低いと言う、教育の機会均等からの問題点だけでなく、児童養護施設退所者がせめて成人になる20歳まで、もっと支援を差し伸べるべきと考えます。子は親を選べませんし、置かれた環境に子供の責任はありません。頼れる親がいない子供に、支援の手を差し出すのは行政しかないと思います。

そこで、児童養護施設退所者の支援について質問します。

児童養護施設の子供の多くは、就職する場合、寮のある会社を選び、施設を退所することになります。ここで、また新たな問題が生じています。

最近では、親がいる子供でも就職後3年未満に、中卒で6割、高卒で4割が離職しているそうです。誰にも相談する相手がいない退所者の離職率は、もっと高いと想像できると思います。会社を辞めた退所者は、自分一人で新しい職場と同時に、さっそく住む家を探さなくてはなりません。保証人や身元引受人もいない、中には住所不定になることもある退所者にとって、アパートを借りるだけでも大変なことです。これを、15歳または18歳の子供に、押し付けるのは酷な話とは思いませんか!

退所者の中には、社会適応がうまくいかず、犯罪に手を染める者もいます。親から見捨てられた子供が、今度は社会からドロップアウトしていくことになります。しかし、このような子供の支援を中心に取り組んでいる福祉関係者には、矯正現場の知識を持たない方も多いと思われます。従って福祉関係者の為に、法務省と連携し犯罪予防に活用できる事例や保護司などの更生活動の紹介などを内容とした研修事業の創設が必要となって来ています。

以上の事から、私は、施設退所者を継続して支援する専門職員を配置することにより、退所者が20歳になるまで相談が出来るよう支援体制の充実を図るべきだと考えます。最終的には、就業支援機関や市町村の生活支援関係窓口との調整を担う職員の配置拡充を図ることが必要となりますが、現在、県は児童養護施設退所者に、どのような支援をしているのかお尋ねします。退所者の追跡調査を行っているのでしょうか、また、こういった退所者の現状をどこまで把握しておられるのでしょうか?以上、施設退所者支援についてお伺いします。

3.“健康づくり”県民運動の推進について

今や、がんと共生する時代に入ったと言っても過言ではありません。そこで、がんに罹っても仕事や学業を続け、治療と両立できる体制を整えたり、小児がん患者には、必要な教育と治療を共に受けられる環境を整備し、がん教育の推進を図り、更にはホスピスの段階であっても終末期治療と言うのではなく、心や体の辛さを和らげ、暮らしの質を高める積極的な生き甲斐を与えるような「緩和ケア」等が求められております。

このようにがんに対する取り組み等が進む中、40兆円とも言われる医療費の高騰は、健保組合の財政の圧迫のみならず、行政全体の財政に大きく影響を与え、喫緊の課題となっています。そこで、メタボにも関係している肝臓がん等、増え続けているがんもあるように、がん予防にも大きな効果がある健康づくりに、もっと力を入れるべきと考えます。

例えば、ティーぺック㈱では健康経営で、社員の25%を占めていた喫煙者が3年足らずでゼロになったそうです。又、会社と健保組合のコラボヘルスの取組に力を入れているコニカミノルタ㈱では、企業ぐるみで健康づくりに取り組んでいます。階段を使うなどにより“1日1万歩”とか歩数に応じて、ポイントが付くと言う制度を導入し、一見簡単そうに見える取組の積み重ねの奨励で、健康づくりに大きな成果を挙げています。本県でも、「健康づくりチャレンジ企業」制度を設け、登録企業におけるメンタルヘルスや運動施設・運動機器の整備への支援を通じて、働きざかり世代の健康づくりを推進されており、こうした取組の輪が広がっています。又、兵庫県庁でも、井戸知事を先頭に、エレベーターを使わないことを意識している職員が増えていると聞くにつれ、大変心強く思っています。

このように、生活習慣の改善では、県民一人ひとりの自らの健康づくりと健康管理という自助努力が必要であると同時に、行政の健康づくりの啓発が必要です。医療費の抑制と健康寿命を伸ばすためにも、県民に健康づくりの積極的な取組を促し、新しい生き甲斐にも通じる県民運動へと発展させることが重要であると考えます。そこで、現在推進されている“健康づくり”事業の今後の展開について、当局の考えを伺います。

4.国際交流の推進について【産業労働部】

私は、昨年8月に高橋・向山議員ら6名で、インド・グジャラート州を視察しました。2010年に井戸知事が同州を訪問された時に、両県・州の友好交流の実施について確認されたのを受け、具体的な交流推進について詰めを行うための訪問でした。

私は、10年前にインドの経済の中心地ムンバイ市を訪問した事があります。当時の日本の大都市では、サラ金の看板が林立していた時代に、ムンバイ市ではやたら英会話とITの看板が目につきました。この看板だけでも、これからどの様に発展して行こうとしているのかが見えたような気がしました。そして、今回の訪問では、まさにこの10年間のインドの成長ぶりの裏付けを確認することが出来ました。

現在のインドは、日本より20年ほど遅れた発展途上中の国です。それでも、就学前教育から大学まで授業料を無償化するなど、教育に大変力を入れています。その結果として、勉強することで貧困やカースト制から脱出できるかもしれないという夢や希望を抱いて、目を輝かせている若者が多くいます。そして、そういった若者の活躍により、最近では、インドは世界のIT産業をリードする国にまで発展していると言えます。

こうしたインドや巨大な13億の民を有する中国との交流を無くして、アジアの経済発展、そして平和への道はないと私は考えます。これから大きく経済発展が予想される両国と、少し早めに経済発展を遂げた日本が、両国間の友好交流、特に若い世代の交流から経済発展へと結びつけることが、これからの日本が進むべき道だと考えます。

今回インドを訪問した私たち一行は、インド・グジャラート州との意見交換を通し、グジャラート州との交流の必要性をお互いが確認し、大きな意義があったと思っています。更に昨年11月に、インドのモディ首相が来日し、わざわざ兵庫県にも来て頂きました。そして、モディ首相・安倍首相立会いの下、兵庫県とグジャラート州の相互協力に関する覚書を締結することが出来ました。

これからは、その中身を充実させるために、具体的な行動を起こす必要があります。このような観点から、今後、グジャラート州と経済分野等の交流を、兵庫県として具体的にどのように取り組んでいくつもりなのか、当局のお考えを伺います。

5.奨学金制度の改善について【教育委員会】

現在、豪華寝台列車による3泊4日で150万円もする旅行の予約が殺到しているそうです。一方、年収200万円以下の人が、およそ1,130万人もいると言われ、富裕層との間の経済格差がどんどん広がっています。そして、貧困層の増大で、子供の6~7人に1人が貧困と言われ、小学校の1学級に約6人の貧困者がいるという、大変な状況に陥っています。

その経済格差を教育格差に広げてはなりません。そして、家庭の貧困は、子供の責任ではないとの観点から、次代を担う若者に、教育の機会均等を保障していかねばなりません。

しかし、今日、日本はOECDに加盟する先進34か国の中で、教育支援が最も少ない国と言われています。そして、日本の大学授業料は、世界的にも圧倒的に高額で、ますます教育負担が大きくなってきている現状です。

一方、親がいないとか、児童虐待やDVで親と分離する必要がある子供が、児童養護施設から学校に通っています。しかし、児童福祉法の適用は、18歳までですので、原則的に18歳で児童養護施設を出なくてはなりません。大学へ行くとなると、生活費以外に住居費が必要となります。住宅費・食費・光熱水費で、切り詰めても月7万円は必要です。これは何とかアルバイトで工面しても、私立大学の4年間の授業料450万円は、施設出身の子供には当てがありません。だから現実に、一般家庭の大学等進学率が54.5%に対し、児童養護施設は11.1%という5分の1の低さなのです。この現実をいつまでも放置していて良いものでしょうか!

私は、誰もが大学に行けば良いとは思いません。しかし、親がいないとか、家庭が貧しくて大学へ行きたくても行けない子供がいれば、親に代わって行政が支援の手を差し伸べるべきと考えます。私は、そのために奨学金制度があると思っています。兵庫県独自の給付型奨学金の創設で、仮に1億円あれば、私立大学の授業料で25人が救われます。これを県内の児童養護施設の対象者約80名に全額充てたとすれば、計算上では施設の大学等進学率は42%になり、現状の4倍に跳ね上がります。それでも、なお一般家庭の進学率より10%以上も低い訳ですが・・・。

一方、日本の貸与型奨学金制度を高校から利用した場合、大学卒業後、社会人としてスタートラインに立った途端に、350万円以上の返済債務(=借金)を抱えることになります。私は、教育で貧困の連鎖を断つべきと考えます。親の経済力が原因で、子供に債務の責任を引き継がせ、貧困を連鎖させるこの制度は、大いに問題があると思います。この貸与型は、ゼロ金利時代に利息が付く上、返還が滞ると5%の延滞金まで付く“ローン”だと言われています。家庭が貧しく進学を迷っている未成年の子供に、貸与奨学金というローンを勧めるだけで良いのでしょうか!朝日新聞の平成29年2月14日の天声人語にも、同じような内容が掲載されていました。

教育長は、「大学卒業後、無理なく奨学金の返還が出来る若者に対しても、渡しきりのお金を提供するのは、政策の面でも課題がある」と昨年の予算委員会で答弁され、貸与型奨学金に頼り何ら有効な手立てをしませんでした。

確かに、奨学金は国の事業ですが、国の支援から漏れ、現実に目の前に困った県民がいれば、県は何もしなくて、見ておれば良いことにはなりません。事業に問題があれば、国に改善を求めると同時に、改善が実現されるまで県や市が独自の支援を差し伸べるという事例は、全国でいくらでも見受けられます。

そこで、是非、兵庫県独自の事業として、給付型奨学金制度と無利子奨学金の創設を検討して頂きたいと思います。大学生等に対する奨学金制度を国にお任せして、改善されるまで待つのではなく、目の前で悩んでいる県民に支援の手を差し伸べて下さい。やる気があるのに経済的な理由で、進学を諦めている子供たちに対し、少しでも光を当てて頂きたいと願うものです。再度、県教育委員会の給付型奨学金制度に対するお考えを伺います。

小池 ひろのり

(選挙区:神戸市中央区)

一般質問

(石井 健一郎 議員)[発言方式:分割]

1 人口の東京一極集中について
2 今後の関西広域連合のあり方について
3 官民人事交流について
4 観光地における収益力の向上について
5 六甲山の活性化について
6 兵庫の農林水産物の販売促進について

質問全文

質問日:平成29年2月27日(月)

質問者:石井 健一郎

質問方式:分割

1 人口の東京一極集中について

人口の東京一極集中により、地方では、人口減少や地域経済の縮小等が深刻化しています。これを克服するため、政府は2014年に東京一極集中の是正を柱とする「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を打ち出しました。この戦略では、地方において雇用を創出し、新たな人の流れを構築することで地方からの流出を減らし、現在10万人を超える東京の転入超過を2020 年までに均衡化させるとしています。

一方、2016年の東京圏への転入超過数を見ると、15~19歳が約27,700人、20~24歳が約68,900人、25~29歳が約18,400人と、若者層が転入の大半を占めており、大卒後の就職時、大学進学時の転入、結婚、若者の転勤にほぼ限定されると考えられます。

政府では東京の転入超過をネガティブにとらえているようですが、高校在学時に首都に憧れて東京の大学に入る、就職時に本社が多い東京に移ることは、ある意味避けようのない移動であると言えますし、経験値を上げる観点からも逆に必要と言えるかもしれません。

いずれにしても、現在、東京に若い世代が集中していることは否定しませんが、地域にいる若者が根こそぎ東京に吸い上げられている状況とは言えません。むしろ、若者の全体数からすれば、東京へ移動する割合はわずかであると言えます。また、最近では関東圏の大学において、出身地への就職希望者が増加傾向であるとも聞いております。

地域創生の話では、東京への人口一極集中がいつもクローズアップされ、施策の大きな柱になっている傾向が全国の自治体に見られます。しかし、東京に若い世代が流出することを防止することで人口減少問題がなくなるわけではありません。もちろん、行政として、移住促進策や、地元の企業を知らなかったことによる働く機会の損失を考えますと大学との連携等の施策は、地域活性化につながることも期待されることから推進すべきではあると思いますが、結果として全国の自治体が同じような施策で東京にいる10万人程度の若い世代の奪い合いをしても得られるものは少ないのではないかと感じます。

人口流出による地域衰退の本質は、若者が東京に流出するということではなく、地域に残る若い世代に対する魅力的な雇用、言い換えれば所得向上のための取り組みが充分ではないことにつきるのではないかと考えます。加えて、住環境や子育て支援制度等も、まだまだ充実の余地があります。

東京への転入超過がなくなっても、地方に増える若い世代は微増するだけです。行政の補助で若い世代の奪い合いをすることに主眼を置くことより、地域全体で豊かな兵庫をどのようにして創っていくかが、地域の人口減少で問われる問題の本質であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

2 今後の関西広域連合のあり方について

分権型社会の実現、国と地方の二重行政の解消を目指し、2010年12月に全国で唯一の広域自治体として誕生した関西広域連合は、関西一円の12府県市にまで範囲を拡大し、「広域防災」「広域観光・文化・スポーツ振興」「広域産業振興」「広域医療」「広域環境保全」「資格試験・免許等」「広域職員研修」の7分野について、担当府県市を中心に広域課題の解決に取り組まれています。まずはこれだけの組織を全国で初めて立ち上げ、そして府県の壁を一つ一つ乗り越えながら運用してきた努力に敬意を表する次第でございます。

設立から6年が経過し、特に本県が担当する「広域防災」については、東日本大震災の復旧・復興支援に際して初めてカウンターパート方式を採用し、被災地のニーズに応じた、効果的で継続的な支援を行い、その後の熊本地震にもその経験と教訓が生かされるなど、府県の枠組みを越えた取組は高く評価されているところです。また、ドクターヘリの関西広域連合での一体運用では、関西一円での相互応援態勢を構築し、「いつでもどこでも安心医療圏関西」の実現に成果を上げています。

その一方、他の分野については、残念ながら未だ目立った成果に乏しいように感じております。効果が期待できるインバウンドをはじめとする観光分野の取り組みにおいてはやや一体感に欠けているようにも感じますし、産業政策の面からもインパクトに欠けることは否定できず、そういったことが関西広域連合に対する期待感の盛り上がりを欠くことになっているのではないかと考えます。また、一時進みかけたように見えた国の出先機関の事務移管が実現していないこともその理由の一つと考えられます。

しかしながら、関西広域連合でしっかりとした地域主体の将来ビジョンを示すことが今後の国の出先機関の移管につながることもあり得るかもしれませんし、これからワールドマスターズをはじめ、急浮上した万博やIR施設の誘致などオール関西で取り組んでいかなければならない課題も山積しています。

道州制に対し関西においても様々な議論がありますが、まずは関西広域連合で広域行政の充実をはかり経験と実績を積み上げることが大切です。

東京や他地域から「やはり関西はバラバラで一つにまとまらないではないか」という誹りを受けないように、府県を超えたオール関西実現に向けて、小異を捨てて大同につくといった意識を持って、関西広域連合を充実したものにしていかなければならないと考えますが、今後の関西広域連合のあり方について改めてご所見をお伺いします。

3 官民人事交流について

人口減少、少子高齢化、グローバル化が進展し、財政状況も厳しくなる中で、これまで以上に効率的、効果的な行政運営とサービスの向上が求められるようになっております。このような状況を克服するには、各職員が仕事を進めるにあたって、新たなノウハウや技術を取り入れ、これまでにない工夫を行うことが重要ですが、これはなかなか容易なことではございません。そういった中、有効な取組のひとつとして、他業種との人事交流が挙げられます。

兵庫県では外郭団体等の公益法人への出向・派遣者数は全国でも上位に位置する一方で、近年の兵庫県の民間企業との人事交流状況を拝見しますと、これまでJR西日本や設計事務所等、また、昨年はオリックスとの間で、職員の企業への派遣、企業からの県への受け入れを行っていますが、件数的にみれば少なく、また、純粋な民間企業ということで考えますと微々たるものとなっております。

現在、官民を問わず新しい領域の仕事が増加する傾向にあります。また、それぞれの仕事の専門性も高まっており、これまでのようなオールラウンドプレーヤ型の職員よりも、セミプロのような専門知識を持った人材が求められてまいります。

県庁に出向してきた民間企業の社員からは、民間特有の専門的、効率的かつ機動的な仕事の進め方を取り入れる、また、県庁から民間企業に出向し、行政の職場にはない業務の進め方を体得することは、これからの行政に求められる資質やサービスの向上に役に立つし、民間企業の側にも、行政の考え方への理解を促進する効果が期待できます。

交流先の企業についても、現在行われているような行政に近い企業との交流も大切ですが、全く異業種との交流を試みてみるのも、得るものがあるのではないかと感じております。そういった意味においては、専門職の中途採用の拡大ということも、組織の活性化につながり、重要ではないかと考えます。

国家公務員においては、民間と国との相互理解を深めるとともに、双方の組織の活性化と人材の育成を図るために、官民人事交流法を制定し、2000年から国と民間企業との人事交流が積極的に行われており、交流実績は、平成27年度末までに、約550社の民間企業、国から民間に派遣された人数507人、民間から国に派遣された人数1346人に上っています。

そこで、職員の執務能力や専門性、行政サービスの質を高めるために、こういった官民人事交流については、もっと積極的に推進するべきだと考えますが、当局の考え方をお伺いします。

4 観光地における収益力の向上について

日本各地、海外からも多くの観光客が訪れる兵庫県の観光地は、地域創生に大きな役割を担っており、兵庫の貴重な地域資源として、今後とも守っていかなければなりません。そのためには、各地域においてブランド力を維持し、収益性を上げることが重要です。

長引く不況から、観光地においても、経営不振等により宿泊施設が廃業に追い込まれたりするケースが見られます。ひとつの宿泊施設が閉まると、客数の減少や景観の悪化等により、観光地全体としても寂れた雰囲気になり、ブランド力や収益性の低下を招く恐れがあります。

このような事態を避けるため、行政と事業者は、常日頃から密に情報交換し、協力して、その宿泊施設への支援や継承者の発掘などの対策を講じることが重要になります。そのために県は、アドバイザーの派遣や融資制度の紹介など、更にきめ細やかな支援を充実させる必要があるのではないかと考えます。

例えば、近年、古くからの温泉地で、廃業、または経営不振にある宿泊施設等の運営に乗り出す等、全国展開する宿泊事業者が増えています。県内の観光地においても、このような県外事業者の資本に宿泊施設の運営が移譲されることもありますが、この対応も重要です。

一般的に安価な価格設定の事業者が参入すれば、地元事業者は価格競争を強いられ、宿泊料金が維持できない、地域の収益性とブランド力が低下する、また、雇用は合理化のためパートタイマーのみに留まる、地元産の食材が使用されない、雰囲気が景観にマッチしていないなどの影響が出る可能性があり、長い目で見れば、地域のブランド力と収益性が低下することもあり得ます。一方、地域のブランドを生かすことを優先する事業者の参入は、宿泊料金の維持や引き上げ、地元産の食材の利用、人材の育成など、地域のブランド力向上や収益面において良い影響が期待できる等、観光地ごとにどのような宿泊施設がマッチするかを踏まえた検討が必要です。

温泉地のみならず全ての観光地において、地元事業者がより収益を上げていくことが地域創生につながるといった観点から、まず第一は、県、地元市町、地元事業者が連携を図りつつ、地域のブランドを生かすことを重視する事業者をはじめ、価値観を共有できる他の事業者とも日頃から情報交換することが大切です。そして、必要があれば、これら事業者とのマッチング等に積極的に乗り出し、ブランド力の維持や向上を図っていくことも大切であろうと考えます。

そこで、観光地における宿泊施設等の維持やマッチング体制を確保することにより、観光客に満足度を与えるとともに、収益力のある観光地をつくっていくことにつながり、ひいては観光客の入れ込みやインバウンドにも良い影響を与え、観光地を中心としたその地域を守ることになりえるのではないかと思いますが、県のご所見をお伺いします。

5 六甲山の活性化について

来年度予算において、県民・企業・行政等の協働による六甲山地域のブランド力向上に向けた仕組みづくりと施策推進により「人が集い、街とつながる魅力的な山」を実現すべく、六甲山のグランドデザインを描くための六甲山再生委員会を設置するとともに、観光客の利便性向上や自然公園の魅力向上など六甲山の賑わいづくりのため、六甲山上にある遊休施設の改修費用等を支援することが盛り込まれました。

昨年5月に、兵庫県、神戸市、有識者・民間人等を加えた「六甲山土地利活用プロジェクト」を発足させ、県市が協調して検討を進め、六甲山の保養所等の利活用に積極的に取り組んで頂いていることに感謝するとともに、今後の取組にも多いに期待するものです。

現在進められている保養所等の利活用については、まずは利用して頂けることが第一ではあるものの、六甲山の魅力アップという点で考えると、民間からの提案を待つだけではなく、こちらからも積極的に、例えばオーベルジュの誘致のような付加価値を上げる視点も必要であると考えます。

また、気になるのが六甲オリエンタルホテル跡の利活用です。これまで阪急が六甲山ホテル、阪神が六甲オリエンタルホテルを経営していましたが、阪急と阪神の合併により六甲山ホテルだけに宿泊施設は集約され、六甲オリエンタルホテルは閉じられ空き施設のままになっています。

六甲山ホテルは、昨年所有者が変わり、新たな所有者は旧館も改めて利用する意向とのことですが、六甲山の歴史的な財産としてその改修や保存についてはしっかりと気配りをして頂きたいということを要望しておきたいと思います。

一方、六甲オリエンタルホテルでありますが、この場所は特に景色もよく、施設内には兵庫県と縁の深い安藤忠雄設計の風の教会もありますが、放置された状態が続いています。閉鎖してから年数も経つので設備も痛みが進行していると思いますが、是非とも所有者と協議し、新しい事業者を探す等の取り組みを期待しているところです。

さらに、神戸の観光資源の一つとして必ず挙げられる六甲山の夜景についてです。これだけ観光スポットとして宣伝しているにも関わらず、実際は夜八時以降に公共交通機関で登ることが事実上不可能です。夜景が観光客を多く引き寄せている観光地は他にもありますが、そういった場所で夜遅くまでビューポイントにたどりつけることはもちろん、営業している店もあり賑わいを見せております。ケーブルやロープウエイの運行延長は難しいかもしれませんが、主要ホテルや駅を起点としたバスの運行なども検討課題の一つです。

いずれにしても、このままでは「人が集い、街とつながる魅力的な山」としては不完全であり、新しい取り組みが本格的に始まるこの時に、六甲山の活性化のため、神戸市の事業だということで一線ひくことなく、県として逆に後押しをするくらいの意識を持って県市連携で取り組んでいただきたい課題であると思いますが、改めて当局のご所見をお伺いします。

6 兵庫の農林水産物の販売促進について

県産農林水産物については、それぞれの産品が持つ魅力を明確にしながら、阪神、神戸といった大消費地に近接し、食関連産業が集積しているという兵庫の強みを生かし、生産から流通、販売までを一連のものとして見据えた産品ごとのブランド戦略の策定・実践を進め販売促進に努められています。

しかしながら、県民にどこまで県産農林水産物やその加工品のブランドが浸透しているかというと些か疑問です。そもそもブランドは、知名度のある地域が特徴ある商品を送り出すことによって成立するものであり、全国どこにでもある農林水産物やその加工品で差別化を図ることは難しいと思われます。

東京での販売についても、47都道府県の恐らく全てが期間限定で似たような取り組みをする中で、知名度が足りない県産農林水産物や加工品を売り込むことの効率性を考えさせられます。

そのことからも、県産農林水産物やその加工品の販売促進で大切なのは、地産地消の観点からも、第一は県内での販路拡大であると考えます。県内でもまだ十分販売されていない産品を、兵庫県の特産物として広く県外等に売り出すことには無理があるように思います。そして、その販路を拡大するには、消費者のニーズを把握することが重要で、生産者が一方的に生産しても、県外はもとより地元の消費者にすら受け入れられるわけではありません。

また、生産者が不足し生産量に限りがある中では、どうやって生産物・加工品に付加価値を与え、より高い収益を上げていくかということを考えていかなければなりません。そのことにより生産量が増えれば、生産者も増えるという好循環を生む結果を得られるかもしれません。

販路拡大に必要なのは、単に商談の場を設けることだけではなく、一歩踏み込んで県産農林水産物やその加工品を確実に販売してもらえるルートを積極的に開拓することです。

例えば、県内スーパーチェーンとうまく連携できれば、販売量の安定化につながるほか、新たな産品の販路拡大にも有効です。生産者がバイヤーとのパイプを持ち、ニーズをしっかりと把握して、マーケットインの発想のもと生産・販売に努めていくことが必要ですが、そのためには生産者とバイヤーが生産する前の段階から連携し、どのような農林水産物・加工品がどのような値段でどのくらい消費者に受け入れられるのかを検討した上で、販売ルートの拡大に努めなければなりません。それには県のサポートが重要だと考えます。

そこで、兵庫の農林水産物やその加工品の販売を促進するには、県産農林水産物を、様々なバイヤー、県内スーパーをはじめ小売店で取り扱ってもらえるよう、そのニーズに応える取り組みを強化しつつ、県内における県産農林水産物や加工品の販路拡大に一層力を入れることが必要であり、結果として兵庫ブランドの確立に寄与するのではないかと考えますが、当局の見解をお伺いします。

石井 健一郎

(選挙区:神戸市灘区)

一般質問

(向山 好一 議員)[発言方式:分割]

1 大阪の万博開催、IR整備と兵庫の関わり方について
(1)万博誘致に向けた県内の機運醸成について
(2)万博のレガシーを活用した兵庫の産業育成・雇用創出について
(3)IR開設に向けた対応について
2 「コウノトリ但馬空港」の今後のあり方について
3 クールビズ28度設定について

質問全文

質問日:平成29年2月24日(金)

質問者:向山 好一

質問方式:分割

1 大阪の万博開催、IR整備と兵庫の関わり方について

「こんにちは、こんにちは、西の国から~」

この歌は言わずもがなですが「1970年大阪万博」のテーマソングです。6000万人を超える来場者で賑わい、高度成長を遂げる日本の象徴のようなイベントに日本中が酔いしれました。しかし、47年前の出来事ですからこの議場でも生まれていない議員が約1/3はおられ、あの感動とインパクトを実体験されていない人もたくさんいらっしゃいます。

このたび、大阪府が2025年に夢洲を会場として2度目の大阪万博開催をめざし、国家プロジェクトとして誘致を行っていこうとしています。さらに、昨年成立した「統合型リゾート施設整備推進法」に則って、万博前にカジノを含む統合型リゾート(IR)を整備しようとしていることは井戸知事もご存じの通りです。万博に関し、柳の下に2匹目のどじょうはいるのか?あのときと時代背景が違うので疑問視する声も多くあります。しかし、私は「どじょうはいるものではなく作っていくもの」だと思っています。

現在、経済産業省を中心に、テーマ案の協議が行われているところですが、大阪府が基本構想で示している開催テーマ案は「人類の健康 長寿への挑戦」。まさに人類共通の課題であり、その欲求を満たすことができれば自然にどじょうは出てくるはずです。しかも、このテーマで兵庫県は多くの強みを持っています。それだけに、この大阪万博は隣の府が取り組んでいることという第三者的な姿勢ではなく、本県の将来を大きく変え得る絶好のチャンスと捉えて積極的に関与すべきだと思っています。

昨年12月議会でも、井戸知事は、特に2021年に開催される関西ワールドマスターゲームズで醸成される健康増進への機運を万博に繋げるために、「関西全体で盛り上げたい」と答弁されました。

そこで、IRを含め具体的に3点について質問します。

(1)万博誘致に向けた県内の機運醸成について

まず、2025年に大阪万博を開催するためには、博覧会国際事務局(BIE)での承認が必要ですが、そのBIEの本部があるパリが既に同じ年の開催に向けて立候補を届けています。大阪も4月頃をメドに閣議了解を経て立候補を届け出る予定ですが、既に強力なライバルが存在しているわけです。

今後、来年秋とも言われている開催地決定まで、国家プロジェクトとして誘致合戦が本格化していきますが、ライバルに打ち勝つために大阪は勿論、「オール関西」での盛り上げ、住民の支持が何より重要となります。会場に近く波及効果を期待できる兵庫県でも、その役割を積極的に担うべきと考えます。関西広域連合長でもある井戸知事のリーダーシップを期待するところですが、誘致合戦成功に向けた兵庫県民へのアピール、盛り上げ策をどう考えておられるのか伺います。

(2)万博のレガシーを活用した兵庫の産業育成・雇用創出について

2点目は大阪万博が開催されることが前提とはなりますが、万博開催とそのレガシーを兵庫の産業育成、雇用創出にどう結び付けるかという点です。

万博の開催は、12月議会で知事のおっしゃったとおり、新たなイノベーションの創出による関西の国際競争力の強化につながると期待されます。まさしくポートアイランド等で展開している先端医療の振興、医療産業都市・神戸へのさらなる企業集積につながる絶好のチャンスとなるのではないでしょうか。このような観点から8年後に向けて、AI等も活用しつつ次世代産業である医療・健康産業の育成と雇用の創出に繋がるよう、兵庫県としてどのような戦略をお持ちなのかお伺い致します。

(3)IR開設に向けた対応について

3点目は、IRへの対応です。大阪府は万博前にIRを開設する計画をもっています。知事は以前よりカジノには大反対ですが、IR推進法の成立により、本年中に実施法ができ、大阪府知事が開設を国に申請する手順になっています。現状から判断すると、夢洲にIRが出来ることはほぼ確定的となっており、知事は「健全なIRならどんどん推進すべき」と仰っておられます。カジノ解禁に対して国民の意見は賛否が分かれていますが、現実論としてIRが出来ることを前提に、世界から訪れる観光客を兵庫県に取り込むための戦略をしっかり準備すべきではないでしょうか。夢洲地区がウォーターフロントを介しての西への拡大・発展が期待できる立地にあることを見逃す手はありません。

そのためには、例えば癒しの空間である温泉、神戸ビーフを中心とする食文化等を活用したウォーターフロントでの観光上の斬新なアイディアや医療産業都市・神戸を打ち出した医療ツーリズムの振興に加え、神戸港と夢洲を結ぶ海上の航路の整備、そして世界からの玄関口としての神戸空港の国際化と24時間化は必要不可欠となってきます。このような観点に対し、知事がいまどのような御見解を持っておられるのか伺います。

2 「コウノトリ但馬空港」の今後のあり方について

私は但馬地域出身ではないですが、但馬空港に興味を持ったきっかけは、昨年度の予算編成時に但馬空港の使用機材の変更のための購入費として27.3億円が計上されたことでありました。エアラインが使用する機材を公金で購入することはそれまで聞いたことがなかったからです。

そこで、この但馬空港に関係する兵庫県の負担を調べてみると、平成28年度では機材購入補助としての1.35億円のほか、予算ベースですが、兵庫県の空港運営のための直接の支出として、①エアラインへの赤字補填で年間約1.5億円②但馬空港ターミナル㈱への補助金等が約3.8億円、(それ以外に但馬空港推進協議会及び但馬3市2町での運賃助成約9,000万円、その他欠航時にタクシー運賃の負担もある。)となっています。

数値には表れていませんが、イニシャルコストとして空港建設に179億円かかり、県費として116億円負担しています。本来ならその負担もこれに加えないといけないと思いますが、それを差し引いても28年度の県予算額だけで年間合計約6.7億円の税金が使われています。

一方、但馬空港の年間利用者数は約3万人、この県予算額を利用者1人当たり換算すると約22,000円、空港利用者は往復で利用することが一般的なので、行って帰ってくる一人につき約44,000円の負担をしています。

そこで、一度乗らないと実態が分からないと思い、昨年12月26日に伊丹-但馬間を往復で利用しました。搭乗者は往きが22名、帰りが18名の搭乗、年間3万人という利用実績下のちょうど平均的搭乗者数で、観光客というより何度も利用しているビジネス関係者が大半でありました。また、冬場の欠航率が平均20%程度という実態もあります。

この実態を見ると、そもそもこの空港は何のための空港なのか?という疑問がぬぐえません。地元住民、自治体などが涙ぐましい努力をされているのはよく分かりますが、空港を維持していくために県民全員に負担を求めていくことにはもう限界がきているのではないでしょうか。打開策を真摯に検討する時期に来ていると考えますが、経費負担に対する見解を含め、今後の有り方について当局の御見解をお伺い致します。

3 クールビズ28度設定について

こんな真冬に夏の話をするのは場違いかもしれませんが、省エネを目的としたクールビズのうちオフィスの「28度設定」について伺います。

兵庫県も省エネに以前から積極的に取り組み、このオフィスの「28度設定」は徹底的に実施されています。私も兵庫県議会議員になって県庁で2度、この真夏のオフィスを経験しました。

この28度設定の徹底は正直相当きつく感じられます。7月、8月に県庁で仕事するには相当な覚悟がいりますし、現実問題として効率や集中力が相当落ちます。28度設定によって生まれる効果と失われる損失、どちらが大きいのかと考えるようになりました。

そこで、まず何故28度なのかを調べてみました。その根拠は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」および「労働安全衛生法 事務所衛生基準規則」で室温の範囲が17度~28度と定められていることにあるようです。つまり、人が衛生的に仕事する上でこれ以上の温度にしてはいけない上限温度になっているということです。

まず、この設定の問題点を指摘します。

1、まず、この根拠となっている法律は昭和40年、つまり50年以上前に基準として設定されたもので、現在の生活環境とは全く違っている。

2、次に、知的生産性の低下。ある民間の調査(早稲田大学 田辺新一教授のコールセンターでの調査)によると、25度から28度に室温が上がると6%生産性が低下したとの数値があります。

3、さらに、同じ28度でも周辺環境や個人によって全然違うという点です。例えば西日の当たる窓際と日が入らない北側の部屋、暑がり寒がりなど個人の体感差、そして最も違うのは湿度との関係で、同じ28度でも湿度によって体感温度は全く異なります。「ビル衛生管理法」でも湿度は40%以上70%以下と規定していますが、夏場の湿度は70%以上になることが大半です。

以上のことから、総合的にみて26度設定が理想的ではないかと思っています。エアコンの期間消費電力は27度で試算され設計気温は26度になっていますし、(公社)空気調和・衛生工学会の「我慢しない省エネへ」というレポートの中で、「一般的なオフィスでは26度が望ましく、クールビズ化したオフィスでは27度が上限」と提言としているからです。そこで兵庫県庁におけるオフィスの「28度設定」の見直しについて御見解を伺います。

向山 好一

(選挙区:神戸市北区)