質問日:平成29年10月18日
質問者:栗山 雅史 議員
1 診療単価の向上について
毎年の病院局の予算・決算の資料などに目を通している中で、収入の確保の欄にある「診療単価の向上」という経営方針・目標について、私はずっと「経営上、これは良いことなんだ」と理解し、納得してきたように思うのですが、私は市議・県議として15年議員を務めておりますが、この時になってふと、この「診療単価の向上」について疑問を持つようになりました。「なぜ診療単価を毎年向上させるのだろうか。もし毎年上がっているなら、過去と比べたらものすごい診療単価になっているのではないか」と思いまして、この度、県病院局の担当課に過去20年分の入院・外来の診療単価の推移の資料を請求しました。
すると、予想を超える結果というか、驚いたのですが、20年前の平成9年、私が大学を卒業し、社会人1年目になった年ですが、入院単価は33,168円、外来単価は10,525円でした。それが今、毎年徐々に徐々に上がっていった結果、平成28年の入院単価はなんと69,000円、20年前と比べると2倍以上に。そして外来単価は19,509円、こちらも1.85倍になっていました。知らぬ間に診療単価は約2倍になっていたのです。
私は「診療単価はいつまで上がっていくんだろうか」と、とても心配になりました。消費税率や物価が上がることには国民は敏感で、その是非について議論をするのに、医療サービスに関する値上げには鈍感というか、知らぬ間に自己負担額が上がっているにも拘らず、文句を言えないのが現状ではないでしょうか。
そして、病院側が人知れず続けてきた「診療単価の向上」について、病院は大きく告知することも宣言することもなく、私たち患者は受け入れるしかなかったのです。私は今日、この「診療単価の向上」についてどう考えるべきか、質問をしていきたいと思います。
「診療単価の向上」には、2つの要因があると思います。一つは2年に一度改定されている、「診療報酬」と「薬価基準」です。これが上がったならば当然診療単価は上がります。なので、過去20年間のこの診療報酬と薬価基準の推移についてどう理解したら良いのか、県病院局にレクをしていただきましたが、結局、断定的に「上がっている」とも「下がっている」とも言っていただけませんでした。
診療報酬改定は薬価基準とともに通算されて、全体としてプラス改定だったり、マイナス改定だったりという表現をされているのですが、先ほどの平成9年からでいうと、プラス改定が5回でマイナス改定が6回ありました。
プラスマイナスの数値を単純に合計すると、マイナス9.416%でした。「診療報酬は全体的に下がっている」と言えるのかどうかは、私は専門家ではないのでわかりませんが、仮にマイナスでなくて、過去20年間変化無しだとしても、県立病院の診療単価が毎年向上して倍になっていったのは、もう一つの要因、つまり病院側が意図と意思をもって診療単価を上げてきた、ということになるのではないでしょうか。
現在、医療費の自己負担は3割です。仮に平成9年と平成28年の外来単価で計算しますと、平成9年が3,157円。平成28年は5,852円です。医療サービスなのでピンと来ないならば、例えば散髪代金に例えるとどうでしょうか。昔は3,000円だったものが、今6,000円でカットされているようなものです。高くないですか?お店を変えたいと思いませんか?しかし、県が提供する高度な医療サービスの比較なんて対象も多くありませんし、診療報酬単価に基づいて、医師が決めた処置や処方に対して、我々は文句を言いませんし、提示された診療費を支払うしかないのです。
私は、公立病院というのは「低廉で質の良い医療を提供する」というイメージをずっと持っていました。「低廉な」という言葉は、昔はあてはまっていたのでしょうか、今は聞くことも見ることもなく、むしろ高額な医療になっているのではないでしょうか。今後も「診療単価の向上」が続くならば、将来県立病院でお世話になるのは少し不安に感じます。
そこで質問しますが、なぜ診療単価を向上させようとしているのでしょうか。経営上の収支を合わせるためなのでしょうか。お答えください。そして、結果として患者の自己負担が大きくなっているわけですが、このことに対してどのように感じておられるのでしょうか。ご答弁いただきたいと思います。
2 費用の抑制について
県は「自立した経営の確保」を目指しておられますが、収入の確保とともに、当然に費用の抑制についても力を入れなければなりません。県は、費用の抑制対策として、①給与比率の改善、②材料費比率の抑制、③経費比率の改善を掲げています。給与や材料費、経費については医業収益に対する比率の維持・抑制を努めるとありますが、ここ最近の状況はどうでしょうか。
過去10年のデータをいただきましたが、まず給与費から紹介しますと、10年間のうち、医業収益に対する比率が最も高かったのが平成19年の66.5%。もっとも低くて平成25年度の61.0%です。病院の経営指標の分析などによると、55%以上であれば要注意と言われています。ここ10年ずっと60%台で推移しておりまして、要注意レベルを超えている状態から改善することがなく推移しています。これで費用の抑制に努めていると言えるでしょうか。あまりにも長期にわたって改善していません。
次に材料費ですが、医業収益に対する比率は30%を超えており、県は以前、医業収益に対する材料費率を29.9%未満にすることを目標にしていましたが、ここ10年間で達成できた時もありましたが、30%台に悪化するなどしています。
これらの結果について県病院局はどう評価しているのでしょうか。費用抑制に努めるというのはスローガンばかりでしょうか。仮定の話ですが、費用の抑制が十分でないことを、先ほど質問しました患者一人一人の診療単価のアップに転嫁しているとしたら、それは絶対に許されないことです。
費用抑制の取組みはどのような状況であるのか、ご所見をお伺いします。
3 医師等の超過勤務とワーク・ライフ・バランスについて
最近では、長時間勤務による過労死や自殺などの事件が大きく報道されています。近いところでは、NHK記者の過労死について報道があったところです。働く者の健康を守ること、そして働く気力や生活の充実を図るため、国では働き方改革として長時間勤務の抑制などに取り組んでおりますし、県においても今年度に「県庁ワーク・ライフ・バランス宣言」をされたところであります。
私は今年6月の県議会の代表質問で「教員の過労死ラインを超える超過勤務」について質問をさせていただきました。ご承知かと思いますが、教員の皆さんは部活動の指導等による長時間勤務が多く、働く環境が現在もまだ改善できていない状況です。
そして、今回の決算特別委員会では吉岡議員から「警察官のワーク・ライフ・バランス」について質問がありました。「教員」、そして「警察官」、他には「消防」や「報道機関」といったような公的で特殊な勤務をされている皆さんは、どうしても長時間労働を当然視する気風が根強くあります。
同じく、医師や医療機関に勤務する人たちも、特に救急や外科などでは長時間労働が常態化しているという話をよく聞きますし、私の地元の西宮市立中央病院では以前、外科の医師が、長時間勤務を理由に病院で飛び降り自殺した事件がありました。
さて、県病院局からいただいた資料によりますと、平成27年度ですが、超過勤務が月100時間を超えた職員数が県立病院全体で118名いらっしゃいました。想像していた通り、医療現場の過酷な労働環境が明らかになりました。
昨今の働き方改革やワーク・ライフ・バランスの取組みについて、病院局も十分に意識をされておられると思いますし、それに合わせて医師等の働く環境を整えておられるかと思いますが、県立病院で働く医師などの超過勤務の勤務状況についてどう認識されているのか、ご所見をお聞きします。また、働く環境の改善に向けての取組みについてもご答弁ください。