議会の動き

迎山 志保議員が質問(総括審査)を実施

質問日:平成30年10月23日
質問者: 迎山 志保 議員

1.真の地方交付税充実へ向けた取組について

10月15日、国と地方の協議の場において地方六団体から国に出された要望に地方交付税の総額を確保するとともに、財源保障機能と財源調整機能の維持・充実を図ることや、累増する『臨時財政対策債の廃止』、地方交付税の法定率の引上げを含めた抜本的な改革等を行い、臨時財政対策債に頼らずに安定的に交付税総額の確保を図ることが明記されていた。

廃止が提案された『臨時財政対策債』だが、17年前の制度導入当初は3年間の臨時的かつ例外的な特例債の位置付けであったのが、経済情勢の悪化等から経過措置の更新が数回行われ、現在平成31年度までの措置となっているものである。

制度導入以前も、地方交付税の不足が慢性化していたが、それを補う財源としては「交付税及び譲与税配布金特別会計(つまり「交付税特会」)」による借入れがその役割を担っていた。しかし、交付税特会による借入れは、未来の地方交付税からの前借りといった制度にもかかわらず、国の特別会計による借金として予算計上され、自治体側の債務としては計上されないこともあり、返済のためのインセンティブが働きにくいことが指摘されていた。

そのため、新たな臨時財政対策債については自治体側が自ら起債し、その残高も自治体側が管理するものとなり、総額等は明確となった。

とはいえ他の地方債と違って、調達した資金には使途の制限は課せられず、その元利償還金については後年度に全額が交付税の基準財政需要額に算入されることから、普通交付税の代替措置とも言われた。つまり、発行しても実質的に自治体の将来負担とはならないとされる(交付税の不交付団体となる東京都のような超健全財政の自治体は除く)。そのため、東京都を除いた46道府県ベースでは国が認めた臨時財政対策債の発行可能額に対する実際の起債額の割合を計算すると、導入年を除いて、100%近い値となっている。

一方、国の財源保障があるというが、既に、過去に割当がなされた臨時財政対策債の元利償還の財源として新規の臨時財政対策債が割当てられている。過去の臨時財政対策債の償還に充てるべき当年度の元利償還金の全額が、新たな発行可能額に優先的に計上される仕組み、つまり実質的には償還せず借り換えていることになっている。平成26(2014)年度には、地方全体の臨時財政対策債発行可能額のうち過去の元利償還金該当分に割り当てられている比率が総額の50%を超えた。もはや臨時的な財源措置ではなく自転車操業のような状態である。

平成20(2008)年度4488億円だった兵庫県の臨時財政対策債残高は平成29年度末1兆5536億円となった。地方全体では53兆円。過去の交付税特会の借入金残高の地方負担分を加えると85兆円にもなる。

本来の地方交付税を充実させなければ、形式的に地方負担はないとはいえ国全体の借金、つまり国民負担に変わるだけで国全体の財政健全化にはならない。

近年、財政状況の公開に際し「臨時財政対策債は県債残高から除く」といったような表現や臨時財政対策債や減収補填債を除いたものを「実質的な県債残高」として表記している本県のような自治体もある。自治体側の債務としては計上されるようになったとはいえ、昔の国の交付税特会による借入れとよく似た他人の借金のような構図はある意味で変わっていない。

臨時財政対策債の残高の増嵩に対する知事の所見、地方交付税の充実についての展望をお聞かせ願いたい。

2.県政150周年記念事業について

県政150周年という節目の年を迎え、県民一人ひとりが歴史を振り返り、兵庫の未来を考える機会とする記念事業が県内で数々取り組まれている。この週末も明石の地でひょうご五国博ふれあいフェスティバルが開かれ県政150周年企画がさまざま披露された。両日とも晴天に恵まれ多くの人で賑わった。もちろん、このような事業を通じて県民がふるさと兵庫を意識し、これまでの歴史に思いを馳せ、これからの未来について考える機会となるのは何よりである。たとえば、教育委員会が取り組んでいる高校生が考える県政150周年記念事業ならば、県立長田高校が150周年記念歌を作り、全国高校総合文化祭や県内のイベント等で披露したり、兵庫高校であれば、地元商店街の魅力を動画にまとめて公開し、人をひきつけるまちづくりに取り組むなど、確かに150周年を意識づけることができる内容となっており、部局審査においてもこの機に生まれた意義ある取組を今後も引き継いでより良いものへと発展させたいとの教育長の答弁もあった。

昨年度、この150周年を記念する事業として県民連携事業がスタートした。多くの県民から好評を頂き今年度分を含めてすでに1,000件を超える事業が採択されている。採択事業を見るとこの機に新たに取り組んだ事業もあるが、恒例事業の冠に県政150周年と銘打たれただけというものも少なくない。「五国の魅力を磨く」「交流の輪を拡げる」「兵庫の未来を創る」を全体のテーマと掲げ、地域の参画と協働をさらに推し進めることを目的としているこの県民連携事業ですが、例年とほぼ変わらない内容の事業に助成することで得られる効果についてはどのようにお考えか。今回の補正予算でさらに上積みされることもあり、まだ事業実施途中ではあるが、既に実施済みの県民連携事業もあるので現時点での評価と今後期待できる効果について伺う。

3.人口流出対策について

このたびの決算委員会における部局審査においても、人口流出対策について多くの質問が出ていた。兵庫県はそもそも人口流出が多いこと、地域創生戦略の実施状況報告を見ても目標どおりの人口流出抑制が図られなかったことなどへの問題意識であり、ご答弁にも対応への難しさを感じた。

知事もおっしゃるように、人口対策の原理原則は自然増対策であることは認識しているが、それもなかなか思うように数字が上がらないということになれば、わが県の活力を維持・向上させるためには何とか社会増対策で、ということになるのも至極当然である。

しかし、その社会増対策も今ひとつ成果があがらないということで、ここは思い切った手段を講じる必要があるのではないだろうか。たとえば、神戸市と連携して、神戸を人口流出の防波堤とすることである。

部局審査において、特に若い女性が東京などに転出する理由として挙げられていた積極的な理由として、①IT、マスコミ、アパレルなど都市部にしかない仕事に就きたい、②おしゃれな店などが多い都市部に魅力を感じている、消極的な理由として、女性が配属される内部事務部門が都市部の本社にある、といった答弁があった。確かに、私が若い女性に聞いても同様の理由を聞いている。部局審査の答弁では、こと東京に対してはギブアップに近い話を聞いたが、やはりできる限り、考えられる限りの手を尽くす必要がある。

そこで、流出の要因として現在分析されている課題を着実にクリアしていく上でも都市としてのブランド力が高い神戸が担う役割は大きく、今後、三宮や県庁周辺も大規模な再整備が計画されている今、兵庫県の人口流出の防波堤となるよう神戸市と連携した取組を進めていくべきではないか、と考えるが所見を伺う。

4.児童福祉人材の活用について

こども家庭センターへの児童虐待相談受付件数は、平成29年度が5,221件で、5年前、平成24年度の2,418件と比べると2倍以上になっている。県内市町、そして全国でも増加傾向は止まらない。

こうした状況を踏まえ、国では、この7月に児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策を閣議決定した。これは今年の3月に東京目黒区で起こった5歳の子どもの虐待死を受けて策定されたものである。

今回注目しているのは、来年度~平成34年度までを期間とする「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」が年内に策定されることになったことである。この中では4年間で約2,000人程度の児童福祉司が増員されることになっている。現行では、平成28年度に策定した児童相談所強化プランに基づき、平成28~31年度の同じく4年間で児童福祉司を550人程度増員しようとしていたのであるから、わずか2年で見直しを余儀なくされるほど深刻な状況と捉えられたということである。もちろん、そのことによって本県の児童虐待防止に係る対策強化にもつながるわけであるから、期待しているところであるが、懸念していることもある。

それは、児童福祉司の職務環境の問題である。

と言うのは、本県の場合、毎年の職員募集において児童福祉司の募集がなされており、職務はこども家庭センターなどで行う児童などの相談、調査、指導、措置などの専門的業務とされている。この内容でわかるように、児童福祉司は採用されればこども家庭センターの最前線での働きが期待されているわけである。

児童福祉司の仕事は、現場で児童虐待を疑われる親や子どもたちなどとの対人業務が中心であるわけだが、児童福祉司の能力としては、もっと幅広な福祉政策全般の知識・経験を持つことも重要なのではないか、と考えている。

と言うのは、児童虐待の背景にあるのは貧困であったり、何らかの障がいが有るなど、他の福祉政策に関わる課題が複雑に絡みあっており、子供を取り巻く多様なケースに向き合う必要があるからである。

たとえば、北海道や愛知県、神奈川県、大阪府、京都府、神戸市などでは福祉職、社会福祉職という形で採用され、児童相談所だけでなくもう少し幅の広い業務に従事できるようになっている。また深刻な現場での職務でありレスパイトの観点からも柔軟な人事を可能にしておくことは有意なのではないだろうか。

児童福祉に関して専門性を磨くことの重要性は十分認識しているが、その専門性に加えて幅広い福祉の実務経験をしていただき、活用を図ることは、今後求められる人材確保の必要性も鑑み、より幅広い福祉人材の活用につながっていくと考えるが、所見を伺う。

5.県民総活躍の取組について

兵庫労働局による県内の有効求人倍率は直近の8月で1.46倍とここ数か月上昇傾向で雇用情勢については着実に改善が進んでいるという情勢判断が示されており、(独法)労働政策研究・研修機構がとりまとめた雇用人員判断DIをみると、2018年9月で大企業が-23、中堅企業が-33、中小企業が-37と人手不足感が強い、となっている。しかし、正規雇用に限っての有効求人倍率をみてみると0.95と1を割っている。この状態は数年にわたって続いているようであるが、これは何を意味しているのかというと、企業は正規雇用よりも非正規雇用を欲しており、その人手が不足していると感じているということであろう。

より安定的な雇用形態である正規雇用化の重要性は認識しつつも、こうした実情においては、潜在労働力すなわち、就業を希望するがそれがかなっていない若者や女性、高齢者、障害者の出番をどうやって創り出すかということが課題である。

AI、IoT、ロボット等最新の科学技術が実用化され、企業に導入されることなどにより、企業は雇用を絞り、仕事の質も高度化した。一旦就職をしても求められる高いコミュニケーション能力などに自信を持てず、離職をすると失敗体験にとらわれ新たなチャレンジができない若者。意欲はあるが子育てや介護との両立で一歩が踏み出せない女性。技術、知識、体力があり社会にその経験を還元したいと思いながらも時間を持て余す高齢者。誰かの役に立ちたい、自立に挑みたいのにその活躍の場が限られる障害者。

就労支援は国がリードしているが、地域、企業のニーズを捉え、仕事を細分化するなどの工夫も凝らしつつ、求職・求人の適切なマッチングを行い、人材不足を解消していくことが県にも求められている。

女性・高齢者の就業率、障がい者の一般就労率が概して低いわが兵庫県。

こうした潜在力を生かしきる取組についてもっと進めていくべきと考えるが、所見を伺う。

6.災害に強い森づくりについて

本県では、平成18年度から県民緑税を活用して、災害に強い森づくりを推進してきている。現在は、平成28年度から始まった第3期のちょうど中間にあたるが、この第3期で8,766haの整備に取り組むことが計画されている。平成29年度は約18億円かけ、緊急防災林整備、里山防災林整備等7事業に取り組まれたわけであるが、部局審査の際の答弁でもあったとおり、制度創設から昨年度までで目標の8割以上の達成率と伺っており、事業は順調に進捗しているものと認識している。
7月の豪雨災害の際、広島県では全国で最も多くの108人が亡くなられたが、そのうちの87人が土砂災害によるものだった。また、JR、国道等への土砂流出により呉市のような都市が陸の孤島状態に陥ってしまい、JR呉線は発災後3ヶ月以上経った今も復旧できておらず、住民の不便な生活は続いている。
このように、山が崩れ、住宅地や道路、線路等に土砂が流出すると人命・財産に大きな被害が生じるだけでなく、直接的な被災地でなくとも広域にわたって観光に大きなダメージを被るなど地域の経済活動にも大きな支障が生じることとなる。

一般的に復旧にかかる予算は予防にかかる予算の2~3倍以上かかるとされ、事前の対策がいかに有効であることを踏まえると、山地が県土の約7割を占め、土砂災害警戒区域の数が全国有数の本県としては、砂防堰堤(えんてい)や治山ダムなどの防災対策を推進するだけでなく、予防策としての森づくりを推進していることは評価できる。1期、2期での事業実施分28,267ヘクタールと合わせ、これまでに32,205ヘクタールに及ぶ災害に強い森づくりが実施されてきたわけであるが、兵庫県の民有林面積からすると今後、対策を講じていくべき森林はまだまだ多数残っており、事業個所の適切な選定も重要になってくると考える。

そこで、災害に強い森づくり事業について、これまでの取組の成果についてどう評価し、それを踏まえて今後どう取り組んでいくのか伺う。

7 地域資源を生かした教育の推進について

特定分野で特別なタレント・才能を発揮する生徒がいる。公教育でその才能を伸ばすことは可能だろうか。静岡大学が取り組んでいる理数教育プロジェクト「浜松トップガンプロジェクト」は「出る杭を伸ばし、1人1人の‘得意’を育てる」という中学生、高校生の才能を伸ばす取組で、小中学生への直接的な教育活動や産官学金が連携したコンテスト実施などを行っている。課外授業では大学教員や企業の研究員が講師をつとめ、自主研究の指導や国際的なプロジェクトへの共同参加などハイレベルな事業展開がなされている。成果も確実に出てきているようで才能の芽を大事に育て開花させている。

県ではこれまで、例えば科学技術系人材の育成という点では、高校においてSSHなども活用して取り組んできたが、今般この事業についても見直し検討がなされ、自治体のさらなる関与を求める必要性も指摘されたところである。国の事業としてこれまで取り組んできた成果も踏まえ、さらに意義あるものとすべく地域の大学、企業との連携の充実を図っていただきたい。

兵庫はスパコン京、スプリング8をはじめ最先端科学技術の集積がある。また構想立ち上げから20年を迎えた神戸医療産業都市も本庶佑理事長のノーベル賞受賞で沸いている。先日の式典でも神戸が世界に知られたバイオクラスターとなることを宣言された。

科学技術の分野だけでなく、ものづくりやICT技術など、兵庫県にある研究機関や大学、世界に進出している県内企業、国際的に活躍する兵庫県出身の人材など、様々な資源が兵庫県にはある。

このようなアドバンテージのある兵庫県において、県内の様々な資源を生かした教育を進めることが、県内児童生徒の才能をのばし、様々な分野で活躍する人材育成につながると思うが、所見を伺う。

8.警察組織の最適化について

警察組織の最適化については、これまでから様々な機会で提案させていただいている。それはやはり犯罪や事故発生の都市部集中の現状からである。

たとえば、神戸・阪神・東播磨地域に姫路市を加えた人口は4,534,906人で約82%を占めている。この地域等における平成29年中の刑法犯認知件数は、全県で50,821件で、そのうち、神戸市内は15,165件で約30%、阪神地域は16,809件で約33%、東播磨地域は6,974件で約14%、姫路市は5,803件で約11%、合計で約88%になる。

一方、警察署に配備されている警察官の定員を見ると、神戸地域は2,597人で約31%、阪神地域は2,343人で約28%、東播磨地域は910人で約11%、姫路市は812人で約9.8%で、合計すると警察署配備の警察官の約80%であり、この数字だけを見ると、以前より少し増員されたもののこれら人口集中地域に警察官が不足しているように思われる。

このような治安情勢の中、最近まで整備されていなかった交番のネットワーク化が進み、平成29年度中には交番325カ所のネットワーク化が完了した。これにより、従来なら警察署へ赴いて行っていた入力作業等が交番で行え、勤務員の作業効率が格段に上がったと聞いている。

このようにハード面の整備を進めるとともに、警察署間での定員見直しによる繁閑差解消や警察組織の再編整備による警察業務の効率化は、県民全体の体感治安の向上、警察官の働き方改革などにつながると考えている。

そこで、警察署の再編、小規模警察署の分庁舎化、警察署間の業務負担の均衡を図るなど、ハード、ソフト両面にわたる最適化に取り組むべきと考えるが、所見を伺う。